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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X35
管理番号 1264478 
異議申立番号 異議2012-900076 
総通号数 155 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-11-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2012-04-02 
確定日 2012-10-04 
異議申立件数
事件の表示 登録第5459257号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5459257号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5459257号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成22年10月29日に登録出願され,第35類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として平成23年12月22日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立ての理由の要点
(1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,織物類に関する製品の製造・販売を主たる業務とするアメリカ合衆国の法人であり,申立人の業務に係る上記製品(以下「カシウェア製品」という。)について,本件商標と同一の構成からなる標章(以下「引用商標」という。)及び申立人名称の略称である「Kashwere」の文字からなる標章を使用している。
(2)本件商標権者は,カシウェア製品の我が国における唯一の正規代理店である「株式会社フラットビー」(以下「フラットビー」という。)によりカシウェア製品の総販売元として位置付けられており,実質的な販売代理人として捉えられる会社である。
(3)フラットビーは,Kashwere Comforts LLC(以下「コンフォーツLLC」という。)との2006年6月5日付契約(甲8:以下「フラットビー契約」という。)により,我が国におけるカシウェア製品の独占販売権を認められている。
(4)申立人は,Kashwere Comforts LP(以下「コンフォーツLP」という。)との2010年1月1日付契約(甲9:以下「商標ライセンス契約」という。)により,申立人をライセンサーとし,コンフォーツLPをライセンシーとすること,フラットビー契約はコンフォーツLLCから申立人に譲渡されたこと,ライセンシーはその独占的販売業者たるフラットビーを通じて許諾製品を販売すること,ライセンサーはライセンシーに対し,「KASHWERE」の文字からなる許諾商標を使用するために商標登録に基づき,取消不能,恒久的,譲渡可能,使用料無料の独占権を認めること,ライセンシーは許諾商標又はライセンサーの所有するその他のいかなる商標についても商標登録の申請をしないこと,などについて合意した。
そうすると,フラットビー契約における申立人の販売許諾者としての地位と販売被許諾者たるフラットビーの独占販売代理人としての地位は依然として維持されており,両者は商標ライセンス契約においてもライセンサーとライセンシーの関係に準ずるといえる。フラットビーの総販売元である本件商標権者との関係においても商標ライセンス契約は遵守されるべきである。
(5)このような状況の下に出願,登録された本件商標について,その登録が維持された場合には,申立人の意に反するばかりでなく,上記契約の存在を反故にすることになり,ライセンサーとライセンシーとの信頼関係の上に成り立つ使用許諾制度の存在意義を脅かし,ひいては国際信義にも反するものである。
よって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当し,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。

3 当審の判断
(1)商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き,その商標登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には,その商標は商標法第4条第1項第7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし,同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として,商標自体の性質に着目した規定となっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること,及び,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(東京高裁平成14年(行ケ)第616号,平成15年5月8日判決参照)。
また,先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や,国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた商標法第4条第1項第19号の趣旨に照らすならば,それらの趣旨から離れて,同法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは,商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので,特段の事情のある例外的な場合を除くほか,許されないというべきである(知的財産高裁平成19年(行ケ)第10391号,平成20年6月26日判決参照)。
かかる観点から,以下,本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するものであるか否かについて検討する。
(2)申立人の提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
(ア)甲第2号証の1ないし7は,引用商標が付された商品を撮影した写真と認められるところ,繊維製品と思しき商品の包装袋,下げ札,包装用紐などには,引用商標が「kashwere」の文字(6番目の「e」にはアクセント記号(アクサンテギュ)が付されている。以下同じ。)と共に又は単独で付されている。
甲第3号証は,申立人に係るレターヘッドの写しと認められるところ,その冒頭に引用商標及び「Kashwere」の文字が並べて表示されている。
甲第4号証は,申立人の関連会社と思しき者に係る「SALES INVOICE」(請求書)の写しと認められるところ,その上部に本件商標及び「kashwere」の文字が,その会社の名称,住所,電話番号と共に表示されている。
(イ)引用商標は,台湾及び香港において商標登録出願されている(甲5の1,2)。
(ウ)甲第6号証の1は,申立人のウェブサイトの写しと認められるところ,そのページの冒頭に「Kashwere」の文字が表示されているほか,我が国における申立人の直営店などについて掲載されており,引用商標も表示されている。
甲第6号証の2は,「kashwere Japan(カシウェアジャパン)」のウェブサイトの写しと認められるところ,その第1ページの冒頭に引用商標と「Kashwere」の文字が二段に表示されているほか,第2ページには,「日本においては株式会社フラットビーを国内唯一の正規代理店として2006年12月に青山店をオープンし,株式会社シリウスコーポレーションを総販売元として初めて展開することになりました。」などの記述がされている。
(エ)甲第8号証は,コンフォーツLLCとフラットビーとの間で2006年6月5日に締結された「契約書」(フラットビー契約)の写しと認められるところ,これには,コンフォーツLLCが,カシウェア製品についてフラットビーを日本における独占販売業者に指定し,フラットビーはその指定を受諾する旨などが定められている(訳文による。)。
(オ)甲第9号証は,申立人とコンフォーツLPとの間で2010年1月1日に締結された「織物類の独占的商標ライセンス契約」の写しと認められるところ,これには,申立人をライセンサーとしコンフォーツLPをライセンシーとし,ライセンサーは,商標「KASHWERE」(許諾商標)に係る織物類についてのすべての権利,所有権及び利権を所有すること,ライセンサーは,許諾製品についての商標登録における取消不能,恒久的,譲渡可能,使用料無料の独占権及び使用権を許諾すること,ライセンシーは,その独占的販売業者たるフラットビーを通じて許諾製品を販売すること,上記フラットビー契約は,2008年のカシウェア関連会社の再編に伴い,ライセンシーに譲渡されたこと,フラットビーは日本において許諾製品を独占的に販売すること,ライセンシーは,自己のビジネスの名称・会社名の一部として許諾商標を使用できること,ライセンシー・その日本における販売代理人は,インターネットドメイン名の一部として許諾商標を使用する権利を有すること,ライセンシーは,許諾商標又はライセンサーの所有するその他のいかなる商標についても商標登録の申請をしないこと,などについて合意する旨が定められている(訳文による。)。
(カ)甲第10号証は,「kashwerejapan.com」のドメイン情報に関する検索結果の写しと認められるところ,これには,「Registrant」の項に「Sirius Corporation」と記載され,「Administrative Contact」の項に「Miyakawa,Hiroshi」と記載されている。
(キ)甲第11号証の1は,フラットビーのウェブサイトの写しと認められるところ,これには,「代表者:宮川浩」,「本社:東京都港区南青山5-14-8 TK GREEN HILL B棟」などの記載が見られるほか,主要取引先として「kashwereLLC」を含む7社の名称が記載されている。
甲第11号証の2は,「kashwere Japan(カシウェアジャパン)」のウェブサイトの写しと認められるところ,会社概要の項に,会社名として「株式会社シリウスコーポレーション」と,所在地として「東京都港区南青山5-14-8 T・K GREEN HILL B」とそれぞれ記載されている。
(3)上記(2)の事実によれば,織物類に係る許諾商標である「KASHWERE」の文字からなる商標については,申立人がライセンサーの立場にあり,コンフォーツLPがライセンシーの立場にあることが認められ,コンフォーツLPは,自己の独占的販売業者たるフラットビーを通じて許諾製品を販売すること及び自己のビジネスの名称・会社名の一部として許諾商標を使用できること,並びにフラットビーが許諾製品を独占的に販売することが認められるものの,引用商標の使用については,明文の規定が見当たらず必ずしも明らかではない。
また,ライセンシーたるコンフォーツLPとその日本における販売代理人は,インターネットドメイン名の一部として許諾商標を使用する権利を有することが規定されているものの,フラットビーと本件商標権者との関係を示すものは甲第6号証の2の「kashwere Japan(カシウェアジャパン)」のウェブサイトにおける記述のみであり,上記販売代理人にはフラットビーの他に本件商標権者も含まれるのか必ずしも明らかでない。
更に,上記「織物類の独占的商標ライセンス契約」(甲9)にいう「ライセンサーは,許諾商標又はライセンサーの所有するその他のいかなる商標についても商標登録の申請をしないこと」については,「その他のいかなる商標」に引用商標が含まれると解したとしても,「ライセンシー」とのみ記載されており,販売代理人が含まれていないことから,販売代理人たるフラットビーをはじめ,本件商標権者がこれに拘束されるか否かは明らかでない。その他,本件商標権者が,申立人との関係において引用商標に係るライセンシーの立場にあることや,引用商標の登録出願ができないことなどについては,直接かつ具体的に示す証左はなく,明らかでない。
なお,上記甲第10号証,第11号証の1及び2の記載内容によれば,本件商標権者とフラットビーとは住所が同じであり,本件商標権者のウェブサイトの管理者がフラットビーの代表者と同一人と解されることからすると,両社は強い関連性を有するものと推認されるものの,人格を異にする別法人であるから,上記事実をもって直ちに本件商標権者がフラットビーと同じ立場にあり,同じ権利義務を有するということはできない。
結局,本件商標を巡る申立人,コンフォーツLLC,コンフォーツLP,フラットビー及び本件商標権者との関係は必ずしも明らかでなく,本件商標権者が本件商標についてどのような経緯で出願し登録を受けたものであるかは不明である。
もとより,申立人,コンフォーツLLC,コンフォーツLP,フラットビー及び本件商標権者との間における商標権の帰属などに関する紛争は,専ら私人間における紛争であって,当事者間における契約や交渉によって解決,調整が図られるべき事項であり,一般国民に影響を与える公益とは関係のない事項である。
以上を総合すると,本件商標は,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないようなものということはできない。
その他,本件商標が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するとすべき事由は見当たらない。
したがって,本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
(4)以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲(本件商標)




異議決定日 2012-09-25 
出願番号 商願2010-84725(T2010-84725) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (X35)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池田 光治 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
鈴木 修
登録日 2011-12-22 
登録番号 商標登録第5459257号(T5459257) 
権利者 株式会社シリウスコーポレーション
商標の称呼 ケイ 
代理人 安形 雄三 
代理人 岡部 讓 
代理人 加藤 智恵 

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