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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X12
管理番号 1258386 
異議申立番号 異議2011-900027 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-07-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-01-25 
確定日 2012-05-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5373507号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5373507号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5373507号商標(以下「本件商標」という。)は、「DROP STOP」の欧文字を書してなり、平成22年5月26日に登録出願、第12類「船舶の部品及び附属品(「エアクッション艇」を除く。),航空機の部品及び附属品,鉄道車輛の部品及び附属品,自動車の部品及び附属品」を指定商品として、同年11月11日に登録査定、同年12月3日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要点)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、以下の(1)ないし(3)の理由を述べ、証拠として甲第1号証ないし甲第36号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件商標権者は、米国の登録商標「Drop Stop」(米国商標登録第77328330号)が、米国及び日本国内において「自動車の部品及び付属品」である「車内用の落下防止用クッション」について、米国において周知・著名であることを知りながら、「Drop Stop」若しくは「DROP STOP」の文字からなる商標が日本において商標登録されていないことを奇貨とし、剽窃的に、「自動車の部品及び付属品」等を指定商品として本願商標を出願し登録を受けたもので、米国の登録商標「Drop Stop」の権利者である米国法人Drop Stop LLC社の日本国内への参入を阻止しているものと推認し得る。
そうすると、本件商標の登録を認めることは、公正な取引秩序を乱し、社会一般の道徳観念ないしは国際信義に反し、公の秩序を害するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反してなされたものであるから取り消されるべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
米国の登録商標「Drop Stop」は、「車内用の落下防止用クッション」について、米国内において周知・著名商標であることが我が国の需要者によって認識されているところ、本件商標権者は、当該米国周知・著名商標に類似する商標「DROP STOP」を指定商品「自動車の部品及び付属品」(第12類)等について出願し、登録を受けたもので、例えば「車内用の落下防止用クッション」に本願商標が使用された場合、需要者は出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであるから取り消されるべきである。
(3)商標法第4条第1項第19号について
本件商標権者は、米国の登録商標「Drop Stop」が、米国において「自動車の部品及び付属品」である「車内用の落下防止用クッション」について周知・著名であることを知りながら、「Drop Stop」、若しくは「DROP STOP」の文字からなる商標が日本において商標登録されていないことを奇貨とし、剽窃的に、「自動車の部品及び付属品」等を指定商品として本願商標を出願し、米国の権利者であるDrop Stop LLC社の日本国内への参入を阻止する不正の目的を推認し得るものである。
してみれば、商標権者による本件商標の指定商品に関する使用は、申立人の業務に係る商品を示す周知、著名な商標と類似する商標を不正の目的をもって使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反してなされたものであるから取り消されるべきである。

第3 取消理由通知
当審において、商標権者に対し、平成23年10月25日付け取消理由通知書をもって通知した本件商標の取消理由は、要旨次のとおりである。
1 引用商標の周知性について
申立人の主張及びその提出された証拠によれば、以下の事実が認められる。
米国の3大自動車雑誌のうちで販売数が最も多いとされる「CAR AND DRIVER」の2009年10月号の表紙に「DROP STOP」として、申立人の商品が掲載され(甲3)、他の同年発行の雑誌「NATIONAL Examiner」「Mustang」「Car&Travel」にも紹介記事が掲載されている(甲6、甲20、甲21)。
また、2009年に米国の「ABCニュース」や「CBSニュース」において、「DROP STOP」商標を表示した申立人の商品が紹介されている(甲22ないし甲24)。
さらに、申立人の商品について、インターネット通販サイト「QVC」を通じての売上数をみると、2010年に「37,869」、2011年で「40,978」であり、また、申立人のホームページを通じての売上数は、それぞれ、2009年「1,210」、2010年に「3,107」、2011年「2,695」である(甲26ないし甲28)。
加えて、日本においても、2010年2月16日のインターネット情報において、カー用品の需要者の一部で申立人の商品が話題にされていること等が認められる(甲30)。
そして、甲第33号証は、申立人の商品であって、「カー用品(自動車に関する用品)」としての商品(車内用の落下防止用クッション)について、「DROP」と「STOP」の欧文字を八角形の図形内に二段に表した商標(以下「引用商標」という。)が使用されている。
以上を総合してみれば、本件商標の登録出願時及び査定時には、すでに、引用商標は、申立人商品の出所を表示する商標として、少なくとも米国におけるカー用品の需要者の間で広く知られるに至っていたというのが相当である。
2 本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、前記第1のとおり、「DROP STOP」の文字からなるのに対し、申立人に係る商品の引用商標は、「DROP」と「STOP」の文字を八角形の図形内に二段に表したものであって、これは、「DROP STOP」の一連の文字として理解されるものであるから、両商標は、その構成文字が同じ文字であって、「ドロップストップ」の称呼を共通にする類似の商標と判断されるものである。
3 不正の目的について
申立人提出の証拠に徴すれば、カー用品である申立人に係る商品と商標権者の商品とは、その形状や色がほぼ同一のものと認められ、かつ、その商品の「取扱説明書」を併せみれば、用途及び機能を同じくするものと認め得るものである(甲30ないし甲34、甲36)。
しかして、両商品は、カー用品という取引範囲が相当に限定的な商品であるにも拘わらず、ほぼ同一の形状、形態で、同じ用途、同じ機能のものと認められるところ、その商標の採択に際して、申立人に係る商品の商標と同一の文字構成からなる商標で偶然に一致したとみるのは、社会通念に照らして自然なものとはいい難いものである。
そうすると、本件商標は、申立人に係る引用商標と無関係にたまたま偶然、登録出願し、商標登録されたものであるとは到底認められない。
してみれば、本件商標は、申立人に係る引用商標が、我が国において商標登録されていないことを奇貨として、申立人の商品の名声に便乗して利益を得るため、あるいは、申立人の商品が我が国へ参入するのを妨げるためなど、不正の目的をもって、商標登録を得て使用をするものに該当すると判断せざるを得ないものである。
4 まとめ
したがって、本件商標は、外国において需要者の間で広く認識された商標と類似し、かつ、不正の目的をもって使用するものと認められるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものである。

第4 商標権者の意見
1 本件登録異議の申立ては、不適法なものであり、却下されるべきものである。
すなわち、本件商標は、平成22年12月3日付で登録がなされたものであり、これに対して申立人は、平成23年1月25日付で商標登録異議申立書(以下「申立書」という。)を提出し、同年6月9日付で手続補正書が提出された。
しかし、上記申立理由の補正書の提出期限は、在外者において3月延長の同年4月25日であり、本件手続補正書の提出は法定期間を過ぎたもので不適法であり、本件申立書は却下されるべきものである。
2 上記のとおり、本件申立書は却下されるべきものであるが、答弁を与えられた機会なので、商標権者の意見を陳述する。
(1)申立人は、「本件商標権者は、米国商標『Drop Stop』(米国商標登録第77328330号)が、米国及び日本国内において『自動車の部品及び付属品』である『車内用の落下防止用クッション』について、米国において周知・著名であることを知りながら、『Drop Stop』若しくは『DROP STOP』の英文字からなる商標が日本において商標登録されていないことを奇貨として、剽窃的に、『自動車の部品及び付属品』等を指定商品として本件商標を出願して登録を受けたもので、米国商標『Drop Stop』(米国商標登録第77328330号)の登録権利者である米国法人Drop Stop LLC社の日本国内への参入を阻止しているものと推認し得る」と主張している。
また、「『車内用の落下防止用クッション』は本件商標が使用された場合、需要者は出所について混同するおそれがある。」と主張している。
さらに、「引用商標権者の日本国内への参入を阻止する不正の目的を推認し得る。」と主張している。
(2)しかし、申立人の一方的な推認にすぎなく、商標権者が本件商標を出願した経過は次のとおりである。
すなわち、本件商品について、商標権者は、出願前に中国での見本市で、中国の業者から本件商品を英語圏に輸出しているので、日本でも販売しないか、「DROP STOP」の商標を使用してもかまわない、との商談を受けた。
そこで、本件商標権者は、帰国後、念のために、本件代理人に、本件商品が特許・実用新案の侵害のおそれ、商標の使用、登録の可否の調査を依願した。その調査の結果、特許・実用新案について、添付の乙第1号証ないし乙第4号証のとおり、自動車座席におけるシートの隙間への落下防止具については公知状態で、また古いものはすでに権利期限等が終了したりして侵害のおそれがないが、登録は難しいものであった。
また、商標については、乙第5号証、乙第6号証のとおり、当該商品区分には「ドロップ ストップ」と同一または類似の商標は全く存在しなかった。本件商標権者は、テレビショッピングを介して販売するので、できれば商標登録できるなら取得しておきたいと思い、出願をして登録された経緯のものである。
(3)このように、申立人の主張する「本件商標権者は、米国商標『Drop Stop』が、『車内用の落下防止用クッション』について、米国において周知・著名であることを知りながら、日本において商標登録されていないことを奇貨として、剽窃的に、本件商標を出願して登録を受けたもので、米国の登録商標の権利者である米国法人Drop Stop LLC社の日本国内への参入を阻止している」旨など、商標権者は全く眼中になかったものである。
上記のとおり全く眼中になかったし、米国商標「Drop Stop」が国内で使用状態であることなど知らなかったし、その販売状態について全く知らなかったもので、「車内用の落下防止用クッション」は本件商標が使用された場合、需要者は出所について混同するおそれがあることなど、全く考えてもいなかったし、出所混同などのクレームを聞いていない。
さらに、上記のとおりなので、「引用商標権者の日本国内への参入を阻止する不正の目的」など、全く考えていなかったものである。
(4)申立人は、引用商標の周知性・著名性について証拠を掲示して主張しているが、上記したとおり、本件商標権者は、出願当時全く見聞していなく、本件申立書の通知を受けて知った位である。本件商標権者は、申立人の米国商標「Drop Stop」について、「車内用の落下防止用クッション」が、米国において周知・著名であることを知らなかったし、奇貨として、剽窃的に、出願をして登録を受け、米国法人Drop Stop LLC社の日本国内への参入を阻止することなど全く眼中になかったものである。
3 まとめ
以上のとおり、本件登録異議の申立ては却下されるべきものであり、また、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第15号、同第19号に該当するものではない。

第5 当審の判断
1 平成23年11月18日付け意見書における「本件登録異議の申立ての却下」について
商標権者は、本件登録異議の申立てに係る当該申立書の補正について、その補正ができる期間を徒過した手続補正書の提出がなされたものであって、不適法なものであり、本件登録異議の申立ては却下されるべきものである、との主張をしているものであるから、この点についてまず検討する。
本件商標は、平成22年12月3日に設定登録がなされ、同23年1月11日に商標掲載公報が発行されたものである。また、本件申立書は、同年1月25日に提出され、その手続補正書は、同年6月9日にその郵便物が郵便局に受領されたものであることから、同日に特許庁に到達したものとみなされるものである(特許法第19条、商標法第77条)。
そして、申立書の補正については、商標法第43条の4第2項において、「前項の規定により提出した登録異議申立書の補正は、その要旨を変更するものであつてはならない。ただし、第43条の2に規定する期間の経過後30日を経過するまでに前項第3号に掲げる事項についてする補正については、この限りでない。」と規定されている。
そうとすれば、本件申立書の補正ができる提出期間は、同法第43条の2に規定する商標公報が発行された日の経過後30日に、在外者である場合の60日間の延長が認められるものであって、同年6月9日までがその提出期限となる。
してみれば、当該申立書に係る手続補正書の提出日は、同年6月9日であるから、その補正は適法になされたものと認められるものである。
したがって、商標権者の上記主張には、理由がない。

2 前記第3の取消理由は、妥当なものであり、これに対する商標権者の意見は、以下の理由により採用できない。
(1)商標権者は、本件商標を出願した経過について、「商標権者は出願前に中国での見本市で、中国の業者から本件商品を英語圏に輸出しているので、日本でも販売しないか、『DROP STOP』の商標を使用してもかまわない、との商談を受けた。」旨述べている。
しかしながら、中国の業者が如何なる者であるのか不明であるし、また、この業者が輸出している商品を商標権者が輸入し、販売しているのであれば、その輸入に係る商品は、申立人に係る商品とその形状や色がほぼ同一のものと認められる商品であって、商品名も「DROP STOP」であるというのであるから、中国の業者が輸出している商品は、申立人の商品のコピー商品である可能性が非常に高いといわざるを得ない。
(2)商標権者は、「帰国後、念のために、本件代理人に、本件商品が特許・実用新案の侵害のおそれ、商標の使用、登録の可否の調査を依願した。・・・商標については、当該商品区分には『ドロップ ストップ』と同一または類似の商標は全く存在しなかった。本件商標権者は、テレビショッピングを介して販売するので、できれば商標登録できるなら取得しておきたいと思い、出願をして登録された」旨述べている。
しかしながら、申立人の商標が登録商標として未登録であったとしても、インターネットによる商標の使用の調査は、非常に容易であるところ、商標権者がその調査をしたことについては何ら述べるところがない。
もし、仮に、インターネットによる商標の使用の調査をすれば、申立人のホームページや申立人の商品が簡単に発見できたことは想像するに難くないところである。
また、申立人の証拠によれば、国内の第三者が申立人の商品について掲載しているインターネット情報も確認できるものである(甲30、甲31)。
そうとすれば、これから商品を販売しようとするにあたって、上記で述べている商標の使用の調査は不十分であって、インターネットによる商標の使用の調査を行わずに、申立人の商標を知らなかったというのは、不自然であるといわざるを得ない。
(3)申立人は、「本件商標権者は、出願当時全く見聞していなく、本件申立書の通知を受けて知った位である。本件商標権者は、申立人の米国の登録商標『Drop Stop』について、『車内用の落下防止用クッション』が、米国において周知・著名であることを知らなかったし、奇貨として、剽窃的に、出願をして登録を受け、米国法人Drop Stop LLC社の日本国内への参入を阻止することなど全く眼中になかったものである。」旨述べている。
しかしながら、上記(1)及び(2)のとおり、中国の業者が輸出している商品は、申立人の商品のコピー商品である可能性が非常に高いうえ、商標権者は、このような商品を輸入し、販売するために、出願したものといわざるを得ない。
また、インターネットによる商標の使用の調査を行わずに、申立人の商標を知らなかったというのは、不自然であるといわざるを得ないから、その主張の信憑性は甚だ疑わしものである。
してみれば、上記申立人の主張を採用することはできない。

3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲
異議決定日 2011-12-27 
出願番号 商願2010-41382(T2010-41382) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (X12)
最終処分 取消  
前審関与審査官 原田 信彦 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2010-12-03 
登録番号 商標登録第5373507号(T5373507) 
権利者 株式会社グッドニュース
商標の称呼 ドロップストップ 
代理人 森本 邦章 
代理人 アクシス国際特許業務法人 

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