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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない X43
審判 全部無効 商3条1項4号 ありふれた氏、名称 無効としない X43
審判 全部無効 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 無効としない X43
管理番号 1269561 
審判番号 無効2011-890066 
総通号数 159 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-03-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-07-22 
確定日 2013-01-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第5327392号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
登録第5327392号商標(以下「本件商標」という。)は、「元祖ラーメン」(「ラーメン」の文字は赤色。)及び「長浜家」 の文字を上下二段に横書きしてなり、平成22年1月21日に登録出願、同年5月13日に登録査定がなされ、第43類「ラーメンを主とする飲食物の提供」を指定役務として、同年6月4日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は無効とする、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第37号証を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第3条第1項第4号について
ア 「元祖ラーメン」について
「元祖ラーメン」の表示は、役務の内容を表示するいわゆる付加的表示である。すなわち、第43類の指定役務「ラーメンを主とする飲食物の提供」においては、「1家系の最初の人。始祖。2物事を最初に始めた人。鼻祖。創始者。」(大辞泉より抜粋)等の意味を有する「元祖」を表記した多数の商標が相互に非類似商標として登録されている(甲3ないし甲8)。
このように、「元祖」を表記した多数の商標が登録されているのは、「元祖」の表示が自他役務識別標識としての機能を果たし得ない単なる付記的表示であり、「元祖」に併記された表示部分に特別顕著性が認められて、それぞれ商標登録されたからにほかならない。すなわち、「元祖」には、特別顕著性がないとの前提であるから、「元祖」に併記された表記部分の違いにより、これらの登録商標は、それぞれ非類似として登録されている。
「ラーメン」は、提供される主たる飲食物の品目の普通名称であるため、「元祖ラーメン」の表示は、自他役務識別標識としての機能を果たし得ない単なる付記的表示といえる。
イ 「長浜家」について
「長浜家」は、著名な地理的名称である「長浜」に、一般的に「屋号」「家号」の略称とされる「屋」「家」のうち「家」を結合してなる商標である。
すなわち、「長浜」は、「ご当地ラーメン」の一つである「長浜ラーメン」の発祥の地として有名(少なくとも周知)であり、また、「家」は、後述する横浜の「家系ラーメン」を顕著な例として、全国的にラーメン店の名称として「○○家」の形態で一般的に使用されている「家号」の略称である。
また、インターネット検索により2件の「長浜家」が実在するのが見出されている。検索できた「長浜家」は、件数的には2件と少ないが、2件の「長浜家」は、実在している上に、インターネット上で多数の人から頻繁に紹介されていることから、これらの周知度(知名度)は、非常に高いといえる。
つまり、何ら普通に(ありふれて)採択、使用されている商号商標の周知度に劣るものではない。したがって、甲第32号証として提示した商標法第3条第1項第4号の審査基準の欄に記載されているように、本号でいう「ありふれた名称」に該当するものである。
しかも、かかる「長浜家」の表示は、ありふれた名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、このような商号商標「長浜家」は、自他役務識別標識として機能を果たし得ないものである。
ウ 「屋」「家」を付記した商標について
(ア)「商店」「商会」「屋」「家」「社」「堂」「舎」「洋行」「協会」「研究所」「製作所」「会」「研究会」「合名会社」「合資会社」「有限会社」「株式会社」「K.K.」「Co.」「Co.、Ltd.」「Ltd.」等を結合した商標は、一般に商標使用者の商号を表記するものとして通常商号商標と称される。
(イ)「ラーメンを主とする飲食物の提供」という役務について、その役務主体の名称(屋号)として「?屋」「?家」「?亭」「?軒」が一般的に使用されている。
特に、横浜のラーメン店にあっては、屋号として「家」が系統的に採択・使用されており、横浜のラーメン店「吉村家」を源流とする系統で、横浜市周辺を中心に広まったラーメン店が「家系ラーメン」と称されていることは、インターネット上のウェブサイトに掲載されたフリー百科事典であるウィキペディアの「家系ラーメン」の欄に掲載された「?家」の多数の使用例がある(甲10)。
(ウ)インターネット上における「Yahoo!電話帳」で店名が「○○家」のラーメン店を検索すると、下記のラーメン店が見出される。
あかし家、あかなす家、あかね家、あさひ家、あさ家
福岡県のラーメン店をネット検索すると、下記のラーメン店が見出される。
ラーメン龍の家、ラーメン処 西谷家 野方本店、ラーメンゆきみ家、長浜ラーメン福重家、キャナルシティ博多ラーメンスタジアム気むずかし家、ももち家ラーメン
(エ)このように、「○○家」の形態の屋号は、多数存在しており、ラーメン業界においては、屋号の略称たる「家」がありふれて(普通に)採択・使用されている。したがって、屋号の略称たる「家」の表記を付した商標が一般的に商号を表す商標として認識されていることは明らかであり、本件商標を構成する「長浜」+「家」の構成においても「家」が商号表記の一部と理解されることは明白である。
エ 本件商標における「長浜家」の中の「長浜」の周知・著名性について
(ア)「長浜」は、甲第11号証の地図や甲第12号証の郵便番号帳に示すように、福岡県福岡市中央区長浜一丁目?三丁目である長浜地区の地理的名称であり、「長浜ラーメン」の発祥の地として有名(少なくとも周知)である。「長浜ラーメン」は、白濁した豚骨スープ(以下「白濁スープ」ともいう。)の博多ラーメンから派生したものである。
(イ)このように、「ご当地ラーメン」は、その地名である県名や市名を冠しているものがほとんどであり、例外的に、前記した横浜の「家系ラーメン」等がある。換言すると、「ご当地ラーメン」が冠している地名表示は、そのラーメンが食されている特定の地域の名称である。したがって、「ご当地ラーメン」に接した需要者は、「ご当地ラーメン」が冠している地名表示を、そのラーメンが食されている特定の地域の名称と解釈する。
(ウ)地区名の「長浜」に「家」を結合した表記について
a 上記のように、「長浜家」のうち「長浜」は、地区名や地理的名称としてラーメン関係で多数使用されて全国的に著名になっているとともに、「家」については、屋号・商号表示の略称として通常使用される表示語である。
したがって、「長浜家」の商標表示は、商号商標としてありふれた名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといえる。
b 「長浜家」の商号商標そのものが全国的に多数使用され、ありふれた名称と認識されている。
近年、インターネット検索は日常的な行為として頻繁に行われており、特に、若者の多くが行っている飲食店のインターネット検索もその一つである。そして、人気のある飲食店は、自ずとブログ等の紹介記事が多く掲載されることから、ヒット件数が多くなる。そのため、ヒット件数の多い飲食店は、検索サイト上で多くの人の目に触れることになり、その著名度は、必然的に高いものとなる。飲食店に含まれるラーメン店もその例外ではなく、人気のあるラーメン店の著名度は非常に高い。
現在においては、自らが広告宣伝しなくても、インターネット上に多数の他人がブログ等で紹介記事を掲載するため、評判の良いラーメン店は、短時間にかつ全国的に有名になる。そして、評判が評判を呼んで一気に著名なラーメン店となっているのが現実である。
また、ラーメン店についてのインターネット検索において、同一のラーメン店の店名の文字が商号商標として使用されている例を、同一検索サイト上に多数見出すことができる。そのため、その商号商標が、実質的に、2?3の店で採択・使用されているだけであるとしても、インターネット上で検索されるヒット件数の多さ(例えば、50万件以上)から、これら2?3店が認識されている度合い、つまり周知度(知名度)も高いことになる。
その結果、それに接した多くの需要者には、2?3の店での採択・使用であるにもかかわらず、ヒット件数の多さから、その商号商標が普通に(ありふれて)採択・使用されている商号商標であると無理なく認識される。
そこで、「長浜家」の文字が商号商標として使用されている例を多数提示することで、「長浜家」の周知度(知名度)が高いことを明らかにする。つまり、「長浜家」が全国的に多数使用され、共通する「長浜家」がそれぞれ異なる主体に使用されているために、「長浜家」は、それに接した多くの需要者にありふれた名称と認識されることを明確にする。
グーグルの検索エンジンでは、2件のラーメン店がヒットする。1件目は東京都八王子市天神町2-13-2に実在する「長浜家」(以下、八王子「長浜家」という。)で、2件目は神奈川県横浜市南区永田東1-1-16に実在する「長浜家」(以下、横浜「長浜家」という。)である。
八王子「長浜家」は、甲第22号証に示すように、ラーメン店の外観を写した写真付きのウェブサイトで紹介されている。そして、甲第23号証に示すウェブサイトにコメントされた筆頭の日付を見ると、本件商標の出願日である平成22年1月21日よりも前である平成21年(2009)10月10日であることから、遅くとも、その日には八王子「長浜家」は開業されていたことが分かる。
横浜「長浜家」は、甲第24号証に示すように、ラーメン店の外観を写した写真付きのウェブサイトで紹介されている。そして、甲第25号証に示すウェブサイトには、掲載されたチャーシュウーメンの写真の直下方に「チャーシューメン(800円)麺固め脂多め 撮影:1997/12」と記載されているところを見ると、遅くとも1997年の12月には、横浜「長浜家」は、開店営業されていたことが分かる。
これらのことから、ラーメン店である八王子「長浜家」と横浜「長浜家」は、いずれも本件商標の出願日前から開業されて、今日に至っていることが分かる。つまり、これらの2店において「長浜家」が商号商標として本件商標の出願日前から今日まで継続して使用されていることが分かる。
c そして、八王子「長浜家」と横浜「長浜家」は、現時点において、グーグルの検索エンジンに、「八王子」と「長浜家」をキーワードとして検索すると、約121万件のウェブサイトが検索結果として出力される(検索結果の写し;甲26)。同様に「横浜」と「長浜家」をキーワードとして検索すると、約61万2千件のウェブサイトが検索結果として出力される(甲27)。
d このように、八王子「長浜家」と横浜「長浜家」が現存し、これら「長浜家」が本件商標の出願前から実際にラーメン店の店名や家号を表示するものとして一般に使用されていることから、本件商標は、商取引の実情を考慮すると、本来、自他役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものといえる。
しかも、八王子「長浜家」と横浜「長浜家」の2店がそれぞれ多数の異なるウェブサイトで紹介されている。すなわち、ラーメン店についてのインターネット検索において、「長浜家」の文字が商号商標として使用されている例を多数見いだすことができる。そのため、「長浜家」は、実質的に、八王子「長浜家」と横浜「長浜家」の2店で採択・使用されているだけであるとしても、インターネット上で検索されるヒット件数の多さ(前者が約121万件、後者が約61万2千件)から、これら2店が認識されている度合い、つまり周知度(知名度)も高いことになる。
その結果、それに接した需要者には、「長浜家」が普通に採択・使用されている商号商標であると無理なく認識される。したがって、八王子「長浜家」と横浜「長浜家」に採択・使用されている「長浜家」は、十分に普通に採択・使用されている商号商標といえる。また、本件商標以外に「長浜家」の商号商標が他に2件も現存していることは否めない事実であり、あくまでも普通に採択・使用されているといえる。
e 以上のことから、「長浜家」は、ありふれた名称であり、長浜に居住する者、また、長浜に関係のある者等が商号として自由に採択・使用することができる商号商標である。また、「長浜ラーメン」を提供するラーメン店が営業するには必要な表示であるから何人も使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものだから一私人に独占を認めるのは妥当ではない。また、多くの場合にすでに一般的に使用され、あるいは将来必ず一般的に使用されるものであるから、「長浜家」に自他役務の識別力を認めるのは不合理である。
(エ)「長浜」の表示が著名な地理的名称であることの更なる検証について
a 「長浜」は、滋賀県の「長浜市」(ながはまし)の略称としても著名な地理的名称と認められる。すなわち、「長浜市」は、甲第28号証及び甲第29号証に示すように、滋賀県北東部(湖北地方)に位置する市で、湖北地方の大部分を占める。羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)が湖畔に初めて居城(長浜城)を建て、長浜と名付けた。そして、羽柴秀吉が中心市街を長浜城の城下町として整備し、城下に楽市楽座を取り入れたことで知られている。
「長浜市」は、豊臣秀吉によって長浜と名付けられた史実等からしても著名な行政区画名といえる。そして、「長浜」は、著名な行政区画名「長浜市」の略称と認められることから、著名な地理的名称といえる。
b そこで、翻って、本件商標を見てみると、「長浜」は、著名な行政区画名である「長浜市」(滋賀県)の略称であり、また、先に述べたように、ラーメン店である八王子「長浜家」と横浜「長浜家」が東京都八王子市と神奈川県横浜市において、本件商標の出願前から開業されている。しかも、商号商標「長浜家」の名称全体が世間一般に普通に(ありふれて)採択・使用されている実情が認められる。
c このように、「長浜家」は、ラーメン業界において、全国的に著名な商標であることに加えて本項において「長浜」が「長浜市」という著名な地理的名称の略称としても認識されていることが理解できる。すなわち、「長浜家」は、著名な行政区画名である「長浜市」の略称「長浜」に、商号を表す「家」の文字を結合してなる商号商標であって、名称全体が世間一般に普通に(ありふれて)採択・使用されている実情が認められるので、かかる観点からも商標法第3条第1項第4号に該当するといえる。
(オ)本件と事案を同じくする重要な参考例となる審決例について
本件商標「長浜家」の登録正当性の有無を検討する際に、本件と事案を同じくする重要な参考例となる2件の審決例(事例「明石屋」;甲30と事例「岩手屋」;甲31)を提示する。
(カ)結論
以上のとおり、「長浜家」の表示は、自他役務識別標識としての機能を果たし得ない表示であって、一私人に独占が認められるものではないから、本件商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するものである。
(2)商標法第3条第1項第6号について
ア 本件商標の「長浜家」は、役務の質等の表示性を具有する「長浜」に、屋号の略称たる「家」の表記を付してなる商標であって、単に「長浜ラーメン」が提供されるラーメン店という役務の質や役務の提供場所等を表示しているにすぎないものである。
「長浜ラーメン」の「長浜」は、本来、福岡市中央区の長浜地区を指す地理的名称が「長浜ラーメン」として全国的に知れ渡ったものであるが、同時に、ご当地ラーメンとしてラーメンの特徴的な分類であるラーメンジャンルを示す識別機能をも有している。
その結果、「長浜」の文字は、ラーメンの提供という役務の質等の表示性をも具有している。「長浜」ないしは「長浜ラーメン」を冠したラーメン店は全国に多々存在しており、その店名に接した需要者は、その店ではラーメンジャンルが「長浜ラーメン」であるラーメンが提供されると認識・判断して入店するものと思われる。そして、かかるラーメン店では「長浜ラーメン」が提供されるものと思われる。
全国的にラーメン店の名称として一般的に使用されている「家」の表記を付してなる「長浜家」は、単に「長浜ラーメン」が提供されるラーメン店という役務の質や役務の提供場所等を表示しているにすぎないものであって、一つの家号と認識されるものではない。
イ したがって、「長浜家」は、それに接した需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であり、自他役務識別標識としての機能を果たし得ない商標といえるから、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第8号について
ア 特定の「他人の名称」との同一性について
本件商標は、横書きした「元祖ラーメン」と「長浜家」を上下二段に併記してなるものである。
「長浜家」については、先に述べたように、八王子「長浜家」(甲22、甲23)と横浜「長浜家」(甲24、甲25)がインターネット検索される。しかも、これらの八王子「長浜家」と横浜「長浜家」は、現に存在しており、住所や地図等がサイト上に明記されていることから簡単に確認することができるとともに、特定することができる。
そして、本件商標の「長浜家」は、特定の他人の名称(屋号)である八王子の「長浜家」ないしは横浜の「長浜家」と明らかに一致している。また、本件商標の出願に際して、これらの特定の他人の名称を使用している他人からの承諾は得られていない。
イ 本件商標の「長浜家」と特定の他人の名称である八王子の「長浜家」ないしは横浜の「長浜家」とは、ともに「長」「浜」「家」という漢字三文字からなるものであり、物理的に同一(同一名称)といえる。そして、他人名称「長浜家」は、本件商標の登録出願日(平成22年1月21日)より前(遅くとも八王子は平成21年10月10日、横浜は1997年12月)から使用されて現在に至っているから、「長浜家」の商号商標として使用されたラーメン店は、本件商標の出願前から現存している。
そして、八王子の「長浜家」も横浜の「長浜家」も、ラーメン店の屋号であり、本件商標の指定役務である「ラーメンを主とする飲食物の提供」と役務が共通している。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(4)結び
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第4号又は同第6号又は同法第4条第1項第8号に該当し、商標法第46条第1項の規定により無効にすべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第3条第1項第4号への該当性について
ア 被請求人は、「『ありふれた氏又は名称』とは、原則として、同種のものが多数存在するものをいうが、50音電話帳(日本電信電話株式会社発行)等においてかなりの数を発見できるものをいう。」と記載されている商標の審査基準を根拠に、請求人の主張はあまりに強引であって具体的根拠に欠け、失当である、と主張している。
しかしながら、上記した商標の審査基準は、あくまで原則的な説明であって絶対的なものではない。すなわち、同種のものの存在が少数であっても多数存在する量的な効果と質的に同様の効果が得られるものという例外的な場合も当然包含されていると解釈できる。
何となれば、本件のように、インターネット上で高い頻度で検索される2件の「長浜家」は、露出度が高く周知度が非常に高いことから、それらと物理的に同一の商号商標である本件商標「長浜家」は、ありふれた名称に相当すると言えるからである。
したがって、現実のインターネット社会を度外視した被請求人の主張は不当なものである。
イ 被請求人は、「審判請求人は審判請求書第8頁第9行目ないし第10頁第1行目に亘って、・・・・と主張しているが、これらのラーメン店はいずれも『長浜家』を含んでいないため、『長浜家』がありふれた氏又は名称に該当するものであることを裏付ける具体的根拠にはならない。」と主張している。
しかしながら、請求書8頁9行目ないし10頁1行目には、横浜のラーメン店にあっては、屋号として「家」が系統的に採択・使用されていることを証明するためのラーメン店を例示しているのであって、請求人は、いずれのラーメン店も「長浜家」を含んでいることを主張しているのではない。この点は被請求人の誤解である。
ここでの請求人の主張は、全国的にラーメン店の屋号としては「?家」が一般的に使用されており、特に、横浜のラーメン店では「家」が屋号として系統的に採択・使用されているという点にある。それは、屋号の略称たる「家」の表記を付した商標が一般的に商号を表す商標として認識されていることは明らかであり、本件商標を構成する「長浜」+「家」の構成においても「家」が商号表記の一部と理解されることは明白であることを主張するためである。
そして、請求人は、その主張に続いて本件商標における「長浜家」の中の「長浜」が豚骨ラーメンの提供地区として周知・著名であることを詳説することで、その結果として、「長浜家」の商標表示が、商号商標としてありふれた名称普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であると結論づけている。
ウ 被請求人は、「審判請求人は審判請求書第11頁第10行目ないし第15頁第15行目に亘って、・・・・と綴っているが、これらの呼び名は各地域において提供されるラーメンを単に称したものであって(地域名+ラーメン)、本件登録商標とは具体的構成が著しく相違し、無縁である。」と主張している。
しかしながら、請求書8頁9行目ないし10頁1行目には、本件商標における「長浜家」の中の「長浜」の周知・著名性について詳説するために、「ご当地ラーメン」を例示しているのであって、「ご当地ラーメン」の例示は何ら無縁なものではない。
また、被請求人は、「審判請求人は審判請求書第19頁第22行目ないし第21頁第28行目に亘って、・・・・列挙しているが、いずれのラーメン店にも『長浜家』は含まれていない。」と主張している。
しかしながら、請求書19頁22行目ないし21頁28行目には、「長浜」を冠した福岡県におけるラーメン店と、「長浜ラーメン」を冠した福岡県におけるラーメン店をそれぞれYahoo!電話帳で検索して、その結果を例示しているのであって、請求人は、何れのラーメン店にも「長浜家」が含まれていることを主張しているのではない。この点は被請求人の誤解である。
エ 被請求人は、甲第11号証ないし甲第21号証を個々にかつ断片的に検討しただけで、それらに「長浜」が著名であることの裏付けとなるものがないと指摘している。
しかしながら、甲第11号証ないし甲第21号証は、本件商標における「長浜」が、一つのラーメンジャンルとして確立されるに至った「長浜ラーメン」という「ご当地ラーメン」の発祥の地として有名(少なくとも周知)であることを、「ご当地ラーメン」の説明からはじめてその発祥の地として有名になるまでの経緯を説明するために提示した補足的な資料であり、著名であることの裏付けは、請求書19頁14行ないし23頁7行において、「長浜」を冠したラーメン店を電話番号ないしは会社法人等番号を付して具体的に提示している点にある。
このように、長浜地区における屋台やラーメン店はもとより、福岡県内外における(全国的に)多数のラーメン店においても使用されるとともに、長浜地区を発祥の地とする「長浜ラーメン」類似のラーメンが提供されていることから、「長浜」という地理的名称が、ご当地ラーメンとして全国的に著名となっていることは明白である。
オ 被請求人は、「そもそもラーメンを食べる者はごく一部に限られており、全ての国民にとって身近な存在ではないし、また全ての国民がラーメンに特段の興味を有しているわけではない。」と主張している。
しかしながら、インターネット上のフリー百科事典であるウィキベディアの「国民食」(甲38)のサイトによると、世代や地域、性別などに影響されることなく大衆に親しまれている食品、または料理を指す用語として「国民食」という用語があり、その「国民食」として寿司、味噌汁、うどん、そば、すき焼き、梅干し、沢庵漬け、ラーメン、カレーライス、肉じゃが、醤油風味の煎餅が例示されている。
つまり、ラーメンは、世代や地域、性別などに影響されることなく大衆に親しまれている食品、または料理である国民食の一つと認知されている。
したがって、上記した被請求人の主張は、個人的な見解にすぎないものと言える。
また、被請求人は、「ラーメンを好む者が必ずしも長浜で提供されるラーメン(長浜ラーメン)を認知しているわけでもなく、審判請求人によって提出された証拠書類にはラーメンを介して長浜が一般的に認知されていることを裏付けるものが全く記載されていない。」と主張している。
しかしながら、かかる被請求人の主張は当を得ないものである。
カ 被請求人は、「長浜市(長浜)が全国的に著名であることを裏付ける根拠が記載されていない。」と主張している。
しかしながら、長浜市は、豊臣秀吉によって長浜と名付けられた史実等からして著名な行政区画名である。すなわち、羽柴秀吉が湖畔に初めて居城を建て、長浜と名付けた。そして、羽柴秀吉が中心市街を長浜城の城下町として整備し、城下に楽市楽座を取り入れたことで知られている。
このような史実等からして、「長浜」は滋賀県の「長浜市」(ながはまし)の略称としても著名な地理的名称と認められるものである。
(2)商標法第3条第1項第6号への該当性について
被請求人は、「本件商標は特定の役務(ラーメンを主とする飲食物の提供)について多数使用されている店名ではない。また、『長浜ラーメン』と冠したラーメン店が多数あるとしても、本件商標を構成する『長浜家』の部分は一つの家号として認識されるものであって、本件商標は、指定役務『ラーメンを主とする飲食物の提供』について使用しても、自他役務の識別標識としての機能を果たし得る標章というべきである」と主張している。
しかしながら、本件商標は、指定役務「ラーメンを主とする飲食物の提供」について使用しても、自他役務の識別標識としての機能を果たし得る標章ではない。
すなわち、本件商標の「長浜家」は、役務の質等の表示性を具有する「長浜」に、屋号の略称たる「家」の表記を付してなる商標であって、単に「長浜ラーメン」が提供されるラーメン店という役務の質や役務の提供場所等を表示しているにすぎないものである。先にも述べたように、「長浜ラーメン」の「長浜」は、本来、福岡市中央区の長浜地区を指す地理的名称が「長浜ラーメン」として全国的に知れ渡ったものであるが、同時にご当地ラーメンとしてラーメンの特徴的な分類であるラーメンジャンルを示す識別機能をも有している。
その結果、「長浜」の文字は、ラーメンの提供という役務の質等の表示性、具体的には白濁した豚骨スープで麺はストレート極細麺というラーメン、すなわち、「豚骨ラーメン」の特徴的な分類であるラーメンジャンルの表示性をも具有している。
したがって、「長浜家」は、それに接した需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であり、自他役務識別標識としての機能を果たし得ない標章といえる。
(3)商標法第4条第1項第8号への該当性について
ア 被請求人は、「『長浜家』が店舗の看板に表示されているとの事実のみで、これが特定の『他人の名称』に当たるとの主張はあまりにも具体的根拠に欠ける。」と主張している。
しかしながら、具体的根拠を有する他人の名称である八王子「長浜家」ないしは横浜「長浜家」と、本件商標「長浜家」とが一致していることから、請求人の主張が具体的根拠に欠けるという被請求人の主張は不当である。
また、被請求人は、請求人の提示した3つの判審決例(甲35ないし甲37)が本件と事案を異にしている、と主張している。
しかしながら、他人の名称である八王子「長浜家」ないしは横浜「長浜家」が具体的根拠を有していることから、請求人の提示した3つの判審決例は、本件商標「長浜家」の登録正当性の有無を検討する際に、本件と事案を同じくする重要な参考例といえる。
イ 被請求人は、「『長浜家』が特定の『他人の名称』に該当するものではないので、本件の商標登録出願に対して故意・過失性を感じられると指摘されるいわれはない。』と主張している。
しかしながら、先に述べたように、他人の名称である八王子「長浜家」ないしは横浜「長浜家」が具体的根拠を有して、特定の「他人の名称」に該当しているにもかかわらず、本件商標は、かかる特定他人名称「長浜家」の使用者(他人)の承諾を得た上で出願がなされたものではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証を提出した。
1 商標第3条第1項第4号について
(1)商標法第3条第1項第4号は、商標登録を受けることができない商標として、「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」を規定しており、商標の審査基準には、「『ありふれた氏又は名称』とは、原則として、同種のものが多数存在するものをいうが、例えば、「50音別電話帳(日本電信電話株式会社発行)」等においてかなりの数を発見できるものをいう。」と記されている。
(2)本件商標が商標の審査基準に記された上記の商標に該当するか否か検討すると、請求人が請求の理由中で述べているように、「長浜家」を用いてラーメンを主とした飲食物を提供していると考えられる者(ラーメン店)は、全国においてわずか2店しか存在していない。
請求人は、「長浜家」を店名として用いている当該2件のラーメン店がインターネット上で多数の人から頻繁に紹介されていることにより、これらの周知度は非常に高いといえる、と主張しているが、当該2件のラーメン店のウェブサイトにおける検索数から、「長浜家」が「ありふれた氏又は名称」に該当するとの主張は、あまりにも強引であって具体的根拠に欠け、失当である。また、請求人は、全国で2店存在する「長浜家」の周知度(知名度)が高いので、「長浜家」はありふれた名称であると述べているが、そもそもウェブサイトにおける検索数で周知度の高さを認定するのはあまりにも強引かつ安直であり、また周知度の高さが「ありふれた名称」に結びつくわけでもない。
(3)請求人は、「吉村家」、「環2家」、「横横家」・・・等々、店名を「?家」としたラーメン店を列挙し、これらのラーメン店の存在を理由に本件商標が「ありふれた氏又は名称」に該当すると主張しているが、これらのラーメン店は、いずれも「長浜家」を含んでいないため、「長浜家」がありふれた氏又は名称に該当するものであることを裏付ける具体的根拠にはならない。
(4)請求人は、各地域におけるラーメンの呼び名(北海道の「釧路ラーメン」、東北の「津軽ラーメン」等々)とその特徴に関して延々と綴っているが、これらの呼び名は、各地域において提供されるラーメンを単に称したものであって、本件商標とは、具体的構成が著しく相違し、無縁である。また、「長浜」及び「長浜ラーメン」を含んだラーメン店を列挙しているが、何れのラーメン店にも「長浜家」は、含まれていない。したがって、本件商標は、ありふれたものではなく、他のラーメン店と明確に区別し得るものである。
(5)「長浜」の著名性について
ア 請求人は、「長浜」は地区名や地理的名称としてラーメン関係で多数使用されて全国的に著名になっていると主張しているが、甲第11号証ないし甲第21号証は、単なる長浜地区の地図、郵便番号帳の写しにすぎず、これらの内容から長浜の著名性は、当然のごとく推認できない。
甲第13号証は、インターネット上で提供されているフリー百科事典「ウィキペディア」にて「ラーメン」を検索した際に表示される内容を印刷したものであるが、長浜ラーメンに関する情報は、博多ラーメンの紹介文中のごく一部にしか掲載されておらず、また長浜ラーメンの存在を単に紹介したにすぎない。
甲第14号証は、インターネット上で公開されている新横浜ラーメン博物館のホームページの一部を抜粋した印刷物であるが、長浜ラーメンに関する情報は、当該ホームページ中において、ごく一部にしか表示されておらず、また、当ホームページを閲覧する者はきわめて限定的である。
甲第15号証は、本の一部を抜粋した印刷物であるが、当該本には長浜が全国的に著名であることを裏付けるための客観的な根拠が記されていない。
甲第16号証は、上記のフリー百科事典「ウィキペディア」で「博多ラーメン」を検索した際に表示される内容を印刷したものであるが、ここでは、長浜ラーメン及び替え玉に関する紹介文が単に記されているにすぎない。
甲第17号証及び甲第18号証は、福岡のラーメン店をタクシーで巡るサービスを紹介するホームページの一部を抜粋した印刷物及びラーメン店の位置を表示した地図であるが、当該証拠書類から「福岡市内中の『長浜』という地区を目指して来福してくる人々も多い。」ことは、明らかに推認できない。
甲第19号証は、2009年度版のNTT西日本のデイリータウンページの一部を抜粋した印刷物にすぎず、当印刷物には、長浜が全国的に著名であることを裏付けるための根拠が明らかに存在しない。
甲第20号証及び甲第21号証は、福岡市内にある屋台の写真であるが、当該写真からも長浜が全国的に著名であることを裏付けるものはない。
イ 請求人が提出する証拠書類には、長浜が全国的に著名であることを証明するものがまったく存在しない。また、請求人が提出した証拠書類は、そのほとんどがラーメンに関するものであって、簡潔に述べると請求人は、ラーメンを介して長浜が全国的に著名であると主張している。しかしながら、そもそもラーメンを食べる者は、ごく一部に限られており、全ての国民にとって身近な存在ではないし、また、全ての国民がラーメンに特段の興味を有しているわけでもない。また、ラーメンを好む者が必ずしも長浜で提供されるラーメン(長浜ラーメン)を認知しているわけでもなく、請求人によって提出された証拠書類にはラーメンを介して長浜が一般に認知されていることを裏付けるものがまったく記されていない。
ウ 請求人は、長浜が滋賀県の長浜市の略称として著名であるから、ありふれた名称に該当すると指摘しているが、甲第28号証は、百科事典の一部を抜粋したものにすぎず、また甲第29号証は、滋賀県長浜市にある「公益社団法人長浜観光協会」が開設するホームページの印刷物であって、同市の観光協会による観光促進のためのものにすぎない。すなわち、これらの証拠書類には長浜市(長浜)が全国的に著名であることを裏付ける根拠が記されていない。
(6)請求人による証拠書類及び主張内容は、本件商標「元祖ラーメン長浜家」が指定役務「ラーメンを主とする飲食物の提供」に関連して、屋号等としてありふれた名称であると認め得る証拠とはならず、また、一般にありふれた名称と認めるに足りる証拠にもならない。よって、請求人が商標法第3条第1項第4号において主張する事項は失当であるから、本件商標は、同号の規定に基いて無効にされるべきものではない。
2 商標法第3条第1項第6号について
(1)商標法第3条第1項第6号は、商標登録を受けることができない商標として、「前各号(1号?5号)に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」を規定している。
審査基準には、同号に該当するものとして、「特定役務について多数使用されている店名(4号に該当するものを除く。)」を挙げており、その一例として、指定役務「アルコール飲料を主とする飲食物の提供」に商標「愛」、「純」、「ゆき」等が紹介されている。 請求人は、本件商標が同号に該当するものであると主張しているが、本件商標は、特定の役務(ラーメンを主とする飲食物の提供)について多数使用されている店名ではない。
また、「長浜ラーメン」と冠したラーメン店が多数あるとしても、本件商標を構成する「長浜家」の部分はーつの家号として認識されるものであって、本件商標は、指定役務「ラーメンを主とする飲食物の提供」について使用しても、自他役務の識別標識としての機能を果たし得る標章というべきである。
(2)本件商標は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に該当するものではなく、請求人が商標法第3条第1項第6号において主張する事項は失当であるから、本件商標は、同号の規定に基いて無効にされるべきものではない。
3 商標法第4条第1項第8号について
(1)請求人は、本件商標を構成する「長浜家」が他人の名称にあたるとして、「長浜家」の文字を店舗に表示するラーメン店の実例を示している(「八王子『長浜家』及び「横浜『長浜家』」)が、「長浜家」が店舗の看板に表示されていることの事実のみで、これが特定の「他人の名称」に当たるとの主張は、具体的根拠に欠ける。よって、請求人が提示する証拠書類によって、本件商標が他人の名称を含む商標であるとの主張は失当である。
また、請求人は、3つの判審決例を根拠として本件商標が同号に該当すると主張しているが、当該3つの判審決例は、本件と事案を異にするものであり、また審判請求人によって提出された証拠書類は、「長浜家」が他人の名称に該当すると認めるための具体的な根拠に欠けるため、当該3つの判審決例は、本件と事案を同じくする参考例とはならない。
(2)請求人は、被請求人が本件の商標登録出願の時に上記の2店に対して承諾を得なかったことについて故意・過失性が感じられると指摘しているが、「長浜家」は、特定の「他人の名称」に該当するものではないので、本件商標の登録出願に対して故意・過失性が感じられると指摘されるいわれはない。
(3)以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に規定する商標に該当するものではないから、無効にされるべきものではない。
4 結び
以上のとおり、本件商標は、自他役務識別機能を十分に備えたものであり、また、他人の名称を含む商標でもないから、商標法第3条第1項第4号、同第6号、同法第4条第1項第8号に該当せず、同法第46条第1項第1号により無効にされるべきものではない。

第4 当審の判断
1 本件商標
本件商標は、「元祖ラーメン」と「長浜家」の文字とを上下二段に横書きしてなるものであるところ、上段の「元祖ラーメン」の文字中、「元祖」の文字は、「一家系の最初の人。ある物事を初めてしだした人。創始者。」を意味し、「ラーメン」の文字は、「(中国語から)中国風に仕立てた汁そば。小麦粉に鶏卵・塩・かん水・水を入れてよく練り、そばのようにしたものを茹で、スープに入れたもの。支那そば。中華そば。」を意味する(いずれも、「広辞苑第六版」:株式会社岩波書店)ものである。
そして、この「元祖ラーメン」の文字は、「創始者のラーメン」という程の意味合いを容易に理解させるものであって、また、ラーメン店においてよく使用されている表示であることから、これを「ラーメンの提供」の役務に使用したとしても、「(提供されるラーメンが)創始者のラーメン」であるという役務の質(内容)等を表示するにすぎないものであって、該「元祖ラーメン」の文字は、自他役務の識別標識としての機能を有しないものである。
他方、下段の「長浜家」の文字は、その構成中、「長浜」の文字が「滋賀県長浜市」あるいは「福岡市中央区長浜」に由来する地名であり、また、これに続く「家」の文字は、屋号を構成する文字として理解される場合があるといえるものである。
そうとすれば、該「長浜家」の文字は、その構成文字が同書、同大、等間隔にまとまりよく表示されており、仮に、地名としての「長浜」を理解させる場合があるとしても、これに続く「家」の文字により、一体不可分の屋号(名称)を表したものとして理解、認識されるものというのが相当である。
2 商標法第3条第1項第4号について
そこで、請求人の提出に係る証拠をみるに、「長浜家」の名称の使用は、インターネット情報による2件のみである(甲22ないし甲25)。
そうとすれば、この証拠だけで「長浜家」の名称がありふれている名称とは到底いうことができない。
なお、請求人は、上記2件の「長浜家」の周知度(知名度)が非常に高いものである旨の主張をしているが、しかしながら、そのことが、「長浜家」の名称がありふれている名称であるか否かの判断材料となるものではない。すなわち、その名称について、数多く使用され、ありふれているかが判断の要となるものであって、周知性ありふれた名称であるかの判断要素とならないものである。
してみれば、本件商標を構成する「長浜家」の文字は、屋号(名称)として理解されるものであるとしても、提出された証拠からは、商標法第3条第1項第4号にいう「ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」に該当するということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第4号に該当しない。
3 商標法第3条第1項第6号について
上記のとおり、本件商標は、屋号(名称)として理解されるものである。
そして、たとえ、「長浜ラーメン」が広く知られており、その構成中の「長浜」の文字が地名として理解される場合があるとしても、そのことをもって、「長浜家」の文字に識別力がないということにはならない。そして、本件商標は、多数の者によって使用されているものではない上、一つの屋号の商標として、十分に自他役務の識別標識としての機能を発揮し得るものである。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第8号について
本号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても、一般に氏名、名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には、本人の氏名、名称と同様に保護に値すると考えられる。(最高裁平成16年(行ヒ)第343号 同17年7月22日第二小法廷判決)。
そして、他人の名称については、株式会社の商号は商標法第4条第1項第8号にいう「他人の名称」に該当し、株式会社の商号から株式会社なる文字を除いた部分は同号にいう「他人の名称の略称」に該当するものと解すべきであつて、登録を受けようとする商標が他人たる株式会社の商号から株式会社なる文字を除いた略称を含むものである場合には、その商標は、右略称が他人たる株式会社を表示するものとして「著名」であるときに限り登録を受けることができないものと解するのが相当である。(最高裁昭和57年(行ツ)第15号 同57年11月12日第二小法廷判決)。
これを、本件商標についてみると、本件商標は「長浜家」の文字よりなるものであるところ、請求人が主張する名称は、インターネット情報による2件の「長浜家」であって、これら2件の名称は、「株式会社」等の商号をもって表されたものでないことから、「他人の名称の略称」に該当するものと解すべきである。
そうとすれば、本件商標が同8号に該当するというためには、これら2件の「長浜家」については、「他人の名称の著名な略称」であることを明らかにしなければならないところ、その2件の長浜家についての「商号」は明らかでなく、また、その略称としての著名性にしても、その提出された証拠からは、単にインターネット情報として、発見されたものに過ぎず、その2店が雑誌、新聞記事等に多数紹介され、広く知られている事実を有するなどの客観的に認めることのできる証拠はない。
してみれば、これら2件の「長浜家」については、「他人の著名な略称」ということができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
5 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項4号、同第6号及び同法第4条第1項第8号に違反して登録されたものでないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標

(色彩については原本参照。)



審理終結日 2012-03-12 
結審通知日 2012-03-15 
審決日 2012-03-27 
出願番号 商願2010-3561(T2010-3561) 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (X43)
T 1 11・ 14- Y (X43)
T 1 11・ 16- Y (X43)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 田中 幸一 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 前山 るり子
井出 英一郎
登録日 2010-06-04 
登録番号 商標登録第5327392号(T5327392) 
商標の称呼 ガンソラーメンナガハマヤ、ナガハマヤ、ナガハマ 
代理人 市川 泰央 
代理人 山上 祥吾 
代理人 高松 利行 
代理人 松尾 憲一郎 
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