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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない X07
審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない X07
管理番号 1251558 
審判番号 不服2010-14460 
総通号数 147 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-30 
確定日 2012-01-10 
事件の表示 商願2008-82298拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲(A)のとおりの構成よりなり、第7類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品とし、平成20年10月9日に立体商標として登録出願され、その後、指定商品については、原審における同21年6月19日付け手続補正書により、第7類「グラブ浚渫船に装備された直巻能力70トン以上のジブクレーン用の浚渫用グラブバケット」と補正されたものである。

第2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、その構成全体をもって、指定商品の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと言わざるを得ないから、単に商品の形状を表示してなるものにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。

第3 当審において通知した審尋(要旨)
請求人は、請求書において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、商標法第3条第2項の適用条件を充足する可能性があるため、その主張をする準備があり、使用状況については、必要に応じて証拠を提出し、必要な立証を行う準備がある旨述べていたことから、当審判合議体は、請求人に対し、当該主張及びその証左として提出するものがあれば、提出されたい旨審尋すると共に、職権により証拠調べをした結果、商品「グラブバケット」について、請求人が本人製品の顕著な特徴的形状であると主張する「一対のシェル」と「下部フレーム」を「1本の軸」で連結しているものが、別掲(B)のとおり、他者により考案・製造されていることが認められる旨通知した。

第4 審尋に対する請求人の回答の要点
本願商標の指定商品の製造メーカーは、現在では請求人以外に2社しか存在せず、その中でも請求人の本願商品のシェア率は、圧倒的に高い。
また、該指定商品は、顧客の要求に応じて、一台毎に設計する特殊な商品であり、それ故、その取引者・需要者は高い専門的知識を有し、又製造メーカーと強い結びつきを持っている。
そのため、製造メーカーは勿論、取引者・需要者も専門家としての知識を保有している。
そして、取引者・需要者は本願商標の立体的形状によって、商品の出所を一定と認識すること、即ち、識別標識として利用しており、これを明らかにするためのアンケートを実施したところ、アンケートの全てにおいて、本願商標と同一の浚渫用グラブバケットの図は請求人の製造・販売にかかる浚渫用グラブバケットと認識されている。
よって、本願商標にかかる立体的形状は、取引の実際において識別標識として取引者・需要者に認識されており、本願商標は使用された結果、本願請求人の業務にかかる商品として認識することができる強い識別機能を発揮している。
したがって、本願商標は商標法第3条第1項第3号に該当するものではなく、仮に同号に該当するとしても取引の実際において識別標識として機能しており、商標法第3条第2項の規定によって、登録適格性を有するものである。

第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
(1)立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させる、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは上記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)これを本願についてみれば、その指定商品は「グラブ浚渫船に装備された直巻能力70トン以上のジブクレーン用の浚渫用グラブバケット」であるところ、本願商標は、別掲のとおり、左右一対のシェルを下部フレームに1本の軸を介して回動自在に軸支し、タイロッドの下端部をシェルに、上端部を上部フレームにそれぞれ回動自在に軸支してシェルと上部フレームを連結したものであり、「グラブバケット」の一種である「クラムシェルバケット」の形状を表したものである。
そうとすると、本願商標をその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、単に商品の形状そのものを表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
(3)請求人は、「本願商標は、『一対のシェル』と『下部フレーム』を1本の軸で連結しているものであり、これは請求人製品の顕著な特徴的形状である。そして、該軸を頂点として、『一対のシェル』と『一対のタイロッド』を連結する左右一対の軸が三角視を形成し、該三角視とその他の各部材の配置によって形成された本願商標の立体的形状を見た取引者・需要者は、一定の出所から流出した商品であることを容易に認識することができる。」旨主張する。
しかしながら、前記第3のとおり、「一対のシェルと下部フレームを1本の軸で連結しているグラブバケット」は、他者により考案・製造され(後掲(B)1(5)並びに2(1)及び(8))、さらに、従来から存在するグラブバケットの例とされている事実がある(同2(2)ないし(7)及び(9))。
そして、これらのグラブバケットは、請求人が主張する「一対のシェルと下部フレームを連結する軸と、一対のシェルと一対のタイロッドを連結する左右一対の軸が形成する三角視」を形成していることが確認できる(同1(5)並びに2(1)ないし(2)及び(4)ないし(9))。
そうすると、請求人の主張する本願商標の特徴である「一対のシェルと下部フレームを1本の軸で連結していること」及びこれにより形成された三角視は、「グラブバケット」の形状においては、殊更、特異なものでもなく、未だその商品の形状の範囲内のものと認識するにとどまるものであるから、請求人の主張は採用することができない。
(4)以上のとおり、本願商標は、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標を表示するにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条2項について
請求人は、「本願商標は、仮に商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、取引の実際において識別標識として機能しており、商標法第3条第2項の規定によって、登録適格性を有するものである。」と主張している。
そこで、本願商標が該要件を具備するに至っているか否かについて検討すると、請求人が提出した平成23年7月5日付け手続補足書における甲第1号証ないし同第3号証には、実際に使用した商標の記載がないため、本願商標が使用されている事実が確認できず、また、使用商品の広告宣伝については、証拠の提出あるいはその立証もないため、これらの事項について確認することができない。
そうとすると、該証拠によっても、本願商標にかかる立体的形状が自他商品の識別標識として使用されている事実を見いだすことができないから、本願商標が、使用の結果、取引者、需要者において請求人の業務に係る商品であることを表示する商標として広く認識されるに至ったものとは認められない。
なお、請求人は、本願商標が周知であることを立証するものの一つとして、アンケート調査の結果(甲第4号証)を提出しているが、該調査は、その調査対象を、甲第3号証で示された本願指定商品である「直巻能力70トン以上のジブクレーン用の浚渫用グラブバケット」を装備したグラブ浚渫船46隻の所有者28社及び過去に所有した経験のある当業者33社としたものであって、グラブバケットを取り扱う一般的な取引者・需要者としたものではない。
さらに、該グラブ浚渫船46隻中44隻は、出願人の製造・販売に係る本願指定商品を装備するものであるとの出願人の主張をかんがみれば、調査の対象者について、公平な選定が行われたものとは認められず、少なくとも、甲第1号証に記載されたグラブ浚渫船を所有する者である229社にまで、対象を広げるなどしていない以上は、該調査結果をもって本願商標が周知であることを立証したとは認められない。
また、その設問4において、本願商標を含む4図を示した上で、どれが出願人の所有に係るものであるかと質問しているところ、提示された本願商標以外の3図のグラブバケットは、いずれもシェルと下部フレームを2本の軸で連結するものであって、軸が1本である本願商標とは大きく特徴を異にするものであるから、これをもって本願商標の周知性についての客観的なアンケート結果が得られたとはいえない。
さらに、該調査が行われた時期・期間、実施者、実施方法等が示されていないことも併せみれば、該調査の信頼性及び公平性が高いものということはできず、この結果をそのまま採用することはできない。
その他、請求人が提出した各資料の内容を総合してみても、本願商標が、使用の結果、請求人の業務に係る商品を表示する商標として広く認識されるに至っていると認めるに足るものは、発見できない。
したがって、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであるとする請求人の主張は、これを採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできず、また、本願商標は、同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、登録できない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(A)本願商標


(B)商品「グラブバケット」について、「一対のシェル」と「下部フレーム」を「1本の軸」で連結しているものが、他者により考案・製造されていること

1 インターネットのウェブサイトにおける記載について
(1)「株式会社SKK」のウェブサイトにおいて、「製品紹介(浚渫機)」中の「浚渫船」「● 水平堀装置(深度補正機能付)」の見出しの下、「浚渫効率を高める『水平堀り制御システム』」の説明図(http://www.skk-crane.co.jp/product02_suihei.html)。
(2)「国土交通省」提供のインターネットデータベースシステム「新技術情報提供システム(New Technology Information System:NETIS)」において、「技術名称 END工法(登録No. KTK-040006-A )」の見出しの下、「新規性及び期待される効果」中の説明図及び「施工方法」中の「ENDグラブ開閉状況の写真
http://www.netis.mlit.go.jp/RenewNetis/Search/Nt/NtDetailPreview.asp?REG_NO=KTK-040006&TabType=&nt=nt&pFlg=1
(3)「東亜建設工業株式会社」のウェブサイトにおいて、「企業情報」「プレスリリース」中の「薄層浚渫を効率的に行う『ワイドグラブバケット浚渫工法』を開発(2009年07月07日)」の見出しの下、「◆既に実用化されているスーパーグラブバケット浚渫工法」中の「ワイヤー型(6.0m3)」の写真及び「◆ワイドグラブバケット機構図」(http://www.toa-const.co.jp/company/release/2009/090707.html)。
(4)「国土交通省 東北地方整備局 仙台港湾空港技術調査事務所」のウェブサイトにおいて、「平成17年度第2回技術発表会 平成18年2月28日」中に、「スーパーグラブバケット浚渫工法 ?環境対応型高精度浚渫により汚染底泥にも対応?」の見出しの下、「スーパーグラブバケット浚渫工法の特徴」中の説明図及び「泥掴み試験」中の「通常密閉バケットによる泥掴み状況」並びに「スーパーグラブバケットによる泥掴み状況」の写真(http://www.pa.thr.mlit.go.jp/sendaigicho/topics/17/pdf/topics38.pdf)。
(5)「ミノツ鉄工株式会社」のウェブサイトにおいて、
ア 「IRON Catch The Heart」の見出しの下、製品の写真(http://www.minotsu.com/)。
イ 「製品ラインナップ」中の「薄層浚渫バケット(はくそうしゅんせつ)」及び「特殊バケット」の写真(http://www.minotsu.com/lineup.html)。
ウ 「ドレッジャーバケット」の図(http://www.minotsu.com/pdf/DredgerBucket.pdf)。
エ 「クラムシェルバケット」の図(http://www.minotsu.com/pdf/ClamShellBucket.pdf)。
(6)「寄神建設株式会社」のウェブサイトにおいて、「技術・工法」中の「<海洋技術> 薄層グラブ工法」における「グラブバケット」の写真(http://www.yorigami.co.jp/skill/marine_05.html)。

2 公開特許公報における記載について
(1)特開平09-151075「浚渫用グラブバケット」の「【図1】本発明の一実施形態に係る浚渫用グラブバケットの側面図」及び「【図6】従来のグラブバケットの側面図」
(2)特開2000-328594「浚渫用クラムシェルバケット」の「【図1】 本発明実施例におけるバケットを閉じた状態の正面図」、及び「【図7】 従来例におけるバケットを閉じた状態の正面図」
(3)特開2005-264606「浚渫用バケット」の「【図3】第2の実施の形態の浚渫用バケットの断面図」、「【図5】図3の浚渫用バケットの斜視図」、「【図6】(1)?(3)は図3の浚渫用バケットの開閉状態を示す図」及び「【図11】クラムシェルバケットの開閉図」
(4)特開2005-325602「浚渫用グラブバケット」の「【図1】本発明に係る左右一対のバケットを閉じた状態を示す正面図」及び「【図7】従来の浚渫用グラフバケットを示す正面図」
(5)特開2005-336840「浚渫用クラムシェルバケット」の「【図1】本発明実施例におけるバケットを閉じた状態の正面図」
(6)特開2008-255691「浚渫用密閉型グラブバケット」の「【図1】本発明の浚渫用密閉型グラブバケットの一例を示す、(a)は正面図」
(7)特開2010-159545「浚渫方法」の「【図1】仕上げ掘りグラブバケットを例示する正面図」及び「【図5】第1のグラブバケットを例示する正面図」
(8)特開2010-255323「浚渫用グラブバケット」の「【図2】グラブバケットの正面図」
(9)特開2011-032096「グラブバケット」の「【図1】本発明に係るグラブバケット1の正面図」、「【図10】従来例に係るグラブバケット20の正面図」及び「【図11】同グラブバケット20の閉状態の正面図」

審理終結日 2011-10-18 
結審通知日 2011-10-20 
審決日 2011-11-24 
出願番号 商願2008-82298(T2008-82298) 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (X07)
T 1 8・ 13- Z (X07)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹之内 正隆田中 敬規 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 大塚 順子
酒井 福造
代理人 田中 幹人 

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