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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y25
管理番号 1269631 
審判番号 取消2011-300518 
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-06-03 
確定日 2013-02-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4660048号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4660048号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成14年3月8日に登録出願、第25類「米国製のスウェットパンツ,米国製のベスト,米国製のティーシャツ,米国製のスウェットシャツ,米国製のその他の被服,米国製のガーター,米国製の靴下止め,米国製のズボンつり,米国製のバンド,米国製のベルト,米国製の履物,米国製の仮装用衣服,米国製の運動用特殊衣服,米国製の運動用特殊靴」を指定商品として、同15年4月4日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は平成23年6月22日になされている。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べた。
2 請求の理由
(1)本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(2)審判事件弁駁書における主張
ア 被請求人主張事実に対する認否
次の3点に関して、以下のとおり認否する。
(ア)商標権者(被請求人)が、乙第1号証及び乙第2号証に記載の「米国製のTシャツ」(以下「本件商品」という。)を米国において生産したとの主張
当該生産事実を客観的に確認できる証拠は、被請求人により何ら提示されておらず、また、被請求人から株式会社ライトアップショッピングクラブ(以下「ライトアップショッピングクラブ」という。)ヘ商品が譲渡された具体的態様の明示も無い。
したがって、証拠不十分であるので、同主張事実に対して、不知もしくは否認する。
(イ)東京都港区に住所を有するライトアップショッピングクラブが、日本で本件商品を本件審判請求登録日前3年以内に販売したとの主張
当該販売事実を客観的に確認できる証拠は、被請求人により何ら提示されておらず、また、被請求人からライトアップショッピングクラブヘ商品が譲渡された具体的態様の明示も無い。
したがって、証拠不十分であるので、同主張事実に対して、不知もしくは否認する。
(ウ)商標権者(被請求人)が本件商品に本件商標を使用したとの主張
被請求人は、商標権者が本件商品に本件商標を使用したと記載するが、乙第1号証及び乙第2号証が示すとおり、虚偽の主張である。当該商品に付されている商標(襟ネーム部分)は、別掲2のとおりの構成であり、本件商標の使用とはみなされない。
したがって、同主張事実に対して、否認する。
同時に、「商標権者(被請求人)による使用」という表現も、商標法上の「(標章についての)使用」であることの説明は何らなされていない故、この点に関しても、不知もしくは否認する。
なお、別途、商標権者により米国において当該商品に本件商標が何らかの形で付されていた事実が追加立証されたとしても、商標権者による商標法第2条に規定の「使用」が立証されなければ、無意味である。
イ その他(使用権者の使用にも該当しないこと)
原本未確認であるので断定はできないが、乙第1号証及び乙第2号証によれば、ライトアップショッピングクラブが、本件商品を販売するために、広告・宣伝として、本件商標を使用したことは事実と思われる。
その場合、ライトアップショッピングクラブが「通常使用権者」(「専用使用権者」でないことは登録原簿から明らかである。)であることの立証も、本件審判請求不成立の十分条件であるが、その主張・立証もなされていない故、使用権者による「本件商標」の使用にも該当しない。
ウ 結論
以上のとおり、被請求人提出の審判事件答弁書においては、商標権者及び使用権者のいずれかが本件審判請求登録日前3年以内に本件商標を使用したことは、何ら立証されていない。
(3)口頭審理陳述要領書における主張
ア 被請求人の主張の整理
(ア)被請求人の事実主張
被請求の事実主張は、次のとおり集約できる。
2008年から2010年の間に、被請求人(商標権者)が、a)社会通念上本件商標と同一とは認められない商標を米国において付した米国製Tシャツ(以下「a)Tシャツ」という。)とb)本件商標の表示された紙製タグ(以下「b)タグ」という。)を、直接又は間接に日本へ輸出し、株式会社ソーズカンパニー(以下「ソーズカンパニー」という。)がそれらを輸入し、同社が日本において上記b)タグをa)Tシャツに付して、ライトアップショッピングクラブヘ販売した。また、ライトアップショッピングクラブは、販売カタログに本件商標を使用した。
(イ)被請求人の法律主張
a 被請求人の法律主張1
被請求人からソーズカンパニーヘのa)Tシャツ、b)タグに関する譲渡行為をとらえて、商標権者による商標法第2条第3項第2号の使用(譲渡)に該当すると主張(以下「法律主張1」という。)。
b 被請求人の法律主張2
ソーズカンパニーがa)Tシャツとb)タグを輸入した行為をとらえて、商標権者による商標法第2条第3項第2号の使用(輸入)に該当すると主張(以下「法律主張2」という。)。
c 被請求人の法律主張3
ライトアップショッピングクラブが販売カタログに本件商標を掲載した行為をとらえて、商標権者による商標法第2条第3項第8号の使用(広告に際しての使用)に該当すると主張(以下「法律主張3」という。)。
イ 事実主張に関する認否及び請求人主張
(ア)証拠に対する認否
a 乙第1号証及び乙第2号証については概ね認める。
b 乙第3号証については、被請求人と利害関係を共にするソーズカンパニーの代表者の証明は、非常に証拠価値の低いものであるから、不知もしくは否認する。特に、ソーズカンパニーが、本件の要証期間内に、b)タグを輸入し、日本においてa)Tシャツに付して販売した事実に関しては、なんら証拠の提示が無い故、否認する。
c 乙第5号証については、証拠提示のINVOICEにはサインも無く、運送業者の証券も伴われておらず、証拠価値は低いものであるが、a)Tシャツが5,454枚及び604枚それぞれ輸出された事実は、概ね認める。
(イ)請求人の主張
a 被請求人の出荷状態
日本のGLMARKET社(愛知県東海市)が、2008年当初から2009年中ごろまでの間に、米国商社経由で品番が一致する被請求人の商品を購入した実績は次のとおりである。
(a)商品に付帯された下札
商品に付帯された下札に、本件商標又はこれと社会通念上同視し得る商標は使用されていない。
また、被請求人から商品を輸入している株式会社サンリバー(大阪市西区)からも、同社は2010年ないし2011年に半袖Tシャツなどを輸入したが、下札は一切付いていなかったとの証言を得ている。
(b)商品に付帯された襟ネーム
商品に付帯された襟ネームに、本件商標又はこれと社会通念上同視し得る商標は使用されていない。
(c)まとめ
日本の輸入社が、2008年当初から2011年中ごろまでの間に米国商社経由で被請求人の複数の品番にわたり購入した商品には、本件商標又はこれと社会通念上同視し得る商標は一切使用されていない。
したがって、被請求人が2008年当初から2011年中ごろまでの間に生産し日本へ輸出した商品には、本件商標又はこれと社会通念上同視し得る商標は一切使用されていないと推定することは妥当である。
また、2010年中ごろから2011年中ごろまでの請求人の入念な市場調査によっても、本件商標又はこれと社会通念上同視し得る商標を付した商品が一件も見当たらないことからすれば、本取消審判請求の要証期間内に、本件商標又はこれと社会通念上同視し得る商標は、いかなる形態においても被請求人の生産した商品に一切使用されていなかったと推定することが妥当である。
b 結論
特に、ソーズカンパニーが、本件の要証期間内に、b)タグを輸入し、日本においてa)Tシャツに付して販売した事実に関しては、なんら証拠の提示が無い故、否認する。
ウ 法律主張に関する請求人の主張
(ア)法律主張1について
被請求人は、被請求人からソーズカンパニーヘのa)Tシャツとb)タグに関する譲渡行為をとらえて、商標権者による商標法第2条第3項第2号の使用(譲渡)に該当すると主張するが、事実認否のとおり、a)Tシャツの譲渡は概ね認めるが、b)タグの譲渡に関しては信ぴょう性のある証拠の提示が無い故、同法第50条第2項の立証がなされていない。したがって、法律主張を云々することすら意味が無い。
仮に、百歩譲って、被請求人の主張事実を認めるとしても、以下のとおり、法律主張には誤りがあり、法律主張1は成立しない。
a)Tシャツとb)タグに関する被請求人とソーズカンパニーの直接・間接の売買契約をもって譲渡と主張しているものと思われるが、譲渡成立時において、その目的物たるa)Tシャツとb)タグは、日本領域外の米国に存する。
そして、我が国においては、商標法の立法において、領域内の行為に対してのみその規定をしていることが見て取れ、また、最高裁でも判示(「BBS事件」平成7年(オ)第1988号・民集51巻6号2299頁、「FM復調装置(カードリーダー)事件」・民集56巻7号1551頁 参照)しているように、立法・司法両面において、知的財産における「厳格な属地主義」を少なくとも現時点では採用している。
したがって、被請求人は米国に存するa)Tシャツとb)タグの譲渡行為をとらえて「(日本商標法上の)商標の使用」にあたると主張するが、譲渡成立時において、その目的物たるa)Tシャツとb)タグは日本領域外の米国に存するのであり、そのような譲渡行為は、日本商標法上の規定も無ければその効力範囲にも属さない故、「(日本商標法上の)商標の使用」ということはできない。
よって、法律主張1は、成立の余地が全くない。
(イ)法律主張2について
ソーズカンパニーがa)Tシャツとb)タグを輸入した行為をとらえて、商標権者による商標法第2条第3項第2号の使用(輸入)に該当すると主張するが、事実認否のとおり、b)タグを輸入した事実に関してなんら信ぴょう性のある証拠の提示が無い故、同法第50条第2項の立証がなされていない。したがって、法律主張を云々することすら意味が無い。
仮に、百歩譲って、被請求人の主張事実を認めるとしても、以下のとおり、法律主張には誤りがあり、法律主張2は成立しない。
被請求人は、法律主張2の根拠として、「イムズ事件」(平成14年(行ケ)第346号)を引用するが、以下のとおり、同判決には法律解釈上の誤りがあり、根拠としての価値を欠く。
行為とは、「人が自らの意思に基づいてする動作」「人の意思に基づく身体の動静」である。商標法第2条第3項第1号の「(商品に)標章を付する」という行為は、行為者が意思(商品に標章を付したいという意思)をもって「標章を付する」という行為をしなければ、当該行為自体が成立しない。行為者が意思をもって「標章を付する」という行為をした場合、商標法上「標章の使用」と認定され、その標章が「商標」であった場合、行為者の意思とは別の法律効果(侵害事実に基づく商標権者の請求権・使用事実に基づく商標取消に対する対抗権等)を生じるという意味において事実行為である。
また、同第1号の行為者によって「(商品に)標章を付する」という行為がなされた後、商品がその行為者の手元を離れ、転々流通する過程で、その商品から当該標章がはく奪抹消されなければ、1号行為の商標法上の効果が継続することは事実である。しかし、1号行為者が「(商品に)標章を付する」という行為をした後、当該商品が自らのコントロールができる状態で手元にあるような場合は、「同標章をはく奪抹消することが1号行為者によって可能な状態であるにも関わらずそのはく奪抹消をしない」という意味において同1号行為者の意思において1号行為が継続しているとして、同状態(商品に標章が付されている状態)をもって1号行為と認定することは妥当であるが、当該商品がいったん1号行為者の手元を離れて以降は、1号行為者の「標章を付する」意思の継続によって、商品に標章が付された状態が継続しているのではなく、それは糊・糸等の物理的力によって、慣性の法則によって、偶然等によって、又は、その需要者の意思によって、その状態が継続されているだけである。第三者の手中にある商品の商標がはく奪抹消されるか否かは当該第三者の意思・行為等により決定されるものであり、1号行為者が望むと望まざるとに関わらず第三者によって結果が左右される状況である。また、商標のはく奪抹消行為は、原則として商標権侵害には該当しないと解されている(「商標法〈第1次改訂版〉」平尾正樹著295頁)。そのような状態においてたまたま1号行為者の意思と同一の効果が継続されていたとしても、1号行為者の行為とはもはや認定することはできない。
しかし、例えば、1号行為者が「商標のはく奪抹消をしないことを条件に、又は、商標のはく奪抹消に関する権限を1号行為者が留保することを条件に、当該商品を流通の途にのせたような場合」であって、「そのような条件販売が適法であり」、かつ、「商品に当該商標が付している状態が第三者の手中にある商品に継続しているような場合」は、当該状態をもって、1号行為者の使用行為と認定することも可能であると考える。その場合も、1号行為の継続が日本領域内において継続している事実を輸入という行為を通して確認できたからであって、輸入行為の主体を輸出者と認定することは、両者が同一法人であるか、輸出者が自らの代理行為として輸入者に輸入をさせた場合以外に、単なる効果をとらえて、輸出者が輸入したなどとすることは法律以前の国語の問題で間違った解釈である。しかし、本件においては、被請求人自ら事実主張するように、被請求人の手元を離れる段階で、既に本件商標は商品に付されていない状態であり、かつ、前述イ(イ)aで証明のとおり、被請求人には商品に本件商標を付する意思すらあるとは到底思われないのであるから、そのような状態を商標法上の使用と認定できる余地は全くない。
したがって、法律主張2は、成立の余地が全くない。
(ウ)法律主張3について
ライトアップショッピングクラブが販売カタログに本件商標を掲載した行為をとらえて、商標権者による商標法第2条第3項第8号の使用(広告に際しての使用)に該当すると主張するが、下記のとおり、そのような法律主張には根拠が無く、採用することはできない。
a 本件の事実関係
通販雑誌を媒体とする小売業者ライトアップショッピングクラブは業界でも商標等の知的財産権に相当厳密であるとの定評があり、商品仕入れに先立つヒヤリングの際に商標権侵害が無いかどうかを確認するために納入業者ソーズカンパニーに使用商標の根拠(自らの管理下にある商標権に裏付けられているという意味での積極的根拠)の提示を求め、それに対して提出されたものが本件商標の資料であると思われる。実際には、その上で更に、ライトアップショッピングクラブは、ほぼ片務契約(「本書を1通作成し、甲乙記名捺印のうえ甲が本書を、乙がその写しを保有するものとします」との記載あり。)ともいえる「商品売買基本契約書」(審決注:第12条部分の記載はあるが証拠方法の提出はない。)の第12条において、書類提出義務及び係争時における免責保証を仕入先にさせている。
そして、ライトアップショッピングクラブが乙第1号証及び乙第2号証の通販カタログを作成するにあたり、独自の判断及び紙面デザイン方針に基づき、HD掲載の商品ブランドごとに表示している商標として、売買契約締結前に提出された使用商標の根拠資料から同登録商標の図柄を選択・使用したものと見受けられる。また、同カタログには、同一モデルがソーズカンパニーとは無縁のその他の掲載ブランド等の広告において同一カタログ上で複数回登場するのみならず、本件商品の掲載の無い発売時を異にする同カタログ、別ブランドのカタログでも登場している。
b 一般的判断
このようなケースでは「ヨーデル事件」(大阪地裁平成15年(ワ)第11661号及び大阪高裁平成18年(ネ)第1569号)が判示するとおり、小売業者がプライスカード等に使用する生産者保有商標の使用主体は、実質上も社会通念上も小売業者又はせいぜい卸売店というべきであって、それらの者の使用行為(商標法第2条第3項第8号行為)を商品生産者(被請求人)の行為と同視すべき特段の事情のない限り、商品生産者(被請求人)による使用行為ということはできないとするのが一般的見解である。
しかし、上記「ヨーデル事件」判示には、卸売店の使用と認定できるのはいかなる場合か、特段の事情とは何かといった不明瞭な部分もある故、その辺りに注視しながら精査するものとする。
本ケースにおいて、商標法第50条の使用の要件を満たす場合とは、以下の4通りである。
(a)ライトアップショッピングクラブが被請求人の使用権者であること(使用の条件1)
(b)ライトアップショッピングクラブのカタログ上での本件商標の商標法第2条第3項第8号行為の使用主体を、被請求人とみなす特段の事情が存在すること(使用の条件2)
(c)ソーズカンパニーが被請求人の使用権者であること(使用の条件3-1)、かつ、ライトアップショッピングクラブがソーズカンパニーの使用権者であること(使用の条件3-2)
(d)ソーズカンパニーが被請求人の使用権者であること(使用の条件4-1)、かつ、ライトアップショッピングクラブのカタログ上での本件商標の商標法第2条第3項第8号行為の使用主体を、ソーズカンパニーとみなすことができること(使用の条件4-2)
c 商標法第50条の使用の判断に影響を与える可能性のある要因
(a)契約要因
本件における商標使用の主体の判断に影響を及ぼす本件商標に関する契約とは、使用許諾契約(許諾契約・再許諾契約)、不作為請求権契約(「被請求人(商標権者)」が契約当事者に含まれる。)及び使用義務契約(広告行為者が広告時に本件商標を使用しなければならない義務契約を指す。)の3つに集約されると考える。
(b)契約外要因
商品生産者又は卸売店が小売業者の広告宣伝行為に主体的に関与している場合及び小売業者と商品生産者、小売業者と卸売店、又は、商品生産者と卸売店の両法人を法律上又は社会通念上同一視すべき事情がある場合の2点が考えられる。
d 本件検証
本検証は、被請求人とライトアップショッピングクラブの関係、ソーズカンパニーとライトアップショッピングクラブの関係、及び被請求人とソーズカンパニーの関係を、それぞれ本件における商標使用の主体の判断に影響を及ぼす前記cの契約要因・契約外要因を検討する方法で行う。
(a)被請求人とライトアップショッピングクラブの関係
ライトアップショッピングクラブは、法務部を有し、自らが取り扱う商品に関する知的財産権を厳格に管理しており、納入先への法的根拠を提出させ、さらには契約関係を契約書として締結するという性質の会社である故、契約書が無い場合は契約が無いと判断するのが妥当である。特に、知財権に関してうるさいとの定評のある米国企業を相手とする場合は、なおさらである。したがって、被請求人とライトアップショッピングクラブとの間には、直接的な契約のいずれも存在しないとみなすのが妥当である。
すなわち、ライトアップショッピングクラブは、被請求人の契約による使用権者ではないし、広告宣伝時の本件商標の使用義務を負っていなかったということになる。そして、使用義務契約が存在しないことは、本件精査期間において、被請求人自らが米国で生産し日本へ輸出する商品に「社会通念上本件商標と同一視できる商標」ですら使用をしていない事実によっても裏付けられる。また、乙第1号証及び乙第2号証の通販カタログ作成にあたり、被請求人の主体的関与があったとの主張も、そのような事実を伺わせる証拠も何らない故、この点に関する検討は本件では不要である。さらに、ライトアップショッピングクラブと被請求人とは、全くの別法人であり両社を法律上も社会通念上も同一視すべき事情は無い。
以上により、ライトアップショッピングクラブは、使用権者ではないこと、及びライトアップショッピングクラブのカタログ上での本件商標の商標法第2条第3項第8号使用をもって、被請求人の使用と認定することはできないことが立証された。
したがって、上記使用の条件1及び2は成立しない。
(b)ソーズカンパニーとライトアップショッピングクラブの関係
ライトアップショッピングクラブとソーズカンパニーの間で正式に「商品売買基本契約書」が締結され、知的財産権に関する条項の中に使用商標に関する定めは有るものの、使用商標に関する商標権を正当に保有すること等の書類提出義務、及び第三者からの権利侵害請求に関する免責保証をソーズカンパニーにさせるにとどまり、同条項からは、当事者間の行為に関する契約が正式に締結された証拠は伺い知れない(「商品売買基本契約書」によっても該契約が締結されたと認められない。)故、契約が存在する場合必ず契約書を取り交わすというライトアップショッピングクラブの特性にかんがみ、本件考察に有効な契約は存在しないと推測するのが妥当である。
すなわち、ライトアップショッピングクラブは、ソーズカンパニーの契約による使用権者(サブライセンシー)ではないし、広告宣伝時の本件商標の使用義務を負っていなかったということになる。
さらに、ライトアップショッピングクラブのカタログ上での本件商標の商標法第2条第3項第8号使用に関しては、同カタログには、同一モデルがソーズカンパニーとは無縁のその他の掲載ブランド等の広告において同一カタログ上で複数回登場するのみならず、本件商品の掲載の無い発売時を異にする同カタログ、別ブランドのカタログでも登場している事実から伺い知れるように、広告紙面の制作上使用した本件商標の使用主体は名実共にライトアップショッピングクラブであり、ソーズカンパニーが自らカタログ紙面の広告に主体的に関与・制作したような場合とは異なり、社会通念上もソーズカンパニーの商標の使用とみなすことはやはり無理が有る。
また、ソーズカンパニーとライトアップショッピングクラブとは、全くの別法人であり両社を法律上も社会通念上も同一視すべき事情は無い。
したがって、上記使用の条件3-2及び4-2は成立しないことが立証された。
(c)被請求人とソーズカンパニーの関係
ソーズカンパニーが通常使用権者であるとの事実主張もなされていない。ソーズカンパニーが通常使用権者であることと本ケースにおいて同等の効果を生じる可能性のある両社の関係について、念のために形式的に付言するなら、被請求人とソーズカンパニーとは、全くの別法人であり両社を法律上も社会通念上も同一視すべき事情は無い。
したがって、上記使用の条件3-2及び4-2は成立しないことが立証された。
(d)結論
以上のとおり、乙第1号証及び乙第2号証に商標法第2条第3項第8号使用された本件商標の使用主体は、実質上も社会通念上も、被請求人(商標権者)でもその使用権者でもない。
したがって、法律主張3は、成立の余地が全くない。
(エ)まとめ
以上(ア)ないし(ウ)のとおり、被請求人の法律主張にはいずれも根拠が無い故、採用するに値しない。
エ 商標的使用に該当しないこと
商標第50条の使用認定場面では、対象商標に保護基盤である業務上の信用の蓄積がされる方法で使用されたのか否かを、(ア)需要者にとって「商品商標」として認識されたのか(実質的要件)、(イ)被請求人は出所表示・識別機能として使用したのか(商標法第1条要件)、(ウ)業務として使用したのか(商標法第2条第1項要件)等の観点から、要証期間全体を通しての総合的観点から判断する必要がある。
(ア)需要者にとって「商品商標」として認識されたのか(実質的要件)
a 一般論
法上は、商標法第2条第3項第1項に定めるように、商品又は商品の包装に商標を付していれば、それは使用とみなされるかのように外形的に定義されているが、実際の判例では、その外形的使用が商標法の主旨に照らして実質的効果をもたらしているかを加味して、それが実質的に商標の使用に該当するか否かを判断している。妥当なことである。
登録商標は、自他商品の識別性をその本質的要素として要求されているものであり、しかも、商標が識別性を有するかどうかは、需要者を基準とし、社会通念に基づいて判断すべきものである(東京高裁判決昭和41年(行ケ)第112号)ので、その点から以下考察する。
商品に付帯されている商標は一つとは限らないし、付帯場所によっては商標とはみなされない現実がある。下札にしても、複数の下札及び商標が一つの商品に付されている場合が少なくない。
そのような現実の中で、本件の対象商品であるTシャツの需要者はその商品商標をどのように識別・認識しているのであろうか。
まず購入前の認識であるが、襟ネーム上又は襟下にプリントで商標が使用されている場合、それを同商品の商標と認識する。また、下札等に「社会通念上、前記の襟商標と同一視できない商標」等が表示されている場合、それらは、素材商標・機能宣伝・原産地強調・生産者社歴等をあらわす商標・サービスマーク(セレクトショツプ等の下札)・デザイン等として認識し、商品選択の参考とはするが、商品との関係において通常一対一の対応をしていない。そのような付帯物は商品商標とは認識しない。また、胸元などにワンポイント的に使用されたマーク等は、著名又は周知商標である場合及び襟部分に商標が使用されていない場合を除いて、デザインとして認識される可能性が高い。包装されているような場合は、包装に表示されたもっとも目立ちかつ常に表示されている商標をその商品の商標として認識する。
次に購入後・使用中・使用後の認識であるが、商品商標認識のパターンは前述の購入前と変わりはないが、決定的に状況が異なるのは、下札・包装等は購人後即廃棄されるのが一般的であるから、本体に洗濯後も残存する方法で付帯された商標の中からその商品商標の識別がなされる。したがって、使用後の判断によって形成される品質面での総合的な信用(品質保証機能)は、本体に使用後・使用中も残存する方法で付帯された商標に化体されると考えるのが妥当である。
b 本件
(a)下札
被請求人の生産販売したすべてのTシャツには、別掲2の商標が襟ネーム上に洗濯後も残存する方法で付帯されていたが、「本件商標の下札が付帯されたケース」は皆無に等しいというのが現実である。また、そのような希有なケースがあるとしても、需要者は、前述の認識パターンによれば別掲2の商標を商品商標と認識し、本件商標と社会通念上同一視できない本件商標を「生産者の商号デザイン」「米国製を強調した原産地表示」等を表すデザインとして認識されたと理解するのが妥当である。
また、使用中・使用後においては、別掲2の商標のみしか商品に残存していなのだから、当然に本件商標に信用が化体されることはない。更には、要証期間という長期・継続的視点に立った場合も、同一商品に付帯されている場合もそうでない場合もあるような本件商標(実際には、付帯されているケースはほぼ皆無である。)を、その商品に対する信用の蓄積対象とすることは論理上も不合理であり、再購入・不買等のメルクマールとされることは無い。
(b)販売広告
また、販売広告においても、本件商標が使用されていたとしても、その使用頻度は別掲2の商標に比して希有であり、更には、主たる商標の表示場所として需要者間で広く認識されている襟ネームに別掲2の商標がもれなく付帯されており、その販売広告時にも同襟ネームを拡大写真で表示している使用態様が大半であるから、販売広告時に併用された「社会通念上、前記の襟商標と同一視できない本件商標」が本件商品に対する信用の蓄積対象とはなり得ず、再購入・不買等のメルクマールとされることも無い。
(c)まとめ
したがって、需要者にとって、情報蓄積の対象とも、同商品に対する次回行為(再購入・不買等)のメルクマールともなり得ない方法で使用された本件商標には、商標法上の保護基盤が無いという結論になる。
(イ)被請求人は出所表示・識別機能として使用したのか(商標法第1条要件)
前記(ア)が需要者の観点からの考察であるのに対して、本項では、使用主体である被請求人の意思を問題にする。結論から言えば、被請求人に本件商標を出所表示・識別機能として使用する意思があったのであれば、全商品に付帯したはずであるので、出所表示・識別機能としては使用していないとの結論となる。
本件商標は、登録時において、請求人が有した登録商標と有意に識別性が有りその他の登録要件を満たしていたことは事実であろうが、その後の被請求人の本件商標の使用の態様は、被請求人が本件商標の出願前に出願し拒絶査定が確定した別商標「GoodwearUSA」と拒絶理由を同一とすることが明白である、かつ、虚偽表示(商標法第74条第1号)の可能性の高い別掲2の商標の使用に際し、あたかも本件商標を所有していることで別掲2の商標の使用に正当性があるかのように需要者をだます目的で使用されてきた(取消2011-300044、取消2011-300162参照)。
被請求人は、その商品を自ら米国で生産しそのほぼすべてを日本へ輸出しながら(被請求人の米国での別掲2の商標の商品の販売はほぼ皆無である)、「本件商標若しくは社会通念上それと同一視できる商標」を商品本体に付することを一切していない事実自体からも見てとれるように、商標権者である被請求人の意思において、本件商標を自他識別機能・出所表示機能としては使用していない。つまり、請求人の意思において、本件取消審判請求の精査対象期間を通して、本件商標は、別掲2の商標が他社の権利を侵害するという事実を隠すためにだけ使用されたということができる。
したがって、被請求人は、出所の混同を生じるであろう他人の商標の存在を十分認識していながら、別掲2の商標の単独使用を強行し、かつ、あたかも別掲2の商標が本件商標の正当な権利の範ちゅうに属するかのように需要者をだましてきたのであり、またその結果、現実に出所混同・質の誤認を生起し、更には、競合他社に不利益を不当に与えている事実から、そのような使用は、商標法第1条規定の同法の設置目的に反する故、本件商標の使用が形式的に商標法第2条第3項の使用の体をなしているとみなされる場合であっても、商標的使用とは認められるべきではない。
よって、被請求人が、自らの意思において出所表示・識別機能として使用していない本件商標には、商標法上の保護基盤が無い。更に本件においては、不正の目的をもって使用している事実から、商標法上の保護基盤など到底無いという結論になる。
(ウ)業務として使用したのか(商標法第2条第1項要件)
前述のとおり、被請求人が生産販売したすべてのTシャツには、別掲2の商標が襟ネームに付帯されていたが、本件商標の下札が付帯されたケースは皆無に等しいこと、宣伝時に本件商標が使用されたことは皆無又は希有であることから、そのような本件商標の使用行為は、反復継続して行われたとは到底みなせず、商標法第2条第1項第1号要件の「業としての行為」に該当するとは認められない。したがって、同行為は、「標章の使用」であったとしても「商標の使用」とは認定できない故、商標法第50条要件を充足しない。
よって、業務上使用されていない本件商標には、商標法上の保護基盤が無いという結論になる。
(エ)まとめ
前述の(ア)ないし(ウ)のとおり、被請求人又は使用権者による本件商標の使用が形式的に散見されたとしても、それらはすべて商標法の保護対象である商標的使用にはあたらず、同法第50条第2項の要件を満たす使用は皆無である。
オ 時機に遅れた攻撃防御方法の却下の申立
本件訴訟における新たな主張・立証は、行政訴訟においても訴訟物の範囲内にある限り、事実審の口頭弁論終結時までは提出が認められるというのが大原則である(「CHEY TOI事件」最高裁判決昭和63年(行ツ)第37号 民集45巻4号538頁)が、それは、当然に無制限に許されるものではなく、「時機に遅れた攻撃防御方法」(行政事件訴訟法第7条による民事訴訟法第157条準用)等として提出の制限が認められない限りという限定条件付きである(「別冊ジュリスト 商標・意匠・不正競争判例百選」中山信弘・大渕哲也・茶園成樹・田村善之編 90頁)。
また、「民訴297条参考判例:大審院昭和8年2月7日判決」によれば、控訴審(審決取消訴訟審)としては、第一審(審判請求事件)における訴訟手続の経過をも通観して時機に後れたるや否やを決すべきであり、したがって、第一審の口頭弁論に出頭しながら、そこで提出することのできた攻撃防御方法を控訴審に至り初めて提出したときは、仮に控訴審においては口頭弁論の初頭になされたとしても時機に後れたものたりうる。
本件について言えば、被請求人の答弁は期限内に提出されたものの、その内容は、代理人がついていながら明らかに不備だらけのものであった。それに対して、審判合議体が審理を尽くすために、答弁書の不備を指摘し、その補充及び具体的主張を促すとともに、新たな証拠及び主張も同時になすように再度最終提出期限を平成24年3月6日に設定したものである。
したがって、それ以前に提出された証拠に関する補充証拠及びこれまでなされた法律主張に関する主張を除いては、それ以降の新たな証拠提出及び新たな主張は、明らかに審理を遅延させるものであり「時機に遅れた攻撃防御方法」として却下されるべきであることを、請求人は事前に申立てる。
(4)平成24年5月10日付け上申書における主張
ア 乙第5号証及び乙第6号証のINVOICE原本の写し
乙第7号証及び乙第8号証は、乙第5号証及び乙第6号証よりは当該記載商品の輸入に関しては信ぴょう性の高い証拠であるが、請求人は当該商品の輸入自体に疑義を申立てていない。問題の「登録商標を付した紙製タグ」( b)タグ)の輸入の証拠価値に関しては依然皆無であることに変わりはない。
イ ソーズカンパニーにより、a)Tシャツとb)タグが要証期間に一緒に輸入され、かつ、要証期間にライトアップショッピングクラブへの販売商品に同タグが付されて販売されたことに関する証拠
該b)タグに商品価値が無い場合においても、物が輸入される限り、INVOICEに記載し、かつ、invoice value ゼロとするのが、法の定めるところであり、当然にそのように皆が実行している以上、その書類が証拠として提示できないということであれば、要証期間にb)タグはソーズカンパニーにより被請求人から輸入されていないとみなすことが当然である。輸入数量についても、具体的主張はされていない。
また、要証期間にb)タグを付したa)Tシャツがライトアップショッピングクラブによって販売されたと主張するのであれば、証拠としてそれを証するソーズカンパニーとライトアップショッピングクラブの契約書の提示があってしかるべきであるが、その書類が証拠として提示できないということであれば、そのような販売は無かったとみなすことが当然である。
ウ 商標権者がライトアップショッピングクラブ発行の「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」を受領している証拠、及び被請求人・ソーズカンパニー・ライトアップショッピングクラブの関係
(ア)乙第9号証
EMSの集荷方法は2種類あり、郵便局の窓口での受付けの場合は、送付書(3枚セット)のうち「ご依頼主控」に郵便局名などが記載された丸形の日付印を押した上、依頼者に控えを渡す。また、集荷サービスを利用した場合は、「ご依頼主控」に郵便局名などが記載された直径約2ないし3cmの丸形の集荷印を押した上、依頼者に控えを渡す。
しかし、乙第9号証には、そのような日付印も集荷印も押されていない故、信ぴょう性の低い証拠である。請求人としては、ソーズカンパニーが被請求人にいずれかの時点でカタログを送付した事実を疑うつもりはないが、乙第10号証の信ぴょう性、ひいては、ソーズカンパニーと被請求人の関係を検証するにあたり、乙第9号証の送付日付は重要である故、その信ぴょう性を問題にするものである。
(イ)乙第10号証
本証拠は被請求人の利害当事者の書証であり、当該証拠自体の証拠能力は非常に低い。しかも、その内容も、単に事後的に乙第2号証のカタログを送付したとの内容しか記載されておらず、宛先すら不明である故、ソーズカンパニーが被請求人の通常使用権者であることを証するものとしては、全く証拠価値のないものである。
また、乙第10号証が複数の製造業者に送付することを前提に作成されたレターの原本であるなら、それが2010年4月27日に作成されたことを証するPCを確認しない限り、信用力が全く無い書証である。また、複数の製造業者に同時に送付したのであるなら、その相手先と相手先ごとの送付書(EMS等の第三者が証する送付書)の提出がなされない限り、乙第9号証との関連は証明できない。
更には、ライトアップショッピングクラブの「ケンジ キタザワ」なる人物との連名で送付しなければならない理由、及び「ケンジ キタザワ」なる人物がHDザ・ヘビーデューティー・カタログの初代バイヤーということが事実であったとしても、請求人が知る限り被請求人の商品はVol.3からの販売である故、Vol.1に掲載された「ケンジ キタザワ」なる人物と交流の深い(被請求人とは異なる)特定製造業者への送付を念頭に書かれた書証と推測するのが妥当である。
このような推測が正しいのであれば、乙第9号証によりHDザ・ヘビーデューティー・カタログが被請求人に送付されたことが事実であるとしても、乙第10号証のレターがそれに内包された可能性は低い。更にうがった見方をするなら、a)レター全体から英文に精通していないことは読み取れるが、それを差し引いたとしても、文中の「to」(9行目)等不自然な部分が存在すること、b)被請求人とライトアップショッピングクラブのサブライセンス関係を証する証拠も無ければ、ライトアップショッピングクラブの証言すら無いこと、及びc)事後的にHDザ・ヘビーデューティー・カタログに関する感想を求めていること等から、ライトアップショッピングクラブの「ケンジ キタザワ」なる人物と交流の深い(被請求人とは異なる)特定製造業者宛のレターをベイスにあたかも被請求人に送付したかのように一部改ざんし、被請求人とライトアップショッピングクラブの密な関係を演出しようとした可能性も捨てきれない。更に、書き換えの時点が2010年4月当時であれば、被請求人と関係のないライトアップショッピングクラブの「ケンジ キタザワ」に関する部分は削除するであろうし、宛名の「Suppliers」も変更するのが自然である。(普通には、Hello Suppliersの一般的な書き出しからして、後半部分の具体性は非常に不自然な文章構成であるし、ライトアップショッピングクラブの「ケンジ キタザワ」との連名も文の内容からして不自然である。)
これらは、あくまで推測であるが、被請求人の新たな主張(「ソーズカンパニーは被請求人のライセンシーである」かつ「ライトアップショッピングクラブはソーズカンパニーのサブライセンシーである」)との関連において、今回被請求人の提出した証拠は、上記推測を否定できない程不十分な証拠ということである。
(ウ)乙第11号証
本証拠は被請求人の利害当事者の書証であり、当該証拠自体の証拠能力は非常に低い。しかも、送付物も本審判請求の証拠としては提出されていない(乙第1号証はVol.12であるが、送付物はVol.13であり全く別物である)し、誰あてに送付したのかも不明である故、なんら証拠価値はない。
レター全体としては、「and Takahiro Kimura takahiro.kimura@lus.jp」部分の不自然さを除いて、一般的なフォームとして予め作成されたものであるという感想を持つ。
逆に、乙第11号証が示すとおり、被請求人の製造した本件商品の掲載されていないHDザ・ヘビーデューティー・カタログ(Vol.13)をも、ライトアップショッピングクラブとの連名でソーズカンパニーが被請求人に送付していたということが事実であるなら、単に被請求人を含めたSuppliersは、ソーズカンパニーヘの商品納入をきっかけとした「HDザ・ヘビーデューティー・カタログの一般購読者」にすぎないが、海外在住のため、ソーズカンパニーがライトアップショッピングクラブから無償カタログを必要部数入手し、代理で送付してやっていたという見方も正当に成り立つ。ちなみに、国内在住の会員であれば、当該カタログは無償で送付される。
また、ソーズカンパニーがカタログ海外送付用の一般フォームをソーズカンパニーとライトアップショッピングクラブとの連名で作成していたことも、Suppliersに対して一般的な感想を事後的に求めている文面も、カタログの発送時期が国内購読者へ発送された直後であることも、すべて納得がいく。
したがって、乙第11号証は、被請求人が「HDザ・ヘビーデューティー・カタログの一般購読者」の一人であった証拠であり、被請求人の新たな主張の反証である。
(エ)乙第12号証
本証拠は被請求人による本請求申立後の書証であり、当該証拠自体の証拠能力は皆無である。
更にうがった見方をするなら、乙第10号証に整合する裏付けとして、事後的に「HDザ・ヘビーデューティー・カタログの一般購読者」である事実をわい曲し、あたかも通常使用権許諾契約関係があるかのごとく、宣誓されたものであるとの感を否めない。
(オ)乙第13号証
本証拠は被請求人の利害関係者による本請求申立後の書証であり、当該証拠自体の証拠能力は皆無である。
一般的な手順では、ソーズカンパニーとライトアップショッピングクラブがサブライセンス関係にあるのであれば、ソーズカンパニーが宣伝の原稿段階から承認作業をし、最終的には最終稿をライセンサーである被請求人の承認を得て、アプルーブする。書面による契約書の締結が無いというのであれば、その手順を踏んだ具体的証拠を本審判請求に提出し、それらより、口頭による通常使用権許諾契約の存在を立証するのが道理である。
本件においては、ソーズカンパニーとライトアップショッピングクラブとの間には、請求人が平成24年3月13日付けで提出した口頭審理陳述要領書の11頁の片務契約上の第12条以外の契約は存在しないと考えるのが妥当である故、仮に、HDザ・ヘビーデューティー・カタログ発行前に、ライトアップショッピングクラブがソーズカンパニーに内容確認を求めていたとしても、原稿の二重チェックのためであり、ソーズカンパニーの承認を得るためとは考え難い。更には、上記第12条記載の条項は、商品の提供を受けた需要者(取引者・小売業者)が、通常使用権許諾契約が存在しなくても一般的に有する権利の確認にすぎない。
また、ライトアップショッピングクラブからの通常使用権許諾契約に関する何ら証拠提示も無い以上、ソーズカンパニーとライトアップショッピングクラブがサブライセンス関係にあるとは到底みなせない。
(エ)結論
以上のとおり、被請求人からの従前の主張及び新たな主張は、商標法第50条第2項を充たす方法で何ら立証されていない。
よって、請求人による本件審判請求は成立する。

第3 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
2 答弁の理由
乙第1号証及び乙第2号証にあるように、商標権者により製造された「米国製のTシャツ」に本件商標が使用され、当該商品が、日本で、東京都港区に住所を有する株式会社ライトアップショツピングクラブ(ライトアップショツピングクラブ)により、本件審判請求登録日前3年以内に販売されていたものである。
以上により、本件審判請求に理由がないことは明らかであるから、本件審判請求は成り立たない。
3 口頭審理陳述要領書における主張(審判答弁書(第2回)における主張を含む。)
(1)商標権者により製造された米国製Tシャツと本件商標の使用された紙製タグ( b)タグと同じ。以下「本件タグ」という。)が一緒に、東京都目黒区に所在する株式会社ソーズカンパニー(ソーズカンパニー)により日本に2008年から2010年の間に輸入され、本件タグが付された米国製Tシャツが、この間に、ライトアップショッピングクラブに販売されたものである。また、ソーズカンパニーの通販サイトBamboo Villeを通じて顧客に販売されたものである。
よって、本件商標は、商標権者により本件審判請求登録前3年以内に日本において指定商品である米国製Tシャツに使用(商標法第2条第3項第2号の商品に商標を付したものの譲渡、輸入する行為、同第8号の商品の広告に該当)されたことは明らかであるから、本件審判請求には理由がない。
(2)輸入業者の輸入行為を商標権者による商標の使用とするのは、以下にあるとおり、裁判所も認めるところである。
「法的効果を認めるべき行為の範囲を限定したものであると解される。そして,商標権者等が商品に付した商標は,その商品が転々流通した後においても,当該商標に手が加えられない限り,社会通念上は,当初,商品に商標を付した者による商標の使用であると解されるから,その商品が実際に何人によって所有,占有されているとを問わず,同法2条3項に該当する行為が行われる限り,その行為は,当初,商品に商標を付した者による商標の「使用」行為であるというべきである。これを本件のような我が国で商標登録を有する外国法人との関係についてみれば,商標権は,国ごとに出願及び登録を経て権利として認められるものであり,属地主義の原則に支配され,その効力は当該国の領域内においてのみ認められるところから,当該外国法人が商標を付した商品が我が国外において流通している限りは,我が国の商標法の効力は及ばない結果,我が国の商標法上の「使用」として認めることはできないものの,その商品がいったん日本に輸入された場合には,当該輸入行為をとらえ,当該外国法人による同法2条3項2号にいう「商品に標章を付したものを輸入する行為」に当たる「使用」行為として,同法上の「使用」としての法的効果を認めるのが相当である。
そうだとすれば,本件においては,上記1のとおり,本件商標の商標権者であるイタリア法人の被告が本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した商品について,本件審判請求の予告登録日前3年以内である平成9年7月下旬ころ,取引先のイムズがこれを輸入したとの事実を認定できるから,上記イムズの輸入行為をもって,商標法50条に規定する商標権者による本件商標の「使用」があったものと認めることができるというべきである。」(東京高裁判決 平成14年(行ケ)第346号)。
(3)乙第3号証によれば、本件タグと米国製Tシャツを一緒に、商標権者からソーズカンパニーが2008年1月から12月の間に少なくとも4,161枚輸入し、内、少なくとも3,738枚をライトアップショッピングクラブに本件タグを付して販売したことは明らかである。
また、同様に、2010年1月から12月の間に、少なくとも10,344枚を輸入し、内、少なくとも3,836枚をライトアップショッピングクラブに販売したことは明らかである。
乙第5号証及び乙第6号証の商標権者からソーズカンパニーヘのINVOICE写しは、このような事実をさらに裏付けるものである。
上記本件商標の使用、乙第1号証及び乙第2号証のカタログの広告における本件商標の使用は、いずれも、商標権者の商品の出所を表示する態様で使用されているものであり、商標権者による使用と見られるものである。
輸入業者の輸入行為を商標権者による商標の使用とするのは、上記(2)のとおり、裁判所も認めるところである。
4 平成24年4月27日付け上申書における主張
(1)乙第5号証及び乙第6号証のINVOICE原本の写し
乙第5号証及び乙第6号証のINVOICE原本の写しとして、乙第7号証及び乙第8号証を提出する。当該証拠から、商標権者のTシャツが日本に輸入され、その関税を支払っていることは明らかである。フェデラル・エクスプレス・コーポレーションの請求書は、通関業者として、フェデラル社が先に関税等を支払い、それをソーズカンパニーに請求したものである。
(2)ソーズカンパニーから米国製Tシャツと本件タグが一緒に輸入されたことを証明する書面。
本件タグは、Tシャツと一緒に容器に同封され輸入されたものであるが、乙第5号証ないし乙第8号証にあるINVOICEには掲載されないのが一般的である。本件タグには商品価値がなく、コストもないからである。
(3)商標権者がライトアップショッピングクラブ発行の「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」を受領していることを証明する書面。
商標権者がライトアップショッピングクラブ発行の「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」を受領していることを証明する書面として、乙第9号証ないし乙第11号証を提出する。これらの証拠、すなわちEMS国際スピード郵便送り状、手紙の内容より、商標権者が上記カタログを受領していることは明らかである。
手紙にでてくる「LUSC」は、LightUp Shopping Clubの略称である。
(4)商標権者とソーズカンパニー及びライトアップショッピングクラブとの米国製Tシャツ及び本件タグに係る契約書、取り決めの写し又は、その内容を記載した書面
商標権者、ソーズカンパニー、ライトアップショッピングクラブとの関係を示す書類として、乙第12号証及び乙第13号証を提出する。
当該証拠により、商標権者は、ソーズカンパニーに遅くとも2005年から、「Goodwear」ブランドのイメージを維持するために、ライトアップショッピングクラブが発行する「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」の内容を発行前に確認する権限を与えており、また、当該カタログ発行後もその内容を確認して、当該カタログを商標権者に送付してきたことは明らかである。
(5)ソーズカンパニー及びライトアップショッピングクラブが使用権者であるか否か述べた書面
乙第9号証ないし乙第13号証から明らかなとおり、ライトアップショッピングクラブは、本件商標を米国製Tシャツに使用した広告物である「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」をソーズカンパニーの管理下で作成し、ソーズカンパニーは、その管理を商標権者に委託されていたことは明らかである。
以上により、ソーズカンパニーは、商標権者の通常使用権者であり、また、ライトアップショッピングクラブは、その通常使用権者の通常使用権者(サブライセンシー)であることは明らかである。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標権者により本件審判請求登録前3年以内に日本において指定商品である米国製Tシャツに使用(商標法第2条第3項第2号の輸入する行為、譲渡する行為、同第8号の商品の広告に該当)されたことは明らかであるが、当該主張が仮に認められなかったとしても、本件商標は、商標権者の通常使用権者(ソーズカンパニー及びライトアップショッピングクラブ)により、本件審判請求登録前3年以内に日本において指定商品である米国製Tシャツに使用(商標法第2条第3項第2号の輸入する行為、譲渡する行為、同第8号の商品の広告に該当)されていたことは明らかである。
よって、本件審判請求には理由がない。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)被請求人提出の証拠、同人の主張及び職権調査によれば、次のとおりである。
ア 乙第1号証は、東京都港区在の株式会社ライトアップショッピングクラブ(ライトアップショッピングクラブ)が発行した通販カタログ「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ Vol.12 2008年春夏号」(以下「本件カタログ2008」という。)の抜粋であり、その9ページ上半分には、「〈グッドウェア〉の大人気定番。ヘンリーネック&ロングスリーブ」の見出しのもと、本件商標と外観において同視される図形(以下「使用商標」という。使用商標が本件商標と外観において同視される図形であることについては、請求人は争っていない。)、ホワイトシャツの着用写真、及びシャツ2枚(襟ネームの文字は判読不能)の写真が掲載され、「〈グッドウェア〉ヘンリーネック ロングスリーブTシャツ/2枚セット」として、商品番号、価格、カラー記号、サイズ記号の記載などのほか、「アメリカ製 染め・洗い加工は日本」の記載がある。
また、12ページ下半分には、「365日使える定番シャツ。〈グッドウェア〉のヘンリーネック」の見出しのもと、使用商標、シャツ4枚(襟ネームの文字は判読不能)の写真、シャツの着用写真1枚が掲載され、「〈グッドウェア〉ヘンリーネックTティーシャツ/2枚セット」として、商品番号、価格、カラー記号、サイズ記号の記載などのほか、「アメリカ製」の記載がある。
更に、43ページ上半分には、「タフな生地と作りで信頼厚いベストセラー。〈グッドウェア〉のロングスリーブT」の見出しのもと、使用商標、シャツ4枚(襟ネームの文字は判読不能)の写真が掲載され、「〈グッドウェア〉ロングスリーブTシャツ/2枚セット」として、商品番号、価格、カラー記号、サイズ記号の記載などのほか、「アメリカ製、染め・洗い加工は日本」の記載がある。
そして、裏表紙には「インターネットでのお申し込み http://www.lusc.jp」「広告有効期限:2008年6月30日」の記載がある。
イ 乙第2号証は、ライトアップショッピングクラブが発行した通販カタログ「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ Vol.018 2010年春夏号」(以下「本件カタログ2010」という。)の抜粋であり、その12ページには、「一枚でも、重ねて着ても様になる。ポケット付きも便利なVネックTシャツ」の見出しのもと、使用商標、Tシャツの着用写真、及びシャツ6枚(そのうち大きく表示された空色のシャツの襟ネームに「Goodwear」の文字が確認できるが、他のシャツの襟ネームの文字は判読できない。)の写真が掲載され、「〈グッドウェア〉ラグランVネックTシャツ/3色セット」として、商品番号、価格、カラー記号、サイズ記号の記載などのほか、「アメリカ製」の記載がある。
そして、裏表紙には「インターネットでのお申し込み http://www.lusc.jp」「広告有効期限:2010年6月30日」の記載がある。
なお、以下、乙第1号証及び乙第2号証に掲載された上記Tシャツを「使用商品」という。
ウ 乙第3号証は、ソーズカンパニーの代表取締役が記名押印した2012年3月8日付けの「証明書(1)」であり、そこには、同社は本件カタログ2008に掲載の本件商品と同じものを2008年1月ないし12月の間に商標権者から少なくとも4,161枚輸入し、少なくとも3,738枚をライトアップショッピングクラブに販売した旨、本件カタログ2010(「12号」と記載されている。)に掲載の本件商品と同じものを2010年1月ないし12月の間に商標権者から少なくとも10,344枚輸入し、少なくとも3,836枚をライトアップショッピングクラブに販売した旨、及びそれら商品の輸入の際に本件タグも一緒に輸入され、日本で販売する際にTシャツに付されている旨の記載とともにTシャツの襟部分に本件タグが付された写真が表示され、文末には、上記のとおり相違ない旨の記載がある。
エ 乙第4号証は、ソーズカンパニーのウェブページのプリントアウトであり、会社名、所在地、電話番号、FAX番号、沿革などが記載されている。
オ 乙第7号証は、商標権者からソーズカンパニーに送付され、2010年3月15日に成田空港に到着した、Tシャツなど5,454点に係る「COMMERCIAL INVOICE」「輸入許可通知書」及び「請求書」の各写しであり、これらのエアウェイビル番号「830984696884」(ただし、COMMERCIAL INVOICEには手書きで記載されている。)は一致している。
カ 乙第8号証は、商標権者からソーズカンパニーに送付され、2010年9月14日に成田空港に到着した、Tシャツなど604点に係る「COMMERCIAL INVOICE」「PACKING LIST」「輸入許可通知書」及び「請求書」の各写しであり、これらのエアウェイビル番号「870384674843」は一致している。
キ 乙第9号証は、ソーズカンパニーから商標権者にあてた、2010年4月27日受付のEMSの「ご依頼主控」の写しである。しかしながら送付した物に係る記載はない。
ク 乙第10号証は、ソーズカンパニーのニックサワノ氏及びライトアップショッピングクラブのケンジキタザワ氏の連名で、商品製造業者にあてた2010年4月27日付けのレター(両氏の署名はない。)の写しであり、そこにはライトアップショッピングクラブが本件カタログ2010を送付する旨及び顧客に15万部送付した旨記載されている。
なお、右上にニックサワノ氏のメールアドレスとともに記載された住所は、ソーズカンパニーの住所と一部相違するが、電話番号及びFAX番号は乙第4号証のそれと一致する(乙第11号証も同じ。)。
ケ 乙第11号証は、ソーズカンパニーのニックサワノ氏及びライトアップショッピングクラブのタカヒロキムラ氏の連名で、商品製造業者にあてた2008年11月6日付けのレター(両氏の署名はない。)の写しであり、そこにはライトアップショッピングクラブが「ザ・ヘビーデューティー・カタログ Vol.13 2008年秋冬号」を送付する旨及び顧客に18万部送付した旨記載されている。
コ 乙第12号証は、商標権者の最高経営責任者の署名のある2012年4月11日付けの宣言書(Declaration)であり、それには、商標権者がソーズカンパニーに対し、ライトアップショッピングクラブが発行する「ザ・ヘビーデューティー・カタログ」の内容を、「Goodwear」ブランドのイメージを維持するために、遅くとも2005年から調査する権限を与えている旨、ソーズカンパニーは遅くとも2005年から「ザ・ヘビーデューティー・カタログ」の内容を出版前に調査し、出版後も当該カタログの内容を調査し、当該カタログを商標権者に送付している旨が宣言されている。
なお、宣言書中に記載されたソーズカンパニーの住所は、乙第10号証及び乙第11号証のレター右上に記載された住所と同じであり、両乙号証に記載された電話番号及びFAX番号が乙第4号証のそれと一致するので、ソーズカンパニーと認めた。
サ 乙第13号証は、ソーズカンパニーの代表取締役の記名押印のある2012年4月17日付けの陳述書であり、それには、同社が商標権者からライトアップショッピングクラブ発行の「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」の内容を「Goodwear」ブランドのイメージを維持するために確認する権限を受け、確認作業を遅くとも2005年から行っている旨及び確認作業は当該カタログの出版前と出版後に行われ、出版されたカタログは商標権者に送付している旨相違ないとされている。
(2)上記(1)からすれば、次の事実を認めることができる。
ア それぞれのカタログの号及び広告有効期限が、2008年春夏号及び2008年6月30日、2010年春夏号及び2010年6月30日であることからすれば、ライトアップショッピングクラブは、広告有効期限の前である2008年(平成20年)春ころ及び2010年(平成22年)春ころに、通販カタログ「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」(本件カタログ2008及び本件カタログ2010)に、Tシャツ(使用商品)の広告に使用商標が付されたページを掲載し、これを発行した。また、同カタログの内容及び体裁からすれば、ライトアップショッピングクラブは当該カタログを同時期に頒布したと推認して差し支えない(上記(1)ア及びイ)。
なお、請求人はこれらの点について争っていない。
イ ソーズカンパニーは、商標権者からTシャツなどを、2010年(平成22年)3月に5,454点、同年9月に604点輸入した(上記(1)オ及びカ)。なお、この点についても請求人は争っていない。
ウ ソーズカンパニー及びライトアップショッピングクラブは、通販カタログ「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」が発行された際、それに掲載された商品の製造業者に、少なくとも2008年11月ころから継続して当該カタログを送付していたと推認することができる(上記(1)ク及びケ)。
なお、請求人は、乙第10号証及び乙第11号証は、利害当事者の書証である、差出人が連名である、英文及び文章構成が不自然であるなどとして、証拠能力は非常に低い旨主張しているが、カタログに掲載された商品の製造者などに定型のレターとともに当該カタログを送付することは何ら不自然ではないし、これを否定しなければならない事情も見いだせないから、前述のとおり推認するのが相当である。
エ 商標権者は、遅くとも2005年からソーズカンパニーに対して通販カタログ「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」の内容を調査する権限を与え、また、ソーズカンパニーは係る権限のもと、遅くとも2005年から、当該カタログの出版前及び出版後にその確認をし、かつ、出版されたカタログを商標権者に送付しているものと推認することができる(上記(1)コ及びサ)。
なお、請求人は乙第12号証及び乙第13号証は被請求人及び利害関係者による本件審判請求後の書証であり証拠能力は皆無である旨主張しているが、該乙号証の内容は両当事者間の過去の事実を確認的に宣言又は陳述しているものであり、その内容が一致していること、内容に不自然な点が見られないこと及びそれらに署名又は記名押印がなされていることからすれば、前述のとおり推認するのが相当である。
オ なお、請求人は、平成24年3月6日以降の新たな証拠提出及び主張は審理を遅延させるものであり「時機に遅れた攻撃防御方法」として却下されるべきであることを事前に申立てる旨述べている。
確かに、被請求人側の対応は、当初の答弁が商標法第50条第2項に規定する登録商標の使用の証明としては不十分であるし、実質的な証拠方法が期間経過後に提出されるなど好ましいものとはいえないが、請求人もいうように、登録商標の使用事実の立証は、事実審の口頭弁論終結時までは提出が認められるということからすると、被請求人提出の全証拠及び主張を含めて検討すべきである。
2 判断
(1)ライトアップショッピングクラブによる使用について
ア 使用の時期
ライトアップショッピングクラブが通販カタログ「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」(本件カタログ2010)を発行、頒布したと推認できる上記1(2)アの時期「平成22年春ころ」は、本件審判の請求の登録(登録日は平成23年6月22日。)前3年以内である。
なお、本件カタログ2008については、その広告有効期限中「2008年(平成20年)6月22日ないし同月30日」の期間は、要証期間内である。
イ 使用商品
同通販カタログに掲載されている商品「Tシャツ」(使用商品)は、その説明中の「アメリカ製」の記載(上記1(1)ア及びイ)から、「アメリカ製のTシャツ」であって、本件審判の請求に係る指定商品中の「米国製のティーシャツ」と認めることができる。
ウ 使用商標
使用商標は、本件商標と外観において同視される図形からなるものであるから、本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
また、使用商標は、本件商品の写真、価格、商品説明などとともに同一のページに表示され、かつ、それ自体が独立した標章として認識される態様で表示されていることから、看者をして本件商品の自他商品識別標識として認識されるものと判断するのが相当である。
エ 使用する者
商標権者は遅くとも2005年からソーズカンパニーに対して通販カタログ「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」の内容を調査する権限を与え、また、ソーズカンパニーは係る権限のもと、遅くとも2005年から当該カタログの出版前及び出版後にその確認をし、かつ、出版されたカタログを商標権者に送付していること(上記1(2)エ)、及び被請求人(商標権者)がライトアップショッピングクラブは通常使用権者である旨述べていること(上記第3 4(5))をあわせみれば、商標権者はライトアップショッピングクラブが2005年ころから本件商品について使用商標を使用していることを承知し、それを容認しているといえるから、商標権者は、ライトアップショッピングクラブに対して、本件商標の使用について黙示の通常使用権の許諾をしていたと判断するのが相当である。
してみれば、通販カタログ「HDザ・ヘビーデューティー・カタログ」を発行・頒布したライトアップショッピングクラブは、本件商標に係る通常使用権者というべきである。
オ 以上からすれば、本件商標に係る通常使用権であるライトアップショッピングクラブは、本件審判の請求の登録前3年以内である、少なくとも平成22年春ころに、その請求に係る指定商品中「米国製のティーシャツ」の広告に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して頒布した(商標法第3条第2項第8号)といわなければならない。
(2)商標権者による使用について
被請求人は、判決例を挙げ、商標権者は本件審判の請求の登録前3年以内に本件商標を付した米国製Tシャツを譲渡、輸入している旨主張しているので、以下検討する。
ア 商品が我が国に輸入された時点では商品に商標が付されていなくとも、我が国において当該商品の輸出業者から委託された業者が商品に商標を付し、その上で当該商品を我が国の輸入業者に引き渡すような場合は、我が国の輸入業者が商標を付した商品を輸入したといえなくはない。
イ しかしながら、「輸入」とは「運び入れること、外国から財貨を買い入れること」、輸出とは「運び出すこと、国内から外国へ財貨を売るために送り出すこと」の意味である(広辞苑 第6版)ことからすれば、本件のように米国で生産された商品が我が国に輸入された場合、米国の業者が「輸入」をしたというより、我が国所在の業者が商品の「輸入」をし、米国の業者が「輸出」をしたというのが自然である。
そして、本件においては、輸入された商品Tシャツは本件商標が付されたものではなく、また、商品Tシャツと本件タグが一緒に輸入されたことの証左はないこと、及び商標権者の宣言書にもそれらを一緒に輸出した旨の宣言はなされていないことからすれば、商品Tシャツと本件タグが一緒に輸入されたと認めることはできない。
そうとすれば、本件においては、商標権者が商品Tシャツに本件商標を付したということはできない
してみれば、「外国法人が商標を付した商品」を前提とする判決例とは、事案を異にするといわざるをえない。
したがって、被請求人の係る主張は認めることができない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者がその請求に係る指定商品中「米国製のティーシャツ」について本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)

(色彩は原本参照)

別掲2(米国製Tシャツの襟ネーム部分に付されている商標)

(色彩は原本(乙第2号証)参照)



審理終結日 2012-06-05 
結審通知日 2012-06-07 
審決日 2012-06-21 
出願番号 商願2002-18274(T2002-18274) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 保坂 金彦 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 梶原 良子
堀内 仁子
登録日 2003-04-04 
登録番号 商標登録第4660048号(T4660048) 
商標の称呼 アメリカンブランドグッドウエア、グッドウエア 
代理人 柳生 征男 
代理人 青木 博通 
代理人 中田 和博 

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