• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議2010900235 審決 商標
無効2010890045 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Z30
管理番号 1267169 
審判番号 無効2011-890038 
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-05-24 
確定日 2012-02-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第4567995号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4567995号商標(以下「本件商標」という。)は、「ババヘラ」の文字を標準文字で表してなり、平成13年7月19日に登録出願、第30類「菓子及びパン、即席菓子のもと、アイスクリームのもと、シャーベットのもと、氷、アイスクリーム用凝固剤、ホイップクリーム用安定剤」を指定商品として、同14年3月25日に登録査定、同年5月17日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人の利害関係
請求人である児玉滋は、「ババヘラ」の文字をその構成中に有する登録第4959166号商標を所有しているなど、請求人は、本件商標が登録され保護を受けることによって不利益を被るおそれがある者に該当するから、本件商標の登録無効の審判を請求することについて法律上の利害関係を有する。
2 商標法第4条第1項第7号について
(1)本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当する理由
ア 「ババヘラ」の語は、秋田県内のイベント会場や道路脇のスペースでパラソルを立て、帽子を被り、エプロンをした主に年配女性(多くは農家の主婦)が販売する、コーンにシャーベット状のアイスを盛り付けた氷菓のことをいい、ババ(「お年寄り」のことを秋田の方言で「ババ」という。)がヘラで盛り付けることから「ババヘラ」と呼ばれるようになったもので、遅くとも平成8年から同10年頃までに、「ババヘラ」の文字は、秋田県内の路上で年配女性がヘラを用いて盛り付けて売るアイスクリームの一種を表す普通名称となっていたものと認められるものである。
そして、この「ババヘラ」は、厳しい生活環境のなかから生み出された地域独特の産業であり、秋田県内の冷菓を扱う各業者等がこの「ババヘラ」を自由に使用していたことが認められるものである。
イ 他方、創業約60年に至る被請求人は角間崎に住所を有し、また、後述する証拠から、上記事実を十分承知しているにも拘わらず、平成14年に本件商標の設定登録を受けて、「ババヘラ」の独占的使用権を取得して、他業者の使用を不可能又は困難とした事実がある。
すなわち、被請求人は、本件商標の登録当初、新聞や取材等において、大手菓子メーカーから地場産業を守ると称して、「ババヘラ」の商標登録を受けたと答えているにも拘わらず、その後、本件商標について商標法第3条第1項第1号の無効理由の除斥期間が経過した後に、本件商標が独占排他権であることから、他業者の「ババヘラ」の使用を禁止し、また、他業者の「ババヘラ」の文字を有する登録出願に対して、本件商標に類似するとして、登録異議申立や情報提供を行い、他業者の使用・登録を排除している。
ウ そうすると、被請求人による本件商標の取得は、秋田県民及び業者が築き上げてきた信用及び地域の財産に便乗して、「ババヘラ」の名称による利益の独占を図る意図でしたものであり、その地域周辺の競合業者による「ババヘラ」の使用を不可能又は困難とするだけでなく、商標権を巡る争いなど無用の混乱を招いており、公正な競合秩序を害するものであって、公序良俗に反するものである。
また、本件商標の登録当初においては、大手メーカーから地場産業を守るためと称しているにも拘わらず、その後に、登録当初の理由を翻して、他の業者の使用・登録を排除する被請求人の行為は、先行する自己の行為に明らかに矛盾し、社会の一般的道徳観念に反するものであるというのが相当である。
エ したがって、本件商標は、請求人を含む秋田県内の冷菓を販売する業者が使用していた標章を剽窃して出願したもので、かかる行為は公序良俗に反し、かつ、社会の一般的道徳観念に反するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
以下、本件商標の商標法第4条第1項第7号の該当性について詳細に説明する。
(2)「ババヘラ」が普通名称であることについて
ア ノースアジア大学総合研究センター経済研究所(2010年3月31日発行)の「経済論集」第8号所収の「秋田の夏の風物詩-ババヘラアイスの研究-その生成と歴史的な背景を中心として-」(甲第7号証)、インターネット上のフリー百科事典「ウィキペディア」の「ババヘラ」の解説(甲第8号証)及び秋田文化出版株式会社(2006年9月29日発行)の「秋田ふるさと検定公式テキスト(秋田商工会議所監修)」(甲第9号証)等によれば、「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」の誕生の地は、現在の男鹿市角関崎と考えられており、このアイスが生まれたのは、第二次世界大戦後の厳しい食糧事情とインフレのさなか、菓子職人であった児玉冷菓の創業者が昭和23年に旧若美町の角間崎においてアイスキャンディーの製造・販売を始めたのが契機であり、その後、児玉冷菓が進藤冷菓及び杉重冷菓にアイスを卸し、共に販売を始めたのが現在のババヘラアイスに至る道程の第一歩であり、また、当初は、「交通安全アイス」などと掲示されていたが、昭和50年(1975年)頃に、当時の高校生の間から生じた呼び方という説、秋田県内を案内していた観光バスのバスガイドが、乗客の質間にとっさに答えたのはじまりという説など多数があり、どれが正しい説なのか定かではないが、1970年代に「秋田県内の路上で年配女性がヘラを用いて盛り付けるアイスクリーム」のことを「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」と命名され、1980年頃には一般に「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」と呼ばれるようになったとされている。
以上から、遅くとも平成8年から同10年頃までに、「ババヘラ」の文字は、秋田県内の路上で年配女性がヘラを用いて盛り付けて売るアイスクリームの一種を表す普通名称となっていたものと認められる。
イ また、終戦直後、「ババヘラアイスの故郷」旧若美町においては、農地改革の恩恵から取り残された人々が多く見られ、さらに他地域と比べ狭い水田所有面積、重ねて水害や稲の病害虫の被害に見舞われるという厳しい生活をしいられていた。このため、この地域の人々は、厳しい環境に対応してそれを乗り切るために出稼ぎや副業を行い、必死に生きる姿が見られた。その必死の営みの成果の一つとして生まれてきたのが、角間崎におけるババヘラアイスであった。やがて、このアイスが成長し始めると、その販売拡大と家を必死に守ろうとする主婦の労働意欲とが結びつき、おりから高度経済成長下のモータリゼーションによるバイクや自動車の増加とも重なって一層の発展を見せ、さらに主要観光地と主要観光道路におけるババヘラアイスの販売へとその展開を見せてきた。そこには、厳しい生活環境のもとで人々が生きていくための創意工夫への必然性が見られ、人間の強い環境適応力と生きていくための知恵が見て取れるとされている。
すなわち、「ババヘラ」は、まさに旧若美町(角関崎を含む)における厳しい生活環境のなかから生み出された貴重な”賜物”(地域独特の産業)といえるもので、この「ババヘラ」は、厳しい生活環境のなかから生み出された地域独特の産業であり、秋田県内の業者等において、誰もが自己の商品に「ババヘラ」を使用できるとの認識を有する状態となっていたことが認められる。
ウ 以上のことは、以下の事実からも認められる。
(ア)無効2010-890045号の審決において、「・・・以上からすれば、遅くとも平成8年から同10年頃に、秋田県男鹿市近辺のイベント会場や路上で年配女性によって冷菓が販売され、その冷菓の名称成立の経緯については諸説があるものの、いずれにしろ、『ババ(「年寄り」を示す秋田の方言)がヘラでコーンに盛りつけた冷菓』であることに由来し、同冷菓が『ババヘラアイス』と称されていた事実があり、その後も当該呼び名が継続したと求められる。当該名称は、引用商標1の出願時には既に、前記地域を中心として相当な範囲で知られたものであったと推認し得るものである。」と認定されている(甲第10号証)。
(イ)平成8年(1996年)9月18日付け「秋田さきがけ」の「音楽アラカルト」欄には、「ババヘラ・ロック」の見出しの下に、「・・・路傍のアイスクリーム売り、いわゆる『ババヘラアイス』を見つけた・・・ババヘラアイス研究家でもあるビチスケこと、湯沢市出身の小川裕美子さんによれば、通常売っているのは白いアイスで・・・」と記載されている(甲第11号証)。
なお、秋田魁新報は、創刊137年の歴史を誇り、秋田県内で最も読まれている新聞である(甲第12号証)。
(ウ)平成8年(1996年)10月28日付け「秋田さきがけ」の「こだま」欄には、「消えるには惜しいババヘラ」の見出しの下に、「・・・県民にとっては昔懐かしいあの味。そう、お祭りや運動会会場、行楽地、路上販売などでおなじみの『ババヘラアイス』のことだ。・・・県内の『ババヘラ』業者は、同町に三つ、男鹿市に二つ、昭和町に一つの計六つ。『ババヘラ』はイベント会場など・・・秋田で生まれ、秋田で育った"地場産業"・・・」と記載されている(甲第13号証)。
(エ)平成10年(1998年)8月16日付け「秋田さきがけ」の「まちひと見聞」欄には、「ババヘラの風景 上」の見出しの下に、「県民になじみの『ババヘラアイス』・・・路傍のアイスクリーム売り、いわゆる『ババヘラ』。国道端はもちろん、お祭りや運動会、各種イベント会場などで見かけない日はない。・・・売り手を県内各地に送り込んでいるのは若美町を中心とする南秋田地区の計6業者。・・・」と記載されている(甲第14号証)。
(オ)平成10年(1998年)8月17日付け「秋田さきがけ」の「まちひと見聞」欄には、「ババヘラの風景 下」の見出しの下に、「・・・県立球場入りロにある『ババヘラ』に寄ってアイスクリームを食べるのが『何とも言えずいいから』だそうだ。・・・売り手を送り込む業者の一週間交代のローテーションがあり、・・・小さな村の小学校の運動会に五業者が出張ったこともあるという。」と記載されている(甲第15号証)。
(カ)平成11年(1999年)4月6日付け「秋田さきがけ」には、「『だんご』だ!競馬だ!どっと1万4千人」の見出しの下に、「・・・“ババヘラアイス”を売っていた女性も・・・」と記載されている(甲第16号証)。
(キ)このほか、平成11年(1999年)6月ないし同19年(2007年)5月発行の「秋田さきがけ」、「朝日新聞秋田版」、「産経新聞秋田版」、「河北新報」及び「朝日新聞大阪市内版」の新聞記事や、2005年「日本商工中金会誌」、「食文化あきた考((有)無明舎出版 2007年7月30日発行)」、インターネット上の「AKITA_STYLE 秋田の基礎知識」のホームページにおいても「ババヘラ」、「ババヘラアイス」についての記載がある(甲第17号証ないし甲第31号証)。
(3)本件商標が剽窃されたものであることについて
ア 被請求人が秋田県内の冷菓を扱う各業者が「ババヘラ」を自由に使用していた事実を知っていること
昭和27年創業の被請求人の有限会社進藤冷菓(甲第29号証)は、男鹿市角間崎(旧若美町)に住所を有し、秋田県において冷菓を販売していることから(甲第7号証等)、本件商標の出願時において、「ババヘラ」が前記地域を中心として相当な範囲で知られ、秋田県内の冷菓を扱う各業者が「ババヘラ」を自由に使用していたことを十分承知していると認められる。
このことは、以下の事実からも認められる。
(ア)平成14年(2002年)7月20日付け「産経新聞」(甲第24号証)の「土曜こらむ」欄における、「・・・今年創業50周年を迎えた『進藤冷菓』(若美町角間崎)の代表、進藤永三さん(54)を訪ねて話を聞いた。アイスは、以前まで『ふるさとアイスクリーム』という名称で、主に運動会や学芸会などの会場に出掛けていた。その後、昭和46年から街道沿いに出店するようになり、この商売を『ババヘラ』と呼ぶようになったという。名前の由来は単純なもの。お年寄りを秋田の方言で『ババ』、そのお年寄りが金属の専用のヘラでアイスクリームをコーンに盛るところからその名がついた。・・・県内には、進藤冷菓を含め6業者が営業している。『道路は早いもの勝ちだった』というように、各業者は自社の路線を持ち、出店場所は競合しない。あうんの取り決めがあるようだ。」と記載されている。
(イ)平成16年(2004)5月2日付け「朝日新聞秋田版」(甲第26号証)の「秋田の不思議」欄における、「進藤冷菓・進藤永三社長に聞く お年寄りの販売員が多いですね。何人いるのですか。 おばあさんがヘラですくうからババヘラ。お客さんからそう呼ばれ始めて10年はたちます。・・・同業6社も含めると、約170人が県内で販売しています。」と記載されている。
(ウ)平成19年(2007年)5月25日付け「秋田さきがけ」(甲第29号証)の「あきた企業通信」欄における、「進藤冷菓(男鹿市角間崎)進藤永三社長(59)。年配の女性が金ヘラでアイスクリームを盛る通称『ババヘラアイス』。販売元が意識して名付けた名前ではない。『ババヘラと呼ばれているのを知ったのは15年前。親しみやすく、印象に残るよい名前だと思っていた』と、6年前に商標登録した。・・・昭和20年代後半、先代の父親が農業の傍ら、自転車の荷台にアイスキャンディーを乗せて、売り歩いたのが起こり。・・・道沿いやイベント会場などの売り子による独特の販売形態が生まれたのは約45年前。」と記載されている。
イ 被請求人が商標出願した背景
被請求人が、本件商標の登録当初、その登録理由を「地場産業を守るため」と主張していることは以下の事実から認められる。
(ア)平成14年(2002年)5月29日付け「河北新報」(甲第32号証)の「シャーベットアイス『ババヘラ』が商標登録」、「家でひんやり夏の味」の見出しの下、「・・・秋田県内の幹線道路沿いに立つ露店で販売され、『ババヘラ』の愛称で親しまれてきた昔懐かしいシャーベット・・・。進藤冷菓は四年ほど前から『ふるさとアイス』の名称で通信販売を行ってきたが、愛称と商品名が異なることや、大手菓子メーカーから愛称を商標登録したいとの話が寄せられたため、『地元として守らなければ』(進藤社長)と思い立って急きょ商標登録した。同様のシャーベットは現在、県内のほかの5業者も販売している。」と記載されている。
(イ)平成14年(2002年)7月20日付け「産経新聞」(甲第24号証)の「土曜こらむ」欄における、「・・・昨年、ババヘラアイスクリームを商標登録した。『伝統の味を守るためだった』と進藤さん。」と記載されている。
(ウ)平成18年(2006年)5月19日付け「週刊アキタ」の「インタビュー」欄には、「・・・ババヘラを商標登録したのはいつですか。『ある時、東京の大手菓子メーカーから突然ババヘラの名前でガムを販売する準備をしているという電話が来ました。寝耳に水の話でしたが、当時は商標登録していなかったことから、そのメーカーと出す出さないの押し問答になりました。結局そのメーカーが下りてくれましたが、その後商標登録を急ごうと、最初は地元の同業者の組合での商標登録を提案しましたが動きがないため、結局自社で平成13年に申請しました。・・・』」と記載されている(甲第33号証)。
(エ)前掲の「経済論集」(甲第7号証)第39頁における、「・・・進藤永三社長は大手の製菓会社にこの名称を商標登録されると、これからのババヘラアイスの販売に支障をきたすと考え、秋田県外商協会(露店商の組合)と相談して平成14年5月にこの名称を商標登録した(進藤冷菓への聞き取り調査による)。」と記載されている。
ウ 被請求人による他の業者の排除
被請求人が他の業者の「ババヘラ」の使用を禁止し、また、他の業者の「ババヘラ」の文字を有する登録出願に対して、本件商標に類似するとして登録異議申立や情報提供を行い、他の業者の使用・登録を排除している行為は、以下の事実から認められる。
(ア)登録商標第4959166号に対する平成22年5月28日付の審判請求書(無効2010-890045)において、被請求人は、前記登録商標が本件商標に類似し、また、不正の目的があると主張している(甲第4号証の2)。
(イ)被請求人は、秋田県内で冷菓を製造販売する杉重冷菓の代表者杉本進が所有する登録商標第5321145号の出願過程において、本件商標に類似するとして情報提供を行い(甲第34号証の2)、さらに、登録を受けた後においても異議申立てを行った(甲第34号証の3)。
(ウ)被請求人は、前述のとおり、被請求人千釜一による商標登録出願2009-59835号及び2010-39014号に対して、本件商標に類似するとして情報提供を行い、その結果、上記商標登録出願は拒絶査定が確定した(甲第5号証の2ないし6及び甲第6号証の2ないし4)。
(4)以上詳述したように、被請求人に「ババヘラ」の語の独占的使用権限を取得させることは、秋田県民及び業者が築き上げてきた信用及び地域の財産に便乗して、「ババヘラ」の名称による利益の独占を図る意図でしたもので、しかも、その地域周辺の競合業者による「ババヘラ」の使用を不可能又は困難とするだけでなく、商標権を巡る争いなど無用の混乱を招いており、公正な競合秩序を害するものであって、公序良俗に反するものである。
また、本件商標の登録当初においては、地場産業を守ると称しているにも拘わらず、その後に、当初の登録理由の主張を翻して、他の業者の使用・登録を排除する被請求人の行為は、先行する自己の行為と明らかに矛盾し、社会の一般的道徳観念に反するものであるというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、その登録を無効とすべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第25号証を提出した。
1 請求人の主張要旨について
請求人は、本件商標に対し、これが商標法第4条第1項第7号に違反して登録された旨主張するが、その主張の要点となる内容は次のとおりである。
(1)本件商標は、普通名称であり、被請求人がこれを登録することによって、競合業者によるその使用を不可能又は困難とし、商標権をめぐる無用の混乱を招くものであるため、公正な競業秩序を害し、公序良俗に反する。
(2)被請求人の行為は、先行する自己の行為に矛盾し、社会の一般的道徳観念に反するものであるため、本件商標は剽窃されたものである。
しかしながら、請求人のこれらの主張は、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することの理由とはなっておらず、いずれも失当である。
まず、上記(1)の点については、請求人の主張は本件商標が普通名称に該当するものであるとの主張に尽きる。
もとより、商品の普通名称であるとの無効理由は、商標法第3条第1項第1号に基づくものであり(同法第46条第1項1号)、本件商標については当該理由に基づく無効審判請求に係る除斥期間が既に経過している(同法第47条第1項)。
したがって、請求人の上記主張は、適用条文を誤るものであり、あるいは商標法第4条第1項第7号に名を借りた不適法な審判請求であって、審決却下の対象である。
次に、上記(2)の点については、請求人は本件商標が剽窃されたものであるとするが、この主張は事実に反するうえ、条文の適用を誤ったものである。
そもそも、商標法第4条第1項第7号は、商標を構成する「文字、図形、記号、若しくは立体的形状若しくはこれらの結合」(標章)それ自体がきょう激、卑わい、差別的、不快な印象を与えるといった「公の秩序又は善良な風俗に反する」場合に、そのような商標について、登録商標による権利を付与しないことを目的として設けられたものである(知財高判平成22年5月27日「MOSRITE」事件参照)。
本件商標については、その構成に関し何ら公序良俗に反するところはなく、請求人の主張は専ら自己の利益に基づいた独善的なものであるので、やはり本件商標が本号に該当することはない。
このように、本件審判請求は、本来的にその主張に根拠を欠くものであり、本件商標登録に無効理由はない。
したがって、これは直ちに却下あるいは少なくとも理由がない旨の審決がなされるべきであるが、請求人の主張は個々の点においても事実に反し、不当に被請求人を論難するものであるため、念のため以下に被請求人の主張を述べる。
2 本件商標が普通名称であるとの主張について
本件商標「ババヘラ」が普通名称であるとする上記1(1)の点につき、請求人は、これが遅くとも平成8年から同10年頃までには普通名称となっていたと主張する。しかしながら、この主張は事実に反するものであり、いずれも誤りである。
(1)請求人は、本件商標が普通名称であるとして挙げた甲第3号証及び甲第7号証の「経済論集」と呼ばれる文献があるが、これは既に内容が誤りであることにより、一旦収蔵された図書館から回収・廃棄がなされたもので、記載内容は全面的に信頼できない。
当該文献のうち、「ババヘラアイス」についての記載は、ノースアジア大学経済学部講師の論文によるものであるが、その記載内容は不十分な調査に基づくもので、不備・誤りがあることが、著者からの被請求人宛書状によって自認されている(乙第1号証)。これによれば、当該文献は図書館に収蔵されるものだが、被請求人の「ババヘラアイス」の記載については内容的誤りがあったため、回収・廃棄をおこなったとのことである。また、改訂版との差し替えにより回収することとなる国立国会図書館についても、当初の「経済論集」第8号に替え、第8・9合併号が発行されたため、これと差替える形で昨年12月下旬に既に回収が完了している。そして、改訂版である第8・9合併号においては、「ババヘラアイス」に関する上記論文は著者がその掲載を辞退したことで、掲載自体がなされていない(乙第2号証)。
このように、甲第3号証及び甲第7号証の「経済論集」の「ババヘラアイス」に関する記載は、内容的誤りが明らかとなったため、現在では既に削除され存在していないものであり、これを引用する請求人の主張も、全面的に採用され得ないものである。
また、甲第8号証の「Wikipedia」は、誰でもが記事を投稿することができ、「ババヘラ」についてもどのような出自の者が記事を投稿しているのか不明である。記事の根拠についても同様に不明であり、文責の所在も定かではないため、これも内容の信頼性を欠き、証拠価値に乏しい。
さらに、甲第9号証の「秋田ふるさと検定」については、単に「ババヘラアイス」が販売されていることが記載されているのみであり、これが普通名称であることを窺わせる記載はない。
(2)請求人は、これら証拠をもって、本件商標「ババヘラ」が遅くとも平成8年から同10年頃までにアイスクリームの一種を表す普通名称となっていたとするが、上記のとおり、これら証拠はその価値を欠くもので、特に削除・抹消がなされた甲第3号証及び甲第7号証に基づくものが請求人の主張の大半であるので、この点に関する主張は何らの根拠に基づくものでもない。
(3)続けて、請求人は、新聞記事等(甲第11号証ないし甲第31号証)を引用して本件商標が普通名称であることを主張する。
しかし、このうち甲第11号証、甲第12号証、甲第16号証及び甲第18号証ないし甲第23号証については、単に「ババヘラ」あるいは「ババヘラアイス」というアイスクリームが秋田県内で販売されていることを示すのみであったり、その他の付随情報(新聞発行部数)であるにすぎないため、これらは本件商標が普通名称として使用されていることを示すものではない。ここには商品の販売業者が明記されている訳でも、複数の販売業者により同一名称で販売されている旨が記載されている訳でもないため、曖昧な記事内容であるが、当時より数多くの路上販売をおこなっていた被請求人の商品を指称していることも十分に考えられる。
甲第13号証ないし甲第15号証及び甲第17号証については、共通するのは「ババヘラ」販売業者が秋田県内に6業者あるいは複数存在する旨が記載されていることである。しかし、ここではこれら業者が当該商品を「ババヘラ」と称して販売していたなどの説明はなく、単に新聞記者が主観的に路傍のアイスクリームを「ババヘラ」と称しているのみである。
(4)甲第13号証ないし甲第15号証及び甲第17号証ほかを見るに、ここには複数の業者が「ババヘラ」と称して当該商品を販売しているなど、それら業者が「ババヘラ」を普通名称として認識していることを窺わせる記述は一切ない。
「ババヘラ」なる名称は、その独特の響きから、例えば新聞記者のような人や、一部の中高生などには面白がってとらえられていたかもしれない。そもそも取引界において普通名称とされていた訳でもないので、このような証拠をもって本件商標を普通名称ということはできない。
さらに、甲第24号証ないし甲第28号証及び甲第30号証については、本件商標の登録後の新聞記事等であるので、これらは本件商標が普通名称であることの資料とはならないし、本件商標の取引界における扱いが記載されているものでもない。甲第29号証は、「ババヘラ」と呼ばれているのがどのような者によってかが不明で、少なくとも取引界でそのように呼ばれていた証拠はない。甲第31号証は、個人ブログのようなインターネット上の記事であり、ここでも例えば複数の業者によって「ババヘラ」なる名称によってアイスが販売されている旨の記載は見当たらず、商品名らしきものとしては「手づくりアイス」や「ふるさとアイス」がある程度である。
(5)請求人は、本件商標は普通名称であるゆえ、これは秋田県内の業者等において誰もが自己の商品に使用できるとの認識を有する状態となっており、そのような商標につき被請求人が権利を取得することは、当該業者による本件商標の使用を不可能又は困難とし、商標権を巡る争いなど無用の混乱を招くもので、公正な競業秩序を害し公序良俗に反する、ということである。例えば、本件商標の登録査定時において、本件商標が普通名称であるといった認識を有していた業者が果たして存在していたものか、甚だ疑問である。いずれの者も「ババヘラ」を商品名として使用していた形跡はなく、結局上記の普通名称にはあたらないものである。
(6)請求人は、被請求人による本件商標登録を、秋田県民及び業者が築き上げてきた信用及び地域の財産に便乗するともいうが、商標に化体する信用というものは、その商標を継続使用してこそ生まれるものであり、自身で商標の使用もそれを広める努力もおこなっていない請求人は、本来良識があればそのような主張はできないはずである。商標に化体する信用を築き上げてきたのは他ならぬ被請求人なのであって、そのように築き上げてきた財産に便乗しようとするのは、むしろ請求人なのである。
3 本件商標が剽窃されたものであるとの主張について
被請求人の行為は、先行する自己の行為に矛盾した社会の一般的道徳観念に反するもので、本件商標は剽窃されたものであるとの上記1(2)の請求人の主張についても、これは全く理由のないものである。
(1)まず、請求人は甲第24号証、甲第26号証及び甲第29号証の新聞記事を引用し、秋田県内の冷菓を扱う各業者が「ババヘラ」を自由に使用していたことを、被請求人が十分に承知していたとする。
しかし、これらの記事で示されるのは、いずれも被請求人の会社の代表が、「ババヘラ」という呼び名を知っていたという点のみであって、各業者が「ババヘラ」を使用していたという事実を知っていたということではない。
したがって、請求人は、記事には記載されていない事実を述べるのみで、その主張には何ら根拠がない。
(2)次に、請求人は、被請求人が本件商標登録出願をおこなった経緯につき、甲第7号証、甲第24号証、甲第32号証及び甲第33号証を引用して、その登録理由を地場産業を守るためとしていたとする。この点、被請求人が本件商標登録出願をおこなったのは、「地元として」「伝統の味を守るため」であったことは正しく、ここにはどのような問題もない。
被請求人は、「ババヘラ」の響きを気に入り、これを商品名として採用することとし、2000年頃からその使用を開始した。ここから被請求人の正式な商品名として「ババヘラ」の名が広く知られるようになるが、2001年5月に大手菓子メーカーから「ババヘラ」のガムを販売したいとの打診が被請求人にあった。この時点では「ババヘラ」は「アイスクリーム」や「ガム」を含む「菓子」の分野について商標登録はされておらず、これが大手メーカーにより登録されると、その後の商品販売に不都合が生ずるおそれのあることから、「地元として」「伝統の味を守るため」に「ババヘラ」の商標登録出願を同年7月におこなったものである。
その際、被請求人は露天商の集まりである秋田県街商協会において本件商標の登録出願について相談し、「ババヘラ」の名称を守ってゆくことを積極的に提案したが、請求人を含め他の業者はこの提案に耳を貸すことなく、何ら協力の意思も示さなかった。そこで、被請求人は、自らの調査と費用負担において、本件商標の登録出願をおこなったのである。この点の経緯の一部は、甲第33号証に「地元の同業者の組合での商標登録を提案しましたが動きがないため、結局自社で平成十三年に申請しました」と示されるとおりである。
請求人は、被請求人の提案には背を向けたうえ、「ババヘラ」を使用する利益をその時点で放棄しておきながら、被請求人の「ババヘラ」の人気が定着した今の段階になって、請求人は今回のような主張をおこなっている。上記大手菓子メーカーも、被請求人が「ババヘラ」を正式に販売していたところから、被請求人にガムの販売を相談してきたのであって、その当時既に「ババヘラ」は被請求人の商品表示として認識されていたことが分かる。
(3)ところで、上記のとおり、被請求人は2000年頃から本件商標の使用を開始し、これを広めようと営業活動をおこなってきたものであるが、その企業努力は並大抵なものではない。
被請求人は、パラソルのもとでアイスクリームを販売する独特の方法とともに、はじめは地元秋田の露天において「ババヘラ」の浸透に努めてきた。その後、全国を対象とする通信販売を皮切りに、日本各地におけるイベント参加などを通じて、商品の評判とともに各種媒体において繰り返し紹介されるようになるなど、努力が実ってようやく「ババヘラ」を広めてきたものである。乙第4号証ないし乙第23号証は、被請求人が販売元として紹介されるなど、被請求人との結び付きにおいて「ババヘラ」が掲載されている新聞記事等である。
こうした企業努力のもと、「ババヘラ」は被請求人の商標として浸透し、現在では「ババヘラ」の取材やテレビ出演など、いずれも当然に被請求人に打診がある状況である。それまではむしろ「ババヘラ」の名称を嫌い、自らは使用することなく、商標登録についても耳を貸すことのなかった請求人は、被請求人により「ババヘラ」の人気が高まり、そのイメージが良くなった段階においてはじめて本件のような請求をおこなっている。自らは利益を放棄しておきながら、人気向上とイメージ好転の努力を他人に任せつつ、それが奏功するや今度は剽窃などと言い出す請求人の主張は、断じて認められるものではない。
(4)さらに、請求人は、情報提供や審判請求の例を挙げ、被請求人が他の業者の本件商標(あるいはこれに類似する商標)の使用・登録を排除していると主張する。
しかしながら、これらはいずれも正当な行為であり、むしろ商標権者としては当然にしなければならない行為である。
(5)このように、本件商標が被請求人による剽窃であるとする根拠は皆無であり、請求人の独善的な見解に基づく上記主張が認められる余地は全くない。
4 まとめ
以上のとおり、本件審判請求は公序良俗違反主張の衣を借りるものの、実体的には本件商標は普通名称であるとの主張をその根幹とするものである。
しかし、当該理由による無効審判請求は除斥期間が経過しているため、本件審判請求は不適法な請求であって、審決により却下されるべきものである。
また、仮に論を進めたとしても、そもそも本件商標は普通名称には該当しないのであり、それに続く公序良俗違反との主張も、本件商標が何らその構成において社会通念に反するなどの事情がないことも含め、その基礎を欠くものである。
公序良俗違反との主張を裏付ける客観的証拠は請求人によっては何ら提出されていないのであり、もとより本件商標は公序良俗に反するものではないため、そのような証拠も存在しない。
したがって、本件商標は請求人主張の無効理由に該当するものではなく、本件審判請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 請求人の利害関係について
請求人が、本件審判の請求をする法律上の利害関係を有することについては、当事者間に争いはないので、以下、本案に入って審理する。
2 本件商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号の趣旨
商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録を受けることができないと規定している。
ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号参照)。
以上の観点から、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであるか否かについて検討すると、本件商標は、「ババヘラ」の文字からなるものであり、これが、上記(a)ないし(d)に該当しないものであることは明らかであるから、以下、(e)の当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないものであるか否かについて検討する。
(2)「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」の語について
請求人提出の甲各号証及び被請求人提出の乙各号証からすれば、次のとおりである。
ア 請求人は、「ババヘラ」は、「ババヘラアイス」とも称され、遅くとも平成8年から同10年頃までには、秋田県内のイベント会場や道路脇のスペースでパラソルを立て、帽子を被り、エプロンをした主に年配女性(多くは農家の主婦)がヘラを用いて盛り付けて売るアイスクリームの一種を示す普通名称となっていたこと、「ババヘラ」は厳しい生活環境のなかから生み出された地域独特の産業で、秋田県内の冷菓業者が「ババヘラ」の語を自由に使用していたことなどを主張し、証拠を提出している。
しかしながら、請求人の上記主張は、甲第3号証及び甲第7号証として提出された書籍「経済論集」に掲載された論文「秋田の夏の風物詩?ババヘラアイスの研究?その生成と歴史的な背景を中心として?」に依拠するところが大きいが、該論文は、調査不足による不備や間違いがあったとして回収、廃棄処分され、上記書籍は論文の差し替えが行われて改訂されていること(乙第1号証及び乙第2号証)からすると、上記論文における「ババヘラアイスは、まさに旧若美町(角間崎を含む)における厳しい生活環境のなかから生み出された貴重な”賜物”(地域独特の産業)といえる」などの記述に基づく請求人の上記主張を直ちに採用することはできない。
イ 平成8年9月ないし同12年11月の新聞記事に、秋田県内において、路上、お祭り、運動会などで、中高年の女性が金属のヘラで容器にアイスクリームを盛りつけて販売する形態及びそのように販売されるアイスクリームを、「ババヘラ」「ババヘラアイス」「交通安全アイスクリーム」と称していた(甲第11号証、甲第13号証、甲第14号証、甲第17号証、甲第20号証、甲第23号証)。
ウ 被請求人は、平成13年5月に大手菓子メーカーから「ババヘラ」の名前でガムを販売したいとの連絡があり、地元の同業者組合で本件商標の登録出願について提案したが動きがなかったため、本件商標の登録出願を平成13年7月におこなった(甲第33号証、乙第11号証)。
エ 被請求人は、平成15年7月に東京・池袋のナムコナンジャタウンで開催された「アイスクリームシティ」に「ババヘラ・アイス」を出店し、230のアイス店で売上個数で第2位、好感度投票では第1位を獲得した(甲第28号証及び甲第29号証、乙第5号証なし乙第9号証)。
オ 上記イないしエを総合すれば、「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」は、秋田県内を中心に、お祭り、運動会、各種イベント会場、国道沿いなどで年配女性がヘラで盛り付けて販売するアイスクリームを指称する語として、本件商標の登録出願の時ないし登録査定時には秋田県内においてある程度認識されていたものといえる。
しかしながら、該アイスクリームについては、平成8年10月、同10年8月及び同12年11月の新聞記事に、その正式名称は「交通安全アイスクリーム」である旨の記載も見られる(甲第13号証、甲第14号証及び甲第23号証)し、また、「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」が業界内で統一した名称として使用されていたものと認め得る証左も見いだせないから、それらが平成8年から同13年ころまでにかかるアイスクリームの普通名称になっていたものとは認めることができない。
そして、「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」の名称は、取扱い業者が名付けたものとはいい難く、自然発生的に呼ばれるようになったものとみるのが相当であるし、また、例えば、秋田県、男鹿市等による公的施策に基づく地域財産というようなものになっていたものとも認められない。
(3)本件商標の登録出願経緯等について
上記(2)のとおり、本件商標の登録出願の時には、「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」の語は、秋田県男鹿市を中心に、お祭り、運動会、各種イベント会場、国道沿いなどで年配女性がヘラで盛り付けて販売するアイスクリームを指称するものとして、秋田県内ではある程度認識されていたものといえるが、「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」の語が、該アイスクリームの普通名称になっていたとまではいえないものである。
そして、上記(2)ウ及びエの事実からすれば、被請求人が企業努力を尽くし地場産業を守るべく本件商標を登録出願したものと推認されるのに対し、請求人は、被請求人の呼びかけに対応せず「ババヘラ」の語の防衛等につき何ら関心を示さなかったものというのが相当である。
また、「ババヘラ」又は「ババヘラアイス」の語は、取扱い業者が名付けたものとはいい難く、自然発生的に呼ばれるようになったとしても、被請求人の企業努力により継続的に使用した結果、被請求人の商標として認識されるにいたったものとみるのが相当であるから、秋田県民の地域財産ということはできない。
したがって、本件商標は、その出願経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあるとはいえないし、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというような事情があるものとも認められない。
なお、請求人は、他業者による商標の使用、登録等を排除する被請求人の行為が社会の一般的道徳観念に反するものである旨主張するが、一般に登録商標と同一又は類似の商標の他人による使用、登録等を排除することは、商標権に基づく正当な行為というべきものであるから、かかる請求人の主張は採用することはできない。
他に、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものとすべき理由は見いだせない。
(4)小括
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとはいえない。
なお、商品の普通名称であることと公序良俗違反であることとは別異の問題であり、仮に本件商標が商品の普通名称に該当するものであるとした場合でも、そのことをもって本件商標が公序良俗を害するものといえないし、また、既に同法第47条第1項に規定する除斥期間を経過している。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-12-01 
結審通知日 2011-12-05 
審決日 2011-12-21 
出願番号 商願2001-71700(T2001-71700) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Z30)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 寺光 幸子 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 大島 康浩
小畑 恵一
登録日 2002-05-17 
登録番号 商標登録第4567995号(T4567995) 
商標の称呼 ババヘラ 
代理人 澤木 紀一 
代理人 澤木 誠一 
代理人 澤木 誠一 
代理人 澤木 紀一 
代理人 伊東 美穂 
代理人 澤木 誠一 
代理人 澤木 誠一 
代理人 澤木 紀一 
代理人 木村 吉宏 
代理人 澤木 紀一 
代理人 小谷 武 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ