• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 外観類似 無効としない X30
審判 一部無効 観念類似 無効としない X30
審判 一部無効 称呼類似 無効としない X30
管理番号 1265910 
審判番号 無効2012-890004 
総通号数 156 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2012-01-10 
確定日 2012-10-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第5402362号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5402362号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成21年8月20日に登録出願、第30類「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子,茶,紅茶,コーヒー及びココア」を指定商品として、同23年3月4日に登録すべき旨の審決がなされ、同年4月1日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第1474596号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、昭和52年6月29日に登録出願、第30類「菓子、パン」を指定商品として、同56年8月31日に設定登録、その後、指定商品については、平成13年11月21日に、第30類「菓子,パン」とする指定商品の書換登録がなされ、また、3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標はその指定商品中、第30類「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」についての登録を無効とする、との審決を求めると申し立て、その理由、上申及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第46号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)無効事由
本件商標は、その指定商品中、第30類「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」について、引用商標に類似する商標であって、その指定商品「菓子,パン」と同一又はこれに含まれる商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。
(2)本件商標を無効とすべき具体的理由
ア 引用商標との問題認識後に「ルシェルモンシュシュ」の使用開始
被請求人は、平成20年になって自らの使用する「モンシュシュ」が、請求人の引用商標と抵触することを知り、平成21年5月21日に、請求人代理人らを訪れて謝罪し、同月29日には詫び状(甲第11号証)を提出している。
その後、同年7月17日に当時の被請求人代理人弁理士から「モンシュシュ」の使用を全面的に中止するとの書面を送り、同年8月10日付の引き継ぎをした代理人からの連絡でも、「モンシュシュ」の使用を全面的に中止する考えには変わりないと返事し(甲第12号証ないし甲第14号証)、さらに、被請求人代表者は、同年9月10日付の謝罪文書を送付し、引用商標権侵害を明確に認めた(甲第15号証)。
イ 引用商標権侵害訴訟
被請求人は商標権侵害であることを認め、謝罪や商標の使用中止を約束しておきながら、平成21年11月30日になって突然、引用商標権の違反には該当しないと主張し(甲第23号証)、さらに「モンシュシュ」及び「ベビーモンシュシュ」を使用し続けてきたことから、請求人は、平成22年1月20日に引用商標権侵害訴訟を提起した(大阪地裁平成22年(ワ)第4461号:甲第6号証、以下「引用商標権侵害訴訟」という。)。
引用商標権侵害訴訟において、平成23年3月18日(審決注:「平成23年3月4日」の誤記と認められる。)に本件商標に対する登録審決が出された後、同年5月12日に口頭弁論が終結され、同年6月20日、本件商標から容易に印象、記憶、連想される「Mon chouchou」(被告標章1)を含め、被請求人が甲第6号証の被告標章目録に掲載されている標章を商品(洋菓子)に使用する行為は、引用商標と同一又は類似する商標の使用であり、侵害に該当する旨の判決が言渡された(甲第6号証:以下「大阪地裁判決」という)。
ウ 本件商標に関する異議の決定(異議2011-900170)(以下「原決定」という。)の不当性
原決定(甲第25号証)は、本件商標の構成態様について、『本件商標は、・・・外観上、まとまりよく一体的に表されているものである。』と認定している。
しかしながら、同一書体とはいえ、極細のテープに一部を接して乗せるように配された程度のデザイン要素をもって、上下に併記された「LeCiel」(「L」と「C」のみが大文字)と「Mon chouchou」(頭文字「M」のみが大文字)の文字同士が外観上極めてまとまりよく一体に表されたものと看取されることはない。
フランス語の定冠詞である「Le」の「L」と、フランス語で『空』を意味する「Ciel」の「C」、フランス語で『私のお気に入り』を意味する「Mon chouchou」の「M」のみが大文字で書されていることより、通常の注意力を有する本件商標の主たる需要者(本件においては、老若男女を問わず広く一般消費者といえる。)であれば、大文字で書き起こされた語で句のまとまりを表す欧文の表示法に馴染みあることを考慮すると、「Mon chouchou」の文字に「LeCiel」の語が組み合わされたものと認識することは容易に推測される。また、フランス語の「LeCiel」、「Mon chouchou」ともに一般消費者には全く馴染みがなく、観念的にも両語を一体的に捉えるべき事情が何ら見当たらない。
エ 本件商標と引用商標との類否について
(ア)両商標の類否
本件商標は、「LeCiel」と「Mon chouchou」の各文字、及びバラの花図形を組み合わせた構成からなるところ、その図形部分は、バラの花というオーソドックスなモチーフを使用したデザインであって、出所表示となるような特段の意味づけがされているとは認められず、本件商標は全体が1つのマークとして認識されるのではなく、図形部分は飾りであると認識されると考えられ、本件商標構成中の図形部分からは、出所標識としての称呼、観念は生じない。
また、フランス語の定冠詞である「Le」の「L」と、フランス語で「空」を意味する「Ciel」の「C」、フランス語で「私のお気に入り」を意味する「Mon chouchou」の「M」のみが大文字で書されていることより、通常の注意力を有する本件商標の主たる需要者(本件においては、老若男女を問わず広く一般消費者といえる。)であれば、大文字で書き起こされた語で、句のまとまりを表す欧文の表示法に馴染みあることを考慮すると、「Mon chouchou」の文字に「LeCiel」の語が組み合わされたものと認識することは容易に推測される。
そして、「LeCiel」の文字は、「Mon chouchou」の語と同一書体とはいえ、当該語の上に極細のテープに一部を接して乗せる程度のデザインをもって配されているにすぎず、三段表記全体が一連一体の商標として使用・認知されている取引の実情も乏しく、本件商標は「つつみのおひなっこや事件」(甲第5号証)が対象とする、「複数の構成部分を組み合わせた結合商標」に該当しないものととらえるべきである。
仮に、結合商標と解されるとしても、外観上、それ自体自他商品識別標識たり得るものと認められる「Mon chouchou」の文字部分に着目し、該部分よりそれぞれ生ずる称呼をもって取引にあたる場合もまた決して少なくないとみるのが相当である。
したがって、本件商標の要部は「Mon chouchou」の文字部分といえ、同号の該当性の判断においては、その文字部分と引用商標とを比較して両商標の類否が判断されるべきである。
a 外観
本件商標の要部「Mon chouchou」は、引用商標の下段「MONCHOUCHOU」と同一であり、外観において、引用商標と類似する。
b 称呼
本件商標の要部「Mon chouchou」と引用商標からは、いずれも「モンシュシュ」との称呼が生じるから、両者の称呼は同一である。
c 観念
本件商標の要部「Mon chouchou」と引用商標からは、いずれも「私のお気に入り」との観念が生じる(又は、一種の造語と認識される)から、両者の観念は同一である。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念の三点いずれもが非常に似通っていることから、最高裁が判示した「他の二点において著しく相違する」ものではない。
(イ)指定商品の類否
本件商標に係る第30類指定商品中の「菓子及びパン」は、引用商標に係る指定商品「菓子,パン」と同一の商品であり、「氷菓子,ゼリー菓子」は、「菓子」中の「洋菓子」に含まれる商品である。したがって、本件商品と引用商標に係る指定商品とは同一の商品である。
オ 本件商品の取引の実情について
被請求人の「モンシュシュ」及び「Mon chouchou」は、引用商標権侵害訴訟において判示されたとおり、洋菓子に比較的関心が高いといえる需要者層においてすら、被請求人の店舗名として一律に被請求人を想起させるほどに知名度を有しておらず、必ずしも洋菓子への関心が高くない、一般消費者という広範囲な需要者における、出所混同のおそれは否定されない。
さらに、本件商標は一切使用されておらず、本件商標には何ら「業務上の信用」は化体していないから、引用商標との間で出所混同のおそれを否定するような取引の実情は存在しない。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標の要部は、「Mon chouchou」の文字部分であり、その要部から生ずる称呼・観念が引用商標と同一であり、外観も引用商標と類似していることから、本件商標は、引用商標と全体として類似する。また、本件商標に係る第30類指定商品のうち「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」は、引用商標に係る指定商品と同一又はこれに含まれる商品である。このため、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
2 平成24年6月15日付け上申書
被請求人の出願又は所有に係る商標に対して、引用商標との牴触を理由とする異議の決定及び拒絶査定が確定した(甲第39号証ないし甲第43号証)。
3 答弁に対する弁駁
ア 本件商標の一体性について
被請求人は、答弁書において、本件商標は、文字部分と図形部分に全体としてデザインとしての有機的な一体性が認められる独創的な商標というべきであり、バラの花の飾り部分も含めて不可分一体の商標として認識され、その全体が要部と認識される旨、主張している。
しかしながら、本件商標とほぼ同一の構成からなり、「LeCIel」(審決注:「LeCiel」の誤記と認められる。)の欧文字を「Baby」に置き換えたに過ぎない以下態様の被請求人商標「Baby/Mon chouchou」に対して、特許庁は、平成24年7月5日付無効審決において、次のとおり認定し、引用商標とは類似すると判断した(甲第44号証)。
その構成態様に照らせば、被請求人商標は、上記各欧文字と各図形とを組み合わせてなる結合商標といえるものであり、また、該各図形部分についてみれば、いずれも飾りとして認識されると考えられるものであるから、これより出所識別標識としての称呼、観念を生ずることはないとみるのが相当である。そうすると、被請求人商標の構成中の「Baby」、「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分は、これに接する者をして、その構成中の各図形部分から分離して看取、把握され得るものである。
したがって、本件商標の各図形部分は、いずれも飾りとして認識されると考えられるものであり、これより、出所識別標識としての称呼、観念を生ずることはないものと判断されて然るべきである。
そうすると、本件商標は、その構成中の「LeCiel」、「Mon」及び「chouchou」の欧文字部分が分離して看取、把握され得るものである。
また、「LeCiel」の語は、「Mon chouchou」の語の上に極細のテープに一部を接して乗せる程度のデザインをもって配されているに過ぎず、三段表記全体が一連一体の商標として使用・認知されている取引の実情も乏しいことから、本件商標は、その構成中の「Mon chouchou」の欧文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと判断されて然るべきである。
以上により、本件商標の要部は、「Mon chouchou」の欧文字部分であり、その構成文字に相応して、「モンシュシュ」の称呼を生じ、「私のお気に入り」程の意味合いを想起させるものといえる。
イ 「ルシェルモンシュシュ」に関する取引の実情について
被請求人は、答弁書において、本件商標は、被請求人の洋菓子店「ルシェルモンシュシュ」を羽田空港に平成22年10月より開設し、著名な「堂島ロール」の販売店の名称として洋菓子の取引者・需要者の間で広く知られた「パティシエリーモンシュシュ」の羽田空港限定ブランドとして人気となっているものである。かかる取引の実情を併せて考慮すれば、なおさら、本件商標は、被請求人の洋菓子店「ルシェルモンシュシュ」の名称と認識される、と主張している。
しかしながら、被請求人がその主張の根拠として引用した「パティシエリーモンシュシュ」は、平成24年6月15日付け上申書において提出したとおり、引用商標との同一又は類似を理由に、指定商品「洋菓子」における登録が取消された(甲第43号証)。
また、「ルシェルモンシュシュ」よりも早くにオープンし(平成21年7月開業)、より多くの店舗(2店舗)が存在する「ベビーモンシュシュ」に対して、特許庁は、上記無効審決において、被請求人の洋菓子店舗「Baby Mon chouchou(ベビーモンシュシュ)」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとはいえないと判断していることからすれば(甲第44号証)、本件商標の登録時の僅か半年前に開業し、しかも、一般消費者が洋菓子を購入する目的で足を運ぶとは到底言い難い羽田空港内に、僅か1店舗しか存在しない「ルシェルモンシュシュ」が、「ベビーモンシュシュ」よりも認知度が高いことなど起こりようもない。しかも、被請求人は、平成24年7月1日をもって、店名に「モンシュシュ」が入る国内の22店舗の屋号を変更しており(甲第46号証)、最早、本件商標に業務上の信用が化体することはなく、登録を維持する法的要請も認められない。
ウ 結語
以上により、答弁書における被請求人の主張は失当と言わざるを得ず、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものである。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第29号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の一体性について
ア 本件商標は、別掲(1)のとおり、フランス語で、定冠詞の「Le」と、「空」という意味の「Ciel」、「私の」という意味の「Mon」及び「お気に入り」という意味の「chouchou」の各文字を、同じ書体で上中下三段に分けて記載しており、その構成において「LeCiel」の「l」の文字から「Mon」の文字へ一本の筆書きで連なっており、その下の「chouchou」の文字が上の「Mon」に隣接しており、「Mon」の「M」の下部から一本の蔓が伸び、左側のバラの花の下へ一連に描かれており、構成全体が、「LeCiel Mon chouchou」の文字部分と図形部分との結合性を高めるようデザインされている。
このように、本件商標は、文字部分と図形部分に全体としてデザインとしての有機的な一体性が認められる独創的な商標というべきであり、全体的に上記したイメージを有していることからすれば、バラの花の飾り部分も含めて不可分一体の商標として認識され、その全体が要部と認識されるというべきである。
イ また、本件商標は、平成22年に羽田空港のお土産店舗においてオープンした被請求人の洋菓子ブランド「ルシェルモンシュシュ」を表したものである。被請求人の洋菓子ブランド「ルシェルモンシュシュ」は、「堂島ロール」で有名な被請求人の「モンシュシュ」の羽田空港限定店舗として雑誌等でも非常に注目されている(乙第6号証)。
ウ このように本件商標は図形と文字とを結合させてなり、全体としてまとまりよく記載してなる外観を有することから、当該構成文字に相応して「ルシェルモンシュシュ」という一連の称呼のみが生じるものであって、その音数は長音を含め7音であり、淀みなく一気に称呼されるものといえる。
また、「monchouchou」の文字は、「私の」という意味のフランス語の「mon」の文字と、「お気に入り」の意味を有するフランス語の「chouchou」の文字であるから(乙第1号証)、一般的な言葉に過ぎず、さらに、菓子やパンを販売する店舗やカフェの名称として好んで採択されている他、ペット関連商品や各種雑貨といった様々な商品の商品名などですでに幅広く使用されているものであって(乙第2号証及び乙第3号証)、「monchouchou」文字自体の自他商品識別力は決して強いものとはいえない。
したがって、本件商標中「Mon chouchou」の部分が直ちに要部となるとの請求人の主張は誤りというべきであり、本件商標はあくまでも、文字部分とバラの花の図形部分も含めて不可分一体の商標として認識され、商標全体で一つの出所識別標識として理解されるというべきである。
(2)引用商標について
引用商標は、上記のとおり、フランス語の「私の」という意味の「MON」と、同「お気に入り」の意味を有する「CHOUCHOU」の各文字と、その発音を片仮名で表記した「モンシュシュ」の文字とを上下二段に表してなる商標であり、その構成文字より「モンシュシュ」という一連の称呼が生じる。
また、上記のとおり、引用商標を構成する文字自体の識別力は、強くはないというべきである(乙第2号証及び乙第3号証)。
(3)本件商標と引用商標の類否について
本件商標は、上記のとおり、その構成中「Mon」及び「chouchou」の文字部分は、特に強く強調されて表示されているわけではなく、いわゆる「つつみのおひなっこや事件判決」(甲第5号証)で判示された結合商標における「商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他の商標と比較して商標そのものの類否」の対象とする分離観察を行う事例にはあたらず、原則どおり、全体を要部として他の商標との類否を全体として観察されるべきである。
ア 外観
本件商標と引用商標の構成は、前記(1)、(2)のとおりであり、本件商標は、その外観において、片仮名の「モンシュシュ」の文字を有しておらず、また「LeCiel」というアルファベットの文字及びバラの花と蔓のデザインを有している点で、両商標の外観は大きく相違しており、外観上、引用商標とは非類似というべきである。
イ 称呼
本件商標は、「ルシェルモンシュシュ」と7音で一気一連に淀みなく称呼される。一方、引用商標はその構成より、「モンシュシュ」との4音の称呼が生じる。
したがって、本件商標と引用商標は、全体の称呼において「ルシェル」の3音の相違があり、両商標が彼此聞き間違えられるおそれはないから、本件商標は、称呼上も引用商標とは非類似というべきである。
ウ 観念
本件商標は、その構成全体から特定の観念が生じない造語商標というべきである。さらに、下記(4)の取引の実情に照らせば、本件商標に接した需要者は、「堂島ロール」を始めとしたロールケーキや洋菓子で有名な被請求人の「モンシュシュ」の羽田空港限定ブランド「ルシェルモンシュシュ」であると想起する可能性が高いというべきである。
これに対し、引用商標は、その文字に相応して、フランス語の「私のお気に入り」という観念が生じる。
してみれば、本件商標は「私のお気に入り」との特定の観念が生じない造語商標といった点で、引用商標とは観念的に共通するところがなく、さらに、本件商標は「『堂島ロール』を始めとしたロールケーキや洋菓子で有名な被請求人の『モンシュシュ』の羽田空港の特別ブランド」といった観念が生じるものである。
したがって、引用商標から生じる観念と本件商標から生じる観念は、明らかに異なり、本件商標は、観念上も引用商標とは非類似というべきである。
(4)取引の実情について
被請求人は、洋菓子店「ルシェルモンシュシュ」を羽田空港に、平成22年10月より出店している(乙第6号証)。この洋菓子店は、被請求人が平成15年(2003年)11月に、ビジネス街の堂島に洋菓子店を開店し、開店初期の頃から発売したロールケーキ「堂島ロール」の販売店の名称として洋菓子の取引者・需要者の間で広く知られた「パティシエリーモンシュシュ」(乙第28号証)の羽田空港限定ブランドとして人気となっているものである。かかる取引の実情を併せて考慮すれば、なおさら、本件商標は、被請求人の洋菓子店「ルシェルモンシュシュ」の名称と認識されるというべきである。
実際、請求人が提出するブログによれば(甲第7号証)、被請求人のブランド「モンシュシュ」の空港ブランドとして紹介されているものである。
2 むすび
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、外観・称呼・観念における商標の非類似性に加えて、上記のような取引の実情をも考慮すればなおさら、本件商標が「菓子及びパン」等に使用される場合、需要者によって、被請求人の「堂島ロール」を始めとする洋菓子を販売する店舗「パティシエリーモンシュシュ」の羽田空港限定店舗「ルシェルモンシュシュ」として理解されるというべきであるから、本件商標が「菓子及びパン」等について使用された場合、引用商標と商品の出所について誤認・混同のおそれはなく、よって、両商標は非類似というべきである。

第5 当審の判断
1 商標の類否について
請求人が提出する甲第5号証によれば、商標法第4条第1項第11号に係る商標の類否ついては、以下のとおり、最高裁判所において判示されている。
4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。
2 本件商標と引用商標との類否について
上記判決の考え方を踏まえ、本件商標と引用商標との類否について検討する。
(1)本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおり、花の図形及びこの図形の右側に「LeCiel」、「Mon」及び「chouchou」の各欧文字を三段に横書きした結合商標であるところ、本件商標の各構成要素は、欧文字中段の「M」を中心として、その左縦棒下部のひげ飾りと、花の図形の茎を繋げ、また、中段の「M」の右縦棒上部のひげ飾りと、上段の欧文字中の「C」の下部に接するようにして語末の「l」の下部のひげ飾りとを繋げ、さらに、下段の欧文字中、2文字目「h」の縦棒上部と中段の「M」の下部とを繋げて、それぞれを配置した態様からなるものであって、花の図形と三段書きした欧文字とを繋げて表していることから、各構成要素が、外観上まとまりよく表された一体不可分の商標として、取引に資されるものといえる。
また、仮に、請求人が主張するように、本件商標の図形部分が飾りであると認識され、図形部分からは出所識別標識としての称呼,観念が生じないことがあるとしても、三段書きした欧文字部分は、外観上まとまりよく表された一体不可分の文字部分として、取引に資されるものといえる。
そして、フランス語の辞書を引けば、本件商標の構成中、「Le」の文字が定冠詞を、「Ciel」の文字が「空」という意味を、「Mon」の文字が「私の」という意味を、及び「chouchou」の文字が「お気に入り」との意味を有するフランス語であり、それぞれを「ル」「シェル」「モン」及び「シュシュ」と読むことはわかるとしても、我が国でのフランス語の普及度を考慮すると、各フランス語のいずれもが一般需要者間に馴染まれた語であるとは認められないから、本件商標の構成中の欧文字全体は、特定の意味合いを看取させることのない造語を表したものと理解されるというのが相当である。
なお、請求人は、審判請求書(第15頁)において、「フランス語の『LeCiel』、『Mon chouchou』ともに一般消費者には全く馴染みがない」ことを認めている。
してみれば、本件商標より生ずる自然称呼は、「ルシェルモンシュシュ」であるとともに、構成全体としては、特定の観念を有しない造語よりなるものとみるのが相当である。
また、本件商標は、上記のように、まとまりよく表されていることから、その構成中、二段目と三段目に表された「Mon」及び「chouchou」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとは認められない。
さらに、本件商標の構成中「LeCiel」の文字部分は、本件審判請求に係る商品「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」との関係において、商品の品質等を表示するとはいえないことから、該文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認めることはできない。
他に本件商標から、「モンシュシュ」の称呼及び「私のお気に入り」の観念が生ずるような事情は見当たらない。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲(2)のとおり、「MONCHOUCHOU」の欧文字と「モンシュシュ」の片仮名とを上下二段に横書した構成からなるところ、「MONCHOUCHOU」の欧文字部分は、同じ書体、同じ大きさ、等間隔で外観上まとまりよく一体的に表されており、前記(1)のとおり、我が国でのフランス語の普及度を考慮すると、一連に横書した欧文字の構成全体をもって一体不可分の造語として認識し把握されるとみるのが自然である。
また、引用商標の片仮名部分は、欧文字部分の読みを特定したものと無理なく認識させるものである。
そうとすると、引用商標は、その構成文字全体に相応して「モンシュシュ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じない造語よりなるものといわなければならない。
そして、大阪地裁判決(甲第6号証)によれば、請求人は、昭和61年から平成16年までと平成19年以降、当該判決の口頭弁論の終結日である平成23年5月12日まで、請求人の子会社である株式会社ビアンクール(以下「ビアンクール」という。)に対し、引用商標を付したチョコレートを販売し、ビアンクールは、バレンタイン商戦時期(毎年1月から2月中旬)において、これを小売販売していることは認められるものの、請求人は、引用商標の周知・著名性について、甲第6号証を除き、主張・立証していないものであるから、請求人が提出した証拠によって、引用商標が周知・著名な商標ということができない。
(3)本件商標と引用商標との対比
本件商標及び引用商標の構成は、前記のとおりであって、本件商標と引用商標とは、外観において顕著な差異を有するものであるから、明らかに区別し得るものである。
また、本件商標から生ずる「ルシェルモンシュシュ」の称呼と引用商標からそれぞれ生ずる「モンシュシュ」の称呼とは、その音数及び構成音において明らかに差異を有するものであるから、相紛れるおそれはない。
さらに、前記のとおり、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じない商標であるから、観念において比較することはできない。
また、本件商標は、他人の周知・著名な商標を含む商標ということもできない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
3 請求人の主張に対し
(1)被請求人が使用し続けてきた商標が引用商標と類似することについて
請求人は、「被請求人が『モンシュシュ』及び『ベビーモンシュシュ』を使用し続けてきたことから提起した引用商標権侵害訴訟(甲第6号証)、商標『パティシエリーモンシュシュ』に関する異議の決定(甲第43号証)及び商標『つぼみ(図)/Baby/Mon/chouchou』に関する審決(甲第44号証)において、被請求人が使用し続けてきた商標等が、引用商標と類似すると判断された。」旨主張している。
しかしながら、引用商標権侵害訴訟において判示された、被請求人が使用し続けてきた商標は、甲第6号証の被告標章目録のとおり、「LeCiel」の文字部分を有さない商標であって、本件商標とは別異の商標である。
また、異議の決定(甲第43号証)及び審決(甲第44号証)において、引用商標と類似すると判断された商標も本件商標とは別異の商標である。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(2)謝罪後の本件商標の出願について
請求人は、「被請求人は、謝罪後に本件商標を出願している。」旨主張している。
しかしながら、甲第12号証及び甲第14号証には、「被請求人は、請求人所有の引用商標を十分尊重し、洋菓子につき商標『MONCHOUCHOU/モンシュシュ』の表記、使用を全面的に中止する。」旨記載されているものの、本件商標の使用については触れていない。むしろ、被請求人は、甲第14号証において代替商標の選定を行っている旨記載していることからすると、本件商標は、甲第14号証にいう代替商標とみるのが相当である。
したがって、請求人の主張は採用できない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは同一又は類似する商標ではないから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
したがって、本件商標は、本件請求に係る指定商品「菓子及びパン,氷菓子,ゼリー菓子」について、同法第46条第1項の規定により、登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1) 本件商標



別掲(2) 引用商標




審理終結日 2012-08-10 
結審通知日 2012-08-14 
審決日 2012-08-27 
出願番号 商願2009-63583(T2009-63583) 
審決分類 T 1 12・ 262- Y (X30)
T 1 12・ 261- Y (X30)
T 1 12・ 263- Y (X30)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 大森 健司薩摩 純一 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 2011-04-01 
登録番号 商標登録第5402362号(T5402362) 
商標の称呼 ルシエルモンシュシュ、ルシエルモンシューシュー、ルシエル、シエル、モンシュシュ、モンシューシュー 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 中村 勝彦 
代理人 田中 克郎 
代理人 田中 景子 
代理人 特許業務法人 有古特許事務所 
代理人 大河原 遼平 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ