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審決分類 審判 全部無効 商3条2項 使用による自他商品の識別力 無効としない Y30
管理番号 1251713 
審判番号 無効2010-890009 
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-02-05 
確定日 2012-02-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第5076547号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5076547号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第30類「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」を指定商品として、平成17年1月6日に登録出願され、同年11月21日に拒絶査定されたものであるが、その後、拒絶査定不服審判において審理された結果、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものとして、同19年7月11日に審決され、同年9月14日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。
1 請求の利益について
請求人は、商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に商標「棒でドーナツ」を使用していたところ、事前の警告書等も一切なしに、いきなり平成21年11月4日、被請求人から本件商標権に基づく差止請求及びそれに付帯する請求を求める仮処分命令申立を受けた(甲第1号証)ので、本件審判請求をするについて利害関係を有する。

2 無効の理由の要点
本件商標は、商標法第3条第2項の規定に該当せず、同法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものである。

3 本件商標について
(1)外観について
本件商標は、別掲のとおり、次の構成要素1ないし5を具備する外観を呈する。
構成要素1:本件商標は、「黒糖」と「ドーナツ棒」の文字を二行に書してなる。
構成要素2:本件商標構成中の「黒糖」と「ドーナツ棒」の各文字は、それぞれ縦書きされている。
構成要素3:本件商標構成中の「黒糖」の文字は、「ドーナツ棒」の文字よりもかなり小さくかつ細身の文字で書され、「ドーナツ棒」の文字が中心に配置されると共に、「黒糖」の文字は、「ドーナツ」の文字からやや隙間をあけて右上に配置され、「黒」の文字が「ド」の上から「ド」の文字の上半分までに位置し、「糖」の文字が「ド」の文字の下半分から「ー」の文字の上半分までに位置する。
構成要素4:本件商標構成中の「黒糖」及び「ドーナツ棒」の文字は、いずれも通常使用されない手書きされたクセの強い字体からなり、字体の輪郭外側にぶつぶつと点状に張り出している点が認められる。「ド」の文字の2画目(右下斜線)の起点は、1画目(真下直線)の反対側へ飛び出し、「ナ」の文字は1画目及び2画目が右下へ傾いている。さらに、「ツ」の文字は個性が特に強く、1画目、2画目が3画目に比べ異常に長く、3画目も通常よりも傾斜が少ない。そのため、「ツ」の文字は、漢字の「川」と読むこともできる。
構成要素5:本件商標は、白黒二値表示されており、色彩は特定されていない。
そして、第30類「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」なる本件商標の指定商品の記載に照らせば、構成要素1、2及び5の点は、本件商標の不服2006-488号審判の登録審決(以下、単に「登録審決」という。)の判断前段に記載されているように、「本願商標は、(中略)その構成文字より、『黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子』を認識するもの」であり、指定商品を単に文字表記したにすぎず、一般的な自他商品識別力がなく、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)称呼について
以上のとおりであるから、本件商標は、特許庁電子図書館におけるデータのとおり、「コクトードーナツボー」ないし「ドーナツボー」の称呼が生ずると解するのが自然である。
(3)観念について
観念について、被請求人は、上記不服審判における平成17年8月18日付け意見書において、本件商標は「ドーナツ棍棒」の意味観念を生ずると主張している。

4 登録審決の認定について
(1)被請求人の各主張及び提出された証拠を検討した登録審決は、上述した登録審決の判断前段に引き続き、次のとおり説示している。
「しかしながら、請求人が、本願商標は商標法第3条第2項の規定に該当する旨主張し、当審において提出した甲第1号証ないし甲第66号証(審判注:査定不服審判2006-488号において提出された証拠、以下「査定不服における甲第○○号証」という。)を総合勘案すれば、本願商標を付した商品は、1994年頃から販売され、その後、第24回全国菓子大博覧会にてリッチモンドクラブ賞を受賞(2002年)し、継続して商品『黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子』に使用された結果、現在においては、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認め得るところである。してみれば、本願商標は、上記商品について、商標法第3条第2項に規定する要件を充たしているものであるから、原査定の理由によって拒絶すべき限りでない。」
(2)上記登録審決において、次の認定事項がある。
認定事項1:本願商標を付した商品は、1994年頃から販売された事実がある。
認定事項2:本願商標を付した商品は、その後、第24回全国菓子大博覧会にてリッチモンドクラブ賞を受賞(2002年)した事実がある。
認定事項3:本願商標を付した商品は、継続して商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に使用された結果、現在においては、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認め得る。
(3)認定事項1について
特許庁審査基準に明記されているように、商標法第3条第2項の適用を検討する上において、使用による識別力が認められる出願商標は、現実に使用されていた商標そのものに限定されるのであって、類似商標に及ばないことは言うまでもなく、字体が草書体、楷書体あるいは行書体のいずれであるか、平仮名、片仮名、漢字、ローマ字のいずれであるか、アラビア数字、日本数字のいずれであるか、縦書き、横書きのいずれであるか、書された態様の相違があるか、のうち、いずれかの差異が認められるとき、容認されないものである。
ここで、認定事項1は、本件商標と同一の商標(以下「使用商標」という。)が、1994年(平成6年)頃から販売されたとしているので、この点について、被請求人が、上述の仮処分命令申立言に添付した疎甲第6号証写(「黒糖ドーナツ棒」販売経歴書)を、甲第3号証として提出する。
甲第3号証の第1頁には、平成6年の欄に「生協の販売が、順調なため、2学期食品重点5品目に採用される。販売に合わせ、100%国内産小麦粉を使用、箱デザインを改革。」という記載がある。
しかしながら、この記載では、平成6年頃、使用商標が使用されていたのか、本件商標と類似あるいは非類似の商標が使用されていたのか不明である。商標法第3条第2項の主張をする際には、同項該当事実があることを立証する責任は、出願人たる被請求人にあるが、その責任が果たされているとは考えられない。
むしろ、被請求人が平成18年7月5日付け手続補足書に添付した査定不服における甲第61号証ないし甲第63号証による各証明書では、平成18年当時の事実が述べられているだけである。さらには、査定不服における甲第61号証では、「(株)フジバンビ製造による黒糖ドーナツ棒を販売した」と記載されているだけであり、平成18年頃、使用商標が使用されていたのか、本件商標と類似あるいは非類似の商標が使用されていたのか不明である。
例えば、査定不服における甲第62号証等に添付されたパンフレットでは、使用商標が横書きされており、本件商標は、二段縦書きされてなるから、出願商標と類似の商標が使用されている事実が示されるだけであって、上記審査基準が要求する事項は満足されない。
ただし、査定不服における甲第63号証に添付の”NAVI”誌2006年8月号2枚目に照らせば、出願商標と同一と認め得る商標(「黒糖」の部分が赤字で表されているが、本願商標と同一書体からなる商標。以下「使用商標(色つき)」という。)が使用された事実があるものと認められる。
よって、認定事項1は、妥当とはいえない。むしろ、遅くとも平成18年頃における使用商標の使用が立証されているにすぎないとみるのが相当である。結果として、登録審決は、妥当な時期(登録審決時から高々2年前)よりもずっと早期から本件商標が使用(永年使用)されていたと認定したことになるから、失当である。
なお、査定不服における甲第1号証ないし甲第4号証に出願商標を添付した記載が認められるが、証明を為した各人が、二段縦書きされてなる出願商標と使用されたとされる商標の同一性(商標法第3条第2項審査基準要求)を理解した上で証したかどうかは不明であり、むしろ一般人の証明であるから、右同一性を強く意識せずあるいは理解せぬまま出願代理人が用意した書面に記名押印したものと見るのが相当である。
(4)認定事項2について
ア 認定事項2は、被請求人が平成18年7月5日付け手続補足書に添付した査定不服における甲第5号証(「リッチモントクラブ賞」賞状)を見てのものと考えられる。
しかしながら、この賞状に照らしても、二段縦書きされた使用商標を使用した商品が受賞したかどうか不明である。むしろ、一連に楷書で横書きされた「黒糖ドーナツ棒」を付した商品が受賞したものとみることもできる。
この賞状には、賞状を発行した責任者らしき表記として、”President Richemont”なる表記があり、その下にサインとおぼしき筆記体の記載があるが、サインした責任者のタイプされたフルスペルもなく、サイン者の氏名は不明である。また、"RICHEMONT SENIORS BELGIUM”と記載された貼付物の類があるが、蝋付けされたシールもリボンもなく、欧米人が賞状を授与する際の常識からすると違和感を禁じ得ない。さらに、この種のサインを為すときには、日付を付すのが常識であるが、”KUMAMOTO 2002”と記載した貼付物の類があるだけで、具体的な日付は何も記載されていない。また、受賞した商品の記載として「黒糖ドーナツ棒」と日本語が書いてあるだけであり、サインした者は欧米人であると推定されるところ、かかる日本語の意味を理解してサインしたとは到底考えられない。総じていえば、賞状を発行する際の常識に反し、極めて不自然である。
登録審決は、以下の理由のとおり、受賞事実を過大評価したものであって、失当である。
イ リッチモントクラブについて
甲第4号証(審判注:欧文字文のみで訳文はなし。)に照らせば、リッチモントクラブなる存在は、スイス国にある国立リッチモント製菓学校の卒業生等からなる団体であり、リッチモント製菓学校は、甲第5号証(審判注:欧文字文のみで訳文はなし。)にあるように、主として洋菓子職人の技術向上のため、訓練コースを設け、世界中から短期講習等を希望する洋菓子職人らを受け入れ、教育しており、リッチモント製菓学校あるいはリッチモントクラブが関係する洋菓子は、スイス伝統の洋菓子を主とし生菓子も多い。
一方、本件商標の指定商品である「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」は、沖縄地方を起源とする「三月菓子」(さんぐわちぐわーし)という揚げ菓子に類するものであり、洋菓子というよりは、むしろ南方の和菓子あるいは沖縄菓子と言いうるもので、リッチモント製菓学校あるいはリッチモントクラブに関係する洋菓子と、本件商標の指定商品とは、大きくジャンルが異なる菓子である。したがって、揚げ菓子で沖縄由来の菓子(本件商標の指定商品)に、スイス菓子で有名なリッチモントクラブを結びつけることは、通常あり得ないことであり、不自然かつ極めて異様である。
ウ 全国菓子大博覧会について
甲第6号証に示されるように、第24回全国菓子大博覧会が、平成14年11月1日から同年11月18日まで、熊本県のグランメッセ熊本及び熊本城で開催されたことは事実である。同博覧会は、全菓連なる団体が主催しているが、その実体は、株式会社菓子飴新聞社という従業員数7名程度の小さな新聞社により運営されている。
博覧会の回は異なるが、甲第7号証に第24回の次回の開催に係る、第25回全国菓子大博覧会(姫路にて開催)における受賞者の情報が記載されている。第24回も第25回とほぼ同様であったものと考えられるが、第25回における受賞者の状況について以下説明する。
なお、被請求人は、判定2006-6000042号の請求人として、同号判定請求書において、使用による識別力(商標法第3条第2項)に関連し、「平成20年5月に第25回全国菓子大博覧会では最高賞である『名誉総裁賞(技術部門)』、11月には『下半期ベストセラー賞』をそれぞれ受賞している」旨、甲第6号証及び甲第7号証を指摘して主張している。
使用による識別力(商標法第3条第2項)の有無を審理判断する基準時は、本件商標の場合、登録審決時であって具体的には、遅くとも平成19年7月11日までであるので、かかる主張は失当である。すなわち、平成20年以降における事由(甲第6号証及び甲第7号証)は、上記審理判断には、いささかも影響しない。
さて、第25回全国菓子大博覧会における賞は、ランクが上から下の順に、一般菓子部門において、名誉総裁賞、内閣総理大臣賞、農林水産大臣賞等があるが、以上の賞は、規定に基づく賞であると考えられる。名誉総裁賞は、寛仁親王殿下のお名前を冠し、他の賞は、各大臣等要職者の名を冠し、各担当役所の管理、審査等がなされているものと考えられる。
しかしながら、最高賞である名誉総裁賞であっても、一社のみに付与されるという厳しい賞では全くなく、ほぼ100社以上が受賞している。そうとすれば、毎年応募し普通に改善努力を重ねていれば、いずれは受賞できるともいい得る。さらに、受賞した会社は受賞した点を誇示することにより、商品の売り上げ向上につなげるという風潮がある。上記各賞のうち名誉総裁賞よりも下のランクの賞はもとより、就中、上記各賞にもれた者に温情で臨時に付与される賞では、なおさら受賞価値を過大評価するのは、実情に反し全くの誤りといわざるを得ない。
エ リッチモントクラブ賞について
請求人の調査によれば、甲第8号証に示されるように、第24回全国大博覧会で被請求人に付与されたリッチモントクラブ賞は、その場限りで、選考の要領も不明なまま、無理矢理設定された賞であって、上記ウで述べた各賞よりも逢かにランクが低い賞であることが明らかである。
以下事情を説明する。甲第8号証として、第24回全国菓子大博覧会(熊本開催)に関する証言記録を提出する。なお、甲第8号証において「リッチモンドクラブ」とあるのは、″richemont club″の音訳であって、「リッチモントクラブ」と同義である。
同博覧会において、合名会社北川天明堂の代表取締役社長が開催主幹責務者をつとめていたが、その談によれば、つぎの事情1ないし4があることが明らかである。
事情1:「同博覧会開催時、上部賞(上記名誉総裁賞等)以外に下部の特設賞を多く作らなければならなかった」、
事情2:「リッチモントクラブ賞は、洋菓子の賞として、神戸の菓子組合役員のつてを介し、ヨーロッパのつてを頼り出してもらった賞である」、
事情3:「リッチモントクラブ賞は、継続的な賞ではなく、同菓子博においてイベント用に作られた多くの特設賞の一つに過ぎない」、
事情4:「リッチモントクラブ賞は、権威ある有名なコンテストで日本国内で永年に渡って授与されてきたような賞ではない」。
にもかかわらず、被請求人は、甲第8号証添付の資料Aあるいは査定不服における甲第36号証他にあるように、「リッチモントクラブ賞は、スイスを本拠とする世界的な製菓・製パン学校の卒業生で組織するクラブで、その名を冠した賞。特に優秀と認められたものだけに贈られる権威ある賞です。くまもと菓子博’02においてこの栄誉ある賞を当社の『黒糖ドーナツ棒』が受賞しました」というように事実に反する誇大な広告を多々行ってきた。
しかるに、甲第8号証の「4、」にあるように、被請求人の広報担当者自体が、「リッチモントクラブ賞の内容は、沿革、組織運営、認証の仕組み等は分からない。又その賞がその時だけのものか、現在も継続しているのかは分からない。」と説明に窮する有様であり、上記誇大広告と著しく矛盾する。
以上のとおりであるから、被請求人が主張するリッチモントクラブ賞の受賞は、上記各賞の受賞ができなかった被請求人の立場を、開催者である全菓連がおもんばかって、取って付けたように臨時に付与したものと見るのが相当である。さらに、「リッチモントクラブ賞」あるいは「リッチモンドクラブ賞」なるキーワードを用いてインターネットをくまなく検索しても、「リッチモントクラブ賞」が他社に付与されたという事実は発見できない。
したがって、被請求人が主張するリッチモントクラブ賞は、商標法第3条第2項の使用による顕著性の審査において顕著性を肯定するために依拠できるような筋合いの賞ではない。よって、認定事実2、3に基づく登録審決は、その論拠とした前提事項の認識を誤ったものであって、本件商標の登録は無効とされるべきである。
なお、登録審決は、「リンチモントクラブ賞」に関し、「モント」と「モンド」の文字の類似性から、「モンドセレクション」との何らかの関係があるのではないかと誤解したおそれがある。証拠を挙げるまでもなく、モンドセレクションは、管理団体、受賞の要件、審査等が厳格であり、受賞すれば賞賛に値することは、請求人も認める。しかしながら、上述したように、被請求人が主張するリッチモントクラブ賞は、モンドセレクションとは似ても似つかず、全く関係がない。

5 答弁に対する弁駁
(1)審判請求書の「請求の利益について」の記載に以下を追加する。
ア 被請求人は、本件商標が「ドーナツ棍棒」なる観念を生じるものとして、「ドーナツ」が前で「棒」が後であるところの反転表示により識別力を生ずる旨、平成17年8月18日付け意見書で主張し、「棒」が前で「ドーナツ」が後である通常語順による表示を意識的に除外しておきながら、甲第1号証の仮処分命令申立において、まさに上記除外された通常語順による請求人商標「棒でドーナツ」(「棒」が前で「ドーナツ」が後である通常語順による表示)が、被請求人の本件商標に抵触する旨、明白な包袋禁反言違反の主張を為し、短期間での命令等を求めた。にもかかわらず、被請求人は、文書提出期限を遵守しない、あるいは期日指定の先送りを要求するなど、事案処理を遅滞させ長期化を自ら招くなど矛盾した行為を行っている。併せて、判定2009-600042号を特許庁に対して為している。
イ 同仮処分申立の審尋法廷において、請求人が、事案を専門部を備えた裁判所へ移送するか、本訴提起するよう、訴訟指揮されたい旨上申したところ、裁判官もこれに同意し、被請求人に同意するよう説得したにもかかわらず、被請求人は執拗にこれを拒否し、申立決定を求めている。
ウ 一方、被請求人は、営業妨害行為を為している。すなわち、甲第9号証から甲第11号証に照らせば明らかなように、裁判所の判断を得ることなく、マスコミを利用し、請求人の権利侵害を理由に仮処分申立を為し、損害賠償請求のみならず、刑事告訴をも検討している旨告知している。つまり、請求人を一般需要者に対しても悪者呼ばわりしている。また、甲第12号証から甲第14号証に照らせば明らかなように、被請求人の取引先に内容証明郵便を送りつけ、請求人との取引を取り止めるよう警告している。被請求人の取引先を不安に陥れ、自らを有利にしようとしている。さらには、代理人において請求人の取引先に直接電話をしている。右行為は、競合関係にある請求人に対する不正な営業妨害行為そのものと認められるものである。
エ このような営業妨害行為を抑制し事案の早期解決を図るべく、請求人は、大阪地裁へ被請求人の差止請求権不存在確認の訴え(平成22年(ワ)第3490号商標権等に基づく差止請求権不存在確認等請求事件)を提起したものである。
オ また、請求人は、被請求人の上記攻撃に対抗するため、本件無効審判請求に及んだ次第である。
カ 本件商標は、請求人にとって迷惑千万であるから、本件無効審判請求に及ぶものである。そもそも商標法第3条全体の適用において、自他商品識別力を欠く商標を特定人にのみ安易に独占使用させることにより、公益を損なう点(請求人の迷惑もその一つである)を配慮すべきであるところ、登録審決はそれを忘れ、被請求人の保護を優先しすぎた誤りがある。
(2)全体の弁駁
ア 被請求人主張における判断基準時の誤り
(ア)本件無効審判における審理範囲は、本件商標に関する無効理由の有無、すなわち、登録審決の妥当性であって、登録審決後の事情は一切無関係である。
(イ)乙第8号証として被請求人が提出した「名誉総裁賞(技術部門)」の褒賞状は、登録審決後(平成20年5月10日)の事由であるから、被請求人が答弁書等において、縷々述べたところで無意味であり、何ら被請求人を有利にするものではない。
(ウ)また、被請求人は、答弁書において、「1994年…証明される。」とし、乙第2号証を提出しているが、これも登録審決後に今般後出しで提出したものにすぎず、無意味である。
イ 需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるもの
(ア)出願商標が特定者の出所表示として、その商品の需要者間で全国的に認識されていることである。もしそうなら、右特定者は全国的に認識されているはずであり、しからざるとき、この条件は成立し得ない。
(イ)商標法第3条第2項の規定の適用を受けた商標権者の例を見ると、ブリジストンタイヤ、東芝、東京羊羹本舗、日立製作所、大島椿精油所、井筒屋、旭化成工業、風月堂、マスプロ電工、三井東圧化学、新潮社、NTT、日本ハムのように、極めて周知の者等である。
(ウ)被請求人は、これらの者等のように周知になっているとは考えられない。
(エ)商標法第3条第2項は、全国的に認識された商標を使用する特定者を(一般的な自他商品識別力が否定されるにもかかわらず)特別扱いする規定であって、それに見合うだけの事実がないのにいたずらに適用すれば、商標法の趣旨が没却されてしまう。
(オ)登録第2078814号商標の登録例(商標:「ジューシー」)を見ても、その商標権者は、熊本県果実農業協同組合連合会であり、農協の組織として広く知られている者である。
(カ)被請求人は、東京証券取引所に上場されているとは認められない。被請求人の所在地である熊本市あるいは熊本県には、証券取引所すら存在しない。また、被請求人は、菓子メーカーとして周知(例えば、ウイスキーメーカーとしてのサントリーのように)ではない。いちいち証拠を提出しないが、被請求人は、昭和60年に創業された社員85名程度の熊本市の小会社である。必要とあれば、被請求人ホームページ配下のアドレス(http://www.fuiibambi.co.JP/aboutus/index.html)を参照されたい。
(キ)大多数の需要者は、本来想起されるべき被請求人を知らないのであるから、本件商標に接しても請求人を想起できるはずがない。出所が分からないから当然である。
(ク)被請求人が本件商標に係る査定不服審判において提出した各証拠を総合すると、大多数の需要者は、通信販売されているか、あるいは生協で取り扱われている商品であって、「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」(つまり、指定商品そのものである)を漠然と想起するにすぎない。これでは、商標の機能が発揮され得ない。
(ケ)出所として想起され得るのは、被請求人ではなく、通信販売の放送を流しているテレビ局や番組、もしくは出演しているタレント等、あるいは、生協等さらには配布されたチラシ、雑誌等、すなわち媒体である。
(コ)要するに、大多数の需要者は、「何人」を正しく想起できない。知らない「何人」を需要者は想起できないのは、当然といえる。実態として、被請求人が店舗を展開しているのは、九州の一部に限られ、それも個数が少ない。とても、商標法第3条第2項が規定する要件を満たすものではない。
(サ)むしろ、上述したように、テレビ局、番組、生協など既に需要者に広く知られている存在(媒体)を利用したに過ぎず、その結果、想起されるのは、上述のとおり、被請求人ではなく、テレビ局、番組、タレント、あるいは、生協等、つまり媒体である。
(シ)つまり、想起され得る出所と、被請求人の存在との間に、決定的な断絶があり、商標法第3条第2項が規定する使用による顕著性が生み出されるメカニズムが働かないのである。また、被請求人が縷々述べているように、被請求人は、商品の改善等の努力をしているのかもしれないが、努力するものは、想起され得る出所たる媒体(それも不特定であり、媒体に業務上の信用が化体するとは考えられない。)では断じてない。また、登録審決は、この媒体を保護するものでは決してない。つまり、商標法が予定する関係が成立しないのである。
(ス)これは結局、本件商標については、登録審決が、原査定のように商標法第3条第1項第3号で拒絶すべきであったにもかかわらず、本件商標に商標法第3条第2項を適用したことが誤りであることの証左でもある。
(セ)以上のことだけを取ってみても、本件商標に商標法第3条第2項を適用した登録審決は、誤りであって無効とされるのを免れない。
ウ 出願商標と使用商標との同一性
(ア)出願商標と使用商標の同一性が商標法第3条第2項適用の前提となることはいうまでもない(昭和60年4月25日東京高昭和59年(行ケ)第97号)。
(イ)被請求人は、特許庁審査基準が「考慮する」と述べている点を我田引水し、拡大解釈するつもりのようであるが、誤りであり、正しくは次のとおりである。
(ウ)例えば、上述のサントリーのようにウイスキーメーカーとして全国周知である商標使用者においては、外観において同一視できる程度の違いでは、同一性が損なわれないと解するのが相当である(平成14年1月30日東京高裁平成13年(行ケ)第265号)。なぜなら、一般需要者は、商標使用者を熟知しており、また業務上の信用が獲得されているから、その使用者を容易に想起できるためである。
(エ)周知の商標使用者を代表として、同一性が損なわれないとされるのは、通常の活字書体間の差か、続書きと横書き(つまり、互いに直交する普通の記載方向)の差のみである。すなわち、その他の態様、例えば、一連に同一ピッチ、同一サイズで文字列を一気に並べて記載した第1の態様と、文字列を第1文字列と第2文字列に分け、第1文字列と第2文字列とを別段に(つまり二段に)表示する第2の態様とでは、商標法第3条第2項に関する審査基準が適用され、同一性は否定される。被請求人が自白するように、本件商標は手書きされてなるから、書体差も同一性を損なう原因となる。
(オ)すなわち、査定不服審判において被請求人が提出した証拠において、同一性が否定される事案等重大な欠陥(詳細は後述する。)が多々ある。結局、請求人が審判請求書で述べたとおりであり、つまり、被請求人が答弁書において述べた抗弁は理由が無く、失当である。
エ 被請求人が登録審決までに提出した証拠の評価
(ア)被請求人は、答弁書において、査定不服における甲第1号証ないし甲第60号証等を軽視ないし無視していると非難しているが、これらの証拠は、証拠力に乏しいものが多々含まれているため、言及が少なかったにすぎない。以下、まとめて評価する。
(イ)第1類:上述したように、被請求人を知る需要者は少ない。そして、被請求人よりも商標使用に関する他者の方がはるかに有名で、当該他者の商標使用であると需要者が認識するもの。あるいは、被請求人の記載が無いか極めて弱く「何人」が被請求人であると把握できないもの。(査定不服における甲第1号証ないし甲第3号証、甲第7号証ないし甲第9号証、甲第12号証及び甲第13号証、甲第15号証及び甲第16号証、甲第22号証及び甲第23号証、甲第27号証、甲第29号証、甲第47号証ないし甲第50号証及び甲第62号証ないし甲第64号証)
例えば、査定不服における甲第7号証では、被請求人よりも遙かに有名な「日本生活協同組合連合会」(つまり生協)が商標を使用しているように、需要者は認識する。他にも、千趣会、高島屋、通販番組等々も同様である。この場合、誤った「何人」(当該他者)が認識(つまり誤認)されるだけであり、商標法第3条第2項が予定する状態とは全く別の結果となる。
第2類:配布日、配布部数が不明であり、商標使用の実態が不明なもの。(査定不服における甲第30号証ないし甲第42号証)
第3類:商標の同?性が不明か、判断できないもの。(査定不服における甲第51号証、甲第61号証、甲第65号証及び甲第66号証)
第4類:趣旨不明であり、全く意味がないもの。(査定不服における甲第52号証ないし甲第58号証)
(ウ)以上のように、登録審決が参照した査定不服における甲各号証には、多々重大な欠陥があり、答弁書における被請求人の主張のように、登録審決が、「リッチモントクラブ賞受賞を除外しても、すでに十分に周知性は立証されていると判断」できる事情は、ほんのわずかもない。
オ リッチモントクラブ賞
(ア)被請求人も認めているとおり、登録審決は、明らかにリッチモントクラブ賞に言及しており、つまり、言及が必要と認めている。
(イ)同賞は、ランクが低い賞(被請求人の自白のとおり)であり、虚飾を排すれば残念賞である。そして、同賞の格付け、性質、重要度その他の事項について、登録審決が正しく把握していたとは考えられない。
(ウ)登録審決をなした合議体は、本来、同賞に関する更なる疎明資料を提出させ、その賞の実態を把握した上で、登録審決をなすべきであった。
(エ)同賞を良く調査することもなく、短絡的に過大評価したものであるから、登録審決の誤りは大であって、無効とされるのを免れない。
(3)以上のとおりであるから、答弁の4の「小括」及び5の「結論」は、全て失当であって、被請求人の答弁は、理由がない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 答弁の理由
本件商標は、審査段階で自他商品識別力を否定されたものの、長年にわたる継続的、かつ、集中的な商標使用の証拠を提出して行なった審判において、特別顕著性が認められ商標法第3条第2項適用により登録された。請求人は、登録審決の「本願商標は、上記商品について商標法第3条第2項に規定する要件を充たしている」との判断に誤りがあるものとして本件商標の無効を主張しているが、登録審決の判断は適正であり、請求人の主張は失当である。

2 本件商標について
本件商標の構成について、請求人は、「『黒糖』と『ドーナツ棒』の文字を二行に縦書きして表示され、『ド』の文字が『黒』の文字の開始位置から半文字程度の段下がり位置で開始されており、特に、『黒糖』」び『ドーナツ棒』の文字もいずれも通常使用されていない手書きされたクセの強い字体からなり、字体の輪郭が外側にぶつぶつと天井に張り出している点が認められる。『ド』の文字の2画目(右下斜線)の起点は、1画目(真下直線)の反対側へ飛び出し、『ナ』の文字は1画目及び2画目が右下へ傾いている。さらに、『ツ』の文字は個性が特に強く、1画目、2画目が3画目に比べ異常に長く、3画目も通常よりも傾斜が少ない。そのため、『ツ』の文字は、漢字の『川』と読むこともできる。(以上、構成要素4)」と主張している。
しかしながら、「黒糖」及び「ドーナツ棒」の手書き文字が「クセの強い字体」かどうかは、比較の基準が示されておらず主観により左右されるものであり、本件商標の表示は、手書き文字としてはむしろ素直で読みやすい運筆であり、その意味ではクセのない字体である。また、指定商品との関係では、「ツ」を「川」と読むのは無理がある。さらに、「字体の輪郭が外側にぶつぶつと天井に張り出している」状態の意味は不明である。さらに、「ド」、「ナ」、「ツ」のそれぞれの文字について、細部の態様や読み方についての記述があるが、商品の取引の実際や、商品「菓子」の分野における需要者、取引者間の理解などを考慮して決すべき商標の自他商品の識別機能の有無について、拡大鏡をもって始めて把握され得る程度の本件商標構成の細部記述の有意性を見出すのは困難である。

3 登録審決の認定
(1)請求人は、本件商標の登録審決中、以下の3つの点を認定事項とし、それぞれの認定事項の認定の妥当性を否定して、商標法第3条第2項の適用を誤ったものとしている。
認定事項1:本願商標を付した商品は、1994年頃から販売された事実がある。
認定事項2:本願商標を付した商品は、その後、第24回全国菓子大博覧会にてリッチモントクラブ賞を受賞(2002年)した事実がある。
認定事項3:本願商標を付した商品は、継続して商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に使用された結果、現在においては、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認め得る。
しかしながら、請求書の「3 登録審決の認定」以降の主張の主要部分は、結局、拒絶査定審判における平成18年7月3日付け手続補足書添付の甲第5号証、同19年3月19日差出の手続補正書に添付された甲第61号証ないし甲第63号証についての証明内容事項に尽き、これら4件の証拠の証明力のみで商標の周知事実証明の可否を判断して、査定不服における甲第5号証を除く、甲第1号証ないし甲第60号証及び甲第64号証ないし甲第66号証による証明を軽視ないしは無視した上での主張となっている。
登録審決中、「3 当審の判断」本文5行目以降には、「しかしながら、請求人が、本願商標は商標法第3条第2項の規定に該当する旨主張し、当審において提出した甲第1号証ないし甲第66号証を総合勘案すれば、本願商標を付した商品は、1994年頃から販売され、その後、第24回全国菓子博覧会にてリッチモントクラブ賞を受賞(2002年)し、継続して商品「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」に使用された結果、現在においては、需要者が請求人の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認める得るところである。」と示されており、査定不服における甲第1号証ないし甲第66号証を通じて証明された、全国組織の生活協同組合販売網、テレビ放送、大手百貨店を介した通信販売、航空会社機内誌、新聞社、生活雑誌、郵便局取扱「ふるさと小包」商品カタログ、各種地域・全国ネット情報誌、自社カタログ、インターネットショッピングモール出品等を通じた広範かつ濃密な商標使用の証明により適正に商標法第3条第2項適用の適否が検討され、審決判断が導かれたものであって、請求人の審判請求書全体において示された主張は査定不服における甲第5号証、甲第61号証ないし甲第63号証の証明力のみに依拠した偏った主張であり、妥当性に欠ける。
(2)認定事項1について
請求人は、「(3)認定事項1について」において特許庁商標審査基準の商標法第3条第2項の適用において、「使用による識別力が認められる出願商標は、類似商標に及ばないことは言うまでもなく、字体が草書体、楷書体あるいは・・・縦書き、横書きのいずれであるか、書された態様の相違があるか、のうち、いずれかの差異が認められるとき、容認されないものである。」とし、さらに、「黒糖ドーナツ棒」販売経歴書(甲第2号証)記載の1994年(平成6年)当時使用の商標と本件登録商標との同一性に疑問を呈している。
しかしながら、平成19年4月発行改訂第9版商標審査基準(乙第1号証)は、「2.(1)本項を適用して登録が認められるのは、出願された商標及び指定商品又は指定役務と、使用されている商標及び商品又は役務とが同一の場合のみとする。」とする一方、「2.(3)出願された商標と証明書に表示された商標とが厳密には一致しない場合であっても、例えば、その違いが明朝体とゴシック体、縦書きと横書きにすぎない等外観において同視できる程度に商標としての同一性を損なわないものと認められるときには、本項の判断において考慮するものとする。」としており、商標法第3条第2項適用に際しての商標の同一性に関する審査基準の理解に誤りがある。
1994年(平成6年)当時の、黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子についての本件商標と同一商標の使用は、乙第2号証に添付している商品の外箱表面の表示において、明白に証明される。
さらに、請求人は、査定不服における平成19年3月19日差出の手続補正書(本審判請求書では「平成18年7月5日付け手続補足書に添付」とされているが、平成19年3月19日差出の手続補正書に添付」の誤りである。)に添付の甲第61号証ないし甲第63号証における本件商標の使用の事実の有無及び使用商標と登録商標との同一性について、疑問を呈している。
乙第3号証において、査定不服における甲第61号証に係る株式会社大丸ホームショッピングの現食品担当バイヤー(食品分野の商品情報収集・分析とマーケティングに10年以上従事)による本件商標と実質同一商標の使用が証明されている。すなわち、大丸通信販売カタログ秋号別冊食品特集Vo1.29第19頁右上には、「96個」の文字含む四角背景水色部分で見えにくいが、黒糖ドーナツ棒商品96個入りの缶ケースの側面に横書き2行で「黒糖ドーナツ棒」の表示が施されている。査定不服における甲第61号証の売上の証明書に関し対象の商品について使用された少なくとも平成15年当時使用の商標が、本件商標と実質的に同一のものであることが間接的に判断できる。
また、査定不服における甲第62号証及び甲第63号証については、ともに印刷会社による「黒糖ドーナツ棒」商標のドーナツ菓子に関してのパンフレットあるいは広告誌の印刷事実の証明であり、本件商標と外観上同視可能かつ同一性を損なうことのない商標が商品外箱に表示された写真を含む印刷物を添付している以上、本件商標の使用が証明されていることは明らかである。そして、乙第2号証において示されるように、本件商標を付した商品は、1994年頃から販売され、その後、品質改良と複数種類の媒体による継続的、広範な広告宣伝活動を通じて本件商標は、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる」に至ったものである。この点を認定した登録審決の判断には何らの過誤も存しない。
(3)認定事項2について
請求人は、登録審決が2002年のリッチモントクラブ賞受賞の事実を過大評価して誤った登録審決を行なっている旨主張している。そして、洋菓子製造のジャンルを基盤とするリッチモントクラブと本件商標を付した商品である「黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子」を結びつけることはあり得ないとして、被請求人の受賞事実自体を否定するかのような独断的な記述が本件審判請求書の「リッチモントクラブについて」の終節に記載されている。
リッチモントクラブ賞受賞については、乙第4号証(「別添説明」を含む)に示されるように、2002年11月1日?11月18日熊本市で開催された「第24回全国菓子大博覧会九州in熊本」(熊本菓子博2002)の折りに、協同組合全日本洋菓子工業会の常任理事(乙第5号証)((株)ブールミッシュ代表取締役社長)である吉田菊次郎(乙第6号証)の提唱により被請求人が選定授与されたものであり、請求人の主張は、根拠がない。
(4)全国菓子大博覧会について
ア 請求人は、第25回全国菓子大博覧会を引用し、同博覧会における賞のランクについて縷々説明し、「名誉総裁賞よりも下のランクの賞はもとより、就中、上記各賞にもれた者に温情で臨時に付与される(リッチモントクラブ)賞では、なおさら受賞価値を過大評価するのは、実情に反し全くの誤り」と主張している。
そもそも全国菓子大博覧会は、名こそ違うものの明治44年の第1回帝国菓子飴品評会を起源とし、以来100年余りの歴史を有するものであり、時代による組織の強弱、大小の変遷はあったと推測されるが、持ち回りで各地方で不定期開催されてきたものである(乙第7号証)。そして、その時々の開催地地方の菓子工業組合が活動の中心となって、皇室、農水大臣を担ぎ、県、市一体で主催し、主要な官省の協賛を得て執り行われるが、出品作品の品評会において、どのような賞を、誰あるいはどのような企業に付与するかを決定するのは、専ら菓子製造の実務を行なう組合や業界団体推薦の委員長、審査員である(乙第4号証)。そこで、定例的に決まった賞のほかに菓子の品質改善、技術向上、新製品開発によく貢献したものに特別に賞を付与することは、会の目的上、当然である。
前述したとおり、商標法第3条第1項第3号に該当する商標であっても被請求人が具体的かつ継続的、集中的に本件商標を使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品たることを認識することができる(商標法第3条第2項)に至らしめたかどうかの判断は、ただ1つの証拠証明で決せられるべきものではなく、拒絶査定に対する審判で提出された使用事実を証明する甲第1号証ないし甲第66号証全体を総合勘案して行なわれるものである。そして、登録審決は、そもそも、平成18年7月3日付け手続補足書添付の査定不服における甲第5号証リッチモントクラブ賞受賞を除外しても、すでに充分にその周知性は立証されていると判断したものであり、この点についての登録審決の判断に何らの落ち度も見出せない。ただ1つの証拠証明で商標法第3条第2項の適用が許容されるものとすれば、請求人の主張をそのまま採ると、博覧会開催時ごとに100社以上が商標法第3条第2項の適用を受けて登録され得るものとなり、商標法第3条第2項の規定の趣旨を没却させる。
イ 全国菓子大博覧会における賞のランクについて
受賞した賞が名誉総裁賞よりも下のランクの賞であろうと、温情で臨時に付与される賞であろうと、受賞事実を広告し自社商品販売拡大活動を行うことは、消費者に低質の商品を提供し消費者を欺くような行為でないかぎり、工業製品、日用品、その他の商品やサービスを扱う各業界でも普通に行なわれる正当な商行為である。「第24回全国菓子大博覧会九州in熊本」において付与されたリッチモントクラブ賞は、厳選された素材を用いた高品質の商品提供と、本件商標の拒絶査定審判において提出した甲第1号証ないし甲第66号証に示すように、被請求人の件の日々の販売促進活動の努力に対する正当な評価として被請求人に与えられたものであり、これを見抜いた登録審決の判断は正に正鵠を得たものであって、そこには何らの誤認もない。品質保持と滞りのない営業努力をその後も継続した被請求人が、請求人の示す賞ランクリスト中の最高賞である「名誉総裁賞(技術部門)」(乙第8号証)並びに「下半期ベストセラー賞」を本件商標の登録審決後に受賞したのは、その正当な判断を裏打ちするものといえる。
(5)リッチモントクラブ賞について
ア 請求人は、請求書において、(a)リッチモントクラブ賞の賞状の形式についての疑念、(b)洋菓子製作訓練コース等を有する同クラブがドーナツ菓子について賞を提供することについての疑念、(c)全国菓子大博覧会において出される賞の中でのリッチモントクラブ賞についてのランク評価、(d)「リッチモントクラブ賞」を「モンドセレクション」と誤解したおそれ、に関して、縷々説明している。
イ (a)リッチモントクラブ賞の賞状の形式について
賞状形式について、どのような形式の賞状とするかについて世界的に定まった標準はないはずであり、各業界の組織、団体がそれらのメンバーにどのような賞状を贈って顕彰するかは、むしろそれらの組織、団体等に委ねられて運用されるべきものである。リッチモントクラブ賞の賞状の形式についてリッチモントクラブ賞状及びその受賞を疑うような疑念は、請求人のみの常識推量の下に生じた邪推に過ぎず、根拠がない。なお、リッチモントクラブのペナントプレートは賞状とは別体である(乙第9号証)。
ウ (b)洋菓子製作訓練コース等を有する同クラブがドーナツ菓子について賞を提供することについて
全国菓子大博覧会はいわば日本の地方博覧会のひとつで、和菓子を中心に、洋菓子・スナック菓子等も含めた日本最大の菓子業界の展示会であり、出品作品の品評も行なわれる。優秀な作品・商品には、最高賞である名誉総裁賞・内閣総理大臣賞・農林水産大臣賞などが贈られ、「和菓子のオリンピック」と呼ばれている。各賞は意匠部門・技術部門などといった部門毎に選定される。ちなみに、第24回全国菓子大博覧会in九州熊本会場では、会期中県内外から52万人程度の入場者があり、この大博覧会は、菓子製造、販売業界の業者ばかりでなく、文化的、社会的にも大きな影響力をもつ大会であるといえる。
ところで、被請求人は、沖縄産サトウキビ100%を使用した黒砂糖、選りすぐった国内産小麦粉を用いた独自の製造技術により甘みを抑え食べ飽きがせず使用植物油に配慮した高品質で独自の黒糖ドーナツ菓子を提供し、これに対する消費者の支持を得ている。そして、どのような賞を誰に与えるかの選択は、地方運営に委ねられている以上、洋菓子製作訓練コース等を有するリッチモントクラブを冠した賞を、考え抜かれた素材選択と、良好な食感とロ溶けに考慮して技術を駆使して製作される被請求人提供のドーナツ菓子について提供することに何の抵抗もない。被請求人提供のドーナツ菓子が次の第25回全国菓子大博覧会(姫路会場)において、技術部門の最高賞を受賞したことは、むしろ当然といえる。
なお、リッチモントクラブ賞に関し、請求人は、「黒糖ドーナツ棒」説明文書が誇大広告である旨、主張しているが、リッチモントクラブがスイスの製菓学校卒業生を母体とする世界的なクラブ組織(乙第10号証及び乙第11号証)であり、第24回全国菓子大博覧会作品品評において、審査会が被請求人の黒糖ドーナツ棒を特に優秀として特別賞の1つを贈呈したことは事実であって、誇大広告の事実はなく、請求人の主張は根拠のない言いがかりにすぎない。なお、乙第10号証では、欧文文字の翻訳は添付していないが、「richemont club」でのインターネット検索結果、87,800件のヒットがあり、それぞれのサイト名表示がそれぞれ、第1番目からイギリスリッチモントクラブについて、イタリーリッチモントクラブについて、イギリスリッチモントクラブについて、リッチモントクラブ法令、国際リッチモントクラブ総会の詳細、イギリスでのリッチモントクラブコンペ、イタリーリッチモントクラブのサイト表示名がリストアップされ、特に、乙第11号証に示す国際リッチモントクラブ総会の詳細において、複数の国のメンバーが同クラブに加盟していることがわかる。
エ (c)全国菓子大博覧会において出される賞の中でのリッチモントクラブ賞についてのランク評価について
全国菓子大博覧会において出される賞の中でリッチモントクラブ賞が賞全体の中で仮に高くないランク付けの賞であったとしても、上記の製作技術に裏づけされた良質の商品が消費者に支持され、この良質商品提供に呼応して広告宣伝に還元するサイクルを通じて黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子に付された本件「黒糖ドーナツ棒」商標が広く周知されることを何ら妨げるものではない。被請求人の本件商標使用の結果、需要者が何人かの業務に係る商品たることを認識することができる商標となっていることは、すでに拒絶査定審判段階で提出された、査定不服における甲第5号証を除く、甲第1号証ないし甲第66号証全体の証拠により既に明らかにされているところであり、登録審決の判断は、リッチモントクラブ賞受賞を過大評価はしておらず、そのような、被請求人の本件商標の周知性獲得の一例として、通常の評価を与えたものである。
オ (d)「リッチモントクラブ賞」を「モンドセレクション」と誤解したおそれについて
請求人は、登録審決の判断において、(d)「リッチモントクラブ賞」を「モンドセレクション」と誤解したおそれについて言及するが、商標専門官でありかつ合議体による判断としてはあり得ないことである。
カ 甲第8号証について
なお、請求人は、甲第8号証により、調査会社が収集したかのごとき報告文書を提出しているが、内容はすべてその調査会社の相手方実務多忙中での電話応答などによる又聞き伝聞であり、請求人に都合よい修飾が窺える書面であって、信用性に乏しい。また、いずれにしても一個人の感想であり、北川自身がリッチモントクラブについてよく知らないとしても、それによってリッチモントクラブの世界的名声が低くなるものではなく、また、リッチモントクラブ賞は審査会全体において審議の上、同賞を被請求人に与えたものである。北川は、被請求人とは同業者で競合関係会社の代表者であるが、北川自ら被請求人使用の「黒糖ドーナツ棒」の全国的な周知、著名性を認めているところである(乙第12号証)。さらに、仮に被請求人会社の社員が賞の内容についてよく知らなかったとしても、それによってリッチモントクラブが製菓技術向上のために国内、国際を問わず活動していることが広く知られている事実を否定するものではないはずである。

4 小括
以上をまとめると、以下のとおりである。
ア 本件商標は、1994年(平成6年)当時から、黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子について使用されて販売されており、その後のたゆまない品質保持と継続的、広範かつ濃密な広告宣伝により、少なくとも審決時には需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる商標となっていた。
イ 平成19年4月発行改訂第9版商標審査基準において、出願商標と具体的に使用された商標とは、両商標の違いが、縦書きと横書きにすぎない場合、外観において同視できる程度に商標としての同一性を損なわないものとして、商標法第3条第2項の適用が考慮されるものであり、本件商標と証拠提出により証明される使用された商標は、外観において同視でき、かつ商標としての同一性を損なわない範囲のものである。
ウ 商標法第3条第2項の規定に該当するか否かは、査定不服における甲第1号証ないし甲第66号証を総合勘案して判断すべきところ、請求人の主張は甲第5号証及び甲第61号証ないし甲第63号証の証明力のみに依拠してその適用可否を主張したものであり、それらの証拠以外の甲第1号証ないし甲第66号証による証明を無視した誤った前提に立つ適用の主張である。
エ 査定不服における甲第5号証以外の甲第1号証ないし甲第66号証により、すでに充分に本願商標の使用による周知性の立証はなされている。
オ 登録審決は、被請求人のリッチモントクラブ賞受賞を過大評価して商標法第3条第2項の適用を決定したものではなく、通常の評価を与え、その上で査定不服における甲第1号証ないし甲第66号証を総合勘案して判断したものであって、リッチモントクラブ賞受賞に対する評価は正当である。

5 結論
以上のとおり、本件商標の商標法第3条第2項適用についての登録審決の判断には何らの瑕疵もなく、本件商標は、被請求人の使用により需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至った商標であるから、本件商標に対する商標法第3条第2項の適用は正当であり、よって、請求人の主張は成り立たない。

第4 当審の判断
本件審判の請求をすることに関し、請求人が利害関係を有するか否かについて当事者間に争いはなく、かつ、請求人は、本件審判の請求人適格を有するものと認められるので、以下、本案に入って審理する。
1 本件商標が商標法第3条第2項の要件を満たしていたか否かについて
(1)被請求人の提出に係る証拠
ア 査定不服審判2006-488号に係る被請求人(当該審判における請求人)提出の平成18年7月3日付け手続補足書及び同19年3月22日付け手続補正書に添付された甲第1号証ないし甲第65号証によれば、以下の事実が認められる。(なお、以下の甲第1号証ないし甲第65号証の記載時は、上記「査定不服審判2006-488号に係る」の表記は省略する。)
(ア)商品の販売売上証明書等の証明書関係(甲第1号証ないし甲第4号証)
(a)甲第1号証は、別掲の使用商標が表示されている「日本生活協同組合連合会」の証明書で、「商品『黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子』の包装に商標『黒糖/ドーナツ棒』(使用商標)を付したものを販売したことにより、下記の通りの売り上げがあったことは、事実に相違ないことを証明します。記/2000年4月から2006年5月 売上高(千円)96,024/平成18年6月1日/日本生活協同組合連合会/学協支所 印/支所長 印」の記載、及び使用商標が表示され、自筆で上記期間とその売上高の記載がなされており、日本生活協同組合連合会印と支所長印が押印されている。
(b)甲第2号証は、別掲の使用商標が表示されている「キッスビー健全食株式会社」の証明書で、「商品『黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子』の包装に商標『黒糖/ドーナツ棒』(使用商標)を付したものを販売したことにより、下記の通りの売り上げがあったことは、事実に相違ないことを証明します。記/2001年3月から2006年5月 売上高(千円)7,076(税抜)/キッスビー健全食株式会社 印/代表取締役 印」の記載、及び使用商標が表示され、自筆で上記期間とその売上高の記載がなされおり、社印と代表取締役印が押印されている。なお、証明日は記載されていない。
(c)甲第3号証は、「株式会社電通九州熊本支社」による使用商標に関する広告(印刷物名及び掲載頁並びにテレビ放送の放映年月日及び時間帯)に関する証明書で、1枚目には「株式会社電通九州熊本支社」の記載及び押印がなされており、2枚目の割り印された用紙には、商標「黒糖/ドーナツ棒」(使用商標)が表記されており、3枚目には、「当社は、熊本県…所在の株式会社フジバンビの依頼により、商標『黒糖/ドーナツ棒』(使用商標)に係る商品『黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子』に関する広告を下記の通り実施したことを証明します。/年月日/媒体名/平成16年11月20日 すぱいす?平成18年4月15日 琉球新報」と記載され、4枚目には、「当社は、熊本県…所在の株式会社フジバンビの依頼により、商標『黒糖/ドーナツ棒』(使用商標)に係る商品『黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子』に関する広告を下記の通り放映したことを証明します。/年月日/時間帯(時分)/平成16年9月17日 6:30? 鹿児島読売テレビ(KYT)?平成16年9月24日 6:30?8:30 熊本県民テレビ(KKT)」と記載されている
(d)甲第4号証の1枚目は、「株式会社共栄コア」の社印と代表取締役印が押印されている使用商標に関する証明書で、「当社は、商標『黒糖ドーナツ棒』に係る商品『黒糖入りドーナツ菓子』に関する別紙パンフレット『かどやの駄菓子屋』を、平成13年10月1日から平成18年6月1日まで14通印刷したことを証明致します。/平成18年6月8日/住所…/名称 株式会社共栄コア(印)/代表取締名…(印)」の記載及び押印がなされており、2枚目には、「当社は、熊本県…所在の株式会社フジバンビの依頼により、商標『黒糖/ドーナツ棒』(使用商標)に係る商品『黒糖を使用した棒状形のドーナツ菓子』に関する広告を下記の通り実施したことを証明します。/年月日/媒体名/平成16年4月10日 熊日すぱいす?平成18年3月11日 熊日すぱいす」、同様に3枚目には、「当社は、商標『黒糖ドーナツ棒』に係る商品『黒糖入りドーナツ菓子』に関する別紙パンフレット『かどやの駄菓子屋』を、平成13年10月1日から平成18年6月1日まで14通印刷したことを証明します。/平成18年6月8日/住所…/名称 株式会社共栄コア 印/代表取締名 印」の記載及び押印がなされており、4枚目の割り印された用紙には「使用商標」が表記されている。
(イ)第24回全国菓子大博覧会九州in熊本「リッチモントクラブ賞」賞状(甲第5号証)
甲第5号証は、中央下部に「黒糖ドーナツ棒」、その横やや上から「第24回全国菓子大博覧会九州in熊本」「リッチモントクラブ賞」「株式会社フジバンビ」と表記され、他は欧文字で表記されている賞状と思しき横長の用紙で、左側に「RICHEMONT SENIORS/ 図 /BELGIUM」と表記されている丸型のシール、その下に「KUMAMOTO/2002」横長のシールが貼り付けられており、上記「黒糖ドーナツ棒」の表記の左下の部分にサインと思しき欧文字の署名がなされている。
(ウ)航空機の機内誌(甲第6号証)
甲第6号証は、航空機の機内誌と認められるところ、表紙の上部、「SKYNET」の表題の文字の右下部分に小さく「スカイネット/スカイネットアジア航空機内誌/2003年12月号/熊本版」と表記され、3枚目(右下角に「SKYNET 24」と頁表記がなされている。)に「黒糖ドーナツ棒」の紹介広告が掲載されており、中央部に、本件商標と同じ書体の、「黒糖」(赤色)、「ドーナツ棒」の文字が横書きで二段書きされている(以下「使用商標(横書き)」という。)商品の包装用箱と、その上部の包装用箱には使用商標の一部が写っている。
(エ)食品の「チラシ」(甲第7号証ないし甲第9号証、甲第22号証、甲第27号証及び甲第29号証)
甲第7号証ないし甲第9号証は、日本生活協同組合連合会の食品共同購入用の「チラシ」で、以下のとおりである。
(a)甲第7号証のチラシの表紙の右上角部分に「学校・職域生協 チラシNO.602」、同じく右下角部に「2003‐チラシNO.602」の各表示があり、2枚目の見開き頁中央上部に、「菓子部門」として、「大人気商品1位/○内29/黒糖ドーナツ棒」の各表記並びに商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その包装用箱の蓋の正面部分には、「使用商標(色つき)」が表示され、また、該包装用箱の蓋の横長部分には「使用商標(横書き)」が表示されている。
(b)甲第8号証のチラシの表紙の右上角部分に「学校・職域生協 チラシNO.620」、同じく右下角部に「2003‐チラシNO.620」の各表示があり、3枚目の開いた左側下部に「大人気商品/かどやの駄菓子屋/株式会社フジバンビ/○内71/黒糖ドーナツ棒」の各表記並びに商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示され、また、該包装用箱の蓋の横長部分には「使用商標(横書き)」が表示されている。
(c)甲第9号証は、チラシの表紙の右上角部分に「学校・職域生協 チラシNO.788」、同じく右下角部に「2003‐チラシNO.788」の各表示があり、2枚目の見開き頁の二段目の右側部分に「他では手に入りにくい生協で育てた商品です。濃厚な黒糖の味はやみつきになります。/○内32/黒糖ドーナツ棒」の各表記並びに商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その包装用箱の蓋の正面部分には、「使用商標(色つき)」が表示され、また、該包装用箱の蓋の横長部分には「使用商標(横書き)」が表示されている。
(d)甲第22号証は、「株式会社千趣会 ベルメゾン」と表示されている商品の申し込み用「はがき」が添付されている大判のチラシで、表紙上部に「…カタログ有効期限/2004.9/27」の記載、2枚目の開いた左側中央部分やや上に「…棒状新菓/ドーナツ棒って書いてあるからドーナツでしょう…/51 黒糖ドーナツ棒」の各表記並びに商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、また、その包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示されている。
(e)甲第27号証は、日本生活協同組合連合会の「チラシ」で、チラシの表紙の上左から「食品共同購入」「学校・職域生協 チラシNO.762」「申し込み締め切り日 10/28(金)生協必着」の記載、同じく右下角部に「2005‐チラシNO.762」の各表示があり、該チラシの上の部分に、大きく商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示され、また、該包装用箱の蓋の横長部分には「使用商標(横書き)」が表示されている。
(f)甲第29号証は、日本生活協同組合連合会・学校生活協同組合の「チラシ」で、チラシの表紙の上部左から「学校生協」「’94/2学期/NEWS NO.2137」「食品重点5品目」の各表示があり、該チラシの上の部分右側に大きく、商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示され、また、該包装用箱の蓋の横長部分には「使用商標(横書き)」が表示されている。
(オ)新聞、雑誌における広告(甲第10号証ないし甲第12号証、甲第17号証ないし甲第19号証、甲第21号証、甲第24号証ないし甲第26号証及び甲第43号証)
(a)甲第10号証は、平成16年(2004年)9月16日付けの「熊本日日新聞」の写しで、2枚目下部の広告欄の左側の枠内に「四万寄工場・店舗一周年記念/黒糖ドーナツ棒感謝フェア/9月25日(土)?26日(日)午前10時から午後5時まで(雨天決行)」の文字と、「使用商標(横書き)」並びに「株式会社フジバンビ」等の記載がなされ、該記載の右横に、籠に入った商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標」が表示されている。
(b)甲第11号証は、平成15年12月31日の(株)メディアプレス発行の月刊雑誌「月間くまもと 家族時間」で、3枚目の中央上部に「かどの駄菓子屋/(株式会社フジバンビ)」の見出しの横に、皿に入った商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示されている。
(c)甲第12号証は、熊本日日新聞発行の雑誌「まいらいふ」2004年(平成16年)6月号で、2頁中央右側に「からだ思いのおやつ/黒糖ドーナツ棒」等の記載がなされ、該記載の下に、籠に入った商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示されている。
(d)甲第17号証は、平成16年(2004年)11月20日付けの「くまにち すぱいす新聞」で、下部の三分の一程度の大きな枠内に、商品を半分に割った写真が表示され、その横の部分に小さく不明瞭であるが、商品の縦長の包装用箱2箱が掲載表記されており、その2箱の商品の縦長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示されている。
(e)甲第18号証は、2004年(平成16年)5月14日 株式会社パド発行の情報誌「ぱど」で、表紙の上部左角に「134横須賀中央・衣笠エリア」の記載、18頁全面に「黒糖ドーナツ棒」の広告が掲載されており、左下の部分に、商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その商品の縦長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示されている。
(f)甲第19号証は、2004年(平成16年)5月18日の株式会社ぱど発行の情報誌「L’ala Pado(ラーラぱど)」で、表紙の上部右側に「tokyo/yokohama」の記載、3枚目全面に「黒糖ドーナツ棒」の広告が掲載されており、左下の部分に、商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その商品の縦長の包装用箱の蓋の正面部分に使用商標(色つき)」が表示されている。
(g)甲第21号証は、平成16年(2004年)8月8日付けの新聞「夕刊フジ」の写しで、3枚目下部左側の「『黒糖ドーナツ棒詰合せ』を6人」の見出の左に、皿に入った商品の写真とともに商品の縦長の包装用箱が掲載表記されており、その商品の縦長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標」が表示されている。
(h)甲第24号証は、2005年(平成17年)1月27日の山陽新聞社発行の情報誌「レディア」で、2枚目の下部の三分の一程度の大きな枠内に、商品を半分に割った写真が表示され、その横の部分に小さく不明瞭であるが、商品の縦長の包装用箱2箱が掲載表記されており、その2箱の商品の縦長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示されている。
(i)甲第25号証は、2005年(平成17年)7月1日 熊本日日新聞社発行の情報誌「デリすぱ」で、2枚目全面に「黒糖ドーナツ棒」の広告が掲載されており、商品を半分に割った大きな写真の上に、各種商品を詰め合わせた商品が複数掲載されており、該詰め合わせ商品のほとんどに入れられている縦長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示されている。
(j)甲第26号証は、琉球新報社発行の情報生活マガジン「うない」(2005年(平成17年)5.6月号)で、33頁全面に「黒糖ドーナツ棒」の広告が掲載されており、商品を半分に割った大きな写真の下に、横長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(横書き)」が表示されている商品の包装用箱と、その左横に、縦長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示されている商品の包装用箱とが掲載表示され、その下にも、商品の縦長の包装用箱2箱が掲載表記されており、その蓋の正面部分に「使用商標(色つき)」が表示されている。
(k)甲第43号証は、2004年(平成16年)4月3日付けの「日本経済新聞」の写しで、「ヒットの方程式」欄に「黒糖ドーナツ棒 フジバンビ/生協と取引転機に飛躍」の見出しとともに、縦長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標」が表示されている商品の包装用箱が掲載表示されている。
(l)甲第44号証は、2004年(平成16年)4月9日付けの「熊本日日新聞」の写しで、右側ほぼ全面に「黒糖ドーナツ棒」の紹介が掲載されており、「うちの/特産品」欄に「黒糖ドーナツ棒(熊本市)/こだわりの素材 人気に」の見出しとともに、やや不鮮明だが、横長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標(横書き)」が表示されている商品の包装用箱と、その右横に同じくやや不鮮明だが、縦長の包装用箱の蓋の正面部分に「使用商標」が表示されている商品の包装用箱とが掲載表示されている。
(カ)百貨店等カタログ(甲第13号証ないし甲第15号証、甲第23号証及び甲第30号証ないし甲第42号証)
(a)甲第13号証は、「グリーンコープ」2004年発行の商品カタログ32・33号で、26頁の左上角の「BEST 1」の枠に、皿に盛りつけられた商品と、その左上に、四角形の金属製の商品収納箱が掲載されており、該商品収納箱の横部分に「使用商標(横書き)」が表示されている。
(b)甲第14号証は、(財)ポスタルサービスセンター発行の商品カタログ「ふるさと小包」で、表紙の上部に「2004年 平成16年度 有効/期間 平成16年4月1日から/平成17年3月31日」の表示があり、2枚目の左側下に、四角形の金属製の商品収納箱と、縦長の商品の包装用箱4個が掲載されており、該金属製の商品収納箱の横部分に「使用商標(横書き)」が表示され、また、縦長の包装用箱の蓋の正面部分に、「使用商標(色つき)」がそれぞれ表示されている。
(c)甲第15号証は、表紙の上部左角に「2004年夏/高島屋/通販カタログ」と表示されている高島屋百貨店通信販売用商品カタログ「ごちそう讃」で、45頁の左側やや上部に、籠に盛りつけられた商品と、その右下に、四角形の金属製の商品収納箱が掲載されており、該商品収納箱の横部分に、やや不鮮明ではあるが「使用商標(横書き)」が表示されている。
(d)甲第23号証は、表紙の上部左角に「2005年秋/高島屋/通販カタログ」と表示されている高島屋百貨店通信販売用商品カタログ「ごちそう讃」で、31頁の左側上部に、盛りつけられた商品と、その右下に、四角形の金属製の商品収納箱が掲載されており、該商品収納箱の横部分に、不鮮明ではあるが「使用商標(横書き)」が表示されている。
(e)甲第30号証は、9頁の上部に大きく「ギフトコレクション/…/全国お届け送料300円/特別ご奉仕期間 平成13年12月20日迄のご注文・ご予約」と記載されている株式会社フジバンビの商品カタログ「かどの駄菓子屋/商品のご案内」で、1頁、9頁及び10頁全面に「黒糖ドーナツ棒」の紹介が掲載されており、各頁中には「使用商標(色つき)」が表示されている縦長の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(f)甲第31号証は、表紙の上部左角に「2002年 春/かどの駄菓子屋/商品のご案内」と表示されている株式会社フジバンビの商品カタログで、表紙の裏頁と2枚目の裏頁全面に「黒糖ドーナツ棒」の紹介が掲載されており、各頁中には「使用商標(色つき)」が表示されている縦長の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(g)甲第32号証は、表紙の上部左角に「2002年 夏/かどの駄菓子屋/商品のご案内」と表示されている株式会社フジバンビの商品カタログで、1頁、9頁及び10頁全面に「黒糖ドーナツ棒」の紹介が掲載されており、各頁中には「使用商標(色つき)」が表示されている縦長の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(h)甲第33号証は、表紙の上部左角に「2003年 春/かどの駄菓子屋/商品のご案内/…/第24回全国菓子大博覧会 九州in熊本/リッチモントクラブ賞受賞」と表示されている株式会社フジバンビの商品カタログで、表紙の裏頁と2枚目の裏頁全面に「黒糖ドーナツ棒」の紹介が掲載されており、各頁中には「使用商標(色つき)」が表示されている縦長の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(i)甲第34号証は、表紙の上部左角に「2003年 夏/かどの駄菓子屋/商品のご案内/…/第24回全国菓子大博覧会 九州in熊本/リッチモントクラブ賞受賞」と表示されている株式会社フジバンビの商品カタログで、1頁、11頁及び12頁全面に「黒糖ドーナツ棒」の紹介が掲載されており、各頁中に「使用商標(色つき)」が表示されている縦長の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(j)甲第35号証ないし甲第42号証は、いずれも2003年冬から2006年(平成18年3月10日発行)迄の株式会社フジバンビの商品カタログで、その中の甲第36号証ないし甲第38号証の商品カタログの表紙の部分に「第24回全国菓子大博覧会 九州in熊本/リッチモントクラブ賞受賞」と表示されており、また、甲第42号証のみ大判のカタログであり、内容は上記甲第30号証ないし甲第34号証までのカタログの内容とほぼ同じである。
(キ)販売促進キャンペーン販売申し込み返信はがき(甲第28号証)
甲第28号証は、「【申込期限】/平成17年6月20日(月)迄」の記載のある株式会社フジバンビの販売促進キャンペーンの販売申し込み返信用はがきで、「黒糖ドーナツ棒/トクトクキャンペーン」の表示の下に、「使用商標(色つき)」が表示されている縦長の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(ク)インターネット情報(甲第45号証ないし甲第51号証)
(a)甲第45号証は、2005/12/18付け打ち出しのWEBサイト「asahi.com MY TOWN熊本」における被請求人の商品紹介記事で、2004年04月09日の日付けで「黒糖ドーナツ棒」の紹介が掲載されている。
(b)甲第46号証は、2004/10/31日付け打ち出しのテレビ熊本2004年9月4日放送、インターネット中継の記事で、「“黒糖ドーナツ棒”の製造工場から生中継」の見出し下、中央部分に「使用商標(色つき)」が表示されている縦長の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(c)甲第47号証は、2006/06/26日付け打ち出しのインターネットショッピングモール「QVC」のWEBサイトで、「使用商標(横書き)」が表示されている四角形の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(d)甲第48号証は、2006/06/26日付け打ち出しのインターネットショッピングモール「シャディOnline」のWEBサイトで、「使用商標(横書き)」が表示されている四角形の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(e)甲第49号証(1)ないし同(3)は、2006/06/26日付け打ち出しのインターネットショッピングモール「Yahooショッピング」のWEBサイトで、「使用商標(横書き)」が表示されている四角形の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(f)甲第50号証は、2005/05/07日付け打ち出しのインターネット検索サイト「楽天」で、1枚目に「Augast 10.2004」の日付と、商品の写真とともに「黒糖ドーナツ棒」の紹介が掲載され、その2枚目に「使用商標(色つき)」が表示されている縦長の商品の包装用箱が掲載表示されている。
(g)甲第51号証は、被請求人の「黒糖ドーナツ棒」に関する インターネットブログ集(抜粋)で、2005/12/18日付け打ち出しの「黒糖ドーナツ棒」をキーワードとする「Yahoo」のインターネット検索サイトでは140件ヒットしており、「ドーナツ棒」をキーワードとする検索サイトでは10件ヒットしており、同じく2005/12/18日付け打ち出しの「黒糖ドーナツ棒」をキーワードとする「gooブログ」のインターネット検索サイトでも7件ヒットしている。
(ケ)本件商標を使用した商品の発売手続き相互確認書及び同商品の微生物検査報告書(甲第52号証ないし甲第55号証)
(a)甲第52号証は、「発売手続き相互確認書」と表記されている「日本生協連」と被請求人との間の相互確認書で、商品名の欄に「CO 黒糖ドーナツ棒/12本」、「発売日/区分」の欄に「96年4月21日」等の記載がなされている。
(b)甲第53号証は、「検査報告書(A)」と表記されている「日本生協連 食品3部」宛の「日本生活協同組合連合会/商品検査センター」の検査報告書で、「検査品の名称」の項に「CO-OP 黒糖ドーナツ棒(試作品)」、「微生物検査実施日」の欄に「96.1.31」等の記載がなされている。
(c)甲第54号証は、同じく「検査報告書(A)」と表記されている「日本生協連 食品3部」宛の「日本生活協同組合連合会/商品検査センター」の検査報告書で、「検査品の名称」の項に「CO-OP 黒糖ドーナツ棒(試作品)」、「1996年01月29日 当商品検査センターに依頼された検査品について検査した結果は下記の通りです。…」等の記載がなされている。
(d)甲第55号証は、「発売手続き相互確認書」と表記されている「日本生協連」と被請求人との間の相互確認書で、商品名の欄に「CO 黒糖ドーナツ棒/20本」、「発売日/区分」の欄に「96年11月21日」等の記載がなされている。
(コ)カタログ通販商品手配依頼書(甲第56号証)
甲第56号証は、「96 初秋特選カタログ通販商品手配依頼書(8/19?9/19)と表記されている「株式会社フーズコム」と被請求人との間のカタログ通販商品の手配依頼書で、商品名の項に、「黒糖ドーナツ棒」、内容量の項に「1缶(80本入)」、発注日、納品日等の記載がなされている。
(サ)商品出荷FAX送付案内(甲第57号証)
甲第57号証は、平成12年11月27日付けの「日本生活協同組合連合会」宛の被請求人からの「FAX送付の案内」で、「下記の通り発信いたしますのでよろしくお願い申しあげます。/COOP 黒糖ドーナツ棒 8本/初回品検査検体 出荷の件/別紙の通り出荷いたしました」と記載されている。
(シ)日本生協連 商品検査センター宛の納品宅配便送付票(甲第58号証)
甲第58号証は、「受付日/平成12年12月4日」「届け予定日/12月6日」と記載されている被請求人から「日本生協連 商品検査センター」宛の「納品宅配便送付票写し」で、品名の欄に「黒糖ドーナツ棒初回品」と記載されている。
(ス)商品外箱現品(甲第59号証)
甲第59号証は、「商品外箱」の現品で、縦長包装用箱の上面部分(縦長の蓋の部分)に「使用商標(色つき)」が表示され、箱の横の部分には「使用商標(横書き)」が表示されている。
(セ)被請求人作成に係る「黒糖ドーナツ棒 販売経歴書」(甲第60号証)
甲第60号証は、被請求人作成に係る「黒糖ドーナツ棒 販売経歴書」で、「黒糖ドーナツ棒」の製造・販売に関する経歴が掲載されており、1983年(昭和58年)ドーナツ事業開始・ドーナツ屋(リングドーナツ)発売、1984年(昭和59年)棒状ドーナツ開発、1993年(平成5年)日本生協連学協支所販売企画「日本の郷土菓子フェアー」に採用され全国販売第1号となる、1994年(平成6年)生協の・・・2学期食品重点5品目に採用、…、2006年1月「商標願 黒糖ドーナツ棒」審判請求書提出、等の経歴が掲載されている。
(ソ)甲第61号証は、平成18年6月29日付けの「株式会社 大丸ホームショッピング」の証明書で、「(株)フジバンビ製造による黒糖ドーナツ棒を販売したことにより、下記の通りの売上げがあったことは、事実に相違ないことを証明します。/平成18年6月29日/平成10年2月?平成18年5月まで/売上高(千円) 72,230」の記載、「住所・・・、名称 株式会社 大丸ホームショッピング、証明責任者肩書 取締役営業部長 氏名…、押印」の各記載と責任者の押印がなされている。
(タ)甲第62号証は、平成19年1月15日付けの「株式会社 クリエーション」の証明書で、「当社は、商標『黒糖ドーナツ棒』に係る商品『黒糖入りドーナツ菓子』に関する別紙パンフレット『大丸ホームショッピング/用チラシ』を平成18年10月30日に40万部印刷したことを証明致します。/平成19年1月15日」の記載、「住所…、名称 株式会社 クリエーション、証明責任者肩書 営業部主任 氏名…、押印/※別紙としてパンフレットを添付し、割印をする。」の各記載と責任者の押印がなされている。そして、別紙のパンフレットの1枚目に、包装用箱の横の部分に「使用商標(横書き)」が表示されている商品の包装用箱が掲載されている。
(チ)甲第63号証は、平成19年1月26日付けの「日経印刷株式会社」の証明書で、「当社は、商標『黒糖ドーナツ棒』に係る商品『黒糖入りドーナツ菓子』に関する記事『CO‐OP NAVI 2006年8月号』を、平成18年7月13日に18,600部印刷したことを証明致します。/平成19年1月26日」の記載、「住所…、名称 日経印刷株式会社、代表取締役…、押印、証明責任者肩書 総務部長 氏名…、押印/※別紙としてパンフレットを添付し、割印をする。」の各記載と責任者の押印がなされている。そして、別紙のパンフレットの2枚目左中央部と左下角部に、縦長包装用箱の上面部分(縦長の蓋の部分)に「使用商標(色つき)」が表示されている商品の包装用箱が表示されている。
(ツ)甲第64号証は、平成19年1月26日付けの「コープ出版株式会社」の証明書で、「当社は、商標『黒糖ドーナツ棒』に係る商品『黒糖入りドーナツ菓子』に関する別紙のパンフレット『CO‐OP NAVI 2006年8月号』を、平成18年7月13日に18600部印刷したことを証明します。/平成19年1月26日」の記載、「住所…、名称 コープ出版株式会社 押印、代表取締役…、押印」の各記載と代表取締役の押印がなされている。
(テ)甲第65号証は、2006年(平成18年)9月9日付けの「日本経済新聞」で、「フジバンビ/黒糖ドーナツ棒 生産倍増」の見出し下に、被請求人の紹介記事が掲載されている。

イ 本件無効審判において提出された、乙第2号証ないし乙第9号証及び乙第12号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)乙第2号証は、「日本生活協同組合連合会」の証明書で、「添付のカタログ(写し)は、日本生活協同組合連合会・学校生活協同組合が、1994年8月に発行したものに相違ないことを証明します。また、その中に記載されている写真の、黒糖ドーナツ棒の文字を付したドーナツ菓子の外箱を使用して、株式会社フジバンビの黒糖ドーナツ棒を販売したことを証明します。/平成22年3月31日/住所…/名称 日本生活協同組合連合会/学協支所/支所長 印」の記載と押印がなされている。そして、査定不服における甲第29号証と同一のチラシの写しが添付されている。
(イ)乙第3号証は、「株式会社 大丸ホームショッピング」の証明書で、「添付の証明書(写し)の『(株)フジバンビ製造による黒糖ドーナツ棒を販売した』記載中で、販売に供給した『黒糖ドーナツ棒』の商標を付したドーナツ菓子を収容したパッケージは、添付カタログ(写し)に掲載の写真のものであることを証明します。/平成22年4月1日/住所…/名称 株式会社 大丸ホームショッピング/営業部 食品担当バイヤー… 印」の記載と押印がなされている。そして、査定不服における甲第61号証と同一の証明書(写し)と新たにカタログ(写し)(「大丸通信販売カタログ秋号別冊 食品特集 Vol.29/ご注文締め切り日平成15年10月31日(金)」と表記されているカタログで、2枚目の右上に「黒糖ドーナツ棒」に関する写真と紹介記事が掲載されている。)が添付されている。
(ウ)乙第4号証は、平成22年3月30日付けの「第24回全国菓子大博覧会 九州in熊本および褒賞について」と表記されている「熊本県菓子工業組合 理事長」の押印のある書面で、「20世紀の初めの明治44年(1911年)に、第1回帝国菓子飴品評会として開催されて以来今日まで、…全国菓子大博覧会は100年余りの歴史を重ねて来ました。…第24回全国菓子大博覧会九州in熊本では、名誉総裁 三笠宮寛仁親王、総裁 農林水産大臣、…菓子業者、菓子等関連業者、全国菓子工業組合に加入する大手、中小、零細企業、関連業者一体で構成された実行委員会組織により開催された由緒あるものであり、新聞社等が主催するものではありません。24回目の開催は、平成14年11月1日から平成14年11月18日まで熊本で52万人の入場者で開催され、また、25回目は平成20年4月18日より5月11日まで姫路城周辺で92万人もの入場者で開催され…」と記述され、その2枚目に「…第24回(熊本菓子博)褒賞は次の通りです。○内1…/○内2…/○内3、特別賞:世界菓子連盟会長賞、フランス菓子連盟会長賞、オーストラリア菓子連盟会長賞、リッチモントクラブ賞(説明別添)、ドイツ領事館賞、日本フードコーディネーター賞、スィートクラブ賞、華道家元賞/特別賞に制定されたリッチモントクラブ賞は公式に株式会社フジバンビ『黒糖ドーナツ棒』に授与したものであることを付け加えます。」と記述されており、さらに、別添説明の「『リッチモントクラブ賞』について」に「『リッチモントクラブ賞』は、(協)全日本洋菓子工業会(PCG)より、『世界洋菓子連盟会長賞』・『フランス菓子連盟会長賞』とともに、平成14年『第24回全国菓子大博覧会 九州in熊本(くまもと菓子博2002)』の折授与されたものです。全日本洋菓子工業組合の常任理事、ブールミッシュの吉田菊次郎先生のお世話で、上記の受賞が実現しました。全国菓子大博覧会は、寛仁親王殿下を名誉総裁に、明治44年から営々と続く歴史と伝統ある博覧会です。…」と記載されている。
(エ)乙第5号証は、協同組合全日本洋菓子工業会のインターネットホームページで、中程の常任理事の項に「吉田菊次郎(株式会社ブールミッシュ)」と掲載されている。
(オ)乙第6号証は、BOUL‘MICH(ブールミッシュ)のホームページで、吉田菊次郎が株式会社ブールミッシュを設立し、ブールミッシュの店主であることが記載されている。
(カ)乙第7号証は、フリー百科事典ウィキペディアの「全国菓子大博覧会」に関する項で、「概要」の下に「1911年(明治44年)、東京府・赤坂で、第1回『帝国菓子飴大品評会』が行われたのが始まりとされている。…この博覧会では品評会も行われ、優秀な作品・商品には、最高賞である名誉総裁賞・内閣総理大臣賞・農林水産大臣賞などが贈られ、…」と記載され、次頁に架けての「過去の開催地」の「回、年、開催地、開催会場」の欄に「24 2002年 熊本市 熊本城、グランメッセ熊本」「25 2008年 姫路市 姫路城」と掲載されている。
(キ)乙第8号証は、平成20年5月10日付けの第25回全国菓子大博覧会・兵庫における「褒賞状」の写しで、被請求人が名誉総裁である寛仁親王殿下より名誉総裁賞(技術部門)を授与された旨の記述があり、名誉総裁寛仁親王殿下及び第25回全国菓子大博覧会・兵庫の公印が押印されている。
(ク)乙第9号証は、第24回全国菓子大博覧会九州in熊本「リッチモントクラブ賞」の賞状とペナントプレート額入写真で、上記2(1)ア(イ)の査定不服における甲第5号証の「第24回全国菓子大博覧会九州in熊本リッチモントクラブ賞の賞状」の写しと同一の賞状の写しと認められる。
(ケ)乙第12号証は、平成22年3月26日付けの「合名会社 北川天明堂」の代表取締役の「陳述書」で、「第24回全国菓子大博覧会九州in熊本での褒賞(リッチモントクラブ賞)について、興味があるのでとの問い合わせがあったことについて陳述いたします。期日、時間は定かな記憶はありませんが、平成22年1月上旬に製菓会社という女性から電話があり、…社名、氏名を告げられたかどうかは記憶がありません。菓子博での私の立場は事務局長の立場で全体を総括する役目であり、褒賞については褒賞部が携わっていたため、詳しいことはわかりませんが、興味があるからとのことであったので、公式ではなく、開催時期も相当過ぎていたため、雑然と曖昧な返答をしたことに対して、また、このような告訴事案に使用するための問い合わせであったことを聞き大変困惑、後悔をしております。…菓子業者自らの利を得るための取り消し訴訟などにつきましては慎重なるご対応をお願い申し上げます。」と陳述されている。

(2)以上の被請求人の提出に係る各証拠を総合すると、以下の事実が認められる。
ア 本件商標と使用商標が、実質的に同一か否かについて
(ア)本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、右側やや上に「黒糖」、左側に「ドーナッツ棒」の各文字を二列に縦書きしてなるものであって、右側の「黒糖」の文字はやや細く、そして、左側の「ドーナツ棒」の文字はやや太く、かつ、片仮名をやや崩したように表し、いずれの文字も手書き風に表記されているものである。
(イ)使用商標について
上記被請求人の提出に係る査定不服における甲各号証よりすると、例えば、「商品外箱現品」(甲第59号証)ついてみると、該外箱は縦長の包装用箱であって、その上面部分(縦長の蓋の部分)が取引者、需要者に対していかなる商品であるか最も認識、把握されやすい部分といえ、その部分に表示されている「使用商標(色つき)」は、「黒糖」の文字に色彩が施されている点を除くと殆ど本件商標と同一といえる二列に縦書きされた「黒糖/ドーナツ棒」の文字であることが認められ、また、外箱の横の部分に表示されている「使用商標(横書き)」も、位置(方向性)との関係で横書きにしたものと思われるもので、前記同様「黒糖」の文字に色彩が施されている点を除くと殆ど本件商標と同一といえる「黒糖」及び「ドーナツ棒」の文字であることが認められる。
そして、他のチラシ(甲第7号証ないし甲第9号証、甲第22号証、甲第27号証及び甲第29号証)、カタログ(甲第13号証ないし甲第15号証、甲第23号証及び甲第30号証ないし甲第42号証)、インターネット情報(甲第45号証ないし甲第51号証)においても、上記「商品外箱現品」(甲第59号証)の場合とほぼ同様な方法で使用商標が商品に付されていると認められるものである。
(ウ)そうすると、被請求人の提出に係る査定不服における甲各号証を総合すると、被請求人が商品「黒糖入り棒状のドーナツ菓子」に使用している使用商標(色つき、横書きを含む。以下同じ。)は、実質的に本件商標と同一の範囲内の商標というべきものである。
イ 使用商標の使用の始期、使用期間、使用地域、売上高、広告方法等について
(ア)使用商標の使用の始期としては、上記(1)ア(エ)(f)の甲第29号証のとおり、1994年(平成6年)に日本生活協同組合連合会・学校生活協同組合の「チラシ」中に商品「黒糖入り棒状のドーナツ菓子」が掲載されており、該商品には本件商標と実質的に同一の範囲内の商標が付されていることが認められることからすれば、使用の頻度はともかく、被請求人は、少なくとも1994年(平成6年)には本件商標と実質的に同一の範囲内の商標(使用商標)を使用し始めたといえるものである。
(イ)使用商標の使用期間は、査定不服における甲各号証を総合すると、1994年(平成6年:甲第29号証)を始期として、本件商標の登録出願日(2005年(平成17年))以前の1996年(平成8年:甲第52号証ないし甲第56号証)、2000年(平成12年:甲第1号証)から2005年(平成17年:甲第2号証外)の間、及び今日においても継続して、商品「黒糖入り棒状のドーナツ菓子」に本件商標と実質的に同一の範囲内の商標(使用商標)を付して使用していたことが認められる。
ウ 使用地域、売上高、広告方法等については、以下のとおりである。
(ア)使用地域・使用した関係者については、熊本市(甲第3号証ないし甲第6号証外)及び日本生活協同組合連合会関係のみではなく、高島屋の通販(甲第15号証及び甲第23号証)、大丸ホームショッピングによる通販(甲第16号証)、夕刊フジによる広告(甲第21号証)、日本経済新聞の全国版による広告(甲第43号証)、インターネット等、特定の限られた地域のみでなく大手百貨店を通した通販により全国的規模の範囲ともいえるものである。
(イ)また、売上高については、日本生活協同組合連合会が、2000年4月から2006年5月において「96,024(千円)」(甲第1号証)、キッスビー健全食株式会社が、2001年3月から2006年5月の間において「7,076(千円)(税抜)」(甲第2号証」、株式会社大丸ホームショッピングが、平成10年2月?平成18年5月までの売上高「72,230(千円)」(甲第61号証)であったことが認められる。
(ウ)さらに、上記甲第3号証にあるよう鹿児島読売テレビ(KYT)及び熊本県民テレビ(KKT)によってテレビ広告され、また、上記甲第63号証にあるよう「商標『黒糖ドーナツ棒』に係る商品『黒糖入りドーナツ菓子』に関する記事『CO‐OP NAVI 2006年8月号』を平成18年7月13日に18,600部印刷したことを「日経印刷株式会社」が証明している。そして、上記のとおり、別掲の本件商標は、いずれの文字も手書き風に表記されている特徴のある構成・態様からなるものである。

(3)以上を総合すると、本件商標は、1994年(平成6年)の使用開始以来、その特徴ある態様と実質的に同一の範囲内の商標が、継続して商品の包装用箱に使用され、また、テレビ或いはカタログ等での広告に使用された結果、審決時において、需要者が被請求人の業務に係る商品であることを認識することができる商標であったということができるものであって、商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったとして登録されたものというべきである。

2 請求人の主張について
(1)使用商標を付した商品の使用の始期及び本件商標と使用商標との同一性(請求人主張の「認定事項1」)について
ア 請求人は、登録審決の認定に対し「平成6年(1994年)頃、本件商標と使用商標が同一の商標か不明である。」、「甲第61号証ないし甲第64号証による各証明書では平成18年当事の事実が述べられているだけであり、例えば、甲第62号証等に添付されたパンフレットでは使用商標が横書きされているのに対し、本件商標は二段縦書きされているから、商標法第3条第2項の要件を満たしていない。なお、査定不服における甲第1号証ないし甲第4号証(の証明書)の証明者は、本件商標(出願商標)と使用商標の同一性を理解した上で証明したかどうかは不明である。」旨述べ、「登録審決は、妥当な時期よりも早期から本件商標が使用(永年使用)されていたと認定しているから失当である。」旨、主張する。
イ しかしながら、前記1(1)イ(ア)(イ)のとおり、被請求人提出の乙第2号証の証明書には「日本生活協同組合連合会・学協支所」の支所長の公印が押印されており、また、乙第3号証の証明書には「株式会社 大丸ホームショッピング」の営業部の担当者の記名押印がされており、証明内容も不自然な点は見当たらないものである。
そして、各証明書に添付のカタログ(写し)の日付けも、請求人の主張する「…遅くとも平成18年おける使用…」ではなく、むしろ、「…本件商標を付した商品は、1994年(平成6年)頃から販売され、…」と認定した登録審決の日付けと合致するものであり、また、被請求人が実際に商品に付して使用していた使用商標もこれら乙第2号証及び乙第3号証よりすると、本件商標と実質的に同一の範囲内の商標といえるものである。
さらに、本件無効審判において提出された乙各号証と、被請求人の提出に係る上記査定不服における甲第1号証ないし甲第66号証とを総合すると、本件商標と使用商標とは実質的に同一の範囲内の商標といえるものである。
したがって、上記の点に関する請求人の主張については、採用の限りでない。

(2)リッチモントクラブ賞と第24回全国菓子大博覧会の認定、及び本件商標を付した商品が継続して使用された結果、現在においは、需要者が請求人(本件無効審判の被請求人)の業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものと認め得るとした判断(請求人主張の「認定事項2」及び「認定事項3」)について
ア リッチモントクラブ賞の賞状と賞状中の表記について
請求人は、先ず「認定事項2は、不服審判の甲第5号証(「リッチモントクラブ賞」賞状)を見てのものと考えられる。」と述べ、続いて、「この賞状に記載の各表示からすると、二段縦書きされた使用商標を使用した商品が受賞したかどうかは不明である。むしろ、一連に楷書で横書きされた『黒糖ドーナツ棒』を付した商品が受賞したものとみることもできる。」旨述べ、更に続いて、賞状のサイン等の体裁が不自然であり、要は、「登録審決は、このリッチモントクラブ賞の受賞事実を過大評価したものである。」旨述べ、以下、理由を述べるとして「リッチモントクラブ」、「全国菓子博覧会」、「リッチモントクラブ賞」について言及している。
そこで、リッチモントクラブ賞の賞状とペナントプレート額入り写真(乙第9号証)を徴するに、日本語の表記方法、欧文字の表記方法及びペナントプレートを含め、その全体の体裁が格別不自然とはいえないものであり、そして、例えば、賞状に表記する商品名が別掲に示す本件商標のような態様の場合、常に同一の態様の商標を商品名として賞状そのものに表記するのが一般的とまではいえないし、本件の賞状中の表記のように一連に楷書で「黒糖ドーナツ棒」と横書きしたとしても取り立てて不自然とまではいえないものである。
そうすると、請求人の上記「一連に楷書で横書きされた『黒糖ドーナツ棒』を付した商品が受賞したものとみることもできる。」旨、及び「賞状のサイン等の体裁が不自然である。」旨の各主張は、採用の限りでない。
イ 「リッチモントクラブ」について
請求人は、「リッチモント製菓学校あるいはリッチモントクラブに関係する洋菓子と、本件商標の指定商品とは、大きくジャンルが異なる菓子である。したがって、揚げ菓子で沖縄由来の菓子(本件商標の指定商品)に、スイス菓子で有名なリッチモントクラブを結びつけることは、通常あり得ないことであり、不自然かつ極めて異様である。」旨主張する。
しかし、上記アのとおり、リッチモントクラブ賞の賞状は、その全体の体裁が格別不自然とはいえないものであり、また、例えば、乙第4号証の「第24回全国菓子大博覧会 九州in熊本および褒賞について」(熊本菓子工業組合 理事長)の2枚目に「…第24回(熊本菓子博)褒賞は次の通りです。…○内1/○内2…/○内3、特別賞:世界菓子連盟会長賞、フランス菓子連盟会長賞、オーストラリア菓子連盟会長賞、リッチモントクラブ賞(説明別添)、ドイツ領事館賞、日本フードコーディネータ賞、スィートクラブ賞、華道家元賞/特別に制定されたリッチモントクラブ賞は株式会社フジバンビ『黒糖ドーナツ棒』に授与したものであることを付け加えます。」と記述されており、さらに、説明別添の「『リッチモントクラブ賞』について」に「『リッチモントクラブ賞』は、(協)全日本洋菓子工業会(PCG)より、『世界洋菓子連盟会長賞』・『フランス菓子連盟会長賞』とともに、平成14年『第24回全国菓子大博覧会 九州in熊本(くまもと菓子博2002)』の折授与されたものです。…全国菓子大博覧会は、寛仁親王殿下を名誉総裁に、明示44年から営々と続く歴史と伝統ある博覧会です。/※1 (協)全日本洋菓子工業会…/※2 吉田菊次郎先生 (株)ブールミッシュ 代表取締役…」と記載されており、さらにまた、乙第5号証及び乙第6号証に吉田菊次郎が「全日本洋菓子工業会」の常任理事であり、「(株)ブールミッシュ」の代表取締役で店長であるとの記載が認められる。
以上の乙第4号証ないし乙第6号証よりすると、被請求人の製造販売に係る「黒糖ドーナツ棒」が揚げ菓子で沖縄由来の菓子であったとしても、洋菓子との関係で不自然かつ極めて異様であるとする格別の理由はないというのが相当であるし、また、本件商標の登録審決日(平成19年7月11日)より5年も前の上記「第24回全国菓子大博覧会 九州in熊本」で褒賞を受けているものである。
そして、乙第7号証及び乙第8号証よりすると、本件商標の登録審決後の平成20年5月10日の「第25回全国菓子大博覧会・兵庫」においても被請求人の製造販売に係る「黒糖ドーナツ棒」が名誉総裁である寛仁親王殿下より名誉総裁賞(技術部門)を授与されていることが認められ、審決後においても、「黒糖ドーナツ棒」が被請求人の製造販売に係る菓子であると取引者、需要者に認識されていると認められる。
したがって、上記の点に関する請求人の主張にも理由がない。
ウ 「全国菓子博覧会」について
請求人は、上記イの「第24回全国菓子大博覧会」が平成14年11月1日から同年11月18日まで、熊本で開催されたことを認めた上で、同博覧会の主催者の実体は作業員7名程度の小さな新聞社の運営である旨述べ、続いて、「第25回全国菓子大博覧会」賞のランクについて「…上記各賞のうち名誉総裁賞よりも下のランクの賞はもとより、就中、上記各賞にもれた者に温情で臨時に付与される賞では、なおさら受賞価値を過大評価するのは、実情に反し全くの誤りといわざるを得ない。」旨主張している。
しかしながら、上記の「第24回全国菓子大博覧会 九州in熊本および褒賞について」(熊本菓子工業組合 理事長)(乙第4号証)には、「20世紀の初めの明治44年(1911年)に、第1回帝国菓子飴品評会として開催されて以来今日まで、…全国菓子大博覧会は100年余りの歴史を重ねてきました。…第24回全国菓子大博覧会九州in熊本では、名誉総裁 三笠宮寛仁親王、…行政、菓子業者、菓子関連業者、全国菓子工業組合に加入する大手、中小、零細業者、関連業者一体で構成された実行委員会組織により開催された由緒あるものであり、」と記述されており、主催者側の者の主張である点を差し引いても、賞のランクが低く温情で臨時に付与される賞とは評価できないものである。そして、乙第7号証よりすると、「全国菓子博覧会」は、1911年(東京府)から2008年(姫路市)まで不定期に開催されてきているものであることが認められる。
したがって、上記の点に関する請求人の主張にも理由がない。
エ 平成21年11月19日(木)現在の報告書(甲第8号証)について
請求人は、該報告書の「4、」にあるように、「被請求人の広報担当者自体が、『リッチモントクラブ賞の内容は、沿革、組織運営、認証の仕組み等は分からない。又その賞がその時だけのものか、現在も継続しているのかは分からない。』と説明に窮する有様であり、上記誇大広告と著しく矛盾する。」旨述べ、続いて「被請求人が主張するリッチモントクラブ賞の受賞は、上記各賞の受賞ができなかった被請求人の立場を、開催者である全菓連がおもんばかって、取って付けたように臨時に付与したものと見るのが相当である。」旨主張する
しかし、被請求人の提出に係る平成22年3月26日付け「合名会社 北川天明堂」の代表取締役の「陳述書」(乙第12号証)によれば、「…社名、氏名を告げられたどうかは記憶にありません。菓子博での私の立場は事務局長の立場で全体を総括する役目であり、褒賞については褒賞部が携わっていたため、詳しいことはわかりませんが、興味があるからとのことであったので、公式ではなく、開催時期も相当過ぎていたため、雑然と曖昧な返答をしたことに対して、また、このような告訴事案に使用するための問い合わせであったことを聞き大変困惑、後悔をしております。…」と陳述している箇所があり、「合名会社 北川天明堂」の代表取締役自身が「リッチモントクラブ賞」における褒賞に関する詳細を知らないとしても極めて不自然とまではいえないというべきであるし、また、同様に被請求人の会社の社員が褒賞の内容をよく知らなかったことも不自然とはいえないものである。
以上を総合すると、上記請求人の主張は、いずれも採用の限りでない。

3 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同条第2項に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項に規定により、その登録を無効とすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)


審理終結日 2010-09-13 
結審通知日 2010-09-15 
審決日 2010-10-13 
出願番号 商願2005-368(T2005-368) 
審決分類 T 1 11・ 17- Y (Y30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清棲 保美 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 田中 亨子
野口 美代子
登録日 2007-09-14 
登録番号 商標登録第5076547号(T5076547) 
商標の称呼 コクトードーナツボー、ドーナツボー 
代理人 平野 一幸 
代理人 穴見 健策 
代理人 高宮 章 
代理人 武末 昌秀 

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