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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) X42
管理番号 1256580 
異議申立番号 異議2011-900319 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-09-05 
確定日 2012-04-16 
異議申立件数
事件の表示 登録第5415969号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5415969号商標の指定役務中、第42類「電子計算機用プログラムの提供」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務商品についての商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5415969号商標(以下「本件商標」という。)は、「瞬索くん」の文字を標準文字で表してなり、平成22年11月10日に登録出願され、第42類「機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として、平成23年4月12日に登録査定、同年6月3日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人が引用する登録商標は、以下のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第3205543号の1商標(以下「引用商標1」という。)は、「瞬索」の文字を書してなり、平成6年3月7日に登録出願、第9類「配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケ?ブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,レコ?ド,録画済みビデオディスク及びビデオテ?プ,家庭用テレビゲ?ムおもちゃ」を指定商品として、平成8年10月31日に設定登録され、平成22年8月5日に「家庭用テレビゲームおもちゃ」について登録第3205543号の2へ分割移転されたものである。
(2)登録第4729484号の1商標(以下「引用商標2」という。)は、「Shunsaku」の文字を標準文字で表してなり、平成15年5月28日に登録出願、第9類「金銭登録機,現金自動預金支払機,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,電気通信機械器具,電子計算機,電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,家庭用テレビゲームおもちゃ,家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム,家庭用テレビゲームおもちゃ用ゲームプログラム,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,レコード,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,ダウンロード可能な音楽,録画済みビデオディスク及びビデオテープその他の録画済み記録媒体,ダウンロード可能な画像,電子出版物(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるものを含む。)但し、電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,家庭用テレビゲームおもちゃ,家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム,家庭用テレビゲームおもちゃ用ゲームプログラム,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD?ROMを除く」を指定商品として、平成8年10月31日に設定登録され、平成22年8月5日に「電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,家庭用テレビゲームおもちゃ,家庭用テレビゲームおもちゃ用のプログラム,家庭用テレビゲームおもちゃ用ゲームプログラム,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD?ROMを除く」について登録第4728484号の2へ分割移転されたものである。
以下、これらをまとめて「引用各商標」という場合がある。

3 登録異議の申立ての理由
(1)本件商標と引用各商標の対比
本件商標は、熟語として特定の意味を有しない造語である「瞬索」の文字と、同輩や目下の人の姓名に付けて、親しみや敬意を表す語として用いられる「君」に通ずる「くん」の文字を結合してなるものと容易に理解されるものである。
しかして、本件商標は、その構成中後半の「くん」の文字部分が、構成中前半の「瞬索」という造語に付加したものにすぎないものと認識され、格別印象に残る部分とはいえず、また、構成全体として特定の観念をもって親しまれた一体不可分の熟語等を表すものとはいえないことから、これに接する需要者・取引者は、当該「くん」の文字部分を省略し、「瞬索」という造語を自他役務の識別標識としてとらえ、これより生ずる称呼「シュンサク」をもって取引に当たる場合も決して少なくないといえる。
そうとすれば、本件商標は、全体として「シュンサククン」の称呼を生ずるほか、前半の「瞬索」の文字部分に相応した「シュンサク」の称呼を生ずるものである。
他方、引用商標1は、「瞬索」の文字よりなり、引用商標2は「Shunsaku」の文字を書してなるものであって、いずれも「シュンサク」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標は、引用商標1及び引用商標2と「シュンサク」の称呼を同じくするものであり、また、引用商標1とは「瞬索」の外観においてもある程度近似した印象を与えることから、本件商標は、引用商標1及び引用商標2と全体として相紛れるおそれのある類似の商標である。
(2)本件商標と引用各商標の指定商品及び指定役務の対比
引用商標1及び引用商標2の指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」には、「電子計算機用プログラム」が含まれるが、「電子計算機用プログラム」は、引用商標の指定役務中の「電子計算機用プログラムの提供」と類似するものである(特許庁商標課編「類似商品・役務審査基準[国際分類第9版対応] 甲第6号証)。
(3)以上のように、本件商標は、引用商標1及び引用商標2と称呼において極めて類似すると共に、引用商標1とは外観において極めて類似し、また、その指定役務も引用商標1及び引用商標2の指定商品と、同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

4 当審において通知した取消理由(要旨)
本件商標は、引用商標1(以下、引用商標1を「引用商標」という。)と類似する商標であって、本件商標の指定役務中の「電子計算機用プログラムの提供」は、引用商標の指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」に含まれている「電子計算機用プログラム」と類似する役務である。
したがって、本件商標は、その指定役務中、第42類「電子計算機用プログラムの提供」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

5 商標権者の意見
(1)本件商標の特定
本件商標は、漢字「瞬索」と平仮名「くん」を一連に横書きした構成であり、その構成文字が同書同大で記され、空白等の区切りは存在しないため、全体として一連かつ一体的な構成となっており、その構成より「シュンサククン」の一連の称呼のみが自然に生ずるものである。また、「瞬索」は、「瞬」の文字より、「瞬間的な。すばやい。」の意を観念させ、「索」の文字は「綱」や「縄」の意を有することから「手づるによって探し求める」の意を有するものであり、「検索」や「探し求める」の観念を生ずる。これを連結して熟語的な観念を抽出すると、「瞬索」は各語の意味から「瞬間的に探し出す」「すばやく検索する」のような観念を生ずるものである。さらに本件商標の「くん」は、通常、人の名前を呼ぶときに付加する文字であり、特に親しみをこめて使用する際に付加的に使用するものである。よって、本件商標「瞬索くん」は、一体不可分の擬人化した愛称として「すばやく検索することができるものの愛称」「すばやく検索することができる人]というような観念が生ずると考えられる。
(2)引用商標の特定
引用商標は、漢字「瞬索」の2文字を横書きしたものであり、その文字から「シュンサク」の称呼が生じるものと考えられ、全体として「瞬間的に探し出すこと」「素早く検索すること」というような観念が生ずると考えられる。
(3)本件商標の一体性
商標の類似判断は全体観察が原則であって、要部観察は全体観察を補充する一つの手段にすぎないものであり、平成19年の最高裁判決でもこの趣旨は再確認されている。すなわち、特段の事情がない限り、全体観察を用いて類否を判断するのが原則であり、特段の事情が存する場合であっても、商標のどの一部を捨象するか又は分離するかによって、全く異なる残余部分が要部と認定されることになり大きな相違が生じることになることが指摘されている。本件商標の場合、現実の使用において全体が4字という文字数の構成と全体で6音という短い称呼から「瞬索」と「くん」とに分離して取引に資することはなく、全体で一つの商標として取引に資すると判断するのが自然である。詳述すると、最高裁判決では、類否の判断に当たっては、(ア)外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務にかかる取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり、(イ)複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである、との基準が示されている(最二 平成19年(行ヒ)第223号 乙第1号証)。
<本件商標の外観からの一体性>
本件商標を構成するそれぞれの文字は同書同大等間隔で記され、全体として極めてまとまりの良い一体的な構成となっており、「瞬索」と「くん」のように、外観上商標が分離するような文字構成ではなく、本件商標は一体不可分であり、全体を一つの標章として他の商標と比較すべきであると考えられる。
<本件商標の称呼の一体性>
本件商標は、「シュ」「ン」「サ」「ク」「ク」「ン」と全体として6音で称呼されるものであって、分離して称呼されなければならないほどに長い称呼ではないことは明らかであり、一息で発声できる長さの商標と考えられる。このような本件商標の構成にあっては、商標の一部分である「瞬索」のみが分離独立して抽出され、これが特に取引者、需要者に役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいえないと考える。さらに、「瞬索」に人名を呼ぶときに付されて用いられる敬称「「くん」が付されることで、本件商標が擬人化し、需要者・取引者に親しみを持って称呼されることになると考えられる。需要者・取引者は、擬人化した名称からあえて「くん」を捨象し、呼び捨てのごとく称呼して取引に資するとは考えられない。
つまり、本件商標は一体不可分であり、全体を一体のものとして他の商標と比較すべきものであると考えられる。
<本件商標の観念からの一体性>
本件商標は、「瞬索」の文字部分から「瞬間的に探し出すこと」や「素早く検索すること」というような観念が漠然とではあるが明確に暗示されると考えられ、この部分のみに着目すると、「素早く」「探す」という「行為」そのものが観念されると考えられる。この文字に「クン」を付加すると、行為そのものを指す語から、指称する対象が擬人化され親しみが沸くため、「瞬索」という名前の「人物」又はそのような名称のものを指すことになり、この商標に接する需要者・取引者に、行為ではなくある物又は人物を観念させるようになると考えられる。また、「くん」の平仮名に顕著性が認められないというような特殊な事情が存在するとも考えられない。したがって、「瞬索」に「くん」が付加されたことにより全体として識別性の点でも問題となるような要素はなくなっているものと考えられる。本件商標は、既に現実に使用されているが、請求人(出願人)は需要者・取引者に親しみをこめて使用されることを意図し、この商標を選択したものである。このように、本件商標は「くん」が付いて擬人化した態様であり、需要者・取引者がそこからあえて「瞬索」のみを分離抽出して、わざわざ呼び捨てのように使用して取引に資するとは考えられない。ちなみに、「瞬索くん」の商標のうち「瞬索」の部分は多分に内容表示的であるために、この部分を抽出して取引に資するとは考え難い事情もある。
本件商標は、擬人化した愛称であって、「瞬索」と「くん」のように途中で分離分解すべきではなく、一体不可分の商標としてとらえるべきであり、「素早く検索することができるものの愛称」や「素早く検索できる人」というような観念を生ずる一体不可分の商標と考えられるべきである。後述する審決例から考えても、本件商標は全体として一体不可分の商標であるととらえるのが自然である。
(4)本件商標と引用商標の対比
<外観の非類似性
本件商標は、一体不可分であり、商標全体として類否判断すべきものと考えられる。本件商標と引用商標を比較すると「くん」の文字の有無に明確な相違点があり、さらに商標を構成する文字数にも著しく違いがある。商標の構成要素として「くん」は商標全体の半分を占める文字であるため、その有無は外観上の相違として決定的であると考えられる。両商標の外観上の相違は明らかであるため、本件商標と引用商標とは、外観上相紛れることのない非類似の商標と考えられる。
<称呼の非類似性
本件商標は一体不可分と考えられるので、「シュンサククン」の称呼のみを生ずると考えられる。
一方、引用商標からは「シュンサク」の称呼のみを生じる。本件商標は6音で発声されるのに対し、引用商標は、4音で発音される点に明らかな違いがある。特に「クン」の音部分の有無の差は、両商標の聴取において著しい印象の違いを生ぜしめるものと考えられる。
<一体的称呼と引用商標の非類似性
「クン」の音が語尾に付されていることは、「くん」が敬称を表す語として広く一般に認識されていることを考えると、この「クン」の音は本件商標を聴取する者に強い印象を与えるものであり、「クン」の音が存在しない引用商標と称呼を対比した場合に全体として称呼が近似することになるとは到底考えられない。
ちなみに、一体不可分と判断した上で更に出所混同を生ずる可能性があると判断されるほど最近の商標の類似範囲は広く解釈されていないのが他の案件における審査であることを十分に考慮する必要がある。
両商標を構成する音数の差や、相違する音の音質の差異が顕著であって両者は語感及び語調を異にするため、判然と区別できることから、両商標の称呼上の相違は明らかであり、称呼は近似するものではなく出所混同を生じさせるものでもない。本件商標と引用商標とは、称呼上紛れることのない非類似の商標であると考えられる。
<観念の非類似性
本件商標は一体不可分と考えられるので、「素早く検索することができるものの愛称」や「素早く検索できる人」という統一的な観念が生ずると考えられる。すなわち、「人」又は「物」を指すものである。一方、引用商標からは、「素早く検索することができること」や「素早く検索できること」という行為・作用そのものが暗示される。すなわち、引用商標は抽象的な「行為」を指すものであり、一方の本件商標は「人」又は「物」を指すものである。
本件商標は擬人化された名称であって、親しみやすい愛称のような観念が生じるが、引用商標からは擬人化され親しみやすい愛称のような観念が生じるとは考えられない。
本件商標は、その指定役務について、擬人化されたものがすばやく行ってくれるという印象を、需要者・取引者は受け、非常に親しみやすい印象を与えるものと考えられる。一方、引用商標はその指定商品について、すばやく検索を行える特徴を持っているという物質的な印象を与えるものと考えられる。
すなわち、「人」と「行為」では、その商標に接する需要者・取引者に与える印象が明確に異なると考えられる。両商標の観念上の相違は明らかであり、本件商標と引用商標とは、観念上も相紛れることのない非類似の商標であると考えられる。
(5)先審決例及び登録例
名称に「くん」「ちゃん」「さん」等の敬称を付加することで商標全体として擬人化された名称を表した一体のものとして認識されると判断されたものが、提出する審決例(乙第2号証ないし乙第17号証)のほか、審決例及び登録例が数多く存在する。
この判断手法は、本件商標と引用商標との間での類否判断でも同様に適用すべきであると考えられる。
(6)まとめ
以上、述べたとおり、本件商標は、一体不可分の商標であり、引用商標とは、外観・称呼・観念いずれにおいても類似するものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

6 当審の判断
(1)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標について
本件商標は、「瞬索くん」の文字を同書同大等間隔に書してなるものであるが、前半の「瞬索」と後半の「くん」は字種が相違し、かつ、「くん」は、「姓名などに付けて親しみや軽い敬意を表す接尾語」であるから、本件商標は、「瞬索」と上記「くん」を結合してなるものと容易に理解、認識されるものである。そして、「くん」は、上記敬意を表す語として広く使用されているのに対し、「瞬索」は、「シュン」、「まばた(く)」、「またた)く)」と読まれる漢字「瞬」と「サク」と読まれ「探し求める」ほどの意味合いを有する漢字「索」(以上、角川最新漢和辞典新版)を組み合わせてなるものであるが、成語として辞書等に掲載されている語ではなく、また、一般に使用されているものではないから、本件商標の「瞬索」の部分は、「瞬」と「索」からなるものとして印象に残るものである。
そうすると、本件商標は、構成全体から「シュンサククン」の称呼が生じるものであるが、前記のとおり、「瞬索」に前記接尾語の「くん」を付記したものと理解されるものであり、「瞬索」の部分は、前記のとおり強く印象に残るものであるから、該文字部分に相応して、「シュンサク」の称呼を生ずるものというべきである。
また、観念については、本件商標は、「瞬索」に前記接尾語「くん」を結合してなるものと理解され、「瞬索」について親しみや軽い敬意をもって表したものと認識されるものであるが、「瞬索」が前記のとおり、強く印象に残る文字であるといえるのに対して、「くん」は、親しみや軽い敬意を表すときに付加して使用される語であるから、本件商標は、その強く印象に残る部分である「瞬索」の文字部分から、「瞬」と「索」からなるものとして印象若しくは、その各文字から「瞬く間に探し求める(もの)」程の意味合いも連想、想起するものといえる。
イ 引用商標について
引用商標は、「瞬索」の文字を書してなるものであるから、「シュンサク」の称呼を生じるものである。また、観念については、親しまれた成語ではないから、格別の観念を生じるとまではいうことができないが、前記のとおり、「瞬」と「索」からなるものとして印象若しくは、その各文字から「瞬く間に探し求める(もの)」程の意味合いを連想、想起するものといえる。
ウ 本件商標と引用商標の類否について
そこで、本件商標と引用商標の類否についてみると、外観については、「くん」の文字の有無の差異が有り、類似するとはいえないものの、「瞬索」の文字を共通にする点において外観上近似した印象を与えるものである。
また、称呼についてみると、本件商標から生ずる「シュンサククン」の称呼と引用商標から生ずる「シュンサク」の称呼とは、後半部の「クン」の音の有無の差異があるものの、称呼上重要といえる前半部において「シュンサク」の音を共通にしているから、近似した印象を与えるものであり、また、本件商標の「シュンサク」の称呼は、引用商標の称呼と同一であり、観念については、いずれも特定の観念を生ずるとまではいえないが、本件商標及び引用商標は、前記のとおり、いずれも「瞬」と「索」からなるものとして印象若しくは、その各文字から「瞬く間に探し求める(もの)」程の意味合いを連想、想起するものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、外観上「瞬索」の文字部分を共通にして近似した印象を与えるものであり、称呼においては、引用商標の「シュンサククン」の称呼については本件商標の称呼と近似した印象を与えるものであり、また、「シュンサク」の称呼を共通にする場合があり、さらに、観念においては、両者は特定の観念を生ずるとまではいえないが、いずれも「瞬」と「索」からなるものとして印象若しくは、その各文字から「瞬く間に探し求める(もの)」程の意味合いを連想、想起するものであることからすると、外観、称呼及び観念を総合して考察するならば、両者は、類似の商標というのが相当である。
(2)役務(商品)の類否について
本件商標の指定役務中には、前記のとおり「電子計算機用プログラムの提供」を含むものである。
一方、引用商標は、その指定商品中、「電子応用機械器具及びその部品」に「電子計算機用プログラム」を含むものである。
そして、「電子計算機用プログラム」は、記録媒体に記録された電子計算機用プログラムとして店頭にて、あるいはダウンロードにより流通されているのみならず、インターネット等の通信回線を通じ電子計算機用プログラムを使用させる役務(電子計算機用プログラムの提供)として提供されている。
そうとすると、「電子計算機用プログラムの提供」と「電子計算機用プログラム」とは、役務の提供者と商品の製造・販売者、用途、及び需要者を共通にするものであって、密接な関係があるから、本件商標と引用商標を、上記役務及び商品に使用したときには、これに接する取引者・需要者が同一の営業主の製造・販売又は提供に係る役務又は商品と誤認・混同されるおそれがあるとみるのが相当であり、本件商標と引用商標の上記役務及び商品は、類似するものと認められる。
(3)商標権者の主張について
商標権者は、本件商標は、外観上も一体不可分であり、その構成より、「シュンサククン」の一連の称呼のみが自然に生じ、また、一体不可分の擬人化した愛称として「素早く検索することができるものの愛称」、「素早く検索することができる人」というような観念を生ずると主張し、「くん」等の文字を含む商標が一体不可分のものであると判断された審決例等を挙げて、本件商標についても同様に判断すべきであると主張している。
確かに「くん」の文字は、「姓名などに付けて親しみや軽い敬意を表す接尾語」であり、親しみや敬意を表すことから、「くん」が付加された場合は、擬人化されたものとして認識されることもあるといえるが、商標権者が主張するように「すばやく検索することができる人」というような特定の人を理解するということはできない。
そして、本件商標は、「瞬索」の部分が強く印象に残るものと認められることは、前記(1)で述べたとおりであるが、商標権者が述べるように擬人化されたものとして認識されることもあるといえることから、本件商標から「(すばやく検索することができるものの)愛称」と認識するか、「(すばやく検索することができる)物」と認識するかはともかく、いずれにしても「瞬索」の文字部分の「すばやく認識することができる」の意味合いを共通にし、印象に残るものというべきであり、前記のとおり、本件商標と引用商標について、その外観、称呼及び観念を総合してみるならば、両者を類似の商標と見るべきであることを否定できない。
なお、商標権者は、過去の審決例等を挙げ、本件商標一体不可分である旨主張しているが、本件商標と引用商標は、接尾語「くん」を除く「瞬索」の部分が共通するものであり、かつ「瞬索」は、ありふれた普通名詞等の成語ではなく、「瞬」と「索」の文字を結合してなるものと強く印象に残るものであって、上記審決例等とは事案が異なるといえるし、商標の類否の判断は、過去の登録例に拘束されることなく、対比する両商標の構成態様及びその指定役務(指定商品)との関係から個別かつ具体的に判断されるべきであって、本件商標と引用商標とは、前記述べたとおり、類似の商標と認められるものである。
したがって、商標権者の主張は採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定役務中、第42類「電子計算機用プログラムの提供」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
そして、本件登録異議の申立てに係るその余の指定役務については、引用商標の指定商品とは同一又は類似する役務とはいえず、同号に該当しないから、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2012-03-07 
出願番号 商願2010-87659(T2010-87659) 
審決分類 T 1 651・ 262- ZC (X42)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 山田 正樹 
特許庁審判長 内山 進
特許庁審判官 小俣 克巳
小畑 恵一
登録日 2011-06-03 
登録番号 商標登録第5415969号(T5415969) 
権利者 株式会社ミスミグループ本社
商標の称呼 シュンサククン、シュンサク 
代理人 横山 淳一 
代理人 広瀬 文彦 

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