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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない X40
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X40
管理番号 1263041 
審判番号 無効2011-890001 
総通号数 154 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-12-28 
確定日 2012-09-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5109203号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5109203号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり、図案化した「sAn m's」の欧文字と、その下に「サンエムズ」の片仮名文字とを上下二段に横書きした構成からなるものであり、平成19年11月16日に登録出願、第40類「布地・被服又は毛皮の加工処理(乾燥処理を含む。),裁縫,ししゅう,木材の加工,竹・木皮・とう・つる・その他の植物性基礎材料の加工(食物原材料の加工を除く。),食料品の加工,廃棄物の再生,印刷」を指定役務として、平成20年1月9日に登録査定、同年2月1日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第7号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなり、これより「サンエムズ」の称呼が生じる。
これに対して、請求人は、別掲(2)のとおりの「3M」という周知著名商標(以下「引用商標」という。甲第2号証参照)を有し、引用商標からは「スリーエム」のほかに「サンエム」の称呼が生じるものであり、引用商標は米国に本拠を有する請求人を指称し、また、請求人に係る商品、役務の販売を促進するために使用されている。
本件商標が周知著名な引用商標と類似し、その指定役務への使用により混同のおそれがあることは、甲第3号証として提出する、請求人の副秘書役(Assistant Secretary)である「Robert Obert W. Sprague」の公証付き宣誓供述書によって明らかである。
ア 請求人の周知著名性
請求人は、1902年に米国にて設立され、現在では、60カ国以上に139の工場を有すると共に系列会社を有し、189カ国以上に販売拠点を有し、200カ国以上で活動している。これらの系列会社では、「3M」の名称を冠し、「3M」のマークを使用してその製品を販売している(甲第3号証)。
また、5万種類以上の商品を取り扱っており、その分野は、電気電子・電力・通信関連、建築・サイン・ディスプレイ関連、ヘルスケア関連、セーフティ・セキュリティ関連、自動車・交通関連、産業関連、オフィス関連に亘っている。
請求人は、ニューヨーク証券取引所に上場しており、該市場では「MMM」で指標されており、上場会社中の主要な優良株の会社で構成されているダウジョーンズ工業株30種平均の一社となっている。さらに、請求人は、アメリカ合衆国の投資情報会社であるスタンダード・アンド・プアーズ社が算出しているアメリカの代表的な株価指数であり、ニューヨーク証券取引所、アメリカン証券取引所、NASDAQに上場している銘柄から代表的な500銘柄の株価を基に算出される時価総額加重平均型株価指数で、機関投資家の運用実績を測定するベンチマークとして利用されているS&P500を構成する一社となっている。
また、請求人は、様々な主要な国際ビジネス誌においてランキングされている。
請求人は、日本において、また、国際的にも名声を有する周知著名な企業である。
イ 引用商標の周知著名性
引用商標は、日本及び国際的に周知著名な優良企業である請求人の商号を構成するハウスマークであり、1906年以来使用されているものであって(甲第3号証)、請求人のかけがえのない財産である。
かかる引用商標の価値は、2002年7月30日に発表された「Corporate Brand LLC」による調査では、上位50ブランド中の38位にランクされ、60億米ドルに値する。また、引用商標は、2002年8月5日に発表されたビジネスウィーク誌によれば、グローバルブランド100の内の一つであり、その価値は15億8千米ドルに値する。さらに、2005年2月8日付けの「Financial Times of London」では、93億米ドルに値すると報道され、ニューヨークに本拠を有する米国のブランド格付け会社である「Core Brand」の2007年6月13日付けの発表では、同年の第1四半期での3Mブランド価値は、70億米ドルに値する。また、ニューヨークに本拠を有する米国の市場調査会社である「Harris Interactive Corporate Reputation Study」による米国での一般大衆に対する調査では、同ブランドは、米国において最も目立つ60社のうち、上位10位に位置するものとして公表された。このように、引用商標は、価値あるブランドであり、周知著名な商標である。
そして、引用商標は、世界約200カ国で販売されている請求人の商品の殆どに使用されており、その商品群は多岐に亘り、上述のように5万種類以上となる。
請求人は、150カ国で引用商標についての2000以上の商標登録を有し、日本においても、多数の商標登録を有している(甲第4号証)。
請求人及びその系列会社は、下記の売り上げをワールドワイドで上げており、その殆どは引用商標が付された商品に由来するものである(甲第3号証)。
Year u.s.$
1999 $15,723,000,000
2000 $16,669,000,000
2001 $16,054,000,000
2002 $16,332,000,000
2003 $18,232,000,000
2004 $20,011,000,000
2005 $21,167,000,000
2006 $22,923,000,000
2007 $24,462,000,000
2008 $25,296,000,000
さらに、請求人は、世界中で引用商標を使用した商品について広告宣伝活動を行っており、その媒体は新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、ダイレクトメール及びトレードショー等多岐に亘る。また、ドメイン名「www.3m.com」及び「www.mmm.co.jp」でのウェブサイトにおいても引用商標を使用した商品の宣伝広告を行っている。上記ドメイン名「www.3m.com」でのウェブサイトにおいての引用商標を使用した商品の宣伝広告は1995年以来行われており、毎月約2千万件アクセスされている。
請求人のワールドワイドでの広告宣伝費用は下記のとおりである(甲第3号証)。
Year U.S.$(in millions)
1999 $484,000,000
2000 $544,000,000
2001 $407,000,000
2002 $372,000,000
2003 $405,000,000
2004 $432,000,000
2005 $459,000,000
2006 $471,000,000
2007 $416,000,000
2008 $412,000,000
また、米国では、2002年3月22日に提訴された「3M Company v. 3M Incorporated」事件において、引用商標は、著名商標であると認定されており、米国以外でも、ブラジルにおいても著名商標として認定されている(甲第3号証)。
さらに、WIPOの仲裁センターにおいても、以下の案件で請求人所有の引用商標が世界的に周知・著名である旨認定されている(甲第5号証)。
・Case No. D2004-0875 re:3mworldwide.com
・Case No. D2001-0736 re:3mconsul.com
・Case No. D2001-0420 re:3mk-mart.com
以上より、引用商標は、日本国内及び国際的に周知著名商標であることは明らかである。
ウ 本件商標と引用商標との混同のおそれ
商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は、当該商標をその指定商品等に使用したときに、当該商品等が他人の業務に係る商品等であると誤信させるおそれがある(狭義の混同)商標、及び当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化グループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信させるおそれがある(広義の混同)商標を含むというべきである。そして、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度、需要者及び取引者の共通性その他取引の実情などに照らし、右指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである(最高裁平成12年7月11日第三小法廷判決民集54巻6号1848頁参照。)。以下、上記観点から判断する。
先ず、本件商標と引用商標の類似性について考えると、上述のように、前者からは「サンエムズ」、後者からは「サンエム」の称呼が生じ、語尾の「ズ」の有無についての1音が相違するのみである。
語尾における「ズ」は、それ自体響きの弱い音であるだけでなく、比較的聴取され難い語尾に位置することから、両者は全体としての語調、語感が近似し、これらを互いに聞き誤るおそれがある。
さらに、本件商標及び引用商標のいずれからも「三つの欧文字M」という同一の観念が生じる。
そうすると、本件商標は周知著名である引用商標と称呼及び観念において類似する。
また、請求人は、広汎な分野で多岐に亘る商品を製造販売していることで有名な企業であり、現に、上述のように、5万種類以上の商品を取り扱っており、その分野は、電気電子・電力・通信関連、建築・サイン・ディスプレイ関連、ヘルスケア関連、セーフティ・セキュリティ関連、自動車・交通関連、産業関連、オフィス関連に亘っている。
このような取引の実情を考慮すれば、本件商標をその指定役務について使用すると、取引者及び需要者において、同役務が請求人又は同人と何らかの関係を有する者の提供する役務であると混同するおそれがあるというべきである。
してみれば、引用商標の周知著名性、本件商標との類似性、請求人の多角経営という取引の実情等を斟酌すれば、少なくとも広義の混同のおそれが生じるものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号について
本件商標に接した需要者は、引用商標の著名性故に、引用商標を想起するものであり、被請求人は、明らかに請求人所有の引用商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する目的で使用するものであるといえる。かかる不正の目的は、本件商標が、請求人所有の周知著名の引用商標と類似する構成からなることからも明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号、同第19号に違反してなされたものであるから、無効とされるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第15号
ア 本件商標と引用商標との類似性
被請求人は、答弁書において引用商標からは「サンエム」の称呼は生じない旨主張している。しかしながら、引用商標は欧文字で「3M」と書して成る構成を有するものであり、該構成からは自然な称呼として「スリーエム」の称呼の他に「サンエム」称呼が生じる。
語尾における「ズ」は、それ自体響きの弱い音であるだけでなく、比較的聴取され難い語尾に位置することから両者は全体としての語調、語感が近似し、これらを互いに聞き誤るおそれがある。
また、観念においても、本件商標及び引用商標のいずれからも「三つの欧文字M」という同一の観念が生じる。
したがって、本件商標は、引用商標に類似する。
イ 混同のおそれ
被請求人は、答弁書において、引用商標の独創性が極めて低いと主張し、混同のおそれはないとしている。しかしながら、請求人が引用した最高裁判決では、「独創性」以外にも、「類似性の程度」、「周知著名性」、「需要者及び取引者の共通性」等について言及している。
請求人は、広汎な分野で多岐に亘る商品を製造販売していることで有名な企業である。したがって、本件商標の指定役務についても請求人が参入した、又は関連会社をして参入させたと需要者等が誤認することも十分考えられる。
このような取引の実情を考慮すれば、本件商標を本件指定役務について使用すると、取引者及び需要者において、同役務が請求人会社又は請求人会社と何らかの関係を有する者の提供する役務であると混同するおそれがあるというべきである。
したがって、引用商標の周知著名性、本件商標との類似性、請求人会社の多角経営という取引の実情等を斟酌すれば、少なくとも広義の混同のおそれが生じるものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号
さらに、本件商標に接した需要者は、引用商標の著名性故に、引用商標を想起するものであり、被請求人は、明らかに請求人所有の著名引用商標の顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する目的で使用するものであるといえる。かかる不正の目的は、本件商標が、請求人所有の周知著名の引用商標と類似する構成から成ることからも明らかである。
被請求人は、答弁書において、本件商標が引用商標と類似しない旨主張しているが、上述のように、本件商標は引用商標に類似するものである。
引用商標「3M」の周知著名性に鑑みれば、被請求人が本件商標を考案採択するに際に引用商標を知得していたことは明らかであり、本件商標は請求人所有の周知著名商標の顧客吸引力にただ乗りする目的で採択され、使用されるものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べている。
1 引用商標の周知著名性について
請求人は、引用商標の周知著名性について、本件商標にかかる登録異議申立書(異議2008-900139)において述べたことをほぼそのまま踏襲し、同主張を繰り返している。なお、一部、そのブランド価値やブランドランキングについての主張を加えている。
これに対し、被請求人は、引用商標が周知著名であることを認める。
2 商標法第4条第1項第15号について
請求人は、平成12年7月11日最高裁第三小法廷判決を引用しつつ、本件商標と引用商標とは類似するものであること及び請求人が広汎な分野で多岐に亘る商品を製造販売していることで有名な企業であることを考慮すると、少なくとも広義の混同のおそれが生じる、すなわち、本件商標をその指定役務について使用すると、取引者及び需要者において、同役務が請求人又は同人と何らかの関係を有する者の提供する役務であると混同するおそれがあると主張している。
しかしながら、本件商標からは「サンエムズ」の称呼を生ずるのに対し、引用商標からは「スリーエム」の称呼しか生じ得ない。極めて周知著名な「3M」商標は、一般需要者の間でもっぱら「スリーエム」と称呼されているのであり、請求人が主張するような「サンエム」と称呼されている例はない。
仮に、請求人が本件商標から「サンエム」の称呼を生ずると主張するのであれば、請求人自身がその証拠を提出すべきであるが、そのような証拠は提出されていない。
そうすると、両者は、称呼上相紛れるおそれはない。また、観念、外観についても、両者は、判然と区別し得るものであるから、本件商標と引用商標とは、何ら紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。
ところで、請求人が引用した上記最高裁判決では、混同を生ずるおそれの有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度、需要者及び取引者の共通性その他取引の実情などに照らし、右指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきであるとされている。
してみれば、たとえ、引用商標が、請求人の業務に係る商品「化学・電気素材」等を表示するものとして、本件商標に係る指定役務の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであるとしても、両者間において混同を生ずるとすべき格別の事情を見出し得ないから、被請求人が本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者が直ちに引用商標を想起し、請求人又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係のある者の業務に係るものであるかと誤認し、その役務の出所について混同するおそれはなく、広義の混同も生じ得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号について
上記のとおり、本件商標は、引用商標とは何ら紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標である。本件商標から、引用商標を想起することはないし、別異の商標を使用したところで顧客吸引力を得ることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも該当しない。

第4 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標
本件商標は、別掲(1)のとおり、図案化した「sAn m's」の欧文字と、その下に「サンエムズ」の片仮名文字とを二段に横書きした構成からなるところ、一般に欧文字と片仮名文字とを併記した構成からなる商標においては、その片仮名文字が当該欧文字の称呼を特定すべき役割を果たすものと無理なく認識できるときは、その片仮名文字より生じる称呼がその商標より生じる自然の称呼とみるのが相当である。
そして、「sAn m's」の欧文字は、全体として既成の語を表したものではない。また、これを「sAn」と「m's」とに分離してみても、それぞれの文字が、既成の語を表したものではない。
してみると、本件商標は、その構成より「サンエムズ」の称呼が生じ、かつ、何ら特定の意味合いを看取し得ない造語として、商取引に資されるものとみるのが自然である。
(2)引用商標
引用商標は、別掲(2)のとおり、特太のゴシック体で表した「3M」の構成からなるものである。
請求人である「スリーエム カンパニー」は、世界的な化学品や電気・電子などの素材メーカーであって、その商号の略称として「3M」と表示し、かつ、引用商標を同人の取り扱いに係る商品に使用していることが窺われる。
そして、請求人は、引用商標から「スリーエム」の称呼のほかに「サンエム」の称呼を生ずる旨主張している。
しかしながら、請求人は、引用商標が「サンエム」の称呼をもって、同人の取り扱いに係る商品を特定して商取引に資されていることを裏付けるような証拠を提出していない。
そうすると、引用商標は、「スリーエム」の称呼のみをもって商取引に資されているものといわなければならない。
(3)出所の混同のおそれ
ア 本件商標と引用商標との類否
上記のとおり、本件商標と引用商標とは、それぞれの構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものである。
さらに、本件商標からは「サンエムズ」の称呼が生じ、引用商標からは「スリーエム」の称呼が生じるものであるから、両称呼は、その構成音の差、共通する音が少ないこと及び相違する音の音質の差異などにより、それぞれを一連に称呼するときは全体の音感、音調が明らかに異なり明瞭に区別し得るものである。
また、本件商標は、親しまれた既成の観念を有する成語を表したものではないから、観念上比較することができないものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼、観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。
イ 本件商標の指定役務分野における引用商標の周知著名性
請求人は、引用商標が周知著名であるとして、その立証証拠を提出しているが、提出に係る立証証拠は、請求人会社の担当者の宣誓供述書、日本における請求人及び関連会社所有の関連登録商標リスト及びWIPO仲裁センターの決定の写しのみであり、その供述を裏付ける客観的な証拠等は一切提出されていない。また、引用商標が、具体的な商品について使用されている状態をはじめ、引用商標を使用した商品の広告宣伝等の状況については全く不明である。
そして、請求人は、5万種類以上の商品を取り扱い、その分野は電気電子・電力・通信関連、建築・サイン・ディスプレイ関連、ヘルスケア関連、セーフティ・セキュリティ関連、自動車・交通関連、産業関連、オフィス関連に亘り、引用商標は請求人の商品の殆どに使用されている旨主張するが、その商品や引用商標の使用の実態は明らかでない。また、引用商標が、本件商標の指定役務の分野において、請求人の業務に係る役務を表示する商標として使用されていることを示す証左はない。
そうすると、請求人が世界的な企業であり、引用商標が使用されていることが窺えるとしても、請求人の提出に係る証拠をもって、直ちに引用商標が本件商標の指定役務の分野においても周知著名になっているものとは認め難い。
仮に、請求人が主張するように、請求人の取り扱いに係る商品が多岐に亘るものであるとしても、上記商品と本件商標の指定役務とは直接に関係するものとはいい難く、両者の関連性は弱いものといえるし、請求人もその関連性については何ら具体的に述べるところがない。
ウ 小活
以上を総合すると、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない別異の商標というべきものであり、引用商標が特定の商品の分野で知られているとしても、本件商標をその指定役務について使用した場合、これに接する取引者、需要者が、引用商標ないしは請求人を連想、想起することはないというべきであり、該役務が請求人又は請求人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
2 商標法第4条第1項第19号について
請求人は、引用商標の著名性故に本件商標に接した需要者が引用商標を想起し、本件商標は、引用商標の顧客吸引力にただ乗りする不正の目的で使用するものである旨主張する。
しかしながら、上記のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても類似しない別異の商標である。
そして、本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想、想起するようなことがないことは、上記1のとおりである。
そうすると、請求人の主張は前提を欠くものであって、認めることはできないし、他に、本件商標が、引用商標の顧客吸引力にただ乗りしたり、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであることを認めるに足る具体的な証拠はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1) 本件商標




別掲(2) 引用商標




審理終結日 2011-07-13 
結審通知日 2011-07-15 
審決日 2011-07-28 
出願番号 商願2007-116273(T2007-116273) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (X40)
T 1 11・ 222- Y (X40)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 亨子 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2008-02-01 
登録番号 商標登録第5109203号(T5109203) 
商標の称呼 サンエムズ、サン、エスエイエヌ、エムズ 
代理人 特許業務法人京都国際特許事務所 
代理人 中山 健一 

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