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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X44
管理番号 1256577 
異議申立番号 異議2011-900287 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-06-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-08-10 
確定日 2012-04-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5410452号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5410452号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
登録第5410452号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示す構成からなり、平成22年7月20日に登録出願、 第44類「介護」を指定役務として、同23年3月25日に登録査定、同年5月13日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録第5250640号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)に示す構成からなり、平成20年11月28日に登録出願、 第44類「介護・養護及びこれらに関する情報の提供,介護に関するコンサルティング及びこれに関する情報の提供,介護に関する指導及び助言及びこれらに関する情報の提供,介護施設の紹介及びこれに関する情報の提供,介護用リフトの貸与及びこれに関する情報の提供,介護保険法に定める床ずれ防止マットの貸与及びこれに関する情報の提供,介護保険法に定める歩行器の貸与及びこれに関する情報の提供,介護用おむつの貸与及びこれに関する情報の提供,介護用医療機械器具の貸与及びこれに関する情報の提供,介護用体位変換器の貸与及びこれに関する情報の提供,介護用便器の貸与及びこれに関する情報の提供,介護用歩行器の貸与及びこれに関する情報の提供,介護用歩行補助つえの貸与及びこれに関する情報の提供,介護用徘徊感知器の貸与及びこれに関する情報の提供,介護老人保健施設の提供及びこれに関する情報の提供,予後保養所における医業・介護及びこれらに関する情報の提供」を指定役務として、同21年7月24日に設定登録されたものである。

3 登録異議の申立ての理由
(1)商標法第4条第1項第11号の適用
ア 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標は、「カイゴニジューヨン」の同一の称呼を生じている。また、本件商標及び引用商標は、「介護」ないし「かいご」の文字に「24」を結合した構成とすることにより、「介護のサービスが24時間切れ目無く提供されている」という同一の観念を生ずる。
したがって、本件商標と引用商標は、「カイゴニジューヨン」と同一に称呼され、同一の観念を生じさせる以上、外観を検討するまでもなく類似する商標であることは明白である。
イ 出所の混同について
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、株式会社インキュベクスのグループ会社であり、小規模通所介護施設運営・支援の業務を「かいご24」の名称で展開している。平成22年3月1日に「かいご24大倉山」(同年11月閉所)を開設し、同年6月15日に「かいご24あしたか」を開設し、同年11月1日に「かいご24国立」及び「かいご24デイサービスゆいまーる」を開設し、同年12月1日前に「かいご24名古屋」の名称の使用について許諾を与えている(甲第5号証ないし甲第14号証)。
また、上記に加えて、デイサービス開設支援の説明会を多数開催し、「かいご24」ブランドの普及に努めている(甲第7号証及び甲第15号証)。 商標権者の介護事業所が申立人の介護事業所と同一営業地域に存在している。商標権者は、「カイゴニジューヨン」+地域名の組合せを後追い採用しているのであり、同一地域に「カイゴニジュウヨン」の介護事業所が複数存在しているのであるから、出所の混同のおそれは明白である。
実際に「かいご24国立」と「介護24多摩」ないし「介護24スマイルケア府中」が同系列か否かの問い合わせや同系列だとの誤認に基づく問い合わせなどを受けている。
ウ 本件商標登録出願人(商標権者)は、ホームページ(平成22年12月3日印刷)の冒頭に「ひらがな表記の『かいご24』、カタカナ表記の『カイゴ24』は弊社と無関係です。被害に会いました等のクレームの報告もございます。ご注意下さい。」の注意書きをしている。商標権者は、称呼及び観念が同一であって混同するとの認識を当初から表明している(甲第34号証)。
また、商標権者は、本件商標にかかる出願において、上記本件引用商標を引用し、出願商標(本件商標)が商標法第4条第1項第11号に該当するとした拒絶理由に対し、混同の事実を隠し「混同を生じないと私どもは判断しています。」と混同がない旨の主張をしている。
本件商標は、審査の適正を欠いた状況下でなされたものと認められ、本件商標登録出願人による虚偽の主張の疑いもあるものである。
エ 上述のとおり、本件商標と引用商標は、原査定前において、出所混同のおそれが明白であり、実際にも混同を生じているのであるから、商標法第4条第1項第11号の適用を回避する理由がなく、その登録は取り消されてしかるべきである。
(2)商標法第4条第1項第15号の適用
前記(1)アのとおり、本件商標と引用商標の称呼及び観念は同一であって、類似する。また、出所の混同については、前記(1)イを援用する。
本件商標は、申立人「の業務にかかる役務と混同を生ずるおそれがある商標」であり、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は取り消されるべきである。
(3)商標法第4条第1項第19号の適用
ア 引用商標の周知性
申立人及び株式会社インキュベクス(以下「申立人ら」という。)は、引用商標「かいご24」を使用して、(ア)小規模通所介護施設「かいご24」の運営、(イ)フランチャイザーとして小規模通所介護施設「かいご24」の開設・運営・起業支援のサービスの提供、(ウ)施設開設・起業希望者に対する施設見学会・セミナーの開催、(エ)フランチャイジーに関する研修・営業勉強会の開催、(オ)介護系求人情報検索サイトの運営、等の業務を行っている。
申立人らは、上記業務について広く広告活動を行っており、その結果、上述施設開設・起業希望者に対する施設見学会・セミナーには、北海道から九州までと日本全国から参加者が集まり、延べ参加者数は、本件商標出願日(平成22年7月22日)までに265社にのぼり、また、11件のフランチャイズ契約が成立している。さらに、申立人らは、介護関連の業務について、2010年以降多数のプレスリリースを行う等、活発な広報活動を行っている(甲第7号証の1ないし19)。
このように、申立人らは、「かいご24」の名の下、介護業界において幅広く業務展開していることから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人らの業務にかかる介護役務を表示するものとして日本国内における需要者に広く認識されていた。
不正競争の目的について
申立人らの通所介護施設に隣接ないし近接して本件商標登録出願人の「訪問介護」の提供場所が後追い開設されていることは、不正競争の目的が当初から存していたことを証明している。また、ホームページの注意書きを削除した上で意見書を提出した経緯からも、審査の適正を阻害して登録を獲得しようとしていたのであるから不正競争の目的がうかがえる。
本件商標登録出願人の行為は、不正競争の目的を有し、かつ、公正な取引秩序に反するものというべきであって、本件商標は、引用商標に蓄積した信用を希釈化し、かかる信用にフリーライドする目的をもって使用されるものであるといえる。
ウ 以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当し、その登録は取り消されるべきである。
(4)商標法第4条第1項第7号の適用
予備的に指摘するが、本件商標登録出願人の行為は、上述のとおり社会の一般的道徳観念に反し、かつ、公正な取引秩序に反する詐欺的行為に該当するものである。よって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある」行為により登録を受けた商標であるため、商標法第4条第1項第7号に該当し、その登録は取り消されるべきである。

4 本件商標に対する取消理由
当審において、商標権者に対して、平成23年11月30日付けで通知した取消理由の要旨は以下のとおりである。
本件商標は、引用商標と類似する商標であり、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務中に包含されているものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。

5 商標権者の意見
引用商標との相違点は、別掲(3)の一覧表のとおりである。
本件商標には図形上でも「介護の安心お手伝い」を連想させる図形はなく併せて、本件商標と引用商標とは、図形上では明らかに相違している。
「介護24」と「かいご24」の文字部分についても、商標権者は、会社登記上においても読みが「カイゴニジュウヨン」であることを審査時における意見書でも説明し、また、そのことを踏まえて本件商標の登録が完了した経緯がある。登録出願の際に特許庁ホームページ(IPDL)で「カイゴニジュウヨン」の称呼を検索したが、前例はなかった。その際、特許庁担当者の指示に基づいて、本件商標の登録出願を行ったものであり、この点に対しても当初、特許庁担当者からの説明内容との相違を強く感じている。
本件商標と引用商標の外観は、文字デザインから読み取れる称呼以外は、明らかに著しく相違があると認識しており、需要者の通常有する注意力を基準とすると、明らかな違いが判別でき、混同は生じないと判断している。
併せて、申立人と商標権者との業務内容や企業理念の相違については、商標権者の訪問介護事業所運営内容、更に商標権者独自の運営方式、その他あらゆる固有的な情報も、インターネット上で容易に確認ができると認識しており、また、商標権者の取引先においてもこの図形商標登録の相違は総じて認識されており、社会的な取引先とのやりとりの中においても引用商標との相違は明らかであると確信している。
結論として、本件は、商標登録出願上、引用商標の指定役務中に包含がある形になっているが、両社の実務実績や業務内容、そして、検索エンジンでの検索結果等も考慮すると、実際の業務形態や会社理念、組織形態において、商標デザイン上から読み取れる称呼に似通った部分があったと認識されることがあったとしても需要者の通常有する注意力を基準として商標に明らかな違いがあることが判別でき、混同が生じないものと判断している。

6 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標と引用商標との類否についてみるに、本件商標は、別掲(1)のとおり、緑色の四角形内に白抜きした「介」と黄色の四角形内に白抜きした「護」を上段の左右に配し、紫色の四角形内に白抜きした「2」と桃色の四角形内に白抜きした「4」を下段の左右に配した構成からなるものであるところ、上段の「介」と「護」の両文字は、「介護」と一連に読んで自然なものであり、また、下段「2」と「4」も「24」と一連に読んで不自然ではない上、役務「介護」に関して「介護」も「24」もそれぞれそれ自体単独では自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものであることから、本件商標は、構成全体をもって自他役務の識別機能を果たし得るものというのが相当である。
そうとすれば、本件商標は、当該文字部分から「カイゴニジュウヨン」の称呼を生ずるものというべきである。
他方、引用商標は、別掲(2)のとおり、縁取り細線のある右側で丸く膨らんだ赤色の横長矩形内に「かいご」の文字とその右にやや大きく「24」
の文字を白抜きに表し、矩形の上部に「介護の『安心お手伝い』」の文字を比較的小さく平易な文字で表したものである。そして、その構成にあって比較的小さく表された「介護の『安心お手伝い』」が役務「介護」に関して附記的な記述として把握されるとみるべきものであることから、引用商標は、その主要部として独立して認識される「かいご24」の文字に相応して「カイゴニジュウヨン」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、「カイゴニジュウヨン」の称呼を共通にする類似の商標と認められる。
また、厚生労働省が24時間対応の介護体制等を進めていることから、本件商標の「介護24」の文字と引用商標の「かいご24」の文字からは、「24時間介護する」ほどの意味合いを暗示させるものといえるが、両商標は、「介護」又は「かいご」と数字「24」を結合したものと強く印象されるものである。
以上よりすれば、本願商標と引用商標は、外観上の差異はあるもののいずれも「カイゴニジュウヨン」の称呼を生じ、「介護」又は「かいご」と「24」を結合してなるものとの観念を生ずるものであるから、これらを総合してみるならば、本件商標と引用商標とは、類似する商標とみるのが相当である。
そして、本件商標の指定役務は「介護」であり、引用商標の指定役務中に、包含されていることが明らかである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものである。
(2)商標権者の主張について
ア 商標権者は、本件商標と引用商標は、外観については著しく相違しているから、需要者の通常の注意力を基準とすると明らかに違いが判別できる、と主張し、また、商標権者と申立人らは、業務内容や企業理念において、相違するものであり、その情報はインターネット上で容易に確認でき、需要者の通常有する注意力を基準に、その違いは認識できると主張している。
この点について検討するに、申立人及び商標権者の主張及び提出された証拠によれば、商標権者は、平成21年8月3日に会社の登記をした(甲第36号証)訪問介護事業のフランチャイザーであり、本件商標は、商標権者会社の理念に賛同する法人(フランチャイジー)が行う訪問介護事業(施設)に使用するものである(なお、商標権者は、登録査定後である平成23年12月時点で180の法人がフランチャイジーとして訪問介護事業所の開設していると主張している。)。
申立人らは、小規模通所介護事業のフランチャイザーであり、平成22年1月ころから小規模通所介護施設の設立支援サービスを始め(甲第7号証の1)、申立人は、展開する通所介護施の最初の施設として、同年22年3月1日に「かいご24大倉山」(閉所)を開設し、その後「かいご24あしたか」等を開設している。
そうすると、商標権者及びそのフランチャイジーが行うのは、訪問介護事業であり、申立人及びそのフランチャイジーが行うのは、小規模通所介護事業であるが、いずれも介護事業にかかわるものであり、需要者層を共通にするものということができる。また、商標権者及び申立人らは、いずれもフランチャイズ方式のいわゆる本部であり、商標権者がその企業理念等を自らのインターネットで発信しているとしても、実際に介護にかかる役務を提供するのはそれぞれのフランチャイジーであり、当該役務の需要者である被介護者(その家族等も含む。)が商標権者等の企業理念を十分に把握するものとは言い難い。
そして、前記(1)のとおり、引用商標の自他商品識別機能を発揮する称呼は「カイゴニジュウヨン」のみであって、本件商標と引用商標は、その共通の称呼のみを有するものであり、また、生ずる観念も同一であり、使用役務も介護に係るものであって、その需要者を共通にするものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合は、その出所について誤認混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(3)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものと認められるから、同法第43条の3第2項の規定に基づ
き、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
(1)本件商標(色彩は原本参照)


(2)引用商標(色彩は原本参照)


(3)平成23年12月19日付け意見書に記載されている一覧表


異議決定日 2012-02-28 
出願番号 商願2010-60754(T2010-60754) 
審決分類 T 1 651・ 262- Z (X44)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田中 瑠美箕輪 秀人 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 前山 るり子
内山 進
登録日 2011-05-13 
登録番号 商標登録第5410452号(T5410452) 
権利者 介護24合同会社
商標の称呼 カイゴニジューヨン、カイゴニヨン 
代理人 吉田 芳春 
代理人 飯田 藤雄 

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