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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない Y414344
審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効としない Y414344
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y414344
審判 全部無効 商15条1項2号条約違反など 無効としない Y414344
管理番号 1258264 
審判番号 無効2011-890025 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-03-31 
確定日 2012-05-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5089059号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
登録第5089059号商標(以下「本件商標」という。)は、「Kinaesthetics」及び「キネステティクス」の文字を上下二段に横書きしてなり、平成18年10月6日に登録出願、第41類「高齢者・障害者等の養護及び介護方法に関する知識の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授,高齢者・障害者等の養護及び介護方法に関する講演会・講習会・セミナーの企画・運営又は開催,その他の講演会・講習会・セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の制作,映画の上映・制作又は配給,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,スポーツの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供,運動用具の貸与,図書の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,写真の撮影,通訳,翻訳,高齢者・障害者等の養護及び介護方法に係る知識の教授に関する情報の提供」、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,高齢者及び障害者の養護・介護施設の提供,高齢者及び障害者の養護・介護施設の紹介,高齢者及び障害者の養護・介護施設に関する情報の提供,飲食物の提供,保育所における乳幼児の保育,老人の養護,病人・老人・その他の社会生活にハンディキャップを有する人の世話及び介護,高齢者及び障害者の養護・介護に関する助言・指導,高齢者及び障害者の養護・介護に関する情報の提供,介護用布団の貸与,介護用マットレスの貸与,タオルの貸与」及び第44類「入浴施設の提供,あん摩・マッサージ及び指圧,カイロプラクティック,きゅう,はり,リフレクソロジー,医業,医療情報の提供,健康診断,栄養の指導,医療用機械器具の貸与,あん摩・マッサージ及び指圧に関する助言・指導,カイロプラクティックに関する助言・指導,リフレクソロジーに関する助言・指導,あん摩・マッサージ及び指圧に関する情報の提供,カイロプラクティックに関する情報の提供,リフレクソロジーに関する情報の提供,歩行補助器・松葉づえの貸与,その他の医療用の補助器具及び矯正器具の貸与」を指定役務として、平成19年9月20日に登録査定、同年11月2日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第65号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第3条第1項第3号及び商標法第4条第1項第16号について
ア 「キネステティクス」の意味
「キネステティクス」(英語表記「Kinaesthetics」)とは、「人が本来備えている身体の「自然な動き」「動きの感覚」を「人と人とのかかわり」(コミュニケーション手段)に応用する概念である。米国の人類学者でありダンサーでもあるフランク=ハッチ(Dr.Frank Hatch、以下「フランク博士」という。)と心理療法士のレニー=マイエッタ(Dr.Lenny Maietta、以下「レニー博士」という。また、フランク博士とレニー博士の二人をあわせて、以下「両博士」という。)が開発した学問である。
この学問は、最初に(1974年頃)重症心身障害児教育に用いられ、1980年ころから認知症や意識障害のある患者とのコミュニケーション手段として看護にも応用されるようになった。キネステティク(Kinaethetik)は運動を意味するkinesisと、感覚を意味するaisthesisのギリシャ語を語源として合成された言葉である。ドイツ、スイス、オーストリアの看護師には広く知られており、ドイツでは約90%の看護学校で基礎教育に取り入れられ、臨床では水平移動や上方移動や側臥位や腹臥位などのポジショニング技術、長座位や端座位などのシーティング技術、その他幅広く移動・移送技術やリハビリテーション、精神ケアなどにキネステティクが応用されている(甲第26号証)。
イ 「キネステティク」と「キネステティクス」の違い
「キネステティク」はドイツ語表記「Kinasthetik」(審決注:「a」の文字にはドイツ語のウムラウトが付いている。以下、ドイツ語表記の場合は同じ。)の片仮名表記で、「キネステティクス」は英語表記「Kinaesthetics」の片仮名表記であり、どちらも同じく前述の意味の語である(甲第29号証、甲第30号証の1、2)。
「キネステティク」又は「キネステティクス」の考案者はアメリカ人であるが、「キネステティク」は最初にドイツで普及したため、ドイツ語表記「Kinasthetik」として1980年代から長い間、ドイツ語圏であるドイツ・スイス・オーストリアで使用されてきた。日本に2000年に最初に紹介された際には、ドイツ語表記「Kinasthetik」に基づき、「キネステティク」として紹介された。「Kinaesthetics」は、「Kinasthetik」のインターナショナル表記としての英語風ドイツ語表記である。語尾を英語風にしてcにし、「学問のs」をつけたものである。その和訳が「キネステティクス」である(甲第32号証の1、2)。
ウ 「キネステティクス」の経緯
1974年頃ドイツで重症心身障害児教育に用いられる
1980年代ドイツ語圏のドイツ・スイス・オーストリアを中心に看護介護領域で発展
1990年代ドイツでPflege Heuteという看護学の教科書に掲載される(甲第1号証)
2000年9月 第2回日本褥瘡学会学術集会の教育講演で宮城大学看護学部の徳永恵子教授が「キネステティク」について紹介。日本の学術の場で、多くの看護師や医師をはじめとする医療職者に「キネステティク」が紹介されたのはこの時が初めてである。教育講演の報告は2001年12月に日本褥瘡学会誌3巻3号に掲載された(甲第1号証)。
その後、次々と看護雑誌や学術誌で紹介。各看護大学や病院施設内外で勉強会が開催され、各医療職者が国内外で学習を積み重ね、複数のトレーナーが来日し、科学研究補助金も研究者らによって獲得されている(甲第2号証ないし甲第27号証、甲第32号証ないし甲第45号証)。
2000年以降、「キネステティク」という言葉は多くの医療職者・教育研究者らに共有され、使用され、学習され、そして現在に至るまで教育・実践的啓発のみならず研究的探求も発展しているのが、日本における「キネステティク」教育の現状である。
エ 「キネステティクス」について
「キネステティク」について、最初に日本へ導入したのは宮城大学の徳永恵子教授であり、10年以上にわたる研究教育啓発活動及び科学研究補助金取得実績等により、宮城大学看護学部は、キネステティク研究教育大学であるとのイメージが全国に定着している。宮城大学には、日本キネステティク研究会の事務局が置かれ(甲第27号証)、「キネステティク」又は「キネステティクス」は商標としてではなく、前述の意味を有する普通名詞として知られている。
「キネステティクス」の英語表記「Kinaesthetics」がインターナショナル表記として欧州を中心として使用されてから、「キネステティクス」は、「キネステティク」とともに、日本に浸透していった。日本に浸透し始めたのは、本件の登録査定日である平成19年9月20日(審決注:平成19年9月28日とあるのは、平成19年9月20日の誤記と認める。)以前の2002年3月頃からである(甲第4号証)。「キネステティクス」の英語表記「Kinaesthetics」は、ドイツでPflege Heuteという看護学の教科書に掲載されている(甲第30号証の1、2、甲第31号証の1、2)。
このため、日本では、本件の登録査定日以前から「キネステティクス」と「キネステティク」とは、全く同じ前述の意味の普通名詞として知られることとなった(甲第1号証ないし甲第27号証、甲第32号証ないし甲第45号証)。
特に、「キネステティクス」は、片仮名表記では比較的長い6音から成る「キネステティク」の文字をすべて含み、語尾の「ス」の有無で異なるのみである。「ス」に対応する語尾の「s」は、「books」、「pencils」のように、英語の名詞の複数形を示す文字として、日本ではよく知られている。
このため、「キネステティクス」及び「キネステティク」を看取又は聴取したとき、「キネステティク」及び「キネステティクス」はその単数形と複数形のように捉えられ、いずれも前述の同じ意味の普通名詞として認識される。そのため論文等を見ても、「キネステティクス、Kinaesthetics」と「キネステティク、Kinaesthetik、Kinasthetik」が同一のものであっても、日本では「キネステティク」のタイトルを多く見ることはごく自然なことであるため、「キネステティク」自体の使用状況は、同時に「キネステティクス」の使用状況と同一とみなされる必要があり、商標としてではなく、既に広く使用されている普通名詞として用いられていると認識される。
また、「イクス」に対応する語尾の「ics」は、英語の語尾に用いられて、「・・・学」の意味をもつことが知られている。このため、「キネステティクス」は、「キネステティク」を学問的に捉えたもので、いずれも前述の同じ意味の普通名詞として認識される。
海外でもオーストリア・リンツであった裁判(2009年6月3日判決)では、「Kinasthetik」の文字は自他役務識別力がなく、その使用は商標の使用に該当しないと判断された(甲第28号証の1、2)。
登録査定日以前に、「キネステティクス」又は「キネステティク」が普通名詞としてタイトルに用いられた文献は、多数存在する(甲第9号証)。いずれも、「キネステティクス」又は「キネステティク」は、商標としてではなく、前述の意味を有する普通名詞として用いられている。
オ 指定役務との関係
本件商標の指定役務である第41類の「高齢者・障害者等の養護及び介護方法に関する知識の教授」、「高齢者・障害者等の養護及び介護方法に関する講演会・講習会・セミナーの企画・運営又は開催」、「高齢者・障害者等の養護及び介護方法に係る知識の教授に関する情報の提供」等や、第43類の「高齢者及び障害者の養護・介護施設の提供」、「高齢者及び障害者の養護・介護施設の紹介」、「高齢者及び障害者の養護・介護施設に関する情報の提供」、「老人の養護、病人・老人・その他の社会生活にハンディキャップを有する人の世話及び介護」、「高齢者及び障害者の養護・介護に関する助言・指導」、「高齢者及び障害者の養護・介護に関する情報の提供」等、第44類の「あん摩・マッサージ及び指圧」、「カイロプラクティック」、「医業」等では、それぞれ、「キネステティク又はキネステティクスについての高齢者・障害者等の養護及び介護方法に関する知識の教授」、「キネステティク又はキネステティクスについての高齢者・障害者等の養護及び介護方法に関する講演会・講習会・セミナーの企画・運営又は開催」、「キネステティク又はキネステティクスについての高齢者・障害者等の養護及び介護方法に係る知識の教授に関する情報の提供」、「キネステティク又はキネステティクスを適用する高齢者及び障害者の養護・介護施設の提供」、「キネステティク又はキネステティクスを適用する高齢者及び障害者の養護・介護施設の紹介」、「キネステティク又はキネステティクスを適用する高齢者及び障害者の養護・介護施設に関する情報の提供」、「キネステティク又はキネステティクスによる老人の養護、病人・老人・その他の社会生活にハンディキャップを有する人の世話及び介護」、「キネステティク又はキネステティクスによる高齢者及び障害者の養護・介護に関する助言・指導」、「キネステティク又はキネステティクスによる高齢者及び障害者の養護・介護に関する情報の提供」等、第44類の「キネステティク又はキネステティクスを適用したあん摩・マッサージ及び指圧」、「キネステティク又はキネステティクスを適用したカイロプラクティック」、「キネステティク又はキネステティクスを適用した医業」等の役務の質、内容のみを表したにすぎない。このため、本件商標は、自他役務識別力を具有せず、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本件商標は、前記役務以外の役務に使用するときは、役務の質、内容の誤認を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当する。仮に、本件商標が自他役務識別力を具有していたとしても、本件商標の「キネステティクス」の文字には、「キネステティク」の文字がすべて含まれ、語尾に「ス」の文字を有するのみの違いのため、本件商標は「キネステティク」に関する役務以外では役務の質、内容の誤認を生じさせるおそれがある。
(2)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標である。
本件商標は、前述のとおり、本件商標の一部の指定役務の質、内容を表す普通名詞であり、独占使用に適さない商標である。仮に、商標登録時点で前述の意味の普通名詞として一般的でなかったとしても、現在は前述の意味の普通名詞として広く知られている。甲第26号証に示すように、「キネステティク」は、看護教育のテキストにも使用されており、甲第27号証に示すようにその研究会も設けられている。
このような普通名詞について商標登録を認めると、学会論文を執筆するうえで表現が制限され、また、「キネステティクス」又は「Kinaesthetics」以外の用語を使用した場合、海外の論文との間で用語の差が生じるため、論文が国際的な評価を受けにくくなる。また、国の研究助成の公募では商業的な論文は対象にならないため、「キネステティクス」に関する研究は補助金を受けられなくなる。さらに、純粋に学問的な論文であるにもかかわらず、商標権者及びその代理店の広告とみなされ、正当な評価を受けにくくなる。日本の学術の発展及び日本の研究力が期待される国際的な発展を鑑みても、「Kinaesthetics」及び「キネステティクス」は普通名称であると認められるにも拘らず、このまま商標としておくことは大きな損失となることは明らかである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第16号又は同法第4条第1項第7号に該当するものであるから、本件商標の登録は、商標法第46条第1項第1号又は同法第46条第1項第5号により無効とされるべきものである。
(4)弁駁の理由
ア 答弁書の理由(2)イについて
被請求人は、「日本では2003年、両博士が2003年来日して自らセミナーを開催したことを契機としてKinaesthetics理論に沿って学習する人たちが増え、2008年中本氏の会社設立により一層積極的な活動が展開されている。」と主張する。
しかしながら、それ以前の2000年8月に開催された第3回日本褥瘡学会総会(京都)教育講演でキネステティク(すなわちキネステティクス)理論・概念が徳永恵子氏により紹介されている。
その2000年8月の学会では、自力で動くことが出来ない寝たきりの人々に発生することが知られている褥瘡の予防と管理に応用が可能な理論であることを取り上げ、理論の紹介と演習を含んだ教育講演として、日本で最初に学術的に取り上げ紹介されている。
学術集会で講演する機会を得られたのは演者である徳永恵子氏が、学会の理事であり、日本の褥瘡医療発展に看護職として貢献してきた実績を踏まえて、看護・介護に広く応用が期待できる新しい理論・概念を紹介する機会を得たのである。
参加者に体位変換のハウツーではないことを理解してもらうために、新しい概念を講演のみで紹介するのではなく、体験を組み込んだ演習が企画され、その企画が出席者に与えた衝撃は大きいものであった。
キネステティク(すなわちキネステティクス)の紹介は、2000年以前から医療用具等輸入販売会社である原田産業(株)が、キネスティク(すなわちキネステティクス)「動きの学習」を学び臨床で応用しているドイツの看護師を日本に招き研修を行っていた事実がある。褥瘡予防用具輸入販売会社であり、製品の宣伝を兼ねての紹介であったために、体位変換方法と誤解される結果を一部招いたことは否めないが、いずれにせよ企業の製品販売プロモーションとして紹介されていたため、全国規模での啓発には当然至っていなかった。
その様な視点からも、当時約2000人の参加が得られた褥瘡医療に携わる医療者の学術集会で最初に紹介されたことの意義は大きく、2003年に両博士の来日(第6回日本褥瘡学会)に伴い学習する人が増えたのではなく、2000年に紹介された学会での教育講演以降の徳永恵子氏らの著作を含めた啓発が、キネステティク(すなわちキネステティクス)を学術用語として医療職者を中心に広く人々に広め、両博士の第6回日本褥瘡学会での講演の機会を作ったのである。
学習する人が増えたとするならば、学習希望者が増加する準備段階として、第3回日本褥瘡学会(京都)という信頼できる学術集会で教育講演として紹介する機会が得られたからであり、2003年以前には両博士はなんら日本での紹介に積極的な働きかけをしてはいなかったのが事実である。
さらに徳永恵子氏らの2001年以降の著作活動による継続した看護職種への情報提供の積み重ねなしには、日本語のできない両博士は第6回日本褥瘡学会(2003年)札幌で講演する機会さえ実現しなかったといえる。
2001年以降の看護系専門誌等での継続的な著作活動や、ドイツからキネステティクトレーナー(すなわちキネステティクストレーナー)の資格を持つ看護師(ハイジ・パウダー・ミスバッハ氏)による日本各地での研修、科学研究費の獲得による研究活動等、学術的な活動により次第に看護者を中心に関心を高めていった。
すなわち、両博士以外の多数の人々の啓発活動やトレーニング啓発活動によってキネステティク(すなわちキネステティクス)は、学術用語として既に一般名称化されていたのである。
啓発活動の中で、キネステティク(すなわちキネステティクス)が両博士により開発された動きの学習を意味する学術用語であり、ドイツ、オーストリア、スイスなどドイツ語圏の看護基礎教育の教科書にコンセプトが明記されていることに加えて、看護職の約90%が基礎教育で学んでいることを徳永氏は2000年に教育講演で紹介し、教育講演内容を論文として投稿し2001年に日本褥瘡学会誌に発表された論文にも記述している。この日本褥瘡学会は、会員数8,289名の学術団体であり、本学会による教育講演及び論文投稿の社会的な啓発としての影響は、甚大であるといえる。
日本では2000年以降、看護専門誌への記事掲載と共にキネステティク(キネステティクス)学習プログラム指導者として認可を得ているドイツのトレーナーによる指導は、2003年の両博士の学習プログラム研修以前に開始されている。
日本でキネステティク(すなわちキネステティクス)学習プログラムにより修了証を得ている看護師は両博士の学習プログラム修了者のみではなく、今日も継続してキネステティク学習プログラムに基づく基礎からアドバンスコース、トレーナーコースプログラムがドイツ人トレーナーにより実施されている。
この事実からも、キネステティクが体位変換方法を表す言葉ではなく、両博士の学習プログラム修了者であり、かつてその同僚であるキネステティクトレーナーによる指導以外には日本ではキネステティク研修修了証は存在しないことは、キネステティクが単なる体立変換方法を示す言葉ではないことの根拠になる。すなわち日本で最初に片仮名で表記されたキネステティクは両博士が特別な使用権利を主張するキネステティクスと同じ学習内容・研修プログラムをも意味する言葉として日本では広く認識されているのである。
2000年以降にキネステティク研修の修了証を得た日本人看護師により、さらなる研鑽と学習プログラムの臨床応用を進めるためにも必要不可欠な学問としての発展に向けて2007年に日本キネステティク研究会が設立された。本研究会は2000年以降、キネステティク(すなわちキネステティクス)の啓発活動を続けた結果、日本を束ねる研究会として2007年に組織化されており、2007年以前にも多数の啓発活動の実績を有している。2007年以後も学術集会を毎年開催し現在に至る地道な歩みを続けてきている。
キネステティクとキネステティクスはドイツやオーストラリアで同じ内容を意味する言葉として、教科書にも明記され、とりわけ看護職には一般に知られている用語であり、日本において商標として登録されていることは、日本におけるキネステティク学習プログラムに基づく研修について、医療職者でも、看護職者でもない両博士が商標を基に看護・介護士を主に対象とした研修ビジネスとして独占することであり、今後の日本においてキネステティク(すなわちキネステティクス)を学問として深化させながら臨床応用へ発展させることにより、本来、貢献することができる人々の健康増進への恩恵や、高齢者を含めた障害者等自力で動くことが困難な人々に対するホリスティックな医療へのパラダイムシフトの可能性を阻害することを危惧せざるをえない。
2000年以後キネステティク(すなわちキネステティクス)についての徳永氏の執筆による単著、あるいは共同著書には、キネステティク(すなわちキネステティクス)が両博士により開発された動きの学習を意味する学術用語であり、ドイツ、オーストリア、スイスなどヨーロッパでは看護の教科書に明記されていることに加えて、基礎教育で看護職の90%が学んでいることが記載されている。
以上のとおり、日本でキネステティクス理論(すなわちキネステティク理論)が普及したのは、両博士に限らず、徳永恵子氏ら多くの研究者の努力によるものである。
イ 答弁書の理由(5)ウについて
被請求人は、「看護のための『Kinasthetik』が広まっていくうちに、両博士の意図するものではなくなった。」と主張し、また、「正しく世界中にキネステティクを広めるために新たに英語風「ドイツ語」表記したものが、「Kinaesthetics」である。そして日本では「Kinaesthetics」を「キネステティクス」と呼ぶように決め、商標登録に勤めた結果が本件商標である。」と主張する。
しかしながら、ドイツ語圏での状況が、両博士の意図するものであろうとなかろうとその理論が、ドイツ語圏ではすでに看護基礎教育でKinaesthetics学習プログラムに基づき指導され、看護・介護に応用されて発展し臨床の場でケアをする者される者の双方に利点をもたらしてきている事実がある。
「Kinaesthetics」を臨床で、動きの支援に応用することによる学問としての発展・進化に貢献することの意味について臨床の最前線でケアに携わる者には理解できる。しかし、両博士は直接に看護・介護に携わる専門家ではないことから、創設者として臨床で応用すること以前の理論に強い思い入れがあることは理解できるが、キネステティクすなわちキネステティクスが今後さらに発展し、進化をつづける可能性を持つ学問であるからこそ、応用の一端が両博士の意図するものではなくなったとしても、臨床で応用することができるように進化したドイツ語圏でのキネステティク(キネステティクス)が日本に紹介されたことを理解する必要がある また、キネステティク(キネステティクス)を実際に、両博士自ら看護・介護職者に教えてきた結果として、看護・介護専門家が自立し、応用し、進化させた分野を理解する必要がある。学術の世界ではどの分野でも起こりうることであり、また、だからといってキネステティク(キネステティクス)の根本的な定義や理論の核となるものが歪められたり、伝達されなくなったということを意味していないことも知る必要がある。実際、キネステティク(キネステティクス)は多数の学術学会や論文に、単に体位変換技術ではないということが記載されている事実がある。
ドイツで1973年に研修プログラムが開始され今日まで40年の歴史を、日本でも40年かける環境をつくろうとしていることはキネステティクのこれまでの発展を生かすことにはならず、むしろ逆行することである。
日本においては、ドイツ語圏での発展した実績に加えて、さらに広く応用が期待される学問として臨床での研究を進めエビデンスを積み重ね、人々の幸福に貢献するために両博士のみにキネステティク研修が独占されることなく、トレーナーの資格を持つ方々による研修が実施できるように、さらにその質を維持する研修システムが営利目的のビジネスとして商標登録により独占されない環境整備が日本に必要なのである。
日本で「Kinaesthetics キネステティクス」の文字が商標登録されていることは、キネステティクまたはキネステティクスの研修をビジネスとして独占することを意味し、学問としての発展を阻害するなにものでもない。
ウ 答弁書の理由(6)エについて
まず、「『Kinasthetik』がヨーロッパだけでなく、世界中に広まる」という箇所は誤りである。世界に広まるにはドイツ語ではなくて、英語の文献が必要である。両博士は英語が母国語であるにも関わらず、ドイツ語はあっても英語の著書はない。
日本での2001年以降に生まれたキネステティク(すなわちキネステティクス)に対する関心の高まりから、世界すなわち日本での(また日本以外の他国も含めた)プロモーションにむけて国際表記を考えたのが「Kinaesthetics」「キネステティクス」への移行である。
「キネセティクス」について、第6回日本褥瘡学会での教育講演における両博士の抄録を、翻訳(澤口裕二氏)による使用であるとしている。しかも英語表記の日本語読みと記述されている。澤口氏は「さあさんのかかってキネステティク」(甲第61号証)の著者であり、両博士のドイツ語テキストを翻訳していることから、両博士の最も身近な日本人理解者であり、サポーター(現在も)であるが、ドイツ語表記から英語表記に変更する際のいきさつ、すなわち、キネステティクもキネステティクスも同じことを意味するとハッチ博士自身が述べているとのやり取りをメールでした事実を自分の著書のなかで説明し、ハッチ博士のメール原文の公開と共に記載している。
キネステティクとして、ドイツ人トレーナーによる研修が既に日本で2000年には実施されていた事実もあり、2000年以降にキネステティクの表記を日本でしているにもかかわらず、創設者である両博士の学習プログラムを差別化する意図があったことが本答弁書に記述されている内容や澤口氏の著書にキネセティクスの記述があることからも容易に推測される。ハッチ博士によるキネステティク教科書の翻訳に関わって依頼、現在もプログレスジャパン(株)の支援者であり、ハッチ博士のプログラムによる研修活動に準じた活動を各地で実施している。
ドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″とその日本語の片仮名読み「キネステティク」、英語″Kinaesthetics″とその日本語の片仮名読み「キネステティクス」との関係は、英語、ドイツ語、日本語の違いに過ぎず、いずれも本質的に全く同じものを指す、同じ学術用語、一般名称である。本質的に同じ学術用語としての一般名称であるものは、英語、ドイツ語、日本語いずれかに表記されても個人や企業が独占する商標として認められるべきではない。
ドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″とその日本語の片仮名読み「キネステティク」、英語″Kinaesthetics″とその日本語の片仮名読み「キネステティクス」はそれぞれが同じものを指す一般名称であることは多くの人々に認識されていた。
甲第63号証及び甲第64号証に示すように、キネステティク及びキネステティクスは、いずれも同じ意味を表す普通名称として知られている。また、Kinasthetik、Kinaesthetik、及びKinaestheticsは、キネステティクまたはキネステティクスの英語表記またはドイツ語表記であり、いずれも同じ意味を表す学術用語である。キネステティク、キネステティクス【Kinasthetik/Kinaesthetik/Kinaesthetics(審決注:Kineastheticsとあるのは、Kinaestheticsの誤記と認める。)】(ギリシャ語kinesis=「動作」、aisthesi=「感覚」からの合成語)は、感覚及び人間の自然な一連の動作に関する理論である。運動及び感覚機能に障害をもつ患者が自分に残された能力を認識し、適切に用いることができるよう、看護師・介護士はハンドリングと動きに関するトレーニングを受け、セミナーやその他、教育課程の名称に広く用いられている。キネステティクス(Kinaesthetics)は、特定の企業、団体または個人が独占する理論またはその教育課程の名称ではない。キネステティクス(Kinaesthetics)は、2006年9月には、日本国内で上記理論と同じ理論を意味する普通名称として、看護及び介護の現場ならびに看護または介護の教育界において広く知られていたものである。これらの事実は、全国各地で広く知られており、明らかな事実である。
ドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″キネステティクと英語″Kinaesthetics″キネステティクスが同じものであることは、それぞれの定義や説明文が同じで内容を記載していることからも明らかである。ドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″キネステティクと英語″Kinaesthetics″キネステティクスは、いずれも、インタラクション、機能解剖、人の動き、人の機能、環境の6つの概念から成ること、これらの概念を応用した学習過程、教育過程であることもそれぞれ本質的に同じ内容が書かれている。
ハッチ博士自身、ドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″キネステティクと英語″Kinaesthetics″キネステティクスに関する説明を、インタラクション、機能解剖、人の動き、人の機能、環境の6つの概念、これらの概念を応用した学習過程、教育過程という同じ内容を記述し、時にはドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″キネステティク、時には英語″Kinaesthetics″キネステティクスを混合して用いてもいる(甲第60号証)。これは、ハッチ博士自身が複数の書物に自らドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″キネステティクと英語″Kinaesthetics″キネステティクスが同じものであると書いているとおり、ドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″キネステティクと英語″Kinaesthetics″キネステティクスが同じものであると認識していることを明確に示している(甲第50号証)。また、同時にドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″キネステティクが一般名称であるように、英語″Kinaesthetics″キネステティクスも一般名称であることを広く社会に示している。
「ドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″キネステティク」と「英語″Kinaesthetics″キネステティクス」を異なるものであるとか、異なる教育過程であるとして商標を登録することは、できない。それぞれがどう違うのか、どのように違う教育過程なのかなどといった識別力を人々が行うこともアンケート結果からも当然困難であり、識別力欠如及び叙述のみによる表現の点から商標の機能を果たさない商標登録は無効とされるべきである。
「ドイツ語″Kinasthetik″″Kinaesthetik″キネステティク」「英語″Kinaesthetics″キネステティクス」は一般名称であり、個人や企業が独占する商標ではありえない。教育過程の差別化を図りたいのであれば、マークをともなった商標の形態:文字による商標によってのみそれが可能となるといえる。被請求人独自の教育課程は、被請求人の登録商標第5055434号に示される特定のロゴにより識別されるもので、標準的な自体の「Kinaesthetics キネステティクス」の文字では識別されるものではない。
Kinaestheticsは英語表記かそれとも英語風表記であるか、キネセティクスとキネステティクスは同じであるか違うかに関し、英語文献の表記がすべてKinaestheticsで記載されていることを英語表記と皆が理解しており、Pflege Heuteに国際表記と記載されていることから国際表記は英語表記であると多くの専門家が理解しているにすぎない。Kinasthetik Kinaesthetik、Kinaestheticsが同じものであることに変わりない。ハッチ博士がアメリカでの教育過程を指す特別な名前としたという事情は日本には無関係でありハッチ博士自身がKinasthetik Kinaesthetik、Kinaestheticsが同じものと書いている文献がこれだけ日本で出回っている以上、一般名称化したと言わざるを得ない(甲第61号証)。
キネセティクスとキネステティクスKinaesthetics、キネステティクを混同して使用しているのはハッチ博士自身であり、すべての読者がこれらがすべて同じものを指すと理解しているのは言うまでもない。キネステティクが一般名称化している以上、キネステティクス、Kinaestheticsなど同じものを指すすべての語は一般名称であると言わざるを得ない。実際に、それらを区分することは極めて難しい(甲第64号証)。
エ 答弁書の理由(6)オについて
キネステティク、キネセティクス、キネステティクスの変遷という主張について
Pflege Heuteに、近年になって、キネステティクスという国際表記が一般化されてKinaestheticsという表記が一般化したことが記載されているように、またハッチ博士自身が英語表記も広めようと自ら記載しているように、英語、ドイツ語、日本語の間でその表記と読み仮名については、様々な表現を認めることは確かである。
しかし、だからといってこれが違うものを指すことにはならない。学術用語は、ドイツ語でPflegeで英語でNurseで日本語で看護師であってもプフレーゲとPflegeは一般名称だが、Nurseとナースは商標であるという理論はあり得ない。
この問題は、単に英語、ドイツ語、日本語の表記と読み方の問題にすぎず、根本的に同じ6つの概念とその概念を用いた教育過程である以上、それぞれを区別して認識することは極めて難しく、実際多数の医療者が同じものであると認識していることがアンケート結果からもわかっている(甲第61号証、甲第64号証)。
オ 答弁書の理由(6)カについて
キネステティクスのsについて、ハッチ博士自身が学問のsと記載しているほか、ハイジ氏も同様の記載をしている。我々は、記載のあった文献からキネステティクスの用語の理解をしているにすぎず、ハッチ博士本人のメール原文を翻訳者が紹介記載したものを本人が否定するようでは、読者は何を信じたらよいか。また、学問のsという理解が正しくても、日本語が片仮名表記となった場合、ドイツ語、英語、日本語の関係において、キネステティクとキネステティクスが単数複数の「s」であり「ス」の発音問題と混同しやすいことを指摘することも日本人として普通の感覚であり、2000年以降それがキネステティクとして一般名称化され、学術用語として浸透しており、Pflege Heuteはじめ複数の著書でKinaestheticsとKinasthetikが同じものであることが記載されている以上、KinaestheticsとKinasthetikを日本語の片仮名読みにおいて、キネステティクと主に読み、主に記載することは自然なことである。同じ意味を指す英語表記についてキネステティクスと読むこともあり、このような学術用語として定着しているものを商標として認めるべきではない(甲第61号証)。
カ 答弁書の理由(8)ウについて
被請求人は、「Kinaesthetics/キネステティクス」の理論は、「看護、介護の現場における体位変換等に応用される概念」ではなく、「動きの学問」であると主張するが、「動きの学問」が進化して、看護・介護の現場に応用される概念となったのである。
キ キネステティクス、Kinaestheticsが学術用語であることについて
(ア)キネステティク(すなわちキネステティクス)はドイツの看護職者らとハッチ博士らが、ともにキネステティクを体系化したものである。実際、ハッチ博士らはドイツ語がそれほどできないため、ドイツ語の本は書けず、キネステティク(すなわちキネステティクス)を体系化したドイツの看護職者らがドイツ語の著作のほとんどを助けたことが裁判書類に記載されている(甲第62号証の1、2)。
(イ)キネステティク、すなわちキネステティクスの教育課程
ハッチ博士以外のトレーナーが提供する、どのコースもハッチ博士同様の、あるいは類似した教育過程を敷いている。たとえ、それぞれの質が異なったとしても、学術用語キネステティク、すなわちキネステティクスの用語そのものに商標をつけて区分しようとすることはできない。ドイツでも、キネステティク、キネステティクスの用語そのものの登録は棄却されている。また、コース名(キネステティクインファントハンドリング、などなど)そのものの登録も棄却されている。マークの区分のみが認められている。教育課程の質の区分を行う際にマークのみで区分するのが、日本でも、妥当である(甲第46号証、甲第51号証、甲第52号証、甲第53号証の1ないし4)。
リンツでも、キネステティクスは被請求人のみの独占的な商標ではないことが記載されている(甲第62号証の1、2)。
キネステティク、すなわちキネステティクスがドイツからやってきた以上、またそれが医療にかかわる看護介護分野の学術用語、一般名称として日本でも共有されている以上、海外と同様に、この用語が同じものであり、商標ではないことを日本も適切に判断すべきである。医学、看護、介護は、商いではない。
(ウ)キネステティク(キネステティクス)は、体位変換技術そのものではないことが多くの書籍で紹介されており、多くの看護職者は、概念であり、応用の一つにすぎないことを知っている。
看護教科書にも、また多くの論文にも、そのことが記載されており、日本での応用の一つである体位変換等の看護技術にスポットが当たったことがまるで特定の研究者のせいであるように記載しているのは極めて大きな誤認である。体位変換、ポジショニングが日本で極めて高いニーズが生じたのは、厚生労働省の褥瘡対策未実施減算措置による影響であり、キネステティクが体位変換に応用した際に(それが応用の一つにすぎなかったとしても)厚生労働省の措置に対応しうる手段として多くの看護職者らが、熱心に勉強したり研究し始めた社会的な動きに過ぎない。また、その学会での紹介を影響要因と唱えるのであれば、同学会に教育講演者として出演しているハッチ博士ら自身の責任も問わざるを得ないのではないか。また、日本看護技術学会という場、日本看護科学学会、日本がん看護学会、等においても、キネステティクは広く学術的に探究されており、決して体位変換技術として普及しているわけではなく、また、このこと自体はキネステティクとキネステティクスが同じものであることを否定する理由になりえないことから、本論からそれた議論と考える。
(エ)日本キネステティク研究会誌の登録状況
国立国会図書館、医学中央雑誌の日本キネステティク研究会誌の英語表記はいずれもJapan Kinaesthetics Associationであり、Kinaestheticsはすでに学術用語であるからこそ、国の図書館と医療関連学会等の文献検索においても登録されている。商標であれば、登録されることはありえない(甲第47号証ないし甲第49号証)。
(オ)キネステティクの定義について
体位変換等に応用される概念に関する反論について
キネステティクの定義は、証拠書類として提出したPflege Heuteはじめ複数の文献に記載された翻訳文のとおりである。ハッチ博士自身様々な表現を用いて定義づけているがハッチ博士以外の著者についても、どれーつとして一字一句まったく同じ記載がないことがキネステティクの定義記載の特徴であり、これらは請求人のコントロールできることではないほか、このようにさまざまな定義づけがされるキネステティクを審査官に理解してもらうために体位変換等にも応用されるという表現で、6つの概念の応用例をわかりやすく伝えようとすることは間違いではない。また、体位変換技術とは述べておらず、あくまで応用される概念と述べており、この表現は、定義からそれるものではない。キネステティクが概念であり教育課程であることは共通事項として皆が認識しており、また、体位変換技術のみに応用されるものでないことも多くのものが認識している。
いずれにしても、ハッチ博士自身、また上述した多くの著者がキネステティクもキネステティクスもKinaestheticsとKinasthetikも同じものであると記載している以上、Kinaestheticsキネステティクスのみが異なる教育課程を指す商標になることはありえない。また、日本語、英語、ドイツ語などこのように様々な読み方書き方で同一のものを指す用語について、日本においてのみKinaestheticsキネステティクスだけが商標で、日本語とドイツ語は一般名称であるとすることも道理に合わない。そもそもKinaestheticsキネステティクスは、学術用語として定着しており、自他役務識別力を発揮しえない文字である(甲第46号証、甲第53号証の1ないし4)。
(カ)キネステティクスの文献がハッチ博士の教え子のものであるという主張について
たとえそうであっても、査読者はじめ読み手の医療職者の多くはキネステティクとキネステティクスを同じものであると認識している(甲第64号証)。
科学研究補助金報告書、論文にKinaesthetics キネステティクスとかかれたものにはすべて商標としての表示がない。Kinaesthetics キネステティクスは、一般名称化されている。科学研究補助金を出す政府も、一企業が独占する事業を研究テーマとして研究補助金を出すことはなく、この点からもKinaestheticsは一般名称といえる。
乙第12号証ないし乙第51号証の署名文は、CareProgressJapanの社員らなど一部の者によって出されたものであり、広く一般には、Kinaesthetics キネステティクスは、学術用語として定着している。
(キ)キネステティク(すなわちキネステティクス)は同じものとして、認識され、日本キネステティク研究会の前進となる会において多くの看護職者が啓発され、研究会発足後は組織的に啓発がなされた。
ハッチ博士以外に日本ではハイジ・バウダー・ミスバッハ氏(Viv-arte)がラックヘスルケア株式会社のセミナーの中でずっと啓発活動をしており、多くの受講生を排出している。この点からもハッチ博士だけがキネステティク(すなわちキネステティクス)を浸透させたという主張は誤りである。
ク 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
商標法3条1項3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(最高裁昭和54年4月10日第三小法廷判決・裁判集民事126号507頁[判例時報927号233頁])。
そして、前述のとおり、本件商標は、その登録査定時には、ドイツなど世界各国及び日本において、感覚及び人間の自然な一連の動作に関する理論として知られ、運動及び感覚機能に障害をもつ患者が自分に残された能力を認識し、適切に用いることができるよう、看護師・介護士はハンドリングと動きに関するトレーニングを受け、セミナーやその他、教育課程の名称に広く用いられていたものである。
本件商標が指定役務とするもののうち、特に、「高齢者・障害者等の養護及び介護方法に関する知識の教授,その他の技芸・スポーツ又は知識の教授,高齢者・障害者等の養護及び介護方法に関する講演会・講習会・セミナーの企画・運営又は開催,その他の講演会・講習会・セミナーの企画・運営又は開催」の役務が提供される講座、セミナー等においては、その目的・内容等を冠してその講座、セミナー等の名称とすることがしばしば行われていることは公知の事実であり、本件商標をその指定役務に使用した場合には、需要者は、「キネステティクス」の理論を学習するための講座、セミナー等を表示したものであると認識するものというべきである。
したがって、本件商標は、その指定役務について、その役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、自他役務識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであるというべきである。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第70号証(枝番を含む。)及び参考資料1ないし3を提出した。
(1)本件商標には、商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号、商標法第4条第1項第7号に該当する理由はなく、無効にされるべきものではない。
(2)商標権者である被請求人について
ア 被請求人は、「Kinaesthetics」理論の創始者である両博士によって設立された会社である。
フランク博士は、米国ウイスコンシン大学で行動サイバネティクスの博士号を授与され、人の動きと機能についての知識を広めるため多くの大学で教育プログラムを立ち上げた実績があり、またレニー博士は、米国フィールディング研究所で臨床心理学の博士号を授与され、専門教育プログラムの開発にかかわってきた(乙第3号証)。
被請求人は、自己が開発した「Kinaesthetics」理論とその教育課程を世界中に広めるため現在も活動を続けている。
イ 日本では、2003年、両博士が来日して自らセミナーを開催したことを契機としてKinaesthetics理論に沿って学習する人達が増え、さらに、2008年11月には、被請求人からトレーナーとして認められた中本里美氏が、被請求人の「Kinaesthetics(キネステティクス)」理論とその教育課程を日本中に広めるために立ち上げた株式会社CARE PROGRESS JAPANを通じて、より一層積極的な活動が展開されている(乙第4号証及び乙第5号証)。
(3)本件商標について
ア 本件商標の構成について
本件商標の「Kinaesthetics」は英語風ドイツ語表記であり、片仮名「キネステティクス」はドイツ語「Kinaesthetics」の読みである。
イ 本件商標の成り立ちについて
(ア)「Kinaesthetics」とは、被請求人の創業者である両博士が「人の動き」に着目して研究・考案した理論とその教育課程の名称であり、「kine-(動きの)」と「aesthetics(魅力、心地よさ、喜びを与える等)」という2つのギリシャ語を組み合わせて創案した「造語」である(乙第6号証及び乙第10号証)。
(イ)両博士は、1974年頃から行動サイバネティクスと生理学を基盤として動きの機能と形式を研究し、その研究成果を「動きの学習」プログラムにまとめた。
その後、1980年代に入って主に介助・看護の分野での臨床応用と体系化が進められ、実践家の育成・養成プログラムとして、主に、ヨーロッパのドイツ語圏で発展、発達を続けている。
この「学習プログラム」の概念を総括的に表現する言葉として「Kinaesthetics」とした。そして、その日本語読みを「キネステティクス」としたのが本件商標である。
本件商標は、現在、世界的に注目され発展を続けている理論とその教育課程の名称である。
(4)「Kinaesthetics/キネステティクス」について
ア 「Kinaesthetics/キネステティクス」理論について
(ア)「Kinaesthetics/キネステティクス」は、動き全般についての学問・研究であり、動きを言葉で表現するツールを提供する。動きを表現する言葉にはいろいろあり、人によってそのニュアンスが変わっていく。そこで共通の感覚を体感し、それを表現する共通言語を作り、使用することにより共通の認識としていくという考え方である。
人は生きるために必要な様々な「活動」をする。生きるために必要な活動を「Kinaesthetics/キネステティクス」では、「インタラクション」「機能からみた解剖」「人の動き」「力」「人の機能」「環境」の6つの異なる視点からとらえ、分析し、よりよい活動の方法を考え出す(乙第6号証)。
(イ)一方、「Kinaesthetics/キネステティクス」は、1980年代に、ドイツやスイスといったドイツ語圏の国々において、主に介助・看護の実務分野で技術的側面を強調する技法として発展するという経緯があったため、介助・看護の実務分野の技法として限定的に誤解される向きも散見される。
しかし、「Kinaesthetics/キネステティクス」は上述したように、「人の動き」に着目して研究・考案された学習についての理論であるため、看護・介助の他にも一般成人や学生、児童を対象とする自己表現の教育、リハビリテーション、新生児の取り扱いなどの広い分野を含んでいる(甲第4号証)。参考として、ドイツで行われている「Kinaesthetics」の「Infant Handling」(新生児の取り扱い)のテキスト及びその日本語版を提出する(乙第7号証の1、2)。
そして、近年では、単なる、体位変換の技術ではなく、私たちが生きていくうえで行っている呼吸、循環、消化、排泄、姿勢などあらゆる行動を行うときに生かせる運動と感覚の全般的な学問として認識されている。
イ 「Kinaesthetics/キネステティクス」の教育課程について
「Kinaesthetics/キネステティクス」は、被請求人の教育課程の名称でもあるため、システム化されており、「ベーシックコース」、「アドバンスコース」、「認定プラクティショナーコース兼教師養成コース」、「教師養成コース」の4段階に分かれている。(乙第8号証及び乙第9号証)。
(5)「Kinaesthetics」の経緯について
ア フランク博士は、1972年に、アメリカの大学で教えていた「人の動き」に関する教育プログラムの名称を「kinaesthetics」と名付けた(乙第10号証)。
イ 両博士は、1976年、ドイツの病院で勤務しはじめたのをきっかけに、ヨーロッパ、主にドイツ語圏で、「人の動き」に関する創造的な学問と教育課程として「kinaesthetics」の教育をはじめた。「kinaesthetics」は「人の動き」に関する総合的な学習コースであったため、適用分野が看護・介護に限定されるということはなかった。
この当時、両博士はアメリカ人であるため英語で活動を行っており、そのため、英語の「kinaesthetics」をそのまま使用していたが、ドイツ語圏で広めていくために、1987年、ドイツ語の「Kinasthetik」という言葉を作った。
一方、「kinaesthetics」理論は、普及の第1段階においては看護業務の実務家達から注目を受け且つ臨床的にも有用であったため、ドイツ語圏においては、「看護・介護の分野」において、ドイツ語の「Kinasthetik」が、両博士の理論を表すものとして使われるようになり、「看護のためのKinasthetik」という表現が用いられるようになった。
ウ ところが、「看護のためのKinasthetik」が広まっていくうちに、「Kinaesthetics」「Kinasthetik」が、両博士の意図するところと異なる内容で教育が行われるようになった。
例えば、行動サイバネティクスの基礎を理解せずに単なる介護技術として教える人々が出てきたり、介護理論や心理学を取り込んだものを「Kinasthetik」として教えるセミナーが出現した。なかでも、「介護・看護における体位変換法に応用される概念」という限定した内容を表すものとして間違って使用されるようになってきた。
そこで、両博士は、自分たちの理論を世界中に正しく広めるため、自分たちの理論又はその教育課程の名称として、「Kinasthetik」の使用を止めて、新たに英語風「ドイツ語」表記としたのが「Kinaesthetics」である。
そして、日本では「Kinaesthetics」を「キネステティクス」と呼ぶように決め、商標登録に努めた結果が本件商標である。
(6)商標法第3条第1項第3号に該当しない旨の主張
ア 請求人は、本件商標が無効にされるべき理由として、本件商標が、自他役務識別力を具有せず、商標法第3条第1項第3号に該当する旨を主張する。しかし、当該主張は誤りである。
イ 本件商標の自他役務識別力について
本件商標は、上述したとおり、両博士が、自分たちの理論を世界中に正しく広めるために名付けた、「理論又はその教育課程の名称」であり、両博士が創造した造語であり、(3)で述べたように、その構成の特異性からも生来的に自他識別力を有する。
かつ、次に示すように被請求人自らが、理論の普及と教育に努めてきた結果、本件商標の出願前より、被請求人の理論又はその教育課程の名称を示すものとして需要者の間に広く認識されており、そのため登録査定時には当然識別力を有する商標である。
よって、本件商標は自他役務識別力を有し、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
ウ 本件商標が登録査定時に自他役務識別力を有していること
被請求人は、(2)イで述べたように2003年に来日して以来、日本国内でのセミナーを定期的に開催しており、特に2004年以降のセミナーは、本件商標を使用して、東京、名古屋、札幌等日本全国で開催されている(乙第11号証ないし乙第27号証)。
したがって、本件商標は、登録査定時に取引者及び需要者において、何人かの業務に係る役務であることを認識できる商標となっており、自他役務識別力を有していたのである。
エ 「キネステティク」と「キネステティクス」の違い
(ア)請求人は、「キネステティク」と「キネステティクス」の違いについて、「『キネステティク』はドイツ語表記「Kinasthetik」の片仮名表記で、『キネステティクス』は英語表記『Kinaesthetics』の片仮名表記であり、どちらも同じく前述の意味の語である。」と主張する。
しかし、「キネステティクス」は、英語表記「Kinaesthetics」の片仮名表記ではなく、「キネステティク」と「キネステティクス」は異なる意味のものである。
(イ)「キネステティクス」は英語表記「Kinaesthetics」の片仮名表記ではないこと
a ドイツ語「Kinasthetik」(又は「Kinaesthetik」)と「キネステティク」について
被請求人は、上述したとおり、「kinaesthetics」をアメリカの大学での教育課程の名称と定め、その後ドイツ語圏で被請求人の理論を広めるにあたりドイツ語で「Kinasthetik」と名づけた。
甲第32号証の1(21頁)に「Kinasthetikは、アメリカ英語のkinaestheticsのドイツ語表記です。」と記載されているのはこの意味である。
そして、日本に紹介された際、甲第8号証85頁「2.“キネステティク”関連のドイツ語原著の翻訳を開始」の中で述べられているように、ドイツ語「Kinasthetik」の発音から、日本では片仮名で「キネステティク」と表記されるようになった。
b 英語「kinaesthetics」と「キネ(ス)セティクス」について
その後、「Kinasthetik」がヨーロッパだけでなく、世界中に広まるのを受けて、ドイツ語「Kinasthetik」を英語で「kinaesthetics」と表記するようにした。
そして、英語「kinaesthetics」を日本では「キネ(ス)セティクス」と読ませるようにした(甲第4号証237頁)。
c ドイツ語「Kinaesthetics」と「キネステティクス」について
その後、ドイツ語「Kinasthetik」と英語「kinaesthetics」が介護の分野に限定されて使用される傾向が散見されつつあったので、改めて被請求人の理論又はその教育課程の名称を示すものとして使用を始めたのが英語風表記のドイツ語「Kinaesthetics」である。
そして、英語風表記のドイツ語「Kinaesthetics」を日本では、「キネステティクス」と読ませるようにしたのが本件商標である。
「キネステティクス」という日本語表記を決定した時期は被請求人も明確に記憶していないが、日本語の呼び方をどうするか相談を受けた澤口裕二氏が2004年に執筆した甲第6号証演題番号139の中で、「キネセティクス」を使用しているが、2005年以降になると「キネステティクス」を使用している(甲第3号証、甲第19号証等)のを見ると、「Kinaesthetics」を「キネステティクス」と呼ばせるようになっていったのは、2004年?2005年頃であると思われる。
d 上述のように、片仮名「キネステティク」がドイツ語表記「Kinasthetik」の片仮名表記であることは認めるが、片仮名「キネステティクス」は英語風表記のドイツ語「Kinaesthetics」の片仮名表記であり、英語「kinaesthetics」の片仮名表記ではない。
(ウ)「キネステティク」と「キネステティクス」は異なる意味であることについて
a 請求人は、「キネステティク」と「キネステティクス」が同じ意味であると主張するが、それぞれが異なる意味のものである。
b 「キネステティク」について
上述したとおり、ドイツ語「Kinasthetik」は、両博士が創始した理論「Kinaesthetics」が、ドイツ語圏で教育される中で生まれたドイツ語であり、特に看護の分野で「看護のKinasthetik」として広まるにつれ、創始者の意図とは関係なく、「体位変換に応用される概念」を意味するものとして使われ始めるようになっていった。
c 日本における「キネステティク」の導入について
(a)1999年、坂木理和子看護師が褥創予防用品メーカのナースより、ドイツで行われている体位変換法として、キネステティクを紹介され(甲第16号証42頁)、その後キネステティクの研究グループが作られることになった。
そのグループの参加者は、北海道大学大学院工学研究所生体システム工学講座高橋誠助教授、宮城大学の徳永恵子教授、その助手の塚田貴子氏、士別病院療養診療科の揮口裕二医師、天理よろづ相談所病院の中村義徳医師の5名であった。
甲第8号証84頁「1.ドイツ仕込みの技術を“体で”学ぶ」の中に「昨年の4月、そのナースが発起人となって始まったプロジェクト」との記載があるが、そのプロジェクトが上記研究グループであった。
また、甲第8号証85頁「2.“キネステティク”関連のドイツ語原著の翻訳を開始」で述べられているように、キネステティクの研究グループは、ドイツ語で書かれたキネステティクに関する本の翻訳を開始した。しかし、この時翻訳を行っていた本は、両博士が執筆した本ではなかった。
その後、2000年に日本褥瘡学会で徳永恵子教授が講演を行い、「キネステティク」を紹介した。その際の教育講演の報告が、甲第1号証「日本褥創学会誌」であり、この中のタイトルにも表れているように「キネステティク」は、体位変換に応用される概念として紹介された。
(b)このように、日本においては、「キネステティク」が両博士が開発した理論そのものの意味ではなく、当初から「体位変換に応用される概念」として、主に看護・介護の分野で紹介されたため、「Kinaesthetik/キネステティク」は、請求人の主張するように、「体位変換等に応用される概念」の意味で使われるようになり、現在にいたるのである。
(c)キネステティク研究グループの一員であり、キネステティクを紹介していた澤口裕二医師は、当初両博士の理論を紹介するものとして「Kinaesthetik/キネステティク」を使用していた。
しかし、後に、(a)の研究グループで翻訳を行っていた本ではなく、両博士が執筆した「Kinasthetik」(甲第32号証の2)の本が学問として基礎的なことがわかった。
さらに、2003年以降、両博士が本格的に日本で活動を始めると、両博士の「キネステティク」が教育課程であること、両博士の理論が看護・介護の分野に限定されるものでないことに気づいた。
そこで、両博士の理論を正しく伝えるべく、「キネステティク」の使用をやめ、両博士の理論又はその教育課程の名称を示すものとして「Kinaesthetics」の使用を開始したのである。
そのような事情により、澤口医師自身の著書でも「Kinasthetik/Kinaesthetik/キネステティク」と、「Kinaesthetics/キネステティクス」の両方が混乱して使用された時期が存在していたのである。
また、甲号証の中でも「Kinasthetik/Kinaesthetik」「Kinaesthetics」「キネステティク」「キネステティクス」が混在しているが、甲号証を年代順に並べてみれば、「Kinasthetik/Kinaesthetik/キネステティク」と、「Kinaesthetics/キネステティクス」の使われ方ないし使い分けが時代によって変遷し、後年に至る程両者の使い分けが進んでいることが理解できる。
d 上述のように、「キネステティク」「Kinasthetik」「Kinaesthetik」は、「看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念」を意味する。
一方、本件商標は、被請求人の理論又はその教育課程の名称を意味する。
よって、「キネステティク」と「キネステティクス」は異なる意味であり、「キネステティク」と「キネステティクス」が同じ意味を有するという請求人の主張は誤りである。
オ 甲号証で見られる「キネステティク」「キネステティクス」の使用状況について
(ア)「キネステティク」や「キネステティクス」等の使用状況には、大きくわけて、次の3つがある。
・パターンA:「Kinasthetik(Kinaesthetik)/キネステティク」
・パターンB:kinaesthetics/キネスセティクス」(「kinaesthetics」は英語)
・パターンC:「Kinaesthetics/キネステティクス」(「Kinaesthetics」は英語風ドイツ語)
(イ)日本にキネステティクが紹介された2000年から2004年にかけては、パターンAがほとんどであり、パターンBが散見される程度である。
しかし、2005年頃になると、被請求人のセミナーを受けた人達(澤口裕二氏、伊藤亮子氏、水野真由美氏、森弥生氏、船越利代子氏、杉本吉恵氏ら)によって、パターンCが使用され始め、パターンA、B、Cが拮抗する様になっているのがわかる。
さらに被請求人のプログラムを受けていない人は、引き続きパターンAを使用しているのがほとんどであり、2005年以降は「キネステティク」と「キネステティクス」は、異なる意味を示すものとして、棲み分けられていたことを如実に物語るものと言える。
なお、甲第33号証の1の徳永氏の科学研究費助成報告の英文の翻訳(甲第33号証の2)の中で「Kinaesthetics」を「キネステティクス」と訳しているが、当該研究について科学研究費補助金データベースに載せた研究概要(最新報告)の日本語(乙第28号証)には、「キネステティク」としか訳されていない。
カ 「キネステティクス」は「キネステティク」の複数形であるという主張について
(ア)請求人は、「キネステティクス」と「キネステティク」は、語尾の「ス」の有無で異なるのみであるから、両者は単数形と複数形のように捉えられ、いずれも同じ意味の普通名詞として認識されると主張する。
(イ)しかし、「キネステティクス」の語が、「キネステティク」の複数形として使用されている証拠を一切提示していない。「キネステティク」と「キネステティクス」は、上述したように異なるものであり、同じ意味の普通名詞として認識されるという主張自体が誤りである。
なお、英語の名詞には可算名詞と不可算名詞があるところ、請求人が「キネステティク」を看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等の応用される「概念」であると主張するのであれば、そのような「概念」は不可算名詞にあたり、「キネステティクス」が「キネステティク」の複数形にあたらないことは、ほとんどの日本人にとって容易に認識されることである。
(ウ)他方、請求人は、自ら「『KinaeSthetics』は『Kinasthetik』のインターナショナル表記としての英語風ドイツ語表記である。」とも主張する。「キネステティクス」の語尾の「ス」は「英語」の複数形の「s」を示す文字であるとの主張に首尾一貫性が認められない。
(エ)また、請求人は甲第32号証の1に記載されているように「Kinaesthetics」の語尾の「s」は、「Kinasthetik」の語尾を英語風に「c」にし、学問の「s」をつけたものであるとも主張する。もし、そうであるならば、「マセマテッイクス(mathemathics)」、「エコノミクス(economics)」、「フィジックス(physics)」等と同様に語尾の「s」は明瞭な有声音として発音されるのが通例であり、「s」の有無は、これを使用する者及びこれに接する者のいずれにとっても識別ポイントの一つであることは明らかである。
キ 「キネステティク」と「キネステティクス」の使用状況が同一とみなされるべきとの主張について
(ア)請求人は、「キネステティクス、Kinaesthetics」と「キネステティク、Kinaesthetik、Kinasthetik」が同一のものであっても、日本では「キネステティク」のタイトルを多く見ることはごく自然なことであるため、「キネステティク」自体の使用状況は、同時に「キネステティクス」の使用状況と同一とみなされる必要があると主張する。
(イ)しかし、上述したように「キネステティク」は看護・介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念の意味で使用されるものであるのに対し、「キネステティクス」は被請求人の理論又はその教育課程の名称を意味するものであり、異なるものである以上、同一の使用状況とみなされるはずがない。
(ウ)そして、「キネステティク」と「キネステティクス」の使用状況が異なることは、請求人が提出した証拠を正しく評価すればおのずと明らかである。
a 甲第3号証について
甲第3号証の執筆者は澤口裕二氏であり、この澤口裕二氏は、日本における「Kinaesthetics/キネステティクス」の紹介、普及に多大な貢献をしており(甲第3号証)、被請求人より本件商標の使用を許諾されたものである。
表題は「キネステティクスと褥瘡と体位変換」になっているが、同号証1538頁「要旨」には「キネステティクスは『人間と動き』について考え、行動し、考えることである。」との記載がある。
また、「はじめに」には、「したがって、この記事がキネステティクスを学習した者が従来とは異なる視点で褥瘡に関する問題解決のヒントを提示している例として読まれるべきものである。けっして、ここに書いたことがキネステティクスそのものではない。」との記載がある。
さらに、同号証1544頁「おわりに」には、「キネステティクスは『動きの感覚』を基礎にして自分で検証し深めていける学問である。」との記載や、「しかし、現在の日本ではキネステティクスのセミナーを受ける機会は多くない。」との記載がある。
甲第3号証の下部に「2005年9月」と記載されていることから、2005年9月頃には、被請求人の理論又はその教育課程の名称を示すものとして、「キネステティク」ではなく、「キネステティクス」が使用されていたことがわかる。
b 甲第17号証について
甲第17号証の執筆者である伊藤亮子氏は、被請求人から日本人初のキネステティクス「トレーナー」として認定を受けた者であり、これによって「Kinaesthetics/キネステティクス」の使用を許可されたのである。
また、甲第17号証35頁に「キネステティクス(Kinaesthetics)は、そんな私たちの生活の要とも言える“動き”を、多角的な観点から捉えた学習システムです。」との記載がある。
さらに、甲第17号証の発行日等は明確ではないが、ページ下に「2005-2」と記載されていることから推測すると、2005年2月頃には、被請求人の理論又はその教育課程の名称を示すものとして「キネステティク」ではなく、「キネステティクス」が使用されていたことがわかる。
c 甲第19号証について
甲第19号証の執筆者は澤口裕二氏である。甲第19号証を精査しても、体位変換の説明は全く記載されていない。むしろ、最後の段落には「ドイツで看護教育にも取り入れられているキネステティクスという『動きの感覚の学問』について紹介します。」との記載がある。
さらに、甲第19号証の発行日等は明確ではないが、ページ上に「2005年8月」と記載されていることから推測すると、遅くとも2005年8月頃には、被請求人の理論又はその教育課程の名称を示すものとして「キネステティク」ではなく「キネステティクス」が使用されていたことがわかる。
d 甲第38号証について
甲第38号証の執筆者である森弥生氏は、被請求人の教育課程の受講者であり、同号証の「キネステティクス」は、被請求人の理論とその教育課程の名称として使われている。
e 甲第39号証について
甲第39号証は、ドイツ、オーストリアにおけるKinaestheticsの視察報告である。執筆者の一人は上述した伊藤亮子氏であり、同号証の「はじめに」の中には「Kinaestheticsは、人間の活動を動きと感覚の視点から捉えていく教育プログラムと言われている。」との記載や、「ケアにおける『Kinaesthetics』とは、介助者の行動能力と動きの能力を開発するセミナー形式の教育プログラムで」あるとの記載がある。
さらに、同号証で記載されている内容は、被請求人が行っているベーシックコース研修、アドバンスコース研修の体験等に関するものであり、被請求人のプログラム名として「Kinaesthetics」が使用されていることが明白である。
f 甲第40号証について
甲第40号証は、ドイツ・スイスにおけるKinaesthetics教育システムの視察についてである。執筆者の一人は上述した伊藤亮子氏であり、同号証のタイトルは「ドイツ・スイスにおけるKinaeshtetics教育システムの視察」と記載されている。そして、同号証には「Kinaesthetics協会の研修システムを活用し、施設単位ごとに基本的なKinaestheticsの考え方とその体験を中心としたベーシックコース、臨床に活用していくためのアドバンスコース研修が行われていた。」との記載がある。「ベーシックコース」及び「アドバンスコース」も被請求人のコースである。
g 甲第41号証について
甲第41号証の執筆者である水野真由美氏は、被請求人の教育課程の受講者であり(乙第29号証ないし乙第31号証)、同号証の「キネステティクス」は、被請求人の理論とその教育課程の名称として使われている。
また、「キネステティクス」の研修が行われた証拠として、研修当日の資料(乙第32号証)及び研修終了後の「キネステティクス研修アンケート」を提出する(乙第33号証)。
さらに、平成18年10月25日に発表された「キネステティクスによる体位変換介助法の研修を試みて」の原稿を提出する(乙第34号証)。当該発表の内容が同号証にまとめられている。また、水野氏からの陳述書(乙第35号証)に記載されているように、甲第41号証は被請求人が主唱するキネステティクスの正しい理念を受講者に伝えるという主旨で行われた研修の内容である。
h 甲第42号証について
甲第42号証の執筆者である下西潤子氏は、被請求人の研修コースの受講者であり(乙第36号証)、同号証の「キネステティクス」は、被請求人の理論とその教育課程の名称として使われている。
よって、請求人が主張するように「キネステティクス」が看護・介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念の普通名詞として使用されている証拠ではなく、むしろ「キネステティクス」が自他役務識別力を発揮していることを示す証拠である。
i 甲第43号証について
甲第43号証は、2008年の「つくば国際短期大学紀要」である(参考資料1)。
そして、参考資料2として同号証の全文を提出する。
参考資料2(132頁)の「5.本研究の信頼性」の中に、「教員の一人はキネステティクスベーシックコースを修了している。」との記載があることから、被請求人の教育課程を受けた者が行ったことは明らかである。
また、136頁には「キネステティクス(kinaesthetics)はアメリカ英語の意味でドイツ語表記で」との記載があり、被請求人の理論又はその教育課程の名称として「キネステティクス」「Kinaesthetics」を使用していることが明らかである。
(エ)以上より、「Kinaesthetics/キネステティクス」は、「被請求人の理論又はその教育課程の名称を意味するものとして使用されていること」及び「請求人が主張するような『看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念の普通名詞』としては使用されていないこと」が明白である。
さらに、甲第3号証、甲第17号証、甲第19号証を見れば、2005年頃より「Kinaesthetics/キネステティクス」と「Kinaesthetik/キネステティク」が使い分けられていることが明白であり、そのことからすれば登録査定時である2007年頃には、「キネステティク」と「キネステティクス」が完全に異なる意味で使用されていることがわかる。
(オ)また、論文等のタイトルに「キネステティク」が多く用いられているのは、「キネステティク」が看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念の「普通名詞」であることに拠る。決して「キネステティクス」の「ス」が省略されて記載されているからではない。
2005年以後、キネステティクスを用いている甲号証を年代順に並べると、3(澤口裕二)、17(伊藤亮子)、19(澤口裕二)、45(杉本吉恵)、33(徳永恵子)、41(水野真由美)、38(森弥生)、43(船越利代子)、39(杉本吉恵)、40(杉本吉恵)である。澤口裕二氏、伊藤亮子氏、水野真由美氏、森弥生氏は、被請求人のセミナーを受けた人達である。杉本吉恵氏はキネステティクスのトレーナーであった伊藤亮子氏と共同執筆であり、間接的に被請求人の教育を受けている。さらに、船越利代子氏も間接的に被請求人の教育を受けている。被請求人のキネステティクスの教育を受けていないのは甲第33号証の徳永恵子氏のみである。
甲第33号証を除外した2005年以後の「キネステティクス」の使用例が、すべて被請求人の教育を受けた人達であることから、2005年以降「キネステティク」と「キネステティクス」が棲み分けられて使用されていることがわかる。
ク 「キネステティクス」は「キネステティク」を学問的に捉えたものであるから、「キネステティクス」は普通名詞であるとの主張について
甲第4号証には、「キネステティク」に関して「これが『動きの感覚』Kinaesthesiaであり、それを学問として体系化したものがキネステティクKinaesthetikである。」(236頁)、「キネステティク自体は看護のみならず、自己表現の教育、リハビリテーション、新生児の取り扱いまで含んでいる学問である。」(237頁)との記載がある。
また、甲第16号証第42頁にも「キネステティクとは『動きはコミュニケーション』という概念に基づく動きを扱う学問である。」との記載がある。
そのことからすれば、「キネステティク」自体が学問であり、さらに「ics」を付加して「学問の学問」と捉えるのは不自然なこじつけである。
仮に、請求人が主張するとおり「キネステティクス」が「キネステティク」を学問的に捉えたものであるならば、「キネステティク」と「キネステティクス」は異なる意味を持つものであるということになり、「キネステティク」と「キネステティクス」は同じ意味であるという請求人の主張と矛盾する。
また、「ス」を省略して「キネステティク」というような表記を行うことは考えられない。
ケ オーストリアでの「Kinasthetik」の識別力
請求人は、本件商標の自他役務識別力を否定する根拠としてオーストリアのリンツで行われた裁判の判決を証拠としてあげている(甲第28号証の1、2)。
そもそも、商標権の識別力は各国法に基づいて判断されるものであり、オーストリアでの識別力判断が本件商標の識別力判断に影響を与えることはない。
なお、甲第28号証の2には「被告によって選択されたキネステテイクの6つのコンセプトの描写は、このテーマに関する看護学の文字全般において一般的なイラストである。」との記載があるが、そのことから、商標の使用に該当しないと判断されたのは、6つのコンセプトのイラストであって、決して「キネステティク」の文言ではない。
コ 「キネステティクス」又は「キネステティク」が普通名詞としてタイトルの一部に用いられている文献について
甲第9号証には「キネステティク」又は「キネステティクス」が付いた論文のタイトルが掲載されているが、タイトルのみでは「キネステティク」、「キネステティクス」がどのような意味で使用されているのか全く不明である。
サ まとめ
以上述べたとおり、本件商標は、出願時に既に自他役務識別力を発揮しており、登録査定時においても当然に自他役務識別力を発揮するものであることが明白であるから、商標法第3条第1項第3号に該当しないことは明らかである。
(7)商標法第4条第1項第16号に該当しない旨の主張
ア 本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しないものである。
(ア)本件商標は請求人の理論又はその教育課程の名称を示すものとして識別力を有している。
また、本件出願前である2005年頃より「キネステティク」と「キネステティクス」は明瞭に使い分けられており、「キネステティクス」と「キネステティク」は、互いに異なる意味で使用されていることから、指定役務との関係において、役務の質に誤認を生じることはない。
(イ)そして、被請求人と関係のある者又は被請求人から許諾を受けた者しか本件商標を使用していないことから見ても、本件商標の登録査定時には「キネステティク」と「キネステティクス」が異なるものであることは、取引者及び需要者に明確に理解されている。
よって、取引者及び需要者は本件商標から、被請求人の業務に係る役務を想起するのが通常であるということができるから、本件商標を本件指定役務のいかなる役務に使用しても、取引者及び需要者において、役務の質につき誤認を生ずるおそれはない。
(ウ)また、「Kinaesthetics/キネステティクス」は、「運動の感覚」を認識した体の動きを学習する教育課程であるから、「高齢者・介護者」のみを対称とする学習だけでなく、幼児・子供・健常人も対象に含まれ、これらの人がスポーツ・娯楽などを楽しむ場合の教育を想定したあらゆる情報(書籍・映画・放送フィルム・テープ・写真)や道具(用具・おもちゃ)を用いる学習手段の提供等においても「Kinaesthetics/キネステティクス」の商標が使用されるのである。
イ さらに、請求人は、「仮に、本件商標が自他役務識別力を具有していたとしても、本件商標の『キネステティクス』の文字には、『キネステティク』の文字がすべて含まれ、語尾に『ス』の文字を有するのみの違いのため、本件商標は「キネステティク」に関する役務以外では役務の質、内容の誤認を生じさせるおそれがある。」と主張する。
しかし、「キネステティク」と「キネステティクス」が異なるものであることが出願前から取引者及び需要者に認識されている以上、一文字違いであっても、役務の質、内容の誤認を生じさせるおそれはない。
(8)商標法第4条第1項第7号に該当しない旨の主張
ア 本件商標の構成自体が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合に該当しないことは明らかである。
そして、本件商標は、被請求人が「自ら」創始し、開発した理論又はその教育課程の名称を示す「造語」であって、被請求人が行う役務について登録されたものである以上、本件商標を指定役務について使用することが社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反しないことも明らかである。
イ 請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして以下の理由をあげる。
(ア)まず、請求人は、「本件商標が、本件商標の一部の指定役務の質、内容を表す普通名詞であり、独占使用に適さない商標である。仮に商標登録時点で普通名詞として一般的でなかったとしても、現在は前述の意味の普通名詞として広く知られている。」と主張する。
本件商標は自他役務識別力を有し、指定役務の質、内容を表す普通名詞ではないため、被請求人が本件商標を独占適用しても社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反しないことは明らかである。
さらに、本件商標登録後も継続して被請求人自らセミナーをおこなっている(乙第37号証ないし乙第51号証)。
そして、乙第52号証の1及び2が示すように、被請求人のセミナーの受講者や、セミナーを受けてトレーナー資格を有する人達が年々増加しており、そのことからも本件商標が「普通名詞」化していくどころか、逆に、被請求人の理論やセミナー名として自他役務識別力を発揮していることが明確にわかる。
また、2010年4月頃より、被請求人より認定を受けた日本人教師が全国で積極的にセミナーを行っており(乙第53号証ないし乙第65号証)、日本人教師が教育したベーシックコースの受講生数は2010年度290名で、2011年度は4月から7月までで既に130名に達している。
よって、登録時点においても、現在においても本件商標は普通名詞ではない以上、被請求人が本件商標を独占使用しても何ら問題がない。
むしろ、このように周知性を獲得し且つ出所表示機能を獲得するに至った商標を無効にして誰でも使用できるようにすることのほうが社会公共の利益に反するというべきである。
なお、請求人は、「キネステティク」が看護教育のテキストに使用されていることや、研究会が設けられていることを証拠としてあげているが、「キネステティク」と「キネステティクス」が異なるものである以上、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するかどうかとは関係がない。
(イ)次に、請求人は「このような普通名詞について商標登録を認めると、学会論文を執筆するうえで表現が制限され、また『キネステティクス』又は『Kinaesthetics』以外の用語を使用した場合、海外の論文との間で用語の差が生じるため、論文が国際的な評価を受けにくくなる。」と主張する。
「Kinaesthetics/キネステティクス」は上述したように被請求人の理論又はその教育課程の名称として社会的評価を受けている被請求人固有の商標であり、「Kinaesthetics」「キネステティクス」以外の用語を使用したときの評価と、「Kinaesthetics」「キネステティクス」の用語を使用したときの評価が異なるのは当然である。
一方、請求人が提出した証拠をみてもわかるとおり、論文で使用されているものの多くが「キネステティク」であり、学会で「看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念」の「普通名詞」として認識されているのは「キネステティク」である以上、論文の用語として使用されているのは「キネステティク」であると言える。むしろ、「キネステティク」は普通名詞として確立されているのであるから、わざわざ「Kinaesthetics」又は「キネステティクス」を使用される必要もないことであり、本件商標の登録と学会発表は無関係である。
(ウ)また、請求人は「キネステティクス」に関する研究は補助金を受けられなくなる」と主張する。
本件商標の登録から既に約5年経過する。補助金を受けられなかった事例があるのであれば示してもらいたい。
(エ)さらに、請求人は「純粋に学問的な論文であるにもかかわらず、商標権者及びその代理店の広告とみなされ、正当な評価を受けにくくなる」と主張する。
この点、「キネステティク」と「キネステティクス」は意味が異なり、「看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念」の意味を有する普通名詞として使用されているのは「キネステティク」である以上、「キネステティク」を使用すれば足りる。
また、純粋に学問的な論文であれば、正当な評価を行える機関に提出すればよく、もし、一般名詞としての「キネステティク」と被請求人が創始した教育セミナーの名前としての「キネステティクス」との異同を理解しない機関に提出されるのであれば、請求人において正しく説明してもらいたい。
(オ)最後に、請求人は「日本の学術の発展及び日本の研究力が期待される国際的な発展を鑑みても、『Kinaesthetics』及び『キネステティクス』は普通名称であると認められるにも拘わらず、このまま商標としておくことは大きな損失となることは明らかである。」と主張する。
しかし、看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念の普通名詞として使用されているのはあくまでも「キネステティク」であって、「キネステティクス」は普通名詞ではない。
そのことからすれば、論文で「キネステティク」と明記すればよく、本件商標の登録と、日本の学術の発展及び日本の研究力は関係ない。
ウ むしろ、本件商標を無効にすること自体が、取引者及び需要者に混乱を生じ、社会にとって大きな損失となることが考えられる。なぜなら、被請求人の代表者である両博士は、自分たちが開発した「Kinaesthetics/キネステティクス」という理論を正確に伝える目的で、2003年以降、数回の来日を行って自らセミナーを続けてきたのである。
その結果、被請求人自らが開発した理論は、「看護、介護の現場における体位変換等に応用される概念」ではなく、「動きの学問」であることが日本の受講者に知られることとなり、理論が正しく伝えられるようになったのである。
さらに、2005年以降、「キネステティク」と『キネステティクス』の使用が使い分けられている具体例が多いことも、「キネステティク」と「キネステティクス」が取引者及び需要者の間に異なるものとして認識されるようになった事実を示している。
このように、取引者及び需要者に異なるものとして認識されるようになったものを、請求人の一方的な主張により、同一のものとして本件商標を無効にすることのほうが、取引者及び需要者の間に混乱を生じさせ、社会公共の利益に反するというべきである。
2011年7月10?11日までの2日間に亘り広島において、被請求人による「看護のキネステティクス○(○の中にRの文字が記載されている。)ベーシックコース教師のための2011年度フォローアップコース」が行われており、その修了証及び受講者の報告書を乙第69号証の1ないし20として提出する。この報告書を見れば、被請求人の教師たちが日本で被請求人の正しい理論及びその教育を伝えるために、必死に活動していることが伝わってくる。
さらに、乙第70号証の1ないし3は、株式会社CARE PROGRESS JAPANの中本里美氏が、広島市産業振興センターに助成金の交付申請を行い(乙第70号証の1)、申請が認められたものである(乙第70号証の2)。乙第70号証の3には、「キネステティクスも関心を高めてきており、将来性を感じる。」との事業可能性評価委員の意見が述べられており、「Kinaesthetics/キネステティクス」が事業としても一定の社会的評価を受けており、行政からも将来的に期待されているものであることがわかる。
そして、本件商標を無効にすることこそが、そのように必死に活動する人々に困惑を与え、社会公共の利益に反することが理解できるはずである。
エ 最後に、両博士は「Kinaesthetik/キネステティク」が、日本において自分の教育理論と異なって使用されるケースが散見されることを認識したからこそ、自ら「Kinaesthetik/キネステティク」の使用をやめて、「Kinaesthetics/キネステティクス」に変更したのである。
被請求人は、請求人が「Kinaesthetik/キネステティク」=「看護・介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念」として継続使用されることについては警告等をおこなっておらず、自由な使用を容認する一方、被請求人は「Kinaesthetics/キネステティクス」についての正当な使用状況を確保・構築する意図を持って商標権の確立を企図したのである。
請求人においては、「看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等の応用される概念」として、これまで使用されてきた「Kinaesthetik/キネステティク」を将来とも論文標題等に取り入れて使用すればよいと考える。
オ 以上より、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しないというべきである。

4 当審の判断
(1)本件商標を構成する「Kinaesthetics」及び「キネステティクス」について
ア 「キネステティク(Kinasthetik)」について
(ア)米国の人類学者である「フランク博士」と心理療法士の「レニー博士」は、行動サイバネティクスと生理学を基盤として「動き」の機能と形式を研究し、両博士が開発した理論又はその教育課程の名称として、英語で「kinaesthetics」と名付けた。前記の理論又はその教育課程に関し、両博士は、ドイツ語圏での普及に際して、ドイツ語での表記を「Kinasthetik」とした。ドイツ語「Kinasthetik」は、両博士が創始した理論が、ドイツ語圏で教育される中で、特に看護の分野で「看護のKinasthetik」として広まるにつれ、「体位変換に応用される概念」を意味するものとして使われ始めるようになっていった(甲第4号証、甲第8号証、甲第12号証、甲第29号証、甲第61号証)。
(イ)「Kinasthetik(キネステティク)」は、最初にドイツで普及したため、ドイツ語表記「Kinasthetik」として1980年代から、ドイツ語圏であるドイツ・スイス・オーストリアで使用されてきた(甲第25号証)。そして、「体位変換に応用される概念」に関して、2000年頃に日本へ最初に紹介された際には、ドイツ語表記「Kinasthetik」に基づき、「キネステティク」として紹介された(甲第1号証、甲第16号証)。
(ウ)「キネステティク(Kinasthetik又はKinaesthetikの文字を含む。)」は、「体位変換に応用される概念」を意味するものとして、本件商標の査定時はもとよりその出願前から、我が国での紹介論文等において前記概念を表示するものとして一般に使用されており(甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証ないし甲第8号証、甲第10号証ないし甲第16号証、甲第18号証、甲第21号証ないし甲第25号証、甲第29号証ないし甲第32号証、甲第35号証ないし甲第37号証、甲第44号証、甲第45号証、甲第59号証ないし甲第61号証)、また、宮城大学には「日本キネステティク研究会」の事務局が置かれていることが認められる(甲第27号証)。
イ 「Kinaesthetics」及び「キネステティクス」について
(ア)前記アのとおり、「Kinasthetik」はドイツ語圏であるドイツ・スイス・オーストリアで使用されてきたものであるが、ドイツ語圏において看護の分野で「看護のKinasthetik」として広まるにつれ、同文字(語)は「体位変換に応用される概念」を意味するものとして使われるようになっていった。両博士は、自分たちの理論又はその教育課程の名称として、ドイツ語「Kinasthetik」の使用を止めて、新たに英語風ドイツ語表記として「Kinaesthetics」を採択した(甲第29号証、甲第32号証の1、甲第61号証、乙第7号証)。
(イ)両博士が設立した被請求人は、両博士が2003年に来日して以来、日本国内でのセミナーを定期的に開催し、2004年以降本件商標の査定時に至る時期のセミナーにおいて、「キネステティクス」「キネステティクス ベーシックコース」「キネステティクス アドバンスコース」といった表示を使用して、東京、名古屋、札幌等日本全国でセミナーを開催している(乙第11号証ないし乙第27号証)。
(ウ)「キネステティクス」又は「Kinaesthetics」が表示された証拠についてみると、澤口裕二医師外3名連記の2005年9月の論文(甲第3号証)には、要旨欄に「キネステティクスは『人間と動き』について考え、行動し、考えることである。」、「はじめに」欄に「キネステティクスは『動きの感覚』についての研究と実践である。」、「おわりに」欄に「・・・。キネステティクスは『動きの感覚』を基礎にして自分で検証し深めていける学問である。・・・。しかし、現在の日本ではキネステティクスのセミナーを受ける機会は多くない。・・・」との記載があり、これらの記載からすると、当該「キネステティクス」が、「体位変換に応用される概念」を意味するものとして記述されたとは認められない。
また、甲第17号証においては、「キネステティクス(Kinaesthetics)は、そんな私たちの生活の要とも言える“動き”を多角的な観点から捉えた学習システムです。」と記載されている。
そして、甲第19号証においては、「ドイツで看護教育にも取り入れられているキネステティクスという『動きの感覚の学問』について紹介します。」 と記載されている。
さらに、甲第38号証ないし甲第43号証において、「キネステティクス」あるいは「Kinaesthetics」の記載があるが、当該文字(語)を「セミナー形式の教育プログラム・・・」と記載していることなど、その記述内容と、記述者が被請求人の教育課程の受講者であること(乙第29号証ないし乙第36号証)からみて、いずれも、「キネステティクス」あるいは「Kinaesthetics」が被請求人の理論や教育課程を示すのに用いられたとみるのが相当である。
なお、甲第33号証の1及び乙第28号証について、同一論文内のタイトルでは、「・・・Kinaesthetik」を用いているものの、研究概要(最新報告)においては、「Kinaesthetics」のみが用いられている(乙第28号証)。また、甲第33号証の2については、研究概要の翻訳中では「キネステティクス」を用いているが、一方、同報告についての科学研究費補助金データベースに掲載の研究概要(最新報告)においては、「キネステティク概念」のみが用いられている(乙第28号証)。
ウ 上記のア及びイによれば、一部の論文等において、本件商標を構成する文字が混在した使用が認められるものの、「キネステティク」及び「Kinasthetik」の文字は、看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念の普通名詞ということができるものである。
これに対し、「キネステティクス」の文字は、英語風ドイツ語「Kinaesthetics」の表音を片仮名で表したものというのが相当であり、本件商標を構成する「Kinaesthetics」の欧文字及び「キネステティクス」の片仮名は、看護、介護の現場に取り入れられている体位変換等に応用される概念の普通名詞ではなく、被請求人に係る理論又はその教育課程を表示する標章(名称)というのが相当である。
エ 請求人は、「キネステティクス」は、片仮名表記では比較的長い6音から成る「キネステティク」の文字をすべて含み、語尾の「ス」の有無で異なるのみである。「ス」に対応する語尾の「s」は、「books」、「pencils」のように、英語の名詞の複数形を示す文字として、日本ではよく知られている。このため、「キネステティクス」及び「キネステティク」を看取又は聴取したとき、「キネステティク」及び「キネステティクス」はその単数形と複数形のように捉えられ、いずれも同じ意味の普通名詞として認識される旨主張する。
しかしながら、「キネステティク」が、「book」、「pencil」といったような、加算可能な概念を表す文字(語)とみるべき証左はなく、「キネステティクス」及び「キネステティク」が単数形と複数形の関係に捉えられ、いずれも同じ意味の普通名詞として認識され得るとすべき直接的で的確な証拠はない。したがって、請求人の上記主張は採用できない。
オ 請求人は、本件商標の登録査定日以前に、「キネステティクス」又は「キネステティク」が普通名詞としてタイトルに用いられた文献は、多数存在するとして甲第9号証を示している。
しかし、当該証拠においては、タイトル約80件が挙げられているところ、「キネステティクス」を表題の一部に用いているのは2件であり、その他は「キネステティク」が用いられたものである。
そして、その2件についても、前記の澤口裕二医師に係るものであって、仮令、同医師が混用した一時期があったとしても、他の証拠資料に係るその後の同医師の記述(甲第3号証、甲第29号証、甲第61号証)に照らしてみれば、遅くとも本件商標の出願時前には、同医師は、「キネステティクス」を被請求人に係るセミナー等を表す文字として理解していると認められるものであり、「キネステティクス」を「キネステティク」とは別異のものとして用いているとみるのが相当である。
してみると、「キネステティクス」が普通名詞としてタイトルに用いられた文献が多数存在するとの請求人の主張も、採用し難いものである。
カ さらに、請求人は、「キネステティク」及び「キネステティクス」が普通名称として知られていることを証する証明書(甲第63号証)を提出している。
しかし、甲第63号証は、「キネステティク及びキネステティクスは、いずれも同じ意味を表す普通名称として知られている。」等の同じ内容が印刷された書面に、証明者が署名、捺印する形式のものであるところ、当該証拠は、いずれの根拠に基づいて作成されたものか明らかではない。
また、甲第63号証の証明書には、徳永恵子氏、只浦寛子氏、黒田豊子氏等の請求人の関係者が複数含まれている(甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第9号証、甲第21号証ないし甲第23号証、甲第35号証、甲第36号証、甲第44号証、甲第45号証)。
キ さらに、請求人は、アンケート(甲第64号証)を提出している。
しかし、甲第64号証は、「キネステティク(Kinasthetik,Kinaesthetik:ドイツ語表記)とキネステティクス(Kinaesthetics:英語表記)は、いずれも同じ意味を表す学術用語であると思いますか。」という内容を看護師等に問うアンケートであるところ、当該証拠は、いずれの根拠に基づいて作成されたものか明らかではない。
(2)商標法第3条第1項第3号について
上記(1)のとおり、本件商標を構成する「Kinaesthetics」及び「キネステティクス」は、「Kinasthetik」及び「キネステティク」とは異なるものであり、特定の役務について具体的に質等を認識させる標章ではなく、被請求人に係る理論及びそのセミナー等を表示する造語標章というのが相当である。
そして、「Kinaesthetics」及び「キネステティクス」が、本件商標の指定役務について、その質(内容)等を表示する文字として一般的に使用されている事実もみいだせない。
してみれば、本件商標をその指定役務に使用しても、自他役務の識別標識としての機能を果たし得るものというべきであるから、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものとは認められない。
(3)商標法第4条第1項第16号について
前記のとおり、本件商標を構成する「Kinaesthetics」及び「キネステティクス」は、両博士による造語であって、具体的に特定の役務の質や内容を認識させるものではないから、本件商標のいずれの指定役務に使用しても、役務の質について誤認を生じさせるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものとは認められない。
(4)商標法第4条第1項第7号について
ア 本件商標は、その構成自体が、きょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合に該当しないことは明らかである。
そして、本件商標は、前記のとおり、両博士が創始し開発した理論又はその教育課程の名称を示す標章であって、両博士が設立した被請求人が行う役務について登録されたものである。しかして、本件商標を指定役務について使用することが社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するとは到底言い難いものであり、また、その出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠いたというような事情も認められない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標には該当せず、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものとはいえない。
イ 請求人は、「本件商標が、本件商標の一部の指定役務の質、内容を表す普通名詞であり、独占使用に適さない商標である。このような普通名詞について商標登録を認めると、学会論文を執筆するうえで表現が制限され、また、『キネステティクス』又は『Kinaesthetics』以外の用語を使用した場合、海外の論文との間で用語の差が生じるため、論文が国際的な評価を受けにくくなる。また、国の研究助成の公募では商業的な論文は対象にならないため、『キネステティクス』に関する研究は補助金を受けられなくなる。さらに、純粋に学問的な論文であるにもかかわらず、商標権者及びその代理店の広告とみなされ、正当な評価を受けにくくなる。日本の学術の発展及び日本の研究力が期待される国際的な発展を鑑みても、『Kinaesthetics』及び『キネステティクス』は普通名称であると認められるにも拘らず、このまま商標としておくことは大きな損失となることは明らかである」旨主張する。
しかしながら、前記(1)認定のとおりであり、「Kinaesthetics」及び「キネステティクス」を指定役務の質、内容を表す普通名称と位置付ける請求人の主張は、その前提において失当といわざるを得ない上、学術論文等においては、一般的な学術用語と位置付け得る「キネステティク」及び「Kinasthetik」(被請求人も「キネステティク」及び「Kinasthetik」が普通名詞として確立されている点については争っていない。)を用いて論文等を表現することが充分に可能であり、現に、甲号証の多数の論文等で当該表現が行われているところである。
さらに、自他商品・役務の識別標識としての機能を本質とする商標において、本件商標に基づく使用制限が、学術論文等における「キネステティク」に及ばないことも自明というべきであるから、請求人の前記主張は、これを採用することができない。
(5)本件商標の登録後に係る事情
全証拠に徴しても、本件商標の登録がされた後において、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するものとなった、あるいは、役務の質について誤認を生じさせるおそれのある商標に該当するものとなったとすべき事情や理由は、何らみいだせない。
(6)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第7号及び同第16号に違反して登録されたものではなく、登録がされた後においても同様であるから、同法第46条第1項第1号及び同第5号によって、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-03-23 
結審通知日 2012-03-28 
審決日 2012-04-10 
出願番号 商願2006-93723(T2006-93723) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Y414344)
T 1 11・ 6- Y (Y414344)
T 1 11・ 272- Y (Y414344)
T 1 11・ 13- Y (Y414344)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 酒井 福造 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2007-11-02 
登録番号 商標登録第5089059号(T5089059) 
商標の称呼 キネステティクス、キネステティックス 
代理人 清水 三沙 
代理人 植木 久彦 
代理人 渡辺 広己 
代理人 植木 久一 
代理人 須田 篤 
代理人 楠 修二 
代理人 菅河 忠志 
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