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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010890062 審決 商標
無効2011890049 審決 商標
無効2008890041 審決 商標
無効2011890082 審決 商標
取消2008300287 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z42
管理番号 1266031 
審判番号 無効2012-890030 
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-03-15 
確定日 2012-10-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第4549785号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4549785号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
登録第4549785号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成からなり、平成12年12月18日に登録出願、第42類「飲食物の提供」を指定役務として、同14年2月12日に登録査定、同年3月8日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第14号証を提出した。
(1)無効事由
本件商標は、商標法第4条1項19号及び同法第4条1項7号に該当し、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(2)具体的理由
ア 請求人が保有する商標について
請求人が保有する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成からなり、「小背簍」の文字を横書きしてなり、第43類の役務を指定役務として、平成23年4月21日に国際登録された。国際登録番号は、第1076747号である。
イ 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、中国その他の外国における需要者に広く認識されている商標と同一又は類似の商標を不正の目的で使用するものである。
(ア)引用商標は、中華人民共和国その他の外国において広く認識されている。
請求人の法人代表者である劉常は、1998年(平成10年)10月22日に会社を設立し、1998年11月9日に中国商標局において、本件商標と同一の商標の登録を出願し、2000年4月7日に商標登録された(中国出願番号は1382626、区分は42類)(甲第1号証)。
「小背簍」商標は、請求人の法人代表者である劉常が、独立の構想に基づいて創設したブランドである。また、請求人は「小背簍」ブランドを世界的に保護するために、一連の「小背簍」商標を出願し登録してきた(甲第2号証)。
遼寧小背簍餐飲管理有限会社の前身は、1998年に設立された瀋陽小背簍餐飲娯楽有限会社であり、主に野生キノコ料理を主とした中国大型飲食チェーン店である。会社名にも「小背簍」という三つの文字を含めており、また、上記二社の法定代表者と創始者は劉常である。
請求人の法人創始者及び「小背簍」商標の創始者である劉常は、数十年間をかけて中国キノコ料理文化に心血を注いできた。劉常は「小背簍」ブランドを創設したほかに、小背簍キノコお鍋シリーズ、キノコ中華料理シリーズ、キノコ焼餅シリーズなどを、革新的な発想とアイデアによって、研究・開発してきた。この成果として、多くの需要者は「小背簍」ブランドのキノコ料理を味わうことができ、独特なキノコ美食文化を体験することができる。
請求人は1998年設立以来、ブランド運営に立脚点を置き、「小背簍」ブランドの宣伝に力を入れてきた。巨額の資金を投入し、ブランド効果を作り、ブランドに対する信頼度と忠実度を高めて、国内外における「小背簍」ブランドの影響力を拡大して、広い範囲の需要者に認められるように取組んできた(甲第3号証)。
このように請求人は、引用商標を継続的かつ広範に使用しており、かつ地道な努力を重ね、ようやく引用商標が中国その他の外国に普及してきており、実質的な評判や高い信頼を得て、本件商標の出願時には中国その他の外国で周知・著名性を獲得するに至った。
また、本件請求人は2000年に「全チェーン店トップ100」、「中国食用菌業界リーダー企業」、「全国一流品重点保護ブランド名」を含む様々な名誉を獲得した。2003年10月に行われた全国食用キノコ料理大会では、「小背簍」キノコで作った料理は、抜群の優勢をもって11個の金メダルのうち全てを獲得した。「小背簍」の中国キノコ料理に対する著しい貢献を称えられ、小背簍は、「全国食用菌餐飲名店」、「全国食用菌文化際立つ貢献賞」を授与された。同時に、小背簍キノコ飲食文化の創始者である劉常は「全国食菌業界優秀企業家」、「全国食用菌業界十大人物」に選ばれた。そして、同年に、劉常は「中国食用菌協会常務理事」に選ばれた(甲第4号証)。
これもまた、引用商標が中国その他の外国において、需要者に広く認識されている事実を示す証拠である。
2011年まで、請求人の「小背簍」に関する年間売上は約2億元であり、1日単位の来客数は10,000人余り、年間来客数は延べ400万人、食用菌年間使用量は、およそ2,000トンとなっている。「小背簍」は中国人の健康なキノコ飲食ブームを導き、中国その他の外国にキノコ食の旋風を引き起こしている。小背簍キノコで作った料理は既に中国料理における新ブーム、キノコ料理の代名詞になっている。現在、小背簍は北京、ハルピン、瀋陽、大連、青島などの都市で数十のチェーン店を設立している。
以上のような事実からすれば、引用商標は、本件商標の出願日である平成12年12月18日時点で、少なくとも中国国内において、本件請求人の業務にかかる役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものである。
(イ)引用商標と本件商標は、同一又は類似する。
a 商標の同一・類似
(a)両商標の構成
引用商標の構成は、毛筆体でデザインされた文字「小背簍」を横書きにしてなるものである。
本件商標の構成は、円の中にかごを背負った少女の図を付し、毛筆体でデザインされた「小背簍」及び「シャオベイロ」を縦書きしてなるものである。
(b)両商標の対比
両商標は、称呼を生じる「小背簍」の文字が同一であり、毛筆体でデザインされた字体の外観が同一又は類似である。よって、両商標は、同一又は類似の外観、同一の称呼、同一の観念を生じるものであり、同一又は類似する商標に該当する。
なお、本件商標中の図形は、引用商標の創作者である劉常が作成したものと同一であり、本件登録出願の出願日前の平成12年4月7日に中国で登録商標となっているものである。当該図形は、可愛い小娘(少女)が簍(かご)を背負って、キノコを摘むというイメージを「小背簍」の漢字と組み合わせて劉常が独自に創作したものである。実際に、「小背簍」の文字と当該図形は店舗等でも使用しており、パンフレット等にも印字され、需要者の間で認識されている。
b 指定役務の同一・類似
引用商標の指定役務は、「第43類 ケータリング,喫茶店における飲食物の提供,ホテルにおける宿泊施設の提供,レストランにおける飲食物の提供,セルフサービス式レストランにおける飲食物の提供,軽食堂における飲食物の提供,カクテルラウンジにおける飲食物の提供」である。
本件商標の指定役務は、「第42類 飲食物の提供」である。
よって、両商標の指定役務は同一又は類似である。
c まとめ
引用商標と本件商標は、同?又は類似の商標であり、指定役務も同一又は類似である。
(ウ)本件商標の商標権者には「不正の目的」がある(請求人と被請求人との関わり)。
請求人は、2000年に、被請求人株式会社ハチブン(以下「ハチブン」という。)の代表者である若しくは代表者であった小塚文雄と、小背簍に関するライセンス交渉を行った。小塚文雄は、劉常が国際的に小背簍チェーン店を展開するために日本国で加盟店を設立する代理業者をしていることを知り、ライセンス交渉を始めた。少なくともこの時には、小塚文雄は「小背簍」の知名度と潜在的市場を認識したことは明白である。
2000年から2002年まで、双方は中国の遼寧省瀋陽市、天津市、北京市と名古屋市で何回も実施方法について詳細に交渉し、日本での市場調査を行い、さらに協力契約書をも交わした。しかし、小塚文雄は仲介人として活動していたものの、自らは資金を持っていなかったため、交渉は行き詰まった。それにも関わらず、小塚文雄は、請求人と日本での商業化を交渉している間に、請求人に無断で、秘密裡に、小塚文雄が代表である若しくはあったハチブン名義で日本国特許庁に「小背簍」商標を出願し登録を受けていた。
劉常が日本で加盟店を設立する件は、小塚文雄との交渉の中断によって行き詰まったため、小塚文雄が日本国特許庁に「小背簍」商標を出願し、登録を受けたことに、劉常は気付かなかった。2011年に、請求人が日本での支店を設立する計画を立てた際、国際登録商標出願を経由して日本での商標登録を出願した。その際、ハチブン(代表者小塚文雄)による登録商標を発見した。請求人は劉常と小塚文雄との交渉に参加した代表者(通訳)である閻華から、両者の交渉に関する全ての資料の提供を受け、交渉の事実を確認した(甲第5号証)。
小塚文雄の会社であるハチブンは、仲介会社にすぎないものである。小塚文雄がハチブン名義で行った本件商標登録は、不当な利益を獲得するための行為である。その事実について以下詳細に述べる。
2000年、劉常と小塚文雄は、瀋陽市で一回目の交渉を行い、ハチブンは小背簍ブランドの代理業者として日本で業務を展開する契約を締結した。それは2001年2月6日に、小背簍会社の法定代表者である劉常がハチブンの小塚文雄に送ったFAXからも明らかである。同時に、双方は日本での協力を深めるという約束をし、日本小背簍会社を設立したものの、ハチブンの代理権が終了し、ハチブンは特別加盟店として加入費を支払うことを約束していた(甲第6号証)。
2001年8月11日、双方は天津にて、日本で小背簍合弁会社を設立する事項を詳しく検討したうえで、備忘録を作成した(甲第7号証)。
2001年8月21日、双方は北京小背簍餐飲会社の設立に関する市場調査を行い、「F/S報告書」を作成した(甲第8号証)。
2001年8月29日、中国側の代表者である閻華は双方の交渉記録(F/S報告書日本語版を含む。)をハチブンの小塚文雄に送付した(甲第9号証)。
2001年9月5日、小塚文雄はF/S報告書に回答をした(甲第10号証)。
2001年12月29日、小塚文雄は、劉常と閻華に手紙を送って、協力する旨、返答した(甲第11号証)。
2002年2月6日、劉常はその手紙に返信して、「小背簍ブランドを売らない」旨を通知した(甲第12号証)。
2002年、瀋陽小背簍会社と双方により共同出資の形で日本小背簍株式会社を設立する「業務協力協議書」を結んだ(甲第13号証)。その協議書では、乙(日本小背簍株式会社)は甲(瀋陽小背簍会社)が持つ「無形資産である小背簍商標」を使い、無形資産購入費用1000万円支払うことを明記した。この協議書は、改めてハチブンが「小背簍」商標権などの無形資産を、請求人に属するものと認識した事実であることは明らかである。
2002年5月、双方はまた「特許経営契約書」を作成した(甲第14号証)。その契約書では、改めて「小背簍」商標などの無形資産が請求人に属することを明確にした。
このように、「小背簍」商標は、請求人が持つ中国で周知の商標であり、企業の無形財産の核心部分とも言え、請求人による宣伝や経営力等を通して、中国その他の外国において周知性を獲得している。
以上述べたことから、ハチブンは最初から「小背簍」商標が請求人に属することを認識している上で、不正な利益を獲得するために、双方が交渉中に無断で小背簍商標の登録を受けたことは明白である。
以上のことからすれば、本件商標は、引用商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、先取り的に出願・登録したものということができ、請求人の引用商標が中国その他の外国で獲得した顧客吸引力や信頼等の不正の利益を得る目的、又は先願主義を採用する我が国の法制を利用して請求人の引用商標が登録されないようにすることにより、請求人に損害を与える目的で、不正の目的をもって本件商標を使用する若しくは使用しようとするものであることは明白である。また、請求人が中国その他の外国において獲得した顧客吸引力、信頼をただ乗りしようとするものである。
したがって、本件商標は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当し、請求人に損害を与える目的その他の不正の目的をもって使用する若しくは使用しようとするものであることは明白である。
ウ 商標法第4条1項7号について
本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。
(ア)請求人は、これまで詳しく述べたとおり、2000年から、被請求人であるハチブンの代表者である若しくはあった小塚文雄と、幾度も引用商標に関するライセンス交渉等を行った事実がある。
被請求人は、ライセンス費用の支払いが惜しくなり、ライセンスを結ぶに至らなかった。日本でのビジネスチャンスを逃した被請求人は、交渉が中断となったことの腹いせに、また、引用商標が我が国において登録されていないことを奇貨として、先取り的に出願・登録を行った。したがって、請求人の引用商標が中国その他の外国で獲得した顧客吸引力や信頼等の不正の利益加る目的、又は先願主義を採用する我が国の法制を利用して請求人の引用商標が登録されないようにすることにより、請求人に損害を与える目的で、不正の目的をもって本件商標を使用する若しくは使用しようとするものであることは明白である。本件商標は、また、請求人が中国その他の外国において獲得した顧客吸引力、信頼をただ乗りしようとするものである。
このことは、ただ単に引用商標を知っていたというレベルを超え、極めて悪質なものであり、社会の一般的道徳観念に反するものと言える。
したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当し、商標法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきである。
また、このようなことが許されるのであれば、商標法の目的である第1条に、著しく反する結果となり、日本国特許庁の信用も失われることになる。
(イ)仮に上記(ア)が認められないとしても、本件商標は、「他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標」に該当する。「他の法律」とは、不正競争防止法第2条第1項第2号である。
本件は、その使用が不正競争防止法第2条第1項第2号に該当する商標であり、また、被請求人が本件商標の登録の取得過程において不正の目的や商道徳違反など非難されるべき事情があったことは明白であり、本件商標の登録後に本件請求人に対する権利行使は、信義則に反し、又は権利の濫用に相当するものであり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
(ウ)仮に上記(ア)及び(イ)が認められないとしても、「知的財産高等裁判所平成21(行ケ)10297(審決注:ASRock事件)」の裁判例と同様に、本件も判断されるべきである。
これまで述べた事実等により、本件商標は「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当することは明白である。

3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出した。
(1)請求人は、「商標法第4条第1項19号及び同法第4条第1項7号を理由として、本件商標は無効にすべきものである。」として、種々の理由を挙げて主張している。
(2)しかし、このような審判請求は、全く不当なものであり採る余地のないものである。
すなわち、被請求人は、乙第1号証として提出する2001年1月17日付「覚書」のとおり、「小背簍餐飲娯楽有限公司」の代理人として日本におけるフライチャイズを展開することに関して一任を受けていたものである。
そこで、この覚書に基づき、先願登録主義の日本において第三者が「小背簍」商標と同一・類似する商標に関して商標権を取得してフライチャイズの展開の妨げとなることを未然に防止すべき商標登録出願を行い登録を受けたものである。
また、「小背簍餐飲娯楽有限公司」は「小背簍」商標に関して日本において商標を取得すべき行為を、本件商標の登録出願後12年以上経過した平成23年4月21日に国際登録第1076741号(審決注:国際登録第1076747号の誤記と認められる。)を行ったことからも、本件商標を覚書に基づき取得したことは是認されるべきである。
したがって、本件商標は先取り的な出願でもなく、また、信義則に反して登録を受けたものではない。
そうすると、本件商標が商標法第4条第1項第19号及び同法第4条第1項第7号に該当しないことは明らかである。
なお、被請求人は請求人とのライセンス交渉が成立しなったことから、本件商標に係る業務を行わず、また、本件商標に関しては使用せずに平成24年3月8日の存続期間の満了をむかえたものであり、請求人から本件商標の移転、放棄等の申し出があれば応じることができたことを一言申し述べる。
また、本件商標は、前記したとおり不使用のまま平成24年3月8日の存続期間満了にて消滅するものであり、本件商標が遡及して失効しても良いが、請求人が覚書の趣旨に基づかず種々の理由を挙げて不正な目的、剽窃的等であるとして商標法第4条第1項19号及び同法第4条第1項7号に該当するとの無効理由には納得できない。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第7号の意義について
商標法第4条第1項第7号については、以下のとおり、知的財産高等裁判所において判示されている。
ア 「商標法第4条第1項第7号は,『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』は,商標登録を受けることができないと規定する。ここでいう『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標』には,(1)その構成自体が非道徳的,卑わい,差別的,矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合,(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも,指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し,社会の一般的道徳観念に反する場合,(3)他の法律によって,当該商標の使用等が禁止されている場合,(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し,又は一般に国際信義に反する場合,(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合,などが含まれるというべきである。」(知的財産高等裁判所平成17年(行ケ)第10349号同18年9月20日判決言渡最高裁ホームページ参照)
イ 「被告が,文字構成において独創的な造語と認められる『ASROCK』と同一文字構成を使用した本件商標を出願した点こそ重視されるべきであって・・・被告の本件商標の出願は,ASUSTeK社若しくはASRock社が商標として使用することを選択し,やがて我が国においても出願されるであろうと認められる商標を,先回りして,不正な目的をもって剽窃的に出願したものと認められるから,商標登録出願について先願主義を採用し,また,現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても,そのような出願は,健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり,また,商標法の目的(商標法1条)にも反し,公正な商標秩序を乱すものというべきであるから,出願当時,引用商標及び標章『ASRock』が周知・著名であったか否かにかかわらず,本件商標は『公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。」(平成21年(行ケ)第10297号同22年8月19日判決言渡最高裁ホームページ参照)
前記判決の考え方を踏まえ、商標法第4条第1項第19号について先に検討し、本件商標が同号に該当しないときは、同項第7号について検討する。
(2)当事者の主張及び証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、1998年8月に設立された法人である。請求人の代表者は「劉常」であり、同氏は、食用菌類の寄せ鍋や菌類料理の研究・開発に努め、同研究に関連して特許も取得した。そして、劉常を創業者・代表とする請求人は、同年、瀋陽市に菌類健康料理のレストランを開業した(甲第1号証)。
イ 請求人は、1998年11月9日に、別掲(3)に示すとおりの構成からなる商標を、第42類「レストラン」につき、中国商標局へ商標登録の申請をした。当該商標権は、第1382626号として中華人民共和国において現に有効に存続している(甲第1号証)。
ウ 請求人の代表者・劉常が、請求人の経営指針を表したと思しき2000年10月17日付の書類の表紙上部には、別掲(3)に示す標章と略同一の標章が表示されている(甲第3号証)。
エ 被請求人の代表者・小塚文雄(審決注:答弁書によれば、小塚文雄は、被請求人の代表者と認められる。)は、本件商標の登録出願前である2000年8月に、名古屋市における請求人との相談・交渉に参加した(甲第9号証)。また、請求人の通訳者の証明(甲第5号証)及び会社概要(甲第3号証)によれば、1999年から北京や天津で、被請求人の代表者・小塚文雄が請求人と日本チェーン店開設についての交渉を行ったことが認められる。
オ 請求人は、被請求人の代表者・小塚文雄との間において、前記エ以降も、請求人の我が国におけるフランチャイズ事業展開ほかに関連して、交渉をもった(甲第6号証ないし同第8号証、同第10号証ないし同第13号証)。
カ 提出された店舗写真(甲第3号証)によれば、撮影日等は定かでないが、請求人の店舗の看板には、いずれも、「小背◆簍◆」(審決注:「◆簍◆」は、竹冠の下に「米」と「女」の文字を二段に表示したもの。以下、同じ。)の文字が表示されていることが認められる。
(3)請求人の主張する商標の周知性について
請求人提出の全証拠によっても、請求人の代表者・劉常による1999年と2000年の販売収入及び店舗数についての陳述(甲第1号証)があるほかは、本件商標の登録出願前における請求人の商標の使用実績等を客観的具体的に把握し得る証左はみいだせないから、本件商標の登録出願時において、請求人の使用する商標が同人の業務(飲食物の提供)を表示するものとして、日本国内又は中華人民共和国を含め外国における需要者の間で広く認識されるに至っていたとまでは認めることができない。
(4)本件商標と引用商標等との類否について
本件商標は、別掲(1)に示すとおり、枝葉を図案化して描いた輪郭円内にかごを背負った少女を横向きシルエット状に描き、少女の図の下部に「小背◆簍◆」の文字を小さく横書きした図形の下に、「小背◆簍◆」の文字を縦書きし、その右側に「シャオベイロ」の片仮名を縦書きしてなるものである。
そして、当該図形部分と文字部分とは、これを常に不可分一体のものとしてみなければならない理由はなく、それぞれは独立しても自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものである。また、本件商標中の片仮名「シャオベイロ」は、本件商標の称呼を特定したとみても不自然なものではないから、「小背◆簍◆」及び「シャオベイロ」の文字から「シャオベイロ」の称呼を生じるものというのが相当である。
一方、引用商標は、「小背◆簍◆」の文字を横書きしてなるものであり、「シャオベイロ」の称呼を生じるものというのが相当である。
しかして、本件商標は、その構成中に引用商標と同一の「小背◆簍◆」の文字を顕著に表し、引用商標とは、「シャオベイロ」の称呼において共通するものである。
したがって、本件商標と引用商標とは類似する。
さらに、本件商標の図形部分は、前記(2)イ及びウで認定した、請求人が中華人民共和国において商標登録の申請をし、使用する別掲(3)に示すとおりの図形商標と構成を略同一にするものと認められる。
(5)商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、前記(4)のとおり、引用商標と類似するものであるとしても、引用商標及び別掲(3)に示す図形商標は、前記(3)のとおり、本件商標の登録出願時において、請求人の業務(飲食物の提供)を表示するものとして、日本国内又は中華人民共和国を含め外国における需要者の間で広く認識されるに至っていたとまでは認めることができないから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号には該当しないものである。
(6)商標法第4条第1項第7号について
本件において、前記(2)で認定した事実を総合してみると、被請求人は、その代表者である小塚文雄を通して、本件商標の登録出願前に、請求人と接触し、請求人に係る業務を我が国において事業展開するための交渉に当事者として参加しており、その交渉は本件商標の登録出願後(査定前)においても継続していたと認められるものである。また、請求人は、本件商標の登録出願前から、同人の経営するレストラン等に関して、別掲(3)に示す図形商標及び引用商標を採択・使用していたと認められるものである。
そして、前記(2)のとおり、本件商標の構成中には、引用商標と構成文字を同じにする「小背◆簍◆」が顕著に表され、かつ、別掲(3)に示す図形商標と同じ構図の図形商標を配してなるものであるところ、「小背◆簍◆」は、請求人代表者・劉常の創作に係る造語というのが相当であり、また、図形商標も同様に独創的な標章といえるものであるから、本件商標がその構成要素である図形及び文字の採択において、引用商標及び別掲(3)に示す図形商標と偶然に一致したものとは、到底認め難いものである。
しかして、被請求人は、本件商標の登録出願前において、小塚文雄を通して、引用商標や前記図形商標が、請求人の業務について採択・使用されている商標であることを認識し得る立場にあったと優に推認することができるものであり、かつ、請求人が我が国において事業を展開しようとする具体的な意思(計画)を有していたことを知悉していたといわざるを得ないものである。
その上で、被請求人は、引用商標及び別掲(3)に示す図形商標が、我が国において商標登録されていないことを奇貨として、剽窃的及び先取り的に本件商標を出願し、請求人とは交渉を継続しながら、請求人に無断で、登録を得たといわざるを得ないものである。
してみると、本件商標は、登録に至る出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その登録を認めることは、商標法の予定する秩序を害するおそれがあって、到底容認し得ないといわざるを得ないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものである。
(7)被請求人の主張に対し
被請求人は、本件商標は覚書に基づいて登録を取得したものであるから、先取り的な出願でもなく、また、信義則に反して登録を受けたものではなく、商標法第4条第1項第19号及び同法第4条第1項第7号に該当しないことは明らかである旨主張している。
しかしながら、覚書(乙第1号証)をみると、覚書内容として、「小背◆簍◆とハチブンは,ハチブンが日本に於ける小背◆簍◆の代理人として,フランチャイズを展開する事に関しては,ハチブンに一任した.それに関する契約の諸条件に関しては,後日両社で協議する事にする.」の記載が認められる。
よって、覚書におけるこの記載及びその余の記載から直ちに、本件商標について被請求人名義による商標登録の取得が一任されたとまでは認め難い上、本件商標の出願日は、平成12年(2000年)12月18日であって、同覚書に「2001年1月17日に実行される・・」とある年月日よりも前であること、また、請求人は商標をすべて自己名義によって申請・登録する意向を有していたことが、契約案と推察される特許経営契約書(甲第14号証)の第2条の「“商標”」に係る記述からも窺い知れること、さらに、本件商標の出願・登録に関して、被請求人から請求人に対して何らかの告知を行った等の事実を確認し得ないこと、などを併せみれば、被請求人の前記主張及び覚書(乙第1号証)によっては、前記(6)の判断を左右することはできないものである。
(8)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しないものであるとしても、同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)
本件商標



別掲(2)
引用商標



別掲(3)
請求人が中華人民共和国において所有する商標(甲第1号証)



審理終結日 2012-08-28 
結審通知日 2012-08-30 
審決日 2012-09-12 
出願番号 商願2000-135762(T2000-135762) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Z42)
最終処分 成立 
前審関与審査官 芦葉 松美豊泉 弘貴 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2002-03-08 
登録番号 商標登録第4549785号(T4549785) 
商標の称呼 シャオベイロ、ショーハイロー 
代理人 庄司 隆 
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