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審判番号(事件番号) データベース 権利
審判199830905 審決 商標
取消200530788 審決 商標
審判199831328 審決 商標
審判199830904 審決 商標
取消2008300167 審決 商標

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審決分類 審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X28
管理番号 1251708 
審判番号 取消2010-300869 
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-08-05 
確定日 2012-02-02 
事件の表示 上記当事者間の登録第5276520号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5276520号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5276520号商標(以下「本件商標」という。)は、「Chromax」の文字を標準文字で書してなり、平成20年4月8日に登録出願、第28類「ゴルフボール,ゴルフ用具」を指定商品として、平成21年10月30日に設定登録され、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第15号証(枝番号を含む。ただし、枝番号のすべてを引用する場合は、その枝番号を省略する。)を提出した。
1 取消事由
本件商標の登録は、商標法第53条の2の規定により取り消されるべきである。

2 取消原因
(1)請求人
請求人は、世界貿易機関加盟国である台湾に所在する法人であって、ゴルフボール、ゴルフ用具を製造・販売する者であり、2008年3月1日に、第28類「ゴルフボール、ゴルフクラブ、ゴルフクラブヘッド、ゴルフクラブ用グリップ、ゴルフ練習用発球機、ゴルフクラブ用ラック、グリーンマーカー、キャディバッグ、スポーツバッグ、スポーツ用手袋」を指定商品として、台湾において登録された登録第01302952号商標(甲第2号証、以下「台湾登録商標」という。)の正当な権利者である。
(2)商標
台湾登録商標は、別掲に示すとおり、語頭の一文字が図形化されたものではあるものの、「Chromax」の文字が外観上明確に表示されており(甲第2号証)、「Chromax」と同一の称呼及び観念が生じる。したがって、台湾登録商標と本件商標とは類似の商標である。
(3)指定商品
本件商標に係る指定商品は、「ゴルフボール、ゴルフ用具」である(甲第1号証)のに対し、台湾登録商標に係る指定商品は「ゴルフボール、ゴルフクラブ、ゴルフクラブヘッド、ゴルフクラブ用グリップ、ゴルフ練習用発球機、ゴルフクラブ用ラック、グリーンマーカー、キャディバッグ、スポーツバッグ、スポーツ用手袋」である(甲第2号証)。したがって、台湾登録商標の指定商品と本件商標の指定商品とは同一又は類似である。
(4)商標権者と請求人との関係
(なお、本件商標の商標権者の一人である榎本考修は、他の商標権者であるアイエム株式会社(以下「アイエム」という。)の代表者である。これらを合わせていうときは、以下、単に「商標権者」という。)
ア 商標権者は、平成19年5月18日から、少なくとも本件商標の登録出願日である平成20年4月8日までは、請求人が製造し台湾登録商標を付したゴルフボール(以下「請求人商品」という。)の、日本国内における総販売元であった者であり、請求人の代理人としての地位を有する者であった。
すなわち、上記期間において、請求人は、商標権者を日本国内におけるサブ・エージェントと認めており、また、請求人及び商標権者共に、商標権者は、事実上の日本国内における販売代理店と認識している程、両者間には格別の信頼関係が存在した。
また、上記期間のうち、平成20年3月9日までは、日本市場向け請求人商品の全ては、請求人と代表者が同一であり実質的に同一視できる「中日はん條股ふん有限公司」(英語名:JOHN’S ELECTRODE MFG.CO.,LTD.、甲第3号証及び甲第4号証。以下「中日はん條」という。)を介して、日本国内の輸入代理店で、エージェントとして請求人と契約上の関係にある「関西チェア株式会社」(以下「関西チェア」という。)に販売され、さらに、関西チェアと代表者が同一であり実質的に同一視できる「有限会社関西ゴルフ設備」(以下「関西ゴルフ設備」という。)から商標権者に販売されるという販売体系が形成されており、商標権者は、請求人の販売体系に組み込まれていた(甲第5号証ないし甲第12号証)。なお、平成20年3月10日以降は、関西ゴルフ設備と商標権者との間に、商社である「明商株式会社」(以下「明商」という。)が介在するようになったが、日本市場向けの請求人商品が全て商標権者に引き渡され、商標権者が請求人の販売体系に組み込まれていたという事実に変わりはない。
イ 甲第5号証は、平成20年2月22日?24日に開催された日本最大のゴルフ用品の展示会である「ジャパンゴルフフェア2008」の会場において、商標権者が配布した請求人商品のパンフレットであり、甲第6号証は、その時、報道関係者に配布された資料である。甲第7号証は、商標権者が作成したジャパンゴルフフェア2008の日程表である(なお、甲第7号証に記載の「押田社長」は、関西チェア及び関西ゴルフ設備の代表者であり、「林社長」は請求人の代表者である。)。甲第8号証は、ジャパンゴルフフェア2008終了後に、商標権者が作成した請求人商品のパンフレットである。また、甲第9号証は、請求人商品のパッケージのカラーコピーである。
これら商標権者が作成したパンフレット等には、いずれにも台湾登録商標が使用されていると共に、問い合わせ先として商標権者の名称と連絡先のみが記載されており、需要者・取引者等がこれらのパンフレット等に接した場合、「販売代理店」の明示はなくとも、そこに問い合わせ先として記載された唯一の会社が販売代理店であると認識するのが通常である。そして、甲第7号証にあるとおり、商標権者が販売代理店であると認識される態様のパンフレット等が、日本最大のゴルフ用品の展示会の会場で配布されることについて、請求人が認容していることがわかる。
したがって、甲第5号証ないし甲第9号証によれば、商標権者は、日本国内における請求人商品の販売代理店を自認しており、また、請求人もそれを認める程の信頼関係が存在し、明文の契約書は存在しないものの、事実上、商標権者は、請求人商品の販売に関する代理人であったことは明白である。
ウ 甲第10号証は、商標権者が販売代理店となる前の平成19年5月13日に、商標権者が、エージェントである関西チェアと共に請求人を訪れ、請求人商品の日本国内における販売代理店としての地位、すなわち、サブ・エージェントとしての承認を得るために用意した、請求人に向けたプレゼンテーション用資料である。
甲第10号証からは、商標権者は、(ア)請求人商品の日本における販売体系は請求人が決定する事項であること、(イ)日本国内における販売代理店となるには請求人の承認が必要であること、(ウ)日本国内における販売代理店と認められるには請求人との間に直接的な信頼関係を構築する必要があることを、十分認識していたことが示される。
なお、この訪問の後の平成19年5月18日、商標権者は、サブ・エージェントとして認められ、事実上の販売代理店として請求人の販売体系の中に組み込まれた。
エ 甲第11号証は、2007年(平成19)年3月29日から2008年(平成20年)2月18日までの間に、中日はん條から関西チェアに向けて輸出した請求人商品の送り状(インボイス)であり、甲第12号証は、平成19年4月9日から平成20年3月4日までの間に、関西ゴルフ設備が商標権者に請求人商品を引き渡した際に商標権者に宛てた納品書である。また、参考図(審判請求書7頁)は、甲第11号証及び甲第12号証に記載の数量に基づく、請求人商品の日本への輸出数量累計及び商標権者への引渡し数量累計のグラフを示している。
甲第11号証によれば、平成19年3月29日から平成20年2月18日までの、請求人商品の日本への輸出数量は、パック換算で52,476パックである。それに対して、甲第12号証によれば、平成19年4月9日から平成20年3月4日までの、請求人商品の商標権者への引渡し数量は、パック換算で49,604パックであり、輸出数量のほとんど全てが平成20年3月4日までに商標権者に引き渡されていることがわかる。さらに、参考図に示すように、日本への輸出数量と商標権者への引渡し数量とはほぼ同じ上昇カーブを描いており、上記期間においては、商標権者からの発注に応じて請求人から日本に輸出されていたことが明らかである。すなわち、請求人から日本市場向けに輸出された請求人商品は、商標権者がサブ・エージェントとして請求人に認められる前から、商標権者に引き渡されており、したがって、請求人と商標権者との間には継続的な取引により信頼関係が形成され、商標権者は、請求人の販売体系に組み込まれていたのみならず、日本市場に流通する請求人商品は、全て商標権者から流出していたのである。
なお、前述のとおり、平成20年3月10日からは、関西ゴルフ設備と商標権者との間に明商が介在するような販売体系に変更されたため、平成20年3月4日が関西ゴルフ設備と商標権者との直接の取引の最後となり、平成20年3月4日時点で関西ゴルフ設備が保有する請求人商品の在庫は、平成20年3月10日以降に明商に引き渡されている。
オ 以上のように、商標権者は、請求人の代理人としての地位を有していたものであることは明白であり、本件商標の出願日に照らしても、商標権者が商標法第53条の2の「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であったもの」に該当することは明らかである。
(5)承諾及び正当理由
当然ながら、請求人は、商標権者が商標登録出願することについて承諾した事実は何ら存在しない。また、商標権者が本件商標の登録出願をする何らの正当な理由も存在しない。

3 答弁に対する弁駁
(1)正当な理由の根拠
ア 宣伝広告による周知・著名性について
被請求人は、多大な宣伝広告費を使ったことにより、請求人商品の日本市場を確立し、周知・著名性を獲得するに至った旨主張する。
しかし、被請求人は、本件商標の量的な使用状況について一切証拠を提示しておらず、周知・著名性についての主張は根拠を欠くものである。また、被請求人が宣伝広告の例として提出した乙第3号証の1ないし5については、これらがいつ・どのような媒体に掲載されたのか等について一切明らかにされておらず、出願時での周知・著名性の証拠に到底成り得るものではない。
また、被請求人の主張は、以下のとおり、譲渡数量の観点から明らかに失当である。
商標権者が、サブ・エージェントたる地位の承認を請求人から得るべく、平成19年5月13日に請求人を訪れた際に、商標権者は、請求人商品の販売数値目標を提示しており(甲第10号証)、請求人は、商標権者が掲げた目標販売数量を含め総合的に検討した結果、商標権者をサブ・エージェントとして承認した。
しかし、商標権者が実際に販売した数量は、上記目標販売数量の僅か十分の一にも満たない(弁駁書添付の参考図2参照)。すなわち、この販売数量をもって、請求人商品の日本市場を確立したとは到底言えないばかりか、本件商標につき周知・著名性を獲得したとも到底言えない。
したがって、商標権者は、本件商標につき周知・著名性を獲得しておらず、さらにはそれに基づく正当な理由も何ら存在しない。
なお、そもそも自己の事業を保護するという目的は、後述のように、商標法第53条の2が定められた趣旨を鑑みて、本規定における正当な理由にはなり得ないと思料する。
イ 事務管理目的への該当性について
(ア)被請求人は、本件商標につき、請求人の立場から見ても商標権者が商標管理をすることが必要であった、と、あたかも本件商標の出願が事務管理目的であったかのような主張をした上で、事務管理目的は正当な理由に該当するとの学説を引用し(乙第4号証)、商標権者の出願には正当な理由が存在する旨の主張を展開する。
しかし、商標権者が「自己の事業を保護するため」出願した、と自認するように、本件商標の出願は、専ら自己の利益を目的としたものである。さらに、請求人の望む水準よりはるかに少ない数量しか販売できない商標権者に商標権を半永久的に独占させることが、請求人の利益に反することは明らかである。
したがって、本件商標の出願が事務管理目的ではないことは明白である。
(イ)さらに、本件商標の出願は、不正の目的でされたものである。
甲第13号証の1ないし3は、平成21年12月21日付で、商標権者から請求人に宛てた電子メール(写し)であって、本件商標の登録後の平成21年12月19日に、請求人代表者が商標権者と面談した際の議事録と商標権者から請求人に宛てたメッセージとから構成される。この議事録に記載のとおり、面談の際、請求人は、本件商標の譲渡を申し入れたのに対し、商標権者は「台湾と日本の商標は全く別物である。」としてこれを拒否した。さらに、商標権者から請求人に宛てたメッセージ中に、「貴社は日本市場で今後も販売を続けたいと考えていますか? もし、その意思があるのでしたら、過去の経緯は忘れて当社と直接取引するのが理想的だと思います。」とあるとおり、商標権者は、請求人の日本におけるエージェントである関西チェアを流通経路から排除するとともに直接取引をするよう求める等、不当な要求を請求人に突きつけている。
したがって、本件商標の出願は、自らが販路を独占するため、不正な目的で出願されたことは明白であり、正当な理由は何ら存在しない。
なお、商標権者は、甲第13号証の3で、請求人に対し、関西チェアと独占販売契約を結んだこと、関西チェアの代表者が商標権者の営業を妨害したこと、等を主張しており、また、これらと同じ主張を、乙第1号証に係る訴訟で展開していた。しかし、上記商標権者の主張は、事実ではなく、また、後述のように、裁判所により全て棄却されたことを付け加える(甲第14号証)。
(ウ)また、被請求人は、「平成20年(2008年)12月に、(中略)日本における商標権もなく商標出願もされていなかったことが判明した。そこで、アイエム(榎本幸正)は、(中略)商標権も、総代理店であるアイエムが持つべき旨の発言をした。」と主張する。
しかし、本件商標の出願日は平成20年4月8日であり、平成20年12月には既に商標権者により本件商標の出願がされていたのであるから、上記主張は事実と明らかに矛盾するものである。また、被請求人は、あたかも自らが本件商標の出願を行うことを事前に宣言したかのように主張するが、商標権者が本件商標の出願をする意思を事前に表明した事実は全くない。請求人が本件商標の出願の存在を知ったのは、平成21年8月ころである。平成20年3月10日以降、販売体系が一部変更されたため、自らの意思で市場をコントロールすることを企図した商標権者が、それから1ヵ月も経ない同年4月8日に密かに本件商標の出願をしたと考えるのが自然である。
ウ good willの形成について
被請求人は、「商標権者が多大な投資をして商標を周知・著名にした」と主張し、さらに、乙第4号証に記載の学説を引用し、本件商標の出願には正当な理由が存在する旨の主張を展開する。
しかし、前述のとおり、商標権者が本件商標を周知・著名にしたとは到底言えない。仮に商標権者の努力により幾らかのgood willが形成されていたとしても、公正な国際取引を確保するために規定された商標法第53条の2の適用を免れるほどの信用が本件商標に化体していたとは到底言えない。
したがって、仮に被請求人が主張するように外国の学者による少数説を採用したとしても、本件商標の出願に正当な理由が存在したとは到底言えない。
なお、そもそも自己の事業を保護するという目的は、商標法第53条の2が定められた趣旨をかんがみて、本規定における正当な理由とはなり得ない。
また、被請求人は、「請求人が取り上げることは信義則に反する」と主張するが、先述のとおり、商標権者は、請求人の承諾を得ることなく商標登録を受け、商標権の譲渡の申し入れに対してはこれを拒否しており、これらの商標権者の行動こそが信義則に反する。
エ その他の被請求人の主張について
被請求人は、商標権者と関西ゴルフ設備との間で独占販売契約が締結された旨主張し、乙第1号証を提出する。
被請求人の上記主張及び乙第1号証により正当な理由が立証されるものではない。すなわち、請求人のエージェントである関西チェアは、商標権者に日本国内における請求人商品の独占販売権を付与していない。また、乙第1号証に係る訴訟において、原告たる商標権者は、関西ゴルフ設備と独占販売契約を締結した旨を主張したが、裁判所は、原告たる商標権者の訴えを全て棄却した(甲第14号証)。
(2)正当な理由への該当性
被請求人は、多大な宣伝広告費を投じた自己の事業を保護するためという理由は、商標法第53条の2の規定における正当な理由に該当する、と主張する。
ところで、商標法第53条の2は、パリ条約のリスボン改正で採択されたパリ条約第6条の7の規定を実施するために定められたものである。輸入商品に使用されている商標が、代理店により輸入先のメーカーや商社の承諾を得ないで出願されるのは、多くの場合、国内における自己の代理店としての独占的な地位を確保することによって先行投資の効果が相手方の契約破棄・取引の停止等のために喪失することを防ぐことを目的として行われるが、外国輸出業者等の立場からすれば、このような出願が登録される場合においては、自己の意思に反して特定の者に一手販売権を付与しなければならないことになる場合もあり、仕向国の市場を自己の意思によりコントロールすることが不可能となる。そこで、公正な国際取引を確保することの必要性からして、パリ条約第6条の7を規定することより、このような出願に対し輸出国の商標権者がこれに介入する途が開かれたものである(甲第15号証)。
すなわち、パリ条約第6条の7及び商標法第53条の2の趣旨に鑑みると、本件商標こそまさに、公正な国際取引を確保するために登録から排除されるべき商標である。
仮に正当な理由が存在するとして、本件商標の商標登録が維持されれば、請求人自身による日本国内市場のコントロールが不可能となるばかりか、目標販売数量の僅か十分の一にも満たない販売数量しか挙げられない商標権者に日本国内での販売を半永久的に独占させ、請求人による販路再構築を妨げるという事態を招き、公正な国際商取引を阻害することになる。
したがって、被請求人が主張するような自己の事業を保護するという目的が、商標法第53条の2の規定における正当な理由に該当することはない。
(3)まとめ
以上のように、本件商標の出願が正当な理由があってなされた、との被請求人の主張は失当である。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証(枝番を含む。)を提出した。
1 正当理由について
請求人は、本件商標の出願が正当な理由がなくなされた旨を主張するが、後記2のとおり、本件商標は、商標権者が多大な投資をした自己の事業を保護するために、出願したものであり、その出願には、正当な理由がある。

2 本件商標の出願の経緯
(1)商標権者は、平成19年5月13日に、エージェントである関西チェアの代表者と共に請求人を訪れ、平成19年5月18日、商標権者は、サブ・エージェントとして認められた。
乙第1号証は、商標権者を原告とし、関西ゴルフ設備を被告とする訴状(写し)である。乙第1号証の4頁に記載のとおり、請求人と実質的に同一視できる台湾のメーカー(SUREWAY)は、関西チェアに日本での独占的販売権を与えており、そして、関西チェアと実質的に同一である関西ゴルフ設備が、日本での独占販売権を有していた。さらに、平成19年4月下旬、商標権者と関西ゴルフ設備との間で独占販売店契約が締結された。
それゆえに、日本市場に流通する請求人商品は、全て商標権者から流出していた。また、商標権者と請求人との間には、継続的な取引により信頼関係が形成され、商標権者は、請求人の販売体系に組み込まれていた。
(2)乙第2号証は、審判請求書7頁の参考図と同一図である。参考図のとおり、平成19年4月においては少量だった数量が平成20年2月に向かって急速に増加していることがわかる。この急速な増加は、商標権者の大々的な宣伝活動及び売り込みを繰り返した結果である。
そして、乙第1号証の4頁に記載のとおり、商標権者は、請求人商品の日本での独占販売店契約に基づいて、3000万円以上の宣伝広告費を使うと共に、甚大な販売量を誇るゴルフ量販店(つるやゴルフ、ゴルフ5など)、百貨店各社(大丸、三越など)のほか、100コース以上のゴルフ場を経営する外資系ゴルフ場グループ(PGMなど)にも請求人商品を納入し、販売量を順調かつ急速に増大させて、請求人商品の日本市場を確立し、周知・著名性を獲得するに至った(甲第5号証及び甲第6号証、甲第8号証の1及び2、甲第9号証の2)。
この間、請求人は、請求人商品について宣伝広告費を投入ないし負担したことはなく、当該宣伝広告費は、商標権者が負担した(乙第3号証の1?5)。
甲第10号証の4頁に記載の「私達は、直接営業で得た利益の多くを『広告、宣伝費』『プロモーション費』に使う考えをしているのです。」の言葉どおり、商標権者は、直接営業で得た利益の多くを「広告、宣伝費」「プロモーション費」に投じて、請求人商品の日本市場を確立したのである。
なお、請求人は、「甲第10号証からは、商標権者は、(ア)請求人商品の日本における販売体系は請求人が決定する事項であること、(イ)日本国内における販売代理店となるには請求人の承認が必要であること、(ウ)日本国内における販売代理店と認められるには請求人との間に直接的な信頼関係を構築する必要があることを、十分認識していたことが示される。」と主張するが、実際に、甲第10号証は、商標権者が「(ア)プロゴルファー、(イ)プロゴルフツアー、(ウ)各ゴルフ用品業者、(エ)各マネージメント会社、(オ)各ゴルフ雑誌、(カ)各テレビ局など、ゴルフ関係、媒体関係において、幅広く密な関係を持っております。これらの関係をフルに活用し、クロマックスを日本で認知させるべく、宣伝をし、販売をしていきたいと考えております。」、「全国に配置する、弊社の営業マンから末端の取り扱い店へ直接的な営業をかける事で正確な情報を伝え、実質的な販路を拡大していく。」と記載されている。すなわち、請求人商品の日本の販売体系は、請求人が決定する事項であるというよりもむしろ、商標権者が日本の販売体系を決定することを意味し、商標権者が有する日本での独占販売店契約に基づいてその販売体系で販売を実施していったというのが事実である。そして、請求人から、日本での請求人商品の具体的な販売体系や宣伝広告方針を指示されたこともなく、また、宣伝広告費の一部負担の申し出などもなかった。
(3)請求人商品に関し、商標権者は、関西ゴルフ設備の代表者から、請求人が実用新案権を有していることは知らされていたが、商標出願又は商標権の存在の有無については知らされていなかった。商標権者は、独占販売店契約に基づいて多大な広告宣伝・販売活動を実施しているのであるから、日本における商標出願又は商標権の存在が気になり、販売体系に明商が介在するように変更された後の平成20年12月に、明商において、明商の吉田、藪内、関西ゴルフ設備・関西チェアの代表者(押田)、アイエム(榎本考修、榎本幸正)とで会議をした際、請求人商品の知的財産権の存在を確認したところ、請求人商品は、日本において商標権もなく商標出願もされていなかったことが判明した。そこで、アイエム(榎本幸正)は、請求人商品についてはドメインネームも商標権も、総代理店であるアイエムが持つべき旨の発言をした。また、その時点において、台湾のメーカー(SUREWAY)及び関西ゴルフ設備・関西チェアは、ドメインネームの取得や商標登録などを含む宣伝広告の活動をする意思がなかった。
多大な広告宣伝・販売活動を実施している中、請求人が日本において商標権を持っていなかったことに驚き、また、請求人から、日本での商標出願は請求人自らが行う旨の明示的ないし黙示的な契約又は指示もなかったこともあり、商標権者が多大な投資をした自己の事業を保護するためには、商標権者が商標出願をすることが必要であり、また、請求人から供給される請求人商品を安定して販売するにあたっては、請求人の立場から見ても商標権者が商標管理をすることが必要であった。そして、請求人の介在者である明商及び関西ゴルフ設備・関西チェアの関係者に、日本において請求人商品の商標権又は商標出願が存在してないことの確認と、請求人商品のドメイン名及び商標権についてはアイエムが管理することを伝えたこともあり、平成20年4年8日に、本件商標の出願をした。
その後、本件商標は、出願の段階で、商標法第4条第1項第11号の拒絶理由を受けたが、商標権者は、先行登録商標によって、商標権者が多大な投資をした自己の事業が中止されてしまう危険性を感じ取り、自己の事業を保護するために、その先行登録商標を排除すべく不使用取消審判を請求した(取消2008-301479)。その結果、抵触する指定商品が取り消され、本件商標は登録に至ったものである。
(4)本来であれば、請求人が日本において請求人商品の商標権を確保し、あるいは、先行する同一又は類似の登録商標を排除した上で、商標権者が安心して、多大な投資をできるようにすべきところ、そのような対応もなく、また、請求人が日本において商標権を有していない情報も何ら提示せずに、商標権者が多大な投資を実行しながら自己の事業を行っていたのは非常に危険な状況であったことは客観的な事実である。また、請求人主張のとおり、商標権者と請求人との間には継続的な取引により信頼関係が形成されているところ、商標権者が多大な投資をして周知・著名にした「Chromax」を、その後において請求人が取り上げることは信義則に反すると思料される。そして、請求人が、日本国内の販売体系を企画して販売の指示をした訳もなく、また、請求人商品の広告宣伝費を投じた訳でもない中、商標権者には、多大な投資をした自己の事業を保護するために、商標出願をして商標権を獲得することについて正当な理由があったことは明らかである。
「商標〔第4版〕」(網野誠著:乙第4号証)には、商標法第53条の2に関し、「正当な理由がある場合としては、・・・代理店等が、外国の権利者のために他人に登録されたり侵害されたりするのを防ぐために事務管理の目的で出願したような場合には、本人に許諾を得た場合であると否とを問わず爾後にその旨を連絡したような場合には一応正当な理由があるものとして登録商標を取り消すことなく、まず民法の事務管理の規定によって処理されるべきものと考えられる。・・・代理人が多大の経費をかけてその商標を特定の商品を表示するものとして周知著名にしてgood willを形成したような場合においては、その商標を本人が取り上げるのは信義則に反するとしているものもあるとのことである。」と記載されている。
また、商標権者は、乙第1号証に記載したとおり、関西ゴルフ設備から妨害行為を受けており、まさに、本件商標の商標権は、商標権者が多大な投資をした自己の事業を保護するための権利となっており、それゆえに、商標権者の出願には、正当な理由があるのは明らかである。

3 むすび
以上のように、商標権者は、莫大な広告宣伝費を投資した自己の事業を保護するために本件商標を商標登録したものであり、本件商標の出願には、「莫大な広告宣伝費を投資した自己の事業を保護するために本件商標を商標登録した」という、商標法第53条の2の規定における「正当な理由」があることは明らかである。

第4 当審の判断
1 商標法第53条の2は、「登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるときは、その商標に関する権利を有する者は、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定し、パリ条約6条の7の規定を実施するため、すなわち、他の同盟国等で商標に関する権利を有する者の保護を強化し、公正な国際的取引を確保するために設けられた規定と解される。
そこで、本件商標の登録が上記条項の要件を満たすものであるか否かについて、以下検討する。

2 本件商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって、当該権利に係る商品又はこれらに類似する商品を指定商品とするものであるか否かについて
(1)パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者
甲第2号証の1ないし4によれば、請求人は、世界貿易機関の加盟国である台湾において、2007年(平成19年)7月27日に登録出願し、2008年(平成20年)3月1日に設定登録された、第28類「ゴルフボール、ゴルフクラブ、ゴルフクラブヘッド、ゴルフクラブ用グリップ、ゴルフ練習用発球機、ゴルフクラブ用ラック、グリーンマーカー、キャディバッグ、スポーツバッグ、スポーツ用手袋」を指定商品とする、別掲のとおりの構成よりなる登録第1302952号商標(台湾登録商標)の商標権を有する者であることを認めることができる(当事者間に争いのない事実。)。
(2)商標及び指定商品についての同一又は類似
本件商標は、前記第1のとおり、「Chromax」の文字を標準文字で書してなるものであり、その指定商品を第28類「ゴルフボール,ゴルフ用具」とするものである。そして、商標登録原簿及び職権で調査した事項によれば、本件商標の登録出願は、アイエムによって、平成20年4月8日にされ、当該商標登録出願より生じた権利は、平成20年11月27日に、その一部をアイエム内の榎本考修に譲渡され、平成21年10月30日に、アイエムと榎本考修を権利者として設定登録されたことを認めることができる。
これに対し、台湾登録商標は、別掲のとおりの構成よりなるものであるところ、語頭に位置する「C」の文字部分は図案化され、他の文字部分に比べて大きく表されているが、構成全体として「Chromax」の文字を表したものと理解されるものである。また、台湾登録商標は、前記(1)のとおり、「ゴルフボール」等ゴルフ関連の商品について使用される商標である。
そうすると、本件商標の指定商品は、台湾登録商標の指定商品中に含まれるものであるから、台湾登録商標の指定商品と同一又は類似の商品と認めることができる。
次に商標についてみるに、本件商標と台湾登録商標は、いずれも「Chromax」の文字よりなるものであるから、これより「クロマックス」の称呼を生ずるものである。また、両商標は、書体及び語頭の「C」において相違し、外観上看者に与える印象において多少異なるものであるとしても、その綴り字を同じくするものであるところからすれば、外観上相紛れるおそれがあることは否定できない。さらに、両商標は、いずれも特定の語義を有しない造語よりなるものと認めることができる。したがって、本件商標と台湾登録商標は、観念上比較することができないものであるとしても、同一の称呼を生ずる上、外観上も類似するものと認められ、いずれもゴルフ関連の商品について使用される商標であることを併せて全体的に考察すると、具体的な取引の実情において、本件商標を付した商品と台湾登録商標を付した商品との間で、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがある商標と認めることができるから、両商標は類似する商標というべきである(以上、当事者間に争いのない事実。)。
(3)まとめ
前記(1)及び(2)によれば、本件商標は、世界貿易機関の加盟国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標と類似する商標であって、その指定商品は、当該権利に係る商品と同一又は類似の商品というべきである。

3 本件商標の登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるか否かについて
(1)甲第5号証ないし甲第12号証の73、甲第14号証及び乙第3号証の1ないし5並びに請求の理由によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 商標権者は、台湾登録商標を表示した請求人商品に関するパンフレットを作成した(ただし、作成日は不明である。甲第5号証、甲第8号証の1及び2、乙第3号証の1)。その他、商標権者は、雑誌等に請求人商品の広告を掲載したが、その発行日は明らかではない(乙第3号証の2ないし5)。
また、パンフレットの下部には、「アイエム株式会社」(甲第5号証)、「お問い合せ先:アイエム株式会社」(甲第8号証の1)、「クロマックス総発売元 アイエム株式会社」(乙第3号証の1)等と記載され、雑誌の広告にも、「お問い合せ先 アイエムお客様相談室」などと記載されている。
イ 商標権者は、台湾登録商標を表示した請求人商品に関する、2008年2月22日付け報道関係者向け資料を作成した。該資料の下段には、「本件に関する取材、情報提供などのお問い合せ先/アイエム株式会社」と記載されている(甲第6号証)。
ウ 商標権者は、台湾登録商標を表示した「ジャパンゴルフフェア スケジュールとプロモーション」と題する資料を作成した。該資料には、「2月21日(木)」から「2月24日(日)」までのスケジュールが記載され、いずれの日にも、「夕食:榎本&押田社長&林社長・・」と記載されている(ただし、「年」についての記載はないが、曜日の記載からすると、2008年のものと推測される。甲第7号証)。
エ 商標権者は、台湾登録商標を表示した請求人商品に関するパッケージを作成した(ただし、作成日は不明である。甲第9号証の1及び2)。
オ 商標権者は、「クロマックスの販売について/アイエム株式会社」と題するプレゼンーテーション用資料を作成した。作成日は記載されていないが、FAXの送信日として「2007 05/04 FRI」との日付が表示されている。その内容は、「目的と方法」、「プロモーション」、「補足」とからなり、さらに、「ご返答」と記載された文書と「現段階の生産予定は、下記の売上げ見込みの通りとなります。」と記載された文書が添付されている。「ご返答」と記載された文書には、「約6ヶ月間の行動可能な現実的方策:プロモーション活動と直接営業により、5000ケースを末端の取り扱い店へ販売します。」などと記載され、また、「現段階の生産予定は、下記の売上げ見込みの通りとなります。」と記載された文書には、4月から11月までの「売上見込」の「合計数」は、「5050」と記載されている(甲第10号証)。
カ 中日はん條は、請求人商品を製造する台湾の企業である請求人の関連会社であり、請求人商品を日本に輸出する台湾の企業であるところ、日本における輸入代理店として請求人との間で契約を締結している関西チェア(以上、当事者間に争いのない事実。)に対し、2007年(平成19年)3月29日、同年5月3日、同年6月28日、同年10月9日、同年11月8日、同年11月16日(ShipDate)、同年11月16日、同年11月29日、同年12月5日(ShipDate)、同年12月17日、同年12月24日、2008年(平成20年)1月17日、同年1月28日、同年2月18日、同年3月17日の各日付で請求人商品に関するインボイスを送付した(甲第3号証及び甲第4号証並びに甲第11号証の1なしい15)。
また、関西ゴルフ設備は、関西チェアの関連会社である(当事者間に争いのない事実。)ところ、商標権者に対し、平成19年4月9日から平成20年3月4日にかけて、「クロマックスmetallic」との品名で請求人商品を納品し、その納品の回数は、1年弱の間に、サンプルの取引を含め55回に及ぶ(甲第12号証の1ないし4、8ないし16、18ないし33、35ないし39、41ないし52、54、56ないし58、62、66、68、70)。
なお、平成19年(2007年)3月29日から平成20年(2008年)2月18日までの間の請求人商品の日本に対する総輸出量は、52,476パック(1パック6個入り:甲第8号証の2)であり、平成19年(2007年)4月9日から平成20年(2008年)3月4日までの間に、関西ゴルフ設備が商標権者に対し請求人商品を引き渡した総数量は49604パックである(当事者間に争いのない事実。)(参考図:請求書添付資料及び乙第2号証)。
キ アイエムを原告とし、関西ゴルフ設備及びその代表者である押田公士を被告とする平成21年(ワ)第17271号損害賠償請求事件(訴えの提起日:平成21年11月9日、甲第14号証)において、大阪地方裁判所は、平成22年11月25日に、「原告の請求を棄却する。」との判決を言い渡したところ、該判決によれば、当該事件の概要は、おおむね「台湾の企業が製造し被告会社が日本における独占販売権を有しているゴルフボールを原告が日本国内において独占販売することができる旨の代理店契約を締結したにもかかわらず、被告会社が他の会社を設立して上記ゴルフボールを販売させ、被告押田がその会社のために上記ゴルフボールの販売活動をして原告によるその販売を妨害した。」というものである。そして、判決は、「争点(1)(被告会社は、原告に対して、日本におけるクロマックスボール(以下、判決においても便宜上「請求人商品」という。)の独占販売権を付与したか。)」について、以下のとおり認定した。
「争いのない事実等,証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告代表者は,平成19年2月,知人の若杉忠成から,被告会社が請求人商品を輸入して日本で販売することを計画しているとの情報を得て,これを原告において販売したいと考え,同年3月初めころ,若杉に連れられて被告押田と面談し,その旨を申し入れたこと,原告代表者は,平成19年5月13日から16日まで,被告押田に同行して台湾にあるSUREWAY(審決注:請求人)本社を訪問し,同社に対しても同様の申し入れをしたこと,原告代表者は,上記訪問の前後に,被告押田に対し,数回,請求人商品の販売について,独占販売代理店契約書を取り交わしたいと申し入れ,同月17日には,その契約書の案文を提示したこと,しかし,被告押田は,原告会社が平成18年10月に設立されたばかりの会社であり,それまで原告会社との取引実績がなく,原告による請求人商品の販売数量等の見通しも立っていなかったため,原告会社に独占販売権を与えることには消極的であり,上記契約書の締結に応じないでいたこと,原告会社は,同年4月以降,被告会社から請求人商品を仕入れて国内のゴルフ用品販売店や百貨店に対する販売活動を開始するとともに,雑誌等に請求人商品の宣伝広告を載せるなどの宣伝活動をしたこと,しかし,原告は,請求人商品の販売実績が十分に伸びなかったことや宣伝広告費の支払がかさんだことなどから,次第に被告会社に対する請求人商品の仕入代金の支払を滞らせるようになり,その未払額は,平成20年1月11日の時点で少なくとも1300万円ないし1400万円程度にも及んでいたこと,そこで,原告は,同月から同年3月上旬ころにかけて,三菱東京UFJ銀行との間で,1000万円の融資を受けるための折衝を行い,被告押田に対してもその交渉経過を報告していたこと,本件代理店契約書(審決注:原告と被告会社との間で、原告が被告会社の商品の日本国内における独占販売代理店となる旨の契約書)は,その折衝の最中の平成20年2月19日に作成され,本件証明書(審決注:関西チェアが請求人商品の日本における独占販売代理店である旨のSUREWAY作成に係る証明書)及び本件確認書(審決注:被告会社及び関西チェアが請求人商品を輸入販売している旨の被告押田作成に係る確認書)もそのころ被告押田から原告代表者に対して交付されたものであること,本件代理店契約書には,「別紙価格表」(第1条,第5条)が添付されず,独占販売の対象となる「甲(被告会社)の製品」(第1条)も記載されず,作成年月日欄も一部空欄のままとされているなどの不備があること,被告会社は,原告からの代金支払が滞っていた上に,平成19年12月以降原告による請求人商品の仕入量が急増したことから,原告との請求人商品の直接取引を止め,その後の取引は商社を介在させて行うこととし,原告,被告会社及び明商は,平成20年3月10日付けで,本件売買基本契約書(審決注:被告会社が輸入した請求人商品を明商を介して原告に販売する売買取引に関する原告,被告会社及び明商の3者間で取り交わした売買基本契約書)及び本件売買契約書(審決注:請求人商品の売買に関し、明商と原告との間で取り交わした売買契約書)を取り交わしたが,それらの契約書には,被告会社が請求人商品の日本国内における独占販売権を有することをうかがわせる記載はないこと,原告は,同月以降,明商に対しても請求人商品の仕入代金の支払も滞らせるようになり,同年7月,明商との間で,滞納額の支払予定等に関する合意書を作成したことが認められる。
そこで検討するに,上記認定のとおり,被告会社は,従前,原告との間に取引関係がなく,そのような原告との間で早々に口頭での独占販売代理店契約を締結するとは考え難いこと,平成19年5月のSUREWAY訪問の前後に原告代表者から独占販売代理店契約書の作成を繰り返し求められながらこれを拒絶していた被告押田が,原告が1300万円ないし1400万円にも上る仕入代金の支払を滞らせていた平成20年2月という時期に至ってその態度を改め,独占販売代理店契約書の作成に応じたというのは不自然であること,本件代理店契約書が原告と銀行との融資のための折衝の最中の時期に作成されており,被告会社としては,原告から未払の仕入代金の支払を受けるために独占販売代理店契約の存在を仮装する契約書の作成に協力したとしても,あながち不自然とまではいえないこと,仮に,原告と被告会社が本件代理店契約書のとおりに独占販売代理店契約を締結する意思であったとするならば,それから1か月足らず後に作成された本件売買基本契約書及び本件売買契約書においても,そのことを前提とした条項があってしかるべきであること,本件訴訟において,原告は,その主張する本件代理店契約書の作成並びに本件証明書及び本件確認書の交付の時期を平成19年4月ころから平成20年2月へと変遷させているところ,これは,原告自身,平成19年4月ころに口頭で独占販売代理店契約が成立し平成20年2月に至ってその契約書を取り交わしたということが不自然であると考えていたからこそであると解されることなどを併せ考えると,被告押田の本人尋問における前記陳述は,信用することができるというべきであり,本件代理店契約書,本件証明書及び本件確認書が作成,交付された事実から,原告主張の独占販売代理店契約が締結された事実を推認することはできないというべきである。」
また、同判決は、本件審判における請求人の主張についても言及し、「証拠によれば,SUREWAYが平成22年8月5日に原告と原告代表者を被請求人として提起した商標登録取消審判事件においてSUREWAYから提出された書面には,SUREWAYが原告を日本国内における『サブ・エージェント』と認識している旨の記載があることが認められる。しかし,上記記載は,必ずしも,SUREWAYが原告を日本国内における請求人商品の独占販売代理店であると認識していたことを意味するものではないから,上記記載は,原告が被告会社から日本国内における請求人商品の独占販売権を与えられたことの決め手となるものではない。」とした。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、以下のとおり判断するのが相当である。
ア 請求人によって製造された請求人商品は、請求人の関連会社である中日はん條によって、少なくとも2007年(平成19年)3月29日から2008年(平成20年)3月17日の間、日本における輸入代理店である関西チェアに輸出された。
一方、アイエムの代表である榎本考修は、平成19年5月13日から16日にかけて請求人のもとに出向き、商標権者が請求人商品を日本において販売することについての申し入れをした。その際に使用されたプレゼンテーション用資料には、商品の販売方法等についての提案が記載されているものの、商標権者が請求人商品の日本における独占販売代理店となって請求人商品を販売する旨の要望の記載はない。なお、請求人及び被請求人は、いずれも、平成19年5月18日に、商標権者が請求人商品の日本におけるサブ・エージェントとして認められた旨主張するが、これが必ずしも請求人が商標権者を請求人商品の独占販売代理店であると認識していたことを意味するものとはいえず、さらに、商標権者は、請求人商品に関し、関西チェアの関連会社であって、日本国内で独占販売権を有する関西ゴルフ設備との間で、日本における独占販売代理店契約の締結をしていなかったというべきであり、したがって、商標権者は、請求人商品の日本における独占販売権を関西ゴルフ設備より与えられてはいなかった。
商標権者は、平成19年4月9日から平成20年3月4日にかけて、「クロマックスmetallic」との品名で請求人商品を関西ゴルフ設備より納品された。上記期間に、関西ゴルフ設備が商標権者に対し請求人商品を引き渡した総数量は49604パックであり、これは、平成19年3月29日から平成20年2月18日までの間に日本に輸入された請求人商品の輸出数量である52476パックの約95%に当たる。
なお、商標権者は、請求人商品について、パンフレットを作成し、雑誌に広告をしたことが認められるものの、その量は少なく、かつ、パンフレットの作成日や雑誌の掲載日等は明らかではない(わずかに報道関係者に広告をした日付が2008年2月22日であることが認められるのみである。)。
イ 以上によれば、商標権者は、本件商標の登録出願の日前1年以内に、請求人ないし関西ゴルフ設備より、日本における独占販売権を付与されていたとの事実を認めることはできない。
しかしながら、関西チェアを介し日本に輸入され、関西ゴルフ設備によって日本国内で販売された請求人商品は、平成19年4月9日から平成20年3月4日までの期間には、関西ゴルフ設備と商標権者との間に継続的に取引があったのであり、平成19年3月29日から平成20年2月18日までの間に日本に輸入された請求人商品の約95%が商標権者に納品され、その取引数量は、単なる得意先又は顧客の範囲を超えるものといえること、商標権者が作成した請求人商品に関する2008年2月22日付け報道関係者向け資料には、「本件に関する取材、情報提供などのお問い合せ先/アイエム株式会社」と記載され、その他、商標権者が作成した請求人商品に関するパンフレットや雑誌における広告にも、「お問い合せ先:アイエム株式会社」、「クロマックス総発売元 アイエム株式会社」等と記載され、商標権者が請求人商品の販売代理店であることを窺わせるような記載があること、「ジャパンゴルフフェア2008」(平成20年2月21日?24日開催)に配布したと認め得る請求人商品のパンフレット等には、台湾登録商標が表示され、このことは請求人代表者も承知していたと推認し得ることなどを勘案すると、請求人と商標権者との間には、継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成され、商標権者は、日本国内における請求人商品の販売体系に組み込まれるような立場にあった者とみることができる。
そして、商標法第53条の2が、他の同盟国等で商標に関する権利を有する者の代理人若しくは代表者又は代理人若しくは代表者であった者がその権利者との間に存する信頼関係に違背して正当な理由がないのに同一又は類似の商標登録をした場合にその取消について審判を請求できる旨の規定であることにかんがみれば、同条項に規定する「代理人若しくは代表者」は、必ずしも他の同盟国等の商標権者と代理店契約を締結した者など契約上特別な関係、あるいは、法的関係にある者に限定されることなく、広く他の同盟国等の商標権者の商品を継続的に輸入し販売する又は販売していた者など、継続的な取引により慣行上の信頼関係が形成されていた関係にあった者をも指すと解すべきである。
したがって、商標権者は、商標法第53条の2にいう「当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者」に該当するというべきである。
(3)正当な理由及び承諾の有無
ア 被請求人は、商標権者が多大な投資をした自己の事業を保護するために、本件商標を出願したのであり、その出願には、正当な理由がある旨主張する。
しかし、前記認定のとおり、商標権者は、請求人商品について、パンフレットを作成し、雑誌に広告をしたことが認められるものの、その量は少ないものであり、また、商標権者がこれらの広告活動にどのくらいの費用をかけたかについて、これを明らかにする証拠の提出はなく、その他、商標権者が請求人商品を日本国内で販売するについて、多大な投資をしたと客観的に認めるに足りる証拠の提出はない。したがって、被請求人主張の請求人商品の日本における販売について商標権者が多大な投資をした事実を認めることはできず、また、商標権者の努力等により、本件商標の登録出願当時、台湾登録商標が日本国内において、グッドウィルを獲得したものとも認めることができない。
イ さらに、被請求人は、商標権者が多大な投資をした自己の事業を保護するためには、商標権者が商標出願をすること及び請求人から供給される請求人商品を安定して販売するにあたっては、請求人の立場から見ても商標権者が商標管理をすることが必要であり、そして、請求人の介在者である明商及び関西ゴルフ設備ないし関西チェアの関係者に、日本において請求人商品の商標権又は商標出願が存在してないことの確認と、請求人商品のドメイン名及び商標権についてはアイエムが管理することを伝えたこともあり、平成20年4年8日に、本件商標の出願をした旨主張する。
しかし、前記アのとおり、商標権者が請求人商品の広告活動等のために多大な投資をした事実を明らかにする証拠の提出はなく、また、被請求人の主張によれば、商標権者が関西チェア等に対し、請求人商品についての商標登録出願又は商標権等が存在するか否かについての確認は、平成20年12月ころであったところ、その時期は、本件商標の登録出願日である平成20年4月8日の約8か月も後のことであり、請求人商品の日本における商標権等の存在の確認をしたとの被請求人の主張は極めて不自然なものというべきであり、請求人商品のドメイン名及び商標権についてアイエムが管理することを伝えたとする裏付け証拠の提出もない。
したがって、上記被請求人の主張を直ちに信用することはできないのみならず、本件商標の登録出願日に先立つ、平成20年3月10日には、商標権者と関西ゴルフ設備との間で行われていた請求人商品の取引に、商標権者が関西ゴルフ設備に対し請求人商品の仕入れ金の支払を滞納した等の理由で、明商が介在するようになった経緯があったことが認められ、商標権者は、このような商社を介在して請求人商品の取引をするより、自己により有利な取引を展開するために、本件商標の登録出願をし、登録を得、請求人商品の取引について、関西ゴルフ設備、ひいては請求人に対して優位な立場を確保しようと意図したことを窺うことができる。
加えて、請求人が商標権者に対し、日本において台湾登録商標の権利を取得することを放棄した、又は取得する関心がないことを信じさせた場合に該当すると客観的に認めることができる裏付け証拠の提出はない。
以上によれば、商標権者の本件商標の登録出願をする行為は、正当な理由があったものと認めることはできない。
また、本件商標の登録出願について、請求人の承諾があったと推認できる証拠の提出はない。
なお、被請求人は、商標権者が多大な投資をして周知・著名にした「Chromax」を、その後において請求人が取り上げることは信義則に反する旨主張するが、商標権者が請求人商品の販売について多大な投資をした事実を裏付ける証拠が存在しないことは、前記認定のとおりであり、商標権者が本件商標を登録出願する行為は、日本において台湾登録商標が登録されていないことを奇貨として、日本国内における代理店契約を強制するなどの目的があったことなどを窺わせるものであり、請求人との間の取引上の信頼関係に違背するものであって、社会的にみても容認し難いところであるから、上記被請求人の主張は理由がない。
(4)まとめ
前記(2)ないし(4)によれば、本件商標の登録出願が、正当な理由がないのに、請求人の承諾を得ないで本件商標の登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者と同等の地位にあった商標権者によってされたものと認めることができる。

4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第53条の2に規定する要件をすべて満たしているものと認められるから、同規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)台湾登録商標



審理終結日 2011-04-25 
結審通知日 2011-04-27 
審決日 2011-05-11 
出願番号 商願2008-31350(T2008-31350) 
審決分類 T 1 31・ 6- Z (X28)
最終処分 成立 
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 野口 美代子
特許庁審判官 内山 進
前山 るり子
登録日 2009-10-30 
登録番号 商標登録第5276520号(T5276520) 
商標の称呼 クロマックス 
代理人 向江 正幸 
代理人 福島 三雄 
代理人 手島 勝 
代理人 手島 勝 
代理人 高崎 真行 
代理人 川角 栄二 
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