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審決分類 |
審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 130 |
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管理番号 | 1265952 |
審判番号 | 取消2011-300924 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2011-10-03 |
確定日 | 2012-10-15 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第2714198号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第2714198号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第2714198号商標(以下「本件商標」という。)は、「Stolz」の欧文字と「シュトルツ」の片仮名とを上下二段に横書きしてなり、平成2年1月12日に登録出願され、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同8年5月31日に設定登録され、その後、同17年12月27日に商標権の存続期間の更新登録がなされ、さらに、指定商品について、同18年3月29日に第30類「菓子及びパン」を指定商品とする書換登録がなされているものである。 その後、本件商標の商標権は、平成24年6月12日に放棄の申請がなされ、その登録が抹消されているものである。 第2 当審における手続きの経緯 当合議体は、被請求人に請求人提出の弁駁書を送付した上で、本件の審理を口頭審理によるものとし、審理事項通知書により両当事者に合議体の暫定的見解を示し意見を求めた。 第3 請求人の主張 1 請求の趣旨 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第3号証を提出している。 2 請求の理由 (1)本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。 (2)弁ばく ア 株式会社ペルティエ(以下「ペルティエ」という。)が本件商標について本質的に通常使用権を有する者であるとする主張については、認める。 イ 使用の事実に関する主張について 乙第1及び第2号証は、いずれも本件審判請求後においても被請求人自身が容易に作成しうるものであり、これのみをもって使用の事実とするのは不十分である。 (ア)乙第1号証は、被請求人の従業員が平成22年10月1日にペルティエ表参道本店において撮影したとされる4枚の写真に関する平成23年10月20日付けにて作成された報告書であるが、この報告書は被請求人の従業員が一方的に作成したもので、本件商標の使用を何ら客観的に主張立証し得るものではない。 また、報告書貼付の写真について、これらの写真が平成22年10月1日に撮影されたかが立証されていない。報告書貼付の写真において表示されるような数字列は、一般に写真の撮影日時を表すものであり、確かに証拠写真におけるこれらの数字はいずれも「’10 1001」との表示であるが、デジタル写真に埋め込まれた撮影日時等のメタデータは、PCソフト等によって特別に専門的な知識を有しない者であっても容易に改変可能であるうえ、もともと日付が表示されていなかった写真に後から日付を合成することもまた比較的容易に可能であるから、写真に「’101001」との表示があることのみをもって、直ちにこれらの写真が平成22年10月1日に撮影されたということはできないのである。 そもそも、何故平成22年10月1日に「Stolz\シュトルツ」の商品について撮影を行ったのか理由が不明である。 また、乙第1号証の報告書貼付の写真4枚のうち、「シュトルツ」なる文字が判別できるのは、1枚目の写真に写された商品POPのみからであるが、商品POPの内容は、アクリル板の間に挟まれた紙を置き換えることによって容易に作成あるいは改変が可能である。 さらに、これらの写真には一切顧客が写りこんでおらず、これらの写真が店舗営業時間内に撮影されていたか不明であり、実際に顧客に販売されていたかは不明である。 請求人が調べたところによれば、被請求人が「Stolz\シュトルツ」であると主張する菓子と全く同一の菓子が、「オートンヌ」との名称で本年10月ごろから期間限定の新作ケーキとして販売されていることがわかった(甲第2号証)。現在ではペルティエ表参道店において販売されていないようだが、2011年10月25日時点では同店においても販売されていた模様である(甲3)。 また、「プランセス」「シューアラクレーム」「シャンティーフレーズ」など、他に販売されているケーキについては名称が変更されずに、昨年と同じ名称で販売されている模様である。 このような事実を鑑みれば、「オートンヌ」との名称で販売されていたケーキに、一時的に「Stolz\シュトルツ」という商品POPをつけて写真を撮影したものと考えるのが自然であると思料する。 報告書には、公証人による確定日付の押印がされているものの、文書自体は宣誓認証がされたものではない。公証人による確定日付の押印からは、あくまでこの報告書が、本件不使用取消審判請求後である平成23年10月20日時点において存在していたことの客観性のみが担保されるのであって、報告書に添付された写真撮影日時の真偽が証されるものではない。 被請求人が乙第1号証貼付の写真を使用の証拠とするのであれば、少なくとも写真の作成日時を確認するために、写真のデジタルデータ及び同日にペルティエ表参道店店舗内に撮影された他の写真のデジタルデータの提出を求める。あわせて、上述した撮影を行うに至った経緯を述べた社内文書が存在するのであれば、その文書の提出を求める。請求人は、被請求人が写真が平成22年10月1日の営業時間内に撮影されたと主張するのであれば、この真偽を確認するために、写真撮影者及び写真に写りこんだ従業員に対する証人尋問の申し出行うことを検討している。 (イ)乙第2号証は、ペルティエ表参道本店における平成22年8月から10月のケーキ販売数量を示すデータ一覧であるが、このような単に文字と数字のみが羅列された一覧は、被請求人自身によって審判請求後に作成あるいは改変することも容易に可能であるから、このようなデータを部分的に開示されても、これが本当に商品の販売数量を示すデータなのか不明であるうえ、記載された期間の信憑性が客観的に担保されない。 ウ 使用商標と本件商標の同一性 使用商標の使用態様を示しているとするペルティエの店舗内を撮影した乙第1号証の写真からは、黄色く記されていると思しき文字がどのような態様で記されているか判別できず、被請求人が述べる態様で使用されているかを判断することは出来ない。 エ 結論 以上のとおり、被請求人が提出した証拠からは、使用商標と本件商標が社会通念上同一であるか判別することが出来ない。また、被請求人が提出した証拠のみによっては本件商標が審判請求の予告登録日前3年以内の期間に使用されていた事実は立証されず、被請求人による答弁の理由は成り立たない。 よって、請求の趣旨のとおりの審決を求める。 第4 被請求人の主張 1 答弁の趣旨 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1ないし第3号証を提出している。 2 答弁の理由 (1)使用の事実 商標権者の完全子会社であるペルティエは、「ペルティエ表参道本店(東京都渋谷区神宮前6丁目2-9ユーハイム原宿ビル1F)」にて、本件商標を付けたケーキを平成22年8月ないし10月に販売している(乙1ないし乙3)。なお、ペルティエは、商標権者の100%出資にかかる子会社(乙3)であって、代表取締役社長を同じくする本質的に通常使用権を有する者である。 (2)使用商標と登録商標との同一性 乙第1号証の写真に示すように、被請求人が使用した商標は、黒色片仮名「シュトルツ」を上段に、黄色欧文字「Stolz」を下段に構成したもので、本件商標と色及び上下の別はあるが、片仮名及び欧文字の構成を同じくする社会通念上同一の商標である。 (3)むすび 以上のとおり、被請求人の本質的な通常使用権者であるペルティエは、本件審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において、本件商標を指定商品「菓子」に使用しているものであることから、請求人の主張はいずれも理由のないものである。 よって、本件商標は商標法第50条第1項の規定に該当するものではないため、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。 3 弁駁に対する反論及び上申の内容 被請求人は、前記第3の請求人の弁駁に対して何ら反論もせず、また、審理事項通知に対し、「口頭審理に出席せず、併せて口頭陳述要領書を提出しない」旨記載した上申書を提出した。 第5 当審の判断 被請求人は、被請求人の完全子会社である株式会社ペルティエが本件商標を付したケーキを平成22年8月?平成22年10月に販売していた旨主張し、乙第1号証ないし乙第3各号証を提出した。これに対し、請求人は、被請求人の提出した乙第1号証及び乙第2号証は、客観性を欠く証拠であるから、これらの証拠のみをもって、本件取消審判請求の予告登録前3年以内に本件商標が商品「菓子及びパン」について使用されたというと言うことはできない旨主張し、その主張を裏付けるものとして甲第2号証を提出した。 そこで、以下、両当事者の提出した各証拠について検討する。 1 事実認定 (1)乙第1号証について 乙第1号証は、平成23年10月20日付け明石市在住の柳井が作成した、公証人の氏名、同日付の確定日付の押印がされている報告書であるが、1枚目には、「添付の写真は、私が平成22年10月1日にペルティエ表参道店内において撮影したものに相違ありません。1.撮影対象:株式会社ペルティエ 菓子:『シュトルツ』」と記載され、また、2枚目ないし3枚目には、公証人の確定日付及び柳井の割り印がされた4葉の写真の写しが添付されている。 そして、同報告書添付の4葉の写真には、いずれも「’10 1001」と表示されている。 1葉目の写真には、ショーケース内に値札が付された商品「ケーキ」が写されているところ、値札には、店舗名「Peltier」の文字、商品名「シュトルツ」「Stolz」の文字からなる標章、「アーモンドとヘーゼルナッツの秋のサントノーレ」との説明書き及び価格「¥483」が表示されている。 (2)乙第2号証について 乙第2号証は、「ペルティエ表参道本店における本件商標を使用した商品の平成22年8月、9月、10月の販売数量データ写し」と称する商品別販売数量一覧表であるが、そこには、店名「ペルティエ表参道本店」、商品コード「10,999」、商品名「PT.シユトルツ」、単価「460」、8月の販売数量「49」、9月「35」、10月「8」などの記載がある。 (3)甲第2号証について 甲第2号証は、2012年2月7日打ち出しのインターネットサイト「食べログ」における「『可愛らしいケーキ♪:ペルティエエキュート上野店』」の記事の写し(3枚目ないし6枚目)及び「【上野】『Peltier』の『プランセス』というケーキ:ペルティエエキュート上野店Peltier[食べログ]」の記事の写し(7枚目ないし10枚目)及びこれらの記事に掲載された写真の拡大写真(1枚目及び2枚目)と認められる。 1枚目の写真は、3枚目に2011年12月20日の更新日で「可愛らしいケーキ♪」の見出しの下で掲載されたショーケース内の値札が添付されたケーキの写真を、拡大したものであるが、そこには、「新作」「オートンヌ」の表示、「アーモンドとヘーゼルナッツの秋のサントノーレ」との説明書き及び定価「¥420」が表示されている。 また、5枚目及び9枚目には、「ペルティエ エキュート上野店の店舗情報(詳細)」の表題で、店名「ペルティエ エキュート上野店(Peltier)」、ジャンル「ケーキ」等の店舗情報が掲載されている。 2 上記において認定した事実及び当事者の主張を総合すれば以下のように判断することができる。 (1)公証人の証明事項と写真の日付について 報告書(乙1)は、平成23年10月20日付けで柳井によって作成されたものであること、報告書に添付された写真はその時点に存在していたことが、公証人により認証され、担保されるが、報告書に記載の「添付の写真が平成22年10月1日にペルティエ表参道店内において撮影した『シュトルツ』ケーキである」旨の内容及び写真の撮影日の真偽まで証明されるものでない。 そして、報告書に添付された写真の日付(「’10 1001」)は、電子的に改ざんすることが可能であるものと認められるところ、これに対して、請求人から「写真に『’10 1001』との表示があることのみをもって、直ちにこれらの写真が平成22年10月1日に撮影されたということはできない」との主張がなされ、「写真のデジタルデータ及び同日にペルティエ表参道店店舗内に撮影された他の写真のデジタルデータの提出」を求められているが、被請求人からはこれに対する反論及び新たな証拠の提出もない。 (2)写真のケーキ及びその形状と値札について 甲第2号証に掲載されている店名「ペルティエ エキュート上野店(Peltier)」は、ペルティエ株式会社の略称、表参道本店の店名である「ペルティエ(Peltier)」の文字を含むものであるから、ペルティエの支店と認められるところ、表参道本店で販売されている「シュトルツ」のケーキと上野支店で販売されている「オートンヌ」のケーキは、その外観、形状、説明書き(アーモンドとヘーゼルナッツのサントノーレ)が同じであるから、同一の商品と認められる。 そうとすれば、本店と支店で同じ商品が、別々の名称で違った価格で販売されることは通常の取引では考えにくいところである。 そして、被請求人は、請求人からの「『オートンヌ』との名称で販売されていたケーキに、一時的に『Stolz\シュトルツ』という商品POPをつけて写真を撮影したものと考えるのが自然である」との主張に対して、何らの反論もしていない。 したがって、乙第1号証は、信ぴょう性のあるものとはいえず、これによっては、平成22年10月1日当時、ペルティエ表参道店において本件商標を商品「ケーキ」に使用している事実を認めることができないといわざるを得ない。 (3)売上数量一覧について 乙第2号証に示された販売数量一覧は、ペルティエ表参道店の平成22年8月ないし10月における商品別販売数量、商品名が記載されているとしても、会社の内部資料と推認されるものであり、作成者も不明であって、その数量を裏付ける証拠の提出もなく、販売数量を示す客観的な証拠とはいえない。 (4)まとめ 以上によれば、被請求人は、いずれに証拠によっても、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていることを証明していない。 3 結論 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-08-10 |
結審通知日 | 2012-08-14 |
審決日 | 2012-09-06 |
出願番号 | 商願平2-2244 |
審決分類 |
T
1
31・
1-
Z
(130)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
小林 由美子 |
特許庁審判官 |
鈴木 修 小川 きみえ |
登録日 | 1996-05-31 |
登録番号 | 商標登録第2714198号(T2714198) |
商標の称呼 | シュトルツ |
代理人 | 鳥巣 実 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 田島 壽 |
代理人 | 中嶋 慎一 |