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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X40
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X40
管理番号 1269593 
審判番号 無効2011-890002 
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-12-28 
確定日 2013-01-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5142201号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成23年 7月28日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成23年(行ケ)第10404号平成24年7月26日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第5142201号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5142201号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり、図案化した「3ms」の文字を横書きした構成からなるものであり、平成19年11月16日に登録出願、第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。),裁縫,ししゅう,木材の加工,竹・木皮・とう・つる・その他の植物性基礎材料の加工(食物原材料の加工を除く。),食料品の加工,廃棄物の再生,印刷」を指定役務として、平成20年5月15日に登録査定、同年6月20日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲1ないし412(枝番号を含む。)を提出した。
なお、当初特許庁に提出された書証は、甲1ないし7、そして知財高裁平成23年(行ケ)第10404号判決後に提出された書証は、甲6ないし412(出訴段階での号証番号と同一)であるところ、そのうちの甲365及び366は、当初提出の甲6及び7と重複するため、当初提出の甲6及び7は、便宜上欠番とする。
(1)商標法4条1項15号について
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなり、これより「スリーエムス」の称呼が生じる。
これに対して、請求人は、別掲(2)のとおりの「3M」(以下「引用商標1」という。甲第2号証参照)及び「スリーエム」(以下「引用商標2」という。)の文字からなる周知著名商標(以下、これらの商標をまとめていうときは、「引用商標」という。)を有し、引用商標からは「スリーエム」の称呼が生じるものであり、引用商標は米国に本拠を有する請求人を指称し、また、請求人に係る商品、役務の販売を促進するために使用されている。
本件商標が周知著名な引用商標と類似し、その指定役務への使用により混同のおそれがある。
ア 請求人及び引用商標1の周知著名性
請求人及び引用商標1は、以下のとおり、国際的にも日本においても周知著名である。
(ア)請求人の周知著名性
請求人は、1902年に米国にて設立され、現在では、60カ国以上に139の工場を有すると共に系列会社を有し、189カ国以上に販売拠点を有し、200カ国以上で活動している。これらの系列会社では、「3M」の名称を冠し、引用商標1を使用してその製品を販売している(甲3)。
また、請求人は、5万種類以上の商品を取り扱っており、その分野は、電気電子・電力・通信関連、建築・サイン・ディスプレイ関連、ヘルスケア関連、セーフティ・セキュリティ関連、自動車・交通関連、産業関連、オフィス関連及び生活関連に亘っている。
(イ)引用商標1の周知著名性
引用商標1は、日本及び国際的に周知著名な優良企業である請求人の商号を構成するハウスマークであり、1906年以来使用されているものであって(甲第3号証)、その商品群は多岐に亘り、上述のように5万種類以上となる。また、請求人は、150カ国で引用商標1についての2,000以上の商標登録を有し、日本においても、多数の商標登録を有している(甲4)。
さらに、請求人は、世界中で引用商標1を使用した商品について、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、ダイレクトメール及びトレードショー等の媒体やウェブサイトにおいて、多額の費用を費やして広告宣伝活動を行っている。
(ウ) 引用商標1の売上及び広告宣伝費
日本においては、平成17年から本件出願がされた平成19年までの間は、引用商標1が付されたアパレル関連製品で毎年約70億円、引用商標1が付されたコンシュマー関連製品で毎年約130億円の売上げを計上しており、平成19年以降も、同アパレル関連製品で毎年約50億円から55億円、同コンシュマー関連製品で毎年約130億円の売上げを計上している。
また、平成16年から本件出願がされた平成19年までの間、日本における広告宣伝費として、アパレル関連製品で毎年約800万円から1400万円、コンシュマー関連製品で毎年約7億円から7億7000万円を計上しており、平成19年以降も、アパレル関連製品で毎年約400万円から800万円、コンシュマー関連製品で毎年約6億7000万円から9億円を計上している。これらの宣伝広告には、引用商標1が使用されている。
イ 本件商標と引用商標の類似性
本件商標からは「スリーエムス」の称呼が生じ、引用商標からはいずれも「スリーエム」の称呼が生じる。本件商標と引用商標の称呼の差異は、語尾の「ス」の有無のみである。語尾の「ス」は、それ自体響きの弱い音であり、かつ、比較的聴取され難い語尾に位置することから、本件商標と引用商標は、全体としての語調、語感が近似し、これらを互いに聞き誤るおそれがある。さらに、本件商標と引用商標のいずれからも「3つの欧文字M」の同一の観念が生じる。
したがって、本件商標は、引用商標のいずれとも、称呼及び観念において類似する。
ウ 請求人業務の多様性・広汎性
請求人は、広汎な分野で多岐にわたる商品を製造販売していることで有名な企業であるとともに、多種多様な分野に進出して、革新的な商品・役務を提供している。
エ 本件指定役務と引用商標に係る商品との関連性
本件指定役務は上記1において記載したとおり、第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。),裁縫,ししゅう,木材の加工,竹・木皮・とう・つる・その他の植物性基礎材料の加工(食物原材料の加工を除く。),食料品の加工,廃棄物の再生,印刷」である。
請求人は、「Thinsulate(シンサレート)」や「Gene-thermo NEO(ジェネサーモネオ)」商標を付した高機能中綿素材を販売しており、これらは被服の素材として使用され、これらの中綿素材を使用した被服には、引用商標を使用した下げ札(タグ)又は織りネームが付される。
また、請求人は、「Scotchlite(スコッチライト)」との商標を付した反射材や反射布を製造販売しており、これらは被服に使用され、これを使用した被服にも、引用商標を使用した下げ札(タグ)又は織りネームが付される。
さらに、請求人は、「Scotchgard(スコッチガード)」との商標を付した布地・被服・革製品の撥水・防汚剤を製造販売しており、これを使用して撥水加工したバッグ類、時計ベルト等には引用商標を使用したタグ又はシールが付される。
このように、請求人は、布地や布地・被服の加工に使用する種々の製品を製造販売している。布の開発から加工まで一貫して行う会社は多く存在し、これらの請求人製品と本件指定役務は、同一の者によって提供されることもある商品・役務であり、取引者・需要者が共通することも多く、密接な関連性を有する。また、上記のとおり、引用商標は、請求人の上記製品が使用された被服等にも使用されており、引用商標は、上記製品の加工処理に関連して、取引者・需要者に認識されている。
オ 以上のような、引用商標の周知著名性、本願商標との類似性、請求人の業務の多様性・広汎性、請求人の製品の一部と本件指定役務との密接な関連性等を斟酌すると、本件商標を本件指定役務に使用すると、取引者・需要者において、同役務が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の提供する役務であると混同するおそれがあり、本件商標は商標法4条1項15号に該当する。
(2) 商標法4条1項19号該当性について
引用商標は著名であるから、本件商標に接した取引者・需要者は引用商標を想起する。被請求人は、著名な商標である引用商標1と社会通念上同一な「3m」を、注意を引きやすい商標の語頭部に使っており、著名である引用商標1の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)するという不正な目的で、本件商標を使用している。
したがって、本件商標は商標法4条1項19号に該当する。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は、成り立たない、審判費用は、請求人の負担とするとの審決を求める、と答弁し、その理由を要旨、以下のように述べている。
(1) 商標法4条1項15号該当性に対して
請求人は、本件商標と引用商標とは類似するものであること及び請求人が広汎な分野で多岐に亘る商品を製造販売していることで有名な企業であることを考慮し、本件商標をその指定役務について使用すると、取引者及び需要者において、同役務が請求人又は同人と何らかの関係を有する者の提供する役務であると混同するおそれがあると主張している。
しかしながら、被請求人は、この主張を認めない。その理由は、請求人の主張の前提である「本件商標と引用商標とは類似する」が成り立たないからである。
ア 両商標の比較について
本件商標と引用商標は、以下のとおり、外観、称呼、観念のいずれの点においても類似しない非類似の商標である。
(ア)外観について
本件商標と引用商標とは、外観上、なんら類似しない。
(イ)称呼について
本件商標からは「サンエムエス」又は「スリーエムエス」の称呼しか生じ得ず、本件商標から「スリーエムス」の不自然な称呼は生じ得ない。引用商標からはいずれも「スリーエム」の称呼が生じることから、両商標は、称呼において類似しない。
(ウ)観念について
引用商標から生ずる観念は、「米国のスリーエムカンパニー」、「スリーエム社」しかなく、「3つの欧文字M」という観念は生じない。本件商標は既成の観念を有する成語を表したものではないから、両商標は、観念上比較することはできない。
イ 引用商標の周知著名性について
引用商標が周知著名であることは認める。
ウ 出所混同のおそれについて
平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決(民集54巻6号1848頁)では、「混同を生ずるおそれの有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度、需要者及び取引者の共通性その他取引の実情などに照らし、右指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。」とされている。
してみれば、たとえ、引用商標が、請求人の業務に係る商品「化学・電気素材」等を表示するものとして、本件商標に係る指定役務の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであるとしても、両者間において混同を生ずるとすべき格別の事情を見出し得ないから、被請求人が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者が直ちに引用商標を想起し、請求人又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係のある者の業務に係るものであるかと誤認し、その役務の出所について混同するおそれはなく、広義の混同も生じ得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(2) 商標法4条1項19号該当性に対して
前記のとおり、本件商標は、引用商標とはいずれの点においても非類似の商標であって、別異の商標である。本件商標から、引用商標を想起することはないし、別異の商標を使用したところで顧客吸引力を得ることはできない。
したがって、本件商標は、商標法4条1項19号にも該当しない。

4 当審の判断
本件商標は、以下の理由により、商標法4条1項15号に該当する。
(1)本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおり、やや右に傾斜させた「3ms」の文字を横書きしたものであるところ、いずれも太めの文字で、文字の大きさも同一であり、「m」と「s」は、繋げて表記されている。
そして、本件商標からはその構成に相応し、「スリーエムズ」、「スリーエムエス」、「サンエムズ」又は「サンエムエス」の称呼が生じ、なんら特定の観念は生じない。
(2) 引用商標について
引用商標1は、別掲(2)のとおり、特太のゴシック体で表した「3M」の文字を横書きしたものであり、「3」と「M」とは、2箇所で接するよう表記されており、また、引用商標2は、「スリーエム」の片仮名よりなるものである。
そして、これらの引用商標からは、「スリーエム」の称呼を生じ、格別の観念は生じない。
(3) 両商標の類否について
ア 称呼、外観及び観念について
本件商標からは、「スリーエムズ」、「スリーエムエス」、「サンエムズ」又は「サンエムエス」の各称呼が生じるのに対し、引用商標からは、「スリーエム」のみの称呼が生ずるところ、本件商標から生じる「スリーエムズ」の称呼は、引用商標の「スリーエム」の称呼の末尾に「ズ」の1音が加わっているだけであり、本件商標の「スリーエムズ」の称呼と引用商標の「スリーエム」の称呼とは類似するものというのが相当であるから、両商標は称呼上類似する。
また、本件商標と引用商標1とは、いずれもその構成する各文字が、ほぼ同じ大きさ、高さ、太さで表記されていること、「3」及び「Mないしm」が共通することに照らすと、外観において類似するといえる。
しかしながら、本件商標と引用商標2とは、互いの外観を著しく異にするものであることに照らすと、外観において類似するものではない。
そして、本件商標も引用商標も、特定の観念を生じることはないから、観念については、比較することができない。
イ 小括
以上を総合すると、本件商標と引用商標1とは、類似する商標というのが相当である。
一方、本件商標と引用商標2とは、類似する商標とはいえない。
(4)出所の混同のおそれについて
ア 引用商標1の周知著名性、本件指定役務関連分野における使用状況等
(ア)請求人は、1902年(明治35年)に設立された米国法人であって、現在の社名の英語表記は、「3M Company」であり、日本では「スリーエム」又は「スリーエム社」と称されている(甲3の1及び3の2、320の1ないし320の19)。
請求人は、昭和35年に、日本法人として日本ミネソタスリーエム株式会社を、翌年に、住友電気工業株式会社及び日本電気株式会社との共同出資により、住友ミネソタ株式会社を設立した。その後、同社は、昭和37年に、日本ミネソタスリーエム株式会社を吸収合併して、住友スリーエム株式会社(以下「住友スリーエム」という。)に商号変更した。
また、請求人は、昭和51年に、住友スリーエムとの共同出資により、スリーエム薬品株式会社を設立し、同社は、平成6年にスリーエムヘルスケア株式会社(以下「スリーエムヘルスケア」という。)に商号変更した(甲398)。
本件出願がされた平成19年11月16日以前から現在に至るまで、請求人や住友スリーエムに関する記事が新聞や雑誌に度々掲載されており、これらには、請求人は「3M」又は「米3M」と表記されることが多く、住友スリーエムも「住友3M」と表記されることがある(甲320の1ないし320の19)。
平成19年7月4日付けのニューズウイーク日本版によると、「2007年版世界企業ランキング500」で、請求人は10位であり、同年6月25日付け日経産業新聞によると、日経リサーチが実施した平成19年の「企業ブランド知覚指数調査」の結果、住友スリーエムは35位であった(甲320の5)。
(イ)請求人及び住友スリーエムは、昭和36年以降、日本国内において、引用商標を含む「3M」又は「スリーエム」の文字からなる商標及びこれらの文字を組み合わせた商標につき、多数の指定商品及び指定役務に関して、80以上の商標登録を受けている(甲2及び4)。
(ウ)住友スリーエムは、日本国内において、本件出願前から現在まで「Post-it(ポスト・イット)」の名称を付した付せんや「Scotch(スコッチ)」の商標を付したテープ、のり、修正用品等を中心とする文具製品及びオフィス製品を数多く販売しているところ、これらの殆どの製品には引用商標1が付され、これらの製品カタログや販売促進用品にも引用商標1が付されている(甲6ないし18、22ないし34、38、39、49、50ないし59、66ないし115、126ないし135、137、138、140ないし143、148ないし153、155ないし157、163ないし166、171、172、175ないし181、187ないし189、191、194ないし197、200ないし202、220、225、228、229の1及び229の2、230、231、234、235、237、239ないし245、247、253ないし255、260ないし262、268、270ないし281、283、285、286、291ないし295、297ないし299、303、306ないし319、323ないし325、351ないし353、355ないし357、361、362、364)。
また、住友スリーエムは、日本国内において、本件出願前から現在に至るまで、文具製品以外にも、スポンジたわし(甲20、21、296、302)、窓用透明フィルム(甲63、193、252、258、284、290)、車両用・建築用テープ、すき間ふさぎ防水テープ、マスキングテープ、補修テープ、すべり止めテープ、その他各種用途用テープやはがせる両面粘着テープを使ったフック(甲60、61、64、65、117、119ないし121、124、125、136、139、145、154、158ないし161、167、170、173、174、182ないし186、192、193、199、221ないし224、232、233、236、248、258、259、263ないし267、273、284ないし286、288、290、291、296、297、326ないし331、333ないし344、349、352、355)、各種接着剤(甲116、122、123、139、146、162、168、169、190、193、249ないし251、258、273、282、284、285、287、291、297、332、345、346、350)、クッションゴム(甲139、144、193、258、284、286)、研磨材(甲139、198、238、258、268、284)、空気清浄フィルター(甲118、139、147、258、284)、フィルターマスク(甲139、193、258、284、286)、プロジェクター及びその関連製品(甲356)、その他(甲62、284、286、296、352)、多分野にわたる多種類の製品を販売しており、ほとんどの製品に引用商標1が付されている。
遅くとも平成11年以降には、住友スリーエムが、朝日新聞、讀賣新聞等の新聞、東京ウォーカー、週刊アスキー、日経トレンディー等の雑誌等に、引用商標1を使用して、文具製品・オフィス製品を始めとする上記各製品に関する広告記事を掲載したり、新聞、雑誌等に、上記各製品に関する紹介記事等が掲載されたりした(甲6ないし10、12ないし18、22ないし34、38、39、49、50、302、303、306ないし318、320の1ないし320の19)。
また、住友スリーエムは、引用商標1を使用して、テレビを媒体とした宣伝や電車内での宣伝も行った(甲51ないし54、58)。
(エ)さらに、住友スリーエムやスリーエムヘルスケアは、平成15年以降、「Scotchlite(スコッチライト)」という商標の、鞄、ヘルメット、フェンスのほか衣服にも使用可能な反射シート・反射テープ、衣服用の反射トランスファーフィルム・反射布(甲19、37、42、43、45、48、139、193、226、227、246、257、258、269、284、289、300、301、347、348、388ないし390、405ないし407)、「SCOTCHGARD(スコッチガード)」という商標の衣類・布製品、革用の防水スプレー(甲139、256、258、284、296、392)を、平成17年以降、「Gene-thermo(ジュネサーモ)」「プレスサーモ」「Thinsulate(シンサレート)」「Litebubble(ライトバブル)」という商標の中綿素材(甲35、36、40、41、44、46、203ないし219、304、305、367の1ないし367の3、369ないし377)、芯地素材(甲47、321)を販売しており、その宣伝広告にも引用商標1が使用されている。
ジェネサーモ、シンサレート、ライトバブルが使用された衣服に付されているタグには「Gene-thermo」「Thinsulate」「Litebubble」の商標のほか引用商標1が表示されており、また、織りネームにも引用商標1が表示されているものがある(甲368、382、383、391)。
これらの引用商標1が表示された和文のタグ(甲368から引用商標1が表示されていることが確認可能なFIB-021-A、FIB-022-A、FIB-023-Aほか)は本件出願がなされた前年である平成18年に合計153万枚以上、本件出願がなされた年である平成19年に合計122万枚以上、引用商標1が表示された織りネーム(甲368から引用商標1が表示されていることが確認可能なFIB-TH-TCL-21、FIB-TH-URW)は平成18年に合計18万枚以上、平成19年に合計21万枚以上出荷されている(甲384、385)。
また、スコッチガードが使用された時計用ベルト、鞄、靴等の革製品には「SCOTCHGARD」の商標のほか引用商標1が表示されたタグが付されている(甲393ないし397、408ないし412)。
(オ)以上によると、本件出願前から、請求人及び住友スリーエムの名称の一部である「スリーエム」は、世界的にも日本国内においても著名であるといえる。また、引用商標1は、請求人の会社名の一部でもある「3M」の数字及び欧文字からなる商標であり、請求人や関連会社のハウスマークとして使用されている。
請求人は、昭和35年に日本法人を設立後現在に至るまで、関連会社を通じて日本国内で請求人の製品を販売しており、関連会社が日本国内において販売している製品は、文具製品・オフィス製品に限られず、生活関連商品をも含む多分野、多品種に及んでおり、その中には、衣服に使用される反射材製品、中綿素材、芯地素材や衣類・布製品、革用の防水スプレーも含まれている。そして、これらの製品のほとんどには引用商標1が付され、その販売や広告宣伝等に当たっても引用商標1が使用されている。
したがって、引用商標1は、本件出願がなされた平成19年11月16日時点においても、その後現在に至る間においても、文具製品・オフィス製品を始めとし、生活関連商品をも含む多くの分野において、請求人や関連会社の業務に係る商品を表示する商標として著名であると認められる。
イ 小括
上記のとおり、1)本件商標と引用商標1とは、外観及び称呼において類似し、類似の商標であること、2)本件出願前から、請求人や住友スリーエムの商号中の「スリーエム」部分は、日本国内において著名であること、3)請求人の関連会社は、日本国内において、引用商標1を使用して、文具製品・オフィス製品を始め、生活関連商品をも含む多分野、多種類に及ぶ製品を販売し、請求人の関連会社が販売する製品の中には、被服に使用される中綿素材や反射材製品、衣類・布製品及び革に使用される防水スプレーも含まれていること、4)衣服等の布製品においては、素材の開発から加工技術の開発まで同一の企業や関連会社が行う場合があり(甲401ないし404)、上記の中綿素材、反射材製品及び防水スプレーは、本件指定役務に含まれる「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。)」と密接に関連するといえることが認められる。
また、本件指定役務には、上記役務のほか、「裁縫,ししゅう,木材の加工,竹・木皮・とう・つる・その他の植物性基礎材料の加工(食物原材料の加工を除く。),食料品の加工,廃棄物の再生,印刷」なる役務も含まれているものであるが、請求人や引用商標1が著名であることに加え、請求人の関連会社が販売する商品は、上記したとおり、文具製品・オフィス製品を始め生活関連商品をも含む多分野、多種類に及んでいること、引用商標1は請求人や関連会社のハウスマークとして使用されていることからすると、たとえ、請求人や関連会社が製造する商品が、上記した本件指定役務と密接に関連する役務のみならず、その関連が、本件の如くの密接とまではいい難い商品と前記役務の場合であっても、若しくは、請求人や関連会社が本件指定役務に含まれる業務を実施していないとしても、取引者・需要者において、本件商標をその指定役務に使用しても、請求人又は請求人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であると混同するおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)まとめ
以上のとおり、本件商標は、他の理由について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものである。
よって結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)本件商標




別掲(2)引用商標1





審理終結日 2012-11-26 
結審通知日 2012-11-30 
審決日 2012-12-11 
出願番号 商願2007-116274(T2007-116274) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (X40)
T 1 11・ 271- Z (X40)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田中 亨子田中 幸一 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 小林 正和
前山 るり子
登録日 2008-06-20 
登録番号 商標登録第5142201号(T5142201) 
商標の称呼 スリーエムズ、スリーエムエス、サンエムズ、サンエムエス 
代理人 中山 健一 
代理人 特許業務法人京都国際特許事務所 

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