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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1271098 
審判番号 取消2012-300108 
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2012-02-16 
確定日 2013-02-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第4375999号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4375999号商標の指定商品中「第9類 電気磁気測定器,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電線及びケーブル」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4375999号商標(以下「本件商標」という。)は、「D H C」の欧文字を標準文字で表してなり、平成10年11月6日に登録出願、第9類「電気磁気測定器,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電線及びケーブル」をはじめとする第9類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同12年4月14日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれの者によっても、その指定商品中「電気磁気測定器,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電線及びケーブル」について使用されていないものである。
よって、本件商標は、上記指定商品について商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁
被請求人は、「本件商標は、被請求人(商標権者)により、本件審判の請求の登録前3年以内において、その指定商品中『電気磁気測定器』に使用されている」旨主張しているが、以下の理由により、その使用は認められない。
(1)いわゆる「駆け込み使用」(乙第4号証の1ないし3)について
本件商標の使用が要証期間内のものであるとしても、被請求人が使用根拠としている乙第4号証の1ないし3は、いわゆる駆け込み使用に該当するため、商標法第50条第1項に規定する登録商標の使用に該当しない(商標法第50条第3項)。
ア 請求人は、被請求人(商標権者)より、本件商標に基づく商標権侵害の停止等を求める平成24年1月6日付け通知書(甲第3号証)を受けたことから、同年2月21日付け回答書(甲第5号証)をもって、同月16日付けで本件商標のほか被請求人保有の商標登録6件について不使用取消審判を請求したことを回答した。
上記回答書が、平成24年2月22日に被請求人に配達されている(甲第6号証)ことからすると、被請求人は同日には本件商標について不使用取消審判が請求されたことを明らかに知っていた。
イ 乙第4号証の1ないし3は、2012年(平成24年)2月23日付けの商標権者のウェブサイトとされるものであり、該ウェブサイト上における使用は本件審判の請求前3月からその審判の請求の登録の日までの間の使用であって、その審判が請求されたことを知った(平成24年2月22日)後のものであるから、商標法第50条第1項に規定する登録商標の使用に該当しないものである(商標法第50条第3項)。
ウ よって、乙第4号証の1ないし3を根拠とする本件商標の使用は、いわゆる「駆け込み使用」に該当するものである。
(2)使用に係る商品について
本件商標が使用されているという商品「タニタの電気抵抗値を計測する機器(電気磁気測定器)」は、「電気磁気測定器」に該当せず、医療用機械器具の範ちゅうに属し、仮に多面性を有する商品であるとしても「測定機械器具」の一種に属するもの、というべきである。
ア 乙第4号証の1ないし3のいずれにも掲載されている商品が「電気抵抗値を測定する機器(電気磁気測定器)」や「生体組織の電気抵抗値を計測するものであり、その結果として体脂肪などの体組織を推定する」ものという明示的な記載はない。
広告掲載商品を自然に見れば、乙第4号証の1には「タニタ」の「体組成計インナースキャン」及び「タニタ」の「活動量計カロリズムダイエット」が、乙第4号証の2には「TANITA」の「インナースキャン/InnerScan」及び「タニタ」の「体組成計インナースキャン」が、乙第4号証の3には「タニタ」の「活動量計カロリズムDIET」が商品名として掲載されているにすぎない。
そして、乙第4号証の1における「『健康をはかる』タニタの巻」「今度こそ!楽しく続けられるダイエットがしたい」等の記載から当該商品がダイエットに用いられる商品であり、「『体重計』や『体脂肪計』も良いけれどもうちょっと詳しく知りたい・・。そんな方におすすめなのが、1台で体重、体脂肪率はもちろん、筋肉量、推定骨量や体内年齢までわかるタイプの『体組成計』」等の記載より、これらの商品が人の健康状態を診断するための器具であることが明白である。
このような広告掲載に接する需要者・取引者は、その用途目的から当該商品がダイエットに用いられる「診断用機械器具」(医療用機械器具)の範ちゅうに属すると理解するのが通常であり、「電気抵抗値を測定する機器(電気磁気測定器)」と理解することはない。
イ 特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準」においても、「第10類、医療用機械器具」の「1.診断用機械器具」の項において「体脂肪測定器、体温計等」が例示され、さらに、特許庁の商品・役務リストによっても、「体組成計」も医療用機械器具の範ちゅうに属するものとして、「体重計」は「第9類、測定機械器具」に属するものとして扱われている(甲第7号証及び甲第8号証)。
また、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説」によっても、「電気磁気測定器」は「電気の単位又は磁気の単位を測定するものであって、電気又は磁気により測定するものではない。」旨解説されていることから、当該「体組成計」は、体内に電流を流して、すなわち「電気により」測定するものであるため、「電気磁気測定器」に属しない、といえる。
そして、前記区分解説によっても「電気又は磁気により測定するものは測定機械器具に属するが、電気の単位又は磁気の単位を測定するものは本来電気磁気測定器に含まれる。」旨解説されていることから、当該「体組成計」は、「電気により」測定するものであるため、測定機械器具の一種とみることができる余地はある。
さらに、同区分解説では続けて「また、医療用のものは第10類医療用機械器具に属する。」と解説されている
よって、本件使用商品「体組成計」は、被請求人の広告掲載上も、現行審査基準及び運用上も、「医療用機械器具」の範ちゅうに属し、掲載商品の「体重計」機能より、仮に多面性を有する商品であるとしても「測定機械器具」の一種に属する可能性がある程度のもの、というべきである。
ウ 加えて、乙第4号証の1及び2に掲載の商品「体組成計」は、元々は株式会社タニタの製造販売に係る商品であり、同社は、これに、「インナースキャン/InnerScan」という商標を付して使用し、商標「InnerScan」を第9類「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計,ベビー用体重計,キッチン用はかり,浴室用体重計,工業用はかり,商業用はかり,歩数計,・・・」、第10類「体脂肪測定器,体組成計,医療用生体電気インピーダンス分析器,血圧計,その他の医療用機械器具・・」等の商品を指定商品として登録している(甲第9号証)。
これより、株式会社タニタは、同社が扱う「体脂肪測定器」「体組成計」のみならず、「医療用生体電気インピーダンス分析器」についても自ら「医療用機械器具」に属するものとして登録している。
特に、「医療用生体電気インピーダンス分析器」は、乙第9号証で被請求人が紹介している生体電気インピーダンス(BIA)方式の分析器のことで、「体組成計」も当該方式を前提としているから「当該方式の体組成計」も「医療用機械器具」に属するものといえる。
したがって、製造メーカーである株式会社タニタがこのように商標登録しており、被請求人が小売の対象とする本件「体組成計」は、基本的には「医療用機械器具」にのみ属するものとみるべきである。
なお、「電気により」計測するものであること及び使用商品の「体重計」機能より、仮に多面性を有する商品であるとしても、「測定機械器具」の一種にも属する程度のもの、というべきである。
よって、本件使用商品「体組成計」は、前記商品区分解説に照らしても、また、製造メーカー(タニタ)が使用する商品の商標登録上も「医療用機械器具」に属し、仮に多面性を有する商品であるとしても、「測定機械器具」の一種にも属する程度のもの、というべきである。
エ 乙第4号証の1及び3に掲載の商品「活動量計」は上記アないしウと同様の観点からみて、広告掲載上、類似商品・役務審査基準及び運用に照らしても、また、製造メーカー(タニタ)が使用する商品の商標登録上も「測定機械器具」にのみ属し、「電気磁気測定器」に属しないものである。
オ 乙第13号証及び乙第14号証のメルマガは、被請求人の答弁書中で「タニタの『測る』機器(電気磁気測定器)」が販売されているとしているが、そのような商品掲載はなく、また「タニタの『測る』機器」でも何を測る具体的機器なのかメルマガ上全く不明であり、また、メルマガ上では「タニタの『測る』ダイエット」と掲載されており、説明と掲載内容も一致せず、「電気磁気測定器」について何ら使用されていない。
(3)本件商標の使用について
本件商標の使用は、オンラインショップ名として被請求人の小売業務についての使用であり、平成19年4月1日施行の小売等役務商標制度が設けられた以上、商品商標に係る指定商品についての使用に該当しない。
確かに、被請求人が根拠として挙げた知財高裁平成21年(行ケ)第10203号(平成21年11月26日判決、甲第14号証)で判断されているとおり、商標を小売等役務について使用した場合に、商品についての使用とは一切みなされない、ということができない場合があることは請求人も認めるところである。
しかしながら、前記判例も認めるとおり、商品の製造元・発売元を表示する機能を商品商標に委ね、商品の小売業を示す機能を小売等役務商標に委ねることが、小売等役務商標制度本来の在り方であり、小売等役務商標制度が施行された後においては、商品又は商品の包装に商標を付することなく専ら小売等役務としてのみしか商品商標を使用していない場合は、商品商標としての使用を行っていない、とみるべきである。
本件では、施行後の使用証拠(乙第4号証の1ないし3)は提出されているが、施行前の使用は一切証明されていないし、また、被請求人は、商標「DHC」を電気機械器具類等の小売等役務について現に多数取得(甲第15号証及び甲第16号証)しており混乱を生ずるおそれもない。
したがって、本件商標の使用はオンラインショップ名として被請求人の小売業務についての使用であり、指定商品についての使用に該当しない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
本件商標は、次のとおり、被請求人(商標権者)により、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その指定商品中「電気磁気測定器」に使用されている。
(1)本件商標の使用について
ア 被請求人について
被請求人は、1975年に株式会社として設立され、設立当時の翻訳事業や出版事業から、1980年代には化粧品の製造販売、通信販売を開始し、現在では、化粧品のほか健康食品の製造販売など幅広く事業を行っている(乙第3号証)。
イ インターネットにおける商品の販売について
被請求人は、インターネットによる通信販売において、「化粧品、健康食品」などを販売しているほか、美と健康にかかわる関連商品も多数販売している。そして、乙第4号証の1ないし3は、要証期間内にインターネット上で本件審判請求に係る商品(電気磁気測定器)を販売していたことを証明するものである。
また、乙第4号証の1ないし3の左上に「公式オンラインショップ/online shop」の文字が記載され、さらに、乙第4号証の1第4ページ(審決注:当該ページの提出はない。)の「商品のご相談、アドバイス」等の記載からも商標権者がインターネットにおいて商品の販売を行っていることが明らかである。
ウ 本件商標の使用について
被請求人は、本件商標を、本件審判の請求の登録前3年以内に、「電気磁気測定器」に使用している。
(ア)乙第4号証の1ないし3は、被請求人のウェブサイトであり、右下の「2012/02/23」の数字から、本件審判の請求の登録前の2012年2月23日付けのものであることが証明されている。
また、左上の横長の長方形内に「DHC」の文字を配した商標が付されているところ、「DHC」の文字自体も自他商品の識別表示としての機能を果たすものである。
(イ)そうとすれば、本件商標と社会通念上同一の商標が付されているものといえるから、本件審判の請求の登録前3年以内の要証期間に、本件商標を「電気磁気測定器」に使用していることが証明される。
エ 使用に係る商品について
(ア)被請求人は、乙第4号証の1ないし3において、「タニタ通販|おしゃれ雑貨のDHC」などの表示とともに、「タニタ」の「電気抵抗値を測定する機器(電気磁気測定器)」を販売している。
そして、被請求人が販売する上記のタニタの電気磁気測定器は、生体組織の電気抵抗値を計測するものであり、その結果として体脂肪などの体組織を推定するものである。
このことは、インターネット情報である「タニタの技術」のタイトルを付した乙第7号証からも明らかである。
すなわち、当該商品は、あくまでも、「生体組織の電気抵抗値を計測する」ものであり、「電気磁気測定器」の範ちゅうにも属する商品といえるものである。
また、「株式会社タニタ ユーザーサポート」においても「電気抵抗値(流した電気の量と出てきた電気の量との差)を計測することにより、からだの組織を推測するものである。」と記載されている(乙第8号証)。
以上のとおりであるから、被請求人がインターネット上で販売している商品は、電気や電流を計測する機器である「電気磁気測定器」の範ちゅうに属する商品ということができる。
なお、乙第4号証の1ないし3によれば、被請求人が販売しているタニタの製品の名称は「体脂肪計」や「体組成計」などの記載がなされているが、基本的には生体組織の「電気抵抗値」を計測するものであり、当該「電気抵抗値」を計測するものであることからすれば、その名称にかかわらず、「電気磁気測定器」の範ちゅうに属する商品とみても何ら差し支えない。
(イ)このことは、「体組成計physionMDの四肢筋肉量測定原理」(乙第9号証)において、「生体組成計physionMDは、生体電気インピーダンス(BIA)方式を採用しています。体内に電流を流して、その流れやすさ・流れ難さから体組成を推定しようとする方式です。」と記載されていることからも窺えるものである。
また、「『最新ハイテク講座』なぜ、体の中の脂肪量がわかるのか?『体脂肪計』」においても同様に記載されている(乙第10号証)。
すなわち、世界初の体脂肪計を開発したのはタニタであること、及び当該商品は「微弱な電流を体に流して体内の水分量から体脂肪を測定するインピーダンス法と呼ばれる測定法が用いられる。」との記載からも窺えるものである。
(ウ)一方、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説」によれば、「電気磁気測定器」とは、「電気の単位又は磁気の単位を測定するものであって、電気又は磁気により測定するものではない」と記載されている。
そうすると、「電気または磁気により測定するもの」は「電気磁気測定器」に含まれないとの記載からすれば、「電気により」、「生体組織の電気抵抗値を計測する」本件使用に係る商品も「電気磁気測定器」に含まれないとされる可能性も否定はできない。
しかしながら、上記の生体組織の電気抵抗値を計測するような機器は、単なる測定機械とみれば、第9類「測定機械器具」に属することになるし、また、当該測定値を専ら健康・治療等の目的として使用されるということに重きをおけば、第10類「医療用機械器具」に属することにもなる。
またその一方、「生体組織の電気抵抗値を計測する機器」とみれば、第9類の「電気磁気測定器」とみることもできるのである。
そうすると、上記のような多面性を有し、何れかに属するかを明確に判断することが困難な場合もあるのであって、かかる場合は、複数の概念に属する商品ということもできるのである。
このように、ある商品がその機能・品質・用途等からみて、どちらの商品にも属すると判断されるような場合は、どちらにも属するものとするのが過去の判決例においても是認されているところである(乙第11号証及び乙第12号証)。
オ 小括
以上のとおり、本件商標の使用に係る商品は、生体組織の電気抵抗値を測定する機器、すなわち「電気磁気測定器」にも属する商品ということができるものである。
よって、被請求人は、要証期間内に日本国内において本件商標と社会通念上同一の商標を「電気磁気測定器」に使用していたといえる。
カ その他の資料
被請求人は、前記の乙第4号証の1ないし3のほか、要証期間内の「メルマガ」においても、前述の「電気磁気測定器」について販売していた(乙第13号証及び乙第14号証)。
2 平成24年9月10日付け答弁(第2回)の理由
(1)駆け込み使用であるとの主張について
ア 被請求人と株式会社タニタ(以下「タニタ社」という。)との間には、本件審判請求日(平成24年2月16日)の約1年前の平成23年2月8日に、タニタ社に対し、「活動量計」や「体組成計」などの商品を販売するために注文をし、タニタ社からは2011年(平成23年)4月7日に「体組成計」の「御見積書」が送付されており、同「御見積書」に対応して、被請求人は、同年4月13日付けで上記商品の注文を行っている(乙第15号証ないし乙第17号証)。
上記のことから、乙第13号証のメルマガ(2011年2月28日)及び乙第14号証のメルマガ(2011年3月1日)において、上記商品が販売されていたとしても何ら不思議はない。
また、メルマガ掲載の商品の写真と乙第4号証の2の写真とは同一であるし、オンラインショップの商品名「タニタ 体組成計インナースキャンBC-716」と注文書、御見積書の商品名は同一であることから、当該商品が「体組成計」であることは明らかであり、既に2011年2月28日から3月1日にかけて、「体組成計」が販売されていた。
なお、上記商品の注文は、その後、2011年6月15日にも行っており、タニタ社からの同月22日付け「仕入れ伝票」、同日付けの「出荷案内書」、及び「納品書」などが存在する(乙第18号証ないし乙第21号証)。
上記のとおり、タニタ社に対する「体組成計」などの商品取引は、被請求人がインターネット販売を行なうために仕入れたものである。そして、これらをインターネット上で販売したところ、被請求人の会員が被請求人のサイトを見て注文し(注文日:本年1月12日)、本年1月14日付け(ただし、日付の記載はない。)納品書及び同月15日付けの納品書のとおり当該会員に商品を納品した(乙第22号証及び乙第23号証)。
イ 以上のとおり、被請求人は、上記タニタ社の製品を通信販売するために、既に本件審判請求の約1年前の平成23年2月からタニタ社と「体組成計」などの商品を注文し、仕入れるなどして販売していたのであるし、また、本件審判請求のなされる1ヶ月も前にこれらの商品を販売していた事実がある。
したがって、本件商標の使用は、請求人がいう商標法第50条第3項のいわゆる「駆け込み使用」であるとの主張は明らかに失当である。
(2)本件商標の使用は、小売役務の使用であるとの主張について
請求人は、「本件商標の使用はオンラインショップ名として被請求人の小売業務についての使用であり、平成19年4月1日施行の小売等役務商標制度が設けられた以上、商品商標に係る指定商品についての使用に該当しない。」と主張している。
しかしながら、本件商標は平成19年4月1日に施行された小売等役務商標制度導入前に出願され、設定登録されたものである。
そして、商標法第2条第1項第1号の「業として商品を・・譲渡する者がその商品について使用するもの」との規定については、小売等役務商標制度導入前後において特段の変更はないから、商品の製造者のみならず、商品の販売業者である小売業者も「業として商品を・・譲渡する者」に該当するものである。
したがって、インターネット上で「DHC」の商標を掲載して、「体組成計」などを販売する行為も、「業として商品を‥譲渡する者がその商品について使用するもの」に当たるから、当該行為が小売役務の使用であると主張する被請求人の主張は明らかに誤りである(乙第26号証ないし乙第28号証)。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人の提出した乙各号証により、被請求人(商標権者)は、日本国内において本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標と社会通念上同一の商標を本件審判請求に係る商品中の「生体組織の電気抵抗値を測定する機器」、すなわち「体組成計」などの「電気磁気測定器」に使用していたものといえる。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
(1)乙第4号証の1ないし3は、いずれも商標権者に係る「公式オンラインショップ」と称するウェブページを2012年(平成24年)2月23日にプリントアウトしたものであって、それぞれの1ページ目の左上に黒色の横長長方形内に「DHC」の欧文字を白抜きで表してなる商標(以下「使用商標」という。)が表示されている。
ア 乙第4号証の1の1ページ目には、「知って得する 突撃! ビューティ探検隊」として、「『健康をはかる』タニタの巻」の見出しの下、「タニタの『活動量計カロリズムダイエット』」の商品名とその商品の画像の下に「おもに歩行時間を計測する『歩数計』と異なり、じっとしているときの消費カロリー(安静時代謝)も計測してくれるのが、『カロリズムダイエット』」の説明があり、また「タニタの『体組成計インナースキャン』」の商品名とその商品の画像の下に「1台で体重、体脂肪率はもちろん、筋肉量、推定骨量や体内年齢までわかるタイプの『体組成計』!」との説明がある。
同じく、2ページ目には、「タニタ 体組成計 インナースキャン BC-750」「タニタ 体組成計 インナースキャン BC-716」及び「タニタ 活動量計 カロリズムダイエット AM-130」の各商品が、商品の画像や価格等とともに掲載されている。
イ 乙第4号証の2の1ページ目には、「“太りにくい”体づくりを応援 タニタの『測る』 ダイエット」の見出しの下、「タニタ 体組成計 インナースキャン BC-716」の商品名とその商品の画像及び価格等が掲載されている。
同じく、2ページ目には、「シンプルなボディに、うれしい&便利な機能満載」の項の下に「体重」「体脂肪率」「内臓脂肪レベル」「筋肉量」「基礎代謝量」などの記載とともにそれらの説明がある。
ウ 乙第4号証の3の1ページ目には、「“太りにくい”体づくりを応援 タニタの『測る』 ダイエット」の見出しの下、「タニタ 活動量計 カロリズムダイエット AM-130」の商品名とその商品の画像及び価格等が掲載されている。
同じく、3ページ目には、「タニタだからできる!高精度な計測で、体をしっかりマネージメント」の項に「消費カロリーを測定する『呼気分析法(間接熱量測定)』のデータと、3Dセンサーから得られるデータに登録した個人の体組成情報を組み合わせ、タニタ独自の方法でより正確に消費エネルギーを推定しています。」の説明がある。
同じく、6ページ目には、「表示内容」として「総消費エネルギー量」「安静時代謝量」「消費目標」「摂取目標」「今日の達成度」「目標の達成度」「歩数」等の記載がある。
(2)乙第7号証及び乙第8号証は、いずれもタニタ社に係るウェブページを2012年(平成24年)5月7日にプリントアウトしたものである。
ア 乙第7号証は、「タニタの技術」の見出しの下に「1.体組成計の原理(BIA法)」として、「タニタの体組成計はBIA法を用いています。BIA法は生体組織の電気抵抗値(生体インピーダンス)を測定することで、体脂肪率などの体組成を推定する方法です。生体組織において、脂肪組織はほとんど電気を通しませんが、筋肉などの電解質を含む組織は電気を通しやすい性質があります。電気の通りにくさ(電気抵抗と言います)をはかることで脂肪とそれ以外の組織の割合を推測しています。」の記載がある。
イ 乙第8号証は、「FAQ/よくある質問」の項に、「Q.体組成とは何ですか?(体組成計で測定できる項目を含む)」の質問に対する回答として、「A.からだを構成する組成分で、『脂肪』『筋肉』『骨』『水分』などを指します。タニタの体組成計では『体重』のほかに『体脂肪率』『筋肉量』『推定骨量』『内臓脂肪(レベル)』『基礎代謝量』などを測定することが出来ます。」の記載がある。
(3)乙第9号証は、株式会社日本シューターのウエブページを2012年(平成24年)5月7日にプリントアウトした「高精度筋量計 Physion MD」と称する商品についての説明であって、その2ページ目には、「体組成計 Physion MDの四肢筋肉量測定原理」の見出しの下、「体組成計 Physion MDは生体電気インピーダンス(BIA)方式を採用しています。体内に電気を流して、その流れ易さ・流れ難さから体組成を推定しようとする方式です。」「電気を流すだけで体組成が分かるわけではありません。」の記載がある。
(4)乙第10号証は、「livedoorニュース」と称するウェブページをプリントアウトしたものであって、「【最新ハイテク講座】なぜ、体の中の脂肪量がわかるのか?『体脂肪計』」の見出しの下、「2008年05月03日09時00分」の記載があり、その2ページ目には「体脂肪計が脂肪を測定できる理由」の項に「体脂肪計は、文字通りに体内に占める脂肪の割合(体脂肪率)を測定する道具だ。家庭向けの体脂肪計では、微弱な電流を体に流して体内の水分量の測定から体脂肪率を測定する『インピーダンス法』と呼ばれる測定法が用いられる。・・・体脂肪計は、体に電気を通したときの電気抵抗(インピーダンス)の大きさを計測し、体脂肪率を割り出している。」の記載がある。
(5)乙第13号証及び乙第14号証は、それぞれ「2011年2月28日の『メルマガ』」及び「2011年3月1日の『メルマガ』」とされるもの(いずれも2012年(平成24年)5月7日にプリントアウト)であって、それらの1ページ目の左上に、使用商標が表示されている。また、いずれにも「健康食品」や「化粧品」等のほか、「スマートな毎日を応援! タニタの『測る』ダイエット」として、タニタの商品が掲載されている。
(6)乙第18号証は、商標権者からタニタ社あての注文依頼であって、注文日を2011年6月15日、納品日を2011年6月23日とするものであり、注文内容の欄に「品番」及び「品名」として「BC-750」及び「体組成計インナースキャン」、「BC-716」及び「体組成計インナースキャン」の記載があるほか、仕様及び数量の記載がある。
(7)乙第19号証ないし乙第21号証は、タニタ社から商標権者あての2011年6月22日付け「仕入伝票」「出荷案内書」及び「納品書」であり、いずれにも「商品コード 品名」欄に「BC750」及び「BC716」の記載とともに各商品の数量の記載がある。
(8)乙第22号証及び乙第23号証は、2012年1月12日付けの「納品書」であり、左上に「会員番号」「お名前」と記載され(番号等は黒塗りされている)、右側中程に使用商標及び「株式会社DHC」(東京都港区南麻布2-7-1)の記載がある。そして「品名」欄には「【限定】タニタ インナースキャン BC-716-WH プレ付」の記載がある。また、下部の「お知らせ」欄には「マイDHCは、DHC通販や直営店でお買い物されたことがある会員様のためのWEBサービスです。」の記載がある。
2 上記1からすれば、次の事実を認めることができる。
(1)商標権者は、少なくとも平成24年(2012年)2月23日に、「タニタ 体組成計 インナースキャン BC-750」「タニタ 体組成計 インナースキャン BC-716」(以下、両商品をあわせて「本件体組成計」という。)及び「タニタ 活動量計 カロリズムダイエット AM-130」(以下「本件活動量計」という。)の各商品(以下これらをまとめて「使用商品」という。)の広告を内容とする情報に使用商標を付して電磁的方法により提供した(上記1(1))。
(2)使用商品は、次のとおりの商品と認められる。
ア 本件体組成計は、生体組織の電気抵抗値(インピーダンス)を測定することで、体脂肪率などの体組成を推定するものであって、「体脂肪率」「内臓脂肪レベル」「筋肉量」及び「基礎代謝量」などを表示するものである(上記1(1)イ、(2))。
しかしながら、電気抵抗値(インピーダンス)の測定はするものの、その数値を表示する機能は有していると認め得る証拠は見いだせない。
イ 本件活動量計は、消費カロリーを測定する「呼気分析法(間接熱量測定)」のデータと3Dセンサーから得られるデータに登録した個人の体組成情報を組み合わせ消費エネルギーを推定し、「総消費エネルギー量」「安静時代謝量」「消費目標」及び「歩数」などを表示するものである(上記1(1)ウ)。
しかしながら、電気や磁気の値を表示する機能を有すると認め得る証拠は見いだせない。
(3)乙第18号証と乙第19号証ないし乙第21号証の品番、数量等が一致すると認められることから、商標権者は、2011年(平成23年)6月に、品番「BC-750」及び「BC-716」の「体組成計」をタニタ社に注文し、その商品の納品を受けたことが認められる(上記1(6)、(7))。
また、商標権者は、2012年(平成24年)1月に、その会員に本件体組成計と認められる品名「タニタ インナースキャン BC-716-WH プレ付」を納品したことが認められる(上記1(8))。
3 判断
(1)使用商標について
使用商標は、上記1(1)のとおり黒色の横長長方形内に「DHC」の欧文字を白抜きで表してなるものであり、上記第1のとおり「DHC」の文字からなる本件商標と「DHC」の構成文字を共通にするから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえる。
(2)使用時期について
上記2(1)の商標権者が電磁的方法で提供した2012年(平成24年)2月23日は、本件審判の請求の登録(平成24年3月1日登録)前3年以内である。
(3)使用商品について
使用商品は上記2(2)ア及びイのとおりの商品である。
そして、被請求人は、使用商品は製品の名称として「体脂肪計」や「体組成計」などの記載がなされているが、基本的には生体組織の「電気抵抗値」を計測するものであるから、その名称にかかわらず、「電気磁気測定器」の範ちゅうに属する商品とみて差し支えない旨主張しているので以下検討する。
ア 「電気磁気測定器」については、商標法施行規則第6条「別表」において、第9類に属する商品の一として、「五 電気磁気測定器」と明示され、かつ、その範ちゅうに属するとする商品として「位相計」「磁気測定器」「電圧計」及び「電流計」等が例示されている。
そして、これら例示された商品は、「JIS工業用語大事典」(財団法人 日本規格協会発行)によれば、「位相計」は「同一周波数で同じ波形の二つの電気的入力量の間の位相角を指示する計器」、「電圧計」は「電圧を指示する計器」及び「電流計」は「電流を指示する計器」とされ(磁気測定器については掲載がない。)、「商品大事典」(東洋経済新報社発行)によれば、「磁気測定器」は「永久磁石やコイルに流れる電流などによる磁界の強さ、磁束、あるいは磁性材料の磁化特性などを測定する。」とされていることから、いずれも電気の単位又は磁気の単位を測定して指示する機器といえる。
そうとすれば、「電気磁気測定器」とは、「専ら電気の単位又は磁気の単位を測定して指示する機器」と解するのが相当である。
このことは、特許庁商標課編の「商品及び役務の区分解説」において、「電気磁気測定器」について、「この商品は、電圧計、磁気測定器等、電気の単位又は磁気の単位を測定するものが該当します。なお、電気又は磁気により測定する商品は、この商品には含まれず、本類『測定機械器具』に属します。」と記載されていることからも裏付けられる。
イ 以上を踏まえて、使用商品が「電気磁気測定器」の範ちゅうに属するものであるか否かについて検討すると、上記2(2)ア及びイのとおり、「体組成計」は「体脂肪率、筋肉量、基礎代謝量」等を表示(指示)することを目的とした商品、「活動量計」は「総消費エネルギー量、安静時代謝量、歩数」等を表示(指示)することを目的とした商品である。
そうとすると、使用商品は、専ら電気の単位又は磁気の単位を測定して指示する「電気磁気測定器」とはその目的、用途・需要者を異にする商品であり、「電気磁気測定器」の範ちゅうに属するものということはできない。また、他に、被請求人提出に係る乙各号証を総合してみても、これを覆すに足る事実は見いだせない。
ウ なお、被請求人は、使用商品は生体組織の電気抵抗値を計測するものであることから、「電気磁気測定器」の範ちゅうに属するものであり、また、二面性のある商品については、いずれかに属するかを明確に判断することが困難な場合には複数の概念に属する商品といえるので、使用商品は「電気磁気測定器」にも属する商品ということができる旨主張している。
しかしながら、使用商品は、上記2(2)のとおり、微弱な電流を体内に流し生体組織の電気抵抗値(インピーダンス)を測定することは認められるものの、測定した電気抵抗値を表示(指示)する機能を有するものとは認められず、その測定値を利用して体脂肪率や総消費エネルギー量等を表示(指示)する商品であるから、「電気磁気測定器」としての一面を持った商品ということはできない。
したがって、使用商品は「電気磁気測定器」の範ちゅうに属する商品ということはできないから、被請求人の上記主張は採用できない。
エ してみれば、使用商品は、いずれも「電気磁気測定器」の範ちゅうに属する商品とは認められない。
オ 小括
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品中「電気磁気測定器」についての使用を証明したということはできない。
その他、本件審判の請求に係る指定商品「電気磁気測定器,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電線及びケーブル」のいずれかについて本件商標の使用をしていることを認め得る証左は見いだせない。
(4) 請求人の主張について
駆け込み使用について
請求人は、乙第4号証1ないし3における使用商標の使用は駆け込み使用に当たる旨主張しているが、上記2(3)のとおり、商標権者は、本件審判の請求(平成24年2月16日請求)の約8か月前である平成23年6月ころから、タニタ社から本件体組成計の納品を受けていたこと、その後会員に本件体組成計が納品されていたことからすれば、商標権者は本件審判の請求がされたことを知る前から、本件商標を使用商品について使用をすることについて、具体的な使用準備がされていたとみるのが自然であるから、商標権者による使用商標の使用は、駆け込み使用に当たるということはできない。
イ 商品に係る商標の使用について
請求人は、本件商標の使用はオンラインショップ名として商標権者の小売り業務についての使用であり、小売等役務商標制度が設けられた以上、商品商標に係る指定商品についての使用に該当しない旨主張しているが、商品に係る商標は、「業として商品を・・・譲渡する者がその商品について使用をするもの」と定められ(商標法第2条第1項第1号)、その規定は、小売等役務商標制度導入前後において変更はなく、商品を譲渡する商標権者は「業として商品を・・・譲渡する者」に該当するから、本件商標は商標権者が本件商品について使用するものと解するのが相当である。
そうとすれば、上記1(1)のとおり、商標権者は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用して使用商品の広告を電磁的方法により提供したと認められるから、商品に係る商標の使用といえる。
したがって、請求人の主張は採用できない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品「電気磁気測定器,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電線及びケーブル」のいずれかについての本件商標の使用をしていることを証明したものと認めることはできない。また、被請求人は、請求に係る指定商品について使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、その指定商品中「電気磁気測定器,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電線及びケーブル」について、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-11-29 
結審通知日 2012-12-03 
審決日 2012-12-25 
出願番号 商願平10-94809 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Z09)
最終処分 成立 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 堀内 仁子
梶原 良子
登録日 2000-04-14 
登録番号 商標登録第4375999号(T4375999) 
商標の称呼 デイエッチシイ、デイエイチシイ、ディーエイチシー 
代理人 三好 秀和 
代理人 山田 清治 
代理人 萼 経夫 
代理人 岩崎 幸邦 
代理人 笠松 直紀 
代理人 伊藤 正和 
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