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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y35
管理番号 1256391 
審判番号 取消2011-300573 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2011-06-24 
確定日 2012-04-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4663434号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
登録第4663434号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成からなり、平成14年2月19日に登録出願、第35類「広告,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,財務書類の作成,職業のあっせん,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,広告用具の貸与」及び第36類「企業の信用に関する調査」を指定役務として、平成15年4月18日に設定登録されたものである。
なお、本件審判請求の登録日は、平成23年7月26日である。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定役務中、「第35類 広告,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,職業のあっせん,広告用具の貸与」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証を提出した。
(1)請求の理由
本件商標は、その指定役務中、「第35類 広告、経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,職業のあっせん,広告用具の貸与」について継続して3年以上日本国内において使用した事実は存在せず、また、現在においても使用されておらず、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
また、本件商標の商標登録原簿(甲第1号証)には、使用権を設定した事実も存在しない。
(2)請求人は、被請求人の答弁に対し、何ら弁駁していない。

3 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第3号証を提出した。
(1)使用の証明
被請求人は、本件商標を、指定役務「広告,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,職業のあっせん,広告用具の貸与」に本件審判請求の予告登録前3年以内に、誠実に使用している。
被請求人が経営する株式会社コンサルティング・アルファ(以下「コンサルティング・アルファ」ということがある。)は、経営コンサルティング業や、法人・個人の資産運用に関するコンサルティング業等を主たる業務として設立されたものである。コンサルティング・アルファは、格付け評価を通じて調査対象となる会社の財務体質の問題点を分析して診断し、評価結果を提供しコメント(助言)する業務を行っており、その分析結果として、「格付け評価レポート」をクライアントに対して作成し提供している。この格付け評価レポートに本件商標を付して使用している(乙第1号証)。
コンサルティング・アルファが作成する「格付け評価レポート」の表紙を開けた1ページ目の中央部分に、本件商標と同一の商標が付されている。格付け評価レポートは、クライアント企業の安全性、収益性等の分析結果が細かく記載されたもので、その分析結果からクライアント企業の経営状況の評価及び格付けを行うものであり、コメントの付けられたレポートはクライアントに提供されるものである。この業務は、本件商標の指定役務の第35類中の「経営の診断又は経営に関する助言」に係る役務に該当する。
また、格付け評価レポートの1ページ目には「第64期 格付け評価レポート」の文言と本件商標の間に「2009.8.25作成」の文字が記載されている。これはレポートの作成された年月日の表示であり、情報の鮮度が重視される企業の評価に関するレポートは、これをクライアント企業に提供するにあたり、レポートの提供日をレポート作成日として記載しており、同種の記載は役務の完了日または完了した役務の報告日として通常表示されているものである。レポートは作成後直ちにクライアント企業に送付等されたと考えられるので、この役務が提供された日は2009年8月25日、またはその直後であると推察され、本件審判請求の予告登録前3年以内に使用していることが明らかになっていると考えられる。
また、「格付け評価レポート」の作成者は、「株式会社コンサルティング・アルファ」となっている。コンサルティング・アルファは、本件商標の商標権者である被請求人が代表取締役を務める会社であり、商標権者自身が自ら商標を使用したか、若しくは少なくとも商標権者が商標を使用しているコンサルティング・アルファに対して商標の使用を許可しているという構成になっている(乙第2号証、乙第3号証)。
経営者が権利を有する商標を、自らが経営する会社に使用させるという使用の形態は、中小企業においては広く行われているものであり、これは被請求人がコンサルティング・アルファに対して、本件商標の通常使用権を黙示的に許諾したものと考えることができる。したがって、法律的には、本件商標は通常使用権者(黙示)が使用しているものと考えられる。
上記の資料により、本件商標が指定役務「経営の診断又は経営に関する助言」について使用されていることは、証明されたものと思料する。
(2)登録商標の使用
ア 指定役務の該当性
被請求人は、コンサルティング・アルファを設立し、コンサルティング業として、クライアント企業より提出された貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等の内容から、その企業の安全性、収益性、資本効率、付加価値・生産性の分析や、キャッシュフロー効率、成長性の分析を行っている。格付け評価レポート(乙第1号証)は、上記分析結果についてグラフやチャートを用いて細かく企業の現状を説明するものであって、企業の現状に改善すべき点があればその問題点を指摘し、その分析結果からクライアント企業の評価および格付けを行うレポートであり、コメント並びに助言の付されたレポートは作成された後、直ちにクライアントに提供されるものである。この一連の業務は、本件商標の指定役務の第35類中の「経営の診断又は経営に関する助言」に係る役務に該当するものと思料する。
すなわち、経営状況の分析結果が記載された上記格付け評価レポート(乙第1号証)に本件商標を付してクライアントに提供する行為は、「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為」(商標法第2条第3項第3号)、及び「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」(商標法第2条第3項第4号)に該当する。
通常使用権者による使用
コンサルティング・アルファは、乙第2号証、乙第3号証に記載のとおり、本件商標の商標権者である被請求人が代表取締役を務める会社である。経営者自身が個人として商標権を有しているが、実際に使用しているのは自ら経営する会社(法人)であるという商標の使用の形態であるが、これは、明確な契約書の存在がなくても被請求人がコンサルティング・アルファに対して、本件商標の通常使用権を黙示的に許諾したことに該当する。
通常使用権の許諾は契約により成立するのが通常であるが、該契約においては契約書が必ずしも必要ではなく、口頭ないしは黙示の意思表示で足りるものと解されており、この考え方に基づいて通常使用権の許諾があった事を認めた審決例は多く存在する。上記形態では敢えて契約を締結する形を採るのは稀であり、口頭により契約を行うことも考え難いものである。また、実質的には商標権者自らが登録商標を使用しているのであって、この形態による商標の使用は、特に中小企業において多く行われているものである。この形態による商標の使用は、商標権者が、自らが経営する会社(法人)に黙示的に通常使用権を許諾したものと解するのが自然である。商標権者と実際の商標の使用者が異なり、かつ、通常使用権の許諾契約が存在しないという形式上の理由だけで、商標の使用が認められないとなると、商標権者にとっては、登録商標が現実に使用されており保護すべき信用が化体しているにもかかわらず、商標が保護されないという酷な結果となり、不使用商標の整理という商標法第50条の取消審判の趣旨にも反することとなると考えられる。
また、過去の審決例によると、個人が有する商標権を、会社の名において使用した場合には、該会社に対して通常使用権を黙示的に許諾したものと解すべきとした審決が散見される。
以上を鑑みれば、本件商標は、指定役務について通常使用権者が使用していると判断できる。

4 当審の判断
(1)被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
ア 「格付け評価レポート」(乙第1号証)の表紙に続く1頁には、最上段に「株式会社ばんば 様」と表示し、最下段に「(株)コンサルティング・アルファ」の表示がある。そして、中央部に「第64期」「格付け評価レポート」「2009.8.25作成」の表示があり、その下部に、別掲に示すとおりの構成からなるものと概ね同一の標章(以下「使用商標」という。)が表示されている。
イ 同2頁目には、「貴社の格付け」と題し、「評価」「事業状況」「与信能力」についての記載があり、「安全性」「収益性」「付加価値・生産性」「資本効率」等についての記載がチャートやグラフとともに示されている。そして、「資本効率」の項目には、「・・総資産の圧縮など、資金の効率活用が求められます。」との記載、また、最下段に「上記は直前期(06/30決算)までの財務諸表(2009年8月22日登録)に基づく分析結果で格付けされています。」との記載がある。
ウ 同3頁目には、有利子負債比率や固定長期適合率など財務指標の「安全性」に関する記載があり、それぞれ業界平均値との対比が示されている。
同4頁目には、売上高経常利益率など財務指標の「収益性」に関する記載があり、それぞれ業界平均値との対比が示されており、売上高経常利益率について「・・・売上構成や原価の見直しに加え、販管費の見直しが必要です。」との記載がある。
同5頁ないし7頁には、それぞれ「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー計算書」が示されている。
エ 前記ア及びイの年月日の表示は、本件審判請求の登録前3年以内の時期に該当するものである。
オ コンサルティング・アルファに係る「履歴事項全部証明書」の謄本写し(乙第2号証)及び同法人のホームページの写し(乙第3号証)に徴すれば、上記(1)エの時期を含めそれ以前より、被請求人は同法人の代表取締役であったことが認められる。
(2)上記(1)で認定した事実からすれば、以下のように判断される。
ア 使用商標について
本件商標は、別掲に示すとおりの構成からなるものであるところ、前記の「格付け評価レポート」に表示された使用商標は、本件商標と色彩のみを異にしその他の構成及び態様を同一とするものであるから、当該格付け評価レポートに本件商標と社会通念上同一の商標が表示されたと認め得るものである。
イ 使用者について
被請求人とコンサルティング・アルファの関係及び被請求人の主張とを併せみれば、同法人は、口頭か黙示的かは必ずしも明らかでないが、被請求人から本件商標についての使用を許諾された者、すなわち、通常使用権者であると認めるのが相当である。
ウ 使用役務及び使用時期等について
前記「格付け評価レポート」は、本件審判請求の登録前3年以内である平成21年(2009年)8月25日に作成され、当該格付け評価レポートを通じて、通常使用権者であるコンサルティング・アルファが顧客に対して、顧客の安全性、収益性等を分析し、その分析結果から顧客の経営状況の評価及び格付けを行うと共に、助言を行っていることが推認されるものである。 そうとすると、かかる使用役務は、取消請求に係る指定役務中の「経営の診断又は経営に関する助言」に含まれるものであること明らかである。
そして、格付け評価レポートに本件商標と社会通念上同一の商標を付して顧客に提供する係る行為は、商標法第2条第3項第4号でいう「役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為」に該当するものである。
(3)むすび
以上のとおり、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に通常使用権者によって、取消請求に係る指定役務中、「経営の診断又は経営に関する助言」について使用をされたと認められるものである。
したがって、本件商標は、取消請求に係る指定役務について、商標法第50条によってはその登録を取り消すことができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(本件商標)

(色彩については乙第1号証参照)

審理終結日 2012-02-23 
結審通知日 2012-02-27 
審決日 2012-03-09 
出願番号 商願2002-17001(T2002-17001) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (Y35)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 和雄 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 鈴木 修
小川 きみえ
登録日 2003-04-18 
登録番号 商標登録第4663434号(T4663434) 
商標の称呼 ネットカクズケ、カクズケ 
代理人 田辺 敏郎 
代理人 田辺 恵 
代理人 広瀬 文彦 

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