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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 109
管理番号 1263062 
審判番号 取消2011-300967 
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-10-14 
確定日 2012-09-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第1405326号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第1405326号商標中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1405326号商標(以下「本件商標」という。)は、「ジオ」の片仮名を横書きしてなり、昭和50年6月23日に登録出願され、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同55年1月31日に設定登録、その後、指定商品については、平成22年3月31日に、第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極」のほか、第7類及び第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品に書換登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成23年11月1日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具およびその部品」について、日本国内において継続して3年以上、商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれもが使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)通常使用権の許諾について
乙第1号証は、被請求人と株式会社インターネットイニシアティブ(以下「IIJ社」という。)との間の契約書であるが、その記載内容からして、被請求人がIIJ社に対し、本件商標等に基づいて権利を行使しない、という権利不行使の契約書であって、商標権の使用許諾の契約ではないことから、被請求人がIIJ社に通常使用権を許諾したことになっていないことは明白である。
(2)使用商品について
被請求人は、「IIJ GIO(ジオ)」(以下「使用商標」という。)を第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」の名称として現に使用している旨、主張しているが、IIJ社が、使用商標をクラウドサービスに使用しているに過ぎず、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」に使用している証拠は何ら示されていない。
被請求人は、「商標を一のサービス(本件の場合のクラウドサービス)で利用しているので、当該サービスを実現する装置(本件の場合のコンピュータネットワーク用サーバー等)についても使用している」旨、主張しているが、かかる論理は成り立たないことはいうまでもない。
需要者に提供されているのはサービス(本件の場合のクラウドサービス)であって、装置(本件の場合のコンピュータネットワーク用サーバー等)ではないからである。
また、乙第4号証の1ないし3において、「IIJ GIOホスティングパッケージサービス/仮想サーバ」との記載はあるが、使用商標が商品「仮想サーバ」で使用されていたとの記載はない。
少なくとも名称「IIJ GIOホスティングパッケージサービス/仮想サーバ」と使用商標とは同一ではない。
さらに、乙第5号証の1及び2は、使用商標がクラウドサービスに利用されていること、及び当該クラウドサービスはITリソースをコンポーネントとして使用していること等が示されているに過ぎず、使用商標が第9類「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品」に使用している、とは記載されていない。
以上より、使用商標は、クラウドサービスに使用しているに過ぎず、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」には使用されていない。
(3)使用商標について
被請求人の使用商標は、本件商標「ジオ」を使用していることにはならない。
つまり、使用商標は、明らかに、商標法第50条第1項にいう登録(本件)商標「ジオ」と同一の商標(社会通念上同一と認められる商標も含む)ではない。「ジオ」のローマ字は「ZIO」または「JIO」であり、ローマ字「GIO」の読みは「ギオ」である。
さらに、IIJ社は、乙第3号証の1ないし13等から明らかなように、常に、クラウドサービスについて、使用商標または「IIJ GIO」と「IIJ」を有する態様で、クラウドサービスの名称を使用しており、商標「ジオ」は使用していない。かかることは、乙第1号証からも明らかである。
つまり、被請求人とIIJ社とは、本件商標の専用権の範囲でIIJ社が本件商標を使用することを想定しておらず、IIJ社が本件商標の禁止権の範囲で使用商標をクラウドサービスで使用することを承知していた、ということを乙第1号証が示している。
(4)まとめ
以上から、IIJ社は、本件商標の通常使用権者ではない。また、使用商標は、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」の名称としては使用されていないばかりでなく、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標ではない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の申立ては成り立たない。審判の費用は、請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 通常使用権の許諾について
(1)被請求人とIIJ社は、契約書(乙1)において、本件商標権に属する権能を行使しない旨の取り決めを交わしているものの、両者間で通常使用権の許諾について、契約書を取り交わしていない。
しかしながら、過去の判例(知財高裁平成21年(行ケ)第10290号において、「通常使用権の許諾は、明文の契約に限らず、黙示の契約によっても可能であることが示されており、本件においては、被請求人とIIJ社との間では、本件商標「ジオ」に対する黙示の使用許諾があったと認識している。
(2)これを証する客観的事実として、提出した各使用証拠は、被請求人が審判請求を受けた旨をIIJ社に報告したうえで、通常使用権者として「ジオ」についての使用証拠の提示を求めたところ、IIJ社より、通常、関係者以外の目に入ることのない内部資料であるところの乙第4号証の1ないし3の「請求書」をはじめとする各証拠の提供を受けている。
本件商標「ジオ」は、被請求人の有する他の登録商標「GIO」(登録第5362643号)と社会通念上同一と認められる登録商標であり、IIJ社は、本件商標「ジオ」の使用権者でもあるとして、内部資料含む各使用証拠を被請求人に対して提供しており、その事実自体が、IIJ社が「本件商標についての通常使用権者である」ことを示すものである。
一方、被請求人としては商標権者として、通常使用権者であるところのIIJ社の商標の使用を安定して確保するために本審判に対して真摯に対応しており、これらは、まさに被請求人及びIIJ社との間で本件商標に対する「黙示の通常使用権の許諾」があることを示す確たる証拠である。
2 使用商品(サービス)について
(1)乙第2号証について
IIJ社は乙第2号証に示すとおり、2009年10月5日付けプレスリリースにおいて、使用商標「IIJ GIO(ジオ)」の名称で幅広いニーズに対応したクラウドサービスを展開する旨を発表し、今日に至るまでの実績により、使用商標の名称のクラウドサービスとして需要者・取引者に認知され、IIJ社の主力商品(サービス)の1つとして提供している。
(2)乙第3号証及び乙第4号証について
乙第3号証の1の「IIJ GIO サービス」のカタログにそのサービスとして提供されるクラウドサービスの概要が記載されており、この内容から明らかなように、需要者・取引者の要望に応じ、あらゆるシステムの基盤を支えるためのITプラットフォーム等を提供している。
その商品(サービス)の提供形態としては、インターネット経由のソフトウェアパッケージの提供や仮想化サーバ、共有ディスクの提供、またはこれらの組み合わせにより提供されるいわゆるクラウドコンピューティングとして提供されていることから、本件商標は、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」とは直接的に関係はしないが、第38類「電気通信」に関する役務、第42類「電子計算機用プログラムの提供,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」に関する役務とを組み合わせたクラウドサービス全体の名称として現に使用している。
この点、乙第3号証の2に示すインターネット上のIIJ社のホームページ「IIJ カタログDLページ」の「クラウド/SaaS」に列挙されている「IIJ GIO(ジオ)」の各クラウドサービスのカタログ(乙3の1及び3ないし13)の内容からも明らかである。
これらを証する具体的な証拠として、乙第4号証の1ないし3の「請求書」(発行:順に2011年9月5日、同年10月5日、同年11月4日)を提示する。いずれもIIJ社からその子会社に対しての請求書であり、その中に「IIJ GIOホスティングパッケージサービス/仮想サーバ」の商品(サービス)の提供が明記されていることから、「IIJ GIO(ジオ)」は本審判請求の日から3年以内に本件商標に係る商品(サービス)について使用されていることは明らかである。
(3)請求人は、これらのIIJ社の使用はあくまでも「クラウドサービス」についての使用であり、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」に使用していない旨主張しているが、「クラウドサービス」と記載されているからといって、「サービス(役務)」についてのみの使用に限られるわけではない。
IIJ GIOなるクラウドサービスは、主として、いわゆる「インターネットを利用したサーバの記憶領域の貸与」や顧客が有するあらゆるデータの「移行」であったり、適切にデータを提供する記憶領域に保管できるようにするための顧客に対するシステムの「導入」等、顧客が自社でサーバ等の大規模システムを有さずに、IIJ GIOなるクラウドサービスを導入することで、サーバの代わりを果たすことをそのサービスの内容としている。
確かにこの点は第42類の各種役務を積極的に提供していることになるが、これら顧客の有する膨大なデータ等をIIJ GIOが提供するシステムに問題なく移行等をさせるために、互換性を持たせるための「電子計算機用プログラム」を介しており、その電子計算機用プログラムを含む全体としてのサービスに対して「GIO」の名称を使用しているものである。
また、ソフトウェアは、商品としての電子計算機用プログラムの取引は、有体物である記録媒体によるものとは限らず、むしろネットワークを通じた商品取引形態のほうが多いという実情は十分考慮されるべきものであり、特に「クラウドサービス」においては、いわゆる「運用・保守サービス」として具体的なソフトウェアの取引を内包させるような取引の形態を採る事がほとんどである。
この点、特許庁における「類似商品・役務審査基準」において第9類「電子応用機械器具及びその部品」に包含される「電子計算機用プログラム」と第42類「電子計算機用プログラムの提供」とが備考類似とされているところから、この判断基準は上述の実情を考慮すれば、不使用取消審判の際にも参酌されるべきである。
(4)さらに、請求人は、使用商標が「仮想サーバ」について使用されていたとの記載はない旨主張しているが、前掲の乙第4号証の1ないし3における「請求書」に明記されているのは、「IIJ GIO ホスティングパッケージサービス/仮想サーバ」であり、「IIJ GIO ホスティングパッケージサービス」の内容は乙第3号証の4のカタログに明記されており、「仮想サーバ」については「IIJ GIO ホスティングパッケージサービス」中、ベーシックプランの説明に「1台の仮想サーバにインターネットヘのアクセスを組み合わせた基本的なプラン。・・・」との記載があり、金額もこの月額費用(¥4,000)と合致することから需要者側により明確に請求内容がわかるように配慮した便宜的な記載である。
また、IIJ GIOが提供する仮想サーバを通してインターネットヘのアクセスを可能とする点が明記されていることから、この請求に係る部分がまさに本件商標の指定商品における使用である。
3 使用商標について
(1)IIJ社は、上記2(1)で記載したとおり、2009年10月5日付けのプレスリリース(乙2)において、使用商標をクラウドサービスを展開する旨を発表し、今日に至るまで使用している。
(2)請求人は、乙第4号証の1ないし3において、「IIJ GIO ホスティングパッケージサービス/仮想サーバ」との記載があるところ、これは、名称「IIJ GIO」とは同一ではないと主張しているが、乙第3号証の1ないし13の各カタログが示すとおり、IIJ社が提供する「GIO」の詳細なサービス内容が、例えば「ホスティングパッケージサービス」等であり、「GIO」以下の部分はいわゆる機能名称・品質表示である。
(2)そのほか、請求人は、使用している表記は「IIJ GIO」であり、本件商標「ジオ」ではない旨、主張しているが、「IIJ GIO」の表記のうち、「IIJ」部分は、本件商標の通常使用権者であるIIJ社の著名な略称であることにより、「IIJ」と「GIO」とは分離して認識されるものである。
「IIJ GIO」の記載は、「IIJ社が取り扱う多種多様な商品(サービス)のうちのGIOという商品(サービス)である」と需要者に認識させるための識別標識として用いられており、「IIJ」は競合企業との識別標識であり、商品(サービス)の識別標識として具体的に機能している部分は「GIO」であるため、識別標識としての機能がそれぞれ異なることから、当然に分離して識別され、判別されるものである。
(3)請求人は通常使用権者が使用している「GIO」からは「ギオ」の称呼が生じ、社会通念上同一の商標の使用とはいえない旨を主張しているところ、確かに通常使用権者であるIIJ社が主体的に使用している表記は「GIO」であることは否定しないが、「GIO」に対して「ギオ」の称呼のみしか生じないと決め付けるのは失当である。
例えば、需要者に広く知られている「ジョルジオ アルマーニ(Giorgio・・・)」や、「セビリアの理髪師」を作曲したイタリアの作曲家であるところの「ジョアキーノ ロッシーニ(Gioachino・・・)」においては、いずれも「GIO」の表記と同様に「G」から始まる表記であるが、請求人の主張に従えば「GIORGIO」部分は「ギョルギオ」として、「Gioachino」部分は、「ギョアキーノ」として広く知られているはずのところ、実際には「ジョルジオ」、「ジョアキーノ」として自然に称呼され、広く認識されている。
そもそも、本件の場合、乙第2号証のプレスリリースにおいて「GIO」の表記に連続して「ジオ」と記載していることや、乙第3号証の1「IIJ GIO サービス」のカタログ中、「■IIJ GIOの名称の意味」の文中、「IIJのクラウドサービス「GIO(ジオ)」には2つの意味があります。・・・・」と明記して「GIO」は「ジオ」として読むことを明確に示していることから、「GIO」からは「ジオ」の称呼のみを生じさせようとするIIJ社の意図が明確に示されているものである。
このように、IIJ社が「GIO」の称呼を明確に「ジオ」と確定した上で「GIO」を使用していることは本件商標の社会通念上同一の範囲に商標を使用していることに他ならない。
被請求人が、本件商標を仮に使用商標「GIO」としてしか使用していないとしても、本件商標が造語であり、特定の観念を生じ得ず、文字を変更したところで観念の変更が起こることもないことから、社会通念上同一の商標の使用である。
4 まとめ
以上より、本件商標は継続して3年以上日本国内にて第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」について使用していることは明らかである。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る各乙号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)通常使用権者について
ア 乙第1号証の被請求人とIIJ社との間の平成22年3月17日付けの契約書においては、その第2条において、「甲(被請求人)は、乙(IIJ社)の乙商標(商願2009-72856号 「GIO/ジオ」)に関し、次の範囲で乙に対して本件商標に基づく権利を行使しない。」と記載されている。
イ 乙第4号証の1ないし3には、IIJ社より第三者の法人に対しての請求書であり、当該請求書においては、順に2011年9月5日、同年10月5日、同年11月4日の発行日が記載され、その請求月分が順に2011年8月分ないし10月分である旨、記載されている。
(2)使用商品・役務及び使用商標について
ア 乙第2号証は、2009年10月5日付け、IIJ社のプレスリリースであるところ、そこには、「IIJグループ、新しいクラウドサービス『IIJ GIO』のラインナップを発表」と題し、IIJ社(本社:東京都千代田区・・・)は、自社のデータセンターにクラウドコンピューティング基盤を構築し、その上で使用商標「IIJ GIO(ジオ)」の名称で、新たに展開するクラウドサービスのラインナップを本日発表した旨、記載されている。
イ 乙第3号証の1は、「クラウドサービス/IIJ GIO サービス」と題したIIJ社のクラウドサービスに関するパンフレット(最終頁には、「2011年3月作成」との記載有り)であるところ、その2枚目には、「あらゆるシステム基盤を支える強固なITプラットフォームとしてお客様のビジネスをサポートします。」と記載されているほか、同頁の下方には、「IIJ GIOの名称の意味」と題して、「IIJのクラウドサービス『GIO(ジオ)』には2つの意味があります。」と記載されている。
また、その3枚目には、「IIJ GIO のサービス提供イメージ」と題して、当該クラウドサービスの構成中に、ソフトウエアを表す「グループウェア」や、ハードウェアを表す「ベースサーバ」(「仮想化タイプ」を含む。)が記載されている。
ウ 乙第4号証の1ないし3は、上記(1)イに記載したとおりの請求書であるが、その各2枚目には、「IIJサービス料金明細書」と題し、その「品名」欄中には、「IIJ GIOホスティングパッケージサービス/仮想サーバ」と記載されている。
2 以上の被請求人の提出に係る乙各号証及び全証拠より、以下判断する。
(1)通常使用権者について
ア 上記1(1)アに記載したとおり、被請求人とIIJ社との間で、本件商標権に関する使用許諾の契約ではないが、本件商標及び本件商標に類似する乙商標(「GIO/ジオ」商願2009-72856号)に関し、契約を締結している事実が認められる。
イ 同様、上記1(1)イに記載したとおり、乙第4号証の1ないし3においては、IIJ社より第三者の法人に対しての請求書を被請求人が提出しているところ、被請求人主張の如く、IIJ社より、通常、関係者以外の目に入ることのない内部資料であるこれらの「請求書」の提供を受けている事実が認められる。
ウ これらの事実よりすれば、被請求人とIIJ社の間においては、少なくとも平成22年3月17日以降から本件審判請求日以降、ほぼ現在に至るまで、本件商標権に関して黙示の使用許諾契約が成立していたものとみるのが自然である。
(2)使用商品・役務について
上記1(2)に記載したとおり、被請求人が本件商標を使用しているとする商品・役務は、クラウドサービスであり、本件におけるクラウドサービスは、被請求人の答弁によれば、いわゆる「インターネットを利用したサーバの記憶領域の貸与」や顧客が有するあらゆるデータの「移行」であったり、適切にデータを提供する記憶領域に保管できるようにするための顧客に対するシステムの「導入」等、顧客が自社でサーバ等の大規模システムを有さずに、IIJ GIOなるクラウドサービスを導入することで、サーバの代わりを果たすことをそのサービスの内容としている。
そして、これらのサービスは、第42類の各種役務を積極的に提供していることになるが、このサービス(役務)を提供するには、互換性を持たせるための「電子計算機用プログラム」を介していることから、その電子計算機用プログラムを含む全体としてのサービスに対して「GIO」の名称を使用している旨、主張している。
確かに、当該主張よりしても、IIJ社が、本件商標を使用している対象は、(コンピュータ用)サーバや電子計算機用プロクラムといった商品ではなく、(コンピュータ用)サーバや電子計算機用プログラムを含む全体としてのサービスであるクラウドサービスに使用しているものといわざるを得ない。
因みに、「クラウドサービス」とは、IT用語辞典によれば、「従来は手元のコンピュータに導入して利用していたようなソフトウェアやデータ、あるいはそれらを提供するための技術基盤(サーバなど)を、インターネットなどのネットワークを通じて必要に応じて利用者に提供するサービス。・・・クラウドサービス事業者は大規模なデータセンターなどに多数のサーバを用意し、遠隔からネットを通じて仮想サーバやソフトウェア、データ保管領域を利用できるようなシステムを構築する。・・・利用者は・・・一般的には利用時間や利用実績などに応じた料金を支払う。」と記載されていることからも裏付けられるところである。
これに関し、被請求人は、特許庁の「類似商品・役務審査基準」において第9類「電子応用機械器具及びその部品」に包含される「電子計算機用プログラム」と第42類「電子計算機用プログラムの提供」とが備考類似とされているところから、この判断基準は、不使用取消審判の際にも参酌されるべき旨、主張している。
しかしながら、例え、これらの商品・役務が類似するとしても、不使用取消審判における各指定商品又は指定役務に類似する商品又は役務についての登録商標(社会通念上の同一を含む)の使用には該当しないものである。
このことは、工業所有権法(産業財産権)逐条解説においても「・・・指定商品又は指定役務に類似する商品又は役務について使用したり、登録商標に類似する商標の使用をしても本項の適用を免れることはできない。商標権のうち禁止権に係る部分つまり類似部分の使用は、権利としての使用ではなく事実上の使用であるから本条の意図する登録商標の使用義務を履行しているとはいい難いので、その部分の使用をもって不使用取消を免れることはできないこととしたものである。」と記載されていることからも裏付けられる。
そうとすれば、本件商標を使用しているのは、第42類に属する役務であって、本願の指定商品中の「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」について、本件商標は使用されていないものである。
(3)使用商標について
上記1(2)イに記載したように、乙第3号証の1の2枚目下方には、「IIJのクラウドサービス『GIO(ジオ)』には2つの意味があります。」と記載されていることから、IIJ社のクラウドサービスの商標が「GIO」であり、「ジオ」と読ませていることが、推認しうるところであり、「GIO」部分を「ジオ」と読ませていることは、乙第2号証における「・・・自社のデータセンターにクラウドコンピューティング基盤を構築し、その上で使用商標「IIJ GIO(ジオ)」の名称で、新たに展開するクラウドサービスのラインナップを本日発表・・・」との記載からも十分理解することができる。
したがって、本件商標「ジオ」と当該「GIO」は、本件商標の読みを欧文字に表したに過ぎないものであり、その称呼も同一であって、その観念も特段に異なるものとはいえないものというのが相当である。
3 小括
以上よりすれば、IIJ社は、被請求人の通常使用権者であるとみて差し支えなく、かつ、IIJ社が要証期間内に、我が国において乙第3号証の1の2枚目下方において使用する商標が、本件商標と社会通念上同一であるとしても、IIJ社が使用する商標は、第42類に属する役務についての使用といわざるを得ず、本件取消請求に係る第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品」に属する商品「(コンピュータ用)サーバ」や「電子計算機用プログラム」に使用したものとは、認めることができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人の提出にかかる乙各号証によっては、被請求人は、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについての使用をしていることを証明していないものといわざるを得ず、また、被請求人は、使用をしていないことについて正当な理由があると述べるものでもない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2012-07-06 
結審通知日 2012-07-11 
審決日 2012-07-24 
出願番号 商願昭50-85404 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (109)
最終処分 成立  
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 渡邉 健司
井出 英一郎
登録日 1980-01-31 
登録番号 商標登録第1405326号(T1405326) 
商標の称呼 ジオ 
代理人 谷川 英和 
代理人 東 泰成 

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