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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y25
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y25
管理番号 1256426 
審判番号 無効2007-890127 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-02 
確定日 2012-04-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第5040036号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5040036号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成17年6月21日に登録出願、第25類「Tシャツ,帽子」を指定商品として、拒絶査定に対する審判において、同19年3月6日に審決され、同19年4月13日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし同第14号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、別掲1のとおり角張ったゴチック体で表現したローマ字「SHI-SA」の文字の右上にトラやライオンとおぼしき動物が飛び越えようとしている態様を表現してあり、その下段には、格段と小さなローマ字で「OKINAWAN ORIGINAL GUARDIAN SHISHI-DOG」と表現してなる商標であって(以下「本件商標」という。)、指定商品は第25類の「Tシャツ」と「帽子」である(甲1)。
本件商標における上記の態様は、甲第3号証ないし同第7号証に表示の請求人が本件出願前からTシャツの商標として使用中の商標(以下「引用商標」という。)と殆ど同一であり、酷似している。
そして、本件商標の出願前に、本件商標と酷似している引用商標を付したTシャツを被請求人が知り得る機会があったことは、甲第3号証ないし同第7号証から明らかである。
したがって、被請求人は、引用商標を盗用し、多少の変更を加えて出願し登録を受けたものと思われる。しかも、被請求人は、請求人に対して、本件商標権を侵害しているとして、請求人のTシャツの取扱店に差止めを請求をしており、この行為は極めて悪質な不正競争行為である。
(2)商標法第4条第1項第15号について
甲第6号証ないし同第10号証からも明らかなように、那覇市の国際通りという狭い地域において、互いに酷似する請求人のTシャツと被請求人のTシャツが販売されているということは、本件審判の審理終結前において、商品の出所の混同を来すことは明らかであり、現に、一般消費者の中には、出所の混同を来たし、問い合わせ先を間違えている者が出現している状態である。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第7号について
近年は、無効審判2005-89049、無効審判2005-89131、東京高裁平成14年(行ケ)616号及び平成17年(行ケ)10323号のように、「商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性に欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合は、商標法第4条第1項第7号に該当するものとしてその登録を認めるべきではない」という内容の審判決例が知られている。
本件商標の場合は、那覇市内という地方の狭い地域で販売活動している者同士の間で、他人の使用中の商標が出願されていないことを奇貨として、酷似させた商標を無断で出願し登録した上に、請求人の商品の取扱店に警告したり、侵害行為として差止め請求する行為(甲11)は、前記の審判決例と同様に、出願の経緯に著しく社会的妥当性に欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に違反するものである。
また、国際通りという同じ商店街において、被請求人と請求人の互いに酷似する商標を付したTシャツ同士が競合しているために、出所の混同を来し、消費者にも迷惑を及ぼしており(甲12)、商標登録している商品が本物で、商標登録を受けていない商品は偽物である、という虚偽の事実を来客に流布するなどの悪質な行為に発展している。狭い地域で営業活動する者同士の間で、このような行為が多発するようでは、商標法の目的である商標使用者の業務上の信用維持、需要者の利益保護に反するものであり、公正な競業秩序の維持にも反するから、商標法第4条第1項第7号に該当する商標である。
(2)本件商標を「盗用」と主張する理由について
被請求人は、「盗用に係るものでないことは、乙第2号証におけるデザインに至った経緯により明らかである。」と主張しているが、同号証から、デザインの経緯は理解できるが、盗用でないことの証拠は全く不明である。被請求人のTシャツが一般に公開され、発売されたのは、平成16年10月22日から24日に開催された「沖縄の産業まつり」が最初であったことになる(甲13)。
しかしながら、甲第6号証からも明らかなように、請求人は、沖縄の産業まつりの開催期間以前の平成16年7月9日から9月19日までの約2月半の間に、沖縄県の第3セクターである財団法人沖縄県産業振興公社が国際通りで開催した「平成16年度 空き店舗活用起業支援事業」のAグループとして出展し、引用商標を付したTシャツを少なくとも約50枚以上は販売した実績がある。該事業は、甲第6号証の2のとおり、該事業を実施する前の4月5日から30日までに、各種のマスメディアを用いて沖縄県民に対して広く予告PRし、募集を呼びかけている。
そして、該事業は、甲第14号証からも明らかなように、平成15年から開催しているので、沖縄県内では国際通りの1坪ショップ「eggs+」として話題を呼んでおり、知らない人はいないほどである。
さらに、該事業において、他のTシャツも含め約90枚は売上げがあり、平成15年の年末までには、100枚以上はネット販売した実績もある。
被請求人は、請求人のデザインを全く知る機会が無かったので、盗用するはずが無いと主張しているが、請求人の商品は、前記の1坪ショップ「eggs+」で販売された後、本件商標の出願日である平成17年6月21日までの間にも、全国誌の雑誌「月刊 ハンズ」の運営するインターネットストアー「hands store」で平成17年3月10日に掲載された「SHISA」Tシャツの掲載写真(甲5)や甲第6号証第38頁の写真のTシャツの着用者、甲第7号証の掲載写真を見る機会は何度も有ったはずである。更に、請求人の「SHISA」Tシャツは、本件商標の出願日までには大量に発売されているので、着用している人や場面を被請求人が見かける機会も当然に増えているはずである。
(3)国際通りで出所の混同を来たしていることについて
被請求人は、商標法第4条第1項第15号に該当するには、全国的な著名性が必要だと主張しているが、国際通りという狭い商店街で互いに出所の混同を生ずるおそれが有るかどうかを論ずる場合は、甲第12号証に示すとおり、現に出所の混同を生じておれば、それだけで「出所の混同を生ずるおそれがある商標」としての要件を充分に満たしている。
今回のように、酷似するTシャツが国際通りで競合すれば、互いに出所の混同を生ずるおそれがあることは充分に予見できたことであり、しかも、市販されている他人のデザインと酷似した商標を出願し登録する行為は、自ら出所の混同を引き起こしているから、商標法第4条第1項第15号に該当する商標である。
(4)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に該当するものであるから、無効にされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第7号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第7号について
商標法第4条第1項第7号に該当する商標は、商標審査基準において示されているとおりである。本件商標の図形部分は、沖縄の守り神であるシーサーをモチーフにしたものであり、いずれの構成文字も審査基準の各類型に該当しないことは明白である。
そして、判例も、私権調整の問題は、そもそも商標制度に関する公的な秩序の維持を図る商標法第4条第1項第7号にかかわる問題とすることはできないとしている(東京高裁平成9年(行ケ)第276号)。
したがって、請求人が本号について主張する事実は、本号の規定にかかわる問題と解することはできない。
そして、本件商標のデザインが出願人において独自に創作されたものであって、請求人の使用にかかるTシャツのデザインとの同一性はない。すなわち、「SHISA」の表現が異なるばかりか、下段の文字も全く異なり、動物の図柄部分も当該部分のみ対比すれば同一性を有しない。それゆえ、いずれを「盗用」というのか不明である。
しかも、本件商標のデザインは、出願人により独自に創作されたものであって、請求人が主張するような「盗用」に係るものではない。このことは、乙第2号証におけるデザインに至った経緯により明らかである。
また、図形部分についてみれば、ネコ科の四足動物等をモチーフにデザインを行う場合に、当該動物が飛び上がる姿は比較的イメージしやすいものであり、このことは、標章の図形要素のウイーン分類表において、「A3.1.21 飛び上がっているシリーズIの動物」として、一つのカテゴリーとして成立していることからも窺える。さらに、IPDLにおける図形商標検索において、第25類における「A3.1.21」に限って検索しただけでも178件存在し、極めて多くの商標が存在していることがわかる(乙7)。
よって、沖縄の守り神シーサーも四足で描かれるのが一般的であるから、何ら、被請求人が独自に創作したものであることを否定する根拠となるものでもない。
以上より、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字または図形ではなく、また、本件商標の指定商品に使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでもなく、さらに、他の法律によって使用が禁止されているとも認められず、本件商標がそもそも引用商標の盗用でないことが明らかであるばかりか、商標制度に関する公的な秩序の維持を図る商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
商標法第4条第1項第15号は、主として全国的に著名となっている商標が著名性を獲得しているが故に、非類似の商品や役務について出所の混同が生じ得る場合に、これを排除せんとするものである。
請求人提出の甲各号証は、著名性の認定における一要素である「標章の周知度」が立証されるに足るものとはいえない。
甲第8号証の説明について、請求人は、「本件審判の審理終結前に被請求人が、那覇市の国際通りの各店舗で、本件商標を付している事実を立証する」、「那覇市の国際通りという狭い地域において、互いに酷似する請求人のTシャツと被請求人のTシャツが販売されているということは、審理終結前において、商品の出所の混同を来す」等と述べているが、請求人自ら各種サイトで販売等といっているように、請求人は当該地域以外での販売の事実を否定しておらず、これらの提出物件や主張が本号の該当性を裏付けるものとはならない。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当しない。
(3) 甲各号証について
ア 甲第2号証について
被請求人は、甲第2号証に記載された内容のような発想をしたことはなく、このような謂れを受けることは遺憾である。被請求人が自他の知的財産を尊重し深く注意を払ってきていることは、乙第2号証においても示したとおり各種デザインの候補などにおいても、コピーライトマークを使用していることや、乙第3号証に明らかなように、本件商標のほか、オリジナル商品については、そのほとんどについて登録出願を行っている。出願にあたっては、必ず、「財団法人日本特許情報機構」が派遣する「特許情報活用支援アドバイザー」の指導を受ける等、真摯な努力をしていることからも明らかである。
イ 甲第3号証ないし同第5号証について
請求人は、甲第3号証ないし同第5号証に基づいて、被請求人が「盗用」して出願した等と決め付けているが、これらがそのような事実の根拠となるものではないことはいうまでもない。
請求人の述べる携帯サイト及びウェブサイトについてもアクセス・閲覧数等が立証されたものでもない。また、甲第4号証の「トリビアの泉」は、毎回7から10程度の「トリビア(雑学・些末な)」を極めて多くの人々のインタビューや実験結果に基づいて紹介する番組であり、「日本人が一番よくやるものまね」は、この1000を超えるトリビアのうちの一つのトリビアであり(乙5)、「アントニオ猪木」の物真似をした人は261人にのぼり、そのうち、請求人が主張するTシャツを着ていた人は一人であって、当該場面が映し出されたのは、僅か数秒に過ぎないものといえる。しかも、当該「トリビアの泉」の視聴者は、面白い雑学を見たくて視聴しているのであって、インタビューを受ける道行く人の服装自体への関心・注意度は極めて低いものというべきである。しかも、当該番組は、そもそもファッション番組ではなく、インタビューされる人の服装はもとより、出演する芸能人が着ていた服装ですら、関心の高いものとはいえず、数秒表示されたことをもって、被請求人が「盗用」して出願した等と決め付けているが、そのような事実の根拠となるものではない。
ウ 甲第6号証について
甲第6号証も同様に「盗用」出願の事実の根拠とならない。また、発行部数、地域等も何ら証明されておらず、もとよりデザイン等自体が掲載されていない。
エ 甲第7号証について
甲第7号証も同様である。沖縄県内には、「沖縄タイムス」と「琉球新報」という二大新聞があるが、「ほーむぷらざ」は、沖縄タイムスが週一回夕刊の別紙として発行するものであって、本紙でもないばかりか、小さく見えない部分が多過ぎるものであり、詳細に識別することが困難である。
(4)結論
したがって、本件商標の登録については、何ら違法性はなく、商標法第46条第1項の規定により、これを無効とすることはできない。

第4 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、上段に顕著に太字で「SHI-SA」、中段に小さく「OKINAWAN ORIGINAL」、下段に「GUARDIAN SHISHI-DOG」の各文字を三段に書し、上段の「SHI-SA」の文字の右側上部に図形が配された構成よりなるところ、当該図形は、首飾りのような模様、前足・後足の関節部分における飾りないし巻き毛のような模様、尻尾の全体的に丸みを帯びて先端が尖った形状の四足動物が右側から左上方へ向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれいるものであって、文字部分と図形部分は、一体的にまとまりの良い構成態様となっている。
2 引用商標について
引用商標は、別掲2のとおり、文字と図形の結合商標であるところ、大文字で太く顕著に「SHISA」の文字を、その下に小さく「OKINAWA SHISHI LION」の文字を二段に書してなるものである。そして、図形部分は、該「SHISA」の文字の右側上部に配されて、四足動物が右側から左上方へ向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれいるものであって、文字部分と図形部分は、一体的にまとまりの良い構成態様となっている。
3 商標法第4条第1項第7号について
請求人は、「被請求人が、請求人の引用商標を盗用し、多少の変更を加えて出願し登録を受けたもである。また、国際通りという狭い商店街で被請求人と請求人の互いに酷似する商標を付したTシャツ同士が競合しているために、出所の混同を来し、消費者にも迷惑を及ぼしており、・・・虚偽の事実を来客に流布するなどの悪質な行為に発展している。狭い地域で営業活動する者同士の間で、このような行為が多発するようでは、商標法の目的である商標使用者の業務上の信用維持、需要者の利益保護に反するものであり、公正な競業秩序の維持にも反する。」旨主張している。
ところで、商標法第4条第1項第7号の解釈・適用については、知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10391号判決において、次のように判示されている。
「法4条1項7号は、本来、商標を構成する『文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合』(標章)それ自体が公の秩序又は善良な風俗に反するような場合に、そのような商標について、登録商標による権利を付与しないことを目的として設けられた規定である(商標の構成に着目した公序良俗違反)。ところで、法4条1項7号は、上記のような場合ばかりではなく、商標登録を受けるべきでない者からされた登録出願についても、商標保護を目的とする商標法の精神にもとり、商品流通社会の秩序を害し、公の秩序又は善良な風俗に反することになるから、そのような者から出願された商標について、登録による権利を付与しないことを目的として適用される例がなくはない(主体に着目した公序良俗違反。)。・・(中略)・・当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨や、国際調和や不正目的に基づく商標出願を排除する目的で設けられた法4条1項19号の趣旨に照らすならば、それらの趣旨から離れて、法4条1項7号の『公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ』を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっても、出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者(例えば、出願された商標と同一の商標を既に外国で使用している外国法人など)との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合・・(中略)・・は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで『公の秩序や善良な風俗を害する』特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。」
そこで、上記の高裁判決の観点から以下検討する。
(1)商標の構成に着目した観点について
本件商標は、前記1に示したとおりの構成からなるものであるから、その構成からみて、商標法第4条第1項第7号に規定されているような商標の構成に着目した公序良俗違反に該当するようなものではないことは明らかである。
ア 甲第3号証ないし同第7号証によれば、以下の事実を認めることができる。
(ア)甲第3号証は、「オリジナル-Tシャツを紹介!」の見出しのウェブページである。その1枚目には、携帯電話と思しき図中に「[最終更新日]2003/09/17 01:25:48」の日付と時間が記載されている。同じく3枚目には、1枚目と同様の図中に引用商標が記載されている。
(イ)甲第4号証は、請求人作成の資料であり、「OKINOW」の見出しのもと、「2003年10月15日に放送した内容で・・・SHISAのTシャツを着ていた。」の記載の下に、引用商標と思しきデザインが付されたTシャツを着た男性の写真がある(日付不明)。
同じく、2枚目には、「Air-be?トリビアの泉データベースβ?」の見出しのウェブページ中に、「放送日 視聴率 金の脳 トリビア トリビアの種」の項目の下段に「2003.10.15 21.5 No.250 No.242?No.250 No.015」の記載がある。
同じく、6枚目には、「Tシャツコミュニケーション T-SELECT[デザイナー詳細画面]」の見出しのウェブページであり、その中に、「トリビア 2003年10月16日(木)06:46:54-りんごばなな・・・昨日トリビア見てたら、「トリビアの種」のとこで・・・なんとなんと「SHISA」Tシャツ着てたんですわ! 超びっくり!黒地に「SHISA」だから間違いないと思います・・・。」の記載がある。
(ウ)甲第5号証は、「hands store」のホームページである。1枚目には、引用商標を付した黄色いTシャツが掲載されている。3枚目は、17年3月10日付けの株式会社ハンズ・コムがOKINOWに宛てた「Tシャツ在庫表」である。4枚目は、FAX送信書であり、その中に「SHISA」の記載がある。
(エ)甲第6号証は、平成17年3月発行の「平成16年度 空き店舗活用企業支援事業 実施報告書」である。その38頁左下に「おきなう/OKINOW」の文字の下に引用商標を付したと思しきTシャツの写真がある。 (オ)甲第7号証は、2005年3月24日付けの「週刊ほーむぷらざ」の写しである。これには、店名を「オキナウ/OKINOW」とする引用商標を付したと思しきTシャツの販売についての広告が掲載されている。
(カ)平成19年8月23日付け上申書に添付された「差止請求通知書」は、平成19年8月17日付けで本件商標に基づき被請求人に通知されたものである。
(2)主体に着目した観点について
被請求人のデザインが盗用であったか否かについては、乙第2号証によれば、2002年(平成14年)1月頃に、T-シャツのデザインに読み(発音)を表すアルファベットをデザインに入れ、「shi-sir」のように音と音との間に(-)ハイフンを使用し、その後もデザインを考案し今に至ったことがうかがえる。
確かに、引用商標の採択が公表された時期と被請求人がデザインを考案している時期との時間的関係のみからみれば、被請求人は、本件商標の出願日前に、引用商標の採択の事実を知り得る時間的な余裕があったものといえる。
しかしながら、そのことが直ちに、被請求人によってデザインが盗用されたとまで断定することはできないし、他にこれを認める証拠も見当たらない。
(3)本件商標と引用商標との類似性について
前述したとおり、本件商標は、上段に顕著に太字で「SHI-SA」、中段に小さく「OKINAWAN ORIGINAL」、下段に「GUARDIAN SHISHI-DOG」の各文字を三段に書し、上段の「SHI-SA」の文字の右側上部に図形が配された構成よりなるところ、当該図形は、その構成全体より「シーサー」の特徴とされている首・前足・後足・尻尾に巻き毛のような形状を施した四足歩行の動物図形からなるものであるのに対し、引用商標は、上段に顕著に太字で「SHISA」、中段に小さく「OKINAWA SHISHI LION」の文字を二段に書し、上段の「SHISA」の文字の右側上部に図形が配された構成よりなるところ、「SHI-SA」の文字と「SHISA」の文字部分とを比較すれば、いずれからも「シーサー」の称呼を生ずる点においては共通性があるといえるが、本件商標からは、その構成全体の文字に相応して「シーサーオキナワンオリジナルガーディアンシシドッグ」の称呼を生じ、引用商標からは、その構成文字に相応して「シーサーオキナワシシライオン」の称呼を生じ、その構成音数、音構成に差異を有しているから、両商標は、十分に聴別し得るものである。
さらに、本件商標は、動物図形を対比しても、本件商標に描かれた動物図形は「シーサー」の特徴とされているいくつかの点を備えているということができ、引用商標は、その構成中の「SHISA」及び「SHISHI LION」の文字を配していることから、「シーサー」を表したと思しき図形と看取できるが、動物図形だけをみて直ちに「シーサー」と理解されることがないとみるのが相当であって、その向きや基本的姿勢のほか、跳躍の角度、前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度、胸・背中から足にかけての曲線の描き方について似通った印象を与えるとしても、両商標は、その外観全体において顕著な差異を有する別異の商標というべきものである。
(4)小括
本件商標の態様からみれば、被請求人が引用商標をそのままの態様において剽窃したというような性質のものとはいい難いうえ、上記(2)において述べたとおり、被請求人は、本件商標の出願日前に、引用商標の採択の事実を知り得る時間的な余裕があったものといえるとしても、そのことが直ちに、被請求人によってデザインが盗用されたとまで断定することはできないし、他にこれを認める証拠も見当たらない。
また、通常、登録された商標権に基づき商標権侵害者に警告を発するのは正当な行為であり、本件における警告書による通知に関して問題となる点は認められない。
そして、請求人と被請求人との紛争は、私的な問題であり、当事者間における利害の調整に関わる事柄であるといわなければならない。
以上を総合すると、本件商標の出願行為、商標の使用行為、商標権に基づく警告通知の行為などにおいて、被請求人による不正目的、又は、不正な行為があったと認めることはできないものである。
したがって、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に違反してされた旨の請求人の主張は採用できない。
4 商標法第4条第1項第15号について
前記3(1)ウのとおり、本件商標と引用商標は、別異の商標であるうえ、請求人の提出に係る証拠からは、本件商標の登録出願時において引用商標が、請求人の業務に係る商品「Tシャツ,帽子」を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたということができないものである。 そうとすれば、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を想起、連想させるものとはいえないものであり、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第15号に違反してされたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(引用商標)




審理終結日 2012-02-29 
結審通知日 2012-03-02 
審決日 2012-03-15 
出願番号 商願2005-61595(T2005-61595) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Y25)
T 1 11・ 271- Y (Y25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日向野 浩志 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 前山 るり子
井出 英一郎
登録日 2007-04-13 
登録番号 商標登録第5040036号(T5040036) 
商標の称呼 シーサ、オキナワンオリジナルガーディアンシシドッグ、オキナワンオリジナルガーディアン、オリジナルガーディアンシシドッグ、オリジナルガーディアン、シシドッグ 
代理人 谷山 守 
代理人 福島 康文 

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