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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y41
審判 一部取消 商標の同一性 無効としない Y41
管理番号 1258173 
審判番号 取消2011-300433 
総通号数 151 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-07-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-05-10 
確定日 2012-05-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第5058266号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5058266号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成18年10月31日に登録出願、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),音響用又は映像用のスタジオの提供,録画済み磁気テープの貸与,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,光学機械器具の貸与」を指定役務として、同19年6月29日に設定登録されたものである。
本件審判請求の予告登録は、平成23年5月30日にされている。

第2 請求人の主張
請求人は、登録第5058266号商標の指定役務中「第41類 映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、旨の審決を求めると申し立て、その理由を、審判請求書、答弁に対する弁駁書、平成24年2月23日付け口頭審理陳述要領書(同年3月1日に口頭審理)及び同年3月16日付け上申書において、要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1ないし3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務の一部である「第41類 映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」について、商標権者によって継続して3年以上日本国内において使用されておらず、加えて、商標登録原簿上において、通常使用権及び専用使用権の設定登録がされておらず、使用権者が使用していることも考えられない(甲2)。
2 弁駁
(1)乙第1号証ないし乙第7号証について
商標権者がMICEサービスとしているのは、ブロードバンドを利用し、離れた場所でも同じ教室にいるかのように双方向でライブな研修が受けられるeラーニングシステムの提供であって、請求に係る指定役務のいずれの使用を立証するものではない。
ア 乙第1号証は、アドビ製品の導入事例として商標権者が紹介された記事であり、同人の遠隔研修システムMICE(Multifunctional Interactive Creative E-learning system)にアドビ製品を導入した経緯や効果が記載されているにすぎず、商標権者が請求に係る指定役務に本件商標を使用していることは明らかではない。
イ 乙第2号証は、商標権者のeラーニングシステムの資料であり、同人の提供するMICEが多機能性、双方向性、創造性を有するeラーニングシステムであることやそのシステム構成イメージ、学習機能の説明があるにすぎない。
ウ 乙第3号証は、商標権者の双方向ライブ型eラーニングのパンフレットであり、MICEが双方向ライブ型eラーニングシステムであって、需要者側のニーズで全社員研修・社長講和、成果発表会・コンテスト、営業所や代理店向けの説明会等に利用できることを紹介しているにすぎない。
エ 乙第4号証は、商標権者のセミナーコースガイドであり、ここで紹介されているMICEも双方向ライブ型eラーニングであって、同人の提供するプラットホームとして紹介されているにすぎない。
オ 乙第5号証は、商標権者が株式会社NTTビジネスアソシエ西日本向けに作成した「MICEを利用した映像会議システムのご提案」の資料であり、同資料では、MICEとは遠隔研修システムであり、会議や説明会など幅広いニーズに対応が可能であることや、MICEシステムを利用する場合の費用、推奨環境、MICEシステムの構成などが紹介されているが、これに請求に係る指定役務に関する記載はない。
カ 乙第6号証は、商標権者の「様々な育成施策の運営・サービスのご案内」の資料であり、同人の会社概要や事業内容等が紹介されている。この資料の5-2ではMICEの紹介がなされているが、MICEは双方向ライブ型eラーニングシステムであることやその特徴、利用実績例、利用時の風景等が紹介されているにすぎず、請求に係る指定役務に本件商標が使用されていることは認識できない。
キ 乙第7号証は、商標権者のセミナーコースガイドであって、「MICE(マイス)」の文字は目次部分にあるにすぎず、どのような内容を指すものであるか明確にされていない。
ク 小括
よって、被請求人の提出する乙第1号証ないし乙第7号証は、MICEを遠隔研修システムの提供として紹介するものにすぎず、いずれによっても、請求に係る指定役務に本件商標が使用されていることは明らかになっていない。
また、乙第2号証ないし乙第6号証には、本件商標と同じく正方形の中に「MICE」の文字が書された図形が表れているが、当該図形には「マイス/MULTIFUNCTIONAL/INTERACTIVE/CREATIVE/E-LEARNING SYSTEM」の文字が加えられており、本件商標と社会通念上同一のものとはいえない。
(2)乙第8号証ないし乙第13号証について
ア 乙第8号証は、「MICE運営業務に関する委託契約書」と「保守運用サービス契約書」とするものであり、両契約書は本件商標の下で請求に係る指定役務が実際に顧客に提供された事実を明らかにするものではない。
イ 乙第9号証は、「遠隔研修システム受講設備の使用に関する契約書」であるが、その内容は、商標権者が実施する遠隔研修システムを利用した遠隔研修等を受講するために、西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」という。)福岡支店が所有する受講設備を株式会社エヌ・ティ・ティ ネオメイト等の7社が使用することに関するものであって、本件商標の下で請求に係る指定役務が商標権者によって顧客に提供された事実を立証するものではない。
ウ 乙第10号証は、NTT西日本が行う「技術輸出管理勉強会」にMICEシステムを使用するための注文書、見積書であり、かかるシステムの提供は請求に係る指定役務と関係がない。また、当該見積書と注文書には、本件商標はどこにも表れていない。
したがって、商標権者がNTT西日本からの注文に応じて実際にサービスを提供したか、また、仮にサービスが提供されたとしても本件商標の下で提供されたかどうかが明らかではない。
エ 乙第11号証は、NTT西日本が行う「知的財産管理研修」に関する注文書、注文請書、見積書であり、その内容にはMICEシステムの使用が含まれているが、かかるシステムの提供は請求に係る指定役務と関係がない。また、当該注文書と注文請書には日付や捺印がなく、商標権者がNTT西日本からの注文に応じて実際にサービスを提供したかが明らかではない。加えて、当該注文書、注文請書、見積書のいずれにも本件商標は使用されておらず、それが実際に使用されたかどうかも明らかではない。
オ 乙第12号証は、NTT西日本が商標権者に委託する「平成22年度新任課長研修に関する業務」に係る業務委託契約書の1頁目と別紙1が提出されているのみであり、実際に本件商標の下で、請求に係る指定役務に関するサービスを提供したかは明らかではない。
カ 乙第13号証は、NTT西日本が商標権者に委託する「平成23年度『環境セルフチェックセミナー』及び『電子マニフェスト利用説明会』」に関する業務委託契約書等であるが、提出されている業務委託契約書と見積書だけでは、実際に商標権者のサービスが提供されたかどうかも明らかではない。
なお、他の「平成22年度『環境セルフチェックセミナー』および『電子マニフェスト利用説明会』の受講予定者の把握について(依頼)」の書面は、その内容が平成22年度のセミナーを対象としており、平成23年にサービスが提供されたことを明らかにするものではない。
また、乙第13号証で提出されている書面には、いずれも本件商標の記載がなく、本件商標の下でサービスが提供された事実も明らかになっていない。
キ 小括
よって、乙第8号証ないし乙第13号証においても、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標が請求に係る指定役務について使用されていたことは立証されていない。
(3)まとめ
以上より、商標権者が提出する乙第1号証ないし乙第13号証の証拠は、いずれも本件商標が日本国内において本件審判請求の登録前3年以内に請求に係る「映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」に使用されたことを立証するものではない。
3 平成24年2月23日付け口頭審理陳述要領書
(1)被請求人が本件商標を用いて提供していると主張する「セミナーの企画・運営又は開催」について
ア 被請求人の主張する役務は「セミナーの企画・運営又は開催」ではなく、「端末を用いて行なう通信ネットワークヘの接続の提供(第38類)」及び「通信ネットワーク(光フレッツ)を利用したeラーニングシステムの提供(第42類)」に該当するものである。
イ 商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈される(平成23年12月20日最高裁判決平成21年(行ヒ)第217号)。
被請求人が主張する「セミナーの企画・運営又は開催」は政令別表に記載されていない役務であるため、かかる役務の内容の解釈には国際分類を構成する類別表注釈の説明等を参酌することを要する。当該類別表注釈によると、第41類は、「主として、人又は動物の知能を開発するために人又は機関が提供する役務及び人を楽しませ又は人の注意を引くことを意図した役務が含まれる」とある。
ここで、被請求人が提出する証拠は次のとおりである。
乙第1号証では、独自の遠隔研修システムMICE(Multifunctional Interactive Creative E-learningsystem)であると説明されている
乙第2号証でも、使用にかかる商標中に「E-LEARNING SYSTEM」と付されているとおり、「具体的には研修のみならず、全支店リーダー会議や新商品説明会等でMICEを利用してもらい、幅広くお客様のお役に立つサービスを提供する」とあり、システムの提供であることが明白に記されている。
乙第3号証でも、ご利用シーン例として説明会が書かれているものの、被請求人が企画等したものとの記載はなく、被請求人はあくまでセミナーの手段(システム)を提供することが理解されるにすぎない。
乙第4号証は、セミナーコースガイドであるが、内容は教育や研修に使用できる映像の送信プラットフォーム・システムの紹介に過ぎない。
乙第5号証は、株式会社NTTビジネスアソシエ西日本に対する「MICEを利用した映像会議システムのご提案」であり、会議に利用できるMICEの閉域ネットワークヘの接続やシステム構成についての紹介にすぎない。また、そこにも「MICEとは、NTT西日本人事部人材開発部門様とNTTラーニングシステムズが共同開発した遠隔研修システムです」との明白な記載がある。
乙第6号証でも、実施イメージとして研修や、セミナー等の例が挙げられているものの、あくまでも研修やセミナーの方法として、フレッツ網を利用した遠隔研修システムの提供にすぎない。
乙第7号証でも、セミナーのプラットフォームとして紹介されているにすぎない。
このように、被請求人が主張する役務は、いずれも「主として、人又は動物の知能を開発するために人又は機関が提供する役務及び人を楽しませ又は人の注意を引くことを意図した役務」には該当しないものであり、商業等に従事する企業に対して、セミナーを開催するためのシステム環境や通信網を提供する役務であって、これは、システムの専門家によって提供される、インターネットを利用したセミナー活動のための、実用的なシステム及び通信に関連する役務に該当するものと判断するのが妥当である。
ここで、施行令別表によれば、第38類は電気通信に関する役務であり、国際分類を構成する類別表注釈には、「第38類には、主として、少なくとも一人の者が感覚を手段として他の者と通信することを可能にするサービスを含む。」「当該サービスには、次のものを含む。(1)他の者との会話を可能にするサービス、(2)他の者ヘメッセージを伝達するサービス、(3)他の者との音声又は視覚による通信をさせるサービス(ラジオ及びテレビジョン)」とある。「電気通信役務」については、電気通信事業法(昭和60年4月1日施行)第2条第1項第3号に、「三 電気通信役務電気通信設備を用いて他人の通信を媒介し、その他電気通信設備を他人の通信の用に供することをいう。」と定義されているが、被請求人の役務はまさにこの定義にあてはまるものである。また、第42類の同類別表注釈には、「第42類は主として、個別的又は集団的に人により提供されるサービスであって、諸活動のうちの複雑な分野の理論的又は実用的な側面に関連を有する者が含まれる。当該サービスは、・・・エンジニア、コンピュータ・スペシャリスト・・・等のような専門家によって提供されるものである。」とあり、被請求人が主張する役務は上記第38類の役務及び第42類の役務に該当すると捉えることができる。
被請求人は、「システム」の語はあくまでインフラ面を強調した表現であり、被請求人が提供しているのは、「当該システムを利用したセミナーの提供サービス」であり、「顧客のニーズにあわせて、セミナー等の内容を企画開発、作成し、場合によっては講師を派遣して研修、セミナー等を実施する」役務であると主張しているが、被請求人にかかるセミナー業務は企画なのか、運営なのか、開催なのか、について言及がなく、被請求人の証拠からは具体的に「セミナーの企画・運営又は開催」に該当する役務の提供と認めるに足りる証拠は存在しない。したがって、被請求人の主張する役務は通信インフラの提供の範疇を超えないとしか解釈できない。
(2)本件商標の使用態様と商標法第2条第3項との関係
被請求人は、乙第2号証ないし同第7号証が取引書類であり、商標法第2条第3項第8号に定める「役務に関する取引書類に標章を付して展示し、頒布する行為」に該当する旨主張するが、以下のようにいずれも証拠として採用できないものである。
乙第2号証は、単なるパワーポイントの企画書であり配布先である取引先も分からず、単なる内部資料にすぎない。
乙第3号証は、「eラーニングシステム」を紹介するパンフレットであることは認められるものの、使用時期が不明確であり証拠としては採用できない。
乙第4号証は、乙第3号証に該当するものであるが、「本ガイドの内容は2008年3月現在のものです」とあり、証拠としては採用できない。
乙第5号証は、単なるパワーポイントの企画書であり作成の事実は分かるものの配布の有無と使用時期が不明確であり証拠としては採用できない。
乙第6号証は、単なるパワーポイントの企画書であり、配布先である取引先が分からず、頒布の有無も不明確であり証拠としては採用できない。
乙第7号証も、「eラーニングシステム」を紹介するパンフレットであるが、どのような商標が実際に使用されているかが不明確であり、証拠としては採用できない。
(3)登録商標と使用商標の同一性について
被請求人は、使用商標中の「マイス/MULTIFUNCTIONAL/INTERACTIVE/CREATIVE/E-LEARNING SYSTEM」は付記的な部分であると主張し、「いわば本役務を記述的に表現した部分である。」旨説明しているが、被請求人の論理、即ち付加部分は記述的部分であるので付記的部分であり、それを含めた商標は同一性に影響を及ぼさないとの考え方は採用できない。
登録商標に識別力のない語を単純に付加して使用した場合であっても、使用にかかる商標全体の表示態様や、付加する語の意味合いによっては、付加部分も含めた全体で識別力を発揮する場合も考えられる。
本件商標「MICE」のみでは、「eラーニングシステム」との意味合いが生じないものの、「マイス/MULTIFUNCTIONAL/INTERACTIVE/CREATIVE/E-LEARNING SYSTEM」を付加することで、被請求人自らが本件商標は「eラーニングシステム」に使用していることを明確に告知しているものと考える。
つまり、被請求人の変更使用により、外観の同一性が異なるものになるのみならず、特に観念について、全く意味を生じさせない登録商標の態様が、使用商標の態様により「多機能で相互作用のある独創的なeラーニングシステム」を意味することとなり、観念において完全に一致しないものとなる。よって、本件商標と使用商標との社会通念上の同一性が肯定されるべきではない。
さらに、別掲(2)のとおり、本件商標は青色の正方形に図案化された無意味の欧文字「MICE」を横書きにしてなるものであるが、被請求人より実際の使用において付加された「マイス/MULTIFUNCTIONAL/INTERACTIVE/CREATIVE/E-LEARNING SYSTEM」の部分は「MICE」の欧文字とは異なる普通の書体で書かれたものであり、分かりやすく中央に書かれていることと相俟って、図案化された「MICE」の部分よりもある意味目立ち、需要者からもより注意が払われることが考えられる。したがって、かかる使用態様により、本来の登録商標が需要者の注意を惹く部分が変わることからも、使用商標は本件商標と社会通念上同一のものとはいえない。
更に付言すれば、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標の使用にかかる「マイス/MULTIFUNCTIONAL/INTERACTIVE/CREATIVE/E-LEARNING SYSTEM」の文字を加えた商標に接した際に、「eラーニングシステム」もしくは「eラーニングシステムの提供」にかかる商標であると捉えるのが自然である。つまり、被請求人の商標の使用態様からしても、役務の提供を受ける者として、「セミナーの企画・運営又は開催」との関係において本件商標が使用されているとは考えにくく、使用商標との関係においても被請求人の主張は妥当性に欠けるものである。
4 平成24年3月16日付け上申書
(1)乙第3号証について
被請求人が使用しているとする正方形の中に「MICE」の文字が記載された商標(以下、「使用商標」という。)が具体的な役務と密接して表されているのは、サービスプラットフォームの中の「本格的な専用システム構築」の部分にすぎない。当該部分には「お客さま専用のシステムを作ることにより・・・」「映像や音声の高品質化などお客さま環境に応じたカスタマイズが可能」とあり、使用商標が「通信ネットワーク(光フレッツ)を利用したeラーニングシステムの提供」のみに使用されていることが明らかである。
また、その上方に「手軽で安価なASPサービス」として「MICE-i」といった「MICE」の語を含む別のプラットフォームが表示されていることからしても、「MICE」=本件商標とはいえず、同パンフレット2頁の「サービス提供形態」の円柱上方に示された「MICE」が本件商標のもとで提供されるサービスの総称ということはできない。
商標法上の「役務」とは他人のためにする労務又は便益であって、付随的でなく独立して商取引の対象となり得るものをいうと解釈されている。確かに、乙第3号証のパンフレット1頁ないし3頁の上方、及び4頁の下方に大きく表示された使用商標は、「通信ネットワーク(光フレッツ)を利用したeラーニングシステムの提供」の識別標識としての機能を有している。しかし、同時に独立した役務「セミナーの企画・運営又は開催」の識別標識としても機能していると判断することは到底できない。具体的には、本パンフレットに接する取引者、需要者は、このパンフレットの記載内容をもって「セミナーの企画・運営又は開催」のみの提供を受けられるとは捉えることはできない。むしろ、上述したとおり、具体的な役務と密接して使用商標が使用されているのは「本格的な専用システム構築」の部分であるから、同パンフレットに接する需要者は、「MICE」というサービスがある中でも、使用商標は「システム構築」に係る商標であると理解するのが自然である。つまり、同パンフレットで告知されることは、使用商標が付されたシステムの提供を受けながら、付随役務としてのセミナー関連コンテンツの準備もある、という事実にすぎず、本号証をもって「セミナーの企画・運営又は開催」への本件商標の使用を示すものとはいえない。
たしかに、乙第11号証その他の注文書、見積書関連では、「研修準備費用」「講師料」等の記載があり、被請求人がセミナー業務を独立した役務として提供しているものと推認することは可能である。しかし、乙第3号証の2頁上部のコンテンツとして、「詳細については順次教育ポータルサイトLearningSite21(www.learningsite21.com)に掲載していきます」とあり、乙第4号証及び乙第7号証で具体的に示されている。これらは独立した役務としての「セミナーの企画・運営又は開催」ではあり、被請求人が提供しているとは認められるものの使用商標の使用の事実は確認できない。加えて、本審判において被請求人が提出した他の証拠をみても、使用商標は「セミナーのプラットフォーム」にしか使用されていないのであるから、これらを総合してみても、本件商標は「セミナーの企画・運営又は開催」に使用されているとは到底いえない。
さらに、被請求人は乙第3号証を本審判の要証期間内に配布したとして乙第17号証以下を提出しているが、乙第17号証ないし乙第21号証で配布したと主張する「MICEパンフ」「パンフMICE」が乙第3号証と一致しているかどうか、乙第21号証ないし乙第25号証で提供されたと主張するファイル名「dlO3-mice_a4lt.pdf」のファイルが乙第3号証と一致しているかどうかは立証されておらず、乙第3号証自体が市場において要証期間内に現実に配布又は頒布されたことを具体的に示すものは何ら見当たらない。
(2)乙第16号証について
被請求人は、乙第16号証を根拠に、セミナーの企画から運営、開催を行っていると主張する。
しかしながら、乙第16号証では、被請求人が本件商標のもとセミナーの企画・運営又は開催を行っていることは明らかではない。乙第16号証で「MICE」の言葉が使用されているのは、「別紙2実施計画書」中の「3.実施方法」における「MICEを利用した遠隔研修」のみであり、本件商標自体どこにも表れていない。
また、「MICEを利用した遠隔研修」との表現からすれば、ここでの「MICE」は遠隔研修のための通信プラットフォームにすぎないと解釈するのが自然である。
被請求人の主たる事業内容が「教育研修の企画・実施」であり、被請求人のホームページをみると、甲第3号証等、「MICE」とは関係なく様々な「セミナーの企画・運営又は開催」が提供されていることからしても、仮に被請求人が要証期間内に「セミナーの企画・運営又は開催」を行っていたとしても、その業務が全て本件商標のもとで行われているとは到底いえない。
よって、乙第16号証は、被請求人が本件商標を「セミナーの企画・運営又は開催」について使用したことを証明するものではない。
(3)総括
以上のように、被請求人が本審判の予告登録日である平成23年5月30日より前の3年以内に、本件商標と社会通念上同一の商標を本審判の請求に係る第41類「映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」について使用していたことは証明されていない。
したがって、請求人は、本審判請求書の請求の趣旨のとおり、商標法第50条第1項の規定に基づき、本件商標の登録を取り消すとの審決を求める。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を、答弁書、平成24年2月16日付け口頭審理陳述要領書(同年3月1日に口頭審理)及び同年3月9日付け上申書において、要旨次のように述べて、証拠方法として乙第1号証ないし乙第25号証を提出した。
1 答弁書
(1)商標権者について
商標権者は、クライアント組織のパフォーマンスアップのための課題解決を支援すべく、人材育成の実践に向けて、組織変革や営業力強化のコンサルティング、対面による集合研修やeラーニングによる遠隔研修、通信教育を組み合わせた複合的研修サービスを提供している(乙1)。
(2)本件商標について
本件商標の「MICE」は、「Multifunctional(多機能性)」、「Interactive(双方向性)」、「Creative(創造性)」、「E-learning System(Eラーニングシステム)」の4つの言葉の頭文字である「M」、「I」、「C」、「E」を抜き出し、これらを結合させた造語である。
(3)本件商標の使用について
商標権者は、本件商標の下、光ブロードバンド回線等を用いた、以下の特徴を有する双方向ライブ型遠隔研修システムを顧客に提供している。
ア 大画面高画質の映像と双方向性の確保で臨場感を提供し、ツールの活用により、受講者の理解度に基づいたリアルタイムなフィードバックを実現
イ 大量の人材を一気にスキルアップする教育ソリューションを提供
ウ 研修プログラムの企画開発、コンテンツ作り、講師派遣、研修実施オペレーション、他の研修との最適な組み合わせ等のサービスをワンストップで提供
本サービスの主たる用途は研修・教育であるが、商標権者は、「E-learning」を研修・教育という狭義の意味ではなく、「業務サポート」という広義の意味で捉え、顧客のニーズに対応しており、研修のみならず全支店のリーダー会議や代理店等向けの新商品説明会等で「MICE」を利用してもらい、幅広く顧客のお役に立つサービスを提供している(乙2ないし7)。
(4)「MICE」サービスの利用状況について
なお、「MICE」サービスの過去3年間の利用状況は乙第8号証ないし乙第13号証に示すとおりであって、顧客会社内での「技術輸出管理勉強会」、「知財管理研修」、「新任課長研修」、「環境セルフチェックセミナー」、「電子マニフェスト利用説明会」等に利用されている。
(5)まとめ
上記したとおり、商標権者が、本件商標を本審判請求の登録前3年以内に、日本国内において、請求に係る指定役務について使用していたことは明白であって、本件商標の登録は商標法第50条の規定によって取消されるべきものではない。
2 平成24年2月16日付け口頭審理陳述要領書
(1)被請求人が本件商標を用いて提供している役務の内容
ア 被請求人が本件商標を用いて提供している役務は、乙第2号証の2頁目に示す構成からなるシステムによって提供される。
すなわち、乙第2号証で示す構成は、例えば、「スタジオ(西日本研修センタ)」において講師及びその講義内容を撮影した映像及び集音した音声を西日本地域IP網及び光通信回線(Bフレッツ)を介して「受講教室(西日本)」に集まった受講者のパソコンに送信し、これによって受講者が講義を受講することができ、同時に、受講教室内の映像・音声を光通信回線及び西日本地域IP網を介して講師の居るスタジオに送信することによって、遠距離であっても、双方向で発信・受信をしながらセミナーを進行することができる、というものである。
乙第2号証に示す事例においては、配信センタ内のサーバ、及び東日本地域IP網、光通信回線を介することによって、講師は、東日本の受講教室とも双方向で映像、音声を受発信することができるし、東日本と西日本の受講教室同士も双方向で受発信することができる。
イ 被請求人は、ノイズが少なく、高速かつ長距離の伝送が可能である光通信を用いることによって、双方向型の研修が可能であることを強調すべく、本役務のことを、「システム」の語を用いて「双方向ライブ型遠隔研修システム」と称しているが、これは、あくまで本役務のインフラ面を強調した表現である。
被請求人が提供している役務はシステムの提供ではなく、当該システムを利用して、顧客に対して、被請求人が企画・立案した研修、セミナー、説明会、講演会等を提供するというものである。
具体的には、乙第3号証に示すように、顧客のニーズに合わせて、研修、セミナー等の内容を企画開発、作成し、場合によっては講師を派遣して研修、セミナー等を実施していくというものである。
ウ この点、請求人は、「被請求人が本件商標の下、顧客に提供しているとする『双方向ライブ型遠隔研修システムの提供』は、双方向ライブ型遠隔研修のための閉域ネットワークにおける通信の提供に該当するものであり、本件審判の請求に係る第41類の指定役務への商標の使用には該当しないものである。」と主張するが、これは、上記したように、被請求人が提供する役務の提供手段のみに注目した議論であって、被請求人が提供している役務全体に目を向ければ、その役務内容が「セミナーの企画・運営又は開催」であることは明白であり、このことは既に提出した証拠から容易に理解できる。
(2)本件商標の使用態様と商標法第2条第3項との関係
乙第2号証ないし乙第7号証として提出した書類は、顧客あるいは見込み客に対して本件商標に係る役務の内容、メリット等を理解してもらうための頒布物であって、当該役務の内容が明記されているものであるから、これらの書類は、いわゆる「取引書類」に該当する。そして、これらの書類には本件商標が使用されている。
したがって、乙号証において示す使用態様は、商標法第2条第3項第8号に定める「役務に関する取引書類に標章を付して展示し、頒布する行為」に該当するものである。
(3)登録商標と使用商標との同?性について
ア 本件商標と使用商標とは社会通念上の同一性を有するものである。
すなわち、使用商標においては、登録商標が何ら分断されたり、省略されたりすることなく、登録された形態がそっくりそのまま表示されている。請求人はその使用形態に「マイス/MULTIFUNCTIONAL/INTERRACTIVE/CREATIVE/E-LEARNINGSYSTEM」の文字が加えられていることを問題としているようであるが、登録商標が登録された形態で一体として表示されている以上、登録商標が使用されていることに間違いない。事実、登録商標が容器やラベル等に表示されるときは需要者へのアピールを狙い、登録商標の周辺に他の効果的な文字、図形、色彩等が付されて使用されるのが現実だからである。
なお、当該文字部分は、「MICE」の文字に比して6分の1程度の非常に小さな文字で表示されているものであって、外見上目立たないものである。一方、「MICE」の文字は中央上方に大きく表示されているものであって、強く注意を惹くものである。
したがって、外見上、一見して、当該文字部分は付記的な部分であると認識される。
また、当該文字部分中「マイス」の片仮名文字は「MICE」の読みを表したものと容易に認識させるものであって、「MICE」とともに本件商標の要部を構成するものである。
さらに、当該文字部分中の欧文字部分については、各々の語は、「MULTIFUNCTIONAL」が「多機能の」、「INTERRACTIVE」が「相互作用の」、「CREATIVE」が「独創的な」、「E-LEARNINGSYSTEM」が「e-ラーニングシステム」の意味を表すものである。
これらの語は、本件商標に係る役務の特徴を端的で解り易く表現したものであって、いわば本役務を記述的に表現した部分である。
したがって、当該欧文字を上下4段に表した部分は、外見的にも実質的にも付記的な部分である。
因みに、本件商標は、これらの英単語の頭文字を採って創られたものであって、本件商標は「多機能性(Multifunctional)、双方向性(Interactive)、創造性(Creative)の面で優れた特徴をもつEラーニングシステム(E-learningSystem)」に由来するものである(乙2及び6)。
よって、「マイス/MULTIFUNCTIONAL/INTERRACTIVE/CREATIVE/E-LEARNINGSYSTEM」の部分は、外見的においても、また実質的においても、独立した商標として機能するようなものではなく、本件商標の識別性、言い換えれば本件商標との同一性に影響を及ぼすものではない。
イ 上記したように、登録商標の現実の使用においては、ほとんどの場合、その役務内容、提供手段、提供場所等の表示を伴って表記されるのが通常であって、登録商標を他の説明文と近接して表示することも日常的に行われているものである。現実の取引界におけるこのような商標の使用方法に慣れ親しんでいる需要者は、「マイス/MULTIFUNCTIONAL/INTERRACTIVE/CREATIVE/E-LEARNINGSYSTEM」の文字部分を付記的な部分と容易に理解、認識するものであって、当該部分を独立した要部と認識するようなことはない。
よって、「マイス/MULTIFUNCTIONAL/INTERRACTIVE/CREATIVE/E-LEARNINGSYSTEM」が付加されているとは言え、使用商標は本件商標と社会通念上同一というべきものであって、被請求人は、現実に本件商標を使用していたものである。(乙14及び15)。
3 平成24年3月9日付け上申書
(1)被請求人が提供している役務について
ア 被請求人が提供する役務が単なる通信インフラの提供のみではなく、「セミナーの企画・運営又は開催」にも該当するものであることは、例えば、乙第3号証として提出した、本役務に関するパンフレット上の記載、及び乙第16号証として提出するNTT西日本との業務委託契約書等からも明らかである。
すなわち、乙第3号証の2頁においては、その左上方に「サービス提供形態」の表題の下、本役務を、「コンテンツ」、「運用サービス」、「サービスプラットフォーム」の3つの構成要素に分けて図示している。そして、各要素について、残りの紙面を利用して説明している。
まず「コンテンツ」については、「お客さまのニーズに合わせて、オリジナルコンテンツや社内研修コンテンツをスピーディーに企画・制作いたします。」と記載されており、これは、顧客が希望する研修依頼に基づき、講師、教材、実施方法等の研修の内容を被請求人が企画・制作する、という意味である(実際には、何に関する研修を行うのかも含めて顧客から丸投げされるケースもある。)。
次に「運用サービス」については、「NTT LSスタジオ貸出し」(なお、「NTT LS」は被請求人の略称である。)、「出張スタジオ技術スタッフ派遣」、「MICEトレーナーSchool」との見出しがあるところ、特に、「出張スタジオ技術スタッフ派遣」においては、「NTT LSスタッフがお客さま宅へ機材を持参し、研修用の臨時スタジオを設営、操作」と、「MICEトレーナーSchool」においては、「MICEで講師を担当される方のために操作実習や受講者をあきさせない研修カリキュラム作りをアドバイス」と説明されている。
上記したパンフレット上の記載から、被請求人が、単なる通信インフラを提供するのみではなく、セミナーの企画・運営・開催も含めて提供していることは明白である。
なお、請求人は、「サービスプラットフォーム」の欄において、「本格的な専用システム構築/MICE(マイス)/お客さまのシステムを作ることにより、研修だけでなく会議や意見交換、セミナーなど社内で最大限に活用することができます。」との記載があることから、「通信インフラ」の提供のみについて本件商標を使用していると主張している。
しかしながら、2頁の「サービス提供形態」においては、円柱形の図の天面に「MICE」の表示があり、側面には、その上方から下方にかけて「コンテンツ」、「運用サービス」、「サービスプラットフォーム」の3つを掲げていることから、「コンテンツ」、「運用サービス」、「サービスプラットフォーム」の全てを含めて「MICE」と称していることは明らかであるし、本件商標が表示されているのは「サービスプラットフォーム」の部分のみではなく、本パンフレットの1頁ないし3頁の上方、及び4頁の下方に大きく、独立して表示されているものであるから、パンフレット全体を見れば、本件商標が通信インフラの提供のみならず、セミナーの企画・運営・開催を含めたサービス全般について使用されているものであることは一目瞭然である。
イ なお、被請求人が本役務を現実に提供していることについては、例えば、乙第16号証として提出する業務委託契約書等からも明らかである。
すなわち、本契約書は、NTT西日本と被請求人との間で、平成23年4月21日に締結された、「環境セルフチェックセミナー」及び「電子マニフェスト利用説明会」に関するものであるところ、当該契約に関連する書類、例えば、御見積書においては、「企画調整費」、「メイン講師費」、「効果測定問題開発費」、「テキスト代(開発、印刷、搬送費含む)」といった費用項目が挙げられている(乙13)。
したがって、被請求人が、現実にセミナーの企画から運営、開催を行っていることは明らかである。
なお、乙第13号証として提出した契約書は草案段階のものであって、その締結年月日が明示されていなかったことから、新たに乙第16号証として、契約書の原本の写しを提出する。
(2)乙第3号証に係るパンフレットについて
ア 請求人は、乙第3号証のパンフレットについて、「使用時期が不明確であり、証拠として採用できない。」と主張している。
確かに、当該パンフレットには作成年月日を認識できる表示がないことから、以下に、当該パンフレットが本審判の予告登録日前3年以内に、作成され、かつ、電磁的方法により提供されたものであることを立証する。
イ まず本パンフレットの作成時期についてであるが、本パンフレットは、平成21年5月19日に被請求人が株式会社フジプランズに対して500部の改定・増刷を注文し、同年5月21日に納品してもらったものである。このあたりの事情については、「注文書」(乙17)、「注文請書」(乙18)、「納品書」(乙19)、「業務完了確認書」(乙20)及び株式会社フジプランズのホームページ(乙21)に示すとおりである。
なお、上記取引書類においては、本パンフレットのことを「MICEパンフ」あるいは「MICE」と表記されている。
ウ 次に本パンフレットの配布方法であるが、本パンフレットは被請求人会社の営業担当が直接顧客に配布することもあるが、需要者は、被請求人のホームページからダウンロードすることも可能である。
立証の容易性の観点から、本上申書においては、ホームページに掲載されたパンフレット、並びに本パンフレットが掲載され、ダウンロードされた履歴等を証拠として提出する。
まず、パンフレットヘのアクセス方法であるが、これは乙第22号証に示されている。まず「Learning Site 21」ヘアクセスし、サイトが表示されたら右上方の「各種受講ガイド」をクリックする。次のページでは左下方の「人材育成ソリューション・実務支援ソリューション」をクリックし、次のページで「MICE」をクリックするとパンフレットが表示され、ダウンロードすることが出来る。
当該サイトに本パンフレットがアップされたのは2008年(平成20年)9月29日であって、このことは乙第23号証として提出する「Learning Site 21 パンフレットデータの格納先(サーバにおける格納データ画面キャプチャ)」に示すとおりである。因みに本パンフレットのファイル名は「dlO3-mice_a4lt.pdf」である。
本パンフレットがダウンロードされた履歴については、乙第24号証として提出するアクセス履歴に示すとおりである。古い履歴は削除していることから、2009年(平成21年)10月29日以降のものしか履歴がないところ、乙第24号証は、2009年10月29日から同年12月28日までの履歴である。当該履歴データ中、「内容」の項目における「GET」の表示がダウンロードされたことを表している。また、右端に表示された「dlO3-mice_a4lt.pdf」は上記した「ファイル名」と一致しており、これにより本パンフレットがダウンロードされたことが客観的に把握できる。
乙第25号証として提出するのは本サイトにアップされているパンフレットそのものである。
エ 本審判の予告登録日は平成23年5月26日であるから、乙第3号証として提出したパンフレットが、予告登録日前3年以内に、作成され、かつ、電磁的方法によって提供、あるいは頒布されたことについては、乙第17号証ないし乙第25号証から明らかである。
(3)総括
以上述べたように、被請求人は、本審判の予告登録日である平成23年5月26日より前の3年以内に、本件商標と社会通念上同一の商標を、取消を請求されている指定役務中、第41類の「セミナーの企画・運営又は開催」について使用していたものであるから、本件商標の登録は、商標法50条の規定によって取消されるべきものではない。
よって、答弁の趣旨のとおりの審決を求める。

第4 当審の判断
1 事実認定
(1)乙第3号証は、被請求人の「『MICE』サービスのパンフレット」であり、その1頁には「マイス/MICE(双方向ライブ型eラーニング/M.I.C.E(Multifunctional Interactive Creative E-learning System)」の表題の下、「MICEとは? “光ブロードバンド”をバックボーンにしたバーチャル集合研修!」と記載、2頁には、「サービス提供形態」の表題の下、当該サービスの内容が「コンテンツ」、「運用サービス」、「サービスプラットフォーム」の3つの項目に分けて図示されており、「コンテンツ」の一つとして「セミナー」と記載されている。そして、「コンテンツ」については、「お客さまのニーズに合わせて、オリジナルコンテンツや社内研修コンテンツをスピーディーに企画・制作いたします。」と記載されている。「運用サービス」については、「出張スタジオ技術スタッフ派遣」として、「NTT LSスタッフがお客さま宅へ機材を持参し、研修用の臨時スタジオを設営、操作。」と記載、「サービスプラットフォーム」については、「本格的な専用システム構築/MICE(マイス)」として、「お客さまのシステムを作ることにより、研修だけでなく会議や意見交換、セミナーなど社内で最大限に活用することができます。」と記載されている。
また、本件商標と同一の構成態様のものに、極めて小さく5段書きされた「マイス」、「MULTIFUNCTIONAL」、「INTERACTIVE」、「CREATIVE」及び「E-LEARNING SYSTEM」の文字を、「micE」の欧文字の下に加えたもの(以下「使用商標」という。)が、本パンフレットの1頁ないし3頁の左上及び4頁の右下等に表示されている。
さらに、1、2及び4頁の下段には、「お問合せ・お申込み」として、「NTTラーニングシステムズ株式会社」の名称が、そのeメールアドレス及び電話番号(総合研修事業部及び西日本事業部)とともに記載されている。
(2)乙第16号証は、NTT西日本が被請求人に委託する平成23年度「環境セルフチェックセミナー」等に関する「業務委託契約書」であり、平成23年4月21日に締結されており、別紙2の「実施計画書」には、「1.実施セミナー」として「環境セルフチェックセミナー」と記載、「2.実施日時」として「第1回 平成23年4月26日(火)」及び「第2回 平成23年4月27日(水)」と記載、「3.実施方法」として「MICEを利用した遠隔研修」と記載、「6.実施内容」として「外部研修機関(NTTラーニングシステムズ)による講義及び効果測定」と記載されている。そして、その「御見積書」(乙第13号証)においては、「見積年月日」として「平成23年4月7日」と記載、「件名」として「H23度環境セルフチェックセミナー等の実施」と記載、「項目」として「企画調整費」、「メイン講師料」、「効果測定問題開発費」、「テキスト代(開発、印刷、搬送費含む)」「MICEシステム使用料」等が項目毎の見積金額とともに記載、「備考」として「研修実施日:平成23年4月26、27日」と記載されている。
(3)乙第17号証は、被請求人から株式会社フジプランズ宛の平成21年5月19日付けの「注文書」であり、「3.納期」として「平成21年5月22日」、「5.品名及び数量」として「品名:MICEパンフ」、「数量:500」と記載されている。
(4)乙第18号証は、株式会社フジプランズから被請求人宛の2009年5月19日付けの「注文請書」であり、「業務内容」として「1 LS主要サービスパンフ改訂・増刷」及び「MICEパンフ 500部」、「納入時期」として「2009年5月22日」と記載されている。
(5)乙第19号証は、株式会社フジプランズから被請求人宛の平成21年5月21日付けの「納品書」であり、納品した品名及び数量として「4 パンフMICE 500部」と記載されている。
(6)乙第20号証は、被請求人から株式会社フジプランズ宛の「業務完了確認書」であり、「1.業務名」として「LS主要サービスパンフ改訂・増刷」、「2.部数」として「・MICEパンフ 500部」、「3.業務完了日」として「平成21年5月22日」と記載されている。
(7)以上の証拠及び被請求人の主張等を勘案すれば、以下の事実が認められる。
まず、被請求人の「『MICE』サービスのパンフレット」(乙3)には、1頁ないし3頁の左上及び4頁の右下等に、当該パンフレット全体の商標として、使用商標が顕著に表示されているものと認められる。そして、当該パンフレットの2頁の「サービス提供形態」の記載よれば、使用商標のもとで提供されているMICEサービスの内容は、「コンテンツ」、「運用サービス」、「サービスプラットフォーム」の3分野に分かれており、「コンテンツ」サービスの一つとして、顧客のニーズに合わせて、オリジナルのセミナーを企画・制作していること、「運用サービス」の一つとして、被請求人のスタッフが顧客まで機材を持参し、セミナー用の臨時スタジオを設営、操作していることなどが認められる。
そして、当該「『MICE』サービスのパンフレット」(乙3)は、被請求人から注文を受けた株式会社フジプランズによって、500部作成され、平成21年5月21日に被請求人に納品されたものと認められる(乙17ないし20)。
さらに、NTT西日本から委託を受けた被請求人は、平成23年4月26、27日に、MICEシステムを利用した「環境セルフチェックセミナー」等を実施しており、その見積書において、「MICEシステム使用料」とは別に、「企画調整費」、「メイン講師料」、「効果測定問題開発費」、「テキスト代(開発、印刷、搬送費含む)」等が、それぞれの見積金額とともに記載されていることからして、被請求人による当該セミナー等の実施においては、MICEシステムの利用とは別途独立のサービスとして、当該セミナーの企画・運営又は開催がなされたものと認められる(乙13及び16)。
2 判断
前記1で認定した事実に基づき、以下、判断する。
(1)使用商標、使用者について
ア 本件商標は、別掲(1)のとおり、青色四角形内の中央上部にデザイン化された「micE」(各文字は高さを同じくする。「m」及び「c」の文字は左肩部分が正方形型に欠けており、「i」の文字のドット部分は黄色の正方形で表されており、「E」の文字の真ん中の横線は短く表されている。以下同じ。)の欧文字を大きく表し、「i」の文字の黄色の正方形と同一の図形が、「m」の文字の中央の縦線の直下と「E」の文字の真ん中の横線の右横に配された構成からなるものである。
他方、使用商標は、乙第3号証の1頁ないし3頁目の左上及び4頁目の右下等にあるとおり、本件商標と同一の構成態様のものに加えて、5段書きされた「マイス」、「MULTIFUNCTIONAL」、「INTERACTIVE」、「CREATIVE」及び「E-LEARNING SYSTEM」の文字が、中央上部の「micE」の欧文字の下に極めて小さく表されてなるものである。
しかしながら、当該5段書きの文字部分は、中央上部に顕著に表された「micE」に比べて極めて小さく表されていること、また、当該文字中の片仮名「マイス」は、単に「micE」の読みを表したものと容易に認識されること、さらに、当該文字中の欧文字は、「micE」の各文字を頭文字とする英単語を記述的に表したものと容易に認識されることからすれば、使用商標の要部は、依然として中央上部に顕著に表された「micE」の部分であって、当該5段書きの文字部分が加わったとしても、本件商標の識別性に影響を与えることはないものというべきである。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標というのが相当である。
イ また、乙第3号証には、「お問合せ・お申込み」として、いずれも、被請求人である商標権者の名称「NTTラーニングシステムズ株式会社」がそのeメールアドレス及び電話番号とともに記載されていることから、使用商標の使用者は、商標権者と認められる(この点について争いはない。)。
(2)使用役務、使用時期等について
ア 被請求人の「『MICE』サービスのパンフレット」(乙3)には、1頁ないし3頁の左上及び4頁の右下等に、当該パンフレット全体の商標として、使用商標が顕著に表示されていること、当該パンフレットの2頁によれば、使用商標のもとで提供されているMICEサービスの内容として、顧客のニーズに合わせて、オリジナルのセミナーを企画・制作していること、また「運用サービス」の一つとして、被請求人のスタッフが顧客まで機材を持参し、セミナー用の臨時スタジオを設営、操作していること、当該パンフレットは、被請求人から注文を受けた株式会社フジプランズによって、500部作成され、平成21年5月21日に被請求人に納品されたこと(乙17ないし20)、NTT西日本から委託を受けた被請求人は、平成23年4月26、27日に、MICEシステムを利用した「環境セルフチェックセミナー」等を実施しており、その見積書において、「MICEシステム使用料」とは別に、「企画調整費」、「メイン講師料」、「効果測定問題開発費」、「テキスト代(開発、印刷、搬送費含む)」等が、それぞれの見積金額とともに記載されていること(乙13及び16)を総合勘案すれば、商標権者は、単なるMICEシステムの利用にとどまらず、別途独立のサービスとして請求に係る指定役務中「セミナーの企画・運営又は開催」の役務をMICEサービスの中で提供していたものといえ、当該MICEサービスのパンフレット(乙3)に使用商標を付し、これを頒布していたものと推認し得る。
そして、被請求人(商標権者)の上記行為は、「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するものである。
イ 使用時期については、被請求人からの注文を受けた株式会社フジプランズによって作成された「『MICE』サービスのパンフレット」(乙3)500部が、平成21年5月21日に被請求人に納品されたものと認められること(乙17ないし20)、さらに、NTT西日本から委託を受けた被請求人が、平成23年4月26、27日に、MICEシステムを利用した「環境セルフチェックセミナー」等を実施したこと(乙13及び16)からして、当該パンフレットは、納品後、少なくとも平成23年4月までの間に頒布されたものと推認し得る。これは、本件審判の請求の登録(平成23年5月30日)前3年以内である。
ウ また、乙第3号証のパンフレットが日本語で書かれていることからして、明らかに日本国内で使用されたものと推認し得る(この点において特に争いはない。)。
(3)請求人の主張について
請求人は、「乙第3号証のパンフレットに表示された使用商標は、『通信ネットワーク(光フレッツ)を利用したeラーニングシステムの提供』の識別標識としての機能を有しているが、同時に独立した役務「セミナーの企画・運営又は開催」の識別標識としても機能していると判断することは到底できない。具体的な役務と密接して使用商標が使用されているのは『本格的な専用システム構築』の部分であるから、同パンフレットに接する需要者は、『MICE』というサービスがある中でも、使用商標は『システム構築』に係る商標であると理解するのが自然である。同パンフレットで告知されることは、使用商標が付されたシステムの提供を受けながら、付随役務としてのセミナー関連コンテンツの準備もある、という事実にすぎず、本号証をもって「セミナーの企画・運営又は開催」への本件商標の使用を示すものとはいえない。」旨主張している。
しかしながら、使用商標は、乙第3号証のパンフレットの1頁ないし3頁の左上及び4頁の右下等に、当該パンフレット全体の商標として、顕著に表示されているものと認められることは、前記したとおりである。そして、当該パンフレットの2頁には、セミナーの企画・制作等を含む「コンテンツ」サービスが、専用システム構築を含む「サービスプラットフォーム」などとは別項目として掲載されていることからして、当該「コンテンツ」サービスは、システム構築等に伴う付随的なサービスなどではなく、同列のサービスと理解するのが自然である。したがって、請求人の主張を採用することはできない。
また、請求人は「被請求人は乙第3号証を本審判の要証期間内に配布したとして乙第17号証以下を提出しているが、乙第17号証ないし乙第21号証で配布したと主張する『MICEパンフ』『パンフMICE』が乙第3号証と一致しているかどうかは立証されておらず、乙第3号証自体が市場において要証期間内に現実に配布又は頒布されたことを具体的に示すものは何ら見当たらない。」旨主張している。
しかしながら、被請求人と株式会社フジプランズとの間の「LS主要サービスパンフ改訂・増刷」業務に関する「注文書」(乙17)、「注文請書」(乙18)、「納品書」(乙19)、「業務完了確認書」(乙20)は、日付や内容において一連のものとみることができ、また、乙第3号証のパンフレットについて、品名として「MICEパンフ」又は「パンフMICE」と表記することは特段不自然なことではないから、請求人の主張を採用することはできない。
さらに請求人は、「乙第16号証で『MICE』の言葉が使用されているのは、『別紙2 実施計画書』中の『3.実施方法』における『MICEを利用した遠隔研修』のみであり、本件商標自体どこにも表れていない。また、『MICEを利用した遠隔研修』との表現からすれば、ここでの『MICE』は遠隔研修のための通信プラットフォームにすぎないと解釈するのが自然である。よって、乙第16号証は、被請求人が本件商標を『セミナーの企画・運営又は開催』について使用したことを証明するものではない。」旨主張している。
しかしながら、前記したとおり、本件商標の使用は、MICEサービスのパンフレット(乙3)に使用商標を付し、これを頒布したと推認し得ることによるのであって、乙第16号証に本件商標が使用されていることによっているわけではないから、請求人の主張を採用することはできない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者が本件請求に係る指定役務中「セミナーの企画・運営又は開催」について、本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことを証明したというべきである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標(色彩については原本参照)



(2)使用商標(色彩については乙第3号証参照)



審理終結日 2012-03-21 
結審通知日 2012-03-22 
審決日 2012-03-30 
出願番号 商願2006-101231(T2006-101231) 
審決分類 T 1 32・ 11- Y (Y41)
T 1 32・ 1- Y (Y41)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲村 秀子田崎 麻理恵 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
森山 啓
登録日 2007-06-29 
登録番号 商標登録第5058266号(T5058266) 
商標の称呼 マイス、ミセ 
代理人 小出 俊實 
代理人 吉田 親司 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 潮崎 宗 
代理人 橋本 良樹 
代理人 特許業務法人三枝国際特許事務所 
代理人 幡 茂良 
代理人 石川 義雄 

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