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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X09252841
管理番号 1258395 
異議申立番号 異議2011-900419 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-11-17 
確定日 2012-05-31 
異議申立件数
事件の表示 登録第5436764号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5436764号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5436764号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成23年3月8日に登録出願され、第9類「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」、第28類「おもちゃ,人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具」及び第41類「電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,書籍の製作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),写真の撮影」を指定商品又は指定役務として、同年7月26日に登録査定、同年9月9日に設定登録されたものである。

2 申立ての理由の概要
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標が、以下のとおり商標法第4条第1項第19号に該当するものである旨主張している。
(1)本件商標は、「上海アリス幻樂団」の文字からなる商標であるところ、「上海アリス幻樂団」とは、弾幕系シューティングゲーム及びそれらを中心としたゲーム、音楽、マンガ、小説などの作品を制作する日本の同人サークルの名称としてよく知られている(甲3)。なお、かかる同人サークルの作品では、「東方プロジェクト」や、「東方…」のようないわゆる「東方シリーズ」が中心となる(甲2及び甲3)。
(2)本号の「他人」とされる要件としては、周知商標の使用者が何某であることまで判明しなくとも、周知商標を使用して製造・販売する商品又は提供する役務の出所が特定の者であることが分かれば足りる(甲4)。
そして、同人サークル「上海アリス幻樂団」についても、甲第5号証として提出する種々のゲームや漫画等の商品に著作者として記載されているように、かかる商品の出所が「上海アリス幻樂団」であることが分かる。
したがって、「上海アリス幻樂団」は、本号にいう「他人」に該当する。
(3)同サークルでは、1996年頃からPC-98版のゲームを発表後、現在でも非常に多くのゲームや音楽を制作し続けている(甲5)。これらの著作権者は全て「上海アリス幻樂団」となっている。
また、「上海アリス幻樂団」の名は、ウィキペディアにも詳しく紹介されている(甲3)。また、インターネット検索サイトYahoo及びGoogleにて「上海アリス幻樂団」を検索した場合には、トップページのみならず最初の100件は全て、かかる「上海アリス幻樂団」に関するサイトがヒットする(甲6)。
「上海アリス幻樂団」は、同人サークルであるため、サークル内では原作となる「東方プロジェクト」関連作品のいわゆる二次創作物を自由に制作し、発表することが許されている。
そして、そのサークルのメンバーは、非常に多くなってきており、運営者側ではその個々人を把握しきれていない。よって、本件商標の出願人も同サークルにおけるメンバーで、いわゆる二次創作作品を制作したことがあった可能性もある。
しかしながら、本件商標の出願人は、「東方プロジェクト」の制作元である同人サークル「上海アリス幻樂団」の代表者でも関係者でもなく、またこれらから商標登録出願に関し許可を受けているものでもない。
上記のとおり、「上海アリス幻樂団」は、著名な商標である。しかしながら、「上海アリス幻樂団」の商標は本件商標の出願時において「上海アリス幻樂団」によって出願されていなかった。
(4)本件商標に係る商標権者は、仮に同人サークルとは関連性のない人物であったとしても、前記したとおり「上海アリス幻樂団」は著名であり、「上海アリス幻樂団」の存在を知っていたものと考える。
それは、「上海アリス幻樂団」だけでなく、その制作作品群の名称である「東方プロジェクト」についても同日付けで商標出願(商願2011-020144)している事実からも推認できる。
そこで、本件商標の登録は、この著名商標「上海アリス幻樂団」の先取り的な登録であるものと推認する。
そうしてみると、本件商標に係る商標権者が偶然にこの2件の商標を採択・使用したとは認め難く、本件商標はフリーライドによるものであり、商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」があったものと考える。
また、「上海アリス幻樂団」が著名であるために、本件商標の出願日より約3か月後には、本業界関連の情報サイトに、「上海アリス幻樂団」が権原なき第三者によって出願された事実が話題になっている(甲7)。この資料によっても、「上海アリス幻樂団」は著名であり、本件商標は権原なき第三者によってフリーライドされたものであることがうかがえる。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当し登録を受けることができないものであるから、本件商標の登録は取り消されるべきものである。

3 当審の判断
(1)「上海アリス幻樂団」と「東方Project」について
「ウィキペディアフリー百科事典」によれば、「上海アリス幻樂団」の文字は、弾幕系シューティングゲーム及びそれらを中心としたゲーム、漫画、小説などを作品群を総称する「東方Project」を制作している日本の同人サークルの名称であって、ZUN(ずん)一人で運営されており、ZUNの本名と申立人が一致していることが認められる(甲2及び甲3)
してみれば、「上海アリス幻樂団」は、ZUNすなわち、申立人の運営する同人サークルの名称とみて差し支えないということができる。
(2)著名性について
甲第5号証は、その1枚目ないし10枚目まで音楽CDの収納ケースの写真(裏面と表面の2葉)であるが、「上海アリス幻樂団」の文字は、音楽CDの収納ケース内のラベルにおいて、大きく表示された題号などとともに、同文字よりは小さい文字で、例えば「上海アリス幻樂団が奏でる、暗く激しい音楽」(1枚目「蓬莱人形」の表面)のように記述的なサブタイトル中で使用されたり、あるいは「Copyright」の文字とともに使用されている。
11枚目ないし26枚目までの弾幕系シューティングゲームCDの収納ケースの写真(裏面と表面の2葉)であるが、「上海アリス幻樂団」の文字は、CD収納ケース内のラベル(裏面)において、題号よりは小さい「(C)opyright」の文字とともに使用されている(11枚目ないし14枚目、21枚目ないし24枚目、26枚目)。
27枚目から46枚目までは、小説、漫画、書籍の表紙、奥付の写しであるが、題号、原作者、発行者、発行日などの表示とともに、○付きの“C”の文字を冠した「上海アリス幻樂団」の文字が表示されていること(28枚目ないし34枚目、41枚目ないし44枚目及び46枚目)、付録CDには題号とともに○付きの“C”の文字を冠した「上海アリス幻樂団」の文字が表示がされていること(30、32、34、42、44枚目)が認められる。
以上の認定した事実によれば、「上海アリス幻樂団」の文字は、申立人の主催する同人サークルの名称であって、録音済みの音楽CD、弾幕系シューティングゲーム及び小説、漫画、書籍の奥付に、あるいは付録として添付された音楽CDに、表示された「上海アリス幻樂団」の文字は、著者、発行者とは別に、いずれも著作権を表示する態様(“copyright”又は○付き“C”等の文字)とともに使用されている事実が認められるが、いずれも商品の出所を表示する商標の使用とは認識し得ない表示態様であり、また、書籍等の付録として添付された「録音済みの音楽CD」は、商品に附属する商品であって独立した商標法上の商品とはいえないものである。
そうとすれば、本件全証拠によっても、使用商標は、録音済みの音楽CD、弾幕系シューティングゲーム、小説等の商品に申立人によって使用されている事実は認められるとしても、商標の使用とは認識し得ない表示態様によるものであったり、あるいは商標法上の商品とはいえないものに使用するものであるから、使用商標は周知、著名性を獲得し得るものとはいえない。仮に商標としての使用であるとしても、これらの商品の販売実績、流通経路や宣伝、広告の方法、期間が明らかでなく、使用商標が周知、著名性を獲得しているものとは認められない。
したがって、申立人あるいは申立人以外の者が「上海アリス幻樂団」の文字からなる商標を商品又は役務に使用し、周知性を獲得している事実は認められない。
(3)以上のとおりであるから、本件商標は、他人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者おいて広く認識されている商標に該当するものではないから、他の要件に言及するまでもなく商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(4)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたと認められないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(本件商標)


異議決定日 2012-05-22 
出願番号 商願2011-20143(T2011-20143) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (X09252841)
最終処分 維持  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
鈴木 修
登録日 2011-09-09 
登録番号 商標登録第5436764号(T5436764) 
権利者 金子 浩二
商標の称呼 シャンハイアリスゲンガクダン、シャンハイアリス、アリスゲンガクダン 
代理人 橘 和之 

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