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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X1641
審判 査定不服 商4条1項16号品質の誤認 登録しない X1641
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X1641
管理番号 1256339 
審判番号 不服2011-3304 
総通号数 150 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-02-14 
確定日 2012-04-09 
事件の表示 商願2009- 84411拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「田んぼアート」の文字を書してなり、第16類「紙製包装用容器,紙製のぼり,紙製旗,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真,写真立て」及び第41類「セミナーの企画・運営又は開催,植物の供覧,動物の供覧,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,美術品の展示,庭園の供覧,洞窟の供覧,書籍の制作,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を指定商品及び指定役務として、平成21年11月6日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『田んぼアート』の文字からなるところ、これは植えたイネで田んぼに文字や絵を描くこと指す語として使用されていることからすると、例えば、これを第16類の指定商品中『印刷物』等、第41類の指定役務中『セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の製作』等について使用した場合、これに接する取引者、需要者は、『田んぼアートに関する印刷物』『田んぼアートに関するセミナーの企画・運営又は開催,田んぼアートに関する電子出版物の提供,田んぼアートに関する書籍の製作』であることを想起し、商品の品質、役務の質を表すものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品・役務以外の商品・役務に使用するときは、商品の品質、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。 」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)本願商標は、「田んぼアート」の文字を書してなるところ、その構成中「田んぼ」の文字は、「たんぼ(田圃)」の文字を表したものと認められ、「田畑、田」の意味を有し、「アート」の文字は、「芸術、美術」の意味を有する(ともに、「広辞苑第六版」株式会社岩波書店。)ものである。
そして、両文字は、一般によく知られており、親しまれている語であるから、これよりは、「たんぼの芸術」という程の意味合いを容易に認識させるものである。
ところで、「田んぼアート」については、おもに、たんぼに数種類の稲を植え、稲の色や、背丈の違いなどで、文字や絵を描くものとして知られているものであって、全国各地において、街おこし等のイベント、食育研究の一環、稲刈り体験等のために、「田んぼアート」が企画され、その制作が行われているところである。
そして、このような「稲によって、たんぼに描かれる文字や絵。」を指すものとして、該「田んぼアート」の文字は、一般的に使用されているものである。
また、その事実は、例えば、以下のインターネット情報及び新聞記事によって、窺い知ることができるものである。

<インターネット情報>
(1)「ノビシステムズコーポレーション」における「田んぼアート/総合ホームページ」によれば、「田んぼアートについて」の項目において、「1990年代の前半(平成5年頃)から異なる稲の品種を使って田んぼに絵柄を描く、いわゆる『田んぼアート』が始まりました。田んぼで米を作る単なる実用向きではなく、古代米の紫、黄、緑、赤などの色とりどりの葉や穂を使って絵や字を描いて、それを見て楽しむのが『田んぼアート』です。最近では判明しただけでも日本全国で135ヶ所(2011年開始は13ヶ所?、非実施は32ヶ所?)になっていますが、まだあるかもしれません。韓国でも実施されているという情報もあります。」の記載がある。
また、「全国田んぼアート一覧表」(2011年)が掲載されており、そこには、「所在地数」として全国で「135」、「実施中」として全国で「104」の記載がある。(http://www.nobi.or.jp/tanbo/)
(2)インターネットのフリー百科事典「ウィキペディア」によれば、「田んぼアート」の「概要」において、「1993年、青森県南津軽郡田舎館村が村起こしの一つとして、田舎館役場裏手の田んぼで始められた。田んぼをキャンバスに見立て、現代の米と『古代米』と呼ばれる古代に栽培されていた色の異なる稲を使って、巨大な絵を作る。近年では他の地域でも行なわれている。」の記載があり、「開催地」の項目には、「北海道旭川市東鷹栖」「青森県南津軽郡田舎館村」「愛知県安城市、西尾市」「山形県米沢市」「新潟県新潟市北区(福島潟)」「富山県砺波市」「兵庫県姫路市夢前町」「香川県善通寺市」の記載がある。
<新聞記事>
(1)2003年1月14日付け 北海道新聞 夕刊地方 10頁には、「紙の音コンサート*TV放映 感動再び」の見出しのもと、「昨年十一月に行われた『紙の音コンサート』が十三日夜、NHK衛星第二放送などの番組『ふるさと対抗!千人の力コンテスト』で放映された。・・・番組ではこのほか、稲で田んぼに絵を描く『田んぼアート』など三つが紹介された。」の記載がある。
(2)2003年9月8日付け 毎日新聞 地方版/島根 19頁には、「益田市で田んぼアート 神楽を舞いオロチ退治 家族連れら歓声/島根」の見出しのもと、「『ギネスに挑戦!田んぼアート』と銘打って7日、益田市馬谷町の町おこしグループ『真砂の未来をつくる会』(藤井寛会長ら50人)が稲穂芸術作品の制作に挑んだ。同町の旧馬谷小前にある約10アールの田んぼをキャンバスに、稲の一部を刈り取り、稲穂を浮かび上がらせる『黄金色アート』。・・・平面アートの題材は石見神楽の演目の一つでヤマタノオロチ伝説に登場するスサノオノミコトの勇ましい顔。立体は刈り取った稲束を使ったヤマタノオロチ。平面アートは約2時間かけて制作。事前にパソコン上で描いた製図に基づき、かまを手にした会員たちが目、鼻、口やひげの部分を汗だくで刈り取った。」の記載がある。
(3)2006年6月27日付け 朝日新聞 東京地方版/茨城 35頁には、「TXからどうぞ、『田んぼアート』 つくばみらい/茨城県」の見出しのもと、「つくばみらい市下小目の水田で、葉の色の違う紫稲や黄稲、白稲、コシヒカリで絵文字を描いた『田んぼアート』が見頃を迎えている。つくばエクスプレス(TX)の線路わきにあり、上りは進行方向左側、下りは右側の車窓から楽しめる。地元のNPO『古瀬の自然と文化を守る会』の主催。5月21日に会員や協力者約60人が田植えをした。横約125メートル、縦約60メートルの緑のキャンバスに、紫色の筑波山を背景にして、今年3月に合併で誕生した『つくばみらい市』の文字や市章、TX車両=写真左手前=が浮かび上がった。」の記載がある。
(4)2006年7月6日付け 朝日新聞 名古屋夕刊 13頁には、「水田地上絵、巨大トンボ 愛知・西尾【名古屋】」の見出しのもと、「梅雨空の田んぼに巨大なトンボが飛来--。古代米を植えて描いた『田んぼアート』で、愛知県西尾市家武町の水田に地元市民が実行委員となって実現させた。小学生から募った図案をもとに全長28メートル、幅34メートルでトンボをデザインし、5月に住民が参加して紫、黄、赤の3色の古代米を田植えした。稲が成長し、今月になって色分けされたトンボの図柄がくっきりと浮かび上がった=写真、本社ヘリから、中田徹撮影。昨年、西尾市で開かれた全国ホタル研究大会に合わせて描いたホタルに続く2回目の試みで、今年は応募が多かったトンボに決まった。」の記載がある。
(5)2006年7月28日付け 北海道新聞 朝刊全道 1頁には、「水田に大雪の山並み*3色稲穂でくっきり*鷹栖町」の見出しのもと、「【鷹栖】上川管内鷹栖町の水田に、雄大な大雪山系を描いた『巨大画』がお目見えした。三色の稲を植え分け浮かび上がらせたもので、広さは約三千平方メートル。ユニークな『田んぼアート』は見ごろを迎えている。旭川市のたいせつ農協の青年部員約七十人が『コメどころをPRしよう』と企画した。青年部長の高橋雄二さん(32)の水田に、道産米『ほしのゆめ』、古代米の『紫稲』と『黄稲』の苗をほぼ三分の一ずつ使っている。」の記載がある。
(6)2006年10月22日付け 神戸新聞 朝刊 28頁には、「はばタン〓巣立つ〓 志染町の田んぼアート 地区住民らが刈り取り」の見出しのもと、「志染町窟屋の住民が二十一日、『田んぼアート』として三色の稲穂で表現していた、のじぎく兵庫国体のマスコット『はばタン』を刈り取った。『国体を盛り上げる役目をしっかり果たしてくれた』と住民の男性は満足そうだった。刈り取った稲の一部は、市が催しなどでの活用を考えている。今年六月、地区が所有する千平方メートルの田にヒノヒカリや、青森県から取り寄せた茎などが紫色に育つ古代米の苗を植えた。夏が過ぎ、稲が実ってくるとはばタンの顔がくっきりと浮かび上がった。」の記載がある。
(7)2007年7月27日付け 朝日新聞 東京地方版/宮城 31頁には、「田んぼに咲く花 角田の農家、『アート』に挑戦/宮城県」の見出しのもと、「角田市の農家が水田をキャンバスに見立てた『田んぼアート』に取り組んでいる。同市高倉熊野田の約10アールの水田に観賞用の稲を植え、色違いの稲穂がパンジーやコスモスを描く予定だ。中山間地域の農地の保全対策として、国などから直接支払制度を受けている『西根5区』の集落が取り組んでいる。農道や水路の維持などの共同事業に昨年度は約420万円の交付金を受けた。集落の活性化のため、古代米の栽培もしている。」の記載がある。
(8)2007年8月23日付け 朝日新聞 東京地方版/栃木 37頁には、「田んぼアート、文字くっきり 矢板/栃木県」の見出しのもと、「矢板市玉田の水田で、緑や黄色の稲を背景に、紫色の稲で『玉田』の文字を描いた田んぼアートが人気を呼んでいる=写真。玉田集落営農組合と玉田の環境を良くする会が今春、『地元の農業や環境保全にもっと関心をもってもらうきっかけに』と田んぼアートに挑戦。パソコンで作成したデザイン通りに飼料米や古代米など3種類の苗を植えた。今月に入って、稲の成長とともに文字がくっきりと浮かび上がった。」の記載がある。
(9)2008年8月10日付け 朝日新聞 北海道朝刊 36頁には、「旭山の人気者、登場 旭川で『田んぼアート』/北海道」の見出しのもと、「旭川市東鷹栖にホッキョクグマなど、旭山動物園の人気の動物たちが現れた=写真。JAたいせつ青年部が約65アールの水田をキャンバスに、『ほしのゆめ』と古代米の黄稲、紫稲を植え、3色で描いた『田んぼアート』だ。地元産米をPRしようと始め、今年で3年目になる。6月上旬に植え付け、7月中旬には動物園の動物たちが姿を現し、今が見ごろ。11日から約1週間、夜間のライトアップも計画されている。」の記載がある。
(10)2008年9月6日付け 朝日新聞 西部地方版/山口 31頁には、「エコ実れ 自然循環型の農業、田んぼアートでアピール 田布施町/山口県」の見出しのもと、「田布施町上田布施真殿の米作農家、木村節郎さん(51)の田んぼに、赤や紫の稲穂で『ECO2→』の絵文字が描かれている。赤米などを使った『田んぼのアート』。環境問題に目を向けてもらおうと中学生たちと田植えをした。秋の深まりとともに色がくっきり鮮やかになっていく。」の記載がある。
(11)2009年7月16日付け 朝日新聞 名古屋地方版/岐阜 27頁には、「田んぼに『ギョ』!? 巨大なアユ描く 郡山/岐阜県」の見出しのもと、「郡上市白鳥町六ノ里の棚田に、色違いの稲を植え分けて描いた巨大なアユが、くっきりと浮かび上がっている=写真。地元のJAや民宿グループなどが手がけた田んぼアート。黄、紫、白の3色になる古代米と、緑色のコシヒカリを6月に植え付けた。稲が育つにつれ、色の違いが出て、最近は4色がはっきり分かるようになり、体長約27メートルになるアユの形がくっきり。『いつまでも稲が育ち、田が光り輝いてほしい』という願いを込め、『棚田にじいろプロジェクト』と名付けて取り組んでいる。」の記載がある。
(12)2009年9月13日付け 朝日新聞 西部地方版/福岡 31頁には、「緑のアート、収穫の秋に待機 福岡・今宿などで『田んぼアート』/福岡県」の見出しのもと、「収穫の秋を迎え、各地の水田に、イネで文字や絵を描く『田んぼアート』が現れた。二丈町では赤米とヒノヒカリで『二丈の・米 ライスキ!!』の文字とトンボが。福岡市西区今宿上ノ原では約5千平方メートルの水田に『好いとう・今宿』の文字が浮かび上がる=写真、本社ヘリから、金子淳撮影。どちらも13日にイベントを開催。『二丈赤米花見会』では、赤米餅やおにぎりの試食、トークショーなどがある。『今宿田んぼアートフェスタ2009』では、農産物や豚汁の販売、伝統芸能の披露などが予定されている。」の記載がある。
(13)2009年9月18日付け 朝日新聞 大阪地方版/広島 32頁には、「米、天然色 竹原の水田に『田んぼアート』現れる/広島県」の見出しのもと、「竹原市下野町の田んぼに、竹とんぼを飛ばす女の子の姿が現れた=写真。市民団体の『竹原の食を考える会』と『をちこち遊学塾』が手がけた『田んぼアート』。広さ約10アールにあきたこまちや古代米など6種のコメを植え、稲の色や背丈の違いで表現した。」の記載がある。
(14)2009年9月22日付け 朝日新聞 西部地方版/長崎 21頁には、「さるかに、水田の合戦 大村城南高の生徒、保育園児と『田んぼアート』/長崎県」の見出しのもと、「黄緑の田んぼに巨大なカニが出現--。大村市の大村城南高校栽培環境部の生徒6人が6月、同高の水田17アールに赤米や緑米、観賞用イネなどの苗を使い分けて市内3保育園の6歳児計約110人と一緒に植えた『田んぼアート』が見頃を迎えた=写真。」の記載がある。
(15)2009年10月5日付け 朝日新聞 東京地方版/山形 21頁には、「『直江兼続』模様、刈る 米沢の田んぼアート/山形県」の見出しのもと、「実った『はえぬき』の黄金色のキャンバスに、黒と黄色の古代米で『直江兼続と妻お船』を描いた『田んぼアート』の稲刈りが4日、米沢市の小野川温泉近くの水田で行われた=写真。地元の温泉観光協議会と、コメの消費拡大をめざす市農林課などでつくる『田んぼアート米づくり体験事業推進協議会』の主催で4回目。この日は親子連れや首都圏などから380人が訪れた。『稲を握る親指は上に向けて』などの注意を受けて、手刈りに取り組み、2時間ほどで終了した。」の記載がある。
(16)2009年10月15日付け 朝日新聞 名古屋朝刊 35頁には、「台風耐えた『いなッピー』愛知・稲沢の『田んぼアート』【名古屋】」の見出しのもと、「稲穂の色で水田を彩る『田んぼアート』が愛知県稲沢市船橋町に登場した=写真、本社ヘリから、竹谷俊之撮影。描かれているのは、同市のマスコットキャラクター『いなッピー』。約20アールの田んぼには、稲穂が黒や赤の古代米と、黄金色のうるち米が植えられている。5月末に、地元の有志団体『稲人の会』や名古屋文理大学の学生たちが中心になって田植えをした。」の記載がある。
(17)2009年10月27日付け 朝日新聞 東京地方版/埼玉 31頁には、「田んぼの中に『巨大蓮』現る 行田 /埼玉県」の見出しのもと、「行田市小針の『古代蓮(はす)の里』近くに、巨大な『蓮』が出現した=写真。田んぼ約60アールをキャンバスにみたて、計6種類の米を植えて、稲の色や背丈の違いで花や文字を表現した。来月の刈り取りまで楽しめるという。『田んぼアート』は昨年に続き2回目。市農政課によると、来年は面積を倍増し、約130アールを使って忍城や武者などの歴史をテーマにしたデザインにする予定という。」の記載がある。
(18)2010年8月23日付け 河北新報には、「ティータイム/田んぼアートで楽天応援<佐々木こいそ>」の見出しのもと、「さまざまな色の稲を植えて巨大な絵を描き、農業のアピールなどに使われる『田んぼアート』。わが栗原市瀬峰地域でも環境に優しい農産物のブランド化に向けて、取り組んでいる人たちがいる。5月に植えたさまざまな色の稲の苗は、成長して7月末には見ごろになった。夏休みに入り、少年野球や地域の人たちが集まり、瀬峰農場田んぼアート交流会が開かれた。地域の子どもたちや保護者との交流を深め、食育や環境保全の大切さを次世代に伝えるのが狙いだ。」の記載がある。
(19)2010年9月26日付け 日本農業新聞には、「田んぼアート見ごろ 『チーバくん』出現/千葉・匝瑳市」の見出しのもと、「【千葉】匝瑳市の水田に、25日から開かれる『ゆめ半島ちば国体』のマスコットキャラクター『チーバくん』の絵が浮き上がっている。古代米の赤米と黒米を使って表現。国体開催時には、狙い通りの色に染まる見込みだ。船橋市の米店・(有)まきのの牧野基明さん(38)が企画。地元の米生産者で組織する『そうさの米研究会』やJAちばみどり、匝瑳市、海匝農林振興センターなどの協力を得て5月中旬、消費者と田植えをした。牧野さんは、普段から食育に取り組む。昨年から同市での田植え・稲刈りイベントを実施。今年は国体と同市の米をPRしようと企画を立てた。」の記載がある。
(20)2011年8月14日付け 日本農業新聞 49頁には、「田んぼアートで県産米PR/大分市」の見出しのもと、「【全農おおいた】大分市南太平寺に、田んぼアートが姿を現した=写真。縦20メートル、横50メートルの田んぼに、県産米の『ひとめぼれ』と『にこまる』のキャラクターが描かれている。(株)パールライス大分経済連らによる『田んぼアートボランティアグループ』が、米消費拡大や食育、地域興しの一環としてJA全農おおいたが協力して制作。『ヒノヒカリ』と古代米3種『ゆきあそび』『黄稲』『紫稲』で色鮮やかに田んぼを飾る。」の記載がある。

以上の事実を総合勘案すると、「田んぼアート」の文字は、街おこし等のイベント、食育研究の一環、稲刈り体験等のために企画されるものとして、広く使用されているものというべきであって、たんぼに数種類の稲を植え、稲の色や、背丈の違いなどで、文字や絵を描くものであって、一般の人々に、「稲によって、たんぼに描かれる文字や絵。」という程の意味合いのものとして理解されているものというのが相当である。
また、一般の人々に知られ使用されている用語は、商品や役務の内容を表示する場合も少なくなく、何人も使用を欲するものであり、特定人に商標登録を認めるのは妥当でないというべきである。
そうしてみると、「田んぼアート」の文字は、前記の意味合いのもと、全国各地において、街おこし等のイベント、食育研究の一環、稲刈り体験等のために企画され、使用されているものであって、これが商品や役務に使用された場合には、商品の品質、役務の質等を表示するものとして、取引者、需要者に理解され得るものというのが相当である。
してみれば、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務中、例えば、第16類の指定商品中「印刷物」、第41類の指定役務中「セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,書籍の製作,興行の企画・運営又は開催」等に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その商品又は役務が「田んぼアートに関する印刷物」、「田んぼアートに関するセミナーの企画・運営又は開催,田んぼアートに関する電子出版物の提供,田んぼアートに関する書籍の製作,田んぼアートに関する興行の企画・運営又は開催」等であるという程のものとして理解、認識するにとどまるというのが相当であるから、単に、商品の品質及び役務の質等を表示するにすぎないものである。
また、本願商標は、上記指定商品及び指定役務を提供するに際し、必要な表示と認められるものであって、何人もその使用を欲するものであるから、特定の者に商標登録し、独占的に使用を認めるべきものではないというのが相当であって、請求人のみにその独占使用を認めるのは適当でない。
そして、上記商品及び役務以外の商品及び役務について使用するときは、該商品及び役務があたかも「田んぼアートに関する商品及び役務」であるかのように商品の品質及び役務の質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品及び役務以外の商品及び役務に使用するときは、商品の品質及び役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。

(2)請求人の主張について
請求人は、「『田んぼアート』という観念が所定のものに確定され、しかも広く公衆が使用して特定個人団体のものかを特定できない状況下にあると衆人が認めたときに初めて言えることであり、その観念自体が増殖中であって一通りのものとなっておらず、どんな観念に該当するものなのか正体不明であるという現状、つまり、本件請求人において商標出願の『田んぼアート』は、『田んぼアート』という未だ曖昧な観念の中の、品種の異なるイネの混栽によって絵柄を現出させる『田んぼアート』という概念に属するものが、紛うことなく本件請求人が元祖であって、その後、14ないし15年もの間を経過してから、それまでの間、本件請求人が地道且つ根気よく、地元田舎館村の知名度を高めるための一つの手段として『田んぼアート』を使い続け、国内外のマスコミに取り上げられ、世の中に漸く認知されるようになってきたことに煽られて、やおら使用し始めた何件かの使用例は、たったこの3ないし4年前からのものばかりであって、それとて、あくまで、まねごとの域を脱し切れておらず、したがってその完成度も幼稚なままの事例ばかりであり、本件請求人によって発案以来、18年間もの永きに亘って継続実施してきているものとは雲泥の差があるのであって、こと程然様に『田んぼアート』全体としては曖昧な観念でしかない現状の標章であり、しかも、まねごとで使用されてきているに過ぎない使用例を以てして、所謂、商標法上でいう、公共上での使用を担保するためという目的(法の趣旨)により、何故に元祖である本件請求人の本件審判請求の対象である標章について、その努力、実績とも全く評価することもなく、只乗りした使用例を保護するに等しいような判断だけを優先させて、殊更、その登録を拒絶しなければならないのか到底理解ができず、この処分は、明らかに法の適用を誤るか逸脱するものであることに相違はなく、即刻取り消されて然るべきものであると確信する。」旨主張している。
しかしながら、請求人である田舎館村によって、「田んぼアート」が最初に始められたものであって、田舎館村の知名度を高めるための一つの手段として本願商標を使い続け、国内外のマスコミに取り上げられてきたものであるとしても、その「田んぼアート」の文字が新聞に記載されたのは、20003年12月(甲12、甲12の1)であって、その期間は10年程であり、この間に、「田んぼアート」は、全国的に広まったものであり、各地で行われ、それがマスコミにも多数取り上げられているところである。
そして、「田んぼアート」の文字については、請求人のみが使用しているものではなく、広く使用されている状況にあるといえる。
また、「田んぼアート」の意味合いについては、上記したとおり、街おこし等のイベント、食育研究の一環、稲刈り体験等のために企画されるものとして、広く使用されているものというべきであって、たんぼに数種類の稲を植え、稲の色や、背丈の違いなどで、文字や絵を描くものであって、一般の人々に、「稲によって、たんぼに描かれる文字や絵。」という程の意味合いのものとして理解されているものである。
そうしてみると、現在、多数の団体や人々の使用されている「田んぼアート」の文字を、請求人のみに商標登録することは、いたずらに混乱を招くものというべきであり、本願商標は、これを指定商品及び指定役務に使用したときには、商品の品質や役務の質を表示する場合があるから、商標登録することはできないものである。
よって、請求人の主張は、採用することができない。

(3)商標法第3条第2項の該当性について
請求人は、平成5年(1993年)の第1回から第19回目までの毎年19年間に亘り、役場前の広い圃場を使った一大行事である「田んぼアート」を継続してきた実績を有し、標章「田んぼアート」を、その指定商品並びに指定役務において継続的に使用して、標章「田んぼアート」と言えば田舎館村、田舎館村と言えば標章「田んぼアート」を実践する村と言うまでに全国規模でその知名度は定着しており、商標法第3条第2項の要件を具備する旨主張し、その証拠として、甲第1号証ないし甲第39号証(枝番号を含む。)を提出している。
そこで、本願商標が、その指定商品及び指定役務との関係において、自他商品・役務の識別力を獲得するに至っているか否かについて、以下、検討する。
ア 本願商標の著名性について
請求人提出の甲各号証によれば、請求人は、「田んぼアート」を1993年より同人である田舎館村の稲刈り体験ツアーとして実施してきたものである。ただし、該「田んぼアート」の文字が新聞記事に記載されたのは、2003年12月である(甲12、甲12の1)。
そうとすれば、請求人は、本願商標の指定役務中「田んぼアートに関する興行の企画・運営又は開催」を行っているものと認められる。
しかし、請求人が新聞記事等で「田んぼアート」を行っている事実は認められるものの、本願商標を「田んぼアートに関する興行の企画・運営又は開催」にどのようにして使用しているかの証拠は、甲各号証から認められない。
そうとすれば、請求人は、本願商標を、「田んぼアートに関する興行の企画・運営又は開催」及びその他の本願の指定商品及び指定役務に、使用している証拠を提出していないものである。
その他、「田んぼアート」の文字が、請求人の商標であるとする証拠の提出もない。
以上のことからすれば、本願商標は、請求人の業務に係るその指定商品及び指定役務について、商品及び役務の出所を表示するものとして使用されている証拠は見あたらず、周知、著名性を獲得しているとは認められない。
イ 出願商標と実際に使用している商標の同一性について
請求人は、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用している証拠を提出していないものである。
ウ まとめ
以上ア及びイからすると、請求人は、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用している証拠は見あたらないものであって、取引者、需要者において請求人の業務に係る商品及び役務について、本願商標は、周知、著名性を獲得しているとはいえないものであるから、商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び商標法第4条第1項第16号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備しないものであるから、本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2012-01-25 
結審通知日 2012-02-03 
審決日 2012-02-16 
出願番号 商願2009-84411(T2009-84411) 
審決分類 T 1 8・ 272- Z (X1641)
T 1 8・ 13- Z (X1641)
T 1 8・ 17- Z (X1641)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 泉田 智宏 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 高橋 謙司
井出 英一郎
商標の称呼 タンボアート、タンボ 
代理人 佐々木 實 

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