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審決分類 審判 全部無効 商8条先願 無効としない X30
管理番号 1256516 
審判番号 無効2011-890087 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-10-07 
確定日 2012-05-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第5085500号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5085500号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成19年3月16日に登録出願、第30類「メープルシロップおよびメープルシロップを使用した洋菓子」を指定商品として、同年9月13日に登録査定、同年10月19日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録商標は、以下のとおりであり、その商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5148919号商標(以下「引用商標1」という。)は、「ヌーボー」の文字を横書きしてなり、平成19年3月6日に登録出願、第30類「角砂糖,果糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,メープルシロップ」を指定商品として、平成20年7月4日に設定登録されたものである。
(2)登録第5148920号商標(以下「引用商標2」という。)は、「メープルシロップヌーボー」の文字を横書きしてなり、平成19年3月6日に登録出願、第30類「メープルシロップ」を指定商品として、平成20年7月4日に設定登録されたものである。
なお、引用商標1と引用商標2を合わせていうときは、以下単に「引用商標」という。

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
(1)請求の理由の要約
本件商標は、商標法第8条第1項に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
(2)本件商標と引用商標との類否
ア 本件商標について
本件商標は、図形と文字との結合商標であり、上部がオレンジ色で下部が黄色でその間はグラディエーションがかかった色彩からなる四角形状の背景の上半部には3枚のカエデの図形があしらわれており、文字部分においては、図形の最上部に、欧文字で「First Tap」とオレンジ色で記載されており、上部中央には、それより大なる欧文字かつ異なる書体で「Maple Terroir」と白字で記載されており、その下に、やや小さな欧文字で同書体で「Fine Maple Products」と白字で記載されており、その右下に小さく欧文字で「TM」と白字で記載されている。そして、下半部中央には大きく欧文字かつ異なる書体で「Maple Syrop」(審決注:「Syrop」は「Syrup」の誤記と認める。以下、請求人の主張において同じ。)と濃黄色の文字で記載されており、その下にそれより大きく同色同書体で「Nouveau」と記載されており、最下部には、それより小さな欧文字かつ異なる書体で「Sirop d’erable Pur」(審決注:「d’」の後の「e」にはアクサンテギューが付されている。以下同じ。)と白字で記載されている。
してみると、本件商標は、前記文字部分に対応して以下のような称呼が発生する。
すなわち、上から順に、「First Tap」に対応して「ファーストタップ」の称呼が発生し、「Maple Terroir」に対応して「メープルテロワール」の称呼が発生し、「Fine Maple Products」に対応して「ファインメープルプロダクツ」の称呼が発生し、「Maple Syrop」及び、それと同色同字体で二段並記された「Nouveau」に対応して、「メープルシロップ」、「ヌーボー」及び「メープルシロップヌーボー」の称呼が発生し、最下部に記載された「Sirop d’erable Pur」に対応して「シロデラブルプア」の称呼が発生する。
イ 引用商標について
引用商標1は、片仮名「ヌーボー」を同大同書かつ一連に横書きしてなるものであるから、「ヌーボー」の称呼が発生する。
引用商標2は、片仮名「メープルシロップヌーボー」を同大同書かつ一連に横書きしてなるものであるから、「メープルシロップヌーボー」の称呼が発生すると共に、「メープルシロップ」が引用商標2の指定商品に係る普通名称であるため、「ヌーボー」の称呼が発生する。
ウ 本件商標と引用商標の具体的類否について
上述のとおり、本件商標からは「ヌーボー」及び「メープルシロップヌーボー」の称呼が発生する。
これに対して、引用商標1からは「ヌーボー」の称呼が発生し、引用商標2からは「ヌーボー」及び「メープルシロップヌーボー」の称呼が発生する。
また、指定商品についても、本件商標及び引用商標は、商品「メープルシロップ」を含む点で共通する。
以上より、本件商標と引用商標とは、それぞれ類似する関係にある。
したがって、本件商標は、本件商標の出願日前に出願された引用商標とそれぞれ同一又は類似するものであり、商標法第8条第1項に該当するものである。

4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)指定商品について
本件商標の指定商品は、「メープルシロップおよびメープルシロップを使用した洋菓子」であり、このうち「メープルシロップ」は、引用商標の指定商品と同一又は類似であることは認めるが、「メープルシロップを使用した洋菓子」は、引用商標の指定商品とは非類似である。よって、本件商標中、「メープルシロップを使用した洋菓子」に係る商標登録については、無効理由は存在しない。
以下、本件商標中、指定商品「メープルシロップ」に関してのみ反論する。
(2)本件商標の外観・観念・称呼
ア 商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体として類似するかどうかを考察すべきものであり、複数の構成部分を組み合わせた結合商標についても、その構成部分全体を対比して類否を判断するのを原則とすべきものであって、結合商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないと解するのが相当である(最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決)。
以下、上記原則に従って本件商標の外観・観念・称呼について検討する。
イ 本件商標は、別掲のとおりの構成よりなるものであり、その構成中、「First Tap」部分からは、「First」が「最初の、一番の」、「Tap」が「樹液を採取する」の意をそれぞれ有する英単語であるから、「一番に樹液採取された」のような一連の意味を生じる。「Maple Terroir」部分からは、「Maple」が英単語の「カエデ」、「Terroir」がフランス語で「地域」を表すので、類推解釈すれば「カエデの地域」のような一連の意味を生じる。「Fine Maple Products」の「Fine」は「品質の優れた、上質の、最高級の、絶品の」、「Maple」は「カエデ」、「Products」は「製品」をそれぞれ表す英単語であり、一連の「上質なカエデ製品」の意味を生じる。「TM」は「トレードマーク」の略であることは明らかである。「Maple Syrup」は「メープルシロップ」そのものであり、「Nouveau」はフランス語で「新しい」を意味する。「Sirop d’erable Pur」はフランス語で「純正なメープルシロップ」のような意味をそれぞれ生じさせる。
各文字部分はそれぞれ「ファーストタップ」「メープルテルワー」「ファインメープルプロダクツ」「ティーエム」「メープルシロップ」「ヌーボー」「シロップデラブルピュール」のように発音される。
これらの文字部分のうち、「First Tap」及び「Fine Maple Products」は商品の品質又は等級を表し、「Maple Syrup」は商品「メープルシロップ」の普通名称であり、「Nouveau」は本件商標の指定商品との関係では、例えば、「その年に採取したもの」「収穫時期の初期に採取したもの」という程度の意味を表す品質表示であり、また、「Sirop d’erable Pur」も商品の品質を表示するにすぎないので、いずれも出所識別のための要部とはなり得ない。
外観上も「First Tap」と「Sirop d’erable Pur」の各文字部分は他の文字に比較して小さく、商標全体の最上端と最下端に配置されているので、商標の要部とは認識されない。「First Tap」、「Maple Syrup」及び「Nouveau」は商標の背景色と同系統の色に彩色されているため、白色の文字には陰影が施されて(「TM」を除く。)浮き上がって見えるのとは対照的に、背景に融け込んで埋没しており、ほとんど目立たないので、読めるにせよ商標の要部とまで認識されることはない。
一方、「Maple Terroir」の文字部分は、「カエデの地域」のような商品「メープルシロップ」に関連する一連の意味を生じるものの、これが品質表示として複数の同業者に使用されている事実は存在せず、かつ、実在する特定の地域のような商品の原産地等の品質を具体的に表示するものでもない。また、「Fine Maple Products」と共に本件商標の中央のやや上部に配置され、大きな文字で白色に彩色されており、右下には商標であることを示す「TM」の文字が同じく白色で表示されているから、本件商標に接した看者は、「Maple Terroir」の部分にのみ強く印象づけられ、この部分を本件商標の要部と認識して記憶する。
よって、本件商標からは、その要部に対応する「カエデの地域」の観念及び「メープルテルワー」の称呼が生じ、他の観念・称呼が生ずる余地はない、と解するのが合理的である。
ウ 取引の実情
本件商標の指定商品「メープルシロップ」とは、「サトウカエデなどの樹液を濃縮した甘味料」であり(乙1)、薄い黄色から濃い琥珀色の液体であって、ガラスや陶器や合成樹脂のボトルに詰められた状態で販売されている(乙2)。
本件商標は、商品「メープルシロップ」のボトルの表面に貼付されるラベル全体又は一部である「ラベル的商標」である。メープルシロップのボトルに貼付されたラベルには、出所識別のための文字や図形のみならず、商品の普通名称・原材料・原産地・等級・品位・数量などの品質を表す複数の文字列や図形が配置されているのが一般的である(乙2)。
よって、実際の取引の場において、ラベルとしてメープルシロップのボトルの表面に貼付された本件商標を看た者は、複数の文字部分の多くは品質表示であることを認識して、最も目立つ位置・態様で表示され、その意味も品質表示ではない「Maple Terroir」の部分のみを商標の要部と認識するものと解するのが自然である。
また、メープルシロップは、普通のシロップに比較して極めて高価であり、最終需要者は洋菓子の製造者又は洋菓子の製造にかなり造詣の深い者に限定される。高価な商品を購入する際には通常よりも高い注意力をもって商品を観察するのが通例であり、かつ、洋菓子に関わる者はフランス語に堪能か、少なくともメープルシロップに関連するフランス語程度は理解できると考えられるから、本件商標に含まれる複数の文字部分から、品質表示を除いた「Maple Terroir」の文字部分のみが商標の要部であると取引者・需要者が認識することは極めて容易である。
したがって、取引の実情を参酌するも、本件商標からは、「Maple Terroir」の文字部分からのみ観念・称呼が生ずると認められる。
エ 被請求人による本件商標の使用及び他の商標登録
本件商標は、平成19年6月8日付提出の「早期審査に関する事情説明書」(乙3)に記載のとおり、平成19年3月13日から同年同月16日まで幕張メッセで開催された「FOODEX JAPAN2007」の被請求人ブースで使用開始して以来、現在に至るまで被請求人によりほぼ継続して使用されているが(乙4)、請求人の業務に係る商品との間で出所の混同を生じた事実はない。
また、被請求人は、本件商標以外に、本件商標の要部である文字部分と同一の綴りからなる「Maple Terroir」の文字よりなる商標(登録第4916200号)、その片仮名表記である「メープルテルワー」の文字よりなる商標(登録第4921328号)及びカエデの葉の図形と「Maple Terroir/Fine Maple Products」の文字よりなる商標(登録第4921329号)を、商品「メープルシロップ」を指定商品として商標登録している(乙5の1ないし3)。これは、主観的にも被請求人が本件商標の「Maple Terroir」の部分を自他商品識別のための標識と認識しており、商標登録により保護を図っているのである。
(3)本件商標と引用商標の類否
以上のように、本件商標からは「メープルテルワーファインメープルプロダクツ」及び「メープルテルワー」の称呼のみが生じる。これに対して、引用商標からは「ヌーボー」、「メープルシロップヌーボー」の称呼が生じる。
両称呼が相紛らわしいものでないことは明らかである。
なお、本件商標と引用商標とは観念においても比較すべくもなく、外観は顕著に異なることはいうまでもない。
(4)立証責任について
前記(2)アの最高裁判決説示のとおり、結合商標は特段の事情のない限り全体を対比して類否を判断すべきであるところ、請求人は、上記原則に反して、結合商標の構成部分の一部を抽出した上で、本件商標が引用商標と類似すると主張するのであるから、何故例外が生じたのか立証する責任は請求人が負っている。
よって、被請求人は、請求人に対し、何故に本件商標から単なる「ヌーボー」及び「メープルシロップヌーボー」のような称呼が生じるのか、釈明を求める。
(5)権利濫用
請求人は、平成19年3月6日以前に、本件商標が被請求人により使用される予定であることを知り、同日に引用商標を出願した。同年3月13日に、請求人は、被請求人に対し、その有する登録第4910917号商標の存在を理由に、本件商標の使用の停止を通知した。被請求人は、同年3月16日に、本件商標を出願し、同年6月8日に、早期審査に関する事情説明書を提出した(乙3)。その後、本件商標は、登録され、請求人より無効審判が請求された。すなわち、請求人は、自らが有していた登録第4910917号商標だけでは本件商標の使用を止められないと考え、本件商標の被請求人による使用を不法に妨害する目的のみをもって、引用商標を登録するに至ったのである。
請求人は、本件商標を無効にしたら、引用商標に係る商標権を行使し、被請求人に対し本件商標の使用差止及び損害賠償を求める訴訟を起こすものと推測されるが、かかる行為は正義公平の理念及び公正な競争秩序に反するものとして、権利の濫用に当たり許されないことはいうまでもない。他人の商標使用を妨げる目的で登録を受けたり不使用商標を譲り受けたと認められる場合に、権利の濫用に当たるとして商標権行使を許さなかった過去の裁判例よりも明らかである(例えば、東京地裁平成13年(ワ)第7978号判決、東京高裁昭和28年(ネ)第2096号判決等)。
よって、請求人による商標権侵害訴訟に先立つ本件審判においても、請求人による不法な審判請求を断じて容認すべきではない。
(6)むすび
本件商標は、商標法第8条第1項に該当しないから、その登録は、同法第46条(審決注:請求人は「43条」と記載しているが誤記と思われる。)第1項第1号の規定により無効とされるものではない。

5 当審の判断
(1)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標
本件商標は、別掲のとおり、横長四角形内全体に、地色として、上部から下部にかけて橙色が徐々に黄土色に変わるように着色が施されたものであり、該地色上に、地色と同じ系統の色彩で表されたかえでの葉3枚の図形と横書きにされた種々の文字とが配されているところ、その四角形内に配された文字は、上段より、黄色で表された「First Tap」、陰影付きの白色で表された「Maple Terroir」、その下の「Fine Maple Products」及びその右下の「TM」、茶色で表された「Maple Syrup」及びその下の「Nouveau」、最下段に陰影付きの白色で表された「Sirop d’erable Pur」である。
そして、本件商標を外観から観察した場合、その構成中、看者の注意を最も強く引く部分は、その全体の配色が概略橙色であることからして、極めて浮き立って看取される陰影付きの白色で表された文字部分のうちの大きく表された「Maple Terroir」の文字部分であるといえる。
また、該文字中の「Maple」の文字部分が「かえで」等を意味する英語として我が国においても親しまれているものであるのに対し、「Terroir」の文字部分は、「耕作適合地域、農産地、郷土」等を意味するフランス語であって、該語は、我が国において馴染みの薄い語であるから、その意味が理解されることは極めて少ないといえる。
なお、この点に関し、被請求人は、メープルシロップは、普通のシロップに比べ極めて高価であり、最終需要者は洋菓子の製造者又は洋菓子の製造にかなり造詣の深い者に限定される上に、高価な商品を購入する際には通常よりも高い注意力をもって商品を観察するのが通例であり、かつ、洋菓子に関わる者はフランス語に堪能か、少なくともメープルシロップに関連するフランス語程度は理解できる旨主張するが、これらの事実を明らかにする特段の証拠の提出はなく、したがって、メープルシロップの需要者は、洋菓子の製造者等のみならず、一般の消費者をも含むとみるのが相当である。
したがって、「Maple Terroir」の文字部分は、同一の文字で外観上一体的に表されているところから、構成全体もって、特定の意味合いを想起させない造語を表したと理解されるとみるのが相当であって、観念上からみても、指定商品の品質等を具体的、かつ、直接的に表示するものということはできない。
一方、上記「Maple Terroir」の文字部分以外の文字部分についてみるに、最上段に書された「First Tap」の文字部分は、地色と同じ系統の色彩である黄色で表されている上に、小さく表されているものであるから、看者の注意を引くものではなく、しかも、「最初の樹液を採る」などの意味合いを有するものである。
また、陰影付きの白色で、「Maple Terroir」の下に書された「Fine Maple Products」の文字部分及び「TM」の文字部分は、前者が「上等なかえで製品」などの意味を表し、後者が「Trade Mark」の略語である。
さらに、「Maple Syrup」の文字部分は、指定商品の普通名称ないし原材料を表すものである。そして、本件商標中の下部に書された「Nouveau」の文字部分は、地色の黄土色と同じ系統の色である茶色で表されており、色彩の点からみると、目立たない態様といえるばかりでなく、「新しい」などを意味するフランス語であり、例えば、「アールヌーボー(art nouveau)」、「ボージョレヌーボー(beaujolais nouveau)」などのように、品質表示中に使用される語として、我が国においてもよく知られている語であるといえる。
また、最下段に書された「Sirop d’erable Pur」の文字部分は、「純粋のメープルシロップ」などの意味を有するものである。
したがって、これらの文字部分は、文字の構成態様、文字から生ずる意味合いからみて、いずれも自他商品の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱いものということができる。
そうすると、本件商標に接する需要者は、その構成中、最も強く印象付けられ、かつ、商品の品質等を表示したものとはいえない「Maple Terroir」の文字部分に着目して、これより生ずる称呼をもって、商品の取引に当たる場合が多いとみるのが相当である。
なお、本件商標中のかえでの葉の図形部分は、商品の原材料であるかえでの樹木を想起させるばかりでなく、地色と同じ系統の色彩で表され、かつ、「Maple Terroir」の文字部分の背景的な要素を持つものであるから、自他商品の識別標識としての機能を有しないか、あるとしても極めて弱いものといえる。
以上によれば、本件商標は、その構成中の「Maple Terroir」の文字部分より、「メープルテロワー」、「メープルテロワール」などのような称呼が生ずるものであって、単に「ヌーボー」の称呼は生じないというべきである。
イ 引用商標
引用商標1は、前記2(1)のとおり、「ヌーボー」の文字を横書きしてなるものであるから、これより、「ヌーボー」の称呼及び「新しい」などの観念を生ずるものである。
引用商標2は、前記2(2)のとおり、「メープルシロップヌーボー」の文字を横書きしてなるものであるから、これより、「メープルシロップヌーボー」の称呼を生ずるほか、その構成中の「メープルシロップ」の文字部分は、指定商品の普通名称を表すものであって、自他商品の識別標識としての機能を有しない部分であるから、「ヌーボー」の文字部分より「ヌーボー」の称呼及び「新しい」などの観念をも生ずるものである。
ウ 本件商標と引用商標の対比
(ア)外観
別掲のとおりの構成よりなる本件商標と、「ヌーボー」の文字よりなる引用商標1及び「メープルシロップヌーボー」の文字よりなる引用商標2とは、その構成態様よりみて、外観上明らかに相違するものである。
(イ)称呼
本件商標より生ずる「メープルテロワー」、「メープルテロワール」の称呼と引用商標より生ずる「ヌーボー」の称呼は、構成する音数を著しく相違するのみならず、構成する各音の音質、音感等においても相違するものであるから、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、互いに聞き誤られるおそれはない。
また、本件商標より生ずる「メープルテロワー」、「メープルテロワール」の称呼と引用商標2より生ずる「メープルシロップヌーボー」の称呼は、「メープル」の音を同じくするものであるとしても、他の音において、その音質、音感等を著しく相違するものであるから、それぞれの称呼を一連に称呼した場合においても、互いに紛れるおそれはないものである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似する商標ということはできない。
(ウ)観念
本件商標中、自他商品の識別機能を有する「Maple Terroir」の文字部分は、特定の観念を生じない造語よりなるものであるから、引用商標とは、観念上比較することはできない。
したがって、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
そして、前記の判断を左右するような取引の実情も見あたらない。
(2)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第8条第1項に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)

(色彩については原本参照。)



審理終結日 2012-03-01 
結審通知日 2012-03-07 
審決日 2012-03-21 
出願番号 商願2007-23339(T2007-23339) 
審決分類 T 1 11・ 4- Y (X30)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 2007-10-19 
登録番号 商標登録第5085500号(T5085500) 
商標の称呼 ファーストタップ、メープルテルワー、メープルテロワール、メープルテロアール、テルワー、テロワール、テロアール、ファインメープルプロダクツ、メープルシロップヌーボー、ヌーボー、シローデラーブルピュール 
代理人 亀谷 美明 
代理人 中尾 真一 

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