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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 010
管理番号 1261506 
審判番号 取消2011-300108 
総通号数 153 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-09-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-02-01 
確定日 2012-07-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第3039158号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3039158号商標(以下「本件商標」という。)は、「TITANOL」の文字を横書きしてなり、平成4年7月22日に登録出願、第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同7年4月28日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁、口頭審理における陳述及び上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者または通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)請求人と被請求人の関係
請求人は、ドイツに本社を置く矯正歯科用具の製造販売を業とする法人である。請求人は、被請求人が代表取締役を努めていた有限会社メディカ(後に、株式会社メディカ。これらをあわせ、以下「メディカ社」という。)と1989年1月19日に、日本における独占販売契約を締結し(乙第1号証、甲第3号証の1)、請求人の製造に係る商品(以下「請求人商品」という。)の日本における販売を委託していたが、当該独占販売契約は、1997年9月24日に終結した(甲第3号証の1及び2)。請求人は、独占販売契約終結後はメディカ社の注文に応じて請求人商品をメディカ社に販売してきたが、2005年10月13日を最後にメディカ社に請求人商品を販売していない(甲第3号証の1及び3、甲第4号証)。
被請求人は、請求人と協議のうえ、被請求人側の負担と名義により本件商標を出願し、登録した旨を述べている(乙第1号証)が、本件商標は、本来請求人商品に付されていたものであるにもかかわらず、請求人の同意を得ることなく、メディカ社の名義で出願し、登録をされたものである。
被請求人が使用してきたと主張する本件商標が付された商品は、後述するように、乙第3号証に示す商品を除き、請求人商品である(乙第1号証)。
(2)株式会社オーティカ・インターナショナルについて
被請求人は、本件商標を歯列矯正ワイヤーに使用していると主張し、株式会社オーティカ・インターナショナル(以下「オーティカ社」という。)が使用許諾を受けている証拠として商標使用許諾契約書を提出している(乙第19号証ないし乙第21号証)。
しかし、これらの商標使用許諾契約書は有効ではない。すなわち、各商標使用許諾契約書の第1条において、「甲(被請求人)は、商標登録出願中の本件商標について独占的使用権を、下記の通り乙(オーティカ社)に許諾する」として、本件商標を含む3件の商標の使用をオーティカ社に許諾し、第1条2において、「甲は、実施期間中、テリトリー内で本件商標を本件製品に使用せず、また第三者に対して使用を許諾しないことを約する」と規定している。商標使用許諾契約書中には専用使用権及び/または通常使用権の用語は表れていないが、オーティカ社のみが本件商標を使用することができるのであるから、商標使用許諾契約書は、内容的には、被請求人がオーティカ社に専用使用権を許諾したことになる。商標法第30条第4項において準用する特許法第98条第1項第2号によれば、専用使用権の設定は、登録しなければ、その効力を生じないとされているが、本件商標には、専用使用権の登録がされていない(甲第2号証)。
したがって、オーティカ社は、専用使用権者ではないので、乙第1号証ないし乙第24号証によっては、本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内においてオーティカ社により歯列矯正ワイヤーに使用されたことを立証したことにはならない。
(3)万が一オーティカ社が通常使用権者であるとした場合でも、以下のとおり、乙第1号証ないし乙第24号証によっては、本件商標が歯列矯正ワイヤーに使用されていることを立証したことにはならない。
ア 被請求人は、乙第2号証を提出し、本件商標の指定商品に含まれる歯列矯正ワイヤーについて、本件商標が付されていることが示されている旨主張する。
しかし、前記のとおり、乙第2号証に示す商品(以下「乙2商品」という。)は、請求人が2007年以前に製造した請求人商品であり、請求人が当該商品をメディカ社に販売したのは2005年10月13日が最後である(甲第3号証の1、甲第4号証)。
被請求人は、乙2商品の写真を「平成23年3月10日に撮影した」旨主張し、乙2商品がオーティカ社により販売されている旨主張しているにもかかわらず、乙2商品の包装の表面(乙第2号証の1)には、請求人の名称及び住所の印刷の上に「輸入発売元/株式会社 メディカ」と記載されたシールが貼付されている。甲第4号証の「Article nr.」欄に記載された請求人商品の品番には、乙2商品に記載された品番(REF207-0850)が記載されていないので、乙2商品は、少なくとも2005年10月12日以前にメディカ社に販売されたことになる。2005年10月12日以前にメディカ社に販売された乙2商品を平成23年3月10日に撮影した写真をもって、オーティカ社により販売されていることにはならない。乙2商品が本当にオーティカ社により販売されているのであれば、「株式会社オーティカ・インターナショナル」の表示のあるシールを貼付すると考えるのが自然である。
また、被請求人は、乙第4号証ないし乙第11号証を提出し、これらは本件商標を付した商品の販売を示す取引書類で、本件商標を付したある品番の商品が販売されたことを証明している旨を主張するが、乙第4号証ないし乙第11号証の納品書は、その日付を2008年2月26日から2010年6月9日にかけてとするものであり、乙2商品の品番(207-0850)はない。したがって、乙2商品がオーティカ社により販売された事実は立証されていない。
イ 被請求人は、乙第4号証ないし乙第11号証に記載された品番が乙第12号証に示す商品リスト(以下「乙12商品リスト」という。)に記載されており、乙第12号証の上段の写真の商品(以下「乙12商品」という。)が乙2商品の写真と同様であり、乙12商品において写っていない面は、乙第2号証の2ないし6に示す面の写真と同様に本件商標が付されているので、本件商標を付した商品の販売を証明している旨を主張する。
(ア)しかしながら、乙第10号証及び乙第11号証について、被請求人は、これらに記載された品番(204-0935、204-0840)が乙12商品リストに記載されている旨を主張するが、乙12商品リストに記載された品番(Order-No.)はすべて「207」から始まる番号であるから、被請求人の主張は失当である。
(イ)乙12商品は、2007年以前に製造された請求人商品の写真であり、その包装に「FORESTADENT」なる商標が付されており(甲第3号証の1、該商標の先頭にアーチ状図形が付され、末尾の「T」の右上に登録商標を表す(○の中に「R」の記号、以下「○R記号」という。)が付されている。アーチ状図形が付された「FORESTADENT」なる商標は、請求人商品の総合的なネーミングであり、ほとんどの商品の包装について表示されている(甲第5号証、甲第6号証)。甲第7号証は、乙2商品と同一であると被請求人が主張する乙12商品とは異なる請求人商品の写真であるが、表面は、乙12商品と同じ外観であるが、裏面は、乙2商品の裏面とは異なっている。したがって、たとえ乙12商品リストに示される品番が乙第4号証ないし乙第9号証の納品書に記載された品番と一致しても、本件商標が付された商品が販売されたことにならない。
(ウ)被請求人は、乙第12号証は、オーティカ社の発行、配布に係る歯列矯正ワイヤーの明細リーフレットであると主張するが、そもそも請求人がオーティカ社に請求人商品を供給したことはなく(甲第3号証の1)、オーティカ社が請求人商品を販売したとしたら、それは2005年10月までに請求人が被請求人に販売した商品の在庫を販売したものである。
(エ)乙第12号証には、以下のとおり、極めて不自然な点が多数存在する。
乙第12号証の右下に「医療機器認証番号:220AKBZX00052000」が他の活字の書体や色とは異なった態様で、既存のリーフレットに付け足したように記載されている。かかる医療機器認証番号は、医療機器である歯列矯正ワイヤーについて、株式会社トップランに対して2008年4月28日に付与された認証番号であって(甲第8号証)、オーティカ社に対して付与されたものではない。オーティカ社が認証を受けたのであれば、乙第15号証に示す「指定管理医療機器製造販売認証書」が存在するはずであるから、提出されたい。
ところで、薬事法第23条の2第1項は、「厚生労働大臣が基準を定めて指定する管理医療機器又は体外診断用医薬品(以下「指定管理医療機器等」という。)の製造販売をしようとする者又は外国において本邦に輸出される指定管理医療機器等の製造等をする者であって次条第一項の規定により選任した製造販売業者に指定管理医療機器等の製造販売をさせようとするものは、厚生労働省令で定めるところにより、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の登録を受けた者(以下「登録認証機関」という。)の認証を受けなければならない。」と規定する(甲第9号証の1)。すなわち、指定管理医療機器等を製造販売する者は登録認証機関の認証を受けなければ、指定管理医療機器等を製造販売できないのである。また、薬事法第84条第4号は「薬事法第23条の2第1項に違反した者は、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」旨を規定する(甲第9号証の2)。
被請求人は、乙第2号証、乙第4号証及び乙第12号証をもって、2008年2月26日にオーティカ社が品番207-0835の商品を東京都台東区の歯科宛に販売した旨を主張するが、前記のとおり、乙12商品について認証を受けたのが2008年4月28日であるから、被請求人の主張は極めて疑わしい。また、被請求人は、乙第2号証、乙第5号証及び乙第12号証をもって、2008年3月18日に、オーティカ社が品番207-2045の商品を茨城県水戸市の歯科医院宛に販売した旨を主張するが、乙第4号証と同様に、販売日が認証日より前なので、被請求人の主張は極めて疑わしい。もし、これらの主張が真実であるならば、オーティカ社は、薬事法に違反して指定管理医療機器を販売したことになり、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金に処され、またはこれを併科される立場にある。
また、乙第12号証には、本件商標がどこにも記載されていない。前記のように、請求人商品の多数は、乙12商品のようにその表面にアーチ状図形を先頭に伴った「FORESTADENT(末尾に○R記号)」の文字が表示され、その下部に請求人の名称及び住所が表示されている(乙第2号証、甲第7号証)。1989年1月19日から1997年9月24日まで日本における独占販売契約を請求人と締結し、かつ、その後も2005年まで非定期的に請求人商品の提供を受けていたメディカ社の代表取締役であった被請求人は、このような事情は充分に承知していたはずであり、被請求人が「顧問としてその事業に参画している」オーティカ社が、乙第12号証を作成するにあたり、本件商標の表示をどこにもしていないのは極めて不自然である。また、乙第12号証の右下に記載された「医療機器認証番号:220AKBZX00052000」の一般的名称は「歯列矯正用ワイヤ」であり、販売名は「フォレスタデント タイタノール ワイヤー」である(甲第8号証)。かかる名称で「医療機器認証番号:220AKBZXO0052000」を取得しておきながら、前記一般的名称「歯列矯正用ワイヤ」とも前記販売名「フォレスタデント タイタノール ワイヤー」とも異なる「歯冠色コーテッドNiTiアーチワイヤー」なる名称が表示されているのである。この点も極めて不自然である。
さらに、乙第12号証は、オーティカ社により日本の顧客用に作成されたものと思われるが、乙12商品リストのみ英語のまま記載されており(ただし、価格欄を除く。)、しかも歯列矯正用ワイヤーを多数販売しているのである(乙第1号証)から、歯列矯正用ワイヤーに精通しているオーティカ社及びその顧問の被請求人が、商品リストの「Order-No.」の右欄の「mandibular(下あご用)」を「mandibuar」と誤記しているのも極めて不自然である。
また、乙第12号証には、通常リーフレットやカタログを作成する際に表示する作成年月日や作成部数などの表示もない。
これらを総合して勘案すると、乙第12号証の信ぴょう性を疑わざるを得ない。
ウ 被請求人は、乙第3号証を提出し、オーティカ社により本件商標を付して販売されている旨及び本件商標が歯列矯正用ワイヤー1PK(1パック)の包装に付されている旨主張し、乙第1号証において、オーティカ社が販売する商品は請求人の製造に係る歯列矯正用ワイヤーである旨を主張する。
しかし、乙第3号証に示す商品(以下「乙3商品」という。)の包装は、請求人の製造に係る商品の包装ではない(甲第3号証の1)。前記イで述べたように、請求人商品に表示される「FORESTADENT」の商標は、常に乙第2号証、乙第12号証及び甲第7号証に示される書体で、アーチ状図形を先頭に伴っている。そして、2007年ころまでは先頭のアーチ状図形及び「DENT」の部分が青色で、「FORESTA」の部分が黒色で示されており、それ以降は先頭のアーチ状図形及び「DENT」の部分が金色で、「FORESTA」の部分が黒色で示されている(甲第5号証、甲第6号証)。乙3商品の包装に表示された「FORESTADENT」は請求人のものとは明らかに異なる。
したがって、乙3商品は、請求人の製造に係る商品ではない(甲第3号証の1)。
請求人は、日本において、第10類「歯科用機械器具」について、「Forestadent」の文字よりなる登録第1742890号商標を有する(甲第10号証の1及び2)。したがって、被請求人の主張するオーティカ社による歯列矯正用ワイヤーの販売は、かかる登録商標の商標権侵害に該当する。
また、被請求人は、乙第12号証は、オーティカ社の発行、配布に係る歯列矯正用ワイヤーの明細リーフレットであり、上段の写真は、乙第2号証に示される一面の写真と同一であり、当該他の一面には商標「TITANOL」が付されていることは、乙第2号証よりわかる。下欄の表(中略)中、Order-No.の下、maxilliary(上あご用)、mandibuar(下あご用)の下部に商品番号(207-・・・)が掲載されている旨主張する。
被請求人の上記主張によれば、歯列矯正用ワイヤーの包装は、乙12商品及び乙2商品の外観を有することになる。現に、乙第3号証に示す「Order No.207-0935」が、乙12商品リストの1段目に記載されているにもかかわらず、乙3商品の包装の外観と乙12商品の包装の外観は全く異なるのである。同じ商品が全く異なる包装で販売されることなどあり得ないことである。したがって、乙3商品が実際に販売されたか否かは極めて疑わしく、被請求人の提出した証拠では確認することができない。乙第7号証(納品書)に乙第3号証に示す「Order NO.207-0935」が記載されており、2009年4月6日に茨城県の歯科医院に上記品番の商品が納品されたことは認められるが、乙第7号証自体に本件商標は表れていないし、本件商標が表示された乙3商品が販売された事実が確認できないし、乙第12号証からも本件商標が商品に表示されていることが確認できないので、乙第7号証だけをもって本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に使用されたことにはならない。
エ 乙第13号証ないし乙第17号証は、これらの証拠のみをもって本件商標が本件審判の請求の登録前3年以内に使用されたことにならない。
オ 乙第18号証は、請求人が2004年2月に発行し、2006年1月まで使用したものである。現在使用中のものは2006年2月に発行したものである(甲第3号証の1、甲第5号証)。
被請求人は、乙第18号証について、FORESTADENTのカタログで、歯列矯正用ワイヤーが掲載されている旨述べ、乙第1号証において「乙第18号証は、FORESTADENTのカタログで、『TITANOL』の歯科矯正用ワイヤーが掲載されており、ここでも、本件商標の使用が示されている」旨主張する。
しかし、前記のように乙第18号証は、請求人により発行されたものであるので、オーティカ社が本件商標を使用したことにならない。
また、被請求人は、商品に関する広告に本件商標が付されたリーフレットを顧客に展示している旨を主張するが、この点については何ら立証されていない。
さらに、被請求人は、歯列矯正用ワイヤーは、オーティカ社の営業社員により、個別に訪問し、電話、メール、FAXなどにより個別に注文を受け、取引を行ない、これらの取引において、オーティカ社の営業社員と購入者である歯科医師等は、本件商標を「チタノール」あるいは「タイタノール」と発音して、口頭で取引を行っている旨を主張するが、メール及びFAXによる取引において本件商標を「チタノール」又は「タイタノール」と発音して、口頭で取引を行なう余地はなく、前記取引のうち電話か口頭による取引に該当するが、商標法は、標章の使用の定義を規定する第2条第3項において、口頭による取引が標章の使用に該当するか否かは規定していない。しかし、被請求人が口頭による取引が商標法第2条第3項第2号又は第8号の使用に該当することを主張しようと意図しているならば、同第2号は、商品の包装に本件商標を付した商品を譲渡し、引き渡しをする過程で口頭による取引があったとしても、最終的に商品の包装に本件商標を付した商品を譲渡し、引き渡しをする行為が立証されなければ、同第2号に該当することにならないし、同様に、同第8号は、最終的に商品に関する広告、取引書類に標章を付して展示し、頒布する行為が立証されなければ、同第8号に該当することにならない。特に、同第8号は、甲第11号証に示すように、本件商標を「チタノール」又は「タイタノール」と発音して、口頭により広告しても、本件商標を付する行為が存在しないから、同第8号の使用に該当しない。本件においては「商品の包装に本件商標を付した商品を譲渡し、引き渡しをする行為」(商標法第2条第3項第2号)及び「商品に関する広告、取引書類に標章を付して展示し、頒布する行為」(商標法第2条第3項第8号)が立証されていない。
カ 被請求人は、乙第22号証ないし乙第24号証を提出し、本件商標と使用に係る商標の同一性について述べるが、乙第22号証ないし乙第24号証における事件と本件とは事案を異にし、同一に議論することはできない。
(4)以上述べたように、本件商標は、本件審判の請求の登録(平成23年2月18日)前3年以内に日本国内において、商標権者又は使用権者により請求に係る指定商品について使用されたとはいえないものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第2項により取消しを免れないものである。
3 口頭審理(口頭審理陳述要領書)における陳述
被請求人提出に係る証拠については次のとおりである。
(1)乙第1号証は、被請求人自らの作製に係る報告書であり、客観性が担保されておらず、証拠としては不充分である。
(2)乙第2号証は、これに示される商品の品番が乙第4号証ないし乙第11号証の納品書に記載されていないので、販売の事実を示す証拠ではない。
(3)乙第3号証は、請求人商品ではなく、被請求人の作製に係る包装に封入された商品の写真であり、その品番が乙第4号証ないし乙第11号証の納品書に示される品番と一致しても、かかる納品書に示される品番の商品が販売されたことにはならない。
(4)乙第4号証ないし第11号証は、納品書および請求書であり、乙第2号証、第3号証及び乙第12号証に示される品番が記載されている旨を被請求人は主張するが、乙2商品の品番は乙第4号証ないし第11号証のいずれにも記載されていない。乙12商品の品番の一部は乙第10号証及び乙第11号証には記載されていない。
(5)乙第12号証については、乙12商品の包装の外観と乙2商品の包装の外観が部分的に一致しても、乙12商品の包装のある面と同じ外観を有するが、他の面は違う外観を有する請求人商品が存在するので、乙12商品の品番が乙第4号証ないし乙第11号証に記載されていてもその商品が販売されたことにはならない。乙第12号証に示されるリーフレットは不自然な点が多々存在する。とくに、「医療機器認証番号」はオーティカ社に付与されたものではない。
(6)乙第13号証ないし乙第17号証は、本件商標の使用を間接的に補強するために提出されたものであるが、これらのみでは使用の証拠にならない。
(7)乙第18号証は、請求人の発行に係るカタログであるので、オーティカ社が本件商標を使用したことにならない。
(8)乙第19号証ないし乙第21号証は、被請求人とオーティカ社の間で締結された商標使用許諾契約書であり、内容から判断すると、オーティカ社は専用使用権者であるにもかかわらず、その設定登録がなされていないから、有効ではない。
(9)乙第22号証ないし乙第24号証については、本件とは事案を異にするので、本件と同一に議論することはできない。
(10)乙第26号証ないし乙第31号証については、乙第26号証及び乙第29号証ないし乙第31号証のそれらの商品は完全な商品とは程遠い不完全な商品であり、それを販売した商品と同一であると主張する被請求人の主張は極めて疑わしい。また、わざわざそのような不完全な商品を写真撮影して、乙第26号証ないし乙第31号証として提出しなければならないのであるから、これは使用権者であるオーティカ社が完全な商品の在庫を持ち合わせないことを示しており、乙第5号証、乙第6号証、乙第8号証および乙第9号証の納品書に示される日付にそのような商品が存在していたかすら疑わしい。
(11)乙第42号証ないし第46号証については、乙第42号証及び乙第43号証の納品書(控)の日付は、審判請求の登録日前3年以内の日付ではない。乙第44号証及び乙第45号証の商品の写真は、被請求人が偽装工作を行なっているのであるから、本件商標の使用が合理的に立証されたという心証を抱くことはできない。また、乙第44号証の納品書によっては乙第46号証に示される商品が納品されたことは確認できない。
(12)乙第47号証の「指定管理医療機器 製造販売認証書」は、オーティカ社の「歯列矯正用ワイヤ」の製造販売について平成20年2月21日に株式会社ULJapanにより認証されたことを示しており、その認証番号は「20200BZY01120000」である。この認証番号は、被請求人が先に乙第35号証として提出した「医療用具 輸入承認事項一部変更承認書」の承認番号と一致しており、被請求人が先に乙第15号証として提出した「指定管理医療機器製造販売認証書」の認証番号「222AKBZX00148000」のような形式とは異なっている。したがって。「指定管理医療機器製造販売認証書」の真正な謄本であるか疑わしい。
4 平成24年2月17日付け上申書
(1)請求人が乙第15号証との関係を含め、乙第47号証の原本を保有していない理由及び乙第52号証を検討した結果、それらは真正であるとの結諭に至った。したがって、オーティカ社が平成20年2月21日から本件審判の請求の登録日である平成23年2月16日まで指定管理医療機器である「歯列矯正用ワイヤー」を販売する権限を有していたことを認めざるを得ない。よって、乙第47号証並びにそれに関連する乙第52号証及び乙第53号証の成立については、これを認める。
(2)請求人はロ頭審理において、乙第1号証ないし乙第46号証及び乙第48号証ないし乙第51号証の成立の認否を問われ、乙第26号証ないし乙第31号証のシール部で隠された部分を除いて、乙第1号証ないし乙第46号証及び乙第48号証ないし乙第51号証の成立を認めたが、本上申書においてその一部を撤回する。
ア 乙第3号証は、被請求人自らの製作に係るものであるから、その成立を認めると言及したことを撤回する。
イ 乙第12号証は、その右下に「医療機器認証番号:220AKBZX00052000」と記載されており、その医療機器認証番号は「歯列矯正用ワイヤ」について株式会社トップランに対して2008年4月28日に付与された認証番号であって、オーティカ社に対して付与されたものではないので、その成立を認めると言及したことを撤回する。
ウ 乙第38号証は、前記乙第12号証の作成日を示すと被講求人が主張する証拠であるが、乙第38号証の3枚目の用紙の右下に記載された「医療機器承認番号20200BZY0112000」が乙第12号証の右下に記載された「医療機器認証番号:220AKBZX00052000」と異なるので、その成立を認めると言及したことを撤回する。
(3)被請求人が乙第4号証ないし乙第11号証及び乙第42号証ないし乙第45号証として提出した納品書に記載されたコード(品番)が乙第3号証、乙第26号証ないし乙第31号証及び乙第46号証として提出した「歯列矯正用ワイヤー」の写真に表れた品番と単に一致しているからといって、前記期間内(平成20年2月21日から平成23年2月16日まで)に商品「歯列矯正用ワイヤー」について本件商標を使用していたという心証を疑義なく合理的に抱くことができない。
また、乙第26号証ないし乙第31号証については、被請求人は製造年月日に係る情報が印刷された部分(乙第26号証及び乙第30号証においては「SAMPLE」シールで隠ぺいした部分、乙第27号証ないし乙第29号証及び乙第31号証においては「LOT」の横の部分)をシールにより隠ぺいしており、それを剥離して製造年月日に係る情報を開示するように要求したにもかかわらず、営業秘密を理由にその要求を拒否した、乙第26号証ないし乙第31号証に示される商品は請求人商品であるから、その包装に印刷された情報については請求人が最もよく認識している。
シールで隠ぺいした部分は少なくとも製造年月日に係る情報が印刷された部分であるから、被請求人にとって不利になることがなければ、営業秘密とは関係ない製造年月日に係る部分のみでも開示できたはずであるが、営業秘密理由でその部分の開示を拒否した。営業秘密を理由にその部分を開示することができないという抗弁は、製造年月日に係る情報を開示することにより被請求人に不利になるような状況(例えば、乙第4号証ないし乙第11号証及び乙第42号証ないし乙第45号証として提出した納品書の日付との整合性がとれなくなるなど)が起きるおそれがあることを示唆している。製造年月日に係る情報が印刷された部分が営業秘密に係るので開示したくないと被請求人が主張するのであれば、乙第46号証においてもその部分、具体的には「LOT 17742327」の部分をシールで隠して写真撮影するはずであるが、そのようにしていない。この事実は前記請求人の主張を裏付けている。したがって、乙第26号証ないし乙第31号証自体に証拠能力があるとはいえない。
請求人がその主張を再考したところ、証拠としてその成立を撤回した乙第12号証の下部の表中に記載された「標準価格(10本/PK)」および乙第44号証の「単位 PK」の情報にかんがみて、乙第46号証に示される1本入りの商品を10本まとめたものを「PK」という単位で取引したとすれば、「単価 17,000円」のつじつまが確かに合う。しかし、乙第44号証に記載された前記1本入りの商品(品番:207-0845)の「単位、単価」とその下に記載された10本入りの商品(品番:207-0945)の「単位、単価」がその表示方法において何ら区別がつくものではない(いずれも「単位 PK」、「単価 17,000円」)。
ところで、請求人が提出した甲第4号証(請求人からメディカ社あてのインボイスの写し)によれば、項番4において品番「207-1445」の商品が1個(10本入り)(Quantity Unit:1(10pcs.))輸入されており、同じ品番を有する10本入りの商品(商品の裏面の品番「207-1445」の下に「10Stack/pcs」と記載されている)の写真が乙第29号証として被請求人より提出され、その商品が乙第8号証として被請求人より提出された納品書に記載されている。その納品書において、前記乙第44号証の納品書における10本入りの商品(品番:207-0945)の記載と同様に、品番「207-1445」を有する10本入りの商品は「単位 PK」、「単価 22,000円」と記載されている。また、前記甲第4号証の項番3において、前記1本入りの商品と同じ品番「207-0845」を有する商品が1個(10本入り)(Quantity Unit:10pcs.))輸入されている。被請求人により提出された証拠の中には、品番「207-0845」の商品の写真は、「1本売りの例」である乙第46号証以外にないが、乙第29号証に示される商品と同様に、商品の裏面の品番「207-0845」の下に「10Stuck/pcs」と記載された10本入りの商品であると考えるのが自然である。このように、品番「207-0845」を有する商品は、前記1本ずつ包装した1本売りの商品以外に、歯列矯正用ワイヤーを10本まとめて包装した10本入りの商品も存在するわけであるから、納品書における「単位、単価」の表示方法が1本入りの商品と10本入りの商品とで何ら区別されていない事実にかんがみれば、乙第44号証の品番、単位及び単価の表示をもって直ちに1本入りの包装である第46号証に示される商品が納品されたことにはならない。同様のことが、乙第46号証の品番が記載された乙第8号証についてもいえる。
(4)以上のとおり、被請求人の通常使用権者であるオーティカ社が平成20年2月21日から平成23年2月16日まで指定管理医療機器である「歯列矯正用ワイヤー」を販売する権限を有していたとしても、前記各乙号証によっては、前記期間内(平成20年2月21日から平成23年2月16日まで)に商品「歯列矯正用ワイヤー」について本件商標を使用していたということができない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁及び口頭審理における陳述並びに上申書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第53号証(枝番号を含む)を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人は、本件商標を出願し登録を受けたメディカ社の代表取締役を務めていた。平成17年8月、同社の事業縮小に伴い、同社より商標権の移転を受け、現在に至っている。メディカ社の事業は、オーティカ社が引継ぎ、被請求人は、顧問として同社の事業に参画し、現在に至っている。
(2)被請求人から使用許諾を受けているオーティカ社(乙第19号証ないし乙第21号証)は、本件審判の請求の登録(平成23年2月18日)前3年以内に、本件商標をその指定商品中の「歯列矯正用ワイヤー」に使用している。
ア 乙第2号証は、オーティカ社が本件商標を付して販売している商品の包装箱及び商品の写真であって、これらは、平成23年3月10日に、オーティカ社内で、商標権者により撮影されたものである。
乙第2号証の1は、「FORESTADENT」(右肩部に○R記号)が表された一面、乙第2号証の2は、「TATANOL(右肩部に○R記号)-SUPERELASTIC S」と表された他の一面、乙第2号証の3は、これら両面を開いた状態、乙第2号証の4は、商標表示面の拡大、乙第2号証の5は、本件商標、乙第2号証の6は、商品の写真である。
以上により、本件商標がその指定商品に含まれる歯列矯正用ワイヤーに付されていることが示されている。
イ 乙第3号証は、オーティカ社により、本件商標を付して販売されている他の商品の包装箱及び商品の写真であって、これらは、平成23年3月10日に、オーティカ社内で、商標権者により撮影されたものである。
乙第3号証の1は、「FORESTADENT」が表された包装箱、乙第3号証の2は、「TATANOL SUPERELASTICS」と表示部の拡大、乙第3号証の3は、さらに商標表示面の拡大、乙第3号証の4は、商品を一部取り出した裏面を示している。
以上により、本件商標が歯列矯正用ワイヤーIPK(1パック)の包装に付されていることが証明されている。
ウ 商品の販売を示す取引書類
(ア)乙第4号証は、2008年(平成20年)2月26日、オーティカ社が、東京都台東区の歯科あてに、本件商標を付した品番207-0835、コートを入れたインチが、.014で、UP(maxilliary:上あご用)を1PK(1パック)16,800円で販売したことを示す納品書(控)である。この納品に対応する請求は、2008年3月20日付け請求書のとおり、納品の日付(08222)、伝票番号(2866)、商品名、数量、単価、金額が同一である。
ここで、上記納品書(控)、請求書に示される品番207-0835、コートを入れたインチが.014、UP(maxilliary:上あご用)とあり、これは、乙12商品リストに記載されたうち、1段目の商品で、Order No.の左側、maxilliary、上あご用商品の品番207-0835があり、インチ、価格も一致することから、これが乙12商品であり、乙第2号証の1と同一であって、当該他の面には、乙第2号証の2のとおりであり、これには、乙第2号証の3ないし5の拡大写真に示すとおり、「TITANOL(右肩部に○R記号)-SUPERELASTIC S」と、本件商標が表示されている。
明細書、請求書自体には、「TITANOL(右肩部に○R記号)-SUPERELASTIC S」の表示がないとしても、該表示を包装に付した商品の納品、請求を示すものであることが証明されている。
(イ)乙第5号証は、2008年(平成20年)3月18日、オーティカ社が、茨城県水戸市の歯科医院あてに、本件商標を付した品番207-2045、コートを入れたインチが.018×.024で、UP(maxilliary:上あご用)を1PK(1パック)22,000円で販売したことを示す納品書(控)である。この納品に対応する請求について、2008年3月20日付け請求書のとおり、当該納品した費用を請求した。品番207-2045の商品は、乙12商品リストの6段(最下欄)掲載のとおりであり、乙12商品には、乙第2号証のとおり、本件商標が付されていること、当該商品が販売されたことを証明している。
(ウ)乙第6号証は、2008年(平成20年)8月26日、オーティカ社が、さいたま市の歯科クリニックあてに、本件商標を付した品番207-0940、コートを入れたインチが.016で、LW(mandibuar:下あご用)を1PK(1パック)16,800円で販売したことを示す納品書(控)である。この納品に対応する請求について、2008年9月20日付け請求書のとおり請求している。品番207-0940の商品は、乙12商品リストの2段掲載のとおりであり、乙12商品には、乙第2号証のとおり、本件商標が付されている。本件商標を付した商品の販売を証明している。
(エ)乙第7号証ないし乙第11号証は、乙第4号証ないし乙第6号証と同様、本件商標を付して販売された歯列矯正用ワイヤーの納品書(控)、請求書である。
乙第7号証ないし乙第11号証の納品日、販売元、オーティカ社、販売先の各歯科医院、卸売業者など、品番、太さ(インチ)、用途(上あご用、下あご用)、価格などについては、乙第4号証ないし乙第6号証と同様に示される。
エ リーフレット
乙第12号証は、オーティカ社の発行、配布に係る歯列矯正用ワイヤーの明細リーフレットである。
乙12商品は、乙第2号証に示される一面の写真と同一であり、当該他の一面に本件商標が付されていることは、乙第2号証によりわかる。
乙12商品リストは、各商品のProfileが表され、uncoated inches(中芯のみの径)、coated inches(中芯とコートを加えた径)、Order No.(品番)として、maxilliary(上あご用)とmandibuar(下あご用)のそれぞれの標準価格(1パック10本入り)が順に記載されている。この表中、Order-No.の下、maxilliary(上あご用)、mandibuar(下あご用)の下部に商品番号(207-・・・)が掲載されている。
オ リーフレットの提示、口頭での取引
乙第18号証は、FORESTADENTのカタログで、歯列矯正用ワイヤーが掲載されている。歯列矯正用ワイヤーに関する広告に本件商標が付されたリーフレットを顧客に展示している。
歯列矯正用ワイヤーは、歯科医師向けの医療用機械器具に属する商品であって、オーティカ社の営業社員により、個別に訪問し、電話、メール、FAXなどにより個別に注文を受け、取引を行なう。これらの取引において、オーティカ社の営業社員と購入者である歯科医師等は、本件商標を「チタノール」又は「タイタノール」と発音して、口頭で取引を行っている(乙第1号証)。
(3)販売に必要な許認可の取得について
ア 乙第13号証は、オーティカ社が歯列矯正用ワイヤーを販売するための医療用具承認を示す資料である。歯列矯正用ワイヤーについて、禁忌・禁止、形状・構造及び原理等、使用目的、効能又は効果、操作方法又は使用方法等、使用上の注意等の詳細が示されている。
イ 乙第14号証は、オーティカ社が、この種医療機械器具の販売に必要な許可、承認を得ていることを示す東京都からの第二種医療機器製造販売業許可証(写し)である。
ウ 乙第15号証は、財団法人電気安全環境研究所からの認証書の写し、乙第16号証は、当該申請書の一部の写しである。
エ 乙第17号証は、平成23年3月10日に、オーティカ社内で、商標権者により撮影されたオーティカ社の入口付近、受付付近、応接室、応接室内の掲示を示す写真である。
(4)使用許諾について
上記のとおり、オーティカ社は、歯列矯正用ワイヤーについて、本件商標
を使用している。同社の使用は、商標権者の許諾を基礎とするものであって、商標権者は、同社のために独占的な商標使用権を2009年1月1日ないし2009年12月31日(乙第19号証)、2010年1月1日ないし2010年12月31日(乙第20号証)、2011年1月1日ないし2011年12月31日(乙第21号証)において許諾している。
(5)登録商標と使用商標の同一性
乙第2号証の2における「TATANOL(右肩部に○R記号)-SUPERELASTIC S」の表示、乙第3号証の2における「TITANOL SUPERELASTICS」の表示が、本件商標の使用を構成し、これらが本件商標と同一性を有することはいうまでもない。独立した一の要素として、自他商品・役務識別標識たる「TITANOL」の使用であることにほかならない。
登録表示(○R記号)を伴った表示が登録商標の使用を示していること(乙第22号証)、他の要素が結合していても、一の自他商品・役務識別標識として、登録商標が表示されている場合は、当該登録商標の使用があるとされること(乙第23号証、乙第24号証)は、これら審決例における判断においても示されるとおりである。
(6)以上のとおり、被請求人から使用許諾を受けているオーティカ社は、本件商標を、その指定商品である「医療用機械機具」の範ちゅうに属する使用商品(歯列矯正用ワイヤー)について、本件審判の請求の登録前3年以内に使用していた事実が証明されている。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項に該当するものではない。
2 口頭審理(口頭審理陳述要領書)における陳述
(1)請求人は、乙第19号証ないし乙第21号証の商標使用許諾契約書について、既に登録されているのに「商標登録出願中」と記載していること、登録番号を登録出願番号と記載していること、指定商品:TITANOLとしていて商品の一般名を記載していないことを指摘するが、必ずしも専門的知識を有しない当事者間で作成、締結された商標使用許諾契約であって、さらに、各契約書は同一の文章で踏襲しているものであって、かかる微細な表現の齟齬をもって、その契約の存在が否定され、あるいは無効とされるものではない。
請求人は、上記各契約書に「独占的商標使用の許諾」なる文言があることをもって、これは専用使用権を許諾したことになるところ、専用使用権の設定登録はされていないとして、専用使用権の設定契約として有効なものではないと反論するが、かかる主張は誤りである。
本件商標の使用許諾契約は、独占的な(通常)使用権であって、専用使用権ではない。被請求人自身、専用使用権であると主張しているものでもない。使用許諾を基礎に、オーティカ社が本件登録商標を使用していると主張しているといっているにすぎない。
使用権の登録がなければ使用許諾の事実を認められないと主張されるのは、商標法の理解に反することであるし、不使用取消審判における審決例において、確立されてきた判断法則にも反する見解である。
(2)乙第2号証は平成23年3月10日付けで被請求人により撮影されたものである。乙第2号証の各写真は、被請求人が本件商標の使用態様を示すべく、その手元にあった商品の包装、内容物を各側面、各拡大により撮影したものであって、その存在、本件商標の表示態様、指定商品への使用を示すためのものである。
請求人は、これには「輸入販売元/株式会社メディカ」とあるところ、同社への販売は2005年10月13日が最後で、以降販売してないとするが、多数の品番に分かれるこの種の商品について、長期間在庫を保持していることは当然である。
(3)請求人は乙第2号証の商品について、乙第4号証ないし乙第11号証での販売実績資料中には、当該品番の商品がないと反論する。
乙第2号証は、本件商標の表示態様、包装の態様、商品の内容を具体的かつ詳細に示すべく、その一例として多数の撮影を行い6枚の写真を提示したものであって、一例として提示したものである。
歯列矯正用ワイヤーについては、10種を超える多数の品番があり、同種商品の代表例として乙第2号証を提示したものであって、その品番全てについて、かかる詳細な写真がなければ使用が示されないというものではない。
乙第2号証の詳細な写真をもって、少なくとも当該商品の存在は証明され、登録商標を付する行為(商標法第2条第1項第1号)、これが譲渡もしくは引き渡しのために展示する行為(同第2号)があったことが乙第1号証の報告書と相まって直接に証明されている。
さらに、被請求人は乙第26号証ないし乙第31号証を追加提出した。この追加提出にかかる乙第26号証ないし乙第31号証の商品の販売実績については、先に提出した乙第4号証ないし乙第11号証に示す納品書(控)に品番が記載され、対応する請求書が発行されていることで証明されている。
そして、追加提出にかかる乙第26号証ないし乙第31号証と乙第2号証について、その一面の全体、他の面の全体が完全に同一、共通であって、唯一相違するのは品番のみであるところから、その詳細は、乙第2号証に示されるとおりであることがわかる。
(4)乙第3号証の商品については、その品番027-935の商品について2009年4月6日、16,800円で販売されたことが乙第7号証納品書(控)により証明され、対応する請求書も乙第7号証として提示されている。請求人の商品の包装のき損のため用いた包装である。
(5)さらに、乙12商品リストに示されるとおり、多数の種類があるところ、サイズの相違、コート有無にすぎない下記品番の商品の販売実績が証明されている(納品書、請求書、納品日、品番、商品・包装を示す写真)。
乙第5号証 2008年3月18日 品番207-2045(乙第31号証)
乙第6号証 2008年8月26日 品番207-0940(乙第30号証)
乙第8号証 2009年5月12日 品番207-1445(乙第29号証)品番207-0945(乙第28号証)品番207-1545(乙第27号証)
乙第9号証 2009年6月1日 品番207-0840(乙第26号証)品番207-1545(乙第27号証)品番207-0840(乙第26号証)品番207-0940(乙第30号証)
乙第11号証 2010年6月9日 品番207-0840(乙第26号証)
(6)乙第12号証のリーフレットにより、乙第2号証の商品と同じ外観、構成が示される上記各品番の商品の販売が証明されている。請求人は、乙第12号証について、不自然とするが、その全体をみても何等不自然なものではない。
(7)請求人は、この種の商品について、許可、認可の必要性を主張し、被請求人の使用権者は、これを得ていないと反論する。
請求人の主張するとおり、乙第14号証ないし乙第16号証は、現時点での許可、認可の取得を示すものであるが、これにより、過去3年以内においても同様、同種の許可認可があったことが合理的に納得できる。
さらに、被請求人は、乙第32号証、乙第33号証を追加提出する。乙第32号証により、オーティカ社が医療機器製造業許可証(有効期間:平成18年8月21日から平成23年8月20日まで)を取得していたことが証明されている。乙第33号証により、オーティカ社が第二種医療機器製造販売業許可証(有効期間:平成17年10月5日から平成22年10月4日まで)を取得していることが証明されている。
さらに、被請求人は、従前からのこの種の許可の取得に関する経緯を示すべく、乙第34号証ないし乙第36号証を提出する。
(8)乙第3号証の商品が乙第12号証のリーフレットの態様からなる商品ではないとする請求人の反論も認められない。
請求人も乙第13号証ないし乙第17号証の成立を認める。請求人もいうとおり、これらの証拠のみをもって、本件商標の使用を直接に示すものではないが、被請求人の使用権者が適法にその商品を販売できることが示されている。
乙第18号証は、請求人も認めるとおり請求人発行に係る商品カタログである。現行のものとしては、請求人の主張する30版を使用している(乙第39号証)。請求人の発行にかかるものであることから、それのみで、被請求人の使用を示す証拠となりうるものではないことは認められるとしても、商品の実物、販売実績を示す取引資料と相まって、具体的な品番で特定される商品について、本件商標を付して、販売したことが示される。
(9)請求人は「本件商品に関する広告に本件商標が付されたリーフレットを顧客に展示している」とする被請求人の主張を否認するが、この使用については、乙第1号証報告書で証明され、これは商標法第2条第2項第8号にいう使用に該当するものである。また、オーティカ社の営業社員による口頭での取引について否定するが、乙第1号証報告書で証明されるとおり、かかる使用があり、当該行為は、商標法第2条第2項第8号の使用に該当する。
(10)乙第3号証の商品について、乙第3号証の1ないし3に示すとおり、上記各品番の商品には、「TITANOL-SUPERELASTICS」と、本件商標「TITANOL」に超弾性体を意味する一般名称、内容表示の用語にすぎない「SUPERELASTICS」が付加されているが、これが本件商標と同一性を有することはいうまでもない。
(11)請求人提出にかかる甲第3号証ないし甲第11号証について、その成立はこれを認める。しかしながら、それに基づく請求人の主張については全て否認する。
(12)使用権者作成にかかる納品書(控)、請求書写し(乙第4号証ないし乙第11号証)の商品の写真を提出する(乙第26号証ないし乙第31号証)。ここで、一部の写真に「SAMPLE」のラペルが添付され、チェック記号が記されているものがあるが、これは、販売予定の商品そのものについて、営業の過程で歯科医に見本として1本のみ提供するなどして、以後そのままでは商品にならないものに事後的に添付し、記したにすぎない。これらは、本件商標を付した商品の販売を示す資料の一部であるにすぎないことを示すべく、被請求人は、さらに同様の納品書(控)、請求書を提出する(乙第42号証ないし乙第45号証)。
(13)オーティカ社の権限を示すべく医療機器製造業許可証(乙第32号証)、第二種医療機器製造販売業許可証(乙第33号証)を提出したが、さらに、指定管理医療機器製造販売認証書(乙第47号証)を提出する。
3 平成24年1月16日付け上申書
(1)乙第47号証「指定管理医療機器製造販売認証書」は、被請求人から許諾を得ている使用権者、オーティカ社が、平成20年2月21日から平成25年2月20日までの5年間「販売名:コーティング・ワイヤー」(現在の販売名:NiTiワイヤー)を日本国内で製造(輸入)販売するに必要な認証を、登録認証機関より受けていたことを示すものである。
ここで、この認証を所定の5年間継続するには、上記認証日より3年以内に、登録認証機関による製造管理及び品質管理に関する中間調査を受ける義務があり(乙第53号証の参考資料1)、この中間調査を受けるには、新規の認証の取得と同様のかなりの費用がかかる事情がある。
医療機器の認証を商品によって複数の登録認証機関に依頼すると度々中間調査を受ける必要が生じ、費用もかさむが、1社に絞れば同類の商品については同時に調査を受けることができ、費用の節約になることがわかってきた。
薬事法は平成17年4月1日に改正施行され、登録認証機関の制度がスタートしたが、同社ではとりあえず3種の商品については乙第47号証に示す認証機関(株式会社ULJapan)に依頼したが、その後、各認証機関について調査、検討した結果、費用その他の要因から先に乙第15号証として提出した認証機関(財団法人電気安全環境研究所)がより適切と判断し、上記認証日から3年以内に要請される平成23年2月20日までの中間調査による多額の費用の発生前に認証機関を変更した。
(2)このため、平成22年11月30日、乙第15号証の認証機関に依頼して、「販売名:NiTiワイヤー」の認証を取得した。中間調査の費用を検討し、相対的に割高となる乙第47号証の機関での中間調査を受けることなく、平成23年2月21日をもって、株式会社ULJapanからの認証を終了させる手続である「認証の整理」を行ったものである。
この「認証の整理」手続は、乙第53号証に添付した参考資料2のとおり、厚生労働省により要求され、その様式も定められている。乙第53号証の参考資料3は、認証整理届書の様式で、その様式中の(注意)第4項により、当該届書には、製造販売認証書の添付、すなわち、認証整理届書に「指定管理医療機器製造販売認証書」原本を添付して返還することが必要とされている。
このため、乙第53号証の参考資料4のとおり、オーティカ社は、平成23年2月21日付けで、認証整理届書を認証機関である株式会社ULJapanに提出し翌日、2月22日付けで受領された。同資料には、株式会社ULJapanの同日付け受領印が捺印されており適正に当該手続がされたことが示されている。
この届書に、厚生労働省の要請による「認証の整理」に沿って、乙第47号証の原本を添付して提出したことにより、乙第47号証の原本はなく、先のロ頭審理において原本を提示できなかったものである。
以上により、「指定管理医療機器製造販売認証書」については、乙第47号証及び乙第15号証により、認証機関である株式会社ULJapan、財団法人電気安全環境研究所により、平成20年2月21日から現在まで、適正に、継続していたことが示されている。
なお、乙第15号証の原本は、オーティカ社が所持している。
(3)乙第47号証の存在、その真正については、当該認証機関である株式会社ULJapanにより証明されている(乙第52号証)。株式会社ULJapan、医療機器部課長により、1.乙第47号証は、同社発行にかかる「指定管理医療機器製造販売認証書」の真正な写しであること、2.当該「指定管理医療機器製造販売認証書」の原本は、平成23年2月22日に同社あてに返還されたこと、3.当該指定管理医療機器製造販売認証は、平成20年2月21日から平成23年2月21日まで有効であったこと、が証明されている。

第4 当審の判断
1 乙各号証について
(1)乙第8号証は、納品書(控)と請求書の写しであり、1枚目の納品書(控)の右上に「伝票No.3769-1」「09年5月12日」「株式会社オーティカ・インターナショナル」、左上に「京都府京都市・・・歯科医院御中」の記載があり、その下の表には、2段目のコード・商品名欄に「207-1445 スーパーエラストコートワイヤー .018×.018UP」、数量欄に「3」、単位欄に「PK」、単価欄に「22,000」、金額欄に「66,000」の記載、3段目のコード・商品名欄に「207-0945 スーパーエラストCOATワイヤー .018LW」、数量欄に「3」、単位欄に「PK」、単価欄に「16,800」、金額欄に「50,400」の記載及び4段目のコード・商品名欄に「207-1545 スーパーエラストコートワイヤー .018×.018LW」、数量欄に「2」、単位欄に「PK」、単価欄に「22,000」、金額欄に「44,000」の記載がある。
3枚目の請求書の右上に「発行日09年5月12日」「株式会社オーティカ・インターナショナル」、左上に「京都府京都市・・・歯科医院御中」の記載があり、その下の表には、3段目の年月日欄に「09 512」、伝票No.欄に「3769」「商品名」欄に「スーパーエラストコートワイヤー .018×.018UP」、数量欄に「3」、単位欄に「PK」、単価欄に「22,000」、金額欄に「66,000」の記載、4段目の年月日欄に「09 512」、伝票No.欄に「3769」、商品名欄に「スーパーエラストCOATワイヤー .018LW」、数量欄に「3」、単位欄に「PK」、単価欄に「16,800」、金額欄に「50,400」の記載、5段目の年月日欄に「09 512」、伝票No.欄に「3769」、商品名欄に「スーパーエラストコートワイヤー .018×.018LW」、数量欄に「2」、単位欄に「PK」、単価欄に「22,000」、金額欄に「44,000」の記載がある。
(2)乙第9号証は、納品書(控)と請求書の写しであり、1枚目の納品書(控)の右上に「伝票No.4096」「09年6月1日」「株式会社オーティカ・インターナショナル」、左上に「京都府京都市・・・歯科医院御中」の記載があり、その下の表には、2段目のコード・商品名欄に「207-1545 スーパーエラストコートワイヤー .018×.018LW」、数量欄に「1」、単位欄に「PK」、単価欄に「22,000」、金額欄に「22,000」の記載がある。
3枚目の請求書の右上に「発行日09年6月20日」「株式会社オーティカ・インターナショナル」、左上に「京都府京都市・・・歯科医院御中」の記載があり、その下の表には、6段目の年月日欄に「09 6 1」、伝票No.欄に「4096」、商品名欄に「スーパーエラストコートワイヤー .018×.018LW」、数量欄に「1」、単位欄に「PK」、単価欄に「22,000」、金額欄に「22,000」の記載がある。
(3)乙第19号証ないし乙第21号証は、2009年1月1日付け、2010年1月1日付け及び2011年1月1日付けの「商標使用許諾契約書」の写しであり、各契約書に「鈴木芳和(以下「甲」という)と、株式会社オーティカ・インターナショナル(以下「乙」という)は、甲の商標につき次のとおり契約を締結する。」の記載、「第1条(独占的商標使用の許諾)甲は、商標登録出願中の本件商標についての独占的使用権を、下記の通り乙に許諾する。乙は、本件商標を付した本3製品を製造し、第三者に販売することができる。・・・本件商標 登録出願番号:3039158号/商品の区分:第10類/指定商品:TITANOL」「2 甲は、実施期間中、テリトリー内で本件商標を本件製品に使用せず、また第三者に対して使用を許諾しないことを約する。」「第3条・・・2 乙は、本件製品以外に、本件商標を付してはならない。」の記載があり、文末には、「甲 鈴木芳和」「乙 株式会社オーティカ・インターナショナル」の記載及びそれぞれの捺印がある。また、2009年1月1日付け契約書の第1条には「・・・実施期間:1年間(自2009年1月1日・至2009年12月31日)」、2010年1月1日付け契約書の第1条には「・・・実施期間:1年間(自2010年1月1日・至2010年12月31日)」、2011年1月1日付け契約書の第1条には「・・・実施期間:1年間(自2011年1月1日・至2012年12月31日)」の記載がある。
(4)乙第27号証は、商品の写真であり、上2つの写真の商品(包装箱)に「TITANOL-SUPERELASTIC S」「.016”×.016”」「.018”×.018”」「207-1545」「10 Stuck/pcs」の記載、下の写真の商品(包装箱)に「製造販売業者の氏名又は名称・・・株式会社オーティカ・インターナショナル」「一般的名称 歯列矯正用ワイヤ」「販売名 コーティング・ワイヤー」「承認番号 20200BZY01120000」の記載がある。
(5)乙第28号証は、商品の写真であり、上2つの写真の商品(包装箱)に「TITANOL-SUPERELASTIC S」「.016”」「.018”」「207-0945」「10 Stuck/pcs」の記載、下の写真の商品(包装箱)に「製造販売業者の氏名又は名称・・・株式会社オーティカ・インターナショナル」「一般的名称 歯列矯正用ワイヤ」「販売名 コーティング・ワイヤー」「承認番号 20200BZY01120000」の記載がある。
(6)乙第29号証は、商品の写真であり、上2つの写真の商品(包装箱)に「TITANOL-SUPERELASTIC S」「.016”×.016”」「.018”×.018”」「207-1445」「10 Stuck/pcs」の記載、下の写真の商品(包装箱)に「製造販売業者の氏名又は名称・・・株式会社オーティカ・インターナショナル」「一般的名称 歯列矯正用ワイヤ」「販売名 コーティング・ワイヤー」「承認番号 20200BZY01120000」の記載がある。
(7)乙第47号証は、「指定管理医療機器 製造販売認証書」の写しであり、それには「平成19年8月20日付けで申請のあった医療機器の製造販売を薬事法(昭和35年法律第145号)第23条の2第1項の規定により、申請のとおり認証する。」「認証番号 20200BZY01120000」「認証年月日 平成20年2月21日」「有効年月日 平成25年2月20日」「製造販売業者 氏名又は名称 株式会社オーティカ・インターナショナル」「一般的名称及びコード 歯列矯正用ワイヤ(コード:16204000)」「販売名 コーティング・ワイヤー」の記載があり、文末には「株式会社ULJapan」の記載及び捺印がある。
(8)乙第52号証は、確認書であり、右上に「平成24年1月5日」「株式会社UL Japan」「医療機器部/認証課」の記載及び署名捺印があり、「指定管理医療機器 製造販売認証書/認証番号 20200BZY01120000」(審決注:「20200BZY0112000」の記載は誤記と認める。)「株式会社オーティカ・インターナショナル殿よりのご要請を受け、以下の通り確認致します。」「1.添付の書面は、当社が発行した証書の真正な写しであることに相違ありません。」「3.上記認証は、平成20年2月21日から平成23年2月21日まで有効であったことに相違ありません。」の記載がある。
そして、乙第47号証と同一と認められる書面が添付されている。
2 前記1によれば、次のとおり認めることができる。
(1)本件商標に係る使用権について
オーティカ社は、商標権者との間で締結した「商標使用許諾契約書」に基づいて、2009年1月1日から2012年12月31日まで本件商標の商標権について独占的使用権の許諾を受けた(上記1(3))。
そして、商標使用許諾契約書の第1条第1項及び同第2項に記載された内容及び本件商標について専用使用権の設定の登録がなされていない(甲第2号証)ことからすれば、オーティカ社は(独占的)通常使用権者とみるのが相当である。
(2)オーティカ社による使用について
ア 指定管理医療機器製造販売に係る認証について
オーティカ社は、認証番号「20200BZY01120000」として平成20年2月21日に「歯列矯正用ワイヤ」について指定管理医療機器製造販売の認証を受け、その有効期間は、同日から同23年2月21日までであった(上記1(7)及び(8))。
イ 使用行為
(ア)乙第8号証の1枚目(納品書(控))の「伝票No.3769-1」「09年5月12日」「株式会社オーティカ・インターナショナル」、表中4段目のコード・商品名「207-1545 スーパーエラストコートワイヤー .018×.018LW」、数量「2」、単位「PK」、単価「22,000」、金額「44,000」の記載と3枚目(請求書)の「株式会社オーティカ・インターナショナル」、表中5段目の年月日「09512」、伝票No.「3769」、商品名「スーパーエラストコートワイヤー .018×.018LW」、数量「2」、単位「PK」、単価「22,000」、金額「44,000」の記載が一致すると認められ、また、それらには、乙第27号証の商品(包装箱)の「.018”×.018”」「207-1545」「株式会社オーティカ・インターナショナル」の記載と一致すると認められる記載が含まれている(上記1(1)及び(4))。
(イ)同様に、乙第8号証の1枚目(納品書(控))の日付、伝票No.及び表中3段目のコード・商品名、数量、単位、単価、金額の記載と3枚目(請求書)の表中4段目の年月日、伝票No.、商品名、数量、単位、単価、金額の記載が一致すると認められ、また、それらには、乙第28号証の商品(包装箱)の「.018”」「207-0945」「株式会社オーティカ・インターナショナル」の記載と一致すると認められる記載が含まれている(上記1(1)及び(5))。
(ウ)同様に、乙第8号証の1枚目(納品書(控))の日付、伝票No.及び表中2段目のコード・商品名、数量、単位、単価、金額の記載と3枚目(請求書)の表中3段目の年月日、伝票No.、商品名、数量、単位、単価、金額の記載が一致すると認められ、また、それらには、乙第29号証の商品(包装箱)の「.018”×.018”」「207-1445」「株式会社オーティカ・インターナショナル」の記載と一致すると認められる記載が含まれている(上記1(1)及び(6))。
(エ)同様に、乙第9号証の1枚目(納品書(控))の「伝票No.4096」「09年6月1日」「株式会社オーティカ・インターナショナル」、表中2段目のコード・商品名、数量、単位、単価、金額の記載と3枚目(請求書)の「株式会社オーティカ・インターナショナル」、表中6段目の年月日、伝票No.、商品名、数量、単位、単価、金額の記載が一致すると認められ、また、それらには、乙第27号証の商品(包装箱)の「.018”×.018”」「207-1545」「株式会社オーティカ・インターナショナル」の記載と一致すると認められる記載が含まれている(上記1(2)及び(4))。
(オ)乙第27号証ないし乙第29号証及び乙第47号証に記載された承認番号及び認証番号は、「20200BZY01120000」で一致している(上記1(4)ないし(7))。
ウ 上記ア及びイからすれば、オーティカ社は、2009年(平成21年)5月21日に乙第27号証ないし乙第29号証の承認番号「20200BZY01120000」の歯列矯正用ワイヤ(以下「使用商品」という。)を、また、2009年(平成21年)6月1日に乙第27号証の承認番号「20200BZY01120000」の歯列矯正用ワイヤ(使用商品)を京都府京都市在の歯科医院に譲渡(商標法第2条第3項第2号)したと推認することができる。
エ 譲渡の時期
上記ウの譲渡の日「平成21年5月21日」及び「平成21年6月1日」は、いずれも本件審判請求の登録(平成23年2月18日)前3年以内である。
オ 使用商品について
本件請求に係る指定商品は「医療用機械器具」であり、使用商品「歯列矯正用ワイヤ」は薬事法第23条の2第1項の規定により、医療機器の製造販売を認証されたものであるから、本件審判の請求に係る指定商品「医療用機械器具」の範ちゅうに属する商品と認められる。
カ 本件商標と使用に係る商標について
(ア)乙第27号証ないし乙第29号証に記載された「TITANOL-SUPERELASTIC S」(「TITANOL」の右肩部に○R記号)の文字は、その構成中の○R記号及び「-」の位置からすれば「TITANOL」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たすものとみるのが自然である。(以下、乙第27号証ないし乙第29号証の「TITANOL」の文字部分を「使用商標」という。)
(イ)本件商標は、上記第1のとおり「TITANOL」の文字からなるものであり、使用商標は、上記(ア)のとおり「TITANOL」の文字からなるものである。
そうとすれば、両者はいずれも「TITANOL」の文字からなるものであるから、使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であること明らかである。
キ してみれば、通常使用権者(オーティカ社)は、本件審判の請求の登録前3年以内に本件審判請求に係る指定商品第10類「医療用機械器具」の範ちゅうに属する商品「歯列矯正用ワイヤ」について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したというべきである。
3 請求人の主張について
請求人は、商標使用許諾契約書はその記載内容からみて、商標権者はオーティカ社に専用使用権を許諾したことになるが、本件商標には専用使用権の登録がされていないから、その契約は有効ではない旨主張する。
確かに、本件商標の商標権には専用使用権の設定の登録がなされていないが、上述のとおり、オーティカ社は(独占的)通常使用権者とみるのが相当であるから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
また、請求人は、乙第27号証ないし乙第29号証に記載された「LOT」の横の部分は、製造年月日に係る情報であるにもかかわらず、それをシールにより隠ぺいしているのは、例えば、乙第4号証ないし乙第11号及び乙第42号証ないし乙第45号証として提出した納品書の日付との整合性がとれなくなるなど被請求人に不利になる状況が起きることを示唆しており、乙第26号証ないし乙第31号証自体に証拠能力があるとはいえない旨主張している。
しかしながら、該シールで隠されていても上記のとおり本件商標の使用について判断できるから、請求人のこの主張は採用する限りでない。
なお、乙第27号証ないし乙第29号証の商品は、請求人が製造した商品であって、請求人がかかる商品を株式会社メディカに販売したのが2005年(平成17年)10月13日が最後であるとしても、それ以降オーティカ社は、在庫を入手したり、同じ商品を第三者から入手することは何ら不自然なことではないから、上記判断に影響しない。
4 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において通常使用権者がその請求に係る指定商品「医療用機械器具」の範ちゅうに属する商品「歯列矯正用ワイヤ」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていることを証明したといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-03-06 
結審通知日 2012-03-09 
審決日 2012-03-21 
出願番号 商願平4-142813 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (010)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 厚子 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 1995-04-28 
登録番号 商標登録第3039158号(T3039158) 
商標の称呼 チタノール、タイタノール 
代理人 谷 征史 
代理人 高橋 康夫 
代理人 藤森 洋介 
代理人 河村 洌 

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