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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服201217392 審決 商標
無効2011890100 審決 商標

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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない X1625
管理番号 1253532 
審判番号 不服2011-928 
総通号数 148 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-14 
確定日 2012-02-16 
事件の表示 商願2009- 21666拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第9類、第16類、第25類及び第30類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成21年3月25日に登録出願され、その後、指定商品については、原審における同22年1月15日付け手続補正書により、第16類「絵はがき,カタログ,カレンダー,雑誌,時刻表,書籍,新聞,地図,ニューズレター,パンフレット」及び第25類「スポーツシャツ,ポロシャツ,帽子,スリッパ,仮装用衣装」に補正されたものである。

第2 原査定の拒絶理由の要点
原査定は、「本願商標は、図形と文字との組み合わせからなるところ、土佐勤王等に参加し、薩長連合の盟約に立ち会い、大政奉還を実現し、また、海援隊を組織し、海運業に従事した幕末の志士として認識される「坂本龍馬」の文字を含むものであり、今日においても郷土高知県はもとより、その知名度は全国的に及んでいる。また、NHKの大河ドラマで坂本龍馬を主人公とした「龍馬伝」(2010年1月からスタート)が始まったことから新たなブームとなり、例えば、静岡県下田市の観光協会、旅館組合及び商工会議所等が一体となった町おこしをはじめ、坂本龍馬ゆかりの地ツアー等も各地で行われているおり、坂本龍馬に関する観光スポットも高知県に限らず多数見受けられ、グッズ等については全国的に販売されている実情がある。してみれば、本願商標は、その構成中に「坂本龍馬」の文字を有してなるものであるから、これを自己の商標として独占的に採択・使用することになれば、日本各地で行われている「坂本龍馬」にまつわる活動に悪影響や支障をきたすことが考えられ、公益的な施策の遂行を阻害することとなり、社会公共の利益に反するおそれがあるから、穏当でない。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 本願商標について
本願商標は、別掲のとおり「坂本龍馬」の文字とその人物をキャラクター化した図形よりなるものであるところ、該文字は、歴史上の人物名(「龍馬」は、「竜馬」とされることもある。)を表したものである。

2 商標法4条1項7号の解釈について
商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。(知的財産高等裁判所 平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決言渡)
ところで、周知・著名な歴史上の人物名は、その人物の名声により強い顧客吸引力を有する。その人物の郷土やゆかりの地においては、住民に郷土の偉人として敬愛の情をもって親しまれ、例えば、地方公共団体や商工会議所等の公益的な機関が、その業績を称え記念館を運営していたり、地元のシンボルとして地域興しや観光振興のために人物名を商標として使用したりするような実情も多くみられるところであり、当該人物が商品又は役務と密接な関係にある場合はもちろん、商品又は役務との関係が希薄な場合であっても、当該地域においては強い顧客吸引力を発揮すると考えられる。このため、周知・著名な歴史上の人物名を商標として使用したいとする者も、少なくないものと考えられる。一方、敬愛の情をもって親しまれているからこそ、その商標登録に対しては、国民又は地域住民全体の反発も否定できない。
(参考 商標審査便覧42.107.04「歴史上の人物名(周知・著名な故人の人物名)からなる商標登録出願の取扱いについて」http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/shiryou/kijun/kijun2/syouhyoubin.htm)
そうとすれば、周知・著名な歴史上の人物名からなる商標は、これを特定の者の商標として、その登録を認めることは当該人物名を使用した公益的な事業を阻害するおそれがあるとみるのが相当であるから、当該商標は、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するものといわなければならない。

3 「坂本龍馬」の周知・著名性並びにその名称を使用した観光振興事業等及び博物館の資料展示等の事実について
(1)「坂本龍馬」の周知・著名性について
ア 「広辞苑 第六版」(株式会社岩波書店発行)には、「坂本竜馬」の項目に、「幕末の志士。名は直柔(なおなり)。変名、才谷梅太郎。土佐藩郷士。土佐勤王党に加盟。脱藩後、江戸に出て勝海舟に入門、航海術を学び、長崎に商社を設立(のち海援隊に発展)。西郷隆盛・小松帯刀・木戸孝允らと計り、薩長連合を策し、大政奉還に尽力。京都の近江屋で中岡慎太郎とともに幕府見廻組に殺害される。(1835?1867)」の記載がある。
イ 「コンサイス日本人名事典 第5版」(株式会社三省堂発行)の「さかもと りょうま 坂本龍馬」の項目に、「1835?67(天保6?慶応3)幕末期の志士。・・・」の記載がある。
ウ 「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」のウェブサイトにおいて、「坂本龍馬」の項目に、「坂本龍馬(さかもと りょうま、天保6年11月15日(1836年1月3日)- 慶応3年11月15日(1867年12月10日))は、日本の近世末期に活動した武士。土佐藩出身。諱は直陰(なおかげ)、のちに直柔(なおなり)。龍馬は通称。 他に才谷 梅太郎(さいだに うめたろう)などの変名がある・・・。土佐郷士に生まれ、脱藩した後は志士として活動し、貿易会社と政治組織を兼ねた亀山社中(後の海援隊)を結成した。薩長同盟の斡旋、大政奉還の成立に尽力するなど倒幕および明治維新に影響を与えた。大政奉還成立の1ヶ月後に近江屋事件で暗殺された。贈正四位(1891年(明治24年)4月8日)。司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』の主人公として描かれて以降、知名度を飛躍的に上げ、幕末の風雲児として国民的人気を得る。」の記載がある。
また、「名前を冠した施設」の項には、「■亀山社中が結成された長崎県長崎市には平成元年(1989年)に建立された坂本龍馬之像と同7年(1995年)に建立された龍馬のぶーつ像がある。」、「■坂本家の子孫にゆかりがある北海道函館市には平成21年(2009年)11月より開設された北海道坂本龍馬記念館がある。」の記載がある。
さらに、「その他」の項には、「■平成22年(2010年)のNHK大河ドラマ『龍馬伝』の番組と並行して2010年NHK大河ドラマ特別展『龍馬伝』と称して、江戸東京博物館、京都文化博物館、高知県立歴史民俗資料館、長崎歴史文化博物館と四箇所で坂本龍馬に関する展示会が行われた。坂本龍馬の手紙や遺品など170点を一堂に集めた過去最大の龍馬展となり、入場者数は東京14万1千人、京都6万7千人、高知3万2千人、長崎4万6千人を記録した。」の記載がある。
そして、「作品」の項においては、小説、漫画、映画、TVドラマ及び舞台の坂本龍馬を取りあげた数々の作品が挙げられている。
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9D%82%E6%9C%AC%E9%BE%8D%E9%A6%AC)

(2)「坂本龍馬」の名称を使用した行事
ア 「株式会社オールアバウト」のウェブサイト「暮らしのAllAbout」において、「親子で学ぶ! 坂本龍馬」の見出しのもと、「まだまだあります!楽しいイベントに行こう!」の項に、次の記載がある。
■2010年NHK大河ドラマ特別展『龍馬伝』(東京)
江戸東京博物館で開催されるこちらの企画展では、NHK大河ドラマ「龍馬伝」の放送と連動して、高知や京都などに伝わる龍馬の遺品や書簡類などを中心に展示しながら、坂本龍馬の波乱に満ちた生涯を紹介していきます。
・開催期間:2010年4月27日(火)?2010年6月6日(日)
・開催場所:東京都江戸東京博物館 1階 展示室
■『大龍馬展』(京都)
龍馬の墓所があることで知られる霊山のふもとにあり、幕末維新の主な舞台となった京都ならではの充実した展示内容で、歴史ファンからの人気も高い『霊山歴史観』では、今年は年間を通じて坂本龍馬関連の企画展が開催されます。
その第一弾として開催されているのが『龍馬誕生・夢』で、今回は坂本龍馬の故郷、土佐での足跡を、初公開資料などを交えて紹介しています。
・開催期間:開催中?5月5日(水)<第1期>
・開催場所:霊山歴史館
■『長崎まちなか龍馬館』(長崎)
坂本龍馬がつくった日本初の貿易商社・亀山社中。その拠点があった長崎には、龍馬ゆかりの史跡が多数存在しています。
期間限定で立ち上げられた『長崎まちなか龍馬館』では、坂本龍馬に関する展示をはじめ、龍馬グッズや長崎のお土産が買えるスペースや、当時の長崎の様子を知ることができる展示スペースなどがあり、幕末の風を感じることができます。
・開設期間:開設中?2011年2月28日(月)
・開設場所:長崎県長崎市浜町3-18 パトリエ21ビルB1F-1F
■『佐世保 ハウステンボス 龍馬伝館』(長崎)
ハウステンボスの中に期間限定で新設された、坂本龍馬の生涯を語る上で欠かすことのできない「海」をテーマにした企画展示館。
『大河ドラマ情報エリア』では、実際に撮影に使用された小道具なども展示され、さらには観光クルーズなども企画されているので、龍馬ファンのみならず、『龍馬伝』ファンにも楽しめます。
・開設期間:開設中?2011年2月28日(月)
・開設場所:佐世保・ハウステンボス内
(http://allabout.co.jp/gm/gc/291262/3/)
イ 「株式会社アドバンスクリエイト」のウェブサイト「保健市場」において、「女性保険&マネーニュース 」として「高知をはじめ全国で開催される坂本龍馬イベント」の見出しのもと次の記載がある。
「その他の関連する各地でもさまざまなイベントが行われています。たとえば、長崎、「長崎龍馬パスポート」が平成22年1月9日(土)?平成23年1月10日(月・祝)間に龍馬ゆかりの「長崎まちなか龍馬館」、「長崎奉行所・龍馬伝館」、「グラバー園」、「長崎市亀山社中記念館」を1,200円で見ることができます。購入場所は、長崎駅改札口横と各入場4施設です。
「長崎奉行所・龍馬伝館」 は実際に坂本龍馬が訪れた長崎奉行所跡地にオープンした」ドラマ館。大河ドラマ「龍馬伝」で使用された衣装、小道具などの撮影セットの再現展示やハイビジョンシアターでの龍馬伝ストーリーの見どころ紹介、大河ドラマや坂本龍馬関連展示など、魅力あふれる内容となっています。
開館期間は平成22年1月9日(土)?平成23年1月10日(月)です。」
「■竜馬の命日に開催するイベント」の見出しのもと、高知県外について「亀山社中幕末祭 開催場所: 長崎県長崎市」、「龍馬墓前祭 開催場所: 京都府京都市東山区 霊山護国神社」、「京都酢屋 龍馬追悼展 開催場所:京都府京都市」、「龍馬祭 開催場所: 北海道函館市」の記載がある。
(http://woman.excite.co.jp/lifeplanning/news/rid_14408/)
ウ 「京都霊山護国神社」のウェブサイトにおいて、トップページでは、「坂本龍馬と昭和の社」との記載があり、年間行事として「龍馬祭 慶応3年11月15日 京都河原町 近江屋にて刺客の凶刃に斃れた海援隊々長・坂本龍馬。同日、遭難し、翌16日に亡くなった下僕・藤吉、17日に亡くなった陸援隊々長・中岡慎太郎。彼らが鎮まる霊山の墓前にて午後3時より龍馬祭を斎行しております。・・・」の記載がある。
(http://www.gokoku.or.jp/)
エ 「九州国立博物館」のウェブサイトにおける「イベント」の項において、「龍馬ウォークin太宰府/開催記念企画「龍馬」シンポジウム/龍馬イズム!-龍馬ってどんな人?」「・・・NHK大河ドラマの進行とともに、全国各地の龍馬ゆかりの地を歩く「坂本龍馬グランプリウオーク」(今年1月から来年12月まで開催)が開催されています。」の記載がある。
(http://www.kyuhaku.jp/event/event_100317-3.html)

(3)「坂本龍馬」の名称を使用した観光振興事業等
ア 「社団法人山口県観光連盟」のウェブサイト「おいでませ山口へ」において、「歴史上の人物に七変化!」の見出しのもと、イベントの紹介がされており、「坂本龍馬と高杉晋作の衣装に扮装できるほか、総重量20kgの甲冑など、本格的な衣装が無料(坂本龍馬、高杉晋作、子供用有料 1000円)で着付け体験できます。」の記載がある。
(http://www.oidemase.or.jp/db/a/detail.php?id_num=35201aa0000005103)
イ 「下関市」のウェブサイト「下関市観光ホームページ」において「観光モデルコース」の見出しのもと、「龍馬のあしあとを巡るコース」の記載がある。
(http://www.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/kanko/model.html)
ウ 「社団法人福岡県観光連盟」のウェブサイトにおいて、「坂本龍馬と太宰府」の見出しのもと、延寿王院の写真とともに「龍馬が訪れた宿坊 延寿王院(えんじゅおういん)/・・・文久三年(一八六三)の『八月一八日の政変』で京を追われていた七卿のうち五人が居を移した場所。邸内には、そのことを示す3条実美の二男公輝書の石碑が建てられている。建物内部の見学はできないが、外部は見学できる。」との記載がある。
また、宝物殿の写真とともに「太宰府幕末展(第二展示室)開催 宝物殿/3条実美の書、高杉晋作の手紙、坂本龍馬の拳銃(複製)など、幕末志士ゆかりの品々が並ぶ。」との記載がある。
(http://www.crossroadfukuoka.jp/osusume/2010spring/index2.html)
エ 「鹿児島県霧島市」のウェブサイト「霧島市総合観光案内」において、「龍馬・お龍日本最初の新婚旅行地 霧島市」の見出しのもと、「Menu」には、1ないし8の項目が記載されており、「4 龍馬の手紙」の項目には、龍馬の手紙の写真とともに「・・・手紙は、寺田屋事件で傷を負った龍馬が、その治療を兼ねて妻のお龍と鹿児島県の霧島山へ登り、温泉で保養したことを書いたものです。登山道を絵入りで示し、見たこと感じたことをそのまま書き表しています。龍馬が残した手紙の中でイラスト入りのものは4通だけで、大変貴重なものです。今日では、新婚旅行は当たり前ですが、当時はその習慣はなく、龍馬のこの旅行が日本の新婚旅行第1号ではないかと言われています。」、「5 塩浸温泉龍馬公園」の項目には、「1866年(慶応2年)旧暦の3月、坂本龍馬、お龍夫妻が新婚旅行の際、18日間滞在した場所が塩浸温泉です。現在、塩浸温泉龍馬公園として整備され、宿泊はできませんが、坂本龍馬が湯治したと伝えられる温泉施設(2源泉)や、坂本龍馬とお龍の新婚旅行の地など、当時を回想する展示物や龍馬と霧島・薩摩がわかる資料館、二人の新婚湯治碑、公園内の足湯などがあります。22年度は、大河ドラマ『龍馬伝』に関する企画展示を行っています。」、「6 龍馬ハネムーンウォークin霧島」の項目には、「霧島市は、1866年土佐の坂本龍馬と妻お龍が日本で最初の新婚旅行で訪れ、昭和9年3月には、日本で最初の国立公園として指定された地であります。日本の将来を思い描きながら二人が歩いた道を現代の龍馬とお龍となって歩き、霧島の自然や歴史を楽しむウォーキング大会です。新婚(結婚後1年以内)の方で夫婦で参加された方には記念品を差し上げます。」の記載がある。
また、「新着情報」の欄には、
「◆塩浸温泉龍馬公園1周年記念イベント「誕生祭」の開催…終了しました
◆塩浸温泉龍馬公園がリニューアルしました
◆「霧島の龍馬祭」が開催されました
◆NHK大河ドラマ「龍馬伝」霧島ロケがついに実現
◆霧島神話の里公園に龍馬・お龍パネルが設置されました」の記載がある。
(http://www.city-kirishima.jp/modules/page059/index.php?id=173)
オ 「株式会社リクルート」のウェブサイト「じゃらん」において、「坂本龍馬特集」として「坂本龍馬の人生とゆかりの地」の見出しのもと、「高知・坂本龍馬ゆかりの地」と並んで「長崎・坂本龍馬ゆかりの地」として、「史跡料亭花月」、「長崎市亀山社中記念館」が記載され、「京都・坂本龍馬ゆかりの地」として、「寺田屋」、「明保野亭」、「酢屋」、「京都霊山護国神社」が記載されている。
(http://www.jalan.net/jalan/doc/theme/taiga/ryoma/top.html)
カ 「島原温泉観光協会」のウェブサイトにおいて、「【坂本龍馬関連の菓子、グッズのご紹介】」として、焼酎、菓子、タオル、提燈、扇、手ぬぐい、クリアファイル、Tシャツ、お守り、ストラップ、箸などの商品の写真が掲載されている。
(http://www.shimabaraonsen.com/ryoumagoods.html)
キ 「広島県福山市役所」のウェブサイトにおいて、「地域ポイント制度/まちづくりパスポート」の冊子の写真とともに「今年度のまちづくりパスポート(冊子)に『福山発・鞆龍馬』が登場!『福山発・鞆龍馬』と一緒に、まちに出かけよう!」の記載がある。
(http://www.city.fukuyama.hiroshima.jp/life/detail.php?hdnKey=6517)
ク 「京都便利堂」のウェブサイトにおいて、「坂本龍馬・幕末グッズ」の項において、「ポストカードセット<坂本龍馬はがきセット>」、「変色クリアファイル<坂本龍馬>」の商品等が掲載されている。
(http://www.shinise.ne.jp/benrido/category/474/?p=1&n=20&t=w&o=pa&s=f&c=o&k))
ケ 「株式会社コミュニティネット」のウェブサイトにおいて、「龍馬シリーズ/全43アイテム」として、「読むクリアファイル」、「龍馬小皿」、「龍馬マウスパッド」などと並び「万年カレンダー」が記載されており、その項には、「『坂本龍馬』万年カレンダー(特製組み箱入り)」の商品等が掲載されている。
(http://www.reki-c.com/shop_cal10_ryom.html)
コ 「株式会社ひろたか」のウェブサイト「長崎みやげドットコム」において、「坂本龍馬シリーズ」として、「龍馬ミニチュア像」、「龍馬グッズ」として「龍馬くんバンダナ(エンジ色・ブルー)」の商品等が掲載されている。
(http://www.nagasakimiyage.com/)
(http://www.nagasakimiyage.com/product-list/66)
(http://www.nagasakimiyage.com/product-list/11)

(4)「坂本龍馬」の名称を使用した博物館の資料展示等
ア「下関市立長府博物館」のウェブサイトにおいて、「下関のあしあとシリーズ」(長府博物館発行リーフレット)の項目において、「龍馬のあしあと」が掲載されており、同リーフレットには「下関市立長府博物館」の項目に「龍馬直筆の手紙や愛用品などを収蔵する。龍馬の愛した下関を、歴史的に堪能することができる。」との記載がある。
(http://www.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/kyoiku/chohuhak/)
(http://www.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/kyoiku/chohuhak/asiato/ryouma04.pdf)
イ 「北海道坂本龍馬記念館」のウェブサイトにおいて、「北海道坂本龍馬記念館建立趣意」の項目において、「坂本龍馬は北海道の父とも言うべき人物なのです。」、「活動趣旨」の項目において、「この記念館は、龍馬をはじめとする幕末・維新の歴史資料及び坂本直行画伯の絵画やゆかりの品々、北海道の開拓や文化に関わる貴重な資料の収蔵・展示の他、『龍馬塾』を通して剣道、柔道、空手道、合気道、華道、茶道、香道といった文武両道にたけ、日本古来の精神・文化を身につけた真の国際人たる日本人を育成し、豊かで平和な社会の創造及び社会全体の利益に寄与することを目的としています。」の記載がある。
(http://www.ryoma1115.com/index.html)
ウ 「神戸海洋博物館」のウェブサイトにおいて、「坂本龍馬と神戸」「ミナト神戸の原点を探る」の見出しのもと、「みどころ」の項において、「・・・神戸で海軍学校を創る事を、姉の乙女に自慢まじりに手紙で知らせた龍馬。海軍操練所は一年余りで閉鎖になりますが、その後、龍馬は海援隊として、その夢を実現し、神戸は世界に扉を開く港として発展していきます。今回の企画展示では、その坂本龍馬と神戸の関わりを現存する資料と共に紹介します。」との記載がある。
(http://www.kobe-meriken.or.jp/ryomaden/)

4 まとめ
(1)前記3で認定した事実から、次の事を認めることができる。
坂本龍馬は、歴史上の人物として、辞典、辞書、小説、映画及びテレビドラマやアニメなどの主人公として多数取り上げられていることから、全国的に周知・著名な歴史上の人物といえる。
そして、坂本龍馬は、その郷土やゆかりの地においては、様々な行事や催し物が行われるなどされており、各地において、敬愛の念をもって親しまれている実情にある。
また、高知県に限らず、坂本龍馬のゆかりの地にある多数の史跡等が、観光の施設、建造物、観光場所などとなっており、それらを巡る観光コースも数多く存在し、それらが県や市の観光振興及び地域おこしのための施策の基盤となっている。また、地方公共団体及び文化団体などがこれらを保存・公開し、観光振興や地域おこしに役立てようとする取組がなされていることが認められる。
さらに、一般に歴史上の人物の生誕地やゆかりの地においては、その地の特産品や観光振興のための土産物として、その者の名称や肖像が表示されて、観光客を対象に販売されているところ、坂本龍馬についても、例えば、「菓子」「クリアファイル」「Tシャツ」「手ぬぐい」「タオル」「ステッカー」「鉛筆」「便せん」「時計」「コインケース」「根付け」「絵はがき」「まんじゅう」などに坂本龍馬の名称や肖像が用いられている事実があり、実際、本願の指定商品のひとつである「絵はがき」や「カレンダー」などの商品に坂本龍馬の名称が用いられて販売されている。
(2)前記(1)のとおり、坂本龍馬は、周知・著名な歴史上の人物であって、高知県民のみならず、広く国民に敬愛されており、各地に点在するゆかりの地においては、「坂本龍馬」及び「龍馬」の名称が、観光振興や地域興しに広く活用され、土産物なども多数製造、販売されている。
そうとすると、坂本龍馬の名称は、本願商標の指定商品を取り扱う者によって使用され、あるいは使用される可能性が極めて高いものであることが認められるから、「坂本龍馬」の文字を有してなる本願商標を、請求人が、その指定商品について採択し、これを請求人の商標として登録することは、「坂本龍馬」の標章を使用した日本各地で行われている観光振興や地域おこしなどの公益的な施策を困難又は不可能にするだけでなく、商標権を巡る争いなど無用の混乱を招くおそれがあり、公正な競合秩序を害するおそれがあるから、これは社会公共の利益に反し、また、社会の一般的道徳観念に反するものというのが相当である。

5 請求人の主張について
(1)請求人は、本願登録は、「地方公共団体等による地域町おこし事業や観光振興の取り組み」を阻害しないとして、以下のアないしウの旨主張している。
ア 「地方公共団体、文化団体等などが坂本龍馬の名のもとに行う地域町おこし事業や観光振興として、例えば当該地方公共団体等が、坂本龍馬と何らかのゆかりのある地であることを観光パンフレットや地図などに記載して宣伝広告して観光客を誘致することや、『坂本龍馬』の名を冠した博物館・展示館などの設立・運営や、その地での祭り・イベントのタイトル等に『坂本龍馬』を使用すること、などが考えられるが、第16類・第25類を指定商品とする本願が登録されたからといって、これらの施策自体あるいは坂本龍馬にまつわるイベント等の開催自体が制限され、あるいはその宣伝活動や博物館等の設立が制限されるわけではないことは明白である。」
イ 「したがって、本願の登録が地方公共団体等による地域町おこし事業や観光振興の取り組みなどの活動の障害になり、その結果公益的な施策の遂行を阻害することになるとは考えられない。」
ウ 「商標登録はそもそも新規性や創作性を必要とせず、もともと誰でもが自由に使用している言葉の中から選択し、商品・役務への使用に限って独占権を認めているところ、上述のような様々な活動自体が阻害されるかのように拡大解釈することはかえって一般社会に『商標登録は言葉自体の独占権』との誤解を招くことにもなる。」
たしかに、請求人の主張主旨のように、商標権は、指定商品及び指定役務について登録商標を使用する権利及び他人にその使用を禁止、排除する権利(専用権・独占排他権)の他、他人が自己の商標権のうちの類似範囲の商標を使用することを禁止、又は、排除する権利(禁止権・排他権)であって、それ以外での当該標章の使用を禁止するものではない。また、登録要件を具備し、不当録事由のない商標が商標登録されたからといって、例えば、その商標を構成する文字(人名を含む)自体を独占し、あらゆる社会活動の全般にわたって、その文字の使用を独占し、他人の使用を制限するものではない。
しかしながら、「坂本龍馬」は、著名な歴史上の人物の名前であって多くの人々によって知られており、その人物名の使用は、多種多様な事物において、様々な人々によって使用されているものである。そして、本願商標の指定商品についても、高知県に限らず、全国各地における地方公共団体、文化団体等が「坂本龍馬」の名前のもとに行う地域・町おこし事業、観光事業などにおいて、土産物やイベント等のグッズなどとして販売され、又は販売され得る商品であるから、出願人に商標登録を認めることは、このような商品販売活動を含む当該人物名を使用した第三者の公益的な事業活動に支障をきたすおそれがあるものである。よって、請求人の該主張を採用することはできない。

(2)請求人は、「グッズ等が全国的に販売されている実情について」として、以下の旨主張している。
「歴史上の人物名(『坂本龍馬』)を用いた公益的施策が各地で行われているとして、その人物名の人気故に多くの業者がその人物名を未登録で無秩序に自己の商標として使用している場合、すでにその業者間で出所の混同が生じているおそれがある上に、使用する業者の中にはその人物とも施策とも全く無関係な業者も現れうるのであり、既に使用している実情があるからと言って、適切な者への登録も排除してその実情を助長することは、無責任な一時の便乗使用を放任することにもつながり、当該公益的施策の経済的価値を希釈し、商標を信頼して購入する需要者の利益を害し、当該人物名の名誉を傷付けることともなる。そもそも商標法は、識別力のある同一・類似の商標の使用を希望するものが多数存在することを前提として、先願主義による商標登録によりその調整を行うものであり、それこそが商標法の予定する競業秩序である。」
しかしながら、商標権は、専用権であるとともに、第三者に対する禁止権でもあり、出願人のみに商標登録を認めることは、第三者の公益的施策に伴う各種商品等への商標の使用を制限することとなる。したがって、公益的施策が各地の故人のゆかりの地において行われている場合は、地方公共団体等公益的機関であっても商標権を認めることはできない。

(3)請求人は、「出願の目的、意図について」として、以下の旨主張している。
「本願は出願人が経済的利益の独占を図る意図をもってなしたものではなく、そのような権利行使をすることがあり得ないことも強く主張する。地方公共団体である出願人はそもそも営利を目的とする主体でなく、またみだりに民業を圧迫することも自制すべき立場であるから、私企業と異なり、出願人が商標出願をするにあたって、経済的利益の独占を目的としないことは明白である。また、本出願人が本願商標の登録によって経済的利益の独占を目的としないことは、すでに本願商標の使用を申請によって一般に許諾していることからも明らかである。しかも本願が登録された場合、類似範囲にいわゆる禁止権が及び、第三者の商標としての使用は制限されたとしても、第三者が類似する商標を使用すれば得たであろう経済的利益を出願人が得るという関係はなくその意味でも利益の独占にはあたらない。」
しかしながら、請求人が経済的利益の独占を図る意図をもってなした出願でなく、そのような権利行使をすることがあり得ないと主張したとしても、先に述べたとおり、商標権は、専用権であるとともに、第三者に対する禁止権でもあり、出願人のみに商標登録を認めることは、第三者の公益的施策に伴う各種商品等への商標の使用を制限することとなるから、これらの主張は採用することが出来ない。

(4)請求人は、「本願商標の類似範囲」として、以下の主張をしている。
「本願商標の構成は、高知県が輩出した歴史上の人物である坂本龍馬を高知県特有のイメージキャラクターとして図案化した人物図形と、その人物図形が坂本龍馬をイメージしていることを説明するために上部にかなり小さく表示した『坂本龍馬』の文字との組み合わせとなっている。そして本願商標の最も特徴的な構成要素は言うまでもなく坂本龍馬のイメージキャラクター図形の部分であり、このイメージキャラクターは、現在写真で残っている実在の坂本龍馬の姿やそれをもとに一般の人がイメージする龍馬像とはかなり異なり、独特のイメージを具現化して創作した高知県特有のキャラクターとなっている。また商標全体に占める面積割合もこの図形部分がその殆どでありますから、取引者や需要者の注意を喚起し識別力を発揮するのはこの図形の部分であるといえる。そうしてみると、本願商標と『坂本龍馬』の文字のみからなる商標とは類似しないのであり、そうであるとすれば、坂本龍馬のイメージキャラクターを主たる要素とする本願商標が登録されたからといって、『坂本龍馬』の文字のみからなる商標の商標としての使用は全く制限されないのであるから、そもそも坂本龍馬にまつわる活動への悪影響は全く考えられず、到底社会公共の利益に反するとはいえない。」
しかしながら、本願商標は、その構成中の「坂本龍馬」の文字も図形部分と同様に、自他商品の識別標識としての機能を十分に果たすものであって、歴史上の著名な人物名である該文字部分は、非常に強い顕著性を有する部分といえるものである。
そして、本願商標は、該文字部分に相応して、「サカモトリョウマ」の称呼及び該人物であるという観念を生ずるものであるから、『坂本龍馬』の文字のみからなる商標とは類似するものである。

(5)請求人は、「坂本龍馬に対する国民又は地域住民の認識」として、以下のアないしウの旨主張している。
ア 「坂本龍馬に関して、県民の敬愛の情は極めて深く『土佐の龍馬』の認識は県民共通のものであり、その意味で坂本龍馬は『地域住民(県民)の「共有財産」』の如く認識されている。その上で、本願出願人である高知県は、県内における坂本龍馬に関する祭りの振興や博物館の運営、観光案内などを通して高知県全体の地域産業の発展を図るべく指導的役割を果たす公益的機関であって、特定の私人を利する虞のない出願人であることに鑑みれば、『地域住民(県民)の「共有財産」』の如く認識されている坂本龍馬に関する商標権者として最適であり、県民に不快感・反発を抱かせるとは考えられないことである。一方、一般国民にとっても坂本龍馬の名が含まれています本願商標が本願指定商品について本願出願人である高知県に商標登録されることに不快感・反発が起こるとは思えない。」
イ 「坂本龍馬の歴史上の功績の詳細についての知識は必ずしも十分でない場合でも、坂本龍馬と土佐・高知県との密接な関係については遍く認識され、坂本龍馬の豪放な人物像と土佐・高知県のイメージとが相乗的効果を奏して好意的に受け入れられていると言って過言ではない。つまり一般国民においては坂本龍馬と土佐・高知県を切り離してイメージすることは皆無であるとも言えるのである。しかも本願出願人である高知県は、利潤の追求を目的とする営利団体でなく、高知県全体の地域産業の発展を図るべく指導的役割を果たす公益的機関であって、特定の私人を利したり、民間の活動を正当な理由なく阻害したりする虞のない出願人である。また、本願商標の中心的構成要素は高知県が独自に作成した坂本龍馬のイメージキャラクター図形である。これらに鑑みれば、本願商標・本願指定商品につき本願出願人である高知県が商標登録を受けることについては一般国民が容認し得ない不快感・反発を抱くとは考えられず、社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するとは言えない。」
ウ 「また各地の実情を鑑みるに、歴史上の著名な人物の郷里などゆかりの地においては、その人物名を利用した商標を付した商品が特産品や土産物として製造・販売され、地域住民やその地を訪れる旅行者に限らず全国民にその地の特産品あるいは土産物として好んで購入されている現実があるのであって、歴史上の人物名の商標としての採択・使用は決して国民や地域住民の不快感・反発を惹起するものでないことは実証されており、坂本龍馬においても同様である。それどころか、そのような歴史上の人物名においては、当該地域と全く無関係な製造者によるあるいは全く無関係な品質の商品に当該歴史上の人物名が登録・使用されることこそ、その商品が当該地域の特産品や土産物であると錯誤する可能性があることからも、国民や地域住民の不快感・反発を招くものであり、社会公共の利益および社会の一般的道徳観念に反することである。」
しかしながら、本願商標は、イメージキャラクターの図のみから構成されるものではなく、「坂本龍馬」の文字部分については、他の公益的団体等においても、観光事業等に活用されているものであるから、高知県のみに商標登録を認めることは、他の県民の感情を害し、無用な争いを生じさせるおそれがあるものといわざるを得ない。

(6)請求人は、「まとめ」として、以下の主張をしている。
「以上のとおり、本願商標は、出願人である高知県の県民が長い歴史の中で尊敬し強い愛着をもって親しんできました郷土の偉人である坂本龍馬を、高知県特有のイメージキャラクターとして表現した商標であり、高知県の施策の中心的象徴として既に使用され、欠かすことのできない商標である。しかも公益的立場である出願人は、みだりに独占権を濫用したり、特定私人を利する使用あるいは害する使用を行う虞がない主体でありますから、本願に商標登録を認め、出願人が安心してその施策を遂行し得る環境を与えることは、特許庁がこの度追加改訂された新たな商標審査便覧(42.107.04)の根底をなす、地域おこしや観光振興を保護するという基本的な考え方に正に合致するものである。」
しかしながら、坂本龍馬について、高知県において長い歴史の中で尊敬し強い愛着をもって親しまれてきたことは認められるものの、各種のメディアにおいて取り上げられ、ひときわ人気のある坂本龍馬は、他のゆかりの地はむろん、全国的に敬愛の念を有する者が多いところ、このような著名な歴史上の人物名である「坂本龍馬」の文字を含む本願商標を、商標として採択し、これを特定の者に(それが、たとえ該人物の出身地たる県であるとしても)、商標権として商標登録を認めることは、繰り返しになるが、商標権は、専用権であるとともに、第三者に対する禁止権でもあり、高知県以外の第三者の県や市町村における地域おこしや観光振興における公益的施策に伴う各種商品等への商標の使用を制限することとなるから、請求人の主張は採用することができない。
したがって、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するとして本願を拒絶した原査定は、妥当であって、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 本願商標(色彩については原本参照。)



審理終結日 2011-12-09 
結審通知日 2011-12-12 
審決日 2012-01-05 
出願番号 商願2009-21666(T2009-21666) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (X1625)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 手塚 義明 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 井出 英一郎
松田 訓子
商標の称呼 サカモトリョーマ、サカモトリューマ 
代理人 橋本 京子 

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