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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y03
管理番号 1261576 
審判番号 無効2011-890113 
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-12-28 
確定日 2012-07-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第4794211号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4794211号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4794211号商標(以下「本件商標」という。)は、「PROMATIZ」、「CHAMPAGNEGOLD」、「プロマティス」及び「シャンパンゴールド」の文字を四段に表示してなり、平成15年6月5日に登録出願され、第3類「せっけん類,香料類,化粧品」を指定商品として、同16年7月30日に登録査定、同年8月13日に設定登録され、現に有効に存続するものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第118号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、上記1のとおりの構成からなるところ、その構成中「CHAMPAGNE」「シャンパン」の文字は、我が国の一般需要者の間に広く知られているワインの著名な原産地統制名称を欧文字及び片仮名で書してなるものであって、その使用が厳格に管理・統制されているものである。
本件商標は、この著名な原産地統制名称に化体した高い名声及び信用にフリーライドするものであり、これを原産地からかけ離れた特定個人の商標として登録し使用することは、厳格に管理統制されている前記原産地統制名称を稀釈化させるものである。
したがって、本件商標は、公正な取引の秩序を乱し、ひいては国際信義に反するものであって、公の秩序を害するおそれがあるというべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(2)結び
本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、本件商標の登録は、同法第46条第1項第1号によって無効とされるべきものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し何ら答弁していない。

4 当審の判断
(1)請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、「シャンパン」及び「Champagne」の語について、以下の事実が認められる。
ア 1996年10月1日株式会社三省堂発行「コンサイスカタカナ語辞典」(甲第2号証)の「シャンパン[champagne]」の項には、「発泡ワインの1種.フランス北東部シャンパーニュ地方産の美酒.白ぶどう酒に糖分を加え発酵させ,香料を配し,びん詰にして1年以上貯蔵する.多量の炭酸ガスを含みさわやかな香味をもつ.祝宴に多く用いられる.シャンペンとも.日本では中国名『三鞭酒』を借りてシャンペンと読んでいた.シャンパーニュ地方以外でつくられる発泡ワインはスパークリングーワインと呼んで区別される.」の記載がある。
イ 1998年11月11日株式会社岩波書店発行「広辞苑 第5版」(甲第3号証)の「シャンパン【champagne】」の項には、「発泡性の白葡萄酒。厳密にはフランス北東部シャンパーニュ地方産のものを指す。発酵の際に生じた炭酸ガスを含み、一種爽快な香味がある。・・・」と記載され、同じく「シャンパーニュ【Champagne】」の項には、「フランス北東部、パリ盆地東部の地方(州)。ブドウ栽培・シャンペン製造で知名。中心都市ランス。」の記載がある。
ウ 1982年5月20日株式会社柴田書店発行「新版世界の酒事典」(甲第4号証)には、「シャンパン(Champagne)」の見出しの下に、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン.正式の名称をバン・ド・シャンパーニュ(Vin de Champagne)という。世界の各地で、各種のスパークリング・ワインがつくられているが,このうちシャンパンと呼ばれるものは、フランスのシャンパーニュ地方,特にブルミェール・ゾーン(ランス山とマルヌ谷との一等地),ドゥジェーム・ゾーン(マルヌ県のうち一等地以外の村落群)産のスパークリング・ワインにかぎると1911年の法律で定められている。・・・」の記載がある。
エ 昭和63年8月1日株式会社明治屋本社発行「明治屋酒類辞典」(甲第5号証)には、「Champagne(仏)(英)シャンパン」の見出しの下に、「フランスの古い州の名『シャンパーニュ』をとってワインの名に用いたものである。現在『統制された名称』であって,何ら形容詞を付けないで単に『シャンパーニュ』と称する資格を有するのは,マルヌ県の一定地域のブドウを原料にし,その地域内で,『シャンパン法』でつくった『白』スパークリング・ワインである。最高生産量にも制限があって,それを超えた部分には形容詞がつく。」と記載され、また、「[統制名称]」の見出しの下に、「シャンパンは,詳しくは『ヴァン・ド・シャンパーニュ』であるが『シャンパーニュ』という地名を名乗るには資格がいる。1908年(明治41年)初めて法律ができて,『シャンパーニュ』という名称が『法律上指定された』名となった。・・・」、「要するにシャンパンの条件は(a)シャンパン地区の生産であること。(b)シャンパン法(ビン内で後発酵を行い,発生したガスをビン内に封じ込める)で製造したものであること。(c)白ワインであること。(原料ブドウには黒ブドウと白ブドウとを,メーカーの秘伝の比率で混和するけれど,でき上がりは白ワインである)(d)その年度の最高の生産高に制限があること,の4条件を具えなければならない。」、「戦前,我が国でもシャンパンの名称を乱用した歴史があるが,敗戦の結果,サンフランシスコ講和条約の効果として,マドリッド協定に加入を余儀なくされ,以来フランスの国内法を尊重している。」等の記載がある。
オ 昭和56年6月15日株式会社柴田書店発行「洋酒小事典」(甲第7号証)には、「シャンペン Champagne」の項に、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワインの総称。・・・」の記載がある。
カ 昭和62年10月14日第一刷読売新聞社発行「最新版Theワイン&コニャックアルマニャック」(甲第10号証)には、「やわらかな自然優しき人々・・・そして黄金の美酒」の見出しの下に、写真と共にシャンパーニュ地方の様子及びシャンパンと食事との関わり合いについての記述があるほか、「シャンパーニュ地方でつくられる、発泡酒だけに名付けられるシャンパン」の記載がある。
キ 1990年6月30日株式会社角川書店発行「世界の酒4 シャンパン」(甲第11号証)には、「シャンパーニュの丘」の見出しの下に「シャンパーニュのワインの歴史に、さらにひとつの栄光のエピソードが加わった。それは発泡性ワインの誕生である。この画期的な発見、発明は、その後の研究者たちの努力によって、発泡性ワイン、シャンパンの名声を、ヨーロッパのみならず世界的なものにしたのであった。」の記載のほか、「シャンパーニュのぶどう畑」との見出しの下に「シャンパーニュというのは、この地方の古くからの一般的呼称である。・・・シャンパーニュには、他の産業もいろいろとあるが、何といってもシャンパンで世界的に知られている。」の記載がある。
ク 1998年12月1日サントリー株式会社発行「世界のワインカタログ1999 by Suntory」(甲第13号証)には、「シャンパーニュ Champagne」の項に、「シャンパーニュ(Champagne)A.O.C.ワイン地域図」としてワイン産地の地図が掲載され、「シャンパ一二ュ」の見出しの下に、「フランスの葡萄産地としては最北部にあたるシャンパーニュは、言うまでもなく、あのシャンパンの産地です。この地でつくられるスパークリングワインのシャンパンは、スパークリングワインの代名詞として使用されるほど、世界的で最も有名なワインのひとつです。」の記載がある。
ケ 2000年1月20日株式会社料理王国社発行「料理王国1月号別冊 季刊ワイン王国 NO.5」(甲第14号証)には、「シャンパン味わいの多様性チャート」の見出しの下に、「ひとくちにシャンパンといっても一様でないのはそれもそのはず、シャンパーニュ地方ワイン生産同業委員会(CIVC)がまとめているすべての醸造元の数は5200にものぼる。委員会は、シャンパン消費量上位10カ国に外国事務所をおいて、『シャンパンと呼べるのは、シャンパーニュ地方産スパークリングワインだけ』ということを訴えてきたが、’93年頃から『5200の醸造元があれば5200様のシャンパンがある』ということもアピールするようになった。」の記載がある。
コ 株式会社講談社発行「世界の名酒事典’80改訂版」(甲第15号証)には、「スパークリング・ワイン」の見出しの下に、「グラスに注ぐと、軽やかな細かい泡が立つ、華やかなワイン。発泡酒といわれ、第二次発酵ののち、クラスに注いだとき泡立つワインをいう。シャンパンがその代表で、別格扱いされるが、世界のワイン地帯には、ほとんどある。」の記載がある。また、「シャンパンの故郷ランス」の見出しの下には、写真及び地図入りでシャンパンの特徴、製造法、地理等についての記載がある。
そして、「世界の名酒事典」の’82-’83年度版、’87-’88年版、’90年版ないし’93年版、’98年版ないし2000年版、2003年版においても、ほぼ同内容の記載がある(甲第16号証、甲第18号証ないし甲第22号証、甲第27号証ないし甲第29号証、甲第31号証)。
サ 株式会社宙出版発行「はじめてのシャンパン&シェリー」(甲第42号証)には、「一目で分かるシャンパンのデータ」の見出しの下に、1998年のフランスから我が国への出荷量は、イギリス、ドイツ、アメリカ、ベルギー、スイス、イタリアに次いで多く298万本(750ml)旨の記載がある。
シ 上記のほか、請求人提出の多数の証拠に「シャンパン」「Champagne」は、フランスのシャンパーニュ地方でつくられる発泡性ワイン(スパークリングワイン)であること、「シャンパン」と名のれるのは同地方の発泡性ワインのみであること及び「シャンパン」が一流品であることなどの記載がある(甲第33号証ないし甲第41号証、甲第43号証ないし甲第45号証、甲第47号証ないし甲第49号証など)。
(2)上記(1)の認定事実によれば、「シャンパン」及び「Champagne」は、フランス北東部のシャンパーニュ地方でつくられる発泡性ワインを意味する語であること、同地方でつくられた発泡性ワインについてのみ使用できる名称であること、発泡性ワインを代表するほど世界的に著名であること、我が国においても数多くの辞典、書籍、雑誌及び新聞などにおいて説明、紹介されていること、及び我が国の1998年におけるシャンパン輸入量が世界第7位で298万本(750ml)と多いことなどが認められ、これらを総合すると、「シャンパン」及び「Champagne」の語は、我が国において、本件商標の登録出願の時(平成15年6月5日)はもとより登録査定時(平成16年7月30日)を含むその後においても、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ワイン」を意味するものとして、一般需要者の間に広く知られているというのが相当である。
(3)また、「シャンパン」及び「Champagne」の名称の保護に関して、フランス食品振興会(SOPEXA)1987年発行「フランスのワインとスピリッツ」(甲第8号証)によれば、その18頁及び19頁において、EC(欧州共同体)の規則に従って、ワインはテーブル・ワインとV.Q.P.R.D.(指定地域優良ワイン)の2つの等級に分類され、フランスでは、この2つの等級がさらにそれぞれに2分され、(a)A.O.C.(原産地統制名称ワイン)、(b)V.D.Q.S.(上質指定ワイン。なお、「上質限定ワイン」とも表記している。)、(c)ヴァン・ド・ペイ(地酒)、(d)ヴァン・ド・ペイをのぞいたテーブルワインの4つに分けられること、V.D.Q.S.(上質指定ワイン)は、原産地名称国立研究所(I.N.A.O.)によって厳しく規制されパスしたものに限られ、製造の条件は、法令化されていること、A.O.C.(原産地統制名称ワイン)は、その製造が、V.D.Q.Sワインに適用される規制よりさらに厳格な規則を充たすものでなければならず、原産地、品種、最低アルコール含有度、最大収穫量、栽培法、剪定、醸造法及び場合によっては熟成条件等の規準が決定されていること、原産地域がV.D.Q.Sワインの場合よりさらに厳しく限定されていること、その名称を使用することができるためには、様々な基準に合うように製造され、さらに鑑定試飲会の検査に合格しなければならないことなどが記載されていること、また、同書の20頁には、産地別A.O.C.ワイン一覧表中に「シャンパーニュ(CHAMPAGNE)」が記載されていることが認められる。
さらに、フランス食品振興会(SOPEXA)発行のパンフレット(甲第52号証)、フランス国原産地統制名称の国際的保護のためのINAO(L’Institut National des Appellations d’Origine)のアクションに関するメモ(甲第53号証)、1936年6月29日のフランス国条例抜粋(甲第54号証)、1935年7月30日付けフランス国政令「原産地統制呼称法」抜粋(甲第55号証)及びフランス国農事法典抜粋(甲第56号証)によれば、フランスでは、1935年に原産地統制名称法を制定し、上記INAOは、原産地統制名称(シャンパーニュ)のぶどう酒が満たすべき生産地域、ぶどうの品種、収穫量、最低アルコール純度、栽培方法、醸造方法などの条件を定めることができ、またフランス国内及び国外で原産地統制名称を保護することができる旨などを規定していること、上記INAOは、請求人などとともにフランス国内及び国外で原産地統制名称(シャンパーニュ)の保護の活動をしていることなどが認められる。
(4)本件商標は、上記1のとおり、「PROMATIZ」、「CHAMPAGNEGOLD」、「プロマティス」及び「シャンパンゴールド」の文字を四段に表示されており、視覚上、各段に表された文字部分が分離して看取され、また、「CHAMPAGNEGOLD」及び「シャンパンゴールド」の文字部分は、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字が、上記(2)のとおり、「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ワイン」を意味するものとして、広く知られていること、及び「GOLD」及び「ゴールド」の文字が「金、金製品」の意味を有する語であることから、それぞれ「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」と「GOLD」及び「ゴールド」との2語からなるものとして認識されるとみるのが自然である。
さらに、本件商標は、全体として、及び「CHAMPAGNEGOLD」及び「シャンパンゴールド」の文字部分がいずれも成語でなく、他にこれが一体不可分のものとして認識されるというべき事情は見当たらないから、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字部分が強く看者の印象に残るものであって、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字をその構成中に含むものというべきである。
また、シャンパンは、エッセンシャルオイルやアロマキャンドルの香料として使用されるものであり、シャンパンの香りの香料は、化粧品やせっけん類の原材料として使用されるものである。加えて、シャンパンの酵母エキスは、化粧品の原材料として使用されるものである。
そして、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の語が「フランスのシャンパーニュ地方で作られる発泡性ワイン」を意味するものとして本件商標の登録出願の時及び登録査定時はもとより、その後においても我が国の一般需要者の間に広く知られていること、フランスシャンパーニュ地方のぶどう生産者・ぶどう酒製造者が長年その土地の風土を利用して優れた品質の発泡性ワインの生産に努めてきたこと、フランスが国内法令を制定し、1935年以降INAO等が中心となって原産地名称を統制、保護してきた結果、その著名性が獲得されたことを併せ考慮すれば、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の文字を含む本件商標は、これをその指定商品に使用するときは、「CHAMPAGNE」及び「シャンパン」の表示の著名性にただ乗り(フリーライド)し不正の利益を得る目的や同表示の希釈化(ダイリューション)を生じさせるおそれがあり、また、シャンパーニュ地方のぶどう生産者及びぶどう酒製造者はもとより、国を挙げてぶどう酒の原産地名称又は原産地表示の保護に努めているフランス国民の感情を害するおそれがあるというべきである。
(5)以上のとおりであるから、本件商標は、その出願の経緯に社会的妥当性を欠き、また、国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2012-06-07 
結審通知日 2012-06-11 
審決日 2012-06-22 
出願番号 商願2003-46226(T2003-46226) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Y03)
最終処分 成立  
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2004-08-13 
登録番号 商標登録第4794211号(T4794211) 
商標の称呼 プロマティスシャンパンゴールド、プロマティス、シャンパンゴールド、シャンパン 
代理人 三輪 鐵雄 
代理人 田中 克郎 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 田中 景子 

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