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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X25
管理番号 1271143 
審判番号 取消2012-300441 
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-05-28 
確定日 2013-02-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第5271847号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5271847号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
登録第5271847号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成21年4月1日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」及び第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定商品及び指定役務として、同年9月11日に登録査定され、同年10月9日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第33号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)はじめに(取消事由)
本件商標は、商標法第53条第1項の規定により、取り消されるべきものである。以下において、本件商標に係る手続の経緯及び引用商標について述べた後に、上記取消事由に基づき取り消されるべき原因(取消原因)を述べる。
(2)本件商標に係る手続の経緯
本件商標は、上段に、下辺に比して上辺が右方向に延びた欧文字の「C」状図形と、当該図形に比べやや小さい欧文字の「E」状図形をやや右下に並べて配置し、下段に、「Champ Euro」(CとEのみ大文字)の欧文字を配置した結合商標である。
本件商標は、1記載のとおりに設定登録されたものである(甲1の1、甲1の2)。
(3)引用商標
請求人は、下記の商標を被服、帽子等の商品に使用している。
ア 登録第1286289号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成からなり、昭和48年7月5日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同52年7月20日に設定登録されたものである。その後、指定商品については、平成19年12月26日、第20類「クッション,マットレス」、第22類「ハンモック」、第24類「布製身の回り品,毛布」及び第25類「被服」に書換登録がなされたものである。
イ 登録第1456098号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)に示すとおりの構成からなり、昭和50年1月17日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同56年2月27日に設定登録されたものである。その後、平成13年9月19日に指定商品の書換登録がされ、さらに、同23年3月15日に第20類「クッション,マットレス」、第24類「布団カバー,毛布,布製身の回り品」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,襟巻き,靴下,ゲートル,ショール,スカーフ,足袋,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保湿用サポーター,マフラー,ヘルメット,帽子」について存続期間の更新登録がされているものである。
なお、請求人は、引用商標2と同一の商標について、登録第1458183号、登録第1572663号、登録第1689112号、登録第3073467号、登録第3295607号、登録第4394313号及び登録第4614108号の商標登録を有している(甲3の3ないし9)。
ウ 登録第4057070号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲(4)に示すとおりの構成からなり、平成5年12月2日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ、マフラー、耳覆い、ずきん、すげがさ、ナイトキャップ、ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同9年9月19日に設定登録されたものである。
エ 登録第4731324号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(5)に示すとおりの構成からなり、平成11年8月9日に登録出願、第18類「かばん類,袋物,傘」及び第25類「履物(げた,草履類を除く。)」を指定商品として、同15年12月5日に設定登録されたものである。
オ 登録第4649155号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲(6)に示すとおりの構成からなり、平成11年4月26日に登録出願、第9類「眼鏡」を指定商品として、同15年2月28日に設定登録されたものである。
なお、請求人は、引用商標5と同一の商標について、登録第4958118号及び登録第5388531号の登録を有している(甲6の3及び4)。
(4)取消原因
ア 概略
本件商標については、被請求人からニスクジャパン株式会社(以下「ニスクジャパン」という。)に通常使用権が設定されている。ニスクジャパンは、当該通常使用権に基づき、本件商標又はこれに類似する商標を指定商品である被服等に使用することにより、請求人を含むヘインズブランズグループ(ライセンシーないしサブライセンシーを含む。以下同じ。)の業務に係る商品と混同のおそれを生じさせている。
以下では、ニスクジャパンの通常使用権、引用商標の著名性、本件商標と引用商標との類似性、ニスクジャパンによる本件商標の使用態様、本件商標と引用商標に係る商品の需要者及び流通経路の共通性につき順に述べ、上記混同のおそれが生じていることにつき説明する。
イ ニスクジャパンの通常使用権
ニスクジャパンは、被請求人と代表者を同じくする同族会社であり(甲7及び甲8)、被請求人より本件商標の使用許諾を受けて、本件商標又はこれに類似する商標を付した衣料品の販売を行っている。このことは、ニスクジャパンが本件商標又はこれに類似する商標を付した被服を販売した際に、請求人が同社に送付した通告書に対する同社からの回答書及びその添付資料である覚書からも明らかである(甲9の1ないし7)。
ウ 引用商標の著名性
請求人は、米国の大手アパレル企業であるヘインズブランズ・インクが、同社が展開する商品に係る商標を管理することを目的として設立した同社の100%子会社である。親会社であるヘインズブランズ・インクは、米国ニューヨーク株式市場に上場し、我が国をはじめ世界各国に拠点を有するグローバル企業である。ヘインズブランズ・インクは複数の著名ブランドの商品を世界的に展開しているところ、このうち、同社の社名にもなっている「ヘインズ(Hanes)」に次ぐ大きなブランドとなっているのが「チャンピオン(Champion)」である(甲10)。
チャンピオンブランドの商品は、1919年にサイモン・フェインブルーム氏が米国にてセーター等の販売を始めたことに端緒を有し、同氏の息子達が事業を引き継いだ1920年代初頭に、「Champion」の名称を付したシャツ等を販売し始めた。その後、全米の大学や米海軍との取引等を通じて、チャンピオンブランドの商品は米国全土で広く知られるようになった。
1969年には、後に「Cマーク」あるいは「Cロゴ」と一般的に呼ばれるようになる、Championの頭文字である欧文字の「C」の内部中央に太い縦線を配した引用商標1ないし3と同一のロゴデザイン(以下「Cロゴ」という。)が編み出された(甲11)。Cロゴの誕生以降は、配色等に若干のバリエーションはあるものの、上記を基本的構成とするロゴマークが、製品のワンポイントマークやラベル、下げ札等にほぼ必ず付されるようになり、ブランドの製品であることを示すシンボルマークとして現在まで一貫して使用されている。特に、1989年以降は、チャンピオンブランドの主力商品であるスウェットシャツ及びTシャツの左袖や胸部分に、(Cロゴの中でも特に)引用商標3と同一のロゴデザインがほぼ必ず付されるようになった。
さらに、1970年代より、ブランドを表示するロゴとして、引用商標4又は5が非常に頻繁に用いられている。また、引用商標1ないし3のいずれかを上段に、引用商標4又は5を下段に組み合わせたコンビネーションロゴも同様に非常に頻繁に用いられている(甲10、甲11)。
このように、引用商標を付したチャンピオンブランドの商品は、米国のみならず、全世界において人気を博するようになった。我が国でも、1970年代にライセンシーである株式会社ゴールドウィンを通じてチャンピオンブランドのスポーツウェアが販売されたことを皮切りに、その後、様々なライセンシー又はヘインズブランズ・インクの日本法人(その前身を含む。)を通じて、スポーツウェア、カジュアルウェアをはじめ、バッグ、パジャマ、タオル等の幅広い商品に引用商標を付したチャンピオンブランドの商品が販売されるに至った(甲10)。
ヘインズブランズ・インクやその日本法人を含む関連会社ないしはライセンシーは、これらの商品について、主に雑誌やテレビコマーシャルを通じた精力的な宣伝広告活動を行ってきた。たとえば、本件商標が出願された2009年前後のチャンピオンブランド商品につきヘインズブランズ・インクが米国国内において支出した宣伝広告費用は、2006年に約60万米ドル、2007年に約780万ドル、2008年に約990万ドル、2009年に約1470万ドル、2010年に約1200万ドル、2011年に約1190万ドルにも及ぶ。また、日本国内においても、2007年から2009年にかけて、ヘインズブランズ・インクの日本法人単独でテレビ番組のスポンサーとなり、テレビコマーシャルの放映が行われた。その費用として上記日本法人は総額で約2億9000万円を支出した。さらに、日本国内においてはこれとは別に、上記日本法人による著名スポーツイベントの主催や各ライセンシーによる独自の宣伝広告が行われている(甲10)。
これに加え、引用商標を付したチャンピオンブランドの商品や、かかる商品を着用した著名人が、テレビや雑誌等の刊行物で頻繁に紹介され、あるいはこれらに頻繁に登場してきた。
例を挙げると、米国では、1992年のバルセロナオリンピックにおいて、「ドリームチーム」と呼ばれた男子バスケットボール米国代表チームの公式ユニフォームにチャンピオンが選ばれ、引用商標を付したユニフォームを着用したマイケル・ジョーダンやマジック・ジョンソンをはじめとした著名選手が活躍する姿はテレビ放送や新聞その他を通じて全米に放映・報道され、全米で発売される雑誌の表紙に掲載される等した(甲10)。
また、日本国内においても、請求人が証拠を有するものだけでも、2002年に雑誌に1回、2003年にはテレビ放送に7回、雑誌に6回、繊維業界向け新聞(業界新聞)に6回、2004年にはテレビ放送に11回、雑誌に21回、業界新聞に3回、2005年にはテレビ放送に15回、雑誌に14回、業界新聞に3回、2006年にはテレビ放送に12回、雑誌に9回、一般書籍に2回、2007年にはテレビ放送に34回、雑誌に18回、業界新聞に4回、2008年にはテレビ放送に46回、雑誌に99回、業界新聞に7回、一般書籍に1回、2009年には5月1日までにテレビ放送に21回、雑誌に44回、業界新聞に1回、引用商標を付したチャンピオンブランドの商品あるいは当該商品を着用した著名人が紹介あるいは登場している(甲12の1)。また、これとは別に、請求人が証拠を有するものだけでも、2002年に雑誌に1回、2003年にはテレビ放送に2回、雑誌に2回、2004年にはテレビ放送に11回、雑誌に2回、業界新聞に3回、2005年にはテレビ放送に2回、業界新聞に3回、2006年には雑誌に1回、業界新聞に1回、2007年にはテレビ放送に2回、雑誌に1回、引用商標4又は5を付したチャンピオンブランドの商品や当該商品を着用した著名人、請求人のグループを表すロゴとしての引用商標4又は5それ自体が紹介あるいは登場している(甲12の2)。
これらには、NHKの朝の連続テレビ小説をはじめとした全国放送の連続ドラマやバラエティ・情報番組、全国で発売される著名な服飾関係の雑誌が多く含まれる。
ヘインズブランズ・インク及び日本法人を含む関連会社、ライセンシーによる精力的な宣伝広告活動や、テレビや雑誌等の刊行物で頻繁に紹介された効果もあり、チャンピオンブランド商品の売上高は米国及び我が国において高い水準で維持されており、米国では2005年から2011年にかけて毎年2億ドル強の売上をあげた。我が国でも、ヘインズブランズ・インクの日本法人によるチャンピオンブランド商品の販売売上とライセンス収入の合計額は、2003年から毎年30億円を超え、2011年には50億円を超えている(甲10)。また、「スポーツアパレル産業白書」の「ブランド別国内出荷金額ランキング」において、チャンピオンブランドの商品は、少なくとも2004年以降毎年上位にランクされ、その金額は2010年まで毎年50億円を下回っていない(甲13の1ないし4)。なお、出荷金額はスポーツウェアのみの金額であり、他のライセンス製品についての金額は含まれない。これを含んだ場合には出荷金額はより大きくなる。
以上のとおり、引用商標を付したチャンピオンブランド商品が多数販売されたことに加えて、ヘインズブランズ・インク及び日本法人を含む関連会社、ライセンシーによる宣伝広告活動、さらには、引用商標を付したチャンピオンブランド商品がテレビや雑誌等の刊行物で頻繁に紹介されていたことを通じて、引用商標は我が国のみならず世界的(特に米国)にみても、請求人を含むヘインズブランズグループの業務に係る商品を表すものとして、取引者、需要者の間に広く認識され、かつ著名なものとなっており、非常に強い顧客吸引力を取得するに至っている。
なお、2006年に実施されたインターネット調査においては、引用商標(Cロゴ及びChampionの筆記体欧文字からなるロゴ)を認知している割合は、男性、女性ともほぼ100%であった(甲14)。これは引用商標の周知著名性を裏付けるものである。
エ ニスクジャパンによる本件商標の使用態様
前述のとおり、本件商標は、上段に、下辺に比して上辺が右方向に延びた欧文字の「C」状図形と、当該図形に比べやや小さい欧文字の「E」状図形をやや右下に並べて配置し、下段に、「Champ Euro」(CとEのみ大文字)の欧文字を配置した結合商標であるところ、ニスクジャパンは、実際には以下に述べるような態様で、本件商標を指定商品である被服あるいはその宣伝広告に使用している。
(ア)使用例1
ニスクジャパンは、平成23年11月、甲第15号証の写真に記載された長袖ポロシャツを販売した(甲16)。同製品の下げ札には、上段に、上辺と下辺の長さが同一の欧文字の「C」状図形を青色の太い線で表し内部が赤色に塗りつぶされた図形と、両端が先細りとなった青色の太い線を上辺及び下辺に、青色の菱形状の図形を真ん中で分断してできた右半分を左辺及び真ん中の辺にそれぞれ模すことにより構成された欧文字の「E」状図形とが、赤色の細い線を挟んで左右に並べて配置されている(以下、両図形の組み合わせを「使用例1標章」という。)。さらに、その下には「Champ euro」と青色の筆記体で記載したデザイン文字(ただし、頭文字の「C」部分には使用例1標章が配されている。)が配され、その右横には登録商標であることを示す記号「○R」(審決注:円内に「R」が配されたもの。以下同じ。)が付されている。
また、同製品の左胸部には、上記「Champ euro」の筆記体デザイン文字(ただし青色部分が全て黒色に変更されている)が「○R」とともに刺繍されている。左袖部には、使用例1標章(ただし青色部分が全て黒色に変更されている。)が刺繍されている。
(イ)使用例2
ニスクジャパンは、平成23年11月、甲第17号証の写真に記載されたスウェット上下(スウェットシャツ及びスウェットズボン)を販売した(甲16)。同製品のうちスウェットシャツの襟首部及び両製品の下げ札には、上段に、上辺と下辺の長さが同一の欧文字の「C」状図形を白色の太い線で表し内部が赤色に塗りつぶされた図形と、両端が先細りとなった白色の太い線を上辺及び下辺に、白色の菱形状の図形を真ん中で分断してできた右半分を左辺及び真ん中の辺にそれぞれ模すことにより構成された欧文字の「E」状図形とが、赤色の細い線を挟んで左右に並べて配置されている(以下、両図形の組み合わせを「使用例2標章」という。)。さらに、その下には「Champ euro」と白色の筆記体で記載したデザイン文字(ただし、頭文字の「C」部分には使用例2標章が配されている。)が配され、その右横には登録商標であることを示す記号「○R」が付されている。
また、スウェットシャツの左胸部、襟首周辺部及び織りネーム、並びにスウェットズボン左前腰部及び右臀部には、上記「Champ euro」の筆記体デザイン文字が「○R」とともに刺繍ないしプリントされている。スウェットシャツの左袖部には、使用例2標章が刺繍されている。
(ウ)使用例3
ニスクジャパンは、平成23年12月、甲第18号証の写真に記載されたベンチコートを販売した(甲19)。同製品の下げ札には、上段に、上辺と下辺の長さが同一の欧文字の「C」状図形を白色の太い線で表し内部が赤色に塗りつぶされた図形と、両端が先細りとなった白色の太い線を上辺及び下辺に、白色の菱形状の図形を真ん中で分断してできた右半分を左辺及び真ん中の辺にそれぞれ模すことにより構成された欧文字の「E」状図形とが、赤色の細い線を挟んで左右に並べて配置されている(以下、両図形の組み合わせを「使用例3標章」という。)。さらに、その下には「Champ euro」と白色の筆記体で記載したデザイン文字(ただし、頭文字の「C」部分には使用例3標章が配されている)が配され、その右横には登録商標であることを示す記号「○R」が付されている。
また、同製品の背面部には、上記「Champ euro」の筆記体デザイン文字が「○R」とともに付されている。左胸部には、使用例3標章が付されている。
(エ)使用例4
ニスクジャパンは、主に繊維関係業者向けに株式会社信用交換所大阪本社が発行している「信用情報(繊維版)」第12034号(平成22年2月17日発行)に自社の広告を掲載した(甲20)。同広告においては、一続きの筆記体欧文字(「champ」と「euro」の間は連続している。)からなる「Champeuro」のデザイン文字(ただし、頭文字の「C」部分には、欧文字の「C」状図形の内部に菱形を想起させる図形を配した図形が配されている。)が記載され、その上段には上記の欧文字の「C」状図形の内部に菱形状の図形を配した図形が記載されている。また、罫線を挟んで下部に「チャンピオンユーロ」の片仮名文字が併記されている。
(オ)使用例5
ニスクジャパンは、甲第21号証の写真に記載の長袖Tシャツを販売している。同製品には、青色の筆記体欧文字からなる「Champ euro」のデザイン文字(ただし、頭文字の「C」部分は、両端が先細りとなった欧文字の「C」状図形を青色の太い線で表し、当該「C」状図形の内部中央に、菱形又は十字形を想起させる赤色の図形を配し、かつ、「C」状図形を構成する青色の太い線の外周に近い部分の一部に細い白線を施した構成からなる標章(以下「使用例5標章」という。)が配されている。)が、左胸部、襟首部分及び織りネームに付されている。左胸部及び襟首部分に付された上記デザイン文字には、登録商標であることを示す「○R」が併記されている。
また、当該製品の腰部には、上記デザイン文字(登録商標であることを示す「○R」も併記)の上段に使用例5標章を配置するとともに、「IT TAKES A LITTLE MORE TO MAKE A CHAMPION」の欧文字からなるロゴ、「ONLY CHAMPION AUTHENTIC APPAREL EEARS THIS※MARK」(※は使用例5標章の外周の細い白線が存しないデザイン文字)との文字が併記されている。
(カ)上に述べた各使用例で用いられている筆記体欧文字からなる「Champ euro」あるいは「Champeuro」のデザイン文字は、いずれも「チャンプユーロ」の称呼を生じさせるものであり、本件商標の下段文字部分の称呼と同一である。そして、「Champ」という語が「優勝者」あるいは既に日本語として定着した「チャンピオン」の略称であること、「euro」が「ヨーロッパ」を意味する語であることは、我が国でも一般に広く認識されていることに照らせば、「Champ euro」、「Chameuro」、「Champ Euro」はいずれも「ヨーロッパの優勝者」、「ヨーロッパのチャンピオン」の観念を意味する。したがって、上記「Champ euro」あるいは「Champeuro」のデザイン文字には本件商標との類似性が認められる。
また、使用例1標章、使用例2標章、使用例3標章については、欧文字の「C」状図形と欧文字の「E」状図形から成り、外観において本件商標の上段部分と共通するし、「シーイー」あるいは「シイイイ」の称呼を生じさせる点でも共通する。使用例1ないし3においては、これらの標章を上段に、下段に筆記体欧文字からなる「Champ euro」のデザイン文字を配して一つの標章として用いられているものがあり、全体として「シーイー/チャンプユーロ」あるいは「シイイイ/チャンプユーロ」の称呼を生じさせるものであり、この点本件商標と共通する。したがって、これらの標章と本件商標とは類似性が認められる。
オ 需要者及び流通経路の共通性
本件商標と引用商標1ないし3はいずれも被服あるいは洋服を指定商品とする点で共通する(甲1ないし同4)。また、引用商標4及び5も被服を含む商品に用いられている。一般論として、被服あるいは洋服のような日常的に消費される性質の商品の主たる需要者は、商標やブランドにつき特別の専門的知識を有しない一般消費者であることが通常である。
具体的にみても、両商標に係る商品の需要者は完全に一致する。すなわち、前記のとおり、ニスクジャパンは、本件商標又はこれに類似する商標を付した商品として、少なくとも、ポロシャツ、スウェットシャツ、スウェットパンツ、ベンチコートを販売している(甲22)。
他方、ヘインズブランズ・インク及びその関連会社、ライセンシーは、引用商標を付したポロシャツ、スウェットシャツ、スウェットパンツ、ベンチコートを含む被服を幅広く販売している(甲23、甲24、甲25)。これらの商品は、老人から若者までを含む、商標やブランドについて特別の専門的知識を有しない一般消費者により、購入・着用されており、両商標に係る商品の需要者は完全に一致する。
また、両商標に係る商品の流通経路も共通している。ニスクジャパンは、本件商標を使用した商品を、自社ホームページを通じた直接のインターネット販売を行うほか(甲22)、スーパーマーケット、ディスカウントストアといった量販店、インターネット上にウェブショップを運営する衣料品販売業者などに販売し、これらの業者が店舗やインターネットを通じて一般消費者に対して販売を行っている(甲9の1)。引用商標を付したチャンピオンブランド商品も、ヘインズブランズ・インクの日本法人やライセンシーによるインターネット直販サイト(甲23)や量販店などに加え、インターネット上のウェブショップなどで、一般消費者に対して販売されている(甲10、甲28)。
一般消費者は、商品の購入に際し、メーカー名などについて常に注意深く確認するとは限らず、小売店やインターネット上の販売サイトで短時間のうちに購入商品を決定することが少なくないことが容易に予想される。
カ 混同のおそれ
商標法第53条第1項が需要者の利益の保護をも目的としていることに鑑みれば、同項にいう「混同を生ずるものをしたとき」とは、現実の混同が生じた場合のみならず、混同のおそれがある場合をもその対象としていると解すべきである(昭和60年2月15日 最判平成59年(行ツ)第8号)。
前述(4)エのとおり、通常使用権者であるニスクジャパンは、本件商標又はこれと類似する商標を、指定商品である被服等に使用している。しかし、以下に述べるように、引用商標の著名性、ニスクジャパンによる本件商標の使用態様、本件商標と引用商標に係る商品の需要者及び流通経路の共通性にかんがみれば、かかる使用は請求人を含むヘインズブランズグループの業務に係る商品との出所の混同を生じさせるおそれがある。
すなわち、使用例1では、本件商標に類似するものの、その外観を引用商標に近づける形に変更した標章が用いられている。具体的に言えば、使用例1では、使用例1標章と「Champ euro」のデザイン文字を上下に配した標章が用いられているところ、まず、使用例1標章については、本件商標の上段部分と同様「C」状図形と「E」状図形により構成されているものの、本件商標では、「C」状図形と「E」状図形が明確に分離され、後者は前者よりやや小さい大きさで前者のやや右下に配置されているのに対し、使用例1標章では、「C」状図形と「E」状図形はほぼ同じ大きさで表され、細い赤線を挟んで両図形が結合するように配置されている。その結果、「C」状図形と「E」状図形とが一体となって一つの「C」状の図形を構成するかのような印象を与えている。そして、使用例1標章では「C」状図形の内部が赤色に塗りつぶされていることもあり、使用例1標章それ自体が、引用商標2あるいは3と紛らわしい外観となっている。
次に、「Champ euro」のデザイン文字については、本件商標の下段部分と同一のアルファベットで構成されているものの、本件商標では、「Champ Euro」が活字体で記載され、かつ「E」が大文字で表されることにより、「Champ」と「Euro」とが明確に2つの語に切り分けられた印象を与えるのに対し、使用例1におけるデザイン文字は、「Champ euro」と筆記体で記載され、「E」は小文字で表されている。のみならず、頭文字の「C」には引用商標2あるいは3と紛らわしい外観を有する使用例1標章が配されている。その結果、上記デザイン文字は全体として、引用商標4又は5と極めて紛らわしい外観となっている。そのため、仮にこれが衣料品に関連して使用された場合には、その取引者、需要者の多くが一般消費者であって格段高度な注意力を有しないことに加え、日本人の一般的な英語力にかんがみれば、筆記体で書かれた「euro」の部分を「ion」と一目で区別できない可能性は否定できない。
なお、本件商標は上段の「C」状図形及び「E」状図形と、下段の「Champ Euro」の欧文字からなる結合商標であるが、使用例1の商品上は、上段と下段を切り離し、使用例1標章単独で、あるいは、「Champ euro」のデザイン文字単独で、別々に使用されている。
また、使用例1では、使用例1標章と「Champ euro」のデザイン文字とが組み合わされた標章は下げ札に付されているところ、チャンピオンブランド商品では、引用商標1ないし3のいずれかと引用商標4又は5とを上下に配したコンビネーションロゴを下げ札に付されることが多い(甲10、甲25)。
使用例2でも、本件商標に類似するものの、その外観を引用商標に近づける形に変更した標章が用いられている。具体的に言えば、使用例2では、使用例2標章と「Champ euro」のデザイン文字を上下に配した標章が用いられているところ、まず、使用例2標章については、使用例1標章と同様、「C」状図形と「E」状図形がほぼ同じ大きさで表され、細い赤線を挟んで両図形が結合するように配置されている点で本件商標と異なる。その結果、「C」状図形と「E」状図形とが一つの「C」状の図形を構成するかのような印象を与え、左半分の「C」状図形の内部が赤色に塗りつぶされていることもあり、使用例2標章それ自体が、引用商標2あるいは3と紛らわしい外観となっている。
次に、「Champ euro」のデザイン文字については、本件商標の下段部分と同一のアルファベットで構成されているものの、使用例1の場合と同様、使用例2におけるデザイン文字は、「Champ euro」と筆記体で記載され、「E」が小文字で表されている点で本件商標と異なる。のみならず、頭文字の「C」には引用商標2あるいは3と紛らわしい外観を有する使用例2標章が配されている。その結果、上記デザイン文字は全体として、引用商標4又は5と紛らわしい外観となっている。
なお、本件商標は上段の「C」状図形及び「E」状図形と、下段の「Champ Euro」の欧文字からなる結合商標であるが、使用例2の商品上は、上段と下段を切り離し、使用例2標章単独で、あるいは、「Champ euro」のデザイン文字単独で、別々に使用されている。
また、使用例2では、使用例2標章と「Champ euro」のデザイン文字とが組み合わされた標章は下げ札に付されているところ、前述のとおり、チャンピオンブランド商品では、引用商標1ないし3のいずれかと引用商標4又は5とを上下に配したコンビネーションロゴを下げ札に付されることが多い(甲10、甲25)。
この点は使用例3でも同様である。具体的に言えば、使用例3では、使用例3標章と「Champ euro」のデザイン文字を上下に配した標章が用いられているところ、まず、使用例3標章については、使用例2標章と同様の理由から、それ自体が引用商標2あるいは3と紛らわしい外観となっている。「Champ euro」のデザイン文字についても、使用例2の場合と同様の理由から、全体として、引用商標4又は5と紛らわしい外観となっている。
なお、本件商標は上段の「C」状図形及び「E」状図形と、下段の「Champ Euro」の欧文字からなる結合商標であるが、使用例3の商品上は、上段と下段を切り離し、使用例3標章単独で、あるいは、「Champ euro」のデザイン文字単独で、別々に使用されている。
また、使用例3でも、使用例3標章と「Champ euro」のデザイン文字とが組み合わされた標章は下げ札に付されているところ、前述のとおり、チャンピオンブランド商品では、引用商標1ないし3のいずれかと引用商標4又は5とを上下に配したコンビネーションロゴを下げ札に付されることが多い(甲10、甲25)。
使用例4では、「Champeuro」の筆記体デザイン文字が用いられているところ、当該デザイン文字は、本件商標の下段部分の文字と異なり、「Champeuro」と「E」を小文字で表したうえで「p」と「e」の間に切れ目がなく一続きの筆記体で記載されている。そのため、本件商標の場合と異なり、「Champ」部分と「euro」部分とは明確に切り分けられず、まとめて一語を表しているかの印象を特に与える。のみならず、頭文字の「C」には、欧文字の「C」状図形の内部に太い縦線が配置されている点でCロゴと共通する図形が配されている。その結果、上記デザイン文字は全体として、引用商標4又は5と紛らわしい外観となっている。
上記デザイン文字に加え、その上段には、Cロゴと同様、欧文字の「C」状図形の内部に太い縦線が配された図形を配置し、かつ、下段には、「チャンピオン ユーロ」の日本語文字が併記されている。また、上記デザイン文字は「チャンプユーロ」、「チャンペウロ」ないし「チャンピューロ」等としか読めないにもかかわらず、あえて「チャンピオン ユーロ」という、ニスクジャパンが自社のオリジナルブランドであると標榜する「チャンプユーロ」(甲22)の称呼と異なり、より直接的に「チャンピオン」の文字を含む日本語表記をしている。
使用例5では、「Champ euro」の筆記体デザイン文字が用いられている。当該デザイン文字は、本件商標の下段部分の文字と異なり、「Champ euro」と筆記体で記載され、「E」は小文字で表されている。のみならず、頭文字の「C」には、青色の太い線で表した「C」状図形と赤色の菱形又は十字形を想起させる図形により構成され、その全体的な輪郭や色彩の共通点から引用商標3と紛らわしい外観を有する使用例5標章が配されている。その結果、上記デザイン文字は全体として、引用商標4又は5と紛らわしい外観となっている。
加えて、「IT TAKES A LITTLE MORE TO MAKE A CHAMPION」の欧文字からなるロゴは、請求人の登録商標(第3295061号)であり(甲29)、チャンピオンブランドの商品に頻繁に付される標章である(甲30)。なお、言うまでもなく、使用例5における当該ロゴの使用は請求人の商標権を侵害するものである。さらに、「ONLY CHAMPION AUTHENTIC APPAREL EEARS THIS※MARK」という文字は、「チャンピオンの真正なアパレル製品のみが※マークを表示する」との意味の英文である(「EEARS」は「BEARS」の誤記と思われる。)。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは使用されている商品が重複し、かつ、その主たる需要者はいずれも商標やブランドにつき特別の専門的知識経験を有しない一般消費者であることに加え、流通経路も共通する。かかる状況下で、ニスクジャパンは、本件商標又はこれと類似するも引用商標と紛らわしい外観に変容した商標を、チャンピオンブランドの商品において通常用いられているデザイン文字や請求人の登録商標と併せて、かつ、チャンピオンブランドの商品におけるそれと似通った態様にて使用している。かかる使用態様の下では、本件商標又はこれに類似する商標に接した需要者たる一般消費者は、著名な商標である引用商標を連想する蓋然性が高く、請求人を含むヘインズブランズグループの業務にかかる商品であるとの誤認混同を生ずるおそれがある。
実際に、需要者において混同が生じている例もある。甲第31号証は、平成22年8月にインターネットオークションサイトでニスクジャパンが製造した商品が出品されていたページの写しである。当該商品には、右前腰部等に本件商標と紛らわしい外観を有する標章が付される等しており、その使用態様は前記使用例5等に類似しているところ、当該商品を出品するに際し、出品者は「CHAMPION 薄手ポロ」と商品名を表記していた。これは出品者において、本件商標を付した商品をヘインズブランズグループの業務に係る商品と実際に混同していたことを示す一例であり、混同のおそれの存在を強く推認させる事情と言える。
なお、被請求人は、ラコステやシャネルといった世界的なファッションブランドの著名商標と紛らわしい図形を商標登録し、商標の無効審判や登録異議申立をファッションブランドより受けて、登録を無効化あるいは取り消されたことがある(甲32、甲33)。本件商標とは別事件ではあるが、被請求人が恒常的に有名ブランドヘのフリーライドを企図する企業であること、ひいては被請求人と実質的に一体であるニスクジャパンが混同を生じさせようとする意思を有していたことを推認させるものであり、混同のおそれの存在を高める事情といえる。
(5)結語
以上の理由から、本件商標は、商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきものである。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
(1)商標法第53条第1項の規定の適用について
この規定が指定商品との関係において適用されるのは、次の条件を満足する場合である。ただし、商標権者がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたときはこの限りではない、とされている。
a)本件商標の通常使用権者が指定商品又はこれに類似する商品について本件商標又はこれに類似する商標の使用であること、及び
b)商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたこと、である。
したがって、この規定に基づいて商標登録が取り消されるのは、「品質の誤認や商品の出所の混同」の原因が「本件商標又はこれに類似する商標の使用」である場合に限られ、それ以外の事由は本項の適用条件を満足しないことになる。
(2)引用商標について
引用商標1ないし3は、請求人が「Cロゴ」と称している商標であり、被請求人は、引用商標1ないし3が商品スウェットシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ユニホーム、ベンチコート、帽子については、需要者の間で広く認識されている商標であることについては争わない。しかし、提出された証拠からは、それら以外の商品について需要者の間で広く認識されている商標であると認めることはできない。
引用商標4は、引用商標3と同一の図形に欧文字「hampion」を結合させた構成の商標であるが、その指定商品は第18類「鞄類、袋物、傘」及び第25類「履物(げた、草履類を除く。)」であって、被請求人の販売している商品とは非類似の商品である。また、引用商標5は、引用商標2と同一の図形に欧文字「hampion」を結合させた構成の商標であるが、その指定商品は第9類「眼鏡」であって、この商標も、被請求人の販売している商品とは非類似の商品である。提出された証拠からは、引用商標4、5が需要者の間で広く認識されている商標であると認めることもできない。
なお、請求人は、引用商標2と同一の図形に欧文字「hampion」とを結合させた構成の商標について登録出願(指定商品:第25類「被服,運動用特殊被服(剣道衣,柔道衣,空手衣を除く。)」)をしたが、先願先登録商標である登録第482726号商標「CHAMPION+図形」及び登録第522909号商標「Champion」に類似するとして拒絶審決が下されている(乙1)。請求人の使用商標は、他人の登録商標と抵触する状態で使用されている点に留意しておくべきである。
(3)ニスクジャパンの商標の使用
ア ニスクジャパンは、本件商標の通常使用権者である。
本件商標は、「上片を右方向に延ばし太ゴチック体で表した欧文字Cと、その右下に同じく太ゴチック体で小さく表した欧文字Eとを組み合わせた構成の文字図形(以下単に「本件上段標章」という。)を上段に、ゴチック体で表した欧文字『Champ Euro』(以下「本件下段標章」という。)を下段に配置した商標」である。
イ 使用例1について
(ア)使用例1は、長袖ポロシャツに使用された商標である。
使用例1の第1標章は、「黒色又は青色の太い線で表したC字をモチーフにした図形を左側に、右向きに頂部を位置させた三角片の上下の底端から右向きに先細り線を略円弧状に突出させた黒色又は青色のE字をモチーフにした図形を右側に位置させ、両者を赤い縦線を介して結合一体化すると共に、左側の図形の内側を赤色で塗りつぶした」構成のものである。
ところで、欧文字二文字は、その文字だけでは商品識別力を発揮するとは認められないが、それを図案化ないし図形化することによって識別力が発揮される場合がある。この場合、文字が図案化ないし図形化された形態において識別力が発揮されると認められるのである。
本件上段標章においては、ゴチック体からなるC字の形態に変更を加えると共に、これとゴチック体からなるE字とを特別な配置関係に置くことによって識別力が認められ、他方、上記第1標章は、上記の構成によって、識別力が生じていると認められるのである。
第1標章は、欧文字CとEとをモチーフにしているものの、標章の構成要素に変更が加えられて全体として融合一体化し、上記文字を個別に認識することはできず、本件上段標章とは外観上全く相違する標章となっているし、特別の観念が生じることもない。したがって、本件上段標章と第1標章とは非類似の商標であるといわなければならない。
(イ)使用例1における第2標章は、第1標章を小さく表し、その右側に欧文字「hamp euro」を表した商標である。
本件下段標章である欧文字「Champ Euro」からは「チャンプユーロ」なる称呼が自然に発生する。ところが、「Euro」は「欧州の」を意味する接頭語であるが、本件下段標章ではこの用語を語尾に結合させているから、この標章からは明確な意味を感取できないといわなければならない。
しかし、第1標章は、請求人も主張しているように、欧文字CとEとをモチーフにしているものの、図形全体としてはその構成要素が融合一体化していて、本件下段標章とは外観が全く相違するものとなっているから、取引者需要者は、この標章を構成している左端の図形から欧文字Cを認識することができないことは明らかである。また、第2標章からは、欧文字「hamp euro」に対応して「ハンプユーロ」なる称呼が生じるだけであって、格別の観念が生じることもない。
したがって、本件下段標章と使用例1における第2標章とは、外観、観念、称呼のいずれにおいても相違するから、非類似の標章である。
(ウ)そうすると、使用権者が使用している使用例1の商標は、本件商標と同一又は類似の商標であるとすることができず、商標法第53条第1項が規定する「本件商標の通常使用権者が指定商品又はこれに類似する商品について本件商標又はこれに類似する商標の使用」に当たらない。
ウ 使用例2について
(ア)使用例2は、スウェットシャツ・ズボンに使用された商標である。
使用例2の第1標章は、「白色の太い線で表したC字をモチーフにした図形を左側に、右向きに頂部を位置させた三角片の上下の底端から右向きに先細り線を略円弧状に突出させた白色のE字をモチーフにした図形を右側に位置させ、両者を赤い縦線を介して結合一体化すると共に、左側の図形の内側を赤色で塗りつぶした」構成の標章である。また、この第1標章を小さく表し、その右側に欧文字「hamp euro」を表した標章(使用例2の第二標章)を配置している。
(イ)この使用例2の商標は、使用例1の第1標章及び第2標章における黒色又は青色部分を白色に変更した商標であり、それ以外の商標の構成は同一である。
したがって、使用権者が使用している使用例2の商標も、本件商標と同一又は類似の商標であるとすることができず、商標法第53条第1項が規定する「本件商標の通常使用権者が指定商品又はこれに類似する商品について本件商標又はこれに類似する商標の使用」に当たらない。
エ 使用例3について
使用例3は、ベンチコートに使用された商標である。この商標は、使用例2の商標と同一構成・色彩のものであるから、使用権者が使用している使用例3の商標も、本件商標と同一又は類似の商標であるとすることができず、商標法第53条第1項が規定する「本件商標の通常使用権者が指定商品又はこれに類似する商品について本件商標又はこれに類似する商標の使用」に当たらない。
オ 使用例4について
(ア)使用例4は、広告に使用されている図形である。請求人は、下記aないしcの構成からなる図形の右側に、この図形の約4分の1の大きさで欧文字「hamp euro」を表した構成のもの(使用例4標章)、並びにその下に罫線を挟んで併記された「チャンピオンユーロ」の仮名文字が本件商標の使用であるとしている。
a 左側に屈曲部を位置させて肉太線で馬蹄形を表し、右側に位置する両端部をやや細くして先端部に丸みを持たせ、上下の端部を同じ長さに構成し、
b 左右に三角状の突起を設けた連結片を馬蹄形の内側で中央よりやや左寄りに配置し、左側の突起の先端を左側の屈曲部の内側に近接させ、
c 商標の全外縁が二重の輪郭となるように、外縁の内側に白線を全長にわたって表した。
(イ)しかし、請求人が使用例としている標章は、いずれも商品との関係において使用されていないため、商標の使用であるとすることはできない。
(ウ)蛇足ながら、使用例4標章は肉太線で形成され、その右側に位置する両端部が同じ長さに形成され、連結片の左側の突起の先端は屈曲部の内側に近接させた構成であるから、取引者需要者は、その右側に表された各文字の約4倍の大きさであることも手伝って、この図形から右側の文字列に同化させて欧文字「C」を感取することはなく、右側に表された欧文字「hamp euro」と結合して「Champ euro」なる欧文字が表現されていると認識することはない。
また、「チャンプユーロ」なる文字は、イ(イ)において説明したように、明確な意味を持たないから、本件商標とは無関係な表示である。
カ 使用例5について
(ア)使用例5は、長袖Tシャツに使用されている商標である。この商標は、下記aないしdの構成からなる図形の右側に、この図形の約7分の1の大きさで欧文字「hamp euro」を表した構成のもの(使用例5標章)である。
a 左側に屈曲部を位置させて黒色の細い線で縦横の比率を1:2とした横長の楕円弧を表し、
b 屈曲部から右側に位置する両先端部に向かって徐々に細くして先端部に丸みを持たせると共に上下の端部を同じ長さに構成し、
c 楕円弧の内側中央に赤い大きな菱形を配置してその上下の先端角部を楕円弧に接触させて、
d 楕円弧の外側の縁部が二重の輪郭となるように、縁部の内側に白線を全長にわたって表した。
(イ)上記の使用例5標章は、細い線で縦横の比率を1:2とした横長の楕円弧が形成され、その右側に位置する両先端部が同じ長さに形成され、楕円弧の内側中央に赤い菱形を配置すると共に、外側の縁部が二重の輪郭に形成されている。したがって、使用例4標章と同様に、図形の右側に表された文字が極端に小さく表示されているため、取引者・需要者は、文字列に同化させて左側に位置している図形を欧文字「C」であると認識することはなく、図形と右側に表された欧文字「hamp euro」とを結合して「Champ euro」なる欧文字を表現していると認識することもないといわなければならない。
(ウ)使用権者が使用している使用例5の商標も、本件商標と同一又は類似の商標であるとすることができず、商標法第53条第1項が規定する「本件商標の通常使用権者が指定商品又はこれに類似する商品について本件商標又はこれに類似する商標の使用」に当たらない。
(エ)なお、請求人は使用例5において、「IT TAKES……CHAMPION」の欧文字からなるロゴ、「ONLY……MARK」の欧文字が記載されていることを主張しているが、これらの記載は、本件商標と同一又は類似とはいえないから、本件商標の使用とは無関係である。
(4)使用例1ないし5と出所の混同ついての請求人の主張に対する答弁
ア 「C」ロゴの認識について
(ア)請求人は、(3)項に記載した使用例1ないし5における各図形とその右側に表された欧文字「hamp euro」とが結合して、被請求人の使用している商標が「Champ euro」なる欧文字を表現したものであると主張している。
(イ)請求人は、各引用商標が「Cの内部中央に太い縦線を配した構成」を請求人の基本的なロゴデザインとし、宣伝広告に努めた結果、「チャンピオン社のボディに欠かせないCマーク」、「チャンピオンの顔であるCマーク」と称せられ、「ひと目でチャンピオンのスウェットシャツであることがわかるデザインである」との評価を受け、「2006年のインターネット調査においてはCロゴ(引用商標)の認知されている割合は、男性、女性ともほぼ100%」であった、と主張している。
そうすると、請求人の商品を購入しようとする者は、請求人のブランドが「C」ロゴであると明確に認識して購入していることになるから、引用商標に接した取引者需要者は、請求人の商品と請求人以外の商品とをそれぞれのブランドによって明確に識別することになる。換言すれば、引用商標であるからこそ、その図形を「C」であると認識しているのである。
(ウ)使用例1ないし5における各図形とその右側に表された欧文字「hamp euro」とが結合して「Champ euro」なる欧文字を表現している、との請求人の主張は、被請求人の図形が一般的に「C」字形であると理解されているはずであるとの誤解に基づいていると思料される。
被請求人の使用例1ないし5の図形商標は、引用商標に比べ知名度はなく、したがって「C」ロゴと称せられる類のものではない。
イ 使用例1ないし3の図形商標について
(ア)被請求人は、使用例1ないし5の図形商標がいずれも本件商標と同一又は類似の商標ではないことについて、すでに説明をした。
請求人は、使用例1ないし3の図形商標(第1標章)の使用が請求人の業務に係る商品と混同を生じさせると主張しているので、これに対して答弁する。
(イ)使用例1の第1標章は、(3)イ(ア)に記載したように、「黒色又は青色の太い線で表したC字をモチーフにした図形を左側に、右向きに頂部を位置させた三角片の上下の底端から右向きに先細り線を略円弧状に突出させた黒色又は青色のE字をモチーフにした図形を右側に配置し、両者を赤い縦線を介して結合一体化すると共に、左側の図形の内側を赤色で塗りつぶした」構成のものである。
他方、引用商標1ないし3は、「比較的細い線でC字形を表し、右向きの両端側を先細り状に形成し(引用商標1の上側の端部だけは丸みを持たせ)、C字形の中央よりやや右寄りに帯状連結片を配置し、引用商標1、3については、その左側空間を「C」字形とは異なる色彩で表した」構成のものである。
したがって、第1標章に接した取引者・需要者は、C字とE字をモチーフにして融合一体化している図形の中心部に図形を上下方向に貫く細い赤線に注目して、丸みのある左側の図形と先端部を尖らせた右側の図形とのバランスから幾何学的な図形とのイメージを感取するのに対し、引用商標では、欧文字Cの図形と帯状連結片とを組み合わせたシンプルな形態から文字Cを容易に想起し軽快な印象を持つことになる。
また、第1標章からは格別の観念・称呼が生じないのに対し、引用商標については、現に「Cロゴ」なる抽象的観念が生まれ、「シイロゴ」なる称呼が生じることになる。
したがって、第1標章と引用商標とは、外観、観念、称呼のいずれにおいても相違するから、互いに誤認されるおそれのない非類似の商標であると認められ、商品の出所について混同が生じることもない。
(ウ)使用例2、3標章と引用商標1ないし3については、前者の標章が使用例1標章に対してC字をモチーフとした図形部分とE字をモチーフとした図形部分が白色である点で相違するだけであるから、使用例2、3標章と引用商標とは、外観、観念、称呼のいずれにおいても相違するものであって、上記(イ)と同じ結論となる。
ウ 使用例1ないし5の図形商標に欧文字「hamp euro」を組み合わせた標章について
(ア)(3)項に記載した使用例1ないし3の第2標章、使用例4標章及び使用例5標章は、図形標章の右側に欧文字「hamp euro」を表した標章である。
(イ)請求人は、引用商標1ないし3とは商標も指定商品も異なる引用商標4、5を引き合いに出し、被請求人が使用例1ないし5の商品に上記に列挙した標章を使用した場合には、請求人の業務に係る商品と混同が生じると主張している。請求人の論拠は、a)図形標章は欧文字Cであると理解され、b)図形標章とその右側の欧文字「hamp euro」とは「Champ euro」であると認識され、c)日本人の一般的な英語力にかんがみると「Champ euro」の「euro」は「Champion」の「ion」と一目で区別できない可能性を否定できない、という点にある。
しかし、請求人が「鞄類、袋物、傘」や「眼鏡」を指定商品とする商標を引用商標1ないし3と組み合わせて使用例1ないし5に係る商品の出所の混同を生じさせるとの主張は、理解に苦しむ内容である。
(ウ)上記a)の図形商標については、(3)イ(イ)、(3)オ(イ)並びに(3)カ(イ)において説明したように、欧文字Cであるとは理解されず、取引者・需要者は、上記(ア)に列挙した標章がその全体から「Champ euro」であると認識することはない。
なお、被請求人の使用例4の図形商標は、被請求人が所有する登録第5306813号商標である(乙2)。しかも、請求人はこの登録商標に対して引用商標1ないし3を引用して異議申立を行なったが、登録を維持するとの決定が下されている。この決定においては、引用商標1ないし3が周知商標であることを認定した上で、使用例4の図形商標と引用商標とが非類似の商標であると認定されたのである。
(エ)したがって、使用例1ないし5の図形商標の右側に「hamp euro」を表した商標と、引用商標1ないし3の右側に「hampion」を表した商標とを対比してみると、中央に位置する欧文字「hamp」部分は同一であるものの、その左側に位置する図形は相違し、右側に位置する欧文字の語尾も、前者は「euro」、後者は「ion」であるから、両者は明確に相違している。
請求人は、日本人の一般的な英語力にかんがみると「Champ euro」の「euro」は「Champion」の「ion」と一目で区別できないと主張するが、「Champion」は中学性で習う単語である。外来語としても知られており、日本人が日常的に使用している単語である。日本人の英語力の程度が低いものであるとは認められないから、「euro」と「ion」とは、字数及び発音が相違していることも相まって、明確に識別され、間違われることはあり得ない。
エ その他
(ア)なお、使用例5に関連して、請求人は「IT TAKES……CHAMPION」の欧文字からなるロゴ、「ONLY……MARK」の欧文字が記載されているから、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせると主張しているが、この点については、カ(エ)において説明したように、上記の欧文字は、いずれも本件商標と同一又は類似の商標の使用とは無関係である。
(イ)請求人は、実際に混同が生じている事実として甲第31号証をあげているが、このオークションサイトの状態が、商標に起因するのか、出品者やサイト側の意図によるものなのか、あるいは、そのいずれでもないのかについて不明であるから、甲第31号証を証拠として認めることはできない。
なお、僅か1件の例をもって商品の混同が生じているとは、到底認められない。
(5)まとめ
以上から明らかなように、被請求人の通常使用権者による使用例1ないし5の商標の使用は、法第53条第1項が規定している、a)本件商標の指定商品又はこれに類似する商品について本件商標又はこれに類似する商標の使用であるとはいえないし、b)商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものにも当たらない。
したがって、商標法第53条第1項に該当するとした請求人の主張は成り立たない。

4 当審の判断
(1)本件審判及び商標法第53条第1項について
本件審判は、商標法第53条第1項に基づき、本件商標について、その商標登録の取消しを請求するものであるところ、商標法第53条第1項は、「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品又はこれに類似する商品についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であって商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該登録商標を取り消すことについて審判を請求することができる」旨規定している。
本条の審判は、登録商標の使用を許諾された専用使用権者又は通常使用権者が当該登録商標又はこれに類似する商標を不当に使用し他人の業務に係る商品との混同を生じさせた場合等における制裁規定であり、現行法において自由に使用許諾を認めたことに対する弊害防止の規定である(「工業所有権法逐条解説」参照)。
そこで、本件商標登録の取消の要件として、本件商標又はその類似商標が使用されたか否か、また、その商標の使用が他人の業務に係る商品と混同を生じさせる行為に当たるものであるか否かが問題となるところ、この点に関して、当事者の間に争いがあるので、以下に検討する。
(2)本件商標及び使用に係る商標
ア 本件商標
本件商標は、別掲(1)に示すとおり、上段に、右端の上下が長さを違えて右向きに開口するC状の図と、その開口部に、やや小さく太いゴチック体で表した「E」とを組み合わせた図形を配し、その下段に、前記図形を表現した線の太さの略2分の1の太さのゴチック体で表した欧文字「Champ Euro」を配した構成のものである。
そして、上段の図形と下段の「Champ Euro」とは、視覚上明らかに分離している上、観念上もこれらを不可分一体のものとして観察しなければならない理由はみいだせないものであり、本件商標において、上段の図形と下段の「Champ Euro」とは、それぞれが独立しても自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
しかして、上段の図形は、特定の事象等を表した標章ではなく、一種固有の幾何図形として看取されるとみるのが相当であるから、これよりは、特定の観念・称呼は生じないものであり、また、下段の「Champ Euro」に相応して「チャンプユーロ」の称呼が生じるものである。なお、「Champ」が「Champion」の略称に当たる語であり、また、「Euro」が「ヨーロッパ人、ユーロ(EUの通貨単位)」を意味する語ではあるけれど、「Champ Euro」全体からは、特定の観念は生じないというのが相当である。
イ 使用に係る商標
(ア)請求人が使用権者の使用であると主張し、被請求人が使用権者の使用を認めるところの「使用に係る商標」は、使用例1ないし5(甲15ないし甲21)として示されているものである(ただし、被請求人は、使用例4については、商品との関係において使用されていないため、商標の使用であるとすることはできないと主張している。)。
そこで、以下において、使用例1(甲15)における使用に係る商標のうち、長袖ポロシャツの左胸部に付された、別掲(7)の「使用に係る商標(以下「使用に係る商標A」という。)」について検討し、加えて、長袖ポロシャツの下げ札に表示された、別掲(8)の「使用に係る商標(以下「使用に係る商標B」という。)」について検討する。
なお、当該商標が長袖ポロシャツに使用されたこと、ニスクジャパンが使用者であることについては、被請求人も明らかに争っていない。
(イ)「使用に係る商標A」は、別掲(7)に示すとおり、左端の標章に続けて筆記体で「hamp euro」を表してなるところ、当該左端の部分は、濃い青色の外縁がやや扁平の「C」であり、右側に突起のある濃い青色の縦線を「C」の内側に配し、その縦線の左側に赤色の細い縦線を引き、縦線で区切られた内側を赤色に配色したものである。
ところで、「euro」は「ヨーロッパ人、ユーロ(EUの通貨単位)」を意味する語であるけれども、「hamp euro」あるいは「hamp」は、何らかの意味を表現する既成の語とは認められない。一方で、「Champ」は「Champion」の略語として知られている語といえるものである。
しかして、左端の「C」部分における赤の細い縦線がかかる僅かな部分を除き、前記のやや扁平した「C」及び「hamp euro」は、同じ濃い青色の統一された配色をもって表されたものとして看取され、左端の部分を図案化した「C」として受けとめることが不自然とはいえないから、全体として「Champ euro」を表したと理解されるとみるのが相当である。
したがって、「使用に係る商標A」は、当該「Champ euro」に相応して「チャンプユーロ」の称呼が生じるものであり、特定の観念は生じないというのが相当である。
(ウ)「使用に係る商標B」は、別掲(8)に示すとおり、上段に、外縁がやや扁平の「C」で、右側に突起のある青色の縦線を「C」の内側に配し、その縦線の左側に赤色の細い縦線を引き、縦線で区切られた内側を赤色に配色した標章を配し、下段に、「使用に係る商標A」と同じ構成態様の標章を配した構成のものであって、上記(イ)同様、当該「Champ euro」に相応して「チャンプユーロ」の称呼が生じるものであり、特定の観念は生じないものである。
ウ 本件商標と「使用に係る商標A」及び「使用に係る商標B」の類否及びその使用に係る商品について
(ア)本件商標及び「使用に係る商標A」は、前記ア及びイで認定したとおりのものであるところ、本件商標と「使用に係る商標A」とは、構成態様において相違する点を有するものではあるけれども、その構成にあって、共に看者の注意を惹き、強く印象・記憶される「Champ euro」部分に相応して「チャンプユーロ」の称呼が生じるものである。また、両者は、特定の観念が生じないものであるから、観念においては比較し得ないものというべきであるが、観念の明確な相違をもって区別し得るものでもない。
しかして、本件商標と「使用に係る商標A」の外観、称呼及び観念が与える印象・記憶・連想を総合してみると、両商標を同一又は類似する商品に使用した場合、「Champ Euro」と「Champ euro」部分の構成欧文字の共通性び称呼「チャンプユーロ」の共通性によって、同一の事業者の製造販売に係る商品であるかの如く、その出所について誤認混同するおそれがあるといわざるを得ないものである。
したがって、「使用に係る商標A」は、本件商標に類似する商標の使用に当たると判断されるものである。
(イ)「使用に係る商標B」は、図形と「使用に係る商標A」と同じ標章を二段に表してなるものであるところ、上段に表された図形部分は本件商標の図形部分と相違するものであるけれども、「使用に係る商標A」を顕著に表してなる構成態様のものであるから、「Champ Euro」と「Champ euro」部分の構成欧文字の共通性び称呼「チャンプユーロ」の共通性によって、上記(ア)同様、本件商標に類似する商標の使用に当たると判断されるものである。
(ウ)被請求人は、「使用に係る商標A」について、図形と「hamp euro」を結合したものであり、当該図形は「C」とは理解されないから、「ハンプユーロ」の称呼を生じ、外観、称呼及び観念のいずれからみても、本件商標と類似するものではない旨主張している。
しかしながら、「hamp」が親しまれた語(文字)とは認められないのに対し「Champ」が「Champion」の略語として親しまれた既成の語であること、語頭文字を図案化して欧文字を表示することが普通に行われていること、図案化されているとはいえ、その形状からみて、語頭「C」として理解するのが不自然でないことなどを勘案すれば、たとえ、図形と「hamp euro」を結合したものとして把握される場合があり得るとしても、前記のとおり、「Champ euro」を表したものとして看取されるのが自然であるというべきであり、これより「チャンプユーロ」の称呼が生じるものであって、前記のとおり類似の商標と判断するのが相当であるから、被請求人の主張は、採用することができない。
(エ)さらに、上記「使用に係る商標」が使用された商品は、「長袖ポロシャツ」と認められるから、本件商標の指定商品中「被服」に包含されることが明らかなものである。
(オ)以上によれば、長袖ポロシャツについてなされた「使用に係る商標A」及び「使用に係る商標B」の使用は、本件商標に類似する商標の使用であり、かつ、当該商標は、本件商標の指定商品について使用されたと認められるものである。
(3)引用商標について
ア 引用商標1ないし3
引用商標1は、別掲(2)に示すとおり、浅い開口部のあるやや扁平したC状図を細線で描き、その内側の左よりに、やや扁平した半月状の黒い図を配した構成態様からなるものであり、引用商標2は、別掲(3)に示すとおり、やや扁平した黒色の「C」の内側中央に幅広の黒色の縦線を配した構成態様からなるものである。また、引用商標3は、別掲(4)に示すとおり、やや扁平した青色の「C」の内側中央に幅広の青色の縦線を配し、それで区切られた内側を赤色にした構成態様からなるものである。
そして、いずれも、その構成からは、特定の称呼・観念は生じないというのが相当である。
イ 引用商標4及び引用商標5
引用商標4は、別掲(5)に示すとおり、引用商標3と同じ構成態様の標章を左端に配し、それに続けて筆記体で「hampion」を青色で表した構成態様からなるものであり、「Champion」の文字を表したものとして看取されるというのが相当であるから、これより「チャンピオン」(優勝者)の称呼及び観念を生じるものである。
また、引用商標5は、別掲(6)に示すとおり、引用商標2と同じ構成態様の標章を左端に配し、それに続けて筆記体で「hampion」を表した構成態様からなるものであり、上記の引用商標4と同様に、「チャンピオン」(優勝者)の称呼及び観念を生じるものである。
(4)混同のおそれの有無
ア 引用商標の周知性
(ア)請求人提出の証拠(甲12の1ないし甲14ほか)によれば、引用商標1ないし3は、遅くとも甲第15号証及び同第16号証で示された「使用に係る商標」の使用時までには既に、請求人に係る商品(スウェットシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ユニホーム、ベンチコート、帽子)を表示する商標として、需要者の間で広く認識されるに至っていたものと認められ、被請求人も、引用商標1ないし3の当該周知性については認め、争っていない。
なお、引用商標3は、「Cマーク」あるいは「Cロゴ」とも称され、青色と赤色の配色及び形状の特徴をも併せ、周知・著名な標章となっていたといえるものである(甲11、甲12の1、甲14)。
(イ)また、請求人提出の証拠(甲第12号証の1ないし2)によれば、引用商標4と同じ構成態様の、別掲(5)に示す商標について、以下の事実が認められる。
2003年5月1日発行の「street Jack」(甲12の1)には、Tシャツの広告が掲載され、その広告中に、別掲(5)に示す商標が表示されている。
2003年発行の雑誌「Cool Trans 12月号」(甲12の2)には、請求人に係るスウェットシャツが、別掲(5)に示す商標とともに掲載されている。
2003年9月30日付「繊維ニュース」(甲12の1)には、同商標が表示されている広告が掲載され、2005年6月29日付「繊維ニュース」(甲12の2)にも同様の広告が掲載された。
2004年発売の雑誌「GET ON! 6月号」(甲12の2)には、請求人に係るTシャツが、別掲(5)に示す商標とともに掲載されている。
2005年発行の雑誌「Get Navi 6月号」(甲12の1)には、請求人に係るスウェットシャツが、別掲(5)に示す商標とともに掲載されている。
2006年5月発売の雑誌「BEGIN」(甲12の1)には、請求人に係るTシャツが掲載され、当該Tシャツのタグには同商標が表示されている。
2008年発行の雑誌「Free & Easy 5月号」(甲12の2)及び2009年発行の同雑誌「6月号」(甲12の1)に掲載されたTシャツ、リバースパーカーのタグにも、同商標が表示されている。
2007年発行の雑誌「Lightning 11月号」、2008年発行の同雑誌「12月号」(いずれも甲12の1)に掲載されたスウェットシャツのタグに、同商標が表示されている。また、2008年発行の同雑誌「2月号」(甲12の2)に掲載されたTシャツのタグにも、同商標が表示されている。
2008年発行の雑誌「Daytona 1月号」(甲12の1)に、スウェットシャツ及びスウェットパンツが掲載され、これらに付されたタグに、同商標が表示されている。
2008年発行の雑誌「Daytona BROS Vol.4」(甲12の2)に掲載されたTシャツのタグにも、同商標が表示されている。
そして、2008年発行の書籍「日本のロゴ 2」(甲12の1)において、請求人に係る1980年代及び1990年代以降のロゴとして、同商標が表示されているタグが紹介されている。2005年発行の雑誌「mono magazine」(甲12の1)においても、同様の紹介記事が掲載されている。
さらにまた、請求人に係る公式ホームページの左上部には、別掲(5)に示す構成態様の標章が表示されていることが認められる(甲11)。
(ウ)しかして、別掲(5)に示す構成態様の商標は、商品のタグや胸部に表示され、商品「スウェットシャツ、スウェットパンツ、パーカー、Tシャツ」について継続して使用されていることが認められ、その商品の広告宣伝の期間や頻度等、商標の使用程度を勘案すると、需要者の間で広く認識されるに至っていたといい得るものである。
そして、上記事実とともに、周知・著名な引用商標3と同じ構成態様の標章を構成要素(左端部)としていることをも併せみれば、別掲(5)に示す構成態様の商標は、遅くとも甲第15号証及び同第16号証で示された「使用に係る商標」の使用時までには既に、請求人に係る商品(スウェットシャツ、スウェットパンツ、Tシャツ)を表示する商標として、需要者の間で広く認識され、周知な商標となっていたと優に認め得るものである。
なお、引用商標5も、上記と同様、需要者の間で広く認識されるに至っていたと認め得るものである。
イ 使用される商標間の類似性の程度
(ア)「使用に係る商標A」は、上記(2)イで認定したとおりのものであり、これに対して、引用商標4を構成する標章は、上記(3)イで認定したとおりのものである。
しかして、両者は、語頭に当たる左端部分についてみると、全体としての形状がやや扁平した青色の「C」であること、「C」の開口部の先端が細くなっていること、「C」の内側に青い縦線を配したこと、縦線で区切られた内側部分を赤色にしたことで共通するものであり、青色の濃淡、縦の青線の幅、突起の有無及び赤い細線の有無で相違するけれども、これらの相違は、全体の構成にあっては微差というべきであるから、両者の左端部分は、構成の軌を一にするものであって、当該部分から受ける印象は、酷似するものである。また、左端部分に後続する部分「hamp euro」と「hampion」をみると、後半部で「euro」と「ion」の綴り文字の相違があるけれども、両者は、ともに同色で、かつ、同じ書体の筆記体で表されており、「hamp」部分においては筆致が全く同じといえる表示となっているから、極めて近似した表示といわざるを得ないものである。
してみれば、「使用に係る商標A」と引用商標4を構成する標章は、称呼においては相違するものの、語頭部及び筆記体で表された後続する文字の近似性に止まらず、配色での共通性を有する外観から受ける印象が、極めて酷似したものであり、さらに、「Champ」と「Champion」という意味合いが共通する文字を含むものであるから、両者を対比してみた場合においても彼此相紛らわしいものであり、時と所を異にした場合には尚更に、彼此相紛れる余地が強いものといわざるを得ない。したがって、両者の類似性の程度は極めて高いものである。
(イ)さらに、「使用に係る商標B」は、「使用に係る商標A」の語頭部分と同一態様の標章をやや大きく上段に表し、下段に「使用に係る商標A」を構成する標章を配したものであるところ、上記(ア)と同様に、上段部分が引用商標3を構成する標章に酷似し、また、下段部分が引用商標4を構成する標章に酷似するものであるから、これらの類似性の程度は高いものである。
加えて、請求人は、引用商標3を上段に、引用商標4を下段に配した態様で、商品のタグに表示して使用していることが認められる(甲12の1{前出「日本のロゴ 2」}、甲30)。そして、互いの使用例をみても、上段の標章と引用商標3及び下段の標章と引用商標4のいずれもが、それぞれ酷似した印象を与えるものであって、前記タグ(甲12の1、甲30)の表示と構成の軌を同じくする「使用に係る商標B」は、引用商標3及び引用商標4との間で類似性の程度が高い商標といわざるを得ないものである。
ウ 使用される商品間の関連性等
上記「使用に係る商標A」及び「使用に係る商標B」が使用されている商品は、「長袖ポロシャツ」であり、他方、引用商標1ないし3が使用されている商品は、「スウェットシャツ、Tシャツ、ポロシャツ、ユニホーム、ベンチコート、帽子」であり、また、引用商標4と同じ構成態様の商標が使用されている商品も、「スウェットシャツ、スウェットパンツ、パーカー、Tシャツ」等と認められるものである。
しかして、「長袖ポロシャツ」と「スウェットシャツ」「スウェットパンツ」「Tシャツ」「ポロシャツ」「パーカー」は同一又は類似する商品であり、また、「長袖ポロシャツ」と「帽子」「ユニホーム」「ベンチコート」は関連性が極めて高い商品というべきものである。
そして、これら商品の需要者は、共に、身にまとう物や帯同する物を購買する一般消費者であるから、引用商標が使用されている商品と上記「使用に係る商標」が使用された商品とは、その需要者を共通にするというべきものである。
エ 小括
上記アないしウで認定した、引用商標の周知性の程度、使用される商標間の類似性の程度、使用される商品間の関連性、需要者の共通性等を総合してみれば、「使用に係る商標A」及び「使用に係る商標B」の使用は、これに接する需要者をして、引用商標3及び引用商標4を想起し連想させ、当該商品を請求人の業務に係る商品あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であるかの如く誤認させ、商品の出所について混同させるおそれがあると判断されるものである。
(5)商標法第53条第1項に該当する混同惹起行為について
ア 商標法が需要者の利益の保護をも目的としていることにかんがみれば、商標法第53条第1項にいう「混同を生ずるものをしたとき」とは、現実の混同が生じた場合のみならず、客観的に誤認混同を生じさせるとみられる場合、換言すれば、誤認混同のおそれがある場合をもその対象としているものと解される(昭和58年10月19日・昭和57年(行ケ)第50号{昭和59年(行ツ)第8号}判決参照)。
イ 上記(2)ないし(4)によれば、使用例1において、使用に係る商標を使用した長袖ポロシャツは、引用商標3の使用に係る商品、引用商標4の使用に係る商品との間で、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると判断されるものであるから、かかる商標の使用行為は、他人(請求人)の業務に係る商品との間で混同を惹起する行為であると評せざるを得ないものである。
また、証拠(甲7、甲8、甲9の1ないし7)に徴すれば、被請求人とニスクジャパンとの間の契約により、上記の「使用に係る商標」の使用時期よりも以前に、被請求人が本件商標の使用をニスクジャパンに許諾したことが認められ、上記の「使用に係る商標」の使用者であるニスクジャパンは、本件商標の通常使用権者であると認め得るものである。
以上によれば、本件商標の通常使用権者が、本件商標の指定商品についての本件商標に類似する商標の使用であって、請求人の業務に係る商品と混同を生じさせるおそれがあるものをしたから、当該商標の使用をもって、商標法第53条第1項に規定する「他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたとき」に該当するというべきである。
(6)結語
したがって、本件商標に係る通常使用権者が、本件商標に類似する商標を指定商品について使用し、他人の業務に係る商品と混同を生じさせるものをしたと認められるから、本件商標は、商標法第53条第1項の規定により、その登録の取消しを免れないものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)引用商標1


(3)引用商標2


(4)引用商標3(色彩は原本参照)


(5)引用商標4(色彩は原本参照)


(6)引用商標5


(7)使用に係る商標A(色彩は原本参照)



(8)使用に係る商標B(色彩は原本参照)



審理終結日 2012-12-18 
結審通知日 2012-12-20 
審決日 2013-01-10 
出願番号 商願2009-24142(T2009-24142) 
審決分類 T 1 31・ 5- Z (X25)
最終処分 成立 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 内山 進
前山 るり子
登録日 2009-10-09 
登録番号 商標登録第5271847号(T5271847) 
商標の称呼 シイイイ、チャンプユーロ、チャンプ、ユーロ 
代理人 宮崎 栄二 
代理人 大江 耕治 
代理人 肥田 正法 
代理人 兼松 由理子 
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