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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z03
管理番号 1259819 
審判番号 取消2010-300940 
総通号数 152 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-08-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-08-31 
確定日 2012-06-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第4586537号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4586537号商標(以下「本件商標」という。)は、「雪花秀」の文字を標準文字により表してなり、平成12年9月11日に登録出願、第3類「せっけん類,薫料,化粧品,歯磨き」を指定商品として平成14年7月19日に設定登録されたものである。
なお、本件商標に関する専用使用権は、平成15年1月22日に「株式会社太平洋」を専用使用権者として設定登録され、その後、平成23年12月22日を受付日として一般承継により「株式会社アモーレパシフィック」に移転された。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中「化粧品,石鹸類」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁並びに上申書及び平成23年7月20日の口頭審理における陳述(口頭審理陳述要領書)において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第23号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが指定商品中「化粧品,石鹸類」について使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、上記指定商品の登録を取り消すべきものである。

2 答弁に対する弁駁並びに上申書及び口頭審理における陳述(口頭審理陳述要領書)
(1)本件商標の使用者について
ア 株式会社太平洋と株式会社アモーレパシフィックについて
(ア)被請求人は、株式会社太平洋(以下「太平洋社」という。)の会社分割により、株式会社アモーレパシフィック(以下「アモーレ社」という。)が設立されたと主張をしている。
しかし、特許法98条2項に「・・・相続その他の一般承継の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければならない。」として、「一般承継による移転登録申請書」を提出することが求められているものであり、本件が一般承継にあたり専用使用権があるとしても、2006年の会社分割から5年も経過した不使用による審判請求がされた時点で、移転登録されていないから、対抗力がなくアモーレ社の使用は実績とすることはできず、被請求人は不使用に該当する。
(イ)また、乙第16号証の会社分割の合意書に記載されている「無形資産」の内容に日本の商標権を含むことの記載が存在しない。さらに、乙第17号証の会社分割により本件商標を譲渡したとの文書は、請求後に作成されたものであり、代表取締役のサインも明らかに相違し、証拠として認められず、また、乙第17号証には移転手続を申請したとも書いているが、会社分割書にも委任状にも個人のサインしかなく、会社印が存在しないので有効とはいえない書類である。
(ウ)韓国の商標登録原簿写しによれば、登録第403126号商標「雪花秀」の商標権は、平成18年(2006年)7月18日に、太平洋社からアモーレ社に法人分割を原因として全部移転しており、上記商標権の実施行為である上記商標を付した化粧品の製造販売事業は、平成18年(2006年)7月18日以前は太平洋社が行い、それ以降はアモーレ社が行っていた事実が明らかである。このことから2006年7月18日以後の資料(乙1ないし乙6)は、本件商標の専用使用権者たる太平洋社の証明ではない。
(エ)太平洋社は、韓国国内で平成18年(2006年)6月から化粧品、石鹸の販売を中止している。被請求人は、本件商標に係る専用使用権について、2011年7月7日に移転申請を行ったとしているが、本件商標の商標登録原簿も、日本での専用使用権者は太平洋社であり、移転前は、アモーレ社は権利者でなく、乙第1号証から乙第11号証は使用の実績とはいえない。
イ アモーレパシフィックジャパン株式会社について
(ア)被請求人は、「アモーレパシフィックジャパン株式会社」(以下「アモーレジャパン社」という。)はアモーレ社の子会社であると主張しているが、提出された証拠(乙7及び乙18)は公的な登記あるいは証書ではなく、証明として採用できない。子会社であれば法務局の公的な資料と株主名簿で証明すべきである。
(イ)乙第12号証(登記簿謄本)にもあるように、アモーレ社は2006年6月7日に設立されたものである。甲第12号証(アモーレパシィフィック:Wikipedia)によれば、アモーレジャパン社は2005年2月7日の設立であって、2006年6月に設立されたアモーレ社の子会社ではなく別の法人であり、乙第7号証と乙第18号証は事実ではない。
(ウ)被請求人は、2011年7月7日に本件の専用使用権の移転手続をしているが、乙第4号証(2011.5.25)の時点では、韓国の輸出側のアモーレ社はまだ専用使用権者ではない。つまり、専用使用権者でないアモーレ社が日本国内の会社アモーレジャパン社に輸出した事になり、専用使用権者の使用の実績にはならない。アモーレジャパン社は太平洋社の子会社である。
(2)商標の使用について
ア 乙第1号証ないし乙第3号証について
被請求人は、本件商標の指定商品についての使用事実として乙第1号証ないし乙第3号証の雑誌を提出しているが、当該証拠は、被請求人と関係ない出版社による韓国旅行の案内であって、韓国で買ったものや、韓国の旅コスメとして韓国国内の案内を日本語で書いているものや、個人の旅の案内であり、被請求人の日本国内の使用事実の広告ではない。証拠にはどこにも専用使用権者の名前が書いてなく、韓国旅行の案内書であり、海外の紹介に過ぎない。販売価格が韓国の貨幣表示のwonであることは、日本では販売(使用)をしていない事が逆に証明できる証拠である。
また、乙第1号証は韓国で買ったもので韓国国内の使用であり、乙第2号証及び乙第3号証は日本未発売と記載されていることからも、乙第1号証ないし乙第3号証は被請求人の広告ではない。
イ 乙第4号証ないし乙第6号証について
(ア)薬事法により、販売名は、厚生労働省へ届けをした名称及びインボイスに記載の商品名と一致することになっている(甲15)が、インボイスと輸入許可書の商品名に本件商標の記載がないということは、輸入商品に本件商標を使用していないということである。さらに、化粧品製造販売届に記載する販売名は、商標を含む表示でなければならず(甲16、甲17)、日本国内での販売はその名称で行わなければならないないが、その表示がないということは、販売目的ではないので不使用である。
(イ)インボイス等の不自然性
a インボイスに必要のない商品のロット番号が記載されているが、ロット番号は普通は記載しないものであり、この記載は不自然である。
b 記載内容が少ないのに、インボイスの1枚目に「as per attached」として、別紙を添付しているのは不自然である。
c 乙第6号証の運送会社の請求書に記載の重量は、請求人が被請求人の商品の実物を購入し、計算した重量と一致してない。本件以外の商品(無償のものであっても)が梱包の中に入っていたとすれば、その旨の記載があるはずである。被請求人は、「amorepacific」という化粧品を日本の百貨店で販売しており、乙第4号証ないし乙第6号証は、「amorepacific」化粧品の輸入時に使用した書類と考えられ、その通関書類を利用し、輸入の実績を装っている。
d インボイスと商品を運送会社に渡すと運送会社が空港及び航空機を決めるのであり、インボイス作成者は航空機の便数を知らないが、インボイスに「102便」と記載されている。
e 乙第22号証(化粧品製造販売届書)に記載の住所と乙第4号証に記載の住所は一致していない。また、乙第22号証に記載の販売名は「ファーストケアセラム」であり、乙第24号証に記載の輸入しようとする品目の名称は「バランシングウォーター」であるのに対し、インボイスには「FIRST CARE SERUM (AD)」及び「Balancing water-AD」と「AD」が付いていて完全に一致していないので通関できないはずである。さらに、乙第22号証及び乙第24号証(製造販売所輸入届書)は、許可日(平成17年6月21日)から5年を過ぎて、有効期限が過ぎているから、これらの届書で乙第4号証の商品を輸入することは不可能である。
ウ 本件商標を使用していないことについて
(ア)日本の薬事法では、商標を入れない製造販売名で輸入届けをすると、商品本体に、その届けの販売名と同じ販売名を表示した全成分のシールを付着しなければならない。乙第24号証(輸入届)の表示(販売名)と同じ商品名の甲第20号証には、「sulwahsoo」という商標を表記しており、「sulwhasoo」は「雪花秀」の韓国語の発音表示であり、本件商標と関係のない使用である。
(イ)アモーレ社は、日本特許庁に平成22年4月10日に「韓方 雪花秀 sulwhasoo」とが一体化した商標を出願(商願2010-27576)している。乙第9号証及び乙第10号証の商品に使用している商標にも赤い「韓方」と「sulwhasoo」が記載されているもので、この商標は前記出願に係る一体化した商標の使用であって、本件商標の使用とは認められないし、本件商標と社会通念上同一の商標の使用とも認められない。被請求人は、本件商標を日本で使用する予定はなかったものである。
(ウ)請求人が原告となり、本件商標を付した商品を並行輸入している会社KIMSCLUBを被告とする本件商標に関連した裁判で被告が2009年11月30日に提出した準備書面2(甲19)において、薬事法関連の法令に基づいた化粧品の成分の許可がされていないためアモーレ社は日本で「雪花秀」の標章の化粧品を販売していない旨の記載がある。アモーレ社は、乙第9号証及び乙第10号証の商品を販売しておらず、現在においても、単に計画しているに過ぎない。
(エ)アモーレジャパン社は、本件商標を入れていない輸入届をしており、本件商標に係る商品の販売をしていない。また、所轄官庁に製造販売名の届けをしても実際に輸入、販売をしない会社もあり、製造販売名の届けをしたことが本件商標の使用とはならず、使用の実績について証明していない。アモーレ社の商品は、薬事法に適合しない成分を含んでおり、日本では販売できない。
(オ)被請求人は、アモーレジャパン社が輸入した商品を販売するためのマーケティング活動を行ったと主張しているが根拠がない。
(3)駆け込み使用について
登録商標を使用していなかったのに、近いうちに不使用の取消審判が請求されることを察知して、商標権者が使用を開始したような場合(駆け込み使用)は、正当な使用とは認められない(商標法第50条第3項)が、被請求人は本件に関連した裁判が東京地裁であることを知っていた。
本件商標の使用は、1)請求前3か月以内であり、2)審判の請求がされることを知った後であり、3)不使用についての正当な理由がない、ことからして駆け込み使用である。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁書、口頭審理における陳述(口頭審理陳述要領書)及び上申書においてその理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第24号証を提出している。
1 本件審判請求が成り立たない理由
本件商標は、専用使用権者であるアモーレ社と同一人視できる同社の日本子会社(アモーレジャパン社)によって、本件審判の予告登録(平成22年9月13日)前3年以内にわが国において取消請求に係る商品に使用されていた。以下、その使用事実を詳述する。

2 本件商標の使用者について
(1)「株式会社太平洋」(太平洋社)と「株式会社アモーレパシフィック」(アモーレ社)との関係について
ア 請求人が弁駁書において主張立証したように、2006年6月7日に、太平洋社が会社分割され、アモーレ社が設立された(乙12)。アモーレ社は化粧品部門を含めて太平洋社の事業を承継し、分割後の新しい株式会社太平洋が持株会社となった。
イ アモーレ社への専用使用権の移転
会社分割も合併による一般承継と同じく包括承継の性質を持っており、権利義務が当たり前に引き継がれるのが原則である(乙13及び乙14参照)。会社分割の効果は韓国法においても同じであり、韓国商法では、会社分割の場合には、新規設立会社又は存続会社が会社分割の報告書又は会社分割の合意社にしたがって元の会社の権利及び債務を引き継ぐとなっている(韓国商法第530条の10)(乙15)。
太平洋社は、金融委員会に会社分割の報告書を提出して、化粧品、食品等の製造及び販売の事業を同社から分割し、2006年6月1日にアモーレ社を設立した。この分割移転により移転された権利及び資産の中には工業所有権の無形資産も含まれている(乙16)。
このように、本件専用使用権は太平洋社の会社分割に伴い、アモーレ社に移転された。
商標法においては、合併による一般承継について専用使用権の移転は登録しない場合にも効力が発生すると規定しているが(商標法第30条第4項で準用する特許法第98条第1項第2号)、会社分割においても包括承継されるので、同様に解すべきである。
アモーレ社は、当初誤って、本件商標について、専用使用権者の名義を名称変更により同社名義としたが、2011年7月7日に譲渡証書(乙17)を提出し、移転手続をとった(審決注:名称変更による専用使用権者の表示(名称)の変更の登録は、錯誤によるものとして、その後抹消され、また、上記譲渡による移転手続も手続不備により登録されていない。そして、前記「第1」に記載のとおり、本件の専用使用権者については、一般承継による移転が平成23年12月22日を受付日として登録されている。)。
以上のことから、専用使用権者により本件商標が使用されていたことが立証された。
ウ アモーレ社への黙示の使用許諾ないしは黙示の通常使用権の移転
仮に、移転の登録がされなかったことを理由に、専用使用権がアモーレ社に移転されないと解しても、太平洋社が、アモーレ社に専用使用権を移転する意思表示をしている以上、アモーレ社への黙示の使用許諾ないし黙示の通常使用権の移転がされたと解すべきである。
アモーレ社も本件商標を使用する権原が許諾ないしは移転されなければ化粧品の事業を継承した意味がなく、太平洋社の化粧品事業を継承するに際して、当然アモーレ社に本件商標を使用する権原を許諾ないしは移転したものと解される。
(2)アモーレ社とアモーレジャパン社との関係について
アモーレジャパン社がアモーレ社の子会社であることを立証するため、同社の「2010アモーレパシフィック持続性レポート」の抜粋(乙18)を提出する。海外事業部の欄(79頁)に、「JAPAN AMOREPACIFIC JAPAN CO.,LTD」と、乙第7号証に記載されたアモーレジャパン社の英文名称が記載されており、乙第7号証及び乙第18号証により、アモーレジャパン社がアモーレ社の子会社であることが立証できる。

3 商標の使用について
(1)商品の広告
本件商標が使用された化粧品、せっけんの広告が、以下の雑誌に掲載された。
乙第1号証 eclat(株式会社集英社、2008年3月1日発行)
乙第2号証 BOAO(株式会社マガジンハウス、2008年10月1 1日発行)
乙第3号証 VAGUE(コンドナストパブリケーションズジャパン、 2008年8月1日発行)
(2)本件商標が使用された商品の輸入ないしは引き渡し
専用使用権者は、2010年5月5日に日本の子会社であるアモーレジャパン社宛に、本件商標が使用された化粧品を輸出した。すなわち、専用使用権者と一体のものといえるアモーレジャパン社が輸入した。上記事実を立証するため、2010年5月25日付けコマーシャルインボイスの写し及びパッケージングリストの写し(乙4)、輸入業者の請求書の写し(乙6)並びに輸入許可通知書の写し(乙5)を提出する。
そして、輸入された商品に本件商標が使用されたことを示すため、当該商品の容器の写真を提出する(乙8ないし乙10)。容器の底部のロット番号及び容器中の商品名の記載から、当該写真の商品が輸入された商品であることが確認できる。2010年5月25日に上記商品の輸入が許可され、同28日にアモーレジャパン社に引き渡された。
(3)輸入後の商品の取り扱い
日本子会社のアモーレジャパン社は、乙第4号証により輸入した商品の販売のためのマーケティング活動を行い、その結果、株式会社集英社(以下「集英社」という。)に本件商標が使用された「ファーストセラム」を35個販売した。当該商品は2011年2月28日に納品するように集英社から発注され(乙19)、代金は2011年3月31日にアモーレジャパン社の口座に振り込まれた(乙20)。集英社は当該商品を同社発行の雑誌「マキア2011年4月号」で通信販売した(乙21)。
雑誌に掲載された「ファーストケアセラム」は乙第10号証の商品であり、乙第4号証のインボイスに述べられた商品が集英社に販売されたのは明らかである。
乙第4号証の商品は日本国内で販売する意図の下に輸入され、現実に販売されたものである。
(4)乙第4号証の商品の輸入・販売についての所轄官庁からの承認
アモーレジャパン社は、平成17(2005)年9月13日に、ファーストケアセラムをはじめとするいくつかの化粧品について、薬事法の定めるところにより、化粧品製造販売届出書を東京都に対して行った(乙22)。
薬食審査発第0331015号(平成17年3月31日)において、前記届出書の販売名欄には商標を必ずしも記載する必要の記載はなく(「商標」を明記すべき旨の記述は全くない。)、商品の普通名称を記載することにより申請は受理される(乙23)。薬事法は人の健康、生命を守ることをその趣旨としており、商標よりもどのような商品であるかを消費者が認識しやすいことが重要である。
同年9月14日にアモーレジャパン社は厚生労働省関東信越厚生局に製造販売用化粧品輸入届出書を提出した(乙24)。化粧品製造販売届出の商品と輸入される商品との確認を行えるように、化粧品製造販売届出書の販売名と製造販売用化粧品輸入届出書の輸入しようとする品目の名称とは一致することが義務付けられており、化粧品製造販売届出書に商標が記載されなかった以上、製造販売用化粧品輸入届出書にも商標は記載されていない。これらの届出書は一旦提出されると永久に有効である。
以上のとおり、乙第4号証の商品の輸入・販売について所轄官庁から承認を得ている。
(5)化粧品の輸入に関しインボイスに商品名(商標)を記載しないことが取引上一般に行われていることについて
ア 化粧品の輸入に関してインボイスに商標を表示することは法律上義務付けられておらず、また、一般にも行われていないものと思慮する。
乙第4号証の商品に関しては、普通名称で輸入の届出をした以上、輸入関係のインボイスには商品の普通名称を記載しなければならず、インボイスに商標が記載されていないことが当該商標の使用を否定するものとはなり得ない。
イ 商品の輸入にあたっては、化粧品製造販売届出書を提出し、その後、厚生労働大臣(厚生労働省関東信越厚生局)に製造販売用化粧品輸入届出書を提出する必要がある。
輸入しようとした商品の名称は製造販売届のものと一致する必要があり、一方、化粧品製造販売届出書には必ずしも商標を記載する必要がない。
請求人は、製造販売届には他社が商標権を有することが明白な商標を用いないこととされていることをもって、商標を記載しなければならないと述べているが、これは製造販売届出における名称が他人の登録商標と同一であってはならないとのことであって、商標の記載を義務付けたものではない。

4 まとめ
以上述べたことから、本件商標が本件請求に係る商品について、本件審判請求の予告登録前3年以内に専用使用権者によって使用されていたことが客観的に証明されており、本件商標の登録は取消を免れることが出来る。
よって、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 本件商標に係る専用使用権者について
(1)本件商標の商標登録原簿の記載に徴すれば、平成15年1月22日に「存続期間満了(平成24年7月19日)まで」を期間として「大韓民国ソウル特別市龍山区漢江路2街181番地 国籍 大韓民国 株式会社太平洋」に対しての専用使用権が設定登録され、その後、同23年12月22日を受付日として「大韓民国ソウル特別市龍山区漢江路2街181番地 国籍 大韓民国 株式会社アモーレパシフィック」に一般承継による専用使用権の移転の登録がされているものである。
そして、前記移転は、2006年6月7日に、株式会社太平洋(太平洋社)が会社分割され、株式会社アモーレパシフィック(アモーレ社)が設立された(乙12)ことによるものであると認められ、該会社分割により本件専用使用権はアモーレ社に移転されたものというべきである。
(2)この点に関し、請求人は、特許法第98条第2項により相続その他の一般承継においても移転登録申請書の提出が求められており、本件が一般承継にあたり専用使用権があるとしても、2006年の会社分割から5年も経過した審判請求がされた時点で、移転登録がされていないので対抗力がない旨、及び分割の合意書(乙16)の無形資産の記載では日本の商標権を含むことの記載が存在しない旨主張している。
確かに、相続その他の一般承継の場合には遅滞なく移転登録申請書を届け出ることが求められてはいるが、一般承継の場合には登録をしなくても移転の効果が生ずるものであり、前記(1)のとおり、2006年6月7日に上記の会社分割がされたことからすれば、申請が遅れたことの誹りは免れないとしても、それをもって対抗力がないということはできない。また、会社分割報告書(乙16)によれば、太平洋社は、化粧品、食品等の製造及び販売の事業をアモーレ社に分割し、分割により移転される権利及び資産である無形資産には工業所有権(産業財産権)が含まれているものと認められるものであるから、請求人の上記主張は採用することができない。

2 本件商標の使用について
(1)被請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 乙第4号証は、アモーレ社がアモーレジャパン社宛てに発行した2010年5月25日付の「COMMERCIAL INVOICE」及び「PACKING LIST」の写しと認められるところ、いずれも梱包番号が「1?6」と記載され、また、「Goods description」欄には「”AS PER ATTACHED”」の記載があり、別紙が添付されている。そして、別紙には、「ITEM NO. DESCRIPTIONS」として「111170117 BALANCING WATER-AD(08)125ML」、「111170136 BALANCING EMULSION-AD(08)125ML」及び「111170151 FIRST CARE SERUM(AD)」と記載され、それぞれに対応して「LOT NO.」欄に「A83980」、「A84067」又は「A83799」と記載されている。上記「111170117 BALANCING WATER-AD(08)125ML」等の下段には「COSMETICS」と記載されている。なお、上記「BALANCING WATER」(化粧水)、「BALANCING EMULSION」(乳液)及び「FIRST CARE SERUM」(美容液)は、いずれも化粧品の範疇に属する商品ある。
また、上記書類には、「Departure date」として「may.26,2010」の記載があることから、上記記載商品が2010年5月26日に発送されたものといえる。
イ 乙第5号証は、東京税関成田航空貨物出張所長の発行に係る2010年5月27日付の「輸入許可通知書」の写しと認められるところ、輸入者としてアモーレジャパン社が、仕出人としてアモーレ社がそれぞれ記載されているほか、品名欄に「BEAUTY OR MAKE-UP PREPARATIONS,N.E.S.」と記載されている。また、積載機名として記載された「OZ0102/26MAY」は、上記「COMMERCIAL INVOICE」及び「PACKING LIST」の「Vessel/flight」欄の記載と一致する。
ウ 乙第6号証は、日本通運株式会社がアモーレジャパン社宛てに発行した2010年5月28日付の「請求書(輸入)」の写しと認められるところ、品名欄に「COSMETICS」と記載されているほか、申告番号欄に記載された「2010/05/27」及び「10923597630」は、乙第5号証の輸入許可通知書に記載された申告年月日及び申告番号と一致する。
エ 乙第8号証ないし乙第10号証は、3種類の化粧品の容器を撮影した写真と認められるところ、いずれの容器も、その前面には、上部に本件商標と社会通念上同一といえる「雪花秀」の文字が縦書きで表示され、下方に「Sulwhasoo」の文字が横書きで表示されており、さらに、内容物たる化粧品の種類に応じて「BALANCING WATER」、「BALANCING EMAULSION」又は「FIRST CARE SERUM」の文字が併記されている。また、各容器の底面には、「20100507」及び「A83980」、「20100429」及び「A84067」、又は「20100504」及び「A83799」の各記号が付されている。
上記各記号の「20100507」は2010年5月7日を、「20100429」は2010年4月29日を、「20100504」は2010年5月4日をそれぞれ意味するものとみるのが自然である。また、「A83980」、「A84067」及び「A83799」の各記号は、乙第4号証の「COMMERCIAL INVOICE」及び「PACKING LIST」に記載された「LOT NO.」と一致する。
オ 乙第19号証ないし乙第21号証によれば、本件商標と社会通念上同一の商標といえる商標を使用した化粧品(ファーストケアセラム)が、2011年2月28日にアモーレジャパン社から集英社に納品され、該化粧品が同社発行の雑誌「マキア2011年4月号」で通信販売されたことが推認できる。なお、該取引は本件審判請求の予告登録後に行われたものであるから、本件商標の使用の証明ということはできない。また、乙第19号証の発注納品書には「2009/10/1」の日付けが記載されているが、当該期日に商取引がされたものとは認められない。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、乙第4号証ないし乙第6号証及び乙第8号証ないし乙第10号証からは、本件商標と社会通念上同一といえる商標を付した商品「化粧品」が、アモーレ社からアモーレジャパン社に宛てて2010年5月26日に発送され、同月27日に輸入許可され、同月28日にアモーレジャパン社によって受領(輸入)されたものとみるのが自然である。
なお、アモーレジャパン社がアモーレ社の日本法人であることは、乙第7号証及び乙第18号証の海外事業部の日本に関する記載及び英文表記から推認できるものである。
そうすると、本件商標と社会通念上同一の商標は、専用使用権者であるアモーレ社の日本法人であるアモーレジャパン社によって、本件審判の請求の登録(平成22年9月15日)前3年以内に、請求に係る指定商品中の「化粧品」について使用されていたものというべきである。
そして、アモーレジャパン社は、アモーレ社の日本法人と認められることからすれば、アモーレジャパン社は、口頭か黙示的かは明らかではないものの、専用使用権者であるアモーレ社から本件商標についての使用を許諾されたもの、すなわち、通常使用権者であると認めるのが相当である。

3 請求人の主張について
(1)アモーレジャパン社について
請求人は、「アモーレジャパン社は、太平洋社の分割より前に日本に存在していた太平洋社の日本法人(子会社)であって、アモーレ社の子会社ではない。」旨主張している。
しかしながら、アモーレジャパン社が太平洋社の子会社として設立されたものであるとしても、太平洋社の会社分割によりアモーレ社が設立されたものであるから、アモーレジャパン社はアモーレ社の子会社であるとみて差し支えのないものである。
(2)インボイス等の記載について
請求人は、ロット番号の記載、商品名の記載及び別紙の使用、本件商標の記載がないこと、通関記録等の記載の重量と実物の重量の相違等を挙げ、インボイス等の記載が不自然であること及び乙第4号証ないし乙第6号証は、別の商標である「amorepacific」化粧品の輸入時に使用した書類であり、本件商品に関するものでない旨主張している。
しかしながら、仮に貿易書類にロット番号の記載が必要のないものであるとしても、記載されていることが直ちに不自然とまではいえないものであり、また、同様に輸入に係る品物の数が少ないからといって別紙の使用が不自然ということはできない。
さらに、請求人は、商品名の記載については、製造販売用輸入届出書の品目の名称及び製造販売届の販売名と一致させる必要があり、例えば「AD」の文字の差があるから同一の名称とはいえないと述べているが、請求人提出に係る甲第16号証の製造販売届の記載上の注意の(2)の「販売名」欄の、「製品の販売名を記載すること。なお、『シリーズ商品』(色調又は香調を表す部分を除く販売名が同じであり、色調又は香調以外の性状が著しく変わらないもの)を1製品として届け出る場合は、色番号、色名、香名等の色又は香りの識別に関する部分を除いたものを記載すること。」の記載からすれば、「AD」の文字の違いをもって直ちに相違するとは断定できない。なお、乙第4号証の別紙及び乙第8号証ないし乙第10号証の使用商品の写真に記載された「BALANCING WATER」、「BALANCING EMULSION」、「FIRST CARE SERUM」の各文字は、製造販売用化粧品輸入届出書(乙24)の品目の名称及び化粧品製造販売届(乙22)の販売名と一致するものである。
また、甲第16号証の「販売名」欄の(g)の「他社が商標権を有することが明白な名称を用いないこと。」の記載は「他社の商標は用いてはならない。」ことを規定しているものであり、商標の使用を求められているものではない。
そして、通関記録等の記載の重量と実物の重量の相違についても、請求人は個別の商品の重量に個数をかけたにすぎず、その重量が、それらを6個に梱包した総重量と相違するからといって直ちに偽造とまでは断定できない。
そして、仮に「amorepacific」商標を使用した化粧品が輸入され販売されているとしても、そのことが直ちに乙第4号証ないし乙第6号証がその化粧品の通関書類とはいえず、その証拠も示されていない。
(3)日本国内での商品の販売について
請求人は、別件裁判の書証(準備書面2:甲19)の「薬事法関連の法令に基づいた化粧品の成分の許可がされていないためアモーレ社は日本で『雪花秀』の標章の化粧品を販売していない」旨の記載をもって、「雪花秀」の標章を付した化粧品が日本国内で販売されていない旨及びアモーレジャパン社の輸入は販売目的ではない旨、主張している。
しかしながら、前記別件裁判の書証の記載は、2009年11月30日当時の状況についてのものであり、本件商品の輸入時である2010年5月25日時点においても同様の状況であったかどうかは明らかではなく、その証拠も示されていない。また、予告登録後とはいえ、本件商標が付された化粧品が実際に販売された事実が認められることからすれば、「輸入は販売目的ではない」とする請求人の主張は採用できない。
(4)本件商標と使用商標の同一性について
請求人は、使用商標は本件商標と社会通念上同一の商標とはいえない旨述べているが、該写真には商品の容器である瓶の中央に「雪花秀」文字が顕著に表され、該部分が外観上も「韓方」や「Sulwhasoo」の部分とは分離して認識されるものであるから、該使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標というべきであり、請求人の主張する別件登録商標の使用といえるとしても、本件商標の使用ではないということはできない。
したがって、請求人の前記主張は採用することができない。
(5)駆け込み使用について
請求人は、乙第4号証ないし乙第11号証は、いわゆる駆け込み使用の証拠でしかない旨主張するので、以下、この点について検討する。
ア 商標法第50条第1項の規定に基づく商標登録の取消審判については、その審判の請求前3月から請求の登録の日までの間に、当該商標が使用された場合であって、当該商標の使用がその審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明したときは、当該商標の使用には該当しない(同条第3項)。
イ これを本件についてみるに、本件審判の請求日は平成22年8月31日であり、その請求の登録日が平成22年9月15日であることは、本件商標の登録原簿の記載から明らかであるから、商標法第50条第3項に規定するいわゆる駆け込み使用に当たる期間は、平成22年8月31日前3月である同年5月31日から請求の登録日である同年9月15日までの期間ということになる。
しかして、本件商標が通常使用権者によって使用されたのは、前示のとおり、平成22年5月25日ないし同月28日であるから、上記駆け込み使用の期間には該当しない。
したがって、請求人の主張するその余の理由について検討するまでもなく、通常使用権者による本件商標の使用は、商標法第50条第3項に規定するいわゆる駆け込み使用に該当するものではない。

4 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品中の「化粧品」について、本件商標と社会通念上同一の範囲と認められる商標を、通常使用権者が使用していたことを証明したものと認めることができる。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その請求に係る指定商品についての登録を取り消すべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-04-27 
結審通知日 2012-05-02 
審決日 2012-05-17 
出願番号 商願2000-99226(T2000-99226) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Z03)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 大塚 順子 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 前山 るり子
内山 進
登録日 2002-07-19 
登録番号 商標登録第4586537号(T4586537) 
商標の称呼 セッカシュー、セツカシュー、セッカ 
代理人 青木 篤 
代理人 田島 壽 
代理人 原 隆 
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