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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 X0818
審判 全部申立て  登録を維持 X0818
審判 全部申立て  登録を維持 X0818
管理番号 1251782 
異議申立番号 異議2011-900315 
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-03-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2011-08-31 
確定日 2012-02-02 
異議申立件数
事件の表示 登録第5415667号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5415667号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5415667号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成22年10月25日に登録出願、第8類「皮革製の工具用ベルト(ホルダー)」及び第18類「皮革製のかばん類,皮革製の袋物」を指定商品として、同23年4月21日に登録査定、同年6月3日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由(要点)
1 商標法第3条第1項柱書について
本件商標の商標権者は、電気設備資材、給排水設備及びガス設備資材の製造販売会社であり(甲1)、本願指定商品は自己の業務に係る商品でないことは明らかであり、指定商品に本願商標を使用する意思のないことは明らかであり、実際に、本件商標の商標権者が、本件商標を使用していない。
よって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の使用する「ERMENEGILDO ZEGNA(エルメネジルド・ゼニア)」、「ZEGNA」、「Z」(以下「ゼニア商標」という。)は、創業者であるエルメネジルド・ゼニアによって1910年にイタリアで創設された高級ファッションブランドであり、その厳選された素材から製造される良質の毛織物によって、高級紳士服地メーカーとして世界で有数の著名なブランドとなった。その後、1968年には高級既製服市場にも進出し、ここにおいても独自の地位と名声を築いた。
現在では、紳士服地、既製服、ネクタイ、鞄その他の多様なファッション関連商品分野において、世界各国において高級ファッションブランドとしての不動の地位を確立している(甲2、甲3)。世界各国におけるゼニア製品の生産及び販売活動は、複数の企業から形成された企業グループ(以下「ゼニア・グループ」という。)により運営されており、申立人は、ゼニア・グループが展開する各ブランドの商標を管理する会社であって、我が国において記載された「Z ZEGNA」、「ZEGNA」又は「ゼニア」を含む登録商標の他、多数の登録商標を有しており、これら商標は我が国内においてその指定商品である紳士服地等の織物やスーツ、コート、鞄、ベルトといった商品について現実に使用されている(甲4)。商品には、ゼニア商標が使用されている(甲5)。
ゼニア・グループは、以前から我が国内においても販売代理店等を通じゼニア商品の販売を行っていたが、1977年5月に日本法人であるゼニア・ジャパン株式会社(以下「ゼニアジャパン」という。)を設立し、ゼニア・グループ自ら日本における事業展開に乗り出すこととなった。
現在では、国内に28店舗あり、海外62カ国に店舗があり(甲6)、日本での年間売上高は、1999年度で約55億円である(甲7)。
ゼニアジャパンは、会社設立以来、ファッション誌等への広告掲載を中心に幅広い広告宣伝活動を行ってきており、こうした広告宣伝活動は申立人のゼニア商標の周知・著名化に多大な貢献をしている。また、ゼニアは、男性ファッション誌において数多く取り上げられるとともに、男性ファッションブランドの人気ランキング等においても常に上位を占めており、男性ファッションの高級ブランドとして国内でも著名である(甲2?甲4)。
ゼニア商標は、研究社の辞書にも紹介されており(甲8、甲9)、外国ブランド権利者名簿にも掲載されている(甲10)。
さらに、ゼニア商標を盗用したドメイン名「ermenegildozengna.jp」、「G-ZEGNA.co.jp」について、ゼニア商標の著名性が認容され、移転の裁定がでている(甲11、甲12)。
以上のように、申立人及びその関連会社の使用するゼニア商標は、日本国内で、本件指定商品も含むファッション関連商品の分野(被服、鞄、ベルト等)において周知・著名の商標となるに至っている。
本件商標とゼニア商標「Z」を比較すると、「Z」の上下が細く、真ん中の斜めの線が太い点、上部左端が下がり、下部右端が上がって書されている点で酷似している。本件商標の「Leather」の部分は「皮革」を意味する識別力のない語であるから、要部は、「Z」の部分となり、この部分が、ゼニア商標「Z」に酷似するので、両商標は類似することは明らかである。
よって、本件商標が、ゼニア商標の使用されているファッション関連商品である指定商品に使用された場合には、本件著名商標との関係で、商品の出所について混同が生ずる可能性があることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)引用商標
申立人が本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する国際登録第837861号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、2004年6月14日にスイス連邦においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条の優先権を主張し、2004年(平成16年)8月4日に国際商標登録出願、第18類及び第25類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載の商品を指定商品として平成17年8月19日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
(2)本件商標と引用商標との類否
本件商標と引用商標の「Z」の部分を比較すると、「Z」の上下が細く、真ん中の斜めの線が太い点、上部左端が下がり、下部右端が上がって書されている点で酷似している。本件商標の「Leather」の部分は「皮革」を意味する識別力のない語であるから、要部は、「Z」の部分となり、この部分が、引用商標の「Z」の部分に酷似するので、両商標は類似することは明らかである。
よって、本件商標は、引用商標と類似することは明らかであり、また、本件商標と引用商標の指定商品も同一又は類似するから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当して登録されるべきでない。
4 むすび
叙上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反し、商標法第4条第1項第15号、同第11号に該当する商標であり、その登録は取り消されるべきである。

第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項柱書について
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」として登録を受けられる商標は、現に使用している商標だけでなく、使用する意思があり、かつ、近い将来において使用する予定のある商標も含まれるものと解すべきである。
しかし、本件商標は、前記第1のとおり、平成23年4月21日に登録査定されたものであって、その登録査定から1年も経過していないものである。そして、申立人は、商標権者が本件商標をその指定商品に使用する意思がない証拠として商標権者のホームページの写し(甲1)を提出するところ、かかるホームページには、本件商標の指定商品に関する記載が認められないとしても、この証拠のみによっては、近い将来において、商標権者が本件商標をその指定商品について使用する意思がないことまでを具体的に裏付けるものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないということができない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)ゼニア商標の周知著名性
ア 認定事実
申立人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)2011年11月29日にプリントアウトしたと認められるゼニアグループに係るウェブサイト(甲3、甲5)には、「Ermenegildo Zegna」、「エルメネジルド・ゼニア」、「Z Zegna」、「ジーゼニア」、別掲3のとおりの構成からなる商標(以下「使用商標」という。)」の各文字又は標章がベルト、マフラー等と共に表示され、また、バックルの部分に「Z」の文字を表したベルトの写真が表示されている。
(イ)「男の一流品大図鑑(1985年版、1992年版、1994年版、1998年版、2001年版、2005年版)」(甲2、甲4)には、「E ZEGNA」、「ERMENEGILDO ZEGNA」、「ゼニア」、「エルメネジルド・ゼニア」の各文字が紳士服、ベルト、バッグ等と共に表示されている。
(ウ)ゼニアジャパンは、平成9年の売上高が約55億円であり、我が国に28の店舗を有する(甲6、甲7)が、各店舗においていかなる商標を使用しているかは不明である。
(エ)「ファッションブランド年鑑’99」には、「エルメネジルド・ゼニア(Ermenegildo Zegna)」の見出しの下、「イタリアを代表する世界の最高級メンズウェアのファッションリーダー・・・」、「英和商品名辞典」(株式会社研究社 1990年発行)には、「Ermenegildo Zegna エルメネジルドゼニア」の見出しの下、「イタリアの衣料品メーカー・・・トレードマークはZのデザイン化」、「英和ブランド名辞典」(株式会社研究社 2011年8月発行)には、「Ermenegildo Zegna エルメネジルドゼニア」の見出しの下、「イタリアの衣料品メーカー・・・」、「外国ブランド権利者名簿」((財)対日貿易投資交流促進協会 2009年3月発行)には、「ZEGNA」の文字及び使用商標が表示されている(甲7?甲10)。
(オ)日本知的財産仲裁センターの裁定において、「『ERMENEGILDO ZEGNA』がエルメネジルド・ゼニアグループの商標及び営業表示としてヨーロッパ各国、日本及び米国等の広い範囲で著名であったこと」(甲11)、「商標『ZEGNA』は、海外だけでなく、わが国においても同様に著名な商標である。」(甲12)と判断されている。
イ 判断
前記アで認定した事実によれば、「Ermenegildo Zegna」、「ZEGNA」等の各商標は、申立人ないしエルメネジルド・ゼニアグループが紳士服、ベルト等に使用する商標として我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められる。
しかし、「Z」の文字の使用は、ゼニアグループに係るウェブサイト(甲5)において、ベルトのバックル部分に表されたもののほか、使用商標中に「ZEGNA」の文字の背景に表されているのみであり、「Z」単独での使用は一切見当たらない。
そして、上記ウェブサイトにしても、本件商標の査定後となる2011年11月29日のものと認められ、本件商標の出願時及び査定時における使用状況は不明というほかないものである。
以上によれば、申立人が「Z」の文字を使用していることはうかがえるとしても、これが本件商標の出願時及び査定時のいずれにおいても我が国の需要者の間に広く認識されているとは到底いえないものである。
(2)本件商標と引用商標ないし使用商標との類似性
ア 本件商標について
本件商標は、右側に「Leather」の文字を表し、その左に、ボドニ・ボールド書体風の「Z」を基調として斜線部分を白抜きにし細長い鋭角の三角形2つを中央部から左上及び右下に向けて表した図形(以下「本件図形」という。)を配した構成からなるものである。
そして、本件商標の構成中の「Leather」の文字部分は、「皮革」を意味する英語であり、本件商標の指定商品の原材料を表すにすぎないものであるから、自他商品の出所識別標識としての機能が無いものであり、該「Leather」の文字部分から出所識別標識としての称呼及び観念を生じないものである。
これに対して、本件図形は、デザイン化した「Z」と2つの三角形が外観上まとまりよく一体的に表されており、該「Z」部分が独立して看者の注意をひくとみるべき特段の事情を見いだせないものであるから、該三角形を捨象して「Z」の部分のみをもって取引に資するとはいい難いものである。
そうすると、本件図形は、構成全体をもって認識、把握されるものとみるのが自然であり、これから、特定の称呼及び観念を有するものとは認められない。
イ 引用商標等について
引用商標は、「Ermenegildo Zegna」の欧文字を黒色で横書きし、ボドニ・ボールド書体で表された灰色の「Z」の文字を上記欧文字中「gil」の部分を中心として大きく表した構成からなるものである。
そして、引用商標は、その構成中の「Ermenegildo Zegna」の文字部分が上記(1)のとおり、申立人ないしエルメネジルド・ゼニアグループが紳士服、ベルト等に使用する商標として我が国における需要者の間に広く認識されているものと認められるものであるのに対して、「Z」の文字部分は、需要者の間に広く認識されているとはいえないものである。
そうすると、引用商標は、その構成中の「Ermenegildo Zegna」の文字部分のみが商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというべきであるから、その構成中の「Z」の文字部分は、独立して看者の注意をひくとはいえない。
また、使用商標についても、その構成中の「ZEGNA」の文字部分のみが商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというべきであるから、その構成中の「Z」の文字部分は、独立して看者の注意をひくとはいえない。
そうとすれば、引用商標及び使用商標は、その構成中の「Z」の文字部分だけを、本件図形と比較して商標そのものの類否を判断することが許されないというべきである。
ウ 本件商標と引用商標及び使用商標との類否
以上によれば、本件商標と引用商標及び使用商標とは、その外観が明らかに相違し、本件商標は、称呼及び観念が生じないものであるから、両商標は、称呼及び観念において比較することができない。
なお、本件図形と引用商標及び使用商標の構成中の「Z」の文字とは、水平部分が細く、上部左側が下がり、下部右側が上がる点において一致しているとしても、斜線部分が前者は白抜きで後者は黒色、鋭角の三角形の有無という著しい相違点を有するものであるから、全体としてみれば、それぞれの構成から明らかに異なった印象を受けるものであり、両者は、時と所を異にして離隔的に観察した場合においては、需要者の通常の注意力をもってすれば、外観上相紛れるおそれはないといわざるを得ない。
したがって、本件商標と引用商標及び使用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれも相違する別異の商標というべきである。
(3)出所の混同のおそれ
上記(1)及び(2)のとおり、引用商標及び使用商標において、「Z」の文字は、需要者の間に広く認識されているとはいえず、かつ、本件商標は、引用商標及び使用商標とは、何ら相紛れるおそれのない別異のものであるから、本件商標は、これをその指定商品について使用しても、これに接する取引者・需要者が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標について
本件商標は、前記2(2)アのとおり、本件図形が独立して自他商品の出所識別標識としての機能を果たすものであり、これからは、特定の称呼及び観念を生ずるものではない。
一方、引用商標は、前記2(2)イのとおり、その構成中の「Ermenegildo Zegna」の文字部分のみが商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるというべきであるから、その構成中の「Z」の文字部分だけを、本件図形と比較して商標そのものの類否を判断することが許されないというべきである。
そうすると、引用商標は、その構成中の「Ermenegildo Zegna」の文字部分に相応して「エルメネジルドゼニア」の称呼を生ずるものであり、前記2(1)イのとおり、該「Ermenegildo Zegna」の周知著名性にかんがみれば、「エルメネジルドゼニアというブランド」の観念を生ずるといえるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観
本件商標と引用商標とは、別掲1及び2のとおり、両者は、その構成が明らかに相違するものであるから、十分に区別できるものである。
なお、仮に、引用商標の構成中の「Z」の部分のみが独立して認識されるとしても、本件図形と「Z」の文字とは、前記2(2)ウのとおり、水平部分が細く、上部左側が下がり、下部右側が上がる点において一致しているとしても、斜線部分が前者は白抜きで後者は黒色、鋭角の三角形の有無という著しい相違点を有するものであるから、全体としてみれば、それぞれの構成から明らかに異なった印象を受けるものであり、両者は、時と所を異にして離隔的に観察した場合においても、需要者の通常の注意力をもってすれば、外観上相紛れるおそれはないといわざるを得ない。
イ 称呼及び観念
本件商標は、特定の称呼及び観念を生じないものであるから、引用商標とは、称呼又は観念をもって類似するということができない。
(4)取引の実情
本件商標と引用商標とは、これらを同一又は類似の商品に使用した場合に
出所の混同を生ずるおそれがあるとみるべき特段の取引の事情も見いだせない。
(5)小括
以上によれば、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念のいずれよりみても、相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せずにされたものではなく、同第4条第1項第11号及び同第15号に違反してされたものということもできないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
1 本件商標


2 引用商標


3 使用商標


異議決定日 2012-01-23 
出願番号 商願2010-83064(T2010-83064) 
審決分類 T 1 651・ 271- Y (X0818)
T 1 651・ 18- Y (X0818)
T 1 651・ 261- Y (X0818)
最終処分 維持  
前審関与審査官 原田 信彦 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 末武 久佳
大塚 順子
登録日 2011-06-03 
登録番号 商標登録第5415667号(T5415667) 
権利者 未来工業株式会社
商標の称呼 ゼットレザー 
代理人 青木 博通 
代理人 柳生 征男 
代理人 中田 和博 

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