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審決分類 審判 全部取消 商53条使用権者の不正使用による取消し 無効としない Z03
管理番号 1251691 
審判番号 取消2007-301208 
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-09-20 
確定日 2012-01-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第4203576号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4203576号商標(以下「本件商標」という。)は、「GOLD Glitter」の文字を横書きしてなり、平成9年7月24日に登録出願、第3類「つや出し剤」を指定商品として、同10年10月23日に設定登録されたものであり、その商標権は現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第53条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁並びに回答を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第147号証(枝番号を含む。)を提出し、さらに検甲第1号証ないし検甲第9号証の検証の申し出をした。
1 請求の理由
(1)取消事由
本件商標は、その専用使用権者又は通常使用権者である有限会社グリッタージャパン(代表者取締役南木嗣夫、本店所在地大阪市旭区新森三丁目14番1号)が、その指定商品であるつや出し剤についての登録商標の使用であって、その商品の品質を、請求人の開発・製造にかかるカーワックス「GOLD Glitter」と同一のものであると誤認、又は、他人である請求人の業務にかかる商品であるカーワックス「GOLD Glitter」と混同を生ずるものをしたので、商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきものである。
(2)事情
ア 請求人は、請求人創業者が開発した自動車のボディー部分と窓ガラス部分の双方に利用可能なカーワックス(つや出し剤)を、平成6年春までに、商品名を「GOLD Glitter」(以下「正規品」という)とした上で、容器・外箱のデザインについて、紺色の地に、表側は黒地に「21」の文字を冠した金色の鷲のマークの下に赤字で「GOLD Glitter」と表記したマークを使用し、その下に「21世紀驚異のワックス」と表記し、裏面に「黄金の輝き」「GOLD Glitter」「21世紀驚異のワックス」「車丸ごと水拭きコーティング剤」と表示をしたものを商品化して、販売を開始した。以来、請求人は、一貫して正規品のワックス自体を製造し、かつ、容器への詰め込み及び外箱への容器の収納等、商品としての製造の全てを行なって、これを販売している。
イ 被請求人は、平成6年秋ころから、請求人のこの正規品を購入して、転売するようになったが、被請求人は、平成9年7月24日に、請求人に無断で、本件登録申請を行ない、翌平成10年8月27日に登録査定を得て、同年10月23日に本件商標の登録を行った。
ウ 請求人の製造にかかる正規品は、その効果や使用感などが優れているとして、広く取引先やユーザーらの信頼を獲得してきた。平成13年には「カーグッズマガジン」(三栄書房)で「2001 カーグッズ・オブ・ザ・イヤー」の「カーケア部門賞」に選ばれるなどしている。
ちなみに、その製造方法は、請求人の営業機密に属するものであり、被請求人等にはこれを開示していない。
エ 被請求人は、平成16年4月ころから、被請求人が代表者である有限会社グリッタージャパン(以下「本件会社」という。)に本件商標を利用することを許諾した上、同社をして、請求人の製造する正規品とは品質の異なるカーワックスを第三者に製造させ(ワックス自体のにおいや色の濃さが異なるほか、成分分析の結果、成分も異なるものであることが確認されている。)、これを、請求人の製造する正規品の容器・外箱と外観上ほとんど区別のつかない容器・外箱等を偽造・使用させて、販売させていた。
オ 容器・外箱の偽造の態様は、極めて巧妙で、偽造品は、箱やシュリンクの表面のロゴ、マーク、裏面の文書、バーコードなどの表示は、正規品とほとんど同じである。すなわち、外箱も、また、容器のシュリンクの大きさ・紺色の地はもとより、表側の黒地に金色の鷲のマークに赤字「GOLD Glitter」と表記したマークの形状もほぼ同じであり、その下に「21世紀驚異のワックス」と表記しいる点でも同じであって、さらに、裏面の「黄金の輝き」「GOLD Glitter」「21世紀驚異のワックス」「車丸ごと水拭きコーティング剤」と同一の表示をし、また、同一文言で特徴・使用法・品質表示を示しており、しかも、「製造・企画元」として請求人の会社名を「グリッタージャパン」の上に併記している点で、正規品と同じであった。バーコード番号も正規品と同じ請求人のものであった。
もっとも、外箱・容器の表示も仔細に比較すると、偽造品の容器・外箱には微妙な相違点がいくつも存在する。
カ 本件会社は、正規品とともに、この偽造品を、株式会社協和興材(代表取締役細矢和義。本店所在地東京都練馬区関町東二丁目14番4号)に販売ないし販売委託をし、一般の小売店等に転売していた。株式会社協和興材(以下「協和興材」という。)の関係者は、実際に、偽造品を正規品と同一の品質のものと誤認し、請求人が製造している正規品と同じものであると混同していた。
キ この偽造品の製造・販売が発覚したのは、昨年(平成18年)末で、請求人の本件会社への納品本数と、本件会社が協和興材に納品していた本数に大幅なズレが生じていることが判明したことが契機となり、調査のために小売店から入手した商品を確認したところ、偽造品が販売されていることが判明した。
ク 後日確認したところによれば、このズレは、別紙のとおりで、平成16年で1万5654本、平成17年で2万2710本、平成18年では、1万7870本も存在し、合計5万5000本以上の偽造品が、本件会社から、協和興材に販売ないし販売委託されていたことになる。
ケ 請求人は、偽造品の販売が判明したため、平成19年1月に、本件会社との取引を解除した。その後、協和興材の代表取締役である細矢和義氏が間に入り、話し合いが持たれようとしたが、これはまもなくとんざした。
その後、平成19年5月25日、本件会社は、協和興材に対して販売禁止の仮処分を申し立てたが(大阪地方裁判所平成19年(ヨ)第856号)、これは両者の間の和解により終結している。
現在、本件会社は、被請求人が個人名義で商標登録をしていることに仮託して、請求人の正規品への取引先・ユーザーの信頼のせん窃を企て、類似品の販売の準備をしているようである。
2 平成20年2月1日付け弁駁
(1)本件会社が通常使用権者であることについて
被請求人は、本件会社が専用使用権者又は通常使用権者のいずれに当たるか特定しなければ被請求人の防御に支障が生じ、このような不特定な主張によって取消請求が認められるべきではない旨主張している。
しかし、本件商標の商標登録原簿によれば、専用使用権の設定登録がなされていない一方(甲第39号証)、被請求人の許諾の下、指定商品であるカーワックスについて本件商標又はこれに類似する商標(検甲第4号証)を使用しており、通常使用権者に該当することは明らかである。
また、上記の事情は、被請求人と被請求人が取締役(代表者)を務めている会社との間の関係であり、その内容は、被請求人自身が十二分に承知していることであり、何ら防御に支障を生じるものではない。
また、被請求人は、本件会社は、事実上被請求人と同一であり、平成15年12月25日に被請求人を代表とする個人会社として単に法人成りしたものにすぎず、本件会社はいずれの使用権者にも該当せず、商標権者そのものである旨主張している。
しかし、本件会社は、自然人である被請求人とは別個の法人格を有する有限会社として設立された法人である。
法人格の濫用又は法人格の形骸化が認められるような場合に、具体的紛争事案の解決に際して、当該事案限りで法人格が否定されること(法人格否認の法理)は、判例で認められており(最判昭和44年2月27日民集23巻2号511頁)、被請求人の主張は法人格否認の法理の適用を主張するものであると思料される。
しかし、法人格否認の法理は、法人の実質がまったく個人と認められる場合においてこれと取引をした相手方は法人名義でなされた取引についても、これを背後にある実体である個人の行為と認めて、その責任を追及することができ、また個人名義でなされた取引についても、法人の行為と認めてその責任を追及することができるというものであって、法人と取引をした相手方や法人の不法行為によって損害を受けた者の利益保護のために認められるものであって、たとえ事業経営の実態が法人成立の前後を通じ変わるところがないとしても、自ら法人格を濫用し又は法人格の混同を生じさせている者の側から法人格を否認することは許されない。
したがって、自ら被請求人と法人格が異なる法人として本件会社を設立した被請求人が、本件会社の行為を理由に商標法第53条第1項に基づき商標登録の取消を請求された本件において、本件会社が事実上被請求人と同一であり、商標権者そのものであると主張することは到底許されるものではない。
(2)請求人と被請求人との関係等について
ア 請求人による標章の使用
請求人は、平成6年春以来、請求人が開発したカーワックスである正規品(以下、請求人の主張に限り「本製品」という。)に弁駁書添付の請求人標章目録記載1ないし5記載の標章(以下、請求人の主張に限りそれぞれ「請求人標章1」、「請求人標章2」、「請求人標章3」、「請求人標章4」、「請求人標章5」といい、請求人標章1ないし5をまとめて「請求人標章」という。)を表示して、これらを製造、販売している(甲第3号証の別紙1ないし9、甲第19号証ないし甲第35号証、検甲第1号証ないし検甲第3号証)。
なお、請求人標章4については、請求人は、平成14年2月ころから使用を開始したものであり、それまでの間は「ゴールドグリター」なる片仮名の標章を使用していた(甲第3号証の別紙1ないし5)。
また、請求人標章5については、本製品が平成13年のカーケア部門賞を受賞した後は、本製品の包装箱に「三栄書院/カーグッズマガジン誌/主催/読者が選ぶ/2001 Car Goods of the year/[カーケア部門賞]/第1位」と記載されたシール(以下「請求人シール」という。)を貼付して販売してきた(検甲第3号証)。
さらに、請求人は、請求人標章を、平成6年6月の会社設立以来、正確にはその設立準備段階から、請求人役員及び従業員の名刺、請求人の封筒、従業員のジャンパーに付すなどハウスマークとしても使用している(甲第25号証、甲第26号証、甲第34号証)。
イ 本製品の開発経緯、販売態様及び広告宣伝等について
本製品の開発経緯等については、「Car Goods Magazine」2002年12月号において、「ゴールドグリッターを開発した吉野の林隆温」(甲第8号証)が、「スカーットHの再販を望む要請が多くなり、更なる性能向上を目指して開発を再開したのが平成5年。翌年、新製品ゴールドグリッターが誕生した。このゴールドグリッターが、全国にあるマイクロロン認定ショップの一軒、バウハウスにおいてあったことがきっかけとなってその効能を知り、マイクロロン同様にいいものを長く売っていこうというコンセプトの下、協和興材が総販売元となって、現在、全国展開をしている。」と紹介されているとおりである。
なお、平成6年3月16日に、林隆温を発明者、出願人として、発明の名称を「自動車のボディー光沢保護ワックスとフロントガラスの油膜除去及びフロントガラス撒水コーティングを同時に水拭きする方法」とする特許出願(特願平6-85209、特開平7-252499)をしている(甲第40号証)。
また、「ゴールドグリッター」という本製品の名称、請求人標章のデザイン、ボトルの選択、パッケージのデザインなどはすべて請求人が行い、本件会社や被請求人と取引を開始する前から継続して使用しているものである(甲第9号証、甲第19号証ないし甲第34号証、検甲第1号証ないし検甲第3号証)。
本製品発売開始当初は、請求人自身が発売元となって全国のガソリンスタンド、生活協同組合における店頭販売や通信販売の方法等により販売していたが、本件会社設立前である平成6年9月からは、被請求人とも取引をするようになった(なお、被請求人は、最初は「ガレージ南」の屋号であったが、その後「Glitter Japan」の屋号を使用するようになった。)。
本製品発売当初に使用していた表示は、「発売元 株式会社吉野」なる表示であり、被請求人の屋号及び本件会社の商号は表示されていなかった(検甲第1号証)。その後、被請求人が特約店となったため、発売元をGlitter Japan、製造元を請求人として販売していた時期もあるが、平成14年12月からは、被請求人から仕入れた本製品を販売していた協和興材を総発売元、製造・企画元を請求人、グリッタージャパンとして本製品を販売し、本件会社設立後も、平成19年1月15日に請求人と本件会社との取引関係が解消されるまでの間、同様の表示態様で本製品を販売していたが、平成19年1月15日に請求人と本件会社との取引関係が解消され、さらに、協和興材が大阪地方裁判所平成19年(ヨ)第856号事件における和解に基づき平成19年9月30日をもって本製品の販売を停止した後は、請求人を発売元として請求人が本製品を販売している。
なお、本件会社は、製造者である請求人から本製品を仕入れ、協和興材に転売ないし販売委託していただけであり、本製品を製造していないことはもちろん、本製品の製造や商品化に関する企画にも関与したことはない。
また、総発売元である協和興材は、平成11年から平成18年までの間に、雑誌等の広告媒体に約1億円もの費用を投じて積極的に宣伝に努めてきた。
ウ カーケア部門賞の受賞等について
請求人標章1ないし4を付した本製品は、平成13年のカーグッズ・オブ・ザ・イヤーのカーケア部門賞を受賞し、「2001年カーグッズ・オブ・ザ・イヤーのカーケア部門賞に輝いているので、その名を知っているだけでなく、実際に体験している人も多いかと思う。」(甲第8号証)と雑誌に紹介されるなど、メディアにも頻繁に取り上げられるようになるとともに、オートバックス等の大手でも販売されるようになり、ヤナセの車載用品に採用され、ヤナセの店舗で販売されるなど、協和興材が総販売元として本製品を販売していた当時の売上は年間7万本以上の規模にまで拡大していた(甲第15号証)。
また、請求人は、上記カーケア部門賞受賞後は、本製品の包装箱に「三栄書院/カーグッズマガジン誌/主催/読者が選ぶ/2001 Car Goods of the year/[カーケア 部門賞]/第1位」と記載された請求人シールを貼付して販売してきた(検甲第3号証)。
そして、平成19年10月31日までの本製品の売上は、536,142本、484,879,400円(内平成16年3月末までの本製品の売上は366,594本、327,903,300円)にのぼっている(なお、上記売上には、本件会社が原告(審決注:請求人)に無断で請求人の商号等を使用して製造販売した本件会社商品の売上は含んでいない。甲第34号証)。
エ 請求人標章の周知性
以上述べたことから明らかなとおり、請求人標章は、請求人の商品であるとの出所表示機能を獲得するに至り、遅くとも本件会社が偽造品の製造販売を開始した平成16年4月の時点においては、需要者の間に広く認識され、現在に至っている。
(3)品質誤認・出所混同について
ア 本件会社の行為について
本件会社は、請求人が本件会社に対して製造販売した本製品以外に、協和興材及びその他の者に対して、遅くとも平成16年4月1日以降、請求人標章とほぼ同一であり、本件商標と同一又は類似の商標である弁駁書添付の本件会社標章目録1、2、4及び6記載の商標(以下、請求人の主張に限りまとめて「本件会社商標」という。)を使用し、「GOLD Glitter」なる商品名のカーワックス(以下、請求人の主張に限り「本件会社商品」という。)を販売している(甲第5号証、甲第9号証、甲第12号証、甲第14号証ないし甲第17号証、甲第34号証、甲第36号証、甲第38号証、検甲第4号証)。
また、本件会社は、その製造、販売する本件会社商品のカタログ、パンフレット等の広告に本件会社商標を付して展示し、頒布している。
ところで、請求人が製造する本製品は、平成13年のカーグッズ・オブ・ザ・イヤーのカーケア部門賞を受賞しており、その包装箱に製造・企画元として「株式会社吉野」と記載し、請求人の商品メーカーコード(4945908)を付すとともに、請求人シールを貼付して販売してきた。
しかるところ、本件会社は、偽造の事実が発覚するまでの間、請求人が製造したものではなく、品質も異なる本件会社商品の包装箱に、製造・企画元として「株式会社吉野」と記載し、請求人の商品メーカーコード(4945908)を付すとともに、「三栄書院/カーグッズマガジン誌/主催/読者が選ぶ/2001 Car Goods of the year/[カーケア 部門賞]/第1位」なる弁駁書添付の本件会社標章目録5記載の標章を記載したシール(以下「本件会社商品シール」という。)を貼付して販売していた(検甲第4号証)。
また、本件会社は、偽造発覚後も、平成13年のカーグッズ・オブ・ザ・イヤーのカーケア部門賞を受賞した本製品と製造者及び品質を異にする本件会社商品に、本件会社商品シールを貼付して販売している。
ところで、被請求人は、請求人が被請求人に対して、平成7年ころ、本製品の一切を任せると申し入れた旨主張し、証拠として乙第1号証(審決注:乙第3号証は誤記と認められる。)を引用している。
しかし、被請求人主張の上記申し入れを請求人がなした事実は存在せず、乙第1号証の御見積書は、「大阪市平野区加美北3丁目9番21号株式会社吉野」と記載されているが、請求人が作成したものではない。
なお、乙第1号証は、その内容をみても、請求人が販売していた条件(製品の供給形態、販売価格など)とは著しく異なっており、このような見積書を請求人が出すことはありえない。しかも、この御見積書は、請求人と被請求人及び本件会社との取引内容とも異なっている。
また、被請求人は、乙第1号証を、ファクシミリのよる送信書面として提出していると思料されるが、本来送信書面のヘッダー部分に記録される請求人の送信情報(送信日、送信元のファクシミリの番号等)が表示されておらず、それ自体信用性のない書面である。
ところで、被請求人は、請求人による本製品開発・製造の事実を否認し、請求人による本製品の商品化を不知とした上で、「カーワックス『GOLD Glitter』(以下、請求人・被請求人の主張に限り『本件製品』という。)は、被請求人が自ら商品として独自に販売してきた」、「被請求人の固有の商品」などとするが、被請求人は、本件製品の本体(内容物)であるワックスについてどのように開発したのかを明確に主張せず、また、本製品の商品化の経緯はおろか、商品名の選定や容器・外箱のデザインがどのように決められたのかも全く明らかにしていない。
これは、本製品が、請求人側の開発・商品化によるものであるからに他ならない。
さらに、被請求人は、請求人を「単なる製造会社の一つにすぎない」などとするが、請求人は、本製品(正規品)にもその商号が明示されており、単なる下請生産者やOEM生産業者でないことは明らかである。
しかるところ、本件会社商品は、請求人の商品と品質が異なる商品であるにもかかわらず、本件会社は、請求人が製造する本製品として販売している。
また、協和興材の代表取締役の陳述書(甲第15号証、甲第16号証)によれば、「ここ数年、『ゴールドグリッター』の購入者からの苦情が増加し、特に『以前のものと違う』『ノズルに粒状の物が付着しスプレーの穴が詰まる』といった申し出が多くなっていました。」ということであり、被請求人は、平成19年1月16日の架電において「株式会社吉野製でないワックスを偽って納品していたことを認め、『いつかはこのことがばれるだろうと思っていた』」と述べたとのことである。
このように、請求人が製造するものではなく、本製品と品質が異なるカーワクッスやシャンプーが、請求人が製造する本製品又は本製品の改良品若しくはシリーズ商品として販売され、特に、本件会社商品については、本製品と類似の標章や平成13年のカーグッズ・オブ・ザ・イヤーのカーケア部門賞を受賞した旨のシールが付されて販売されたこと、しかも、平成16年4月から平成19年1月までの間は、請求人が製造したものでないものにも請求人が製造・企画元である旨表示されて販売されたことにより、請求人の営業上の利益が害されるとともに、その信用が害された。
なお、本製品と本件会社商品とは、市場、商品が同一であり、混同を生じており、総販売元であった協和興材ですら、本件会社商品のことを請求人が製造する製品であると現実に誤認混同していたものである(甲第15号証)。
ところで、被請求人は、品質誤認とは、たとえば風邪薬を胃薬と誤認させるような場合をいうのであるから、カーワックスをカーワックスとして表示することが品質誤認に当らないことは明白である旨主張している。
しかし、「品質誤認」は被請求人が例としてあげる場合のみに限定されるものではなく、「品質誤認」には、請求人標章とほぼ同一であり、本件商標と同一又は類似の商標である本件会社商標を使用することにより、需要者に、カーグッズ・オブ・ザ・イヤーのカーケア部門賞を受賞した、請求人製造に係る本製品と同じ品質の製品と誤認させる場合も含まれる。
また、本件会社の行為が、商標法第53条第1項にいう「他人の業務にかかる商品」と混同を生ずるおそれのあるものであることは明らかである。
イ 甲第6号証及び甲第7号証について
被請求人は、劣悪な商品を提供して需要者の期待を裏切ることをも品質誤認に含めるとしても、そのような優劣は生じていない上、本件では品質の優劣について請求人は何ら言及していない旨主張し、さらに甲第6号証及び甲第7号証の報告書からすれば、2つの試料はほとんど同一の成分であり、品質が異なるとは到底認められない旨主張している。
この点、そもそも品質の優劣が問題ではなく、請求人は、本件会社が使用している商標と無関係に、本件会社商品が品質を劣悪にして需要者に商品の品質の誤認を生ぜしめたということ自体を主張しているのではない。
請求人標章とほぼ同一であり、本件商標と同一又は類似の商標である本件会社商標を使用することにより、需要者に、カーグッズ・オブ・ザ・イヤーのカーケア部門賞を受賞した、請求人が製造に係る本製品と同じ品質の製品と誤認させることを問題としている。
しかも、甲第7号証の「5.試験結果」の「無機成分定性」、「その他の成分」欄及び図1ケイ光X線分析スペクトルの[定量結果]欄記載のとおり、本件会社商品には、金属の酸化腐食を誘発する可能性のある塩素(Cl)が含まれているが、甲第6号証の「5.試験結果」の「2(丸付き数字)(株)吉野300mL」、「無機成分定性」、「その他の成分」欄及び図2ケイ光X線分析スペクトルの[定量結果]記載のとおり、本製品には塩素は含まれていないという成分について明らかな品質の相違がある。
また、甲第7号証の図3フーリエ変換赤外線分析スペクトル及び甲第6号証の図8フーリエ変換赤外線分析スペクトルを対比すれば明らかなとおり、各ピーク強度比が異なり、本製品と本件会社商品とでは成分比が著しく相違している。
特に、本製品と本件会社商品とでは成分(特に、1740cm-1付近の脂肪酸エステル)の相対的な割合が大きく相違している。
また、全固形分の割合、石油エーテル抽出物量については、本製品はそれぞれ2.0%、1.3%であるのに対して(甲第6号証の「5.試験結果」の「2(丸付き数字)(株)吉野300mL」、「全固形分」、「石油エーテル抽出物量%」欄)、本件会社商品はそれぞれ1.4%、0.87%(甲第6号証の「5.試験結果」の「全固形分」、「石油エーテル抽出物量%」欄)と相違しており、本件会社商品には、本製品の約3分の2程度しか含まれていない。
以上述べた相違は、製品によるバラツキや誤差の範囲を超えた品質の相違について有意差のある相違である。
ウ 小括
以上から明らかなとおり、通常使用権者である本件会社が、指定商品であるカーワックスについての本件商標又はこれに類似する商標の使用であって商品の品質又は請求人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたものである。
(4)商標法第53条第1項ただし書の不適用について
被請求人は、従来からずっと、請求人は本件製品を販売していないことを被請求人に折に触れ告げてきた経緯からすれば、被請求人に対する背信行為であるとともに、商標法第53条第1項ただし書に該当する旨主張している。
しかし、請求人は、被請求人や本件会社と取引する前から本製品を製造販売してきたものであるうえに、被請求人は、請求人と取引を始める際に、実際に請求人製造販売に係る本製品を一般小売店(「ガレージ南」なる屋号を使用)として、購入販売していたのである。したがって、被請求人が、請求人による本製品開発の事実を知らないことはありえず、また、請求人による本製品商品化を知らないなどということはあり得ない。
それを本件会社が請求人の特約店となった後も、本製品を製造し、請求人が製造元又は製造・企画元である旨の表示を付して請求人又は本件会社に対して販売し、市場に流通させていたものである。
また、被請求人は、本件会社の代表者取締役であるところ、本製品の偽造品である本件会社商品の製造、販売行為を主導して行ったものであるから、本件会社による商標の不正使用の事実を知っていたものであるから、商標法第53条第1項ただし書の適用がないことは明らかである。
(5)本件商標登録について
被請求人は、本件商標登録につき、「請求人も十二分に承知」とか、「請求人も歓迎」などと主張するが、これは事実に反する。
そもそも、「ゴールドグリッター」、「ゴールドグリター」、「GOLD Glitter」なる標章は、請求人が、被請求人と取引をする以前から、請求人の開発・製造にかかる本製品を示す商標として使用してきたものである。
しかも、請求人は、これを商品商標としてだけではなく、請求人自身を示すハウスマークとして使用していた(甲第25号証、甲第26号証、甲第34号証)。
それを、一特約店にすぎない被請求人が商標登録することに応ずることはありえず、実際、被請求人が請求人に無断で商標登録をしたことを知った際には、請求人側はこれに抗議し、異議を留めている。
これに対して、被請求人は、あいまいな対応をして話をはぐらかすなどしていたが、商標登録後しばらくすると、次第に登録の事実を盾に、請求人側に被請求人の権利を承認するように迫ることもあった。
請求人側はそれを承認することはなかったが(甲第34号証)、被請求人との取引を継続していたところ、被請求人は、密かに本件にかかる偽造品を製造し始め、それが発覚するや否や、現在のような主張を行うに至った。
(6)被請求人及び本件会社を通じた本製品の販売について
本製品は、請求人側の開発・商品化したものであり、請求人の創業当初から、請求人において一貫して製造販売していたものである。
被請求人は、当初は一般の小売店として請求人から本製品を購入販売していたにすぎない。その後、被請求人はいわゆる特約店として本製品を請求人から購入してこれを小売店等に転売するようになったが、請求人は、他の特約店を持っており、被請求人以外にも本件製品を販売していた。
さらに、協和興材が、被請求人(あるいは本件会社)の第2次特約店となり、同社の取り扱っているエンジン保護剤「Microlon」(マイクロロン)の販売ルートに本製品をのせて販売を推進することになったが、被請求人が同社に十分な説明を行なっていなかったことから、平成13年秋に、同社から本製品が他のルートで販売されていることについてクレームが寄せられ、同社の販売ルートを請求人(被請求人も)は維持する必要があると判断したことから、請求人もやむなく他の特約店との取引を停止することにした。
なお、協和興材を通じる販売ルート以外で本製品を販売しないこととなったのは、平成13年秋のことであり、被請求人の商標登録の事実とは全く関係がない。
また、平成15年にも、被請求人側が、請求人において類似のワックスを他の業者に販売しているのではないかと騒ぎ立てたが、そのような事実はなかった。
(7)甲第3号証における「丙号証」の記載について
甲第3号証は、大阪地方裁判所平成19年(ヨ)第856号事件において、補助参加人として参加していた請求人が提出した疎明資料の写しであり、その中で、当該事件において丙号証として請求人が提出した引用していた疎明資料が丙号証であり、このことを被請求人は十分認識しているものである。
なお、甲第3号証中「丙1」は甲第8号証に、「丙2」は甲第9号証に、「丙4」は甲第10号証に、「丙5」は甲第11号証に相当するものである。
また、被請求人は、甲第3号証の別紙として添付された資料の作成時期自体が不明である旨主張しているが、甲第3号証の1枚目の記載から請求人の主張を基礎づけるのに支障はない。
なお、甲第5号証の別紙2及び別紙3に記載されている請求人の住所「大阪市鶴見区緑1丁目3-6-404」は、会社設立準備段階において請求人の本店所在地とする予定であった請求人代表者の夫であり本製品を開発した林隆温の長男である、林鍵の当時の住所であった(甲第27号証、甲第34号証)。
甲第3号証の別紙3に記載されている請求人の電話及びファクッス番号の市内局番は3桁であり、大阪・兵庫06地域の市内局番が3桁から4桁に変更されたのは平成11年1月1日である(甲第29号証)。
また、甲第2号証の別紙2及び甲第21号証に記載されている竹村産業株式会社の住所「松原市阿保6丁目858-1」は地番表示であり(これが住居表示に変更されたのは平成7年5月1日である「甲第32号証」。)、郵便番号は3桁であり(郵便番号が3桁から7桁に変更されたのは平成10年2月2日である「甲第28号証」。)、電話番号の市内局番は2桁である(0723地域の市内局番が2桁から3桁に変更されたのは平成13年7月20日である「甲第30号証」。)。
(8)審判制度の濫用との主張について
被請求人は、請求人はほとんど同じ主張を民事訴訟上も展開しており、このような審判制度の濫用ともいうべき行為は到底認められるべきではない旨主張している。
被請求人主張の民事訴訟は、大阪地方裁判所第21民事部に係属している不正競争防止法違反等を理由として請求人を原告、被請求人及び本件会社を被告とする訴訟をいうものと思料されるが、当該民事訴訟における請求は、民事上の本件会社の行為の差止請求並びに被請求人及び本件会社に対する損害賠償請求であるのに対して、本件審判は、被請求人の有する商標登録の取消であり、民事訴訟の結論如何と本件審判とはまったく次元の異なる問題であるので、審判制度の濫用に該当しないことは明らかである。
3 平成20年2月4日付け弁駁
(1)本件会社商標の使用について
甲第5号証の本文19.(2頁)記載のとおり、本件会社は、弁駁書添付の請求人標章目録3記載の標章と同一の商標を使用している(なお、甲第5号証の別紙4が本件会社が使用している説明書である。)。
また、本件会社が本件会社標章目録3記載の商標を使用していることは、甲第18号証記載のとおりである。
(2)仮処分事件について
請求人は、大阪地方裁判所平成19年(ヨ)第856号事件に補助参加人として参加していたが、和解は債権者である本件会社、利害関係人である被請求人、債務者である協和興材の間のみであり、補助参加人であった請求人との間では、和解はなされていない。
したがって、この和解条項に、請求人と本件会社又は被請求人との間の関係や、請求人と協和興材との間の関係について言及がないのは当然のことである。
ちなみに、上記仮処分命令申立は、本件会社と協和興材との間の契約に基づく差止請求権を理由とするものであるが、本件会社が協和興材に対する売掛金債権を請求債権として仮差し押さえた大阪地方裁判所平成19年(ヨ)第701号事件も含めた和解がなされたものであるところ(乙第4号証)、この和解における和解金は、本件会社が仮差し押さえた協和興材の売掛金の半額程度に止まる。これは、本製品の偽造品の販売が明らかとなったからに他ならない。
4 平成23年7月25日付け回答
大阪地方裁判所が損害論に入った理由は、本件会社商標が付された「GOLD Glitter」なる商品名のカーワックスである本件会社商品に貼付されたシールに関する本件会社の行為が不正競争防止法の不正競争行為に該当し、請求人以外の者が製造した本件会社商品の包装箱に製造・企画元として「株式会社吉野」と記載するなどした行為につき一般不法行為が成立すると判断したものであり、かかる本件会社商品の本件会社商標を使用することより、請求人が製造販売する本製品と同一の品質であると誤認させるとともに、混同を生じさせるおそれがある行為である。
また、訴変更申立書中の一般不法行為の侵害行為について、本件会社は、請求人から、本製品を購入することなく、請求人に無断で請求人以外の者が製造した本件会社商品の包装箱に製造・企画元として「株式会社吉野」と記載するとともに、原告の商品メーカーコードを付し、あたかも請求人が製造した本製品であるかのように装った商品を協和興材等に対して販売し、本来請求人が得ることができた利益相当額の損害を請求人に与えたものである。よって、本件会社の上記行為につき一般不法行為が成立する。
なお、上記事実は、近々言渡しがされる大阪地方裁判所平成19年(ワ)第11489号の判決により、一層明らかになるものであるから、請求人は審理の猶予を希望するものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び回答を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。
1 答弁
(1)本件事案における商標法53条1項非該当性について
ア 本件会社は専用使用権者又は通常使用権者には当たらない。
請求人は、本件会社が「専用使用権者又は通常使用権者」に当たると主張するが、当然専用使用権者と通常使用権者とは異なる概念であり、いずれに当たるか特定しなければ被請求人の防御に支障が生じ、このような不特定な主張によって取消請求が認められるべきではない。ただし、被請求人としては念のため、以下のとおり主張しておく。
本件会社は、事実上被請求人と同一であり、平成15年12月25日に被請求人を代表とする個人会社として単に法人成りしたものにすぎない。したがって、本件会社はいずれの使用権者にも該当せず、商標権者そのものであるから、本件事案は商標法53条1項には該当しない。
イ 本件会社すなわち被請求人の商標使用は品質誤認には該当しない。
上述のとおり、本件会社はいずれの使用権者にも該当しないことは明白であるが、念のため、品質誤認の点にも付言する。
品質誤認とは、たとえば風邪薬を胃薬と誤認させるような場合をいうのであるから、カーワックスをカーワックスとして表示することが品質誤認に当たらないことは明白である。仮に、劣悪な商品を提供して需要者の期待を裏切ることをも品質誤認に含めるとしても、そもそもそのような優劣は生じていない上、本件では品質の優劣について請求人は何ら言及しておらず、請求人がいかなる点をもって品質誤認と強弁するのか全くもって理解に苦しむ。
ウ 本件会社すなわち被請求人の商標使用は出所混同には該当しない。
本件製品は、被請求人が自らの商品として独自に販売してきたものであり、そもそも出所は被請求人である。すなわち、請求人提出の甲第3号証中の外箱の写真からも明らかなように、「GOLD Glitter」即請求人という関係にはなく、混同は全くない。
また、従来、本件製品を販売、すなわち本件取消請求にかかる商標を使用してきたのは、被請求人のみであり、そもそも具体的混同は生じえないのである。
仮に万が一、請求人が被請求人の預り知らないところで本件取消請求にかかる商標を使用していたとしても、従来からずっと、請求人は本件製品を販売していないことを被請求人に折に触れ告げてきた経緯からすれば、被請求人に対する背信行為であるとともに、商標法53条1項ただし書に該当するので、いずれにせよ本件取消請求には理由がない。
エ 本件商標登録の経緯及び請求人と被請求人との関係
そもそも、請求人は被請求人に対して、平成7年ころ、本件製品の一切を任せると申し入れ(乙第1号証)、被請求人はそれを了承した。そして、それ以降一貫して、被請求人が独占的に被請求人固有の商品として、本件製品を販売してきた。そのような状況の中で、被請求人が本件製品につき商標登録をする話が持ち上がり、請求人も歓迎する中、被請求人が平成10年10月に商標登録を行った(乙第2号証)。
その後、被請求人の営業努力により、協和興材と販売委託契約を締結することになったが、その際にも、請求人の名は一切出てきておらず、被請求人固有の商品として、被請求人のみの名で本件製品を販売するという内容で、販売委託契約が締結されているのである(乙第3号証)。また、協和興材との和解では、被請求人が協和興材に本件製品の標章を使用することを一定期間中認めることとなっているが、請求人は使用許諾に全く関与していない(乙第4号証)。
さらに、被請求人は、販売路拡大の中で、請求人の下請製造が追いつかなかったため、自らも本件製品を製造している。このことからしても、請求人は、本件製品の単なる製造会社の一つにすぎないことは明白である。
結局、請求人が主張するような正規品なるものは全く存在せず、本件製品の商標は被請求人のみが使用しているのであり、品質誤認や出所混同は生じえない。
オ 小括
以上述べてきたように、まず、本件取消請求は、専用使用権者又は通常使用権者を明確にせずに主張していることから、被請求人の防御に支障をきたし請求原因としては認められない。
さらに、本件会社はいずれの使用権者にも該当しないことから、商標法53条1項による取消請求には理由がなく、仮に本件会社がいずれかの使用権者に該当するとしても、品質誤認ないしは出所混同もなく、いずれにせよ請求人の取消請求には全く理由がない。
さらに万が一、本件会社による使用が法53条1項に該当するとしても、被請求人は同項ただし書に該当し、結局請求人の取消請求には理由がない。
そして、そもそも前記エで述べたとおり、本件製品は被請求人固有のものであり、請求人が主張するような正規品なるものは存在し得ないのであって、本件会社すなわち被請求人による商標使用により、品質誤認や出所混同が生じる余地はない。
(2)請求人提出の証拠について
ア 甲第3号証について
まず、丙号証とは何を指すのかが全くもって不明であるから、この点については反論を控える。また、別紙として添付された資料についても作成時期自体が全く不明であり、請求人の主張を基礎づけるものでは全くない。
イ 甲第6号証及び甲第7号証について
これらの報告書からすれば、2つの試料はほとんど同一の成分である。これをもって品質が異なると主張することは、到底認められない。そもそも、本件製品は、被請求人の商品に他ならず、品質誤認等が生じる余地はない。
ウ 小括
結局、請求人が提出した証拠は、被請求人が行った協和興材に対する仮差押えの際に参加してきた請求人が提出した証拠及び現在係争中の請求人と被請求人との間の訴訟で請求人が提出した証拠と同一であり、商標取消請求とは関係が全くないか、かなり希薄な証拠ばかりである。
(3)結語
以上の次第であるから、請求人の請求は速やかに棄却されるべきである。なお、請求人はほとんど同じ主張を民事訴訟上も展開しており(平成19年(ワ)第11489号)、このような審判制度の濫用ともいうべき行為は到底認められるべきではない。本件は長らく本件製品の下請製造会社として本件製品の下請製造に従事してきた請求人が、被請求人との関係が悪化するや、従前から長い間続いてきた被請求人との関係を全く無視して、商標の取消を突如として請求してきたものにすぎない。
本件については、既に司法上の紛争が先行しており、その裁判手続きにおいて結着を見る所存である。なお、被請求人としても、本年11月の近日中に請求人に対する民事裁判を提起することとしている。司法上の紛争が現に存在していることから、被請求人としては、司法上の認定・判断をも踏まえた的確な行政審判を望むものである。
2 平成23年7月20日付け回答
大阪地方裁判所平成19年(ワ)第11489号においては、被請求人の侵害行為は、本件製品の外箱に貼られている本件商標等と一切関係のないステッカー部分についてのみ問題とされているにすぎない。
しかも、現在大阪地方裁判所で審理されている損害論についても、請求人が主張のような不正競争防止法や商標法等を念頭に置いたものではなく、民事上の一般不法行為ないし債務不履行行為を念頭に置いたものであり、もはや知財事件としての色彩さえ失われつつある。そして、大阪地方裁判所においては、本件商標そのものが品質誤認をするものではないことが確認されているし、請求人の業務との混同を生じるものではないことも確認されている。
したがって、本件審理を直ちに進行されたい。

第4 当審の判断
商標法第53条第1項は、「専用使用権者又は通常使用権者が指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務についての登録商標又はこれに類似する商標の使用であつて商品の品質若しくは役務の質の誤認又は他人の業務に係る商品若しくは役務と混同を生ずるものをしたときは、何人も、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定している。
そして、請求人は、「本件商標は、その専用使用権者又は通常使用権者である有限会社グリッタージャパンが、その指定商品である『つや出し剤』についての登録商標の使用であって、その商品の品質を、請求人の開発・製造にかかるカーワックス『GOLD Glitter』と同一のものであると誤認、又は、他人である請求人の業務にかかる商品であるカーワックス『GOLD Glitter』と混同を生ずるものをしたので、商標法第53条第1項の規定により取り消されるべきものである。」旨主張している。
そこで、有限会社グリッタージャパン(本件会社)による商標の使用が商標法第53条第1項に規定する要件に該当するか否かについて検討する。
1 請求人及び被請求人提出の証拠及び主張によれば、本件審判請求に至った経緯等は次のとおり認められる。
(1)経緯等
ア 請求人は、平成6年6月ころから、株式会社吉野(請求人)を発売元として、別掲(1)のとおりの内向にギザギサの切れ込みを有する円内に「21」の文字、鷲の図及び「GOLD」と「Glitter」の文字からなる商標(以下「請求人使用商標」という。)並びに「GOLD Glitter」の文字からなる商標など(以下、これらをまとめて「請求人使用商標など」という。)の表示をして、請求人の創業者が開発したカーワックスの製造・販売を行っている(以下、請求人製造のカーワックスを「請求人商品」という。)(甲第9号証、甲第16号証、甲第19号証、甲第56号証、乙第6号証)。
イ 請求人は、平成6年秋ころから、請求人商品を被請求人が経営する店舗「ガレージ南」に納品していた(甲第9号証、乙第6号証)。
ウ 協和興材は、平成9年から請求人商品の販売をし、平成11年から平成18年まで約1億円の広告宣伝費を投入するなどして、「ゴールドグリッター」のブランドイメージを構築し、売上げを向上・維持してきたと自負している(甲第15号証)。
エ 本件会社の前身と推認できる「グリッタージャパン」(代表者は被請求人。)と協和興材は、平成13年6月9日に前者を委託者とし、後者を受託者として、商品「ゴールドグリター」の小売店への販売及び販売に関連する業務を委託する契約を締結した(乙第3号証)。
同契約は平成19年6月ころ合意解約されたと推認できる(乙第4号証)。
オ 本件会社は、自動車部品、用品の販売等を目的とし、被請求人を取締役として平成15年12月25日に設立され(甲第4号証)、設立当初から平成19年1月ころまで請求人と請求人商品を取引していた(甲第9号証、請求人主張)。
カ 本件会社は、遅くとも平成18年ころから、商品が止まると協和興材や販売店に迷惑がかかるので、自社でもゴールドグリッターを製造し別掲(2)の商標(以下「本件使用商標」という。)などを表示した商品(以下「被請求人商品」という。)をイエローハットへ納品していた(甲第8号証、甲第13号証)。
なお、協和興材の代表取締役は、被請求人は遅くとも平成16年ころから被請求人商品を納品していたと陳述している(甲第15号証)。
キ 請求人は、被請求人に対して本件審判とほぼ同じ主張をし、民事訴訟を提起した(平成19年(ワ)第11489号)。また、請求人は、この民事訴訟については、訴変更申立をした(甲第125号証)。
(2)商品の品質について
ア 請求人商品は、株式会社三栄書房発行の雑誌「CarGoodsMagazine」で、2001年(平成13年)の「カーグッズ・オブ・ザ・イヤー」のカーケア部門賞を受賞した(甲第8号証)。
イ 請求人商品と、協和興材入荷分の被請求人商品とは構成成分において大きな違いは見られず(甲第6号証)。イエローハット販売分の被請求人商品とも、その試験結果と甲第6号証の試験結果及び備考の記載と比較すれば構成成分において大きな違いは見られないといえる(甲第6号証、甲第7号証。なお、甲第6号証の「協和興材入荷分」の商品には本件使用商標を確認できないが、被請求人製造の商品であることについて甲第7号証の商品も含めて被請求人は争っていない。)。
ウ 協和興材の代表取締役は、平成19年6月に、ここ数年、「ゴールドグリッター」の購入者からの苦情が増加し、特に「以前のものと色が違う」「ノズルに粒状の物が付着しスプレーの穴が詰まる」といった申し出が多くなっていた旨陳述している(甲第15号証)。
(3)請求人商品について
ア 平成6年6月ころに販売された請求人商品(の包装)には、請求人使用商標(同一視できる商標を含む。以下同じ。)「GOLD Glitter」「株式会社吉野」「発売元 株式会社吉野」「製造元 YOSHINO CHEMICAL」の表示があり(甲第19号証、甲第20号証)、同時期の請求人商品の広告用チラシ、商品案内状及び請求人封筒などには、請求人使用商標のほか、「発売元/株式会社吉野」「株式会社 吉野」の表示がある(甲第3号証別紙1ないし5、甲第21号証、甲第25号証、甲第26号証、甲第31号証、甲第38号証、甲第42号証)。
なお、同時期の請求人商品のポスター、ステッカーには、請求人使用商標は表示されているが、「吉野」の表示はない(甲第22号証ないし甲第24号証)。
イ 平成10年ころから、請求人商品(の包装)には、請求人使用商標のほか、「総発売元 株式会社協和興材」「製造・企画元 株式会社 吉野 グリッタージャパン」と表示するようになった(甲第5号証の写真の左側、甲第9号証、甲第35号証の1及び4)。
また、雑誌の記事や広告においても、「株式会社協和興材」と大きく表示されその下に小さく「製造元 吉野 グリッタージャパン」と表示されており(甲第51号証ないし甲第53号証)、また、「吉野」の記載のないものもある(甲第50号証)。
ウ 株式会社自動車産業通信社発行の雑誌「オートマート A・M NETWORK」の「主要カー用品専門チェーン/カー用品売れ筋ランキング」のワックス部門において、「ゴールドグリッター」が、2003年(平成15年)11月の「ドライバースタンド」で2位にランクされた(甲第60号証の1)。
また、同じく「協和興材/ゴールドグリッター」及び「協和興材/ゴールドグリッター2P」が、2004年(平成16年)5月の「ドライバースタンド」で1位及び4位にランクされた(甲第60号証の2)ほか、同年11月ないし2007年(平成19年)5月の「ドライバースタンド」及び「イエローハット」で、1位ないし5位にランクされた(甲第60号証の3ないし8)。
2 商標法第53条第1項の各要件について
(1)使用権者か否かについて
ア 商標権者である被請求人が平成15年12月25日設立の本件会社の取締役であること(甲第4号証)、本件会社は自動車部品、用品の販売等を目的としていること、本件商標の指定商品が「つや出し剤」であること及び商標権者(被請求人)が本件会社の商標の使用行為について何らの異論も示していないことからみて、本件会社は本件商標に係る商標権について商標権者から少なくとも黙示の使用許諾を受けているとみるのが自然である。
したがって、本件会社は、その設立当初から、本件商標について商標権者から通常使用権を許諾された者(通常使用権者)といえる。
イ この点について、被請求人は、本件会社が事実上被請求人と同一であり、被請求人を代表とする個人会社として単に法人成りしたものにすぎず、本件会社は、商標権者そのものである旨主張している。
しかしながら、自然人である被請求人と法人である本件会社が別人格を構成することは明らかであるうえ、商標登録原簿に徴しても、本件会社は本件商標の商標権者ということはできない。
(2)本件商標と本件使用商標について
本件商標は、「GOLD Glitter」の文字を書してなるものである。
一方、本件使用商標は、別掲2のとおりの構成からなるものであり、その構成中「GOLD/Glitter」の文字部分が独立して自他商品識別機能を果たし得るものである。
そうとすれば、本件商標と本件使用商標とは、それぞれの構成文字に相応して生じる「ゴールドグリッター」の称呼を共通にし、かつ「GOLDGlitter」の構成文字も共通にするから、両者は互いに類似する商標である。
(3)本件商標の指定商品と被請求人商品について
本件商標の指定商品は第3類「つや出し剤」であり、被請求人商品は「カーワックス」であるから、被請求人商品は、本件商標の指定商品に含まれるものであって、これと同一または類似の商品である。
(4)商品の品質の誤認について
ア 商標法第53条は、商標権者は使用許諾にあたって自己の信用保全のため通常の場合十分な注意をするだろうけれども、もしそうでない場合には本条1項による取消をもって、そのような無責任な商標権者及び専用使用権者又は通常使用権者に対する制裁を課することとして、使用許諾制度の濫用による一般需要者への弊害防止の手段としており、このような意味から、同条第1項は51条では問題としない指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をも問題とし、かつ、その使用により商標権者の商品又は役務より劣悪な商品又は役務を提供して需要者の期待を裏切った場合にも本項の適用がある(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説、第17版)と解すべきである。
以下、上記解釈にしたがって本件について検討する。
イ 請求人は、本件会社が本件使用商標を品質の異なる商品(被請求人商品)に使用し、請求人の開発・製造にかかる請求人商品であるかのように品質の誤認を生ずるものをした旨主張している。
ウ 請求人提出の財団法人化学物質評価研究機構の試験報告書には、請求人商品と被請求人商品の試験結果が示され、甲第6号証の「6.備考」には「両試料を比較して、構成成分において大きな違いはみられなかった。」と記載され、また、請求人商品と甲第7号証のイエローハット販売分の被請求人商品も、甲第6号証の試験結果との比較から、これも構成成分において大きな違いはみられないといいえるものである。
そして、商品の改良は通常に行われているものであり、構成成分において大きな違いはみられないのであれば、ある程度の成分の違いや色の違いがあったとしても需要者の期待を裏切ったということはできない。
また、「ノズルに粒状の物が付着しスプレーの穴が詰まる」などの申し出については、穴が詰まる程度や申し出の件数などを示す証拠は提出されていないから、かかる申し出をもって被請求人商品が需要者の期待を裏切ったということはできない。
そうとすれば、本件会社が本件使用商標を品質の異なる商品(被請求人商品)に使用した行為は、商標法第53条第1項に規定する「商品の品質の誤認を生ずるものをした」ということはできない。
(5)他人の業務に係る商品との混同について
ア 請求人使用商標と本件使用商標について
請求人使用商標及び本件使用商標は、それぞれ別掲(1)及び別掲(2)のとおりの構成からなり、ほぼ同一の商標と認められる。
イ 請求人商品と被請求人商品
請求人商品と被請求人商品は、いずれも「カーワックス」であり同一である。
ウ 請求人使用商標の周知性について
前記1(3)で認定した事実によれば、次のとおりである。
(ア)平成6年6月ころの請求人商品の販売当初は、請求人商品(の包装)に請求人使用商標や「GOLD Glitter」の表示と共に、「株式会社吉野」「発売元 株式会社吉野」などの表示をしていたが、平成10年ころから、請求人商品(の包装)には、請求人使用商標のほか、「総発売元 株式会社協和興材」「製造・企画元 株式会社 吉野 グリッタージャパン」と表示するようになり、また、雑誌の記事や広告においては、「株式会社協和興材」と大きく表示されその下に「製造元 吉野 グリッタージャパン」と小さく表示され、「吉野」の記載のないものもある。
(イ)商品「ゴールドグリッター」が、「カーグッズ・オブ・ザ・イヤー」のカーケア部門賞を受賞したのは平成13年であり、また、「(協和興材)ゴールドリッター」としてカー用品売れ筋ランキングに入るようになったのは平成15年以降であり、いずれも請求人商品等に「協和興材」「グリッタージャパン」の表示がされるようになった数年後である。
(ウ)請求人は、協和興材とは平成18年ころまで、本件会社とは平成19年1月ころまで請求人商品を取引していた。
(エ)協和興材は、「ゴールドグリッター」のブランドイメージを構築し、売上げを向上・維持してきたと自負している。
(オ)以上を総合してみれば、請求人商品が「カーワックス」の需要者の間である程度知られるようになったのは、「協和興材」などと表示されるようになった平成10年以降とみるのが相当であり、該商品(の包装)や雑誌などでは「(株式会社)協和興材」の文字が大きく目立つように表示され、「(株式会社)吉野」の表示は「グリッタージャパン」の文字と共に小さく表されているか、その表示がないことから、請求人が、被請求人が被請求人商品を製造販売したと主張する平成16年4月ないし平成18年末において、請求人商品が「カーワックス」の取引者、需要者の間である程度知られていたといえるとしても、請求人使用商標などが請求人の業務に係る商品(請求人商品)を表示するものとして、その取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
エ 出所の混同について
請求人使用商標などが平成16年4月ないし平成18年末において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないこと上記ウのとおりであるから、本件使用商標が、請求人使用商標とほぼ同一の構成からなり、同一の商品に使用されるものであるとしても、本件会社が本件使用商標を「カーワックス」に使用しても、これに接する取引者、需要者が請求人の業務に係る「カーワックス」を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人と何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものといわなければならない。
オ 請求人の主な主張について
(ア)請求人は、被請求人が本件使用商標を使用することにより、需要者にカーグッズ・オブ・ザ・イヤーのカーケア部門賞を受賞した請求人商品と同じ品質の製品と誤認させることを問題としている旨主張している。
しかしながら、成分の違い等が需要者の期待を裏切ったということはできないこと上述のとおりであるから、かかる請求人の主張は採用できない。
(イ)請求人は、協和興材の関係者は被請求人商品を請求人商品と同一の品質のものと誤認、混同していた旨主張している。
しかしながら、カーワックスの取引者の1人にすぎない協和興材の担当者が、請求人商品のもともとの製造者が請求人であること又は請求人が最初に請求人使用商標の使用を始めたことを知っていたからこそ、上記のとおり誤認、混同が生じたと推認できるのであって、その余の取引者、需要者において同様の誤認、混同が生じるとは認め難いから、請求人のこの主張は採用できない。
3 その他の請求人の主張について
(1)検証について
本件において請求人から検証の申し出があるが、上記のとおり、検証によらなくとも書証等により結論に至ることができるので、検証の必要はないものと判断した。
(2)書証対照表について
請求人は、書証対照表を準備中である旨述べているが、書証対照表がなくても判断に影響はないから、これを待たずに結審した。
(3)民事訴訟について
請求人は、本件会社の行為につき一般不法行為が成立する。ただ、その事実は、近々言渡しがされる大阪地方裁判所平成19年(ワ)第11489号の判決により、一層明らかになるものであるから、審理の猶予を希望する旨述べている。
しかしながら、民事訴訟と本件審判とはその趣旨及び目的が異なることから、これを待たずに結審した。
4 結び
以上のとおり、本件会社による本件使用商標の使用は、商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたと認めることはできない。
したがって、本件会社による本件使用商標の使用は、商標法第53条第1項の要件を欠くものというべきであるから、本件商標の登録は、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(色彩については、原本参照)
(1)請求人使用商標



(2)本件使用商標




審理終結日 2011-11-11 
結審通知日 2008-10-01 
審決日 2011-12-12 
出願番号 商願平9-142120 
審決分類 T 1 31・ 5- Y (Z03)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 森吉 正美
特許庁審判官 小畑 恵一
瀧本 佐代子
登録日 1998-10-23 
登録番号 商標登録第4203576号(T4203576) 
商標の称呼 ゴールドグリッター、グリッター、グリター 
代理人 谷口 哲一 
代理人 松山 和徳 
代理人 平野 和宏 
代理人 薬袋 真司 
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