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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X0925
管理番号 1258391 
異議申立番号 異議2011-900420 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-11-17 
確定日 2012-05-24 
異議申立件数
事件の表示 登録第5436765号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5436765号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5436765号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成23年3月8日に登録出願され、第9類「業務用テレビゲーム機,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子出版物」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同年7月26日に登録査定、同年9月9日に設定登録されたものである。

2 申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標が、以下のとおり、商標法第4条第1項第19号に該当するものである旨主張している。
(1)本件商標は、「東方プロジェクト」の文字からなる商標であるところ、「東方プロジェクト」とは、日本の同人サークル「上海アリス幻楽団」によって制作された弾幕系シューティングゲーム、及びそれらを中心としたゲーム、音楽、マンガ、小説などの作品群の総称としてよく知られている(甲2及び甲3)。なお、東方プロジェクトの作品を便宜的に「東方シリーズ」と称することもある。
(2)本号の「他人」とされる要件としては、周知商標の使用者が何某であることまで判明しなくとも、周知商標を使用して製造・販売する商品又は提供する役務の出所が特定の者であることが分かれば足りる(甲4)。
そして、同人サークル「上海アリス幻楽団」は、甲第5号証として提出する種々のゲームや漫画等の商品に著作者として記載されているように、かかる商品の出所が「上海アリス幻楽団」であることが分かる。
したがって、「上海アリス幻楽団」は、本号にいう「他人」に該当する。
(3)同サークルでは、1996年頃からPC-98版のゲームを発表後、現在でも非常に多くのゲームや音楽を制作し続けている(甲5)。これらの作品群には「東方プロジェクト」又は「東方・・」と記載されている。「上海アリス幻楽団」の制作物であることを示していて、かつ、「東方・・」と記載された作品は、「東方プロジェクト」に関連する「東方シリーズ」である。
また、「東方プロジェクト」の名は、ウィキペディアにも詳しく紹介され(甲第2号証)、また、インターネット検索サイトyahoo及びGoogleにて「東方プロジェクト」を検索した場合には、トップページのみならず最初の100件は全て、かかる「上海アリス幻楽団」の「東方プロジェクト」に関するサイトがヒットする(甲6)。
さらに、「東方プロジェクト」関連のイベントが、日本国内だけでなく、海外においても多数実施されている(甲7)から、「東方プロジェクト」は、本号にいう「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標」に該当する。
(4)本件商標に係る商標権者は、「東方プロジェクト」の制作元である同人サークル「上海アリス幻楽団」の代表者でも関係者でもなく、またこれらから商標登録出願に関し許可を受けているものでもない。
そうしてみると、本件商標の登録は、著名商標「東方プロジェクト」の先取り的な登録であるものと推認する。
本件商標の商標権者が仮に同人サークルに所属している人物ではないとしても、上述したとおり「東方プロジェクト」は著名であり、「東方プロジェクト」の存在を知っていたものと考える。
それは、「上海アリス幻楽団」の商標についても同日付けで商標出願(商願2011-020143)している事実からも推認できる。
本件商標に係る商標権者が偶然にこの2件の商標を採択・使用したとは認め難く、本件商標はフリーライドによるものであり、商標法第4条第1項第19号に規定する「不正の目的」があったものと考える。
また、本業界関連の情報サイトに、「東方プロジェクト」が権原なき第三者によって出願された事実が話題になっている(甲8)。この資料によっても、「東方プロジェクト」は著名であり、本件商標は権原なき第三者によってフリーライドされたものであることがうかがえる。
(5)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当し登録を受けることができないものであるから、本件商標の登録は取り消されるべきものである。

3 当審の判断
(1)「東方Project」と「上海アリス幻樂団」について
「ウィキペディアフリー百科事典」によれば、「東方Project」の文字は、同人サークル「上海アリス幻樂団」によって制作された弾幕系シューティングゲームを中心としたゲーム、音楽、書籍などの作品群の総称であること及び「上海アリス幻樂団」の文字は、同人ゲーム・同人音楽を制作している日本の同人サークルの名称であって、ZUN(ずん)一人で運営されており、ZUNの本名と申立人が一致していることが認められる(甲2及び甲3)。
そして、「上海アリス幻樂団」は、ZUN、すなわち、申立人とみて差し支えないというべきである。
(2)著名性について
申立人は、「東方プロジェクト」の文字が、同人サークル「上海アリス幻樂団」の制作に係る「東方プロジェクト」の作品群について使用する商標として著名である旨主張して、甲第5号証ないし7号証を提出している。
しかしながら、同人サークル「上海アリス幻樂団」の制作に係る「東方プロジェクト」の作品群として挙げるゲーム、音楽、漫画等(甲5)には、「東方幻想郷」「東方萃夢想」等、「東方」の文字を冠した「東方○○」の文字の記載があり、その中の一部に「東方プロジェクト」あるいは「東方Project」の文字が散見されるとしても、当該文字が、個々の商品の出所を表示する商標として使用しているものとは認められない。
また、インターネット検索サイトにおいて、「上海アリス幻楽団」の「東方プロジェクト」に関するサイトが相当数ヒットし(甲6)、さらに、「東方プロジェクト」関連のイベントも実施されていること(甲7)はうかがえる。
しかしながら、これらからは、上記同様に、「東方プロジェクト」あるいは「東方Project」の文字が散見されるとしても、当該文字が、個々の商品の出所を表示する商標として使用しているものとは認められない。
その他、提出された証拠からは、「東方プロジェクト」の文字が、「上海アリス幻楽団」あるいは申立人に係るゲーム、音楽、漫画等の商品について使用する商標として、需要者の間に広く認識されていることを示すものは見当たらない。
そうとすると、「東方プロジェクト」の文字からなる本件商標は、本件商標の登録出願時において、「上海アリス幻樂団」あるいは申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標とは認められない。
(3)申立人の主な主張について
申立人は、「東方プロジェクトの作品を便宜的に『東方シリーズ』と称することもある。」とか「『東方・・』と記載された作品は、『東方プロジェクト』に関連する『東方シリーズ』である。」ことを前提に、「東方プロジェクト」がゲーム等に使用する著名な商標である旨主張するところ、「東方プロジェクト」の文字は、前記したとおり、ゲーム、音楽、漫画等の作品を総称する語であって、個々の作品には、「東方○○」の記載がされ「東方プロジェクト」の文字を商標として使用しているものではないから、係る申立人の主張は採用することはできない。
(4)したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標に該当するものではないから、他の要件に言及するまでもなく、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(5)結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号の規定に違反してされたと認められないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(本件商標)


異議決定日 2012-05-14 
出願番号 商願2011-20144(T2011-20144) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (X0925)
最終処分 維持  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
鈴木 修
登録日 2011-09-09 
登録番号 商標登録第5436765号(T5436765) 
権利者 金子 浩二
商標の称呼 トーホープロジェクト 
代理人 橘 和之 

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