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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y38
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y38
管理番号 1249920 
審判番号 無効2008-890055 
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2008-06-23 
確定日 2011-12-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第5033584号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成21年6月17日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10328号、平成22年3月17日判決言渡)があり、また、同判決に対する上告及び上告受理の申立てに対し、同裁判所において、本件上告却下及び本件上告受理申立却下(平成22年(行サ)第10018号及び同22年(行ノ)第10022号、平成23年5月31日決定)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第5033584号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第5033584号商標(以下、「本件商標」という。)は、「berry mobile」の文字を標準文字により表してなり、平成18年6月17日に登録出願、第38類「携帯電話による通信」を指定役務として、平成19年3月16日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人の引用する登録商標は、以下の5件である。
(1)登録第4991053号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1に示す構成からなり、同じく登録第4991054号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2に示す構成からなり、いずれも、2004年9月3日アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成17年3月3日に登録出願、第9類、第38類及び第41類に属する後記1に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成18年9月29日に設定登録されたものである。
(2)登録第4477643号商標(以下「引用商標3」という。)は、「BLACKBERRY」の文字を標準文字により表してなり、平成11年7月19日に登録出願、第9類及び第38類に属する後記2に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成13年5月25日に設定登録されたものである。
(3)登録第4473860号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲3に示す構成からなり、また、登録第4473861号商標(以下「引用商標5」という。)は、「BLACKBERRY」の文字を書してなり、いずれも、1999年1月25日アメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成11年7月26日に登録出願、第9類及び第38類に属する後記2に記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、平成13年5月11日に設定登録されたものである。
以下、これらを併せて「引用商標」という。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第153号証を提出した。
(1)請求の理由
ア 無効理由について
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものである。
イ 商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標と請求人の有する登録商標の類似性
a 本件商標は、甲第1号証記載のとおりである。本件商標を構成する「mobile」は、携帯電話(機)を表す語句として知られている(甲6)。
したがって、本件商標の「mobile(携帯電話(機))」部分は、本件商標に係る指定役務「第38類 携帯電話による通信」との関係においては、その役務の提供に用いられる商品(携帯電話(機))を示していると認められ、自他役務識別力は弱い。
よって、本件商標において自他役務識別力を有する部分は、「berry」部分である。
b 請求人は、以下の引用商標を有している。
(i)引用商標1は、図形、欧文字「Black」及び「Berry」から構成されている。そして、「Black」及び「Berry」の先頭文字の「B」が大文字であり、他の文字が小文字であるので、取引者、需要者が上記登録商標から欧文字「Berry」を認識、把握することは容易である。
(ii)引用商標2は、黒塗りの四角形中に、白抜きで、図形、欧文字「Black」及び「Berry」が描かれている。そして、「Black」及び「Berry」の先頭文字の「B」が大文字であり、他の文字が小文字であるので、取引者・需要者が上記登録商標から欧文字「Berry」を認識、把握することは容易である。
(iii)引用商標3は、標準文字の欧文字「BLACKBERRY」である。「BLACK」及び「BERRY」は、日本人に馴染みのある欧文字なので、取引者、需要者が上記登録商標から欧文字「BERRY」を認識、把握することは容易である。
(iv)引用商標4は、標準文字に近い欧文字「BLACKBERRY」を横書き一列で書し、同欧文字の上に封筒及び曲線が描かれたものである。「BLACK」及び「BERRY」は、日本人に馴染みのある欧文字なので、取引者、需要者が上記登録商標から欧文字「BERRY」を認識、把握することは容易である。
(v)引用商標5は、標準文字に近い欧文字「BLACKBERRY」を横書き一列で書したものである。「BLACK」及び「BERRY」は、日本人に馴染みのある欧文字なので、取引者、需要者が上記登録商標から欧文字「BERRY」を認識、把握することは容易である。
c 上記(a)及び(b)より、本件商標と請求人が有する登録商標とは、欧文字「BERRY(Berry)」を共通にする類似商標である。
(イ)指定役務について
本件商標の指定役務は、「第38類 携帯電話による通信」(38A01)である(甲1)。引用商標は、すべて「第38類 移動体電話による通信,電話による通信,等」(38A01)を含んでいる。
したがって、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とは類似する。
(ウ)本件商標と請求人の有する登録商標との先後関係について
本件商標は、平成18年6月17日に出願され、平成19年2月19日に登録査定を受けている(甲1)。引用商標の出願日及び登録査定日は、甲第4号証、甲第7号証ないし同第10号証記載のとおりである。
上記より、本件商標は、引用商標の後に出願され、登録査定を受けている。
(エ)結論
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
ウ 商標法第4条第1項第15号について
(ア)請求人が使用する商標の周知、著名性について
請求人が使用する商標は、本件商標の出願日(平成18年6月17日)及び登録査定時(平成19年2月19日)において、日本国内で周知、著名である。
請求人は、商標「BlackBerry」を付したモバイル情報端末を製造、販売し、日本においてNTTドコモが上記商品を導入している。
NTTドコモが上記商品を導入することを紹介する記事及び商標「BlackBerry」を付したモバイル情報端末を紹介する記事が、本件商標の出願時にインターネット及び新聞に掲載されている(甲11ないし甲70)。
また、本件商標の出願日以降においても継続して、商標「BlackBerry」を付したモバイル情報端末を紹介する記事がインターネット及び新聞等に掲載されている(甲71ないし甲121)。
上記甲第11号証ないし甲第121号証により、請求人が使用する商標は、本件商標の出願日及び登録査定時において、日本国内で周知、著名であることは明らかである。
(イ)他人の業務に係る商品又は役務と出所の混同を生じるおそれがあることについて
商標法第4条第1項第15号における「出所の混同を生じるおそれ」は、「他人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同するおそれがある場合」をもいう。
そこで、本件商標を付した役務が、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品および役務であると誤認され、その商品および役務の出所について混同するおそれがあるかを検討する。
請求人は商標「BlackBerry」を付したモバイル情報端末を製造、販売している(甲5)。
また、本件商標に係る指定役務(携帯電話による通信)の提供には、モバイル情報端末(携帯電話が含まれる)が必須であるので、同商品と役務とは密接な関係にある。
したがって、取引者、需要者は、「Berry」を含む商標を使用して「携帯電話による通信」を行っている者は、携帯端末の製造者、販売者と経済的又は組織的に何等かの関係があると誤認する。
(ウ)結論
以上より、本件において、商標法第4条第1項第15号における「出所の混同を生じるおそれ」が生じるのであり、本件商標は、同号に違反して登録されたものである。
エ 商標法第4条第1項第10号について
(ア)請求人が使用する商標と本件商標との類似性について
上記のとおり、請求人が使用する商標と本件商標とは類似する。
(イ)請求人が使用する商標の周知、著名性について
上記のとおり、請求人が使用する商標は、日本国内において周知、著名である。
(ウ)請求人の提供する商品及び役務と本件商標に係る指定役務との類似性について
請求人について記載する記事には、NTTドコモが「BlackBerry」を付したモバイル情報端末を導入するとか、同端末で電子メールを受信するとか、の記述がある。
上記記事を読んだ取引者、需要者は、「BlackBerry」が商品のみならず、通信サービスにも使用されると認識する。また、「携帯電話による通信」には、携帯情報端末装置(携帯電話を含む)は必須なので、携帯情報端末装置(携帯電話を含む)において周知、著名と認められる場合は、それを用いる通信サービスにおいても周知、著名と認められる。
(エ)結論
以上より、本件商標は、商標法第4条1項第10号に違反して登録されたことは明らかである。
オ 商標法第4条第1項第19号について
(ア)請求人が使用する商標が日本国内及び外国にて広く知られていることについて
上述のとおり、請求人が使用する商標は日本国内において広く知られている。
請求人は、1997年より商標「BlackBerry」を付したモバイル情報端末を外国において販売しており、「BlackBerry」は海外において広く知られている。
(イ)請求人が使用する(有する)商標と本件商標とが類似することについて
前記で述べたとおり、上記両商標は類似する。
(ウ)不正の目的で使用することについて
本件商標に係る指定役務は、「携帯電話による通信」であり、携帯情報端末装置(携帯電話を含む)と密接な関係がある。
海外の携帯情報端末装置(携帯電話を含む)が日本国内で導入され、同装置を用いて情報通信サービスが提供されることは容易に予想されることである。
そして、海外で周知、著名な携帯情報端末装置(携帯電話を含む)に付される商標と類似の商標を用いて、「携帯電話による通信」を行う場合は、取引者、需要者は、装置の提供者と通信の提供者を混乱することがあり、かかる事態は、周知、著名な商標にフリーライドするものである。
以上をまとめると、本件商標は、不正の目的をもって使用するものである。
(エ)結論
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
(2)弁駁
ア 商標法第4条第1項第15号について
(ア)被請求人は、答弁書中で「[『ブラックベリー』といえば、米国でベストセラーの法人メール端末として日本でも知られている。](乙7)としても」と述べ、「ブラックベリー」がメール端末の名称として日本でも知られていることは否定していない。
請求人は、商標「BlackBerry」がモバイル情報端末の名称として日本国内で周知、著名であることの証明に係る証拠を提出している(甲2ないし甲121)。上記証拠に加え、商標「BlackBerry」が日本国内及び海外において周知、著名であることを補強する証拠を追加提出する(甲122ないし甲126)。
上記証拠(甲2ないし甲126)により、商標「BlackBerry」がモバイル情報端末の名称として日本国内及び海外で周知、著名であることは明らかである。
(イ)請求人は、商標「BlackBerry」をモバイル情報端末の名称として一貫して使用し続けている。
商標「BlackBerry」は欧文字「Black」及び欧文字「Berry」からなり、欧文字「Berry」からは「ベリー類」又は「苺」程の意味内容が把握、認識される。欧文字「Berry(ベリー類又は苺)」は、一般にモバイル情報端末とは関係が薄い語句であるといえる。
したがって、モバイル情報端末の名称に欧文字「Black」を使用することは、斬新な発想といえ、モバイル情報端末に付されて「BlackBerry」に接した取引者、需要者に強い印象を与えるものであり、その者達の記憶に残るものである。
(ウ)商標「BlackBerry」がモバイル情報端末の名称として一貫して使用されていること、及び、同商標中の「Berry」が取引者、需要者の記憶に残りやすい語句であることを勘案すると、モバイル情報端末(これと類似関係にある商品を含む。以下、同じ。)の名称中に欧文字「Berry」が含まれている場合には、モバイル情報端末の取引者、需要者は、「BlackBerry」の関連商品と誤認することが想定される。
(エ)そして、裁判例には以下のようなものが存在する。
「たとえ他人の業務に係る商品又は役務を表示する標章が、全国的に周知あるいは著名でなくても、他人の業務に係る商品又は役務と当該商標の指定商品又は指定役務との親近性の程度、及び、他人の業務に係る商品又は役務を表示する標章と当該商標との類似性の程度によっては、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれを肯定すべき場合がありうる。」(平成10年12月1日 東京高平成9年(行ケ)第266号)
(オ)上記裁判例を本件商標に当てはめてみると、本件商標の指定役務「携帯電話による通信」にとって、モバイル情報端末は必須の商品であるので、本件商標の指定役務と使用商標に係る商品との親近性は極めて高いといえる。
また、モバイル情報端末における「Berry」が同商品の取引者、需要者の記憶に強く残ることから、本件商標と使用商標との類似性も肯定されうる。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
イ 商標法第4条第1項第11号について
上記で述べたとおり、引用商標において「Berry」又は「BERRY」部分は取引者、需要者の記憶に残る部分である。
また、下記エで述べるが、被請求人は引用商標を参考に本件商標を選定したと強く疑われる。このことは、被請求人は「Berry」又は「BERRY」部分が顕著性を有することを認識していたと強く推察させるものである。
したがって、引用商標から「Berry」又は「BERRY」部分が抽出されないとの被請求人の主張は、禁反言の法理に反するものと捉えることができ、許されない。
以上より、本件商標と引用商標とは類似すると認められる。
ウ 商標法第4条第1項第10号について
引用商標は「Berry」又は「BERRY」部分に着目されることが十分ありえる。
また、本件商標を構成する「mobile」は、携帯電話(機)を表す語句として知られている(甲6)。したがって、本件商標の「mobile(携帯電話(機))」部分は、本件商標に係る指定役務「第38類携帯電話による通信」との関係においては、その役務の提供に用いられる商品(携帯電話(機))を示していると認められ、自他役務識別力は弱い。よって、本件商標において自他役務識別力を有する部分は、「berry」部分である。
以上より、本件商標と引用商標とは、「Berry」又は「BERRY」部分を共通にする類似の商標といえる。
エ 商標法第4条第1項第19号について
モバイル情報端末と「Berry」又は「BERRY」とは全く関係しない。そして、モバイル情報端末という最先端の機器に果物の名称である「Berry」又は「BERRY」を付すというのは極めて斬新、画期的な発想である。上記発想が偶然になされたとは考えにくく、請求人の有する商標を参考に本件商標が決定されたことが強く疑われる。
このことから、被請求人は、「Berry」又は「BERRY」が顕著性を有することを認識していたと認められる。すなわち、本件商標と請求人の有する商標との混同が生じる(類似となる)ことを意図していたと認められる。
以上より、本件商標と請求人の有する商標とは類似すること及び不正の目的を有していたことが認められる。
なお、請求人の有する商標が日本国内又は外国において広く認識されていることは、請求人提出の証拠により明らかである。

4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第15号について
ア 請求人が使用する商標について
甲第11号証ないし甲第121号証よりすると、「BlackBerry」又は「ブラックベリー」の表示は認められるとしても、「Berry」又は「BERRY」が単独にて表示されているものは、全く見当たらない。
イ ところで、甲第2号証の判決の他、著名商標についての参考審決としては、無効2007-890038がある(乙8)。
ウ これを本件についてみるに、本件出願の出願日以降であって、その登録日以前である、平成18年9月28日の時点において、[「ブラックベリー」といえば、米国でベストセラーの法人メール端末として日本でも知られている。](乙7)としても、「Berry」、「BERRY」又は「ベリー」の表示が請求人使用商標の「BlackBerry」又は「BLACKBERRY」の略称を表すものとして、本件商標の出願日及び登録査定時において、我が国の移動体電話による通信,電話による通信の分野の取引者及び需要者の間で広く認識されていたとする証左については、見出し得ない。
エ そうすると、甲第11号証ないし甲第121号証によれば、「BlackBerry」なる商標は我が国において、あくまでEメールを送受信したり、スケジュールを管理したりするアプリケーション商品の名称であり「通信等の役務」の名称ではないものである。つまり、日本において「BlackBerry」が提供されているNTTドコモを例にすれば「通信等の役務」提供者はNTTドコモであり、「BlackBerry」はあくまでアプリケーション商品の名称にすぎない。一方、「berrymobile」は正に「通信等の役務」の名称であり、日本の場合を例にすればKDDIが提供する移動体通信事業の名称である「au」というブランド名に相当するものである。また、仮に移動体電話による通信,電話による通信等の役務についてある程度使用されていたとしても、「Berry」又は「BERRY」が単独で移動体電話による通信,電話による通信等の役務に使用され、請求人の使用商標として我が国において周知、著名であるとは到底認め難い。
オ 商標法第4条第1項第15号の適用にあたっては、対象となる商標に著名商標(本件の場合「Berry」又は「BERRY」が著名であることが必須)が含まれ、他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標の場合において適用されるから、この点に関する請求人の主張は失当である。
(2)商標法第4条第1項11号について
本件商標は、「berrymobile」と標準文字で一連一体に表示してなり、たとえ「berry」と「mobile」の間にスペースがあるとしても、外観構成上全体をもって認識されるというのが自然であり、また、これより生ずると認められる「ベリーモバイル」の称呼も一気一連に無理なく称呼し得るものであるから、「ベリーモバイル」の称呼のみを生じ、特定の観念を有しない造語というのが相当である。
ところで、被請求人は、平成17年に会社設立、仮想移動体通信事業(MVNO)等を事業内容とするところ、平成18年には、ヨーロッパに住む日本人のための携帯電話サービス/MVNO「ベリーモバイル」をドイツでスタートさせている(乙9及び乙10)。
他方、引用商標は、いずれも本件商標よりも先に出願され、「Black」と「Berry」又は「BLACK」と「BERRY」との組み合わせからなり、単に「Berry」又は「BERRY」が移動体電話による通信,電話による通信等の役務に使用されて日本国内において周知、著名となっているものではない。
また、これらは同一の書体又は同一の大きさで外観上まとまりよく一体的に表されており、また、構成文字全体より生ずると認められる「ブラックベリー」の称呼も格別冗長というべきものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、かかる構成にあっては、本願商標に接する取引者、需要者をして、構成中特定の文字部分のみが、独立して認識されるとみるべき格別の事情が存するものとは認められず、殊更に前半部の「Black」又は「BLACK」の文字部分を省略して、後半部の「Berry」又は「BERRY」の文字部分のみに着目し、当該文字部分より生ずる「ベリー」の称呼をもって取引に当たるというよりも、むしろ、その構成全体をもって一体不可分のものと認識、把握し、商取引に当たるものとみるのが自然であり、特定の観念を有しない造語というのが相当である。
さらに、単に「Berry」又は「BERRY」が、「移動体電話による通信,電話による通信」等の役務に使用されて日本国内において周知、著名となっていることは、甲第11号証ないし甲第121号証によっても、明らかにされておらず、この点における請求人の主張は失当である。
そうすると、本件商標と引用商標とは、それぞれの全体構成が明らかに異なるものであって、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、結局、非類似の商標である。
してみれば、「Black」及び「Berry」の先頭文字の「B」が大文字であり、他の文字で小文字であるとか、「BLACK」及び「BERRY」は、日本人に馴染みのある欧文字であるという理由のみで、取引者、需要者が引用商標から欧文字「Berry」又は「BERRY」を把握することは容易であるとし、その上で「Berry」又は「BERRY」を含む引用商標と類似するものとする請求人の主張は失当である。
(3)商標法第4条第1項第10号について
本件商標は、「Berry」又は「BERRY」を含む請求人使用各商標とは、商標において別異のものであって、非類似の商標であり、しかも「Berry」又は「BERRY」が単独では請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものといえないから、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
(4)商標法第4条第1項第15号及び同第19号について
証拠によれば、「BlackBerry」又は「BLACKBERRY」の請求人使用各商標が移動体電話による通信,電話による通信等の役務に使用され、ある程度知られていることが認められるとしても、本件商標と請求人使用各商標とは商標において別異のものであるから、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者が「Berry」又は「BERRY」を含む請求人使用各商標を直ちに連想又は想起するとはいい難く、また、請求人の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはなく、不正の目的をもって使用するものともいえない。
(5)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反してされたものではない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号該当について
ア 認定事実について
(ア)証拠(甲3、甲5、甲11ないし甲70、甲72ないし甲82、甲87、甲94、甲111、甲112、甲123、甲124、甲133)及び請求の理由及び答弁に対する弁駁の全趣旨によると、次の事実が認められる。
a 請求人は、昭和59年に設立され、モバイル情報端末の開発、製造、販売等を業とするカナダの法人である。
b 請求人は、平成9年ころから、北米を中心に、その名称に「BlackBerry」の語を含むモバイル情報端末(以下「BlackBerry端末」という。)を販売するなどし、平成18年6月ころまでには、北米の企業、ビジネスマン等を中心に利用者が500万人以上に上るなどの人気を博すようになっていた。
c 我が国においてBlackBerry端末の販売等がされるようになったのは、平成18年9月からであるが、北米を中心とした外国において請求人の開発、販売に係るBlackBerry端末が広く普及していることなどについては、平成12年7月から平成18年5月にかけ、日経産業新聞、日本経済新聞等において断続的に報道されていた。
d 平成18年6月8日、NTTドコモ及び請求人は、法人ユーザーの要望に応えるためNTTドコモがBlackBerry端末を導入することについて基本合意に達したこと、同年秋ころの導入に向けて検討を進めていくことなどを発表し、同年6月、このことを紹介する記事や、BlackBerry端末を紹介する記事が日経産業新聞及び日本経済新聞のほか、各種ウェブサイトに掲載された。
e NTTドコモは、同年9月19日、法人ユーザーに対するBlackBerry端末の販売及びこれに対応するサービスの提供を同月26日に開始することなどを発表し、そのころ、このことを紹介する記事や、BlackBerry端末を紹介する記事等が日経産業新聞及び日経流通新聞のほか、各種ウェブサイトに掲載され、また、「世界の“黒苺”日本上陸」と題するテレビニュースの放映もされた。ただし、この時点においては、販売されるBlackBerry端末は英語版(それだけでは日本語入力のできないもの)のみとされ、また、個人消費者向けの店頭販売は行わないこととされた。
カ 請求人は、同月25日、東京都内において、BlackBerry端末及びこれに対応するサービスについての説明会を開催するとともに、同端末の日本語版の販売及びこれに対応するサービスの提供を平成19年の第2四半期をめどに開始することを発表した。
f NTTドコモ及び請求人は、本件査定日の約3か月半後である平成19年6月7日、法人ユーザーの要望に応えるためBlackBerry端末の日本語版を開発し、同年夏ころの導入に向けて準備を進めていくことなどを発表し、同年7月、同端末の日本語版の販売等が開始された。なお、法人向けの販売状況については、外資系企業を中心に約2万台が販売されたとの平成20年9月11日付けのウェブサイト上の記事が存在する。
g NTTドコモは、平成20年8月1日、BlackBerry端末の個人消費者向けの販売等を開始した。
h 同年秋ころの時点で、BlackBerry端末の利用者は、北米を中心に、世界百数十か国で千数百万人に上っている。
(イ)上記事実によると、請求人商標1及び2は、本件出願前から、北米を中心とする諸外国において、請求人の業務に係る商品及び役務を示すものとして、モバイル情報端末に係る需要者の間に広く認識されていたものと認められ、そのことは、報道等を通じ、本件出願前から、我が国においても広く紹介されていたということができる。
イ 本件商標と引用商標との類否について
(ア)本件商標から生じる称呼及び観念
本件商標は、「berry」の文字と「mobile」の文字との間に1文字分のスペースを空けた上、これらを標準文字で横書きして成るものであり、「berry」の文字と「mobile」の文字とをその構成部分とするものであることは、視覚上、容易に認識することができるものであるところ、「mobile」は、「携帯電話(機)」を意味する語(甲6)であって、本件指定役務を構成する本質的な要素を指すものであるから、本件商標中の「mobile」の部分のみから出所識別標識としての称呼及び観念が生じないことは明らかである。
そうすると、本件商標からは、その全体に対応した称呼及び観念のほか、「berry」の部分に対応した「ベリー」の称呼及び「果物のベリー」の観念も生じるというべきである。
(イ)引用商標1及び2から生じる称呼及び観念
引用商標1及び2の各文字部分は、「BlackBerry」の文字を横書きして成るものであるが、「B」の2文字がいずれも大文字で表されていることにより、「Black」の部分と「Berry」の部分とが連続して記載されていても、別の部分として認識されるほか、我が国において、「black」は、「黒」、「黒い」などを意味するなじみの深い英単語であり、その直後に果物の1つの種類(漿果)を意味する「berry」のような名詞が続く場合、単に色を表す形容詞として認識されるのが通常であること、また、「ベリー」が果実の1つの種類を表す言葉として認識されていることからすると、当該各文字部分が「Black」の部分と「Berry」の部分とに分離して観察されることは否定することができない。
もとより、「blackberry」は、1つの英単語であるが、同時に、「black」及び「berry」の英単語もそれぞれ存在するのであるから、「blackberry」が1つの英単語であることは、引用商標1及び2の各文字部分が「Black」の部分と「Berry」の部分とに分離して観察され得るとの上記判断を左右するものではない。
そうすると、引用商標1及び2からは、その文字部分全体に対応した称呼及び当該文字部分全体と図形部分とに対応した観念が生じるだけでなく、「Berry」の文字部分に対応した「ベリー」の称呼及び当該文字部分とベリー類の果実を図案化したものと認められる図形部分とに対応した「果物のベリー」の観念も生じるといわざるを得ない。
(ウ)本件商標と引用商標1及び2との類否
上記(1)及び(2)によると、本件商標と引用商標1及び2とは、称呼及び観念において共通するものであるから、本件商標と引用商標1及び2とがその外観を異にすることを考慮しても、本件商標と引用商標1及び2とが同一又は類似の役務に使用された場合には、当該役務の出所について混同が生じるおそれがあるというべきであるから、本件商標は、引用商標1及び2と類似するものと認めるのが相当である。
(エ)役務の同一性
本件指定役務は、引用商標1及び2の指定役務である「移動体電話による通信」と同一のものである。
(オ)小括
したがって、本件商標と引用商標3ないし5との類否について判断するまでもなく、本件商標は、商標法4条1項11号に該当するものである。
(2)まとめ
以上のとおり、本件商標は法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その余の無効理由について判断を示すまでもなく、法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(引用商標1)



別掲2(引用商標2)



別掲3(引用商標4)





[後記1]
第9類:無線によるデータの送受信用のハンドヘルド電子装置,メッセージ・全世界的コンピュータネットワーク電子メール及びその他データをパーソナルコンピュータ又はサーバー上の若しくはそれらと関連したデータストアから1つ又はそれ以上のハンドヘルド電子装置へリダイレクトすることに関するコンピュータ用プログラムを記憶させたコンピュータソフトウェア,遠隔ステーション又は装置と固定若しくは遠隔ステーション又は装置間のデータの同期化に関するコンピュータ用プログラムを記憶させたコンピュータソフトウェア,データへの一方向型及び双方向型の無線接続を提供するコンピュータソフトウェア

第38類:電子メール通信,電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供,一方向型又は双方向型の無線呼出し,移動体電話による通信,電話による通信,テレビ電話による通信,電子計算機端末を利用した音声による通信,コンピュータ通信ネットワークを通じて行う音声の伝送交換,通信衛星を介した音声の伝送交換,ボイスメール通信

第41類:技芸・スポーツ又は知識の教授,データ又は音声通信への一方向型又は双方向型の無線接続を開発及び統合することを支援するためのセミナーの企画・運営又は開催

[後記2]
第9類:使用者が自己の情報を追跡又は管理することを可能にする無線によるデータの送受信用のハンドヘルド電子装置,メッセージ・全世界的コンピュータネットワーク電子メール及びその他データをパーソナルコンピュータ又はサーバー上の若しくはそれらと関連したデータストアから1つ又はそれ以上のハンドヘルド電子装置へリダイレクトすることに関するコンピュータ用プログラムを記憶させた磁気ディスクその他の記録媒体,遠隔ステーション又は装置と固定若しくは遠隔ステーション又は装置間のデータの同期化に関するコンピュータ用プログラムを記憶させた磁気ディスクその他の記録媒体,その他の電子応用機械器具及びその部品,理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,眼鏡,加工ガラス(建築用のものを除く。),救命用具,電気通信機械器具,レコード,メトロノーム,オゾン発生器,電解槽,ロケット,遊園地用機械器具,スロットマシン,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,鉄道用信号機,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,消防艇,消防車,自動車用シガーライター,保安用ヘルメット,磁心,抵抗線,電極,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,ガソリンステーション用装置,自動販売機,駐車場用硬貨作動式ゲート,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,計算尺,ウエイトベルト,ウエットスーツ,浮袋,エアタンク,水泳用浮き板,レギュレーター,潜水用機械器具,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,家庭用テレビゲームおもちゃ,検卵器,電動式扉自動開閉装置

第38類:電子メール,電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供,無線による通信,一方向型又は双方向型の無線呼出し,移動体電話による通信,テレックスによる通信,電子計算機端末による通信,電報による通信,電話による通信,ファクシミリによる通信,無線呼出し,テレビジョン放送,有線テレビジョン放送,ラジオ放送,報道をする者に対するニュースの供給,電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与




審理終結日 2009-06-03 
結審通知日 2011-11-02 
審決日 2009-06-17 
出願番号 商願2006-56581(T2006-56581) 
審決分類 T 1 11・ 263- Z (Y38)
T 1 11・ 262- Z (Y38)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡口 忠次 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 井出 英一郎
前山 るり子
登録日 2007-03-16 
登録番号 商標登録第5033584号(T5033584) 
商標の称呼 ベリーモバイル、ベリーモービル、ベリーモビール、ベリー、モバイル、モービル、モビール 
代理人 大塩 竹志 
代理人 富樫 竜一 

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