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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X04
審判 査定不服 商3条1項5号 簡単でありふれたもの 登録しない X04
管理番号 1271131 
審判番号 不服2011-16888 
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-08-05 
確定日 2013-02-12 
事件の表示 商願2010-11453拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第4類「防錆潤滑剤,防錆潤滑油」を指定商品として、平成22年2月17日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、商品の品番・等級等を表示する記号・符号の一類型として一般的に採択使用されているローマ文字二文字『WD』と、同様に商品の品番・等級等を表示する記号・符号の一類型として一般的に採択使用されている数字の『40』をハイフンで介し、さらに、各文字、数字、記号に青色を配する構成からなるところ、このような構成からなる標章は、取引上普通に採択使用されているものであるから、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需用者は、極めて簡単で、かつ、ありふれた記号、符号の類型の一つにすぎないものと理解するに止まり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当する。また、提出された証拠に表示されている商標は、黄色が施された略半円の図や黄色が施された五角形の図等とともに使用されているものばかりであって、本願商標とこれら使用に係る商標が同一のものとすることはできないものであり、さらに、日本国内における本願商標を付した商品の具体的な生産量、譲渡量、営業の規模、市場シェア、広告宣伝の回数・内容、需要者における本願商標の認識度を調査したアンケートの結果等の証拠も提出されていないことから、意見書及びこれら提出された証拠によっては、本願商標が特定の者の出所表示として、その需要者の間で広く認識されているものであるということは認めることはできない。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における審尋
請求人に対し、平成24年5月14日付けで通知した審尋の内容は、別掲2のとおりである。

4 審尋に対する請求人の対応
請求人は、前記3の審尋に対して、指定した期間を経過するも、回答書(意見書)を提出していない。

5 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり「WD-40」と太い書体の青文字で横書きしてなるところ、該構成文字は、別掲2の審尋に記載したとおり、看者をして、容易に「WD-40」の文字を表したものと理解させるものというのが相当である。
また、前記2の原査定及び別掲2の審尋に記載したとおり、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者は、商品の品番、型式又は規格等を表示するための記号又は符号の一類型を表示したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものというべきである。
してみれば、本願商標は、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標であり、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものであるから、商標法第3条第1項第5号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
請求人は、原審における平成22年11月19日付け手続補足書における証拠方法として第1号証ないし第68号証並びに当審における平成23年9月9日付けの物件提出書における証拠方法として第1号証ないし第95号証(枝番を含む。)を提出し、「WD-40」なる本願商標は、商品「防錆潤滑剤」に係る使用によって自他商品の識別性を獲得しているので、商標法第3条第2項に該当する旨主張している。
しかしながら、商標が使用された結果、広く需要者の間に認識され、識別力を有する商標に至ったか否かについては、提出された証拠方法によっては、本願商標の使用開始時期、使用期間(地域別のもの)、本願商標を使用した商品の販売の数量(地域別の売上高(本数)等)、広告宣伝の方法、回数及び内容、並びに一般紙、業界紙、雑誌等における記事掲載の回数及び内容等の使用状況に関する事実については確認することができないものであり、商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。
そして、別掲2の審尋により、本願商標が使用により識別力を有するに至ったことを証明するための必要な証拠の提出を求めたところ、相当の期間が経過するも何らの証拠の提出もなされなかった。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、本願商標が商標法第3条第1項第5号に該当するとして拒絶した原査定は、妥当であって取消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標 色彩については、原本を参照されたい。)




別掲2(審尋の内容)

1.商標法第3条第1項第5号について
本願商標は、上部が接合されたローマ字の2字「WD」と下部が接合されたアラビア数字の2字「40」とを「-」(ハイフン)で結合し、「WD-40」と太い書体の青文字で横書きしてなるところ、近時、各種のレタリング文字が広く使用されている実情よりすれば、該構成文字は、「WD-40」の文字を表したものと容易に理解させる態様からなるものであって、商品又は役務に標章等を付す際に様々なデザイン化が行われている現状にあっては、特殊な態様とはいい得ないものであるから、本願商標は、普通に用いられる方法の範囲で表してなるとみるのが相当である。
そして、本願商標全体として特定の意味合いを表す語又は表示として、一般に親しまれているものとはいえないものである。
ところで、本願指定商品を取り扱う業界においては、それぞれの自己の業務に係る各種商品について、その商品の管理又は取引の便宜性等の事情から、ローマ字の1字又は2字とアラビア数字とを「-」(ハイフン)で結合した標章が特定の商品の品番、型式又は規格等を表示するための記号又は符号として、取引上、類型的に採択・使用されている実情がある。
このことは、例えば、以下アないしコのウェブサイトの記載からも十分に裏付けられるところである(なお、以下、文字の下線は当合議体が線引きしたものである。)。
ア 「株式会社 創新」のウェブサイトには、「ノックスドール防錆剤」の見出しの下、「ノックスドール UM-1600」の記載がある。(http://www.soshin-j.co.jp/chemical/bousei.html)
イ 「日本メカケミカル株式会社」のウェブサイトには、「油性防錆剤」の見出しの下、「CP-4000」「CP-3」の記載がある。(http://www.nichi-mecha.co.jp/syouhin/bouseizai.htm)
ウ 「株式会社ネオス」のウェブサイトには、「防錆剤」の見出しの下、防錆油の製品名として「PN-301,PN-7,PN-8,PN-9,PN-93」の記載がある。(http://www.neos.co.jp/product/ar/index.html)
エ 「兼松ケミカル株式会社」のウェブサイトには、「TECTYL(テクチル)用途別製品概要/1.車両防錆床下用」の見出しの下、「TECTYL 122A、TECTYL 162(JIS K 2246 Type NP-1)/溶剤希釈型アスファルトワックスタイプの防錆剤です。」等の記載がある。(http://www.kccjp.co.jp/products/osaka_branch/what_tectyl.htm)
オ 「東洋薬化学工業株式会社」のウェブサイトには、「防錆剤」の見出しの下、「Cebo EP-10」の記載がある。(http://www.cebo.co.jp/antirust/ep_10/)
カ 「共栄社化学株式会社」のウェブサイトには、「油性防錆剤」の見出しの下、「ラスミン KP-20」「ラスミン KP-23」の記載がある。(http://www.kyoeisha.co.jp/kinzoku/boufu.html)
キ 「東美化学株式会社」のウェブサイトには、「防錆剤」の見出しの下、「トビカ ラストン N-20」「トビカ ラストン S-290」の記載がある。(http://www.tobika.co.jp/ruston.htm)
ク 「スターカット工業株式会社」のウェブサイトには、「防錆剤 製品一覧」の見出しの下、「ソルカット/FO-2」の記載がある。(http://www.starcut-jp.com/prod03.html)
ケ 「カンエイ産業株式会社」のウェブサイトには、「カンエイ産業水溶性防錆剤」の見出しの下、「ラスカンM-66」「ラスカンU-10」等の記載がある。(http://www.kan-ei-san.com/kinzok-mizubousei.htm)
コ 「アルベス株式会社」のウェブサイトには、「防錆剤(ノンラスト)」の見出しの下、「W-310」の記載がある。(http://www.albess.co.jp/product_railway_bousei.html)
そうすると、本願商標は、ローマ字の2字「WD」とアラビア数字の2字「40」とを「-」(ハイフン)で結合させたものであって、普通に用いられる方法を脱しない書体で横書きしてなるものであり、用いられる文字の形や組合せ方法にさしたる特徴があるわけでもないのであるから、このような構成及び前記実情に照らせば、本願商標をその指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者は、商品の品番、型式又は規格等を表示するための記号又は符号の一類型を表示したものと理解するにとどまり、自他商品の識別標識とは認識し得ないものというべきであるから、極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標と認めるのが相当であり、本願商標は、商標法第3条第1項第5号に該当するといわざるを得ない。
なお、請求人は、本願商標の構成中「WD」の文字は、「水置換性」と訳されるところの「Water Displacement(ウォーターディスプレイスメント)」の略語を暗示させる旨主張している(第2号証)が、需要者等をして該意味合いを暗示させるものと認めるに足りる証拠の提出もないものであり、たとえ、「WD」の文字が請求人主張のような意味合いを有する語であるとしても、上記認定のとおり、本願商標は構成全体として、商品の品番、型式又は規格等を表示するための記号又は符号として認識するいうのが相当であり、その理解を妨げるような特別の事情も見いだせない。したがって、請求人のこの主張は採用することができない。

2.商標法第3条第2項について
請求人は、原審における平成22年11月19日付けの手続補足書における証拠方法として第1号証ないし第68号証並びに当審における平成23年9月9日付けの物件提出書における証拠方法として第1号証ないし第95号証(枝番を含む。)を提出し、「WD-40」なる本願商標は、商品「防錆潤滑剤」に係る使用によって自他商品の識別性を獲得しているので、商標法第3条第2項に該当する旨主張している。
なお、前記の書証中、同一の書証番号が付された第1号証ないし第67号証及び、原審における第68号証と当審における第95号証は、その体裁から実質的に同一の書証であると理解されることから、書証番号は、便宜上の観点から、以下、当審におけるものとして挙示する。
そこで、本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かについて検討する。
請求人は、ナスダック(NASDAQ)に上場しており、また、請求人の製造・販売に係る防錆剤「WD-40」(以下、「請求人商品」という。)は、米国NASAでも採用されている。そして、航空業界だけではなく、産業機械、船舶、自動車生産ライン、建設現場・建設機械においても用いられる業務用防錆潤滑剤として、取引者に広く認識されており、防錆潤滑剤分野のトップブランドとして世界中において広く知られていると主張し、証拠方法として、第4号証ないし第8号証を提出している。
また、わが国においては、株式会社エステー化学(現株式会社エステー)が1997年に日本総代理権を取得し、全国的に販売している等の結果、需要者の間に広く認識されているから、自他商品識別標識として機能していると主張し、証拠方法として、第9号証ないし第47号証を提出している。
しかしながら、第4号証ないし第8号証からは、外国において、請求人が商品「防錆潤滑剤」について商標「WD-40」を使用し、該商品分野のトップブランドとして需要者等に広く知られていることが認め得るとしても、我が国においては、第9号証において、「日本の防錆潤滑剤市場は、ガリバー的な存在の呉工業が『CRC-556』を年間に一千万本強販売し、シェアの約七五%を握る。」との記載があるように、本願指定商品を取り扱う業界においては、呉工業株式会社の製造・販売に係る「KURE(CRC)5-56」ブランドの商品が1962年から販売され、かなりのシェアを占めていることが推認される。
このことは、当審における職権調査によれば、以下アないしエのウェブサイトの記載からも認め得るところである。
ア 「呉工業株式会社」のウェブサイトには、「呉工業が『KURE 5-56』を日本に導入したのは1962年10月のことでした。」の記載がある。(http://www.kure.com/history/index.html)
イ 「雑学の小部屋」のウェブサイトには、「日本でのこの分野の製品としては、KURE CRC 5-56がトップシェア。何と98パーセント以上のシェアだそうで、ダントツの製品なんですな。」の記載がある。(http://www001.upp.so-net.ne.jp/super-nova/zatugaku/chishiki3.htm)
ウ 「関心空間」のウェブサイトには、「発売以来40年以上たった今も、防錆・潤滑剤の代名詞として、不動のNO.1シェアを誇っています。」の記載がある。(http://www.kanshin.com/keyword/593116)
エ 「アーチェリーどっとコム」のウェブサイトには、「1962年から売っているという、この分野では90%以上のシェアを持つスグレモノです。」(http://www.a-rchery.com/crc.htm)

一方、請求人商品は、審判請求書の「主力商品である『9オンススプレータイプ』を月間4万本以上、『12オンススプレータイプ』を月間1万数千本程度我が国に輸出しており・・・」(第42-1及び第42-2号証)との記載によれば、前記「KURE(CRC)5-56」ブランドの商品と比較すれば、使用期間も短く、輸入本数(販売数)も著しく少ないことが認められる。
また、請求人商品が、全国各地のホームセンター等において広く取り扱われていると主張し、第68号証ないし第94-12号証を提出し、また、株式会社エアゾール産業新聞社により、防錆潤滑剤について使用された結果、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが証明されたとして、第95号証を提出している。
そこで、第68号証ないし第93-82号証を徴するに、請求人商品が小売店と思しき店舗における陳列棚に陳列されていることは確認できるものの、店舗の看板の写真等の証左の提出がないため、店舗名、販売地域、販売時期等が不明である。
また、第94-1号証ないし第94-12号証を徴するに、請求人商品の広告及びチラシと認められるものの、これらを使用した広告宣伝の方法(新聞広告なのか、雑誌に掲載された広告なのか、販売店用に配布された広告なのか、街頭で配布されたチラシなのか等)、広告時期、回数(部数)及び内容(配布先、配布地域等)が不明である。
そうすると、これらの証拠によれば、本願商標が商品「防錆潤滑剤,防錆潤滑油」に使用されていることは認められるものの、本願商標の使用開始時期、使用期間(地域別のもの)、本願商標を使用した商品の販売の数量(地域別の売上高(本数)等)、広告宣伝の方法、回数及び内容、並びに一般紙、業界紙、雑誌等における記事掲載の回数及び内容等の使用状況に関する事実については確認することができないものであり、商標法第3条第2項の適用の有無を判断するための客観的証拠は不十分であるといえる。
よって、請求人が提出した証拠によっては、本願商標が、その指定商品に使用された結果、請求人の業務に係るものとして、取引者、需要者間に広く認識されるに至っていると認めることができない。

審理終結日 2012-09-07 
結審通知日 2012-09-10 
審決日 2012-09-27 
出願番号 商願2010-11453(T2010-11453) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (X04)
T 1 8・ 15- Z (X04)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中束 としえ堀内 真一鹿児島 直人 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 梶原 良子
豊瀬 京太郎
商標の称呼 ダブリュウデイヨンジュー、ダブリュウデイヨンゼロ 
代理人 特許業務法人深見特許事務所 

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