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審決分類 審判 査定不服 商4条1項15号出所の混同 登録しない X44
管理番号 1267144 
審判番号 不服2011-22666 
総通号数 157 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2013-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-10-20 
確定日 2012-11-22 
事件の表示 商願2011- 17761拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「江頭エーザイ」の文字を標準文字で表してなり、第44類「調剤,健康診断,栄養の指導,介護,医療用機械器具の貸与,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,柔道整復,はり,美容,理容,入浴施設の提供」を指定役務として、平成23年3月11日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、医療品メーカーである『エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社』(東京都文京区小石川4-6-10)の著名な略称である『エーザイ』の文字を有してなるものであり、また、『江頭』がありふれた氏の一つであることからすると、本願商標は称呼上も外観上も『江頭』と『エーザイ』との間で自然に区切って称呼、認識されると認められるため、取引者、需要者が本願商標に接すれば、本願商標から、前記会社の略称としての『エーザイ』を連想するというべきであるから、出願人が本願商標をその指定役務について使用するときには、それが恰も前記会社、或いはこれと経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所について誤認を生じさせるおそれがあるものと認める。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審における手続の経緯
当審判体は、平成24年6月13日付けの証拠調べ通知書により、請求人に対し、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて、別掲のとおり、本願商標を構成する「エーザイ」の文字がエーザイ株式会社(東京都文京区小石川4-6-10)の著名な略称である事実、並びに、同社の子会社・関連会社の名称中に「エーザイ」の文字が使用されている事実を挙げて、意見を求めたところ、請求人は、平成24年7月17日付けの意見書を提出した。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第15号の該当性について
商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」については、判例(平成12年7月11日最高裁判所第三小法廷判決、平成10年(行ヒ)第85号)が、「『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。」と判示しているところである。
これを本件についてみると、次のとおりである。
ア 「エーザイ」の文字の周知、著名性について
「エーザイ」の文字(以下「引用商標」という。)については、別掲の証拠調べ通知において示した事実より、エーザイ株式会社の略称であって、同社の業務に係る「薬剤」の分野で、相当程度の売上高があり、同社の商標として使用され、高い認知度を得ていることから、我が国の取引者、需要者一般に広く親しまれたものということができる。
イ エーザイ株式会社のグループ会社による引用商標の使用について
引用商標は、別掲の証拠調べ通知において示したとおり、エーザイ株式会社の複数の子会社・関連会社の名称中に使用されている。
ウ 本願商標と引用商標の類似性の程度
本願商標は、前記1のとおり、「江頭エーザイ」の文字を標準文字で表してなるところ、本願商標を構成する「江頭」の文字は氏を表すものであって、自他役務の識別標識としての機能はないか又は極めて弱いものといえる一方、「エーザイ」の文字は、前記アで説示したとおり、周知著名性を有する商標であるから、本願商標は、強く支配的な印象を与える「エーザイ」の文字部分をもって取引に当たることも決して少なくないものというのが相当である。
そうすると、本願商標は、当該「エーザイ」の文字部分に相応して「エーザイ」の称呼をも生じ、エーザイ株式会社の著名なブランドとしての「エーザイ」の観念をも生ずるものというのが相当である。
他方、引用商標は、その構成に相応して「エーザイ」の称呼、エーザイ株式会社の著名なブランドとしての「エーザイ」の観念を生ずるものである。
してみれば、本願商標と引用商標とは、「エーザイ」の綴りを同じくする点で外観上も近似するものであり、「エーザイ」の称呼及びエーザイ株式会社の著名なブランドとしての「エーザイ」の観念を共通にするものである。
よって、本願商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛らわしい類似の商標であるというのが相当である。
エ 商品と役務の関連性及び取引者、需要者の共通性について
本願の指定役務は、前記1のとおり、「調剤」を含むものであるところ、「調剤」については、エーザイ株式会社の業務に係る商品である「薬剤」とその提供場所(調剤薬局)を共通にするものである。
また、本願の指定役務の提供を受ける最終消費者は、一般的な消費者ということができ、エーザイ株式会社の業務に係る「薬剤」の最終消費者も、一般的な消費者であるということができるから、その需要者も共通であるということができるものである。
そうとすると、本願の指定役務とエーザイ株式会社の業務及び同社の業務に係る商品は、販売・提供場所、取引者、需要者の範囲が一致し、極めて密接な関連性を有するものというべきである。
オ 小括
本願の指定役務の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として、以上のアないしウを総合的に判断するならば、本願商標を請求人がその指定役務について使用するときは、これに接する取引者、需要者が、周知著名性を有する引用商標を想起、連想し、同社の子会社・関連会社には、その名称中に「エーザイ」の文字を使用する会社が複数あることも相まって、その役務が、あたかもエーザイ株式会社又は同社と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、自身の名称の由来を述べつつ、「エーザイ」の文字はそもそも「衛生材料」なる文字の略称「衛材」を片仮名化したに過ぎず、本来的に識別力が弱いから、「エーザイ」の文字部分が要部になることはあり得ない旨を主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、本願商標は、強く支配的な印象を与える「エーザイ」の文字部分をもって取引に資されることも決して少なくないものとみるのが相当であるから、当該文字部分を引用商標との類否の対象とすることも本件においては適切なものというべきである。
また、本願の出願時及び審決時において、「エーザイ」が「衛生材料」の略称「衛材」の片仮名表記として、取引上一般に使用されている証拠は見出せない。
イ 請求人は、過去の登録例を挙げ、本願も同様に取り扱われるべきである旨を主張する。
しかしながら、本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの判断要素である対比される引用商標との類否については、本願商標の具体的な構成態様とその指定役務に基づいて個別かつ具体的に判断をなすべきものであるから、他の事例が本件の判断に影響を与えるものではない。
したがって、請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標を商標法第4条第1項第15号に該当するとした原査定の拒絶の理由は妥当なものであって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(平成24年6月13日付け証拠調べ通知書で挙げた事実)
(1)エーザイ株式会社が医薬品等を製造販売する会社であって、長年、同社の業務に係る商品「薬剤」の分野で相当程度の売上高があり、同社の略称として「エーザイ」の文字が使用され高い認知度を得ている(著名である)事実について

○新聞記事関係
(ア)2010年12月9日付け日本経済新聞朝刊
・1頁「企業総合評価『NICES』」の見出しのもと、「NICES総合ランキング上位企業」の表中、18位に「エーザイ」の記載。また、「NICESは5つの視点から企業を総合評価する。配当や株式の時価総額といった『投資家』、知名度などの『消費者・取引先』、定着率などの『従業員』、環境対策などの『社会』という4つの実績評価に加え、将来の成長性を測る『潜在力』がその要素。それぞれについて個別にランキングを作成し、合計して総合ランクを集計する。」との記載。
・14頁「5指標で総合力評価/消費者・取引先」の見出しのもと、「エーザイや花王、資生堂など医薬やヘルスケアで消費者に身近な企業では、積極的な広告宣伝により高いブランドイメージを維持。」との記載。

(イ)2008年3月10日付け日本経済新聞朝刊 1頁
「07年度『優れた会社』本社調査」の見出しのもと、「プリズム上位の総合得点」の表中、7位に「エーザイ」の記載。また、「▼プリズム 専門家が優れた会社とみなす企業群について『柔軟性・社会性』『収益・成長力』『開発・研究』『若さ』の四項目を使った評価モデルを作り、調査データや財務諸表(予想数値含む)から得た得点を順位付けした。調査対象は上場企業中心に二千二百五十一社で、千三十三社から有効回答を得た。」との記載。

(ウ)2011年10月5日付け日経MJ(流通新聞) 4頁
「企業メッセージ調査」の見出しのもと、企業名を想起できる消費者の割合を示す「企業名想起率上位30社」の表中、21位に、企業メッセージとして「元気だしていきましょう。エーザイ」及び企業名として「エーザイ」の記載。

(エ)2010年10月1日付け日経MJ(流通新聞) 4頁
「企業メッセージ調査」の見出しのもと、企業名を想起できる消費者の割合を示す「企業名想起率トップ30」の表中、24位に、企業メッセージとして「元気だしていきましょう。エーザイ」及び企業名として「エーザイ」の記載。

(オ)2008年9月26日付け日経流通新聞 4頁
「コーポレート・メッセージ調査」の見出しのもと、企業名を想起できる消費者の割合を示す「『企業名想起率』トップ30」の表中、28位に、企業メッセージとして「元気だしていきましょう。エーザイ」及び企業名として「エーザイ」の記載。

(カ)1992年7月10日付け朝日新聞 東京朝刊 11頁
「女子大生は旅行好き?文系でJTB1位 女子大・短大生の人気企業」の見出しのもと、「93年卒業予定の女子大、短大生の人気企業ランキング」の表中、4年生大学理系の6位に「エーザイ」の記載。

○インターネット情報関係
(キ)平成19年8月30日付け厚生労働省発行の「新医薬品産業ビジョン?イノベーションを担う国際競争力のある産業を目指して?」を表題とする報告書27頁「(3)企業規模」の項の第二節
「日本の大手製薬企業は海外展開の進展等により売上高を伸ばしてきているが、世界の各大手製薬企業が合併や欧米等の市場拡大もあって売上高をさらに伸ばしたため、現在、武田薬品工業の世界第16 位(2001 年度:第15 位)を筆頭に、世界20 位台に、アステラス製薬(第20 位)、第一三共(第22 位)、エーザイ(第23 位)、大塚製薬(第25 位)が名を連ねる。」との記載。
(http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/08/dl/h0830-1b.pdf)

(ク)平成24年5月23日付けエーザイ株式会社発行の「第100期報告書」
・58頁「4 主要な事業内容」
「当社グループは、当社と連結子会社48社および持分法適用関連会社1社で構成され、その主要な事業内容は、医薬品事業とその他事業に区分されております。医薬品事業では医療用医薬品、一般用医薬品、診断用医薬品等の研究開発・製造・販売を、また、その他事業では、食品添加物、化学品等の製造・販売を行っております。」との記載。
・60頁「1)連結経営指標等」
エーザイ株式会社の連結売上高が、第96期(2007年度)が7,343億円、第97期(2008年度)が7,817億円、第98期(2009年度)が8,032億円、第99期(2010年度)が7,689億円、第100期(2011年度)が6,480億円である旨の記載。
・61頁「2)当社の経営指標等」
エーザイ株式会社の売上高が、第96期(2007年度)が3,892億円、第97期(2008年度)が4,156億円、第98期(2009年度)が4,447億円、第99期(2010年度)が4,646億円、第100期(2011年度)が4,082億円である旨の記載。
(http://www.eisai.co.jp/pdf/ir/stock/invrep100_all.pdf)

(ケ)エーザイ株式会社ホームページ
「エーザイの誕生」の項目に、「昭和16年(1941年)12月6日、太平洋戦争開戦の2日前、埼玉県本庄町に『日本衛材株式会社』が設立されました。これが、現在の『エーザイ株式会社』の前身です。」及び「日本衛材株式会社は、その後昭和30年(1955)、現在の『エーザイ株式会社』に商号変更し、社名はカタカナで表記されることになりました。」との記載。
(http://www.eisai.co.jp/company/profile/history/spirits01.html)

(コ)NIKKEI AD Web
「ブランド価値ランキング」に、エーザイ株式会社が、2007年度63位、2008年度58位、2009年度84位、2010年度81位、2011年度70位にランキングされている旨の記載。
(2007年度:http://adweb.nikkei.co.jp/cb/rank/main07_2.html)
(2008年度:http://adweb.nikkei.co.jp/cb/rank/main00_2.html)
(2009年度:http://adweb.nikkei.co.jp/cb/rank/main09_2.html)
(2010年度:http://adweb.nikkei.co.jp/cb/rank/main10_2.html)
(2011年度:http://adweb.nikkei.co.jp/cb/rank/main11_2.html)

(2)エーザイ株式会社の子会社・関連会社の名称中に「エーザイ」の文字が使用されている事実について

○インターネット情報関係
(サ)エーザイ株式会社ホームページ
「子会社・関連会社」の項目に、「エルメッドエーザイ株式会社」「エーザイ物流株式会社」「エーザイ生科研株式会社」「ブラッコ・エーザイ株式会社」「エーザイフード・ケミカル株式会社」等、名称中に「エーザイ」の文字を含む、エーザイ株式会社の子会社・関連会社の記載。
(http://www.eisai.co.jp/company/profile/group.html)


審理終結日 2012-09-13 
結審通知日 2012-09-18 
審決日 2012-10-09 
出願番号 商願2011-17761(T2011-17761) 
審決分類 T 1 8・ 271- Z (X44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
冨澤 武志
商標の称呼 エガシラエーザイ、エガシラ、エーザイ 
代理人 有吉 修一朗 

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