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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X1937
審判 全部申立て  登録を維持 X1937
管理番号 1268514 
異議申立番号 異議2012-900181 
総通号数 158 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2013-02-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-07-09 
確定日 2013-01-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5481957号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5481957号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5481957号商標(以下「本件商標」という。)は、「アクアサーモ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成23年10月11日に登録出願、第19類「建築用又は構築用の非金属鉱物,陶磁製建築専用材料・れんが及び耐火物,建築工事用養生シート,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,建造物組立てセット(金属製のものを除く。),セメント及びその製品,石材,セメント又はコンクリート製品製造用型枠に用いられる養生シート,セメント製品製造用型枠(金属製のものを除く。)」及び第37類「建設工事,建設工事に関する助言,コンクリート工事の施工管理,建築設備の運転・点検・整備,塗装機械器具の修理又は保守,土木機械器具の修理又は保守,測定機械器具の修理又は保守,土木機械器具の貸与」を指定商品及び指定役務として、平成24年2月20日に登録査定、同年3月30日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法4条1項15号及び同19号に該当するとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲1?5号証を提出した。
1 申立人が引用する商標
申立人が本件商標の登録異議の申立ての理由に引用する登録第4760519号商標(以下「引用商標」という。)は、「aquatherm」の欧文字を標準文字で表してなり、平成15年9月17日に登録出願、第17類「プラスチック基礎製品」を指定商品として、同16年4月2日に権利者を株式会社トヨックスとして設定登録された後、その商標権は、同17年1月17日に現商標権者に特定承継により移転登録され、現に有効に存続しているものである。
2 商標法4条1項15号について
(1)両商標の類似性
両商標は、それぞれ前記したとおりの構成よりなるところ、本件商標より「アクアサーモ」、引用商標より「アクアサーム」の称呼が生じ、その相違点は、いずれも同行音の「モ」か「マ」の違いのみであって、しかも末尾に位置することにより、発音上の違いは極めて軽微なものであることから、両商標は、称呼において同一又は類似する。
(2)引用商標の周知著名性
申立人は、ドイツで設立され、現在、プラスチックパイプシステムの製造販売を行っており、ヨーロッパ市場における3大メーカーの一つである。日本においては、2003年4月より、株式会社トヨックスが申立人の製造する「Aquatherm」製品を販売し、2008年からは、その子会社の株式会社フィットトヨックスによっても販売されており、遅くとも本件商標の出願日までには、引用商標は、申立人の商品を表示するものとして周知著名となっていた。
具体的には、2011年における申立人の商品の売り上げは、ドイツにおいては、2,293,435ユーロ、日本においては、123,515ユーロである(甲3)。
申立人の商品は、2004年から2012年の8年間で、日本における14件の大型展示会等に出展(甲5)されたほか、パンフレット等による販売促進活動も行われ、その結果、「Aquatherm」製品が、三菱重工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、北越工業株式会社及び三菱地所株式会社などに納入された(甲4)。
このような事情から、申立人の引用商標は、日本の造船・自動車・建築の各業界において知られるものとなっており、日本国内で周知著名であることは明らかである。
提出された証拠の記載内容によれば、申立人は、申立人商号のもと、国際的に事業展開しており、甲3号証における宣誓供述書(翻訳:宣誓者は、申立人のマネージング・ディレクター)において、「AQUATHERM」から構成される168の商標を所有している(別紙A)ほか、多言語でホームページ及びウェブサイトを展開している。
また、世界各地の7つの展示会において製品及びサービスの宣伝をしている(別紙C)ほか、各国での様々な雑誌に申立人製品の広告を掲載し、2005年から2010年の6年間で、735.718ユーロが広告宣伝費に充てられている旨、及び日本において、申立人の製品のカタログやパンフレットを定期的に発行している(別紙E)旨を主張している。
さらに、申立人は、同号証において、申立人の一製品は、2011年、海外におけるメモ・イノベーション賞等の受賞記事(別紙G)のほか、2010年コンサルタント会社のイノベーションランキングでトップにランク付けされた受賞記事(別紙H)及びウォール・ストリート・ジャーナルにおいて最も優良な企業の「フォーブス・リスト」にはじめた入った旨の記事(別紙G及びH:いずれも申立人HP内コンテンツ)を提出している。
(3)混同を生ずるおそれ
上記(1)及び(2)の事情より、引用商標と酷似する本件商標が、その指定商品に使用された場合、申立人若しくは申立人と何らかの関係する者の業務にかかる商品であるかのごとく、誤信されるおそれがあるため、本件商標は、商標法4条1項15号に該当する。
(4)商標法4条1項19号
本件商標は、引用商標と酷似し、かつ引用商標が周知著名となった後に出願されたものであるから、引用商標の顧客吸引力を利用又は希釈化させる等、不正な目的で使用するものといわざるを得ないため、本件商標は、商標法4条1項19号に該当する。

第3 当審の判断
1 商標法4条1項15号について
(1)両商標の比較
本件商標及び引用商標は、上記第1及び2において記載したとおり、前者が「アクアサーモ」の片仮名、後者が「aquatherm」の欧文字のいずれも標準文字からなる構成である。
そこで先ず、両商標の外観について検討するに、両者の構成からして、外観上、明らかに区別しうる差異を有しているものである。
次に両商標の称呼についてみるに、本願商標からは「アクアサーモ」、引用商標からは、「アクアサーム」の称呼が生ずるところ、異なるところは、比較的印象に残り難い語尾音に位置する「モ」と「ム」のみであって、しかも該差異音自体、同行に属する近似する音であることからすれば、両商標をそれぞれ全体として称呼したときは、称呼上類似する商標というのが相当である。
また、両商標の観念についてみるに、両者とも全体として特定の観念が生ずるものとはいえないことから、両者は観念上比較することができない。
してみれば、本願商標と引用商標とは、外観において異なるとしても、称呼上類似する商標であり、観念については比較できないことから、これらを総合して判断するに、結局、両商標は称呼上類似する商標といわなければならない。
(2)引用商標の著名性
申立人の主張及び甲各号証によれば、前記2(2)のとおり、申立人は、世界的なプラステチックパイプシステムの主要製造者であり、1973年の設立当時、欧州市場において、最初の三大サプライヤーの1つであり、遅くとも本件商標の出願日までには、引用商標は、申立人の商品を表示するものとして周知著名であったと主張し、申立人商品の独国及び日本における売上高、国内外における展示会への出展、日本における商品納入実績、申立人の保有商標、広告宣伝費及び各賞の受賞記事等について述べている。
しかしながら、本件商標を付した申立人の商品が、我が国において、周知著名であったとは、以下の理由により認めることができないといわざるを得ない。
ア 売上高について
2011年における申立人商品のドイツ及び日本での売上は、当時のレート換算(111円/ユーロ)によれば、ドイツでの売上は、約2、55億円、日本では、約1,400万円程とさほどの額とも認め難く、かつ、これを客観的に認めうる証拠の提出もなく、他にこれを認めるに足る証拠も見当たらないことから、これを以て、引用商標が、申立人の商品に使用し、周知著名であったと認めることができない。
イ 日本における展示会への出展及びその他の広告については、2004年から2008年の8年間で14件の展示会に出展し、販売促進活動を行ったと主張し、各展示会と思われる小さな写真(乙5)やカタログ及びパンフレット(別紙D及びE)を提出しているが、乙5号証の写真のみでは、引用商標が全く判別できず、各展示会の規模が不明であり、展示商品も殆ど不明といわざるを得ないものであり、また、別紙D及びEのカタログ等においては、確かに引用商標を用いたプラスチック管・継手及び配管システムについての広告がなされたことは認めうるが、当該広告の規模が全く不明であるから、これを以て、引用商標が、周知著名であったと認めることができない。
ウ 日本における申立人商品の納入実績については、僅か4社の納入先が申立人商品の販売会社(株式会社フィットトヨックス)の陳述書(甲4)に記載されているのみであって、これを客観的に認めうる証拠の提出も無く、他にこれを認めるに足る証拠も見当たらないことから、これを以て引用商標が、申立人の商品に使用し、周知著名であったと認めることができない。
エ 申立人所有の168の商標については、別紙Aによれば、引用商標である「aquatherm」又はその大文字である「AQUATHERM」を含む申立人の出願登録商標と思われるが、これには、登録商標のみならず、出願中のものや拒絶のものも含まれているところ、これらの商標の存在があったとしても、引用商標が申立人の商品に使用し、周知著名であったことの証拠には必ずしもならないものであるから、これを以て引用商標が、申立人の商品に使用し、周知著名であったと認めることができない。
オ 広告宣伝費について、申立人は、雑誌において、2005年から2010年の6年間で計735.718,24ユーロが申立人の商品の広告宣伝に充てられたと主張しているが、当該雑誌が如何なる雑誌であるのか、発行国及び発行部数、発行日等の証左が全く無く、これを以て引用商標が、申立人の商品に使用し、周知著名であったと認めることができない。
カ 申立人は、2011年、申立人の商品が、メモ・イノベーション賞を受賞し、2010年には、コンサルタント会社のイノベーションランキングでトップにランクされたとか、さらに2011年12月には、最も優良な企業の「フォーブスリスト」に初めて入ったと主張するが、これらの主張の証拠(別紙G及びH)は、いずれも申立人のホームページ内の一コンテンツであって、国内外におけるメディアの間でどの程度扱われたのかを示す客観的な証拠の提出も無く、他にこれを認めるに足る証拠も見当たらないことから、これを以て引用商標が、申立人の商品に使用し、周知著名であったと認めることができない。
以上のア?カのとおり、申立人にかかる主張や提出にかかる証拠を以ってしては、少なくとも我が国において、引用商標が、申立人の商品を表すものとして本件商標の出願時及び査定時において周知著名であったとは、認めることができない。
してみれば、たとえ、両商標が類似であるとしても、引用商標が本件商標の出願時及び査定時において周知著名であったとは認められないことからすれば、商標権者が本件商標をその指定商品及び指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかの如く、その商品及び役務の出所について誤認混同を生じさせるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に該当するものとは認めることができない。
2 商標法4条1項19号について
本件商標は、前記1(2)に記載したとおり、我が国において、引用商標が、申立人の商品を表すものとして本件商標の出願時及び査定時において周知著名であったとは、到底認めることができないことに加え、引用商標の顧客吸引力を利用又は、希釈化させる等の不正な目的があったとも認めるに足る証拠が見当たらないことから、本件商標は、商標法4条1項19号にも該当するものとも認めることができない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条1項15号、及び同19号に違反して登録されたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2012-12-26 
出願番号 商願2011-72491(T2011-72491) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (X1937)
T 1 651・ 222- Y (X1937)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大森 健司 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 2012-03-30 
登録番号 商標登録第5481957号(T5481957) 
権利者 株式会社大林組
商標の称呼 アクアサーモ、サーモ 
代理人 一色国際特許業務法人 
代理人 達野 大輔 

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