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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X24
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管理番号 1267211 
異議申立番号 異議2012-900117 
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2013-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-05-07 
確定日 2012-12-06 
異議申立件数
事件の表示 登録第5468322号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5468322号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5468322号商標(以下「本件商標」という。)は、「FISCO」の欧文字と「フィスコ」の片仮名とを2段に書してなり、平成23年8月2日に登録出願、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布」を指定商品として、同24年1月17日に登録査定、同年2月3日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する国際登録第1025288号商標(以下「引用商標1」という。)は、「iSKO」の欧文字を横書きしてなり、2009年(平成21年)11月4日に国際商標登録出願され、第24類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成22年12月7日登録査定、同23年2月4日に設定登録されたものである。
同じく、国際登録1086968号商標(以下「引用商標2」という。)は、「iSKO POP」(「iSKO」の欧文字は、「POP」の欧文字よりやや大きく表されている。)の欧文字を書してなり、第24類、第25類、第35類及び第40類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2010年(平成22年)12月6日に国際商標登録出願されたものであり、同じく、国際登録1085726号商標(以下「引用商標3」という。)は、「iSKO FUTURE FACE」(「iSKO」の欧文字は、「FUTURE FACE」の欧文字よりやや大きく表されている。)の欧文字を書してなり、第24類、第25類、第35類及び第40類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品及び役務を指定商品及び指定役務として、2010年(平成22年)12月28日に国際商標登録出願されたものである。
以下、引用商標1ないし3を一括して、単に「引用商標」ということがある。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、その申立ての理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)申立人及び引用商標の著名性
申立人は、トルコ財閥の一つであるSANKOグループに属する、世界最大のテキスタイルメーカーである。
トルコは、綿花の一大生産地であり、良質のオーガニックコットンやデニム生地の供給地として国際的に知られている。中でも、申立人及び同じSANKOグループに属する「ISKO DOKUMA ISLETMELERI SANAYI VE TICARET A.S.」(以下「ISKO DOKUMA社」という。)とが提供する綿織物及びデニム生地は、世界各国のアパレルメーカーからプレミアム生地として愛用され、高い評価を得ており、申立人及びISKO DOKUMA社は、テキスタイル業界において、「ISKO社」あるいは「イスコ社」と総称され、該デニム生地は、「ISKOのデニム」と称されて取引に資されている(以下、申立人とISKO DOKUMA社を総称する場合は、単に「ISKO社」という。)。
申立人は、1943年にテキスタイルメーカーとして創業された後、事業規模を拡大し、現在1万2千人もの従業員を擁し、50万台を超える紡績機を保有し、1日当たり300トンの綿糸、150トンの綿織物を生産するトルコ最大のテキスタイルメーカーとなっている(甲第3号証)。
また、ISKO DOKUMA社は、1989年に創業され、広大な工場施設を生かして綿花から織物生産までの工程を一手にコントロールし、年間2億メートルものデニム生地を生産し、世界各国のアパレルメーカーに提供している。同社の海外支店網は、36拠点におよび、世界の主要な市場を網羅している(甲第4号証)。
引用商標の世界各国における商標権の取得状況(第24類に限る。)は、甲第5号証に示すとおりであって、商標「iSKO」を使用した綿織物及びデニム生地は、世界の主要な国・地域で流通し、かつ、商標権を取得しているものであり、引用商標1が世界的に広く知られている。
ISKO社のデニム生地は、様々な商社を通じて、あるいはアパレルメーカーから直接発注を受けて日本に供給され、該デニム生地の品質の高さから、世界的に有名なジーンズメーカーであるリーバイ・ストラウス社の「501」シリーズのファブリックとして採用されているほか、ディーゼル、エドウィン、トルネードマート、ギャップ等の大手海外メーカーや、ユナイテッドアローズ、アバハウス、メンズビギ、タケオキクチ、オンワード「ジョゼフ」、トゥモローランド「エディション」等の国内有名ブランドでも好んで採用されており、「ISKOのデニム」を使用したジーンズ商品は、我が国でも数多く販売されている。
甲第6号証で示すように、これらの商品には、ISKO社のデニム生地を使用したプレミアムジーンズであることがわかるように、引用商標1を表示したタグが付されている。
また、甲第7号証で示すとおり、各社とも「デニムのトップメーカーでヨーロッパの高級ブランドにも生地を提供しているISKO社とDIESELとの共同開発ライン」、「世界有数のデニムファブリックサプライヤーISKO社開発のコーティングが施されたストレッチデニム素材」、「世界的に有名な『ISKO』社 11.5オンスのデニム生地を使用」、「トルコの世界的デニム素材メーカー『ISKO(イスコ)社』のデニム素材を使用」等ISKO社のデニム生地を使用していることをセールスポイントとして強調している。これらの証拠から、「ISKOのデニム」とは、「トルコの高級デニム」との認識が需要者間で広く浸透していることがわかる。
「ISKOのデニム」は、ここ数年にかけて、特に脚光を浴びている。その理由の1つとして、ジーンズカジュアル衣料の大手専門チェーンである株式会社ライトオンが、2009年9月から大々的に宣伝広告を実施しており、同社は、ISKO社のデニム生地を使用したジーンズを発売するにあたり、韓国の人気男性グループを起用して大規模な販促キャンペーンを実施しているほか、2010年3月にもテレビCMを活用した販促キャンペーンを行っており、「ISKOのデニム」の知名度を高めている(甲第8号証及び甲第9号証)。その後、ISKO社及びその商品は、業界紙でも紹介されるようになり(甲第10号証)、「ISKOのデニム」は、テキスタイル業界の需要者のみならず、ジーンズの一般消費者の間でも広く知られるに至っている。
ISKO社が「iSKO」ブランドのもとに日本で販売した綿織物及びデニム生地の売上数量及び売上高は、甲第11号証に示すとおりであり、2001年1月から2012年3月までの売上数量は約50トン、売上高は5,300万円強にのぼる。
以上のとおり、ISKO社が提供するデニム生地は、「ISKOのデニム」として、我が国及び世界各国で大々的に販売されており、特に、衣料用のテキスタイル市場においては、高品質のプレミアム生地として各種アパレルメーカー、テキスタイルメーカーの間で広く知られるところとなっている。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「FISCO」及び「フィスコ」の各文字を上下2段に併記した構成からなり、下段の「フィスコ」は、上段の「FISCO」の読みを特定する部分と無理なく理解されるから、本件商標は、「フィスコ」の称呼のみを生じる。
他方、引用商標1は、「iSKO」の文字を横書きしてなる構成であり、これより「イスコ」の称呼が生じる。前述のとおり、ISKO社のデニム生地は、需要者の間で「ISKO(イスコ)のデニム」と称され、親しまれていることから、引用商標1は、「イスコ」の称呼のみを生じる。
本件商標の称呼「フィスコ」と引用商標1の称呼「イスコ」とは、語頭において弱く響く「フィ」の音と「イ」の音の差異を有するにすぎない。「フィ」の子音(f)は、無声の摩擦音であり、口の前で調音されるため、とかく曖昧に発音されがちであり、また、両称呼は、その後ともに、無声の摩擦音で弱く発音される「ス」の音と、強く明瞭に響く「コ」の音が続くため、それぞれ「フィ・ス・コ」、「イ・ス・コ」と一連に称呼した場合は、語調、語感が極めて近似して聴取される。
また、引用商標1は、その称呼及び構成文字から、高品質のデニム生地を提供するISKO社及びその商品である「ISKOのデニム」を直ちに想起させるのに対し、本件商標もその称呼及び綴りの近似性から、ISKO社及びその商品を連想させる。
このように、本件商標と引用商標1とは、称呼及び観念において相紛れるおそれのある類似商標であり、その指定商品も、ほぼ同一のテキスタイル関連の商品であって、明らかに抵触するから、本件商標は、引用商標1との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(3)商標法第8条第1項について
上述したとおり、本件商標は、「フィスコ」の称呼のみを生じる一方、引用商標2及び3は、いずれも、業界で有名な「iSKO」の文字を大きく、その他の「POP」及び「FUTURE FACE」の各文字を小さく表示してなることから、需要者は、有名な「iSKO」の文字に着目し、「イスコ」と略称する場合があり、よって、引用商標2及び3は、それぞれ「イスコ」の称呼をも生じる。
本件商標の称呼「フィスコ」と引用商標2及び3の称呼「イスコ」について、語調、語感が極めて近似していることは前述のとおりであり、加えて、引用商標2及び3も、その要部である「iSKO」から、高品質のデニム生地を提供するISKO社及びその商品たる「ISKOのデニム」を直ちに想起させるから、本件商標と引用商標2及び3とは、称呼及び観念において相紛れるおそれのある類似商標であり、その指定商品も、ともにテキスタイル関連の商品であり、類似する。
したがって、本件商標は、引用商標2及び3との関係において、商標法第8条第1項に該当する。
(4)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)で述べたとおり、ISKO社のデニム生地は、衣料用のテキスタイル市場において「ISKO(イスコ)のデニム」として広く知られており、上記(2)及び(3)で述べたとおり、本件商標の称呼「フィスコ」と引用商標の称呼「イスコ」とは、語調、語感が極めて近似しており、かつ、指定商品の分野も同一である。
この点、テキスタイルのような素材市場においては、顧客の注文に応じて数量単位で商品が受発注され、取引の現場において、需要者が商標それ自体を直接目で見て確認するという機会は少ないため、商品を選別する需要者にとって、称呼の類似性やそこから想起される観念の類似性は、外観の類似性以上に重要な要素になる。
このような取引の実情のもと、引用商標との称呼上の近似性が極めて高い本件商標を、引用商標の商品と同一分野の指定商品に使用する場合、需要者は、同分野で広く知られている「ISKO」ブランドを連想・想起し、引用商標の商品と混同するおそれが極めて高い。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(5)結び
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号並びに同法第8条第1項に該当するにもかかわらず商標登録されたものであるから、その登録は、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号及び同法第8条第1項該当性について
ア 本件商標
本件商標は、「FISCO」の欧文字及び「フィスコ」の片仮名を上下2段に書した構成からなり、下段の片仮名「フィスコ」は、上段の欧文字「FISCO」の読みを特定する部分と無理なく理解されるから、本件商標は、「フィスコ」の称呼を生じるものであり、また、各構成文字は、辞書等に成語として掲載されていないものであるから、特定の意味を有することのない造語として看取、把握されるとみるのが自然である。
イ 引用商標
引用商標1は、「iSKO」の欧文字を横書きしてなるところ、該文字は、辞書等に成語として掲載されていないものであるから、その読みは、我が国において親しまれた英語の発音に倣うとみるのが相当であり、そうとすると、該構成文字に相応して、「イスコ」の称呼が生じるものであり、また、特定の意味を有することのない造語として看取、把握されるとみるのが自然である。
また、引用商標2は、「iSKO POP」の欧文字を書してなり、引用商標3は、「iSKO FUTURE FACE」の欧文字を書してなるところ、いずれもその構成中の「iSKO」の文字部分がほかの構成文字に比して大きく表されていることから、該文字に着目して取引に資される場合があるといえるものであり、そうとすると、引用商標2及び3は、該「iSKO」の文字部分に相応して、それぞれ「イスコ」の称呼をも生じるものであり、また、特定の意味を有することのない造語として看取、把握されるとみるのが自然である。
ウ 本件商標と引用商標との対比
(ア)外観
本件商標は、「FISCO」の欧文字及び「フィスコ」の片仮名を上下2段に書してなるものであるのに対し、引用商標は、それぞれ「iSKO」、「iSKO POP」及び「iSKO FUTURE FACE」の欧文字を書してなるものであるから、外観上、これらが互いに紛れるおそれはない。
(イ)称呼
本件商標から生ずる「フィスコ」の称呼と引用商標から生ずる「イスコ」の称呼を比較すると、両称呼は、いずれも3音からなり、第1音において「フィ」の音と「イ」の音の差異を有するものである。
そして、上記差異音のうち、「フィ」の音は、両唇を接近させて、その間から発する無声摩擦音(f)と母音(i)との結合した音節である一方、「イ」の音は、唇を平たく開き、舌の先を下方に向け、前舌面を高めて硬口蓋に接近させ、声帯を振動させて発する音といえるから、両音は、その調音の方法・位置において少なからず差異があるものであって、音感・音質においても相違するといえるものであり、加えて、上記差異音は、称呼における識別上重要な要素となり得る語頭に位置するものである。
してみると、上記差異音がいずれも短い3音構成の両称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、両称呼は、これらを一連に称呼した場合においても、全体の語調、語感が相違したものとなり、互いに聴き誤るおそれはない。
(ウ)観念
本件商標及び引用商標は、ともに特定の意味を有することのない造語からなるものであるから、観念上、両商標を比較することができない。
(エ)以上によれば、本件商標と引用商標とは、観念においては、比較することができないとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれのないものであるから、両商標は、非類似の商標というべきである。
エ したがって、本件商標は、引用商標1との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するものではなく、また、本件商標は、引用商標2及び3との関係において、同法第8条第1項に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
申立人の提出に係る証拠をみると、「iSKO」の文字が、申立人の業務に係る商品「デニム生地」を表示する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国である程度知られているとはいい得るものの、本件商標と引用商標とは、上記(1)のとおり、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であり、ほかに商品の出所について混同を生ずるおそれがあるとすべき特段の事情も見いだせないから、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように連想、想起することはなく、その出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号並びに同法第8条第1項のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2012-11-26 
出願番号 商願2011-54664(T2011-54664) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (X24)
T 1 651・ 263- Y (X24)
T 1 651・ 4- Y (X24)
T 1 651・ 261- Y (X24)
T 1 651・ 262- Y (X24)
最終処分 維持  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 寺光 幸子
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2012-02-03 
登録番号 商標登録第5468322号(T5468322) 
権利者 シキボウ株式会社
商標の称呼 フィスコ 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 小暮 君平 
代理人 工藤 莞司 
代理人 加藤 あい 

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