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審決分類 審判 一部無効 外観類似 無効としない X25
審判 一部無効 外観類似 無効としない X25
管理番号 1271095 
審判番号 無効2012-890068 
総通号数 160 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-04-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-08-06 
確定日 2013-02-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5296696号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5296696号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成21年7月17日に登録出願、第14類「身飾品,キーホルダー,宝石箱,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」、第18類「かばん金具,がま口口金,皮革製包装用容器,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,革ひも,毛皮」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,べルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同年12月16日に登録査定がなされ、同22年1月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第5155384号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成18年10月30日に登録出願、第14類「貴金属,キーホルダー,身飾品(「カフスボタン」を除く。),貴金属製のがま口及び財布,宝玉及びその模造品,宝玉の原石,時計」、第18類「かばん類,袋物,傘,革ひも,原革,原皮,なめし皮,毛皮」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,和服,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,乗馬靴」を指定商品として、同20年8月1日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,べルト,履物」についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出している。
1 請求の理由
(1)請求理由の要点
ア 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は引用商標と外観において類似するものであり、又、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
イ 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、引用商標の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似するものであり、又、引用商標の商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)具体的理由
ア 本件商標について
本件商標は、上記第1(別掲1)のとおり、骸骨頭部の外観から成るので、特定の称呼、観念は生じない。
イ 引用商標について
引用商標は、上記第2(別掲2)のとおり、骸骨頭部とその下部に交差した骨片とから成る外観であり、特別な称呼、観念は生じない。
ウ 商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標の構成
本件商標は、骸骨頭部から成り、骸骨頭部は縦長で略中央左右には上下方向に切れ込みが形成され、左右の眼が下方向に傾斜した垂れ目となり、鼻部分には切れ込みが設けられている。更に、口部分の歯は左右の歯が下方向に突出している。この様な骸骨頭部の外観である。
(イ)引用商標の構成
引用商標は、骸骨頭部と骸骨頭部の下部に交差した骨片から成り、骸骨頭部は縦長で略中央左右には上下方向に切れ込みが形成され、左右の眼が下方向に傾斜した垂れ目となり、鼻部分には切れ込みが設けられている。更に、口部分の歯が下方向に突出している。この様な骸骨頭部の下部に骨片が交差している外観である。
(ウ)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標とは骸骨頭部から成る外観では同一で、微細な部分については異なる点は存在する。
しかしながら、主要な部分である骸骨頭部は、細長な頭部、頭部中央左右に設けた切れ込み、左右の目が下方向に傾斜した垂れ目、鼻部分への切れ込みなど、本件商標と引用商標とは類似していると言わざるを得ない。
引用商標については、その骸骨頭部の外観形状は、非常にユニークな形状で、この様な形状を製作するのに、引用商標の商標権者は苦心の末に製作したものである。
このことは、第25類における被服での骸骨頭部の過去の登録例からも明らかである。
この過去の登録例では、40件示しており、「31番」に位置する引用商標は、過去の骸骨頭部の登録例とはイメージが明らかに異なる。
なお、甲第3号証の25(登録番号5102424号)、26(登録番号5102425号)、30(登録番号5127078号)は本審判請求人の登録商標である。
引用商標が登録されるまでの骸骨頭部は、引用商標の様なスマートな外観形状ではなく、引用商標が登録された後、スマートな引用商標に類似する本件商標が登録されている。
本件商標は引用商標とは微細な部分において異なるが、上記したように引用商標の基本的外観は類似するものであり、特に、被服の様な業界においては、取引者、需要者は本件商標と引用商標とは外観において相紛らわしいおそれを生じる。
(エ)結論
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは外観がきわめて類似する商標であり、本件商標の指定商品中、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物」は引用商標の指定商品と同一類似する。
また、出願の先後関係においても、既に登録済みの引用商標の後願である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
エ 商標法第4条第1項第10号について
(ア)引用商標の周知性について
甲第4号証は、引用商標が被服につき使用されている各雑誌である。
a ギンザ「株式会社マガジンハウス、2004年5月号」には引用商標がデニムパンツに使用されている。
b HUGE「株式会社講談社、平成16年5月1日発行」には引用商標がデニムパンツ、デニムシャツに使用されている。
c POPEYE「株式会社マガジンハウス、2004年5月25日発行」には引用商標がパンツに使用されている。
d メンズノンノ「株式会社集英社、2003年10月号」には引用商標がブルゾンに使用されている。
e メンズノンノ「株式会社集英社、2004年3月号」には引用商標がジャンパーに使用されている。
f メンズノンノ「株式会社集英社、2004年6月号」には引用商標がTシャツに使用されている。
g BARFOUT「株式会社ブラウンズブックス、2006年6月号」には引用商標がTシャツに使用されている。
h 流行通信「株式会社INFASパブリケーションズ、2006年2月号」には引用商標がファッションイベントで使用されている。
i 装苑「文化学園 文化出版局、2006年2月号」には、引用商標がファッションショーで使用されている。
j SENSE「株式会社センス、2003年7月号、2004年6月号、2005年12月号」には、引用商標がTシャツ、デニムパンツ、トランクスに使用されている。
上記のように、引用商標は、2003年ごろから被服について使用して雑誌などに掲載されており、本件商標の出願前(平成21年(2009年)7月17日)より使用して、引用商標の商標権者の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く知られている。
(イ)本件商標と引用商標との類否
両商標の類否については、前記ウ(ウ)(商標法第4条第1項第11号における本件商標と引用商標との類否)で述べたとおり、引用商標の基本的外観は類似するものであり、特に、被服のような業界においては、取引者、需要者は本件商標と引用商標とは外観において相紛らわしいおそれを生じる。
(ウ)結論
以上のとおり、本件商標は、引用商標の商標権者の業務に係る商品である第25類「被服」を表示するものとして需要者の間に広く知られている引用商標に類似する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
(3)結び
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第10号に該当するものであるから、同法第46条の規定により、その登録は無効とされるべきである。
2 弁駁の理由
(1)そもそも、頭蓋骨を基本モチーフとするデザインはありふれており、この頭蓋骨と交差した骨片との構成要素の中で、各自はそれぞれ創意工夫している、との破請求人の答弁はもっともであり、各自が創意工夫したデザインは、特にイメージを重要視するアパレル業界においては尊重すべきである。
そこで、頭蓋骨と交差した骨片との構成要素の中で、各自がそれぞれ創意工夫した事実関係につき、考察するに、その証拠としては、請求人が提出した甲第3号証、被請求人が提出した乙第2号証に記載の商標が存在する。
これらに記載の商標において、頭蓋骨だけに着目するに、頭蓋骨の両目、鼻、両目上部の両側部のみを抜いた商標は、請求人が権判者の商標登録4997944号(甲第3号証の19番目に記載、平成18年3月9日出願、平成18年10月20日登録)までは存在していない。
さらには、頭蓋骨の上下左右の絶妙なバランスからなるデザイン形状、この頭蓋骨への絶妙なバランスでの両目、鼻、両目上部の両側部の抜いたデザインの頭蓋骨は上記登録商標の存在までは無い。
被請求人の答弁書記載のように、頭蓋骨の図形を基本モチーフとするデザインはありふれており、このようにありふれているデザインでは、頭蓋骨のデザインを創意工夫して、他者との違いを明確に相違する頭蓋骨をデザイン化することは非常に難しい。
請求人の引用商標は、上述したように、ありふれている頭蓋骨のデザインにおいて、今までには存在していない斬新なデザインで、他者との違いが明確なデザインである。
請求人の引用商標は、どのようにして創意工夫したかを詳述するに、(ア)頭蓋骨の両目、鼻、両目上部の両側部のみを抜き、さらに、(イ)この頭蓋骨の形状をデザイン化し、(ウ)この頭蓋骨への両目、鼻、両目上部の両側部への抜き部分の形状をデザイン化し、(エ)これらの位置関係をデザイン化して、他社とは異なる頭蓋骨を創意工夫したものである。
即ち、(ア)頭蓋骨の両目、鼻、両目上部の両側部のみを抜き、さらに、
(イ)この頭蓋骨の形状、
(ウ)頭蓋骨への両目、鼻、両目上部の両側部への抜き部分の形状、
(エ)これらの位置関係は、
今までの頭蓋骨とは明らかに相違し、このような頭蓋骨は請求人の上記登録商標が最初である。
このように、引用商標は請求人が上記(ア)ないし(エ)の四段階を踏まえて、苦心惨海の末に創意工夫したデザインで、かかる引用商標は十二分に商標権として保護されてしかるべきである。
上記内容を踏まえて、本件商標を観察するに、被請求人は引用商標との差異点を縷々述べているが、これら差異点は微々たるもので、引用商標の(ア)ないし(エ)の四段階に基づいている。
本件商標は引用商標の上記四段階の特徴をすべて踏まえたうえで、微細な点を変えているだけで、何ら引用商標との非類似性は見受けられない。
即ち、本件商標は引用商標と同様な、上記(ア)ないし(エ)であり、引用商標と同じ四段階に基づいてデザインされており、このような本件商標は引用商標と外観が類似していること明白である。
被請求人は当初、どのようなデザインの頭蓋骨を使用していたか、実際にどのような頭蓋骨を商品に使用しているかは、請求人は全て把握している。
本件商標は微細な点で引用商標とは異なるので、引用商標とは非類似であるとの披読求人の答弁は、何ら答弁の様を成していない。
(2)即ち、引用商標は請求人が苦心惨潅の末に創作したデザインで、微細な箇所で本件商標は引用商標とは異なると被請求人は答弁しているが、被請求人の本件商標は、引用商標と類似すること明白であり、商標法第4条第1項第11号の規定に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第17号証を提出している。
1 被請求人の主張の要点
本件商標と引用商標とは外観において顕著に相違し、また、観念及び称呼も類似するとはいえず、取引の実情等を考慮しても、本件商標がその指定商品に使用された場合に、引用商標との間で商品の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから、両商標は類似しないと目するのが相当である。また、引用商標は、周知商標と到底いえるものではないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第10号の規定に該当せず、請求人の上記主張には理由がなく、当を失するものである。
2 請求人の主張が当を失する理由
(1)本件商標と引用商標の非類似性について
ア 商標の類否判断の基準について
商標の類否判断は、同一又は類似の商品に使用された商標が、その外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものである(最高裁昭和39年(行ツ)第110号 同43年2月27日判決参照)。
もっとも、特定の観念や称呼を生じない図形商標同士の類否判断は、それぞれの商標の構成全体の有する外観上の印象が互いに相紛らわしいか否かによってするべきである(東京高裁平成12年(行ケ)第147号 同12年9月21日判決等参照)。
そして、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号 同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号 同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照、最高裁平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
そこで、上記の観点から本件商標と引用商標の非類似性について述べる。
イ 本件商標について
本件商標の構成は、黒塗りで表された頭蓋骨のみで構成されてなる。
該頭蓋骨部の全体的な輪郭は縦長でスマートに形成され、眼窩部は下方向に傾斜した垂れ目状に白抜きされ、側頭骨部には縦細の切り込みが白抜きされ、鼻孔部は縦長h状に白抜きされ、頬骨部は左右に膨出することなく下方に向かって略三角形状に突出してなり、上顎部の下端は緩やかな弧を描いた形状であり、上顎部の下端には2本の長い牙が設けられ、該牙に挟まれる態様で略縦長長方形状の6本歯が並置されてなる。
前記構成からなる本件商標からは、格別の称呼、観念は生じることはない。
ウ 引用商標について
引用商標の構成は、黒塗りで表された頭蓋骨と、その下部に交差した2本の骨片からなり、頭蓋骨と骨片はそれぞれ分離して構成されてなる。
該頭蓋骨部の全体的な輪郭は縦方向長さ及び横方向長さにおいてズングリするように形成され、眼窩部は下方向に傾斜した外郭線を波状とする垂れ目状に白抜きされ、側頭骨部には幅広の切り込みが白抜きされ、鼻孔部は幅広逆v状に白抜きされ、頬骨部は左右に膨出するように波状に突出してなり、上顎部の下端も波状に突出してなる。
前記構成からなる引用商標からは、格別の称呼、観念は生じることはない。
エ 本件商標と引用商標の類否判断
(ア)本件商標と引用商標の共通点
そこで、本件商標と引用商標とを比較すると、両商標は、黒塗りで表された頭蓋骨をモチーフとする点、頭蓋骨部の眼窩部が垂れ目状に白抜きされている点、側頭骨部及び鼻孔部が白抜きされている点において共通するものである。
(イ)共通点の普遍性
しかしながら、上述した黒塗りで表された頭蓋骨をモチーフとする図形商標は、アパレル業界において被服等のブランドとして数多く採択され、各社商標登録がなされている。
すなわち、頭蓋骨を基本モチーフとするデザインは、この種業界において好まれて採択されているものであり、むしろありふれていると言っても過言ではなく、各社は、骸骨頭部という限られた構成要素の中で、表現方法においてそれぞれ創意工夫をしているのが実情である。
したがって、黒塗りで表された頭蓋骨をモチーフとするという抽象的かつ漠然とした共通性をもって両商標を類似する商標ということはできないことは明らかである。
そして、頭蓋骨部の眼窩部を表現する際には、頭蓋骨という性格上、垂れ目状に表現されることや頭蓋骨部をシルエット状に図形を表現する際に側頭骨部及び鼻孔部が白抜きされていることは極普通の表現であり、取引者、需要者の印象に残り難いものである。
このように多数採択されている頭蓋骨の図形に接した取引者、需要者は、単に抽象的な頭蓋骨の図形であるとみるよりは、むしろ、細部に亘る構成部分においてどのような創意工夫が表現されているのかという点に強い注意を惹くものである。
すなわち、今日のように情報媒体が多様化し、情報量が飛躍的に増大した社会において、一般世人は多量の情報を識別認識することに慣れ、個々の情報間の差異に敏感に反応する習性が培われていることは顕著な事実であるところ、前記黒塗りで表された頭蓋骨と交差した骨片からなる図形商標は、アパレル業界において被服等のブランドとして数多く採択され、各社商標登録をしている実情にあっては(乙2)、黒塗りで表された頭蓋骨からなる図形商標に接する取引者、需要者は、その商品の購入を検討するに際して、細部における図形商標の具体的な表現方法の違いまで着目して、各人の好みや用途に沿った商品を選択することも決して少なくないというのが相当である。
ましてや、頭蓋骨からなる図形商標が現実に使用されるこの種商品は極めてファッション性が強いものであり、該商品に接する取引者、需要者は、一層デザインの細部に亘る部分まで注意が惹かれてくるものといえる。
それ故、両商標との間に存在する共通点は、いずれも、両商標の構成上の抽象的なモチーフにおける共通点に過ぎないものであり、両商標の類否に影響を及ぼさないものである。
そして、抽象的なモチーフを同じくする図形同士の類否において、具体的な構成が対比された結果、外観上類似すると判断された審決例・決定例は、多数存在し、このような例は枚挙に暇がないものである。
(ウ)本件商標と引用商標の相違点
次に、本件商標と引用商標の相違点について検討するに、両商標は、次のとおり、顕著な相違点があるものである。
まず、本件商標は、黒塗りで表された頭蓋骨のみで構成されているのに対して、引用商標は、黒塗りで表された頭蓋骨とその下部に交差していると思しき2本の骨片がそれぞれ分離して構成されているという差異を有する。
該差異は、そもそも、構成部材が頭蓋骨のみか、骨片も構成中に含むかという全体的なシルエットにおける顕著な差異というべきものであり、該差異を有することで両商標は自ずと印象においても全く相違するものである。
ましてや前述のとおり、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないところ、引用商標において、頭蓋骨部のみが、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であるとも、また、引用商標において骨片部が出所識別標識になり得ないとも到底いえるものではない。
それ故、頭蓋骨のみの本件商標と頭蓋骨及び骨片からなる引用商標とは全体的なシルエットにおける顕著な差異があるといえ、該差異を有することで両商標はおのずと印象においても顕著に相違するものである。
したがって、骨片の有無という顕著な相違は、両商標の類否を左右するほどの大きな影響を与えるものといえる。
また、本件商標は、頭蓋骨部を縦長で細身でスマートな形状とし、全体的なシルエットも明瞭に写実的に表現したものであるとともに、本件商標の上顎部下端において、緩やかな弧を描いた形状であるとともに2本の長い牙が設けられ、該牙に挟まれる態様で略縦長長方形状の6本歯が並置されてなるのに対して、引用商標は、頭蓋骨部をズングリとし、全体的なシルエットもぼんやりと表現するとともに、引用商標の上顎部下端において上顎部の下端も波状に突出してなるという点において差異を有する。
本件商標は牙等を設け上記のように明瞭に写実的に表現したことにより、骸骨の本物感、恐怖感、ワイルドでシャープという印象を看取できるのに対して、引用商標からはズングリしてぼんやり表現したことにより愛嬌さを看取できるものであり、その印象において相違するものである。
さらに、本件商標の眼窩部の外郭線は波状ではないのに対して引用商標の眼窩部の外郭線は波状であるという点、本件商標の鼻孔部は縦長h状に白抜きされているのに対して引用商標の鼻孔部は幅広逆v状に白抜きされているという点、本件商標の側頭骨部の白抜き部は縦細の切り抜き状であるのに対して引用商標の側頭骨部の白抜き部は幅広であるという点、本件商標の頬骨部は左右に膨出することなく下方に向かって略三角形状に突出してなるのに対して引用商標の頬骨部は左右に膨出するという点において、差異を有するものである。
すなわち、本件商標と引用商標は共に頭蓋骨をモチーフにしたという抽象的な共通性は有するものの、それぞれ各構成部分の表現形態を全く異にするものである。
そして、本件商標からは、頭蓋骨の輪郭、眼窩部、鼻孔部、頬骨部、側頭骨部、上顎部の表現、さらには牙及び歯の存在から、全体として本物感、恐怖感、ワイルドでシャープという印象を与えるのに対して、引用商標からは、頭蓋骨の輪郭、眼窩部、鼻孔部、頬骨部、側頭骨部、上顎部及び骨片の表現から、全体としてぼってりとした愛嬌のある印象を与えるものである。
(エ)小括
以上の次第で、両商標は、頭蓋骨をモチーフとしたという抽象的な共通点を有するとしても、骨片の有無という顕著な差異とともに、頭蓋骨部においても具体的構成及びその表現方法において顕著な差異があるため、それぞれの全体から受け取る印象は異なり、両商標を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上、明らかに区別し得るものである。また、互いの称呼及び観念については比較し得ないものである。
また、被請求人は、本件商標を指定商品「被服」等アパレル製品に大々的に使用し、また多数の企業にライセンスを許諾した事業を展開した結果、有名歌手や側憂に愛用される程になっており、本件商標は、今や被請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く知られるに至っているものである。
そして、今現在に至るまで、請求人による引用商標を使用した商品と被請求人による本件商標を使用した商品との間で、商品の出所に誤認混同を生じさせるような事実は認められないものである。
したがって、両商標は、外観上相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当であり、取引の実情等を考慮しても、本件商標がその指定商品に使用された場合に、引用商標との間で商品の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから、両商標は、類似しないものである。
(2)引用商標が周知商標でないことについて
請求人は、甲第4号証を提出し、引用商標が周知商標であると主張しているところ、甲第4号証における各雑誌においては、引用商標が使用されたデニムパンツ、ティーシャツ、ジャンパー等の被服が販売されている事実について、被請求人は必ずしも否定するものではない。
しかしながら、甲第4号証として提出された雑誌は、いずれも多数のアパレル製品が紹介されているファッション誌であり、その記事も必ずしも目立つものともいえないものである。そして、どの程度の需要者がこれら雑誌を見て、どの程度の需要者が引用商標を使用した被服に着目したのかも、全くもって不明である。また、甲第4号証として提出された雑誌は、僅か12冊に過ぎず、周知商標であること証明する証拠としては、極めて脆弱と言わざるを得ないものである。
したがって、請求人は「引用商標の商標権者の業務に係る商品又は役務を表示するものとして需要者の間に広く知られている」事実を証明できておらず、それ故、引用商標は周知商標ではないことは明らかである。
3 結語
したがって、本件商標と引用商標とは、外観において顕著に相違し、また観念及び称呼を対比すべき術もなく、取引の実情等を考慮しても、本件商標がその指定商品に使用された場合に、引用商標との間で商品の出所に誤認混同を生じさせるおそれはないから、両商標は非類似の商標である。
また、引用商標は、周知商標と到底いえるものではないものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第10号の規定に該当しないものである。

第5 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、黒塗りの正面を向いた頭蓋骨の図形からなるものであり、特定の称呼及び観念は生じないものである。
2 引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、黒塗りの正面を向いた頭蓋骨とその下に扁平に交差させた二本の骨を組み合わせた図形からなるものであり、特定の称呼及び観念は生じないものである。
3 商標法第4条第1項第11号について
本件商標と引用商標を比較すると、両商標は、前記1及び2に示すとおりの構成よりなるところ、本件商標は、黒塗りで表されたシルエットの頭蓋骨のみで構成されているのに対して、引用商標は、黒塗りで表されたシルエットの頭蓋骨とその下に扁平に交差させた二本の骨を組み合わせたものとで構成されているものである。
そして、頭蓋骨の形状においては、両目、鼻、両目上部の両側部のあたりの、白抜きで描かれた部分が、それぞれ相違するものであって、また、本件商標には、引用商標にはない上顎の歯も描かれているものである。
そうすると、本件商標と引用商標の頭蓋骨の形状においては、上記した差異を有し、また、頭蓋骨の形状以外においては、引用商標には、本件商標にない扁平に交差させた二本の骨を組み合わせたものが描かれている差異を有するものである。
そうとすれば、両商標における外観上の上記の差異は、全体的なシルエットにおける顕著な差異というべきものであり、該差異を有することで両商標は自ずと外観の印象においても全く相違するものである。
そうしてみると、両商標を対比観察した場合はもとより、時と処を異にして離隔的に観察した場合においても、外観上、明らかに区別し得るものである。
また、本件商標及び引用商標は、特定の称呼及び観念は生じないものであるから、称呼及び観念については比較し得ないものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても、類似しない商標である。
したがって、本件商標は、引用商標に類似しない商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当しないものである。
4 商標法第4条第1項第10号について
請求人が提出した乙第4号証によれば、引用商標を付した商品「デニムパンツ、ブルゾン、Tシャツ、トランクス」が、雑誌に掲載されていることは認められるとしても、該商品の売上高、譲渡の数量等が明らかにされていないものであるから、引用商標は、その請求に係る指定商品「被服、が一ター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物」の需要者の間に広く認識されている商標ということができない。
そして、前記3で示すとおり、本件商標は、引用商標に類似しない商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しないものである。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の指定商品中、その請求に係る指定商品「被服、ガーター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物」について、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当しないものであるから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標)




審理終結日 2012-12-10 
結審通知日 2012-12-13 
審決日 2012-12-27 
出願番号 商願2009-54402(T2009-54402) 
審決分類 T 1 12・ 251- Y (X25)
T 1 12・ 261- Y (X25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅沼 結香子手塚 義明 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2010-01-22 
登録番号 商標登録第5296696号(T5296696) 
代理人 飯島 紳行 
代理人 木村 純平 
代理人 山田 和明 
代理人 藤森 裕司 

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