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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y29
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y29
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y29
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y29
管理番号 1255247 
審判番号 無効2011-890036 
総通号数 149 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-05-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2011-05-20 
確定日 2012-03-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4933771号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4933771号商標(以下「本件商標」という。)は、「ティムさんの大麦若葉」の文字を標準文字で表してなり、平成17年5月13日に登録出願され、第29類「大麦若葉を主原料とする粉末状・錠剤状・顆粒状・粒状・カプセル状・液状の加工食品,大麦若葉を主原料とする調理用青汁のもと,大麦若葉を主原料とする調理用青汁」を指定商品として、同18年1月13日に登録査定、同年3月3日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第32号証を提出した。
1 本審判請求に至る経緯及び利害関係
請求人は、請求人の業務に係る商品「青汁入りの清涼飲料のもと」(以下「請求人商品」という。甲第1号証)に商品名として「ティムさんの大麦若葉」という商標(以下「請求人商標」という。)を使用していたところ、被請求人は、同一の標章について請求人商品とは異なる指定商品について登録出願を行い登録した(甲第2号証)。
請求人は、先使用権の有無や本件商標登録の無効理由などについて無用な争いを避けるために、被請求人に対して、本商標権についての通常使用権の使用許諾を請求するも、被請求人に拒絶されたため、無用な争いを避けるために、使用商標の変更を行った(甲第3号証)。しかるに、被請求人は、福岡地方裁判所に、本商標権に基づき、商標の使用差し止め及び損害賠償を求めて訴訟を提起した(甲第4号証)。
したがって、請求人は、本件無効審判請求につき利害関係を有するものである。
2 請求の理由
(1)請求人商標及び周辺の事情
請求人は、平成6年(1994年)5月に、東京都国立市に設立された法人であって、平成16年(2004年)11月16日に「有機JAS認証」を取得、その後、「あとひき 納豆おこし」、「あとひき みそ大豆」、「あとひき 黒ごまおこし」、「マメオとマメコのあとひきみそ大豆」等の販売を開始し、平成17年(2005年)に、請求人商標「ティムさんの大麦若葉」を付した請求人商品を発売した。
請求人は、後述するように、平成17年3月頃から、請求人商標に係るチラシの頒布、同ポスターの掲示、試写会、テレビCMの放映等をした。
その後、請求人の業務に係る商品は、三越、高島屋、伊勢丹、大丸、松坂屋、東武、西武、東急、阪急、京王、そごう、井筒屋、小田急等のデパート、紀ノ国屋、成城石井、ザ・ガーデン、クイーンズ伊勢丹、三浦屋、明治屋、サカガミ、ナチュラルローソン等のスーパーマーケット、コンビニエンスストア、全国約1200店舗の牛乳販売店及び全国の小中学校の学校給食用として販路を盛大に拡大している。
平成19年12月29日から平成22年12月28日までの請求人商品の売上額は、総額2億1880万円余であった。
(2)請求人商標の使用状況について
ア チラシの頒布について
平成17年3月頃には、請求人商標に係るチラシを頒布している。当該チラシは、例えば、3月22日に販売経路の一つに想定していた牛乳販売店(宮園販売店)に対して、商品サンプルを各々に添付した上で1000枚が提供されている(甲第6号証)。また、その後の4月初めにおいても、頒布用のチラシとして50万枚の発注を行い納品された後(甲第7号証)、同様に各チラシにサンプルを添付する形態にて、4月7日以降、明治、森永、メグミルク、グリコ、ニシラク等各牛乳会社の販売店を介して頒布を行った。本件商標の出願日である同年5月13日までには136、365枚の頒布が行われている(甲第8号証)。
イ ポスターの掲示について
平成17年4月頃には、請求人商標に係るポスターを掲示している(甲第9号証)。当該ポスターは、5000部が印刷されて配布されており、特に福岡県をターゲット地域としたものである。
ウ テレビの宣伝広告について
平成17年3月頃から放映へ向けた準備を開始し(甲第10号証)、同年4月14日に顧客を集めた対外的な試写会(甲第11号証)を経た上で、同年5月3日から5月31日まで、請求人商標を使用した商品に係るテレビ宣伝広告を行っている(甲第12号証)。当該テレビ宣伝広告は、FBS福岡放送から、主婦層向けの健康・生活情報番組として人気のある平日の帯番組「午後は○○おもいッきりテレビ」の提供CMとして、当該期間の火曜日及び木曜日の9日間にわたって、スポットCMより長めとなる30秒CMで放映されている(甲第13号証及び甲第14号証)。なお、FBS福岡放送は、一般に福岡県を放送対象地域としているが、佐賀県、大分県や山口放送エリアの山口県下関市、熊本県民テレビエリアの熊本県荒尾市でも視聴する世帯が多いものである(甲第15号証)。
エ 売上について
平成17年4月9日から同年5月13日までに、727個を販売していたため(甲第17号証)、上代価格で計算すると183万2040円、卸価格で計算すると104万6880円を売り上げていた。
(3)請求人商標の周知性について
請求人商標を使用した商品を取り扱う店舗の数、請求人商標に係るチラシの部数及び請求人商標を使用した商品に係るテレビ広告宣伝の状況の事実関係によれば(甲第6号証ないし甲第15号証)、本件商標の登録出願日及び登録査定日において、請求人商標は、少なくとも我が国において、「清涼飲料のもと」に係る需要者の間に広く認識されていた商標であると推認することができる。
(4)商標法第4条第1項第7号について
ア 被請求人が本件商標を採択する際、請求人商標と偶然に一致したものとはいい難く、被請求人は、自らと競争関係にある請求人が行った平成17年3月頃からのチラシの頒布(甲第6号証ないし甲第8号証)、ポスターの掲示(甲第9号証)、平成17年5月3日から放映したテレビ宣伝広告(甲第12号証ないし甲第15号証)を認識した後に、専ら、請求人商標の使用を妨害する目的、または、使用許諾料の請求、損害賠償請求などにより不正の利益を得るという不正の目的で、請求人商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、先取り的に商標登録出願し商標権を取得したものとみるのが相当である。
なお、請求人は、商標「ティムさんの大麦若葉」を出願したが、本件商標及び商標「ティムさん」(登録第4933772号)の存在を理由として、拒絶査定を受けた(甲第19号証)。
イ 本件商標と請求人商標について
本件商標と請求人商標とは、ともに外観上同一の文字を書してなるものであるところ、そもそも、請求人商標に含まれる「ティムさん」とは、ニュージーランド・カンタベリー農場において大麦若葉を有機栽培にて生産している“Tim Chamberlain”(ティム・チェンバレイン)氏のことを指称するものであり、このティム・チェンバレイン氏は、請求人商品の原料である大麦若葉を生産の上、請求人等に対して供給していた生産者のことである。「ティムさん」の語は、ティム・チェンバレイン氏の略称としては当時は有名ではなかったが、請求人商標である「ティムさんの大麦若葉」は有名であって、請求人が蓄積した顧客吸引力を有していた。ここで、「ティム」は、日本において特に一般的な外国人名とはいえず、また「ティムさん」なる語は普通名詞でもないことから、この「ティムさん」を「大麦若葉」と結合させた請求人商標は、第三者が容易に創作し得るものとはいい難い造語商標であるといえるものである。
ウ 被請求人の悪意について
上記したように、請求人は、被請求人の所在地でもある九州地方をはじめとして集中的に請求人商品の宣伝活動を開始した。これにより、被請求人は、かかる一連の宣伝活動を知り、将来「ティムさんの大麦若葉」という商標を付した商品が市場において需要・供給が増すであろうことを想定し、先取りして剽窃的に出願を行ったことは容易に想像し得ることである。
そして、被請求人の本件商標に係る商品は、本件商標の登録から5年を経過した現在においても、少なくともインターネットによる検索において発見し得なかった。かかる実情にも関わらず、被請求人は、請求人に対して、高額な使用権料を提示し(甲第20号証)、高額な損害賠償及び使用差止を請求する訴訟を提起している(甲第4号証)。このことは、本件商標の出願が商標権の譲渡、使用許諾もしくは損害賠償請求による不正な利益を得る目的あるいは請求人に損害を与える目的をもってされたものであるという請求人の主張に沿うものである。
そうすると、出願当時、請求人商標が周知・著名であったか否かにかかわらず、本件商標は、「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである(同旨判決:知財高裁平成21年(行ケ)第10297号 甲第21号証)。
エ 被請求人の別件商標登録について
被請求人は、本件商標以外についても、不正の目的が疑われる商標登録出願及び商標登録を行っている。例えば、被請求人と競争関係の会社である東和化学株式会社の有名な化粧品の商標である「ナティア」及び「NATIA」に称呼、外観が近く、商品を異にする「ナチュア/NATUR」(登録5118985号 30類)、「ナティア/NATIA」(登録5399672号 29類)、「ナチュア/NATUR」(登録5399673号 29類)及び「ナティア/NATEIA」(商願2010-76485号 29類)の商標である。かかる被請求人の競争企業に対する有り様は、本件商標についても被請求人の「不正競争」または「不正の目的」を推認せしめるものである。
その外にも、登録になった商標について無効または取消決定されているものがあり、例えば、「クレオパトラアイ(登録第4879834号)」は、無効審判(無効2006-89158号)を請求されて商標法第4条第1項第15号に違反するとして無効審決がなされており(甲第25号証)、「ESTER-C\エスターシー」(登録第5051629号)は、異議申立(異議2006-90215号)がなされ、取消決定されている(甲第26号証)。
オ 判決例及び審決例について
商標法第4条第1項第7号については、東京高裁平成10年(行ケ)185号判決、無効審判2006年第89014号審決、無効審判2006年第89102号審決及び無効審判2006年第89114号審決の判決例及び審決例が参照されるものと思料する。
(5)商標法第4条第1項第10号について
請求人は、請求人商品と本件商標の指定商品とは類似しないと考えているが、万一、被請求人が裁判において主張するように指定商品が類似する場合は、上記で述べたように、請求人商標は、遅くとも、本件商標の出願時までには既に日本国内における需要者の間に広く認識されていたことは明らかであるから、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、その商品又はこれらに類似する商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
そして、本件商標は、不正競争の目的で商標登録を受けたものであるから、除斥期間の適用はない。
(6)商標法第4条第1項第15号について
本件商標の指定商品は、いわゆる健康食品関連商品であるということができるから、請求人商品と本件指定商品とは関連性が強く、両者の商品の取引者及び需要者の相当部分は、共通していると認められる。
しかも、健康食品関連商品は、日常的に消費される性質の商品であり、その主たる需要者は、老人から若者までを含む特別な専門的知識経験を有しない一般大衆であって、当該商品についての商標ないしブランドに詳しくない者も多数含まれており、商品を購入するに際して払われる注意は、さほど緻密なものではないと考えられる。したがって、本件商標についての混同のおそれの判断に当たっては、以上のような経験則及び取引の実情における需要者の注意力を考慮して判断すべきものといえる。
しかして、本件商標は、請求人商標と同一であるので、被請求人が本件商標をその指定商品に使用するときは、その取引者及び需要者において、その商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるものというべきであって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標」に該当するものといわなければならない。
そして、本件商標は、不正の目的で商標登録を受けたものであるから、除斥期間の適用はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(7)商標法第4条第1項第19号について
上記のとおり、請求人商標は、遅くとも、本件商標の出願時である平成17年5月13日までには、既に、日本国内における需要者の間に広く認識されていたものである。
これに対して、被請求人は、前述のとおり、請求人が請求人商標を使用していることを知り、剽窃的に商標登録出願を行い、その登録を受けたものである。すなわち、被請求人は、他人に損害を加えることを承知しながら、請求人の商標にただ乗りする目的をもって、又は、請求人商品の販売による請求人の健全な営業活動を将来にわたって広く妨害し、使用許諾料の請求又は損害賠償請求などにより不正の利益を得るという不正の目的をもって出願したものと考えられる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
(8)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号、または同第19号に該当するものであるから、その登録は、商標法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第41号証(枝番を含む。)を提出した。
1 被請求人が本件商標を登録出願するに至った経緯
被請求人は、遅くとも平成16年4月には、ニュージーランドでオーガニック農法に関する受賞経験のあるティム・チェンバレン氏の栽培した大麦若葉を原料とした青汁商品の製造販売を企画し、同大麦若葉から作成した粉末を輸入するなどして(乙第1号証ないし乙第3号証)、同年9月には商品を開発した。
同年10月には、被請求人の担当者及び被請求人の製造する商品の販社である通信販売業者の代表者らは、実際にニュージーランドに赴いて同氏と面談し、同商品の宣伝用のテレビ番組の撮影まで行った(乙第4号証)。
そして、平成17年4月には、被請求人は、実際の商品の製造を開始した(乙第5号証)。同商品の販売のために同年5月に本件商標及び「ティムさん」の商標(登録第4933772号)を出願するに至ったものであるから、本件商標の出願は極めて正当なものであり、被請求人の本件商標の出願に関して不正の目的など存在しなかった。
2 請求人商標の周知性
被請求人が本件商標を出願した平成17年5月13日時点では、請求人は、せいぜい商品の広告を開始した程度であって、およそ日本国内における需要者の間に広く認識されていたなどということはあり得ない。
(1)乙第7号証の1は、福岡県の牛乳販売店の一覧であり、乙第7号証の2ないし6は、山口県、佐賀県、長崎県、大分県及び熊本県の牛乳販売店の一覧である。また、乙第8号証は、各県別の請求人商標に係るチラシの頒布先一覧である。
請求人がチラシを頒布した牛乳販売店の数は、福岡県及び佐賀県では、10%台、他の県ではほとんど5%にも達していない(乙第9号証)。
この牛乳販売店の一覧は、平成21年に作成されたものであるが、ここに掲載されていない販売店も数多くあると思われるので、平成17年当時にチラシを頒布した店舗の比率がこれより高くなるとは思われない。
また、商品が牛乳であれば、牛乳販売店が主な取引先になると思われるが、請求人商品が、請求人が主張するように「青汁入りの清涼飲料のもと」であったとしても、「青汁」に係る商品が牛乳販売店で取り扱われるのは珍しく、その多くはドラッグストア、スーパーマーケット等で販売されているので、請求人がチラシを頒布した店舗の比率は、同種商品取扱店舗の数から考えると微々たるものにすぎない。
しかも、請求人は、平成17年4月7日以降本件商標の出願日である同年5月13日までに、13万6365枚のチラシを頒布したと主張するが、これは100店あまりの牛乳販売店に頒布しただけであり、本件商標の出願日までに実際にどれだけ需要者等に配られたのかは不明であるし、牛乳は各家庭に配達されるため、その販路は特定されており、不特定多数の一般の需要者にはほとんど知られていなかったと思われる。
(2)請求人は、平成17年4月頃には、請求人商標に係るポスターを掲示していると主張しているが、本件商標の出願日までに、印刷された5000部のうちのどれだけがどこに掲示されたかは不明である。
(3)請求人は、平成17年5月3日から同月31日まで、請求人商標を使用した商品に係るテレビ宣伝広告を行っていると主張しているが、本件商標の出願日までに放映されたのは僅か4日であり、しかも、30秒のCMである。
(4)請求人が請求人商標を使用した商品の宣伝広告や販売を開始してから本件商標の出願日までは、1か月余りにすぎず、その売上も727個、卸価格で約100万円にすぎない。
(5)商標法第4条第1項第10号の判決例としては、東京高裁昭和57年(行ケ)第110号(乙第10号証)や東京高裁平成13年(行ケ)第430号(乙第11号証)の判決があるが、請求人商標が周知であるとの請求人の主張は、これらの判例からしても、到底認められるものではない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性
(1)請求人は、被請求人が請求人商品の宣伝活動を知り、先取りして剽窃的に出願を行った旨主張している。
しかしながら、被請求人は、ニュージーランドにまでも赴いて、ティム・チェンバレン氏の栽培した大麦若葉を原料とした青汁商品の製造販売を周到に企画して商品を開発し、同商品の販売のために本件商標及び「ティムさん」の商標の出願に及んだものであり、この出願に至る経緯からして、請求人商品の宣伝活動を知り、先取りして剽窃的に出願を行ったものではないことは明らかである。
(2)請求人は、「ティムさんの大麦若葉」なる商標は第三者が容易に創作し得るものとはいい難い造語商標である旨主張している。
しかしながら、被請求人は、ティム・チェンバレン氏の栽培した大麦若葉を原料とした青汁商品の製造販売を企画していたのであるから、「ティムさん」と「大麦若葉」を結合した本件商標を容易に思いつき、その使用を欲するのは当然のことである。
(3)請求人は、被請求人が本件商標以外にも、不正の目的が疑われる商標登録出願及び商標登録を行っている旨主張している。
しかし、OEMメーカーである被請求人は、顧客である販社からOEM契約を持ちかけられた際に、販社が商標登録をしないという意向であれば、販社が容易に他社に製造を委託しないよう、被請求人が自費で商標登録をし、自社の登録商標を付した上で商品を販社に販売していた。被請求人が顧客から切り捨てられることを予防するためのやむを得ない措置である。
「ナティア/NATIA」等の商標についても、被請求人は、東和化学株式会社の商品とは全く無関係に、実際の営業活動上の必要に基づいていずれも正当に商標の出願を行い、現在も商標を付して販社に販売し、実際に使用しているのであるから(乙第19号証)、請求人が主張するような「東和化学株式会社がどのように商品展開をしても妨害できるようにとの意図」など全くないことは明らかである。
被請求人は、自社や販社を守るために商標登録をしているのであり、その商標登録につき不正の目的がないことは、過去において、登録した商標をもって、高額な対価を要求したこと等が全くないことからも明らかである。
(4)請求人は、本件商標の登録から5年を経過した現在においても、少なくともインターネットによる検索において、本件商標に係る商品を発見し得なかった旨主張している。
しかしながら、被請求人は、健康食品や化粧品の製造等を行っており、また、請求人が本件商標について行った不使用取消審判の請求が成り立たないとされたことからも(乙第27号証)、被請求人が本件商標を使用していることは明らかである。
(5)請求人は、被請求人が請求人に対して高額な使用権料を提示し、高額な損害賠償及び使用差止を請求する訴訟を提起している旨主張している。
しかしながら、被請求人は、本件商標及び「ティムさん」の商標が登録されたにもかかわらず、請求人に対して、何らの法的請求や要求もしていなかった。
請求人が平成21年3月12日に上記不使用取消審判を請求し、同年12月9日に、その請求が認められないとされた後でも、被請求人は、本件商標及び「ティムさん」の商標に関する通常使用権の設定を求める請求人との協議に応じ、請求人に対して何らの法的請求や要求もしていなかったのであるが、請求人の不誠実な対応にたまりかねて、やむを得ず上記訴訟に及んだ次第である。
この訴訟に至った経緯からしても、被請求人が「不正な利益を得る目的」あるいは「請求人に損害を与える目的」をもって本件商標や「ティムさん」の商標の商標登録出願をしたものでないことは明らかである。
(6)以上のとおり、本件商標は、被請求人がティム・チェンバレン氏の栽培した大麦若葉を原料とした青汁商品の製造販売をするにあたり出願したものであり、請求人商品を取り扱うために先回りして出願したわけではなく、公正な取引秩序を乱すおそれがある商標でもない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第10号該当性
請求人は、請求人商標は遅くとも平成17年5月13日までには、既に、日本国内における需要者の間に広く認識されていたことは明らかである旨主張しているが、前記したとおり、被請求人が本件商標を出願した平成17年5月13日時点では、請求人は、せいぜい商品の広告を開始した程度であって、およそ日本国内における需要者の間に広く認識されていたなどということはあり得ないので、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当しないことは明らかである。
5 商標法第4条第1項第15号該当性
商標法第4条第1項第15号は、同第10号、同第11号等の規定の適用されない非類似の商品等についても出所の混同が生ずる場合に適用されるのであるから、同第10号との関係においても、周知の程度がより高い場合でなければならない。
したがって、請求人商標が需要者の間に広く認識されていたなどということはあり得ないので、同第10号よりも高い周知性を求められる同第15号にも本件商標が該当しないことは明らかである。
6 商標法第4条第1項第19号該当性
前記したとおり、本件商標は、被請求人が不正の目的をもって出願したものではないことが明らかである。
また、被請求人が本件商標を出願した平成17年5月13日時点では、請求人はせいぜい商品の広告を開始した程度であって、請求人商標は、およそ日本国内における需要者の間に広く認識されていたなどということはあり得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも該当しない。
7 除斥期間との関係について
商標法第47条第1項によれば、同法第4条第1項第10号及び同第15号は、商標権の設定の登録の日から5年を経過した後は無効審判を請求することができないとして、いわゆる除斥期間を定めているところ、登録の日から5年が経過した本件では、無効審判の請求は不適法であり直ちに却下されるべきである。
なお、第10号では「不正競争の目的」が、第15号では「不正の目的」がある場合には5年の除斥期間にかからないとされているが、被請求人にこれらの目的は存しないため、請求人は、本件商標の無効審判を請求することはできないというべきである。
8 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当するものではない。

第4 当審の判断
1 本件審判の請求について
請求人は、本件審判を請求することの利害関係について述べているが、この点については、被請求人も争っていないので、本案に入って判断する。
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであることを理由として、平成23年5月20日に、同法第46条第1項の規定に基づく商標登録の無効の審判を請求している。
ところで、当庁備付けの商標登録原簿によれば、本件商標は平成18年3月3日に設定登録されたものであるから、本件審判は、本件商標の設定登録の日から5年を経過した後に請求されたものである。
そして、商標法第46条第1項の審判は、商標登録が同法第4条第1項第10号(不正競争の目的で商標登録を受けた場合を除く。)又は同第15号(不正の目的で商標登録を受けた場合を除く。)の規定に違反してされたものであることを理由としては、当該商標権の設定登録の日から5年を経過した後は請求することができないことは、同法第47条の規定から明らかである。
そうすると、本件商標が商標法第4条第1項第10号又は同第15号に該当するというためには、本件商標が不正競争の目的又は不正の目的によって商標登録を受けたことが立証されなければならない。
以上を前提として、以下、本件商標が請求人の掲げる上記各号に該当するか否かについて検討する。

2 被請求人における不正の目的(不正競争の目的)の有無について
そこでまず、被請求人による本件商標の出願について不正の目的(不正競争の目的)があったか否について判断する。
(1)「ティムさんの大麦若葉」なる語について
請求人の提出に係る甲第6号証(売上伝票に添付のチラシ)及び被請求人の提出に係る乙第4号証(情報誌「ほっと青汁通信Vol.01」)等によれば、「ティムさん」とは、ニュージーランド・カンタベリー農場において大麦若葉を有機栽培で生産しているTim Chamberlain(ティム・チェンバレイン)氏のことを指称するものであり、ティム・チェンバレイン氏は、2000年のオーガニック農法ニュージーランドチャンピオンになるなど、数々の賞を受賞していることが窺われる。そして、「大麦若葉」とは、例えば、サントリーの健康食品・サプリメント商品一覧の「大麦若葉」の項によれば、「麦の穂が出る前の20?30センチに成長した大麦の若葉のこと」と記載されており(http://www.suntory-kenko.com/supplement/component/056/)、ビタミンやミネラル等が豊富に含まれており、請求人や被請求人の製造・販売に係る商品の原材料としても用いられているものである。
(2)請求人商標に係る商品の宣伝状況について
請求人は、平成17年(2005年)に、請求人商標「ティムさんの大麦若葉」を付した請求人商品「青汁入りの清涼飲料のもと」を発売したとして、甲各号証を提出している。
請求人提出の甲各号証によれば、以下の事実を認めることができる。
ア チラシの頒布について
甲第6号証によれば、請求人は、平成17年3月22日に、販売経路の一つであるとされる牛乳販売店(宮園販売店 乙第7号証の1によれば、北九州市八幡西区)に対して「ティムさんの大麦若葉」のチラシ1000枚を提供しており、甲第7号証によれば、同年4月始めに、頒布用の「ティムさんの大麦若葉」のチラシ50万枚を株式会社大廣社から納品を受けている。そして、甲第8号証並びに乙第8号証及び乙第9号証によれば、請求人は、本件商標の出願日である同年5月13日までに、福岡県や佐賀県、山口県等に所在する明治、森永、メグミルク、グリコ等各牛乳会社の販売店に対して、13万6365枚のチラシの頒布を行っていた事実が認められる。
イ ポスターの作成について
甲第9号証によれば、請求人は、平成17年3月31日に、「ティムさんの大麦若葉」に係るポスター5000部を株式会社大廣社から納品を受けていたことが認められる。
ウ テレビによる宣伝広告について
甲第10号証によれば、請求人は、平成17年3月頃から、テレビCMの放映へ向けた準備を開始しており、甲第11号証によれば、同年4月14日(17:30?19:30)に、福岡市天神のアクロス福岡2階のセミナー室において「新商品のご紹介とテレビコマーシャル試写の会(定員60名)」として、製品開発報告や試飲・試食(ティムさんの大麦若葉、あとひき納豆おこし)、TVコマーシャルの試写等を行っている。
そして、甲第12号証ないし甲第15号証によれば、請求人は、平成17年5月3日から同月31日まで、FBS福岡放送から、主婦層向けの健康・生活情報番組である平日の帯番組「午後はおもいッきりテレビ」の提供CMとして、30秒CMで「ティムさんの大麦若葉」の商標を使用した商品に係るテレビ宣伝広告を行っており、本件商標の出願日である同年5月13日までの期間に限ってみれば、5月3日、5日、10日及び12日の4回に亘ってテレビCMを放映していたことを認めることができる。
エ そして、甲第17号証によれば、平成17年4月9日から本件商標の出願日である同年5月13日までの間に、727個の商品が販売されていたことが認められる。
(3)被請求人による請求人商標の認識の可能性について
上記において認定した事実によれば、請求人は、被請求人が本件商標の出願をした平成17年5月13日までに、牛乳販売店に対するチラシの頒布、ポスターの作成、新商品の紹介とテレビコマーシャル試写会及びテレビCMの放映を行い、商品も販売されていた事実が認められる。
そして、被請求人が本件商標の出願をしたのは平成17年5月13日であるという時系列の関係、被請求人会社の所在地は福岡市博多区であるという地理的関係及び被請求人も請求人も大麦若葉を原材料とする商品の製造・販売業者であるという関係等からみれば、被請求人は、本件商標の出願前に、上記いずれかの宣伝広告から「ティムさんの大麦若葉」なる請求人商標を知り得たであろうとの推認を一概には否定できないところがある。
しかしながら、上記した甲各号証により、被請求人が請求人商標を知り得たであろうと推認するには、以下の疑問点が存在する。
ア 牛乳販売店に対するチラシの頒布についていえば、請求人が宮園販売店に対してチラシを提供したのは平成17年3月22日であり(甲第6号証)、その外の牛乳販売店に対するチラシの頒布は、同年4月7日から順次行われていたものであるから(甲第8号証)、請求人によるチラシの頒布開始から被請求人による本件商標の出願日までの期間は短く、また、被請求人の提出に係る乙第8号証によれば、請求人がチラシを配布した牛乳販売店は、福岡県や佐賀県、山口県等に所在する114店舗程度のものである。しかも、各牛乳販売店が店内においてチラシをどのように展示し、あるいは、顧客にどの程度配布したのか、その状況も明らかではない。加えて、被請求人は、青汁の製造・販売をしていたものと認められるところ(乙第4号証及び乙第5号証)、青汁の主たる販売ルートが牛乳販売店であるとはいえないから、被請求人が商取引の対象として牛乳販売店にどれ程の関心を持っていたかも疑問であるといわなければならない。
イ ポスターについていえば、請求人は、平成17年3月31日に「ティムさんの大麦若葉」に係るポスター5000部を株式会社大廣社から納品を受けていたことが認められるが(甲第9号証)、該ポスターを何処に配布し、どのように掲示されたかについては、何らの主張もなく、証拠の提出もない。
ウ 新商品の紹介とテレビコマーシャル試写会についていえば、平成17年4月14日の1日限りの催しであり、17時30分からの2時間という短い時間のものであって、定員も60名という限られたものであり(甲第11号証)、実際に参加した人数も明らかではない。しかも、開催概要によれば、事前登録制であり、参加申込を受け付ける手順として、「お名前、店名、電話番号、郵便番号を聞き取る」とあるが、被請求人(被請求人会社の社員等の関係者を含めて)が参加していたことを認めるに足る主張・立証もない。
エ テレビCMについていえば、請求人は、被請求人が本件商標の出願をした平成17年5月13日までに、同年5月3日、5日、10日及び12日の4回に亘って、FBS福岡放送から、主婦層向けの健康・生活情報番組である平日の帯番組「午後はおもいッきりテレビ」の30秒CMで請求人商標を使用した商品に係るテレビ宣伝広告を行っていたことが認められるが(甲第12号証ないし甲第15号証)、30秒CMによる僅か4回の放映であり、しかも、被請求人(被請求人会社の社員等の関係者を含めて)が平日の12時から13時55分の主婦層向けの「午後はおもいッきりテレビ」を視聴していたかも疑問の残るところである。
(4)乙各号証から認められる状況について
一方、被請求人の提出に係る乙各号証によれば、以下のような状況にあったものと認められる。
乙第4号証(情報誌「ほっと青汁通信Vol.01」)によれば、被請求人の製造する商品の販売会社とされるトーカ堂の代表取締役(北義則)は、ニュージーランドで大麦若葉の農場を経営しているティム・チェンバレイン氏(2000年のオーガニック農法ニュージーランドチャンピオンでもある)と面談していたことが認められ、該通信中には「・・・最高の大麦若葉に出会えた感動を覚えたのです。その農場を経営するティムさん。・・・この人の作る大麦若葉で『ほっと青汁』を作りたい。・・・帰国後に、ティムさんの作る大麦若葉の成分分析結果が届きました。その驚くべき結果とは・・・」と記載されている。
また、乙第1号証ないし乙第3号証(分析試験成績書等、稟議書、船荷証券)によれば、2004年(平成16年)4月8日に、ニュージーランドの供給元であるクラレッジハーバルプロダクツからニュージーランド産の大麦若葉末を輸入していた事実が認められ、乙第5号証(販売者であるトーカ堂の青汁を製造している極東化成工業株式会社からの証明書)によれば、平成17年4月を境に原産地が中国からニュージーランドに変更され、以降、ニュージーランド産の大麦若葉末を使用してほっと青汁が製造されていた旨記載されている。
上記した乙第1号証ないし乙第5号証に被請求人の主張をも併せみれば、被請求人は、遅くとも平成16年4月には、ニュージーランドでオーガニック農法に関する受賞経験のあるティム・チェンバレン氏の栽培した大麦若葉から作成した粉末を輸入するとともに、同年10月には、被請求人の担当者及び被請求人の製造する商品の販社である通信販売業者の代表者(北義則)らは、ニュージーランドで大麦若葉の農場を経営しているティム・チェンバレイン氏と面会するなどして、平成17年4月以降は該大麦若葉の粉末を使用した青汁の製造を開始していたものと推認し得るところである。
なお、乙第4号証(情報誌「ほっと青汁通信Vol.01」)には、発行年月日がなく(記事中にも年月日を確認し得る記載はない)、乙第1号証ないし乙第3号証には、輸入された大麦若葉末がティム・チェンバレイン氏の農場において栽培された大麦若葉の粉末である旨の記載はなく、また、乙第5号証にも、極東化成工業株式会社が使用しているニュージーランド産の大麦若葉末がティム・チェンバレイン氏の農場において栽培された大麦若葉の粉末である旨の記載はないが、商取引において取り交わされる取引書類等は、無効審判等の紛争を想定して作成されている訳ではないから、提出された証拠を各個別にみた場合には被請求人の主張を立証するに充分なものではないとしても、乙第1号証ないし乙第5号証を総合してみれば、上記のとおりに解するのが相当である。
(5)被請求人における不正の目的(不正競争の目的)の有無についてのまとめ
請求人は、「ティムさんの大麦若葉なる請求人商標は第三者が容易に創作できない造語商標であり、本件商標が請求人商標と偶然に一致したものとは考え難く、被請求人は、競争関係にある請求人が行ったチラシの頒布、ポスターの掲示及びテレビ宣伝広告により、請求人商標の存在を知り、請求人商標が我が国において未だ商標登録されていないことを奇貨として、専ら、請求人商標の使用を妨害する目的、あるいは、使用許諾料の請求、損害賠償請求等により不正の利益を得るという不正の目的をもって本件商標を剽窃的に登録出願したものとみるのが相当である」旨主張している。
ア 確かに、「ティムさんの大麦若葉」なる商標は、一般的には容易に創作できない造語商標であるとは言えても、健康食品等の製造・販売を業として行っている事業者であれば、世界各地の原材料に関心を持っているものと推測され、ニュージーランドの大麦若葉に関心を持つことも充分にあり得ることといえる。そして、前記したとおり、被請求人は、平成16年4月頃までには、ニュージーランドで大麦若葉の農場を経営しているティム・チェンバレイン氏の農場において栽培された大麦若葉の粉末を輸入するとともに、同年10月には、被請求人の担当者らは、ティム・チェンバレイン氏と面会していたものと推認し得るものである(乙第1号証ないし乙第4号証)。
そうとすれば、前記した請求人による商品の広告宣伝活動により、被請求人が「ティムさんの大麦若葉」なる請求人商標を知ったものと推認するには多くの疑問点が存在しているばかりでなく、このことに、上記した被請求人らにおける事業活動の状況をも併せみれば、むしろ、被請求人らは、ニュージーランドで大麦若葉の農場を経営しているティム・チェンバレイン氏と面会したことにより、大麦若葉のオーガニック農法ニュージーランドチャンピオンである「ティムさん」の名前とティムさんが栽培している商品である「大麦若葉」の商品名とを結合させて、請求人が「ティムさんの大麦若葉」なる商標を想起・採択したのと同様に、被請求人も独自に「ティムさんの大麦若葉」なる商標を想起し、これを商標として採択するに至ったとしても不自然なこととはいえない。
イ 請求人のその他の主な主張について
請求人は、「本件商標の出願・登録は専ら請求人商標の使用を妨害する等の不正の目的をもってなされたものとみるのが相当であり、登録から5年を経過した現在においても本件商標の使用の事実を発見し得なかった」旨主張している。
しかしながら、仮に被請求人が本件商標を使用していなかったとしても、被請求人が本件商標について自ら使用する意志がなかったものとはいえないし、本件商標の出願、登録が「不正の目的」をもってなされたとまではいうことができない。なお、本件商標にかかる不使用取消審判(2009年審判第300314号)において、当該商標が「大麦若葉を主原料とする粉末状の加工食品」について使用されていた事実が認められているところ、請求人は、平成22年3月ころに入手した被請求人のリーフレット(甲第38号証)を提出し、上記審判事件において被請求人が提出したリーフレットはねつ造したものであると主張しているが、甲第38号証のリーフレットの被請求人による使用開始日は不明であるから、上記審判において被請求人が提出したリーフレットが当該審判において立証した商標の使用時期に実際に存在しなかったとはいいきれないものである。
また、請求人は、「被請求人は本件商標以外にも不正の目的が疑われる商標登録出願及び商標登録を行っている(審判決の事例をも含めて)」旨主張しているが、それらは、いずれも本件商標とは構成態様を異にし、出願・登録に至った事情も異なるものであるから、本件とは事案を異にするものというべきであり、仮に、被請求人が請求人の主張しているような商標の出願をしていたとしても、そのことから直ちに、本件商標の出願が不正の目的(不正競争の目的)をもってなされたものとはいえない。
そうとすれば、請求人の主張は、いずれも採用できない。
そして、その他に、被請求人が不正の目的(不正競争の目的)をもって本件商標の登録を受けたことを認めるに足る証拠はない。
ウ 以上のとおり、請求人の提出に係る甲各号証及び請求人の主張を総合勘案しても、被請求人が本件商標の出願をし登録を受けたことについて、請求人商標の使用を妨害する目的、あるいは、使用許諾料の請求、損害賠償請求による不正の利益を得る等の不正の目的(不正競争の目的)があったものとは認められない。

3 商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、前記したとおり、「ティムさんの大麦若葉」の構成からなるものであるから、その構成が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるようなものではなく、また、上記において認定判断したとおり、被請求人が本件商標を不正の目的をもって先回り的・剽窃的に出願したものとも認められないから、公正な取引秩序や社会一般の道徳観念に反する等、著しく社会的妥当性を欠き、その登録を容認することが商標法の目的に反するものとはいえない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するものではないから、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものということはできない。

4 商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
(1)前記したとおり、被請求人が本件商標の出願をし、商標登録を受けたことについて、不正競争の目的不正の目的があったものということはできない。
そうとすれば、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものとする無効の理由についての請求は、同法第47条に規定する除斥期間の適用を受けるものである。
してみれば、本件商標の設定登録日は平成18年3月3日であるところ、本件審判の請求は、本商標権の設定登録の日から5年を経過した後の平成23年5月20日になされているものであるから、商標法第4条第1項第10号及び同第15号の無効理由については、無効審判の請求に対する除斥期間の経過後になされた不適法な請求といわなければならない。
(2)なお念のため、さらに進んで、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものであるか否かについて判断する。
ア 商標法第4条第1項第10号について
請求人は、「請求人商標を使用した商品を取り扱う店舗の数、請求人商標に係るチラシの部数及び請求人商標を使用した商品に係るテレビ広告宣伝の状況の事実関係によれば(甲第6号証ないし甲第15号証)、本件商標の登録出願の日及び登録査定の日において、請求人商標は、少なくとも我が国において、請求人商品である『清涼飲料のもと』の需要者の間に広く認識されていた商標であると推認することができる」旨主張している。
しかしながら、本件商標の出願日である平成17年5月13日までの請求人による宣伝広告等の状況については、前記した2(2)及び(3)において認定判断したところであるが、牛乳販売店に対するチラシの頒布については、チラシ頒布の開始から本件商標の出願日までの期間は短く、配布した牛乳販売店も福岡県や佐賀県、長崎県、大分県、熊本県及び山口県に所在する114店舗程度のものであって、これは、被請求人の提出に係る乙第7号証ないし乙第9号証によれば、これら各県の牛乳販売店に対する割合が福岡県及び佐賀県では10%台、その他の県では5%程度のものであり、しかも、各牛乳販売店が店内においてチラシをどのように展示し、あるいは、顧客にどの程度配布したのか、その状況も明らかではない。また、ポスターについては、該ポスターが何処に配布され、どのように掲示されたかも明らかではなく、新商品の紹介とテレビコマーシャル試写会については、1日限りにして短時間の催しであり、定員も60名という限られたものである。更に、テレビCMについては、30秒CMによる僅か4回の放映である。
そして、甲第17号証によれば、平成17年4月9日から本件商標の出願日である同年5月13日までの間の請求人商品の売上個数は727個であり、請求人の主張によれば、上代価格で約183万円(卸価格で約105万円)にすぎないものである。
そうとすれば、請求人商標に係る商品の広告宣伝活動は、開始されてからの日にちも浅く、地域的範囲も決して広いものとはいえず、商品の販売も未だ極めて少ないものであるから、請求人の提出に係る甲各号証をもってしては、請求人商標は、本件商標の出願時において、請求人の業務に係る商品「清涼飲料のもと」を表示する商標として、全国にわたるこの種商品の取引者・需要者の間に広く知られていたものとは認め難いばかりでなく、請求人が請求人商品のターゲット地域としている福岡県及びその隣接数県における取引者・需要者の間においてさえ、広く認識されていたものと認めることはできない。
その他、請求人商標が請求人の業務に係る商品を表示する商標として本件商標の出願時において我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたと認めるに足る証拠はない。
してみれば、本件商標と請求人商標とは、同一の構成からなる商標ではあるが、請求人商標が周知性を欠くものである以上、同号の要件を欠くものといわざるを得ない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号に違反してされたものとはいえない。
イ 商標法第4条第1項第15号について
前示のとおり、請求人商標は、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、本件商標の出願時において我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものとはいえないものである。
そうとすれば、本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者が請求人商標を連想・想起するようなことはないとものいうべきであり、該商品が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえない。

5 商標法第4条第1項第19号について
本件商標と請求人商標とは同一の構成からなるものではあるが、請求人商標は、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、本件商標の出願時において我が国の取引者・需要者の間に広く認識されていたものとはいえないこと、また、本件商標は、不正の目的をもって登録出願し登録を受けたものとはいえないことは、前示のとおりである。
してみれば、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものとはいえない。

6 なお、請求人は、審理終結通知後に平成24年1月4日付け弁駁書及び審理再開申立書を提出している。そして上記弁駁書において、(1)請求人による請求人の商標の使用に関し、2005年2月15日に福岡県牛乳商業組合においてプレゼンテーションが行われたこと(甲第33号証)、(2)被請求人が本件商標の登録出願前の使用(予定)について具体的事実を基礎付ける客観的な証拠の提出がないこと、(3)本件商標の登録出願時期、請求人商標との同一性等偶然の一致とは考えられず、福岡市内に本店を置く請求人の競業者である被請求人が請求人商品を知らなかったというのは不自然であること、(4)4933771号商標(ティムさんの大麦若葉)に係る商標不使用取消審判(取消2009-300314)において、乙第1号証として本件被請求人が提出したリーフレット(様のもの)は変造証拠であること(甲第37号証、甲第38号証)、(5)そのほか、被請求人の主張に矛盾があること、等を総合すると、本件商標は、不正目的をもって剽窃的に出願されたものであるから、商標登録出願について先願主義を採用し、また、現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても、そのような出願は、健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり、また、商標法の目的にも反し、公正な商標秩序を乱すものというべきであるから、本件商標は、「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきであると述べ、上記審理再開申立書において、被請求人の、商標として使用する目的があったから、「商標として使用された事実」があり、剽窃出願でない、との主張は、「商標として使用された事実」がねつ造されたものであるため、成り立たないものとなっており、また、その他の事情についても、一連の経緯や事情について十分な審理を行っていただきたいとして、審理再開を申し立てている。
そこで検討するに、仮に上記不使用取消審判において、本件被請求人により提出された証拠が真正なものではなく、本件審判における被請求人の主張に虚偽の部分があったとしても、被請求人の主張が全て虚偽であるとまではいうことはできないし、また、請求人が提出する証拠によっては、被請求人が本件商標の登録出願前に請求人商標を知っていたものと推認するには足りないといわざるを得ないから、被請求人が不正の目的をもって本件商標の登録を受けたものということはできない。
したがって、上記弁駁書及び審理再開申立書の内容によって前記判断に影響を与えるものとみることはできないから、審理再開の必要は認めないものとする。

7 むすび
以上のとおり、本件審判の請求は、その無効理由中、商標法第4条第1項第10号及び同第15号を理由とする請求については、不適法なものであって、その補正をすることができないものであるから、商標法第56条第1項において準用する特許法第135条の規定により却下すべきものである。その余の無効理由については、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-12-06 
結審通知日 2011-12-08 
審決日 2012-02-16 
出願番号 商願2005-42097(T2005-42097) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Y29)
T 1 11・ 222- Y (Y29)
T 1 11・ 271- Y (Y29)
T 1 11・ 25- Y (Y29)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 前山 るり子
内山 進
登録日 2006-03-03 
登録番号 商標登録第4933771号(T4933771) 
商標の称呼 ティムサンノオームギワカバ、ティムサン、ティム 
代理人 八尋 光良 
代理人 堤 隆人 
代理人 小堀 益 
代理人 富樫 竜一 
代理人 林 直輝 
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