• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X29
管理番号 1256451 
審判番号 無効2011-890032 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-05-11 
確定日 2012-04-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5196153号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5196153号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5196153号商標(以下「本件商標」という。)は、「三姉妹漬」の漢字を標準文字で表してなり、平成20年4月9日に登録出願、第29類「野菜の漬物,果物の漬物」を指定商品として、同20年11月18日に登録査定がなされ、同21年1月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第24号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1) 請求人が使用する商標と本件商標との関係について
ア 請求人が使用する商標について
請求人は、滋賀(湖北・姉川)の三姉妹本舗の「三姉妹漬」として、平成6(1994)年12月頃より現在に至るまで継続して、商標「三姉妹漬」(以下「引用商標」という。)を使用している(甲第2号証ないし甲第5号証)。ただし、使用当初のラベル(シール)は、存在していない。
請求人の引用商標は、本件商標と外観、称呼及び観念が同一であり、本件商標は、請求人の引用商標と同一又は類似する。
イ 請求人の商品
請求人は、平成6年12月頃から、引用商標を付した漬物(以下「請求人商品」という。)を販売している。請求人商品については、平成12年1月に発行された「湖北いきいき農業」(甲第6号証)に、はくさいのたたみ漬、きゅうりやなすの粕漬、糖漬、赤かぶ甘酢漬、ぜいたく漬等が紹介されており、また、平成14年頃の注文ハガキ(甲第7号証)に、湖北特産品の漬物として白菜たたみ漬、うり・きゅうりの粕漬及び旬野菜のぬか漬が紹介されており、各種漬物を販売している。
ウ 引用商標と本件商標との関係
引用商標と本件商標とは、外観、称呼及び観念の全てが同一又は類似であるとともに、請求人商品と本件商標の指定商品も同一又は類似であり、引用商標と本件商標が抵触関係にあることは明らかである。
(2)引用商標が周知であること
ア 引用商標を表示したラベルの使用について
請求人は平成6年12月頃から引用商標の使用を開始し、平成7年12月頃から現在に至るまで引用商標を表示したラベル(シール)を包装袋に貼り付けて各種漬物を販売している。
請求人は、引用商標を表示したラベル(シール)の印刷を株式会社北川化成に発注しており(甲第8号証)、当該ラベル(シール)は、2002年(平成14年)から2006年(平成18年)までは、年に2回それぞれ、2万?3万枚が発注、納品され、さらに、本件商標の出願当時の2007年(平成19年)においては、一年間に3万枚を3回発注している(甲第8号証の1ないし11)。
なお、2004年(平成16年)においては、納品伝票が見つからず提出できない。
一般に、このようなラベル(シール)は、漬物が入った包装袋毎にその表に一枚貼り付けて出荷するために、ラベル(シール)の納品枚数だけ商品が売れたことになるから、2002年(平成14年)当時においては、一年間に約5万袋前後の請求人商品が販売されており、2007年(平成19年)当時になると、一年間に約8万袋前後の請求人商品が販売されるまでになり、事業の継続年数とともに販売量も増加している。このように、請求人商品「漬物」が、平成6年の販売開始から13年間にわたって継続して販売され、本件商標の出願当時においては、一年間に約8万袋前後販売されるに至たり、このように、多数販売されるに至ったということは、請求人商品は、需用者の間に広く認識されるに至ったといえる。
イ 請求人の商品の取引先
請求人の商品の取引先として、平成15年?平成20年の6年間の総勘定元帳を提出する。請求人商品は、平成15年頃には、滋賀県湖北地方に店舗展開する株式会社フタバヤの長浜店、近江店及び彦根店にて販売されるとともに、株式会社ホリウチ及び有限会社治平屋に納品され、また、北近江リゾートの北近江の湯にても店頭販売されている。そして、平成16年7月頃には関ヶ原観光株式会社にも納品され、北近江地方の特産品として店頭販売されている。また、平成18年1月頃から三姉妹本舗(滋賀県長浜市)にても一般販売されている(甲第9号証)。
このように、請求人商品は、滋賀県の北近江地方において広く販売されているとともに、株式会社ホリウチの店舗にて、また、有限会社治平屋を通じて関西地方のスーパー及びデパートにて広く販売されている。株式会社ホリウチでの販売は、兵庫県宝塚市の店舗(甲第10号証の1)及び大阪府吹田市の店舗にて行われている。また、有限会社治平屋を通じての販売は、大阪府寝屋川市の株式会社ラッキー(甲第11号証の1)、大阪府枚方市の株式会社大近近鉄枚方パントリー(株式会社近鉄百貨店枚方店地下)(甲第11号証の2)、大阪府箕面市の株式会社三越恵比寿店(甲第11号証の3)、兵庫県神戸市の株式会社大近パントリーフォレスタ六甲店(甲第11号証の4)、株式会社大近パントリー近鉄生駒店(甲第11号証の5)、兵庫県西宮市の株式会牡パントリー阪神西宮店(甲第11号証の6)、大阪府大阪市都島区のタワープラザアベニューパントリー都島店(甲第11号証の7)、奈良県奈良市の株式会社大近近鉄奈良店パントリー(株式会社近鉄百貨店奈良店地下)(甲第11号証の8)、滋賀県草津市の株式会社大近中部近鉄草津店パントリー(株式会社中部近鉄百貨店)(甲第11号証の9)及び奈良県橿原市の株式会社大近近鉄橿原パントリー(株式会社近鉄百貨店橿原店地下)(甲第11号証の10)で行われている。このように、請求人商品は、北近江地方を中心に関西地方まで販売されて需要者の間に広く認識されているということができる。
ウ 請求人の商品の売上高
請求人の売上高証明書(甲第12号証)から明らかなように、平成13年頃には、1250万円ほどの売上げであったものが、その後売上げが少しずつ増加し、本件商標の出願当時(平成20年頃)になると2000万円を超えるようになっている(甲第9号証及び甲第12号証)。
売上高とラベル(シール)の発注枚数とは関連性があり、例えば、2002年(平成14年)においては、商品の売上高が約1570万円であり、このとき引用商標を付したラベル(シール)が約5万枚前後使用され、また、2007年(平成19年)においては、商品の売上高が約2050万円であり、このとき引用商標を付したラベル(シール)が約8万枚前後使用されるようになっている。このような事実からすると、平成14年においては、約5万袋前後、平成15年においては、約5万袋前後、平成16年においては、約7万袋前後、平成17年においては、約7万袋前後、平成18年度においては、約8万袋前後、また、平成19年においては、約8万袋前後、また、平成20年においては、約10万袋前後の販売があったことになり、このように、1年間に約5?10万袋前後の販売が継続して行われてきたということは、請求人の商品が需要者の間に広く認識されるに至ったということができる。
エ 三姉妹本舗の商品の紹介記事など
請求人のビジネス活動は、種々の雑誌などに取り上げられてきている。例えば、平成9年においては、刊行物「淡海ふるさとの味見本市」(甲第13号証)の23番に、請求人が代表を務める「三姉妹本舗」のはくさいのたたみ漬が写真入りで紹介されている。また、平成11年においては、刊行物「淡海ふるさとの味」(甲第14号証)の41番に、三姉妹本舗のはくさいのたたみ漬が写真入りで紹介されている。平成12年及び同13年においては、わがまちの特産品として三姉妹本舗のはくさいのたたみ漬などが写真入りで紹介され(平成12年1月発行)(甲第6号証)、また、月刊雑誌「家の光」8月号(平成13年8月1日発行)(甲第15号証)に、農村女性起業グループネットワーク「ピクルスミセス」の紹介があり、三姉妹本舗(代表:田辺八重子)は、このピクルスミセスの一グループであり、この「ピクルスミセス」の記事とともに三姉妹本舗のはくさいのたたみ漬が写真入りで紹介されている。平成17年においては、刊行物「近畿地域女性起業マップ」(甲第17号証)に三姉妹本舗の紹介とともに、商品「はくさいのたたみ漬」が写真入りで紹介されている。また、平成18年においては、刊行物「農山魚村女性起業400選全国マップ」(甲第18号証)に、三姉妹本舗が商品「白菜のたたみ漬」とともに写真入りで紹介されている。さらに、平成19年においては、朝日新聞のあいあいAI滋賀版(甲第19号証)に、三姉妹本舗の漬物「白菜のたたみ漬」が紹介されている。なお、発行日が明確ではないが、甲第20号証には、三姉妹本舗の漬物「白菜のたたみ漬」が紹介されている(付されている商標から判断すると、本件商標の出願前に発行された可能性が非常に高い。)。
また、滋賀県商工会連合会は、滋賀県内の観光と特産品に関する情報を発信しており、インターネットにおいては、滋賀Navi(Copyright(C)2002-2004)(甲第21号証)にて三姉妹本舗が紹介されているとともに、その商品「白菜のたたみ漬」などが写真入りで紹介されている。また、刊行物「滋賀Navi2007」(発行日:平成19年3月、発行者:滋賀県商工会連合会)(甲第22号証)においても、インターネットの紹介と同様に、三姉妹本舗が紹介されているとともに、その商品「白菜のたたみ漬」などが写真入りで紹介されている。
さらに、「ピクルスミセス」の活動は、平成12年7月27日に第49回全国農業コンクールにおいて毎日新聞社・富民協会賞を受賞し(甲第23号証)、また、この第49回全国農業コンクールにおいて優秀賞を受賞している(甲第24号証)。
このように、請求人のビジネス活動は、農村女性の起業ということで周囲から注目を受け、その活動内容については、滋賀県内のみならず、近畿地方で紹介されて知られるものとなっている。また、請求人の商品「はくさいのたたみ漬」は、北近江地方の特産品として滋賀県内において広く知られ、漬物「はくさいのたたみ漬」を紹介する際には、甲第13号証?甲第15号証、甲第17号証?甲第22号証に掲載されているように、製造元である三姉妹本舗の紹介とともに、その商品写真が添付されていることが多く、この商品写真において、製造元の「三姉妹本舗」と引用商標が示されている。
周知性のまとめ
以上述べたように、請求人は、引用商標について、請求人商品の平成6年12月の販売開始から現在に至るまで継続して使用を行っており、本件商標の出願当時では、使用開始から約14年間にわたって継続して使用している。そして、請求人商品の年間売上高は、本件商標の出願当時では、約2000万円まで増えている。漬物の販売単価は、高額ではなく、商品に付すラベル(シール)の使用枚数をも考慮すると、本件商標の出願当時では年間約8万?9万袋販売したことになり、これほど多く商品を販売したということは、滋賀県の北近江地方において、また、近畿地方において需要者の間に広く認識されるに至ったということができる。
また、請求人の商品「漬物」の売上高が毎年増加するということは、三姉妹本舗の引用商標が北近江地方の特産品としてのPRが継続的になされているということであり、請求人が販売する商品「漬物」を介して、また、北近江地方の特産品としてのPRを通して、引用商標は、請求人商品「漬物」について需要者の間に広く認識されるに至ったということができる。
(3)以上のとおりであるので、本件商標は、第29類の指定商品の全てについて、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。
2 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、前記第2の請求人の主張に対し、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)請求人は、漬物加工グループの三姉妹本舗(以下「三姉妹本舗」を含めて「請求人」という場合がある。)の代表者であり(甲第15号証、同17号証ないし同19号証、同20号証ないし22号証)、請求人は、滋賀県虎姫町において、平成6年12月に起業して以来、「漬物」を製造販売していることが認められる(甲第18号証)。
(2)平成12年から平成19年の7年間に発行された雑誌等に、請求人の業務に係る商品「漬物」の入った包装袋に、請求人が引用する商標「三姉妹漬け」の文字を付した写真が掲載されていることが認められる(甲第6号証、同7号証、同13号証ないし同15号証、同17号証ないし同19号証及び同22号証)。
(3)株式会社北川化成が、三姉妹本舗に宛てた「納品書」によれば、「三姉妹漬」の「シール」は、2002(平成14)年に50000枚、2003(平成15)年に50000枚、2005(平成17)年60000枚、2006(平成18)年に60000枚、2007(平成19)年に90000枚(なお、平成16年分は提出されていない。)の累計約31万枚のラベル(シール)が作成されたと認められる(甲第8号証枝番号を含む。)ところ、当該ラベルは前記(2)のとおり「はくさいたたみ漬」等の漬物の包装袋上に貼付されていることが確認できる。
(4)「総勘定元帳」のコピー(甲第9号証)には、平成15年から平成20年までの年間売上高が示されており、平成15年には、16,188,634円、同16年には、19,310,800円、同17年には、19,258,370円、同18年には、20,309,696円、同19年には、20,471,481円、同20年には、24,533,560円の売上高があったことが認められる。
(5)宅配業者が荷物を実際に引き受けたことを示す伝票のコピーによれば、商品「三姉妹漬」は、兵庫県西宮市、奈良県奈良市、同橿原市、滋賀県草津市に送られ、また、品名は確認できないものの「三姉妹本舗」の漬物が、兵庫県宝塚市、同神戸市、大阪府吹田市、同寝屋川市、同枚方市、同大阪市、東京都渋谷区、奈良県生駒市に発送されたことが認められる(甲第10号証及び同11号証)。さらに、2007年(平成19年)1月24日付けの朝日新聞には、「あいあいAI滋賀」の見出しのもと、「おひとついかが 近江のみやげ」と題して、「虎姫町酢に工場を構える『三姉妹本舗』の味は地元でも評判で、今では百貨店での取り扱いや、全国各地から問い合わせがあるほど。」(甲第19号証)との記載も確認できる。
(6)小括
以上を総合すると、請求人は、その業務に係る商品「漬物」に、「三姉妹漬」の文字を表した引用商標を表示して、本件商標の登録出願前より、雑誌等に継続して宣伝、広告をし、また、滋賀県内における取引業者、需要者ばかりでなく、少なくとも兵庫県、大阪府、奈良市などにおいて販売されているものであり、引用商標は、滋賀県を中心としてその周辺地域をはじめ、兵庫県、大阪府、東京都等の都府県に及ぶ範囲において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録査定時はもとよりその出願時には既に、需要者の間に広く認識されるに至っていたと認めることができる。
2 本件商標と引用商標との類否
本件商標は、前記第1のとおり、「三姉妹漬」の漢字を標準文字で表してなり、「サンシマイズケ」の称呼を生じ、「三姉妹の漬物」の観念を生じるものであり、引用商標は、「三姉妹漬」の文字部分より、「サンシマイズケ」の称呼を生じ、「三姉妹の漬物」の観念を生じるものであるから、両商標は、同一又は類似の商標である。
3 本件商標の指定商品と請求人商品との類否
本件商標は、第29類「野菜の漬物,果物の漬物」を指定商品とするものであるのに対し、請求人商品は「漬物」である。
そうとすれば、本件商標の指定商品と請求人商品は、その生産者、取引系統、販売場所、需要者等を同じくする同一又は類似の商品と認めることができる。

4 むすび
以上によれば、本件商標は、その登録出願前より登録査定時に至るまで、請求人の業務に係る商品「漬物」を表示するものとして、当該商品の需要者の間に広く認識されていた引用商標と同一又は類似の商標であって、また、本件商標の指定商品は、請求人商品と同一又は類似と認められる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2012-02-29 
結審通知日 2012-03-02 
審決日 2012-03-14 
出願番号 商願2008-32154(T2008-32154) 
審決分類 T 1 11・ 25- Z (X29)
最終処分 成立  
前審関与審査官 内藤 隆仁早川 真規子 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 前山 るり子
内山 進
登録日 2009-01-16 
登録番号 商標登録第5196153号(T5196153) 
商標の称呼 サンシマイズケ、サンシマイ 
代理人 岸本 忠昭 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ