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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない X091425
管理番号 1271132 
審判番号 不服2012-12622 
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2012-07-03 
確定日 2013-02-12 
事件の表示 商願2010-102389拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、「AQUACOACH」のローマ字を横書きしてなり、第9類、第14類及び第25類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年12月29日に登録出願、その後、指定商品については、同23年9月12日及び同24年1月18日付け手続補正書により、最終的に、第9類「コンピュータソフトウェア及びその部品・附属品,運動又はエクササイズ中のトレーニングの指導用電子応用機械器具及びその部品・附属品,運動技能訓練用シミュレーター及びその部品・附属品,教育教材・学習教材用録画済み磁気式又は光学式記憶媒体及びその部品・附属品,教育教材・学習教材用録音済み磁気式又は光学式記憶媒体及びその部品・附属品,教育教材・学習教材を内容とする電子出版物,運動又は運動競技のトレーニングに関する教授又は指導を内容とするコンピュータプログラム,運動又はエクササイズ中のコーチングの指導用電子応用機械器具及びその部品・附属品,運動又はエクササイズ中のデータの検知用電子応用機械器具及びその部品・附属品,運動又はエクササイズ中に得られたデータの表示用ディスプレイ装置及びその部品・附属品,運動・エクササイズ・トレーニングにおいて使用する距離・消費カロリー・速度・自転車ペダル回転数・運動レベルの測定・記録機能を有する測定機械器具,歩数計及びその部品・附属品,心拍計及びその部品・附属品(医療用のものを除く。),呼吸計及びその部品・附属品(医療用のものを除く。),水泳時のストローク数の計測機械器具及びその部品・附属品,クロノグラフ及びその部品・附属品,音楽再生プレイヤー及びその部品・附属品,水泳用ゴーグル及びその部品・附属品,サングラス及びその部品・附属品,眼鏡及びその部品・付属品,水泳用耳栓及びその部品・附属品,潜水用耳栓及びその部品・附属品,水泳用鼻クリップ及びその部品・附属品,潜水用鼻クリップ及びその部品・附属品,水泳用浮き具及びその部品・附属品,浮袋及びその部品・附属品,救命浮標及びその部品・附属品,救命帯及びその部品・附属品,潜水用呼吸装置及びその部品・附属品,救命用具及びその部品・附属品,教育用映像周波機械器具及びその部品・附属品,教育用音声周波機械器具及びその部品・附属品,その他の教育用視聴覚機械器具及びその部品・附属品,運動用保護のヘルメット及びその部品・附属品」、第14類「計時用具及びその部品・附属品,時計及びその部品・附属品,電子時計及びその部品・附属品,自動タイマー付き電子時計及びその部品・附属品,スポーツにおける計測用時計及びその部品・附属品,スポーツウォッチ及びその部品・附属品,多機能時計及びその部品・附属品,多機能スポーツウォッチ及びその部品・附属品,ラップタイム計時機能付時計及びその部品・附属品,スポーツにおける測時器及び計時用具及びその部品・附属品」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,ベルト,履物,帽子,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,運動用の帽子・キャップ,スポーツ用及び競技用ジャージー,スポーツ用及び競技用被服,水泳着」と補正されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、米国在の『コーチ インコーポレーテツド』が、本願商標の登録出願前より商品『かばん類』等に使用して著名な商標『COACH』と同一の『COACH』の文字をその構成中に有してなる。そして、前記『コーチ インコーポレーテツド』が『COACH』の商標を使用している商品『かばん類』と本願指定商品中、『眼鏡』、『時計』又は『被服』等は、共にファッションと密接な関連のある商品であり、一のファッションブランドがこれらの商品を一括して取り扱うことも決して少なくないといえるから、本願商標をその指定商品に使用するときは、これがあたかも前記会社又は同会社と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号について
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には、当該商標をその指定商品又は指定役務(以下「指定商品等」という。)に使用したときに、当該商品等が他人の商品又は役務(以下「商品等」という。)に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず、当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ(以下「広義の混同を生ずるおそれ」という。)がある商標を含むものと解するのが相当である。けだし、同号の規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるところ、その趣旨からすれば、企業経営の多角化、同一の表示による商品化事業を通して結束する企業グループの形成、有名ブランドの成立等、企業や市場の変化に応じて、周知又は著名な商品等の表示を使用する者の正当な利益を保護するためには、広義の混同を生ずるおそれがある商標をも商標登録を受けることができないものとすべきであるからである。また、同号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきであるとの判例(平成12年7月11日最高裁判所第三小法廷判決、平成10年(行ヒ)第85号)がある。
以下、この判例の判示する観点から本件を検討する。
2 検討
(1)引用商標の周知著名性及び独創性について
原審の引用する「COACH」(以下、「引用商標」という。)は、「コーチ インコーポレーテッド」(以下、「引用商標権利者」という。)が、かばん類(以下、「引用商品」という。)に使用する商標として我が国において一般に広く認識されたものということができ、請求人もこの点については、明らかに争わないものである。
また、引用商標は、英語において「競技の指導者」の意味を有する「coach」とつづりを同じくするものであるから、その独創性が高いものということはできないとしても、同時に「AQUA」と結びついて商標としての特定の観念を生ずるとまではいえない上に、引用商標の周知著名性の程度の高さや本願商標と引用商標とにおけるそれらの指定商品の関連性の高さ及び取引者、需要者の共通性に照らすと、本願商標がその指定商品中「時計、被服、履物、帽子」などファッションに関連性の強い商品(以下、「本願ファッション関連商品」という。)に使用されたときは、その構成中の「COACH」の部分が、これに接する取引者、需要者の注意を特に強く引くであろう事は容易に予測できるのであって、本願商標から「AQUA」と「COACH」のそれぞれの語の意味を足し合わせて、請求人の主張するような観念(「水の指導(者)」ないし「水中の指導(者)」)が生ずるというよりも、引用商標権利者又はこれと緊密な関係にある営業主の業務に係る商品であるとの観念も生ずるというのが相当である。
(2)本願商標と引用商標の類似性の程度
本願商標は、前記1のとおり、「AQUACOACH」のローマ字を横書きしてなるところ、本願商標を構成する「AQUA」は、「水、水の」の意味で親しまれた語であり、「COACH」は、「競技の技術などを指導し訓練すること。また、それをする人」の意味で親しまれた語である。
しかしながら、本願ファッション関連商品との関係においては、本願商標は、引用商標権利者をその出所として容易に認識させるものというのが相当である。また、本願商標は全体として外国語の成語に見当たらず、前記のとおり、「AQUA」と「COACH」とが組み合わされて一体として特定の観念を生じるものということもできないから、両者は観念上一体のものとして看取されるものではない。また、本願商標は、同じ書体、同じ大きさで等間隔に表されており、外観上一体的に構成されているとしても、それ以外に、「AQUA」と「COACH」とを常に不可分一体のものとして把握、認識しなければならない格別の事情も存しないものであって、「COACH」は、前記のとおり、引用商標権利者の引用商品についての商標として我が国において一般に広く認識された商標であるから、簡易、迅速をたっとぶ取引の実際にあっては、本願商標は、強く支配的な印象を与える「COACH」の文字部分をもって取引に当たることも決して少なくないものというのが相当である。
そうすると、本願商標は、当該「COACH」に相応して「コーチ」の称呼をも生じ、引用商標権利者の観念をも生ずるものというのが相当である。
他方、引用商標は、その構成に相応して「コーチ」の称呼及び引用商標権利者の観念を生ずるものというのが相当である。
してみれば、本願商標は、その構成中で強く支配的な「COACH」の部分において引用商標とつづりを同じくし、「コーチ」の称呼及び引用商標権利者の観念を共通にするものである。
したがって、本願商標と引用商標は、全体の外観に相違があるとしても、本願商標の要部「COACH」と引用商標とは、つづりを同じくする共通性もあり、かつ、称呼及び観念が共通するから、本願商標を本願ファッション関連商品に使用するときは、引用商標との間で商品の出所の誤認混同を生ずるおそれのあるものというのが相当である。
(3)商品の関連性及び需要者の共通性について
本願ファッション関連商品と引用商標が高い著名性を有する引用商品とは、いずれも身にまといつけるものであり、それらのコーディネートにおいて相互に深い関連性を有する商品である。そして、それらの商品の製造・販売に係る者の共通性も高く、その需要者は共通である。
そうすると、本願ファッション関連商品と引用商標に係る引用商品とは、取引者、需要者を共通にし、商品同士の関連性も相当に高いものというべきある。
(4)引用商標権利者の事業内容
原審説示のとおり、引用商標権利者に係る日本法人(コーチ・ジャパン合同会社)のインターネットウェブサイト(http://japan.coach.com/online/handbags/genWCM-13001-13500-jp-/Coach_CJI/CompanyInformation/CompanyProfileJP/-)によれば、引用商標は、本願ファッション関連商品と同一の「被服、履物、帽子、時計」に使用されているものである。
(5)小括
本願の指定商品の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として、以上の(1)ないし(4)を総合的に判断するならば、本願商標を請求人が本願ファッション関連商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者が、周知著名性を有する引用商標を想起、連想し、その商品が、あたかも引用商標権利者又は同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)商標の非類似
請求人は、本願商標は全体として不可分一体の一種の造語として認識されることを前提として、本願商標と引用商標とは、称呼、外観、観念のいずれの点からも類似しない旨主張する。
しかしながら、本件の争点となる商標法第4条第1項第15号は、対比する商標同士が類似することを要件とするものではなく、本願商標が出所の混同を生ずるおそれがあるものであるかどうかを要件とするものであって、その要件の判断の要素の一として対比する商標の類似性が検討されるものである。そして、本願商標の構成が、請求人主張のように構成上の一体性のあるものとしても、本願ファッション関連商品について使用されるときは、その構成中の「COACH」が、取引者、需要者の注意を強く引きつけるものというのは前記1のとおりであるから、本願商標は、出所の混同を生ずるおそれがあるものである。
(2)取引の実情
請求人は、取引の実情として、本願商標「AQUACOACH」は、スポーツ時計等の分野では、既に出願人の商品の出所を表すものとして需要者の間で広く知られている。仮に引用商標権利者が、引用商品との関係で高い著名性を有するとしても、いわゆる「ファッションブランド」という漠然とした括り方により、その著名性が他の商品分野において同程度に認められるということは必ずしもできないというべきである。過去の審決例においても、引用商標権利者に係る商品で特に著名なのはバッグ類(特に婦人用)であり、それ以外の商品の著名性はさほど高いとはいえないとされている(甲11)ところ、本願の指定商品(9類、14類、25類)は、バッグ類と同一又は類似する商品を指定商品に含まない。そして、請求人の商品(スポーツ時計を含むスポーツ関連商品等)の流通経路は、引用商標権利者に係る引用商品などとは一般的に異なる旨主張する。
しかしながら、本件の争点は、本願商標が本願ファッション関連商品について使用された場合であって、スポーツ時計等のスポーツ関連商品ではないから、本願商標が、スポーツ時計等の商品について周知性があるとか、それらの商品と引用商標に係る商品と流通経路が相違するなどといった主張は、当を得ないものである。また、引用商標の著名性が引用商品を主体とするものであるとしても、前記のとおり、本願ファッション関連商品と引用商標に係る引用商品との用途、目的、取引者、需要者の共通性に照らせば、本願商標は出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。また、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かは、本願商標の出願時及び審決時において判断をなすべきものであって、過去の異議決定の事例により、その判断が左右されるものではない。
(3)両商標の共存
請求人は、請求人と引用商標権利者の間では、商標「AQUACOACH」と商標「COACH」に関して市場における抵触の問題は生じてない。むしろ、請求人は、引用商標権利者から商標「AQUACOACH」の使用と登録についてオーストラリアで書面による明示的な同意を得ている事実(甲2)がある上に、米国や欧州共同体でも両商標は併存登録され(甲3、甲4)、かかる米国、欧州共同体の商標登録について引用商標権利者から異議申立等はなされておらず、両商標は既に複数の国や地域で共存している旨主張する。
しかしながら、本願商標が出所の混同を生ずるおそれのあるものというのは、前記2(5)のとおりであるところ、我が国と法制度や取引環境の異なる外国における事情により、本件の審決が影響を受けるものではない。
(4)商標登録例、審決例
請求人は、その主張の正当性を立証するものとして、商標登録や審決例を挙げる(甲5?甲11)。
しかしながら、本願商標が出所の混同を生ずるおそれのあるものか否かの判断は、本願商標及びその指定商品と引用商標及びそれに係る商品、その著名性など前記1の判例の観点から、個別・具体的に判断されるべきものであって、他の商標登録の事例や異議決定の存在により、本件の判断が左右されるべきものではない。
(5)小括
前記のとおり、請求人の主張は、いずれも理由がないものであるから採用することができない。
4 結語
以上からすれば、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって取り消すべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2012-09-12 
結審通知日 2012-09-14 
審決日 2012-09-28 
出願番号 商願2010-102389(T2010-102389) 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (X091425)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 悠源岩本 和雄 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 前山 るり子
内田 直樹
商標の称呼 アクアコーチ、コーチ、アクア 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
代理人 浅村 肇 
代理人 土屋 良弘 
代理人 大塚 一貴 
代理人 浅村 皓 

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