• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y09
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y09
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y09
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Y09
管理番号 1249830 
審判番号 無効2010-890050 
総通号数 146 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2012-02-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-07-05 
確定日 2011-12-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第4882411号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4882411号の指定商品中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4882411号商標(以下「本件商標」という。)は、「APPLESEED」の欧文字と「アップルシード」の片仮名とを上下2段に横書きしてなり、平成16年11月26日に登録出願、同17年7月1日に登録査定がされ、第9類「耳栓,アーク溶接機,金属溶断機,電気溶接装置,オゾン発生器,電解槽,検卵器,自動販売機,ガソリンステーション用装置,駐車場用硬貨作動式ゲート,救命用具,消火器,消火栓,消火ホース用ノズル,スプリンクラー消火装置,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,保安用ヘルメット,鉄道用信号機,乗物の故障の警告用の三角標識,発光式又は機械式の道路標識,潜水用機械器具,業務用テレビゲーム機,電動式扉自動開閉装置,乗物運転技能訓練用シミュレーター,運動技能訓練用シミュレーター,理化学機械器具,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,磁心,抵抗線,電極,消防艇,ロケット,消防車,自動車用シガーライター,防じんマスク,防毒マスク,溶接マスク,防火被服,眼鏡,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体,録音用テープ」を指定商品として、同17年7月22日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び審尋に対する平成23年3月15日付け回答を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第44号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人及び「APPLE」等の著名性
(1)請求人「アップル インコーポレーテッド」は、周知のとおり、パーソナルコンピュータを市販化した最初の会社であって、特に「マッキントッシュ」及び「iMac」等のコンピュータによって広く知られており、また、近年は、携帯型デジタルオーディオプレーヤー「iPod」の爆発的なヒットによって一躍、消費者用家電製品の分野でも有名となり、併せて「iTunes」における音楽配信サービスにより、音楽産業の業態に変革を与えるほど大きな存在となっており、さらに、多機能携帯電話機「iPhone」も広く知られるに至っている。
商標「APPLE」及び「アップル」(以下「『APPLE』等」という。)は、言うまでもなく請求人「Apple Inc.」(アップル インコーポレーテッド)を端的に示す商号商標(ハウスマーク)であり、請求人の出所を表示するものとして、請求人の製造販売するあらゆる商品に使用されている基本商標である。また、「APPLE」等は、請求人の旧名称(「Apple Computer, Inc.」(アップルコンピュータ インコーポレーテッド))時代から一貫して使用されてきた略称でもあり、後述するとおり、現に我が国においても、請求人を指称するものとして一般的に用いられている。
(2)商標「APPLE」等は、パーソナルコンピュータ、その周辺機器、コンピュータソフトウェア(以下「コンピュータ」等という。)及び携帯型デジタルオーディオプレーヤー等に使用されている。
請求人がパーソナルコンピュータの製造販売を開始したのは1976年であり、それは「Apple I」と呼ばれ、翌年の1977年には「Apple II」が発表された。そして、1984年には、今もなお「マック」の愛称で親しまれている「マッキントッシュ」(Macintosh)が発売され、現在までに、「iMac」、「eMac」、「PowerBook」、「iBook」、「MacBook」及び「MacMini」等のシリーズが展開されている(甲第30号証及び甲第43号証)。
また、請求人が携帯型デジタルオーディオプレーヤー「iPod」の製造販売を開始したのは2001年であり、現在までに「iPod mini」、「iPod shuffle」、「iPod classic」、「iPod touch」及び「iPod nano」のシリーズが展開されている(甲第12号証の24ないし26、甲第17号証の51及び甲第31号証)。
これらの製品の個別商標(ペットマーク)は「Macintosh」や「iPod」等であるが、これらの製品には全て、その出所が請求人「Apple Inc.」であることを示すハウスマークとして「APPLE」等が使用されている(甲第18号証等)。
(3)請求人製品は、高品質かつ極めて優秀であり、また、請求人自身が巨額の宣伝広告費を投じて請求人製品を宣伝広告してきたため、その結果として、請求人の製品によって多大な売上げを記録しており、特に携帯型デジタルオーディオプレーヤー等については極めて高い市場占有率(シェア)を有している。加えて、請求人の製造販売に係る製品及び請求人自身は、様々なメディアによって報道・特集され、また取り上げられ、多くの小売店によって宣伝広告されている。
ア 新聞記事
甲第12号証は、ビジネスデータベース「G-Search」から抽出した、2001年から2005年までに発行・配信された新聞記事及びニュース記事のうち、請求人に関連するものを一部抜粋したものである。本件で対象としたのは、全国紙である朝日新聞、読売新聞、毎日新聞及び産経新聞並びに共同通信及びNHKニュースの記事であり、提出したものはあくまでその一部である。同号証から、商標「APPLE」等が、ハウスマークとしてコンピュータ等及び携帯型デジタルオーディオプレーヤーに使用されてきたこと、並びに、これらの商品や請求人が頻繁に報道されてきたことがわかる。
また、請求人が旧名称「Apple Computer, Inc.」から「Apple Inc.」に商号変更したのは2007年のことであるが、これらの記事においては、請求人「Apple Inc.」は頻繁に「アップル」と略して記述されている。すなわち、同号証は、請求人が、旧名称「Apple Computer, Inc.」の時代からでさえ、一貫して「APPLE」等の略称で親しまれ、新聞記事上ではこれを単に片仮名表記にした「アップル」と記述され、現に頻繁にそのように指称されてきたことをも示している。
イ 雑誌及び書籍
甲第13号証は、雑誌情報サイト「zassi.net」から抽出した、請求人製品の特集を掲載した雑誌の見出し情報である。対象雑誌は「週刊アスキー」、「週刊東洋経済」、「日経ビジネス」、「Newsweek」、「日経PC21」、「日経TRENDY」、「週刊ダイヤモンド」、「日経エンタテインメント」、「sabra」及び「DIME」である。同号証は、請求人の製品が、コンピュータ関連雑誌だけでなく、ビジネス雑誌、娯楽雑誌等でも頻繁に特集されており、請求人製品に対する需要の高さ、需要者の広さを示している。なお、同号証の一部に発行年の記載がないものがあったため、発行順に掲載されたバックナンバーリスト又は表紙拡大写真に基づき、発行年を特定し手で書き入れた。
また、甲第14号証の1及び2並びに甲第15号証の1及び2は、請求人の製品のみを扱った専門誌である。「Mac Fan」は毎日コミュニケーションズが発行する「Macintosh」専門誌であり、1993年4月に創刊され現在に至っている(甲第14号証の1及び2)。また「MacPeople」はアスキー・メディアワークスが発行するMacintosh等のアップル製品専門誌であり、1995年10月に創刊され現在に至っている。このような、請求人の製品のみを扱う月刊誌の存在は、請求人製品の人気の高さ、需要の高さ、需要者の知名度の高さを如実に示すものである。
甲第16号証の1ないし15は、請求人又は請求人製品を題材とした書籍(単行本)を紹介したウェブページである。このような、請求人に特化した書籍が発行されているという事実から、世間一般の請求人及び請求人製品への関心の高さがみてとれる。
ウ 請求人によるニュースリリース
甲第17号証は、請求人によるニュースリリース(2000年?2005年)である。請求人は、新製品発表等の情報を当該ニュースリリースにより自社ウェブサイトで配信している。当該ニュースリリースから、請求人が、旧名称時代から自身のことを「APPLE」、「Apple」又は「アップル」と略称してきたこと、並びに、コンピュータ等及び携帯型デジタルオーディオプレーヤーについてこれらの商標を使用してきたことは明らかである。
エ 小売店等の店頭における宣伝広告及び展示
甲第22号証ないし甲第27号証は、家電量販店等の小売店に関する特集記事及び店舗写真を掲載したインターネットウェブサイトである。これらの記事及び写真から、小売店舗等の店頭における請求人製品の販売・展示の際に、請求人の商標及び略称である「APPLE」等が表示されてきたことがわかる。すなわち、同各号証は、コンピュータ等及び携帯型デジタルオーディオプレーヤーの需要者が「APPLE」等に接する機会が極めて多いことを示している。
なお、これらの記事及び写真には、本件商標の出願時及び査定時以降のものが含まれるが、一般的に、小売店舗の店頭における商品展示の際に一貫して請求人商標「APPLE」等が表示されてきた事実を示すものである。
オ 小売店のチラシによる宣伝広告
甲第29号証の1ないし11は、生活応援サイト「Town Market」から抽出した家電量販店の広告宣伝用のチラシ及びその一部拡大写真である。これらの資料は、小売店が配布する宣伝広告用のチラシにおける請求人製品の掲載の際、請求人の商標であり略称でもある「APPLE」等が必ず表示されていることを示すものである。
なお、甲第29号証の1ないし11のチラシは、2011年3月1日にプリントアウトしたものである(宣伝チラシのような資料はセール後直ちに破棄され保存されていないため)が、家電量販店等の小売店の発行する宣伝広告用のチラシにおいて、メーカーのハウスマークが表示されることは、本件商標の出願時及び査定時以前から一般的に行われていることである。このことは、例えば甲第29号証の12の「PC Watch」2003年11月5日付け記事において掲載されているビックカメラ名古屋駅西天のチラシが、現在の家電量販店のチラシの基本的な構成において何ら変わりなく(甲第29号証の13)、各商品についてメーカーのハウスマークが表示されている(甲第29号証の14)ことから明らかである。甲第29号証の1ないし14を総合的に鑑みれば、本件商標の出願時及び査定時に至るまでも、小売店のチラシには請求人の商標かつ略称である「APPLE」等が表示され、多くの需要者がこれに接していたことは明らかである。
カ インターネットショッピングサイトによる表示
甲第28号証の1ないし22は、インターネットショッピングサイトのプリントアウトである。これらの資料からも、上記エ及びオと同様に、請求人のパーソナルコンピュータ、コンピュータソフトウェア及び携帯型デジタルオーディオプレーヤーについて、必ず「APPLE」等の表示がなされていることがわかる。
キ 請求人製品の宣伝広告及び「APPLE」等の表示例
甲第18号証ないし甲第21号証並びに甲第32号証ないし甲第39号証は、請求人の製品に係る商品パッケージ及び広告媒体を示すものであり、請求人の商標「APPLE」等の使用態様の一例を示している。
さらに、甲第40号証の1ないし3(2002年3月21日付け)が示すように、請求人は、全国紙である日本経済新聞等において、その製品の全面広告を掲載することも稀ではない。
ク 売上高、宣伝広告費
甲第41号証の1ないし18は、請求人が米国証券取引委員会(UNITED STATES SECURITIES AND EXCHANGE COMMISSION)へ提出した1994年?2010年の各年次報告書である。これによれば、請求人は、自社製品に関し、巨額の宣伝費用を投じ、また、記録的な販売台数と売上を上げている。
ケ 市場占有率等
甲第8号証は、株式会社BCNによる携帯オーディオ市場に関する2004年9月10日付けニュースリリースであるところ、同号証が示すのは、携帯オーディオ市場における市場占有率(シェア)であり、ここに記載された「アップル」が請求人「Apple Inc.」を指していることは明らかである。上述のとおり、「APPLE」等(「Apple」、「アップル」)は請求人の商号商標(ハウスマーク)であり、請求人の製品を表示する商標であることは明らかである。すなわち、同号証は、請求人の商標「APPLE」等の使用された携帯型デジタルオーディオプレーヤーが、少なくとも2004年2月から8月の間市場シェアの1位を獲得し、その8月期にはシェアの40%を占めるまでに至ったことを表しており、携帯型デジタルオーディオプレーヤーの属する分野における上記「APPLE」等の商標の極めて高い著名性を示すものである。
次に、甲第42号証の1ないし3は、SMBCコンサルティングによる1998年、2004年及び2005年のヒット商品番付である。これによれば、1998年のヒット商品として請求人のパーソナルコンピュータ「iMac」、2004年には携帯型デジタルオーディオプレーヤー「iPod」、2005年には同じく「『iPod』ファミリー」がランクインしていることがわかる。したがって、同号証は、請求人の商号商標「APPLE」等に係る「iMac」、「iPod」シリーズが、あらゆる商品を対象とした年間ランキングの上位に入るほどヒットし、人気を博したことを示しているのであり、換言すれば、上記「APPLE」等の商標の著名性を示している。
また、甲第44号証の1及び2は、ビジネス雑誌「FORTUNE」のウェブサイトの記事及びその訳文である。これによれば、請求人「Apple Inc.」は、全事業分野の中から、4年連続「世界で最も称賛される企業」の第1位を獲得している。これは、世界最大の英文ビジネス誌である「FORTUNE」の調査によるものであり、実業家が最も称賛すると考える企業へ投票することによりランキングされている。当該ランキングは、全事業分野を対象としたものであることから、請求人「Apple Inc.」の、コンピュータ関連分野には限らないあらゆる事業分野における世界的な名声と、極めて高い知名度を示している。
(4)上記のとおり、請求人商標「APPLE」は、「パーソナルコンピュータ」及び「携帯型デジタルオーディオプレーヤー」等に使用され、その商品分野において著名性を獲得している。これらの商品の需要者は、一般消費者であり、その著名性が、電気・電子関連業界のみならず、広く一般に及んでいることは明らかである。
ブランド調査会社Interbrand社の調査によるブランドランキング「ブランド・オブ・ザ・イヤー」において、2001年から2006年の間、請求人ブランドは、一貫して1位又は2位を獲得しており、本件商標が登録出願された2004年には、第1位に輝いている(甲第9号証)。
したがって、「APPLE」(アップル)といえば、日本国を含む全世界において、まず第一に請求人アップル社を指称するといえるほど、極めて強大な著名性を獲得しており、さらに、請求人「APPLE Inc.」を端的に示す略称としても極めて著名であって、請求人の多大な企業努力及び請求人商品の魅力と優秀性に基づく人気により、「APPLE」の語には、正に「著名ブランド」というべき企業イメージ・商品イメージが化体しているのである。
2 商標法第4条第1項第8号該当性について
(1)本件商標は、欧文字「APPLESEED」と片仮名「アップルシード」を2段に書した構成であるが、これは、英単語「APPLE/アップル」と「SEED/シード」とを組み合わせたものであり、十分にその各単語が認識できる態様であって、本件商標が「APPLE/アップル」と「SEED/シード」の2つの単語から構成されていることは、極めて容易に看取されるものである。
ところで、請求人の名称は「Apple Inc.」であるが、一般には「Apple」、「APPLE」及び「アップル」として広く親しまれており、「APPLE」は、「ブランド・オブ・ザ・イヤー」の第1位を獲得していることからも明らかなように、請求人の高い信用・名声・企業イメージ・商品イメージが化体した極めて著名な略称である。
なお、請求人の旧名称は、「Apple Computer,Inc.」であったが、「Apple」、「APPLE」単独で広く親しまれるようになり、また、コンピュータのみならず「iPod」等の視聴覚機器や音楽配信事業など経営の多角化により、「Apple Inc.」に名称変更したという経緯がある。すなわち、請求人は、その設立当初から一貫して「Apple」、「APPLE」の略称を使用し、これが全世界的に周知・著名となったことから、よりこの略称のみを要部とした「Apple Inc.」の商号に変更したのであって、この事実からも、「APPLE」が請求人の名称の著名な略称であることは明白である。
(2)本件商標から生じる称呼は、「アップル・シード」であり、明らかに「アップル」の称呼を含み、また、「APPLE」は、それ自体極めて親しまれた英単語であり、「SEED」も既存の単語であって、観念上も分けて認識できるので、「APPLE」と「SEED」とは分けて認識され、「APPLE」の部分が客観的に把握されることは明らかである。そして、上述のとおり、「APPLE」は、請求人の著名な略称であるから、本件商標が請求人の著名な略称を含むものであることは明白である。
すなわち、請求人は、本件商標が単に物理的に「APPLE」の文字列を含むことのみをもって本号に該当すると述べているのではなく、本件商標は、請求人の著名な略称である「APPLE」が認識される態様で「含んでいる」と主張するものである。
また、同号の趣旨は、人格的利益の保護にあるところ、「APPLE」には請求人の人格に深く関わる企業イメージ・商品イメージが蓄積されているのであり、請求人の著名な略称「APPLE」が明らかに客観的に把握される本件商標が使用されれば、請求人の人格的利益が毀損されることも明らかである。
そして、請求人は、本件商標に関し、同号所定の承諾を与えていないから、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
3 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)引用商標
請求人は、次の商標の商標権者である。
ア 引用商標1(甲第3号証及び同第4号証)
商 標:APPLE
登録番号:第1758671号
登 録 日:昭和60年(1985)4月23日
出願番号:商願昭53-23451号
出 願 日:昭和53年(1978)4月4日
指定商品:第9類-電子計算機,その他の電子応用機械器具及び
その部品
イ 引用商標2(甲第5号証及び同第6号証)
商 標:APPLE
登録番号:第2555518号
登 録 日:平成5年(1993)7月30日
出願番号:商願平1-110992号
出 願 日:平成1年(1989)10月2日
指定商品:第9類-電子計算機用プログラム,その他の電子応用
機械器具及びその部品,配電用又は制御用の機械器具,
回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及
びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電
気ブザー,電気通信機械器具,磁心,抵抗線,電極
(以下これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)
(2)本件商標と引用商標との類否
ア 本件商標は、英単語「APPLESEED」と「アップルシード」とを2段に併記した構成である。
本件商標は、「APPLE/アップル」と「SEED/シード」とを一応一連に表示したものではあるが、「APPLE/アップル」の単語は、日本でも極めてよく知られた日常的な英語であり、誰でも直ちに理解できるものであること、それに比して「SEED/シード」は、それほど日常的な語ではないことから、本件商標が「APPLE/アップル」と「SEED/シード」の2つの単語から構成されていることは、極めて容易に認識されるものである。しかも、この「APPLE」及び「アップル」の文字が、上下2段書きのいずれにおいても語頭部分に位置しているため、これがまず最初に認識されることは疑いない。
さらに、「電気通信機械器具」(「携帯型デジタルオーディオプレーヤー」が含まれる)と「電子応用機械器具及びその部品、コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」(「コンピュータ及びそのソフトウェア」が含まれる)の分野において、請求人の商標「APPLE」は、特に著名であり、少なくともこれらの指定商品との関係においては、本件商標に接する者が、第一に「APPLE」の文字に注目することは明らかである。
これに対し、当該指定商品分野において、「SEED」の語は格別の識別性を発揮するものではなく、圧倒的な指標力をもつ「APPLE」に比して、相対的にあまり目立たないものである。
つまり、本件商標「APPLESEED/アップルシード」は、少なくとも「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」の分野においては、その冒頭に請求人の著名な商標・略称である「APPLE」をそのまま含むうえ、「SEED」(何かの種)は、本来的意味から、著名商標「APPLE」への従属性を示唆するものであるから、その構成から容易に「APPLE」と「SEED」に分離して認識されるものであり、「APPLE」部分が要部となって出所識別機能を担うものと考えられ、この文字の存在から請求人が極めて容易に想起される。
したがって、少なくとも上記指定商品との関係においては、本件商標の要部は、その全体のみならず、「APPLE」の文字部分にも存するというべきであって、本件商標は、「APPLE」の文字部分に相応して、「アップル」の称呼をも生じ、「リンゴ」の観念を生じさせ、さらに、請求人商標の著名性に照らし、「アップル社」の観念をも生じさせるのである。
イ 引用商標は、いずれも欧文字「APPLE」の文字からなり、「アップル」と称呼され、「リンゴ」の観念を生じさせ、さらに、取引者・需要者をして、「アップル社」の観念をも生じさせるものである。
本件商標は、「APPLE/アップル」と「SEED/シード」からなるが、「APPLE」と「SEED」の文字は、本来的には、本件指定商品とは無関係の言葉であって、いわゆる「arbitrary(任意)」な商標である。
しかしながら、「APPLE」は、コンピュータ(電子計算機)及びそのソフトウェア並びに携帯型デジタルオーディオプレーヤーの分野において長きにわたり使用され、莫大な信用が蓄積した著名商標であり、本件商標の指定商品中の「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」との関係において、「APPLE」の文字部分が強い出所表示機能を発揮し、強力な顧客吸引力を有することは明らかであり、本件商標に接する取引者・需要者は、「APPLE」の文字部分に着目して取引にあたることに疑いはない。
すなわち、識別力の強さという観点から、本件商標の要部が「APPLE」の部分にあることは明らかであり、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念を共通にする類似の商標である。
ウ 上述のとおり、「APPLE」は、請求人の著名商標であり、この商標を請求人商標として知らぬ者はないといっても過言ではなく、その著名性は、もはや取引の実情を超えて一般社会の常識を構成している。
商標法の趣旨・目的が、商標に化体した業務上の信用の保護にあることに照らせば、引用商標「APPLE」が著名であるというような取引における明白な実情は、商標の類否判断において、当然に配慮、斟酌されるべき重大な要素であり、そのように解するのが法目的に合致するはずである。
エ 更に具体的に述べれば、例えば、請求人の製造販売に係るパーソナルコンピュータや「iPod」のような携帯型デジタルオーディオプレーヤーに、本件商標「APPLESEED」が商標として、その商品本体や商品広告に使用されたとしたならば、需要者・消費者が直ちに請求人の商標「APPLE」を想起し、これと同一又は関連する出所を表示するものと理解することは明らかであり、したがって、具体的な取引の現場において、商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあることは明白というべきである。
すなわち、指定商品「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」の分野における「APPLE」の著名性に照らせば、本件商標「APPLESEED」に接した取引者・需要者が、「APPLE」の文字部分に着目し、請求人アップル社に関係する商品であるとの印象を受けることは必至であり、そのような取引の実情の下においては、本件商標「APPLESEED/アップルシード」は、引用商標「APPLE」と出所の混同を生じるおそれのある類似の商標である。
(3)以上のとおり、本件商標「APPLESEED/アップルシード」は、引用商標「APPLE」と混同を生じるおそれのある類似の商標であり、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とは同一又は類似であって、かつ、引用商標は本件商標の先願先登録商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)「APPLE」は、請求人のハウスマークとして長年にわたり使用された結果、端的に請求人の出所を表示する極めて著名な商標であり、当然ながら、請求人は、当該商標「APPLE」を最も重要な知的財産の一つに位置付けている。
そのため、請求人は、商標「APPLE」だけではなく、「APPLE」をその一部に含む商標を多数採用しており、現に、別掲のとおり、数多くの商標登録を所有している(甲第10号証)。
このうち、別掲の(4)、(10)及び(11)の商標については、これらを出願・登録した者と交渉し、請求人に移転させたものであり、この事実も、請求人が「APPLE」を極めて重要な知的財産と位置付け、その保護のために多大な企業努力を行ってきたことを如実に示すものである。
すなわち、「APPLE」が請求人の著名な基本商標(ハウスマーク)であることに加え、上記のような請求人による商標採択の傾向からすれば、請求人の「APPLE」商標が特に著名である「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」の取引者・需要者が「APPLE」の語を含む商標に接した場合には,即座に請求人アップル社との関連を想起し,アップル社による新たな商品展開と誤認するであろうことは明らかである。
(2)本件商標は、「APPLE/アップル」と「SEED/シード」とを組み合わせたものであるが、冒頭の「APPLE」は、請求人の著名商標と全く同一であり、極めて強い出所表示機能を発揮するものである。一方で、本件商標中の英単語「SEED」は、上記商品との関係で特段の出所表示力を有するものではなく、本来的には、「種、種子」等を意味する言葉であって、他の極めて強い印象を与える語と結びつくことによって、何らかの「種」、すなわち、血縁関係・親子関係にあるもの、派生して生じたもの、副次的・二次的に生じたもの等、結合した語に対する従属性・関連性を暗示させるものである。
すなわち、「APPLE」は、請求人の出所を示す著名商標であり、特に「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」との関係において、即座に「アップル社」を想起させ強い出所表示機能を担う一方、特段の出所表示性を有しない「SEED」は、「APPLE」に対する従属性・関連性を示唆するものであり、本件商標に接する取引者・需要者は、「アップル社に関係する何らかの商品」、「アップル社の新コンセプトによる商品」、「アップル社の子会社・関連会社の製造販売する商品」又は「アップル社の新事業により生まれた商品」等を想起するものであって、その出所について混同を生じさせるおそれが極めて高いというべきである。
(3)以上のとおり、本件商標「APPLESEED/アップルシード」は、その指定商品中の「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」について使用するとき、著名商標「APPLE」を有する請求人の商品と混同を生じるおそれがある商標である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標が請求人の著名商標「APPLE」、「アップル」に類似することは明らかである。しかしながら、一般的に、商標の選択範囲は無限であり、請求人の著名商標「APPLE」を特にその著名性に直接関連する商品「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品」の商標として採用しなければならない必然性は全くない。したがって、商標権者は、請求人の著名商標に依拠する意図をもって本件商標を採択し登録出願したものと推認せざるを得ない。
つまり、上記の事実及び請求人商標が著名であって、極めて大きな顧客吸引力を有する事実を考慮すれば、本件商標は、請求人商標のもつ強大な顧客吸引力・名声へのただ乗りによって不正の利益を得る目的を有するか、請求人商標の有する強い識別力・表示力・顧客吸引力を希釈化することによって請求人に損害を加える目的を有するかの不正の目的をもって使用するものと解さざるを得ない。
すなわち、上記のように、本件商標権者が「APPLESEED」なる商標を付しパーソナルコンピュータ、携帯型デジタルオーディオプレーヤー又は携帯電話機を販売したとすれば、顧客が請求人を表示する著名な「APPLE」の表示に誘引されることは明らかであり、結局、本件商標権者は、少なくとも上記のような商品に関しては、「APPLE」のもつ顧客吸引力にただ乗り等することを意図して本件商標を出願・登録したものと解される。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
6 結び
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び請求人が平成23年3月15日付けでした回答に対する答弁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証を提出した。
1 本件商標「APPLESEED/アップルシード」の由来
本件商標「APPLESEED/アップルシード」は、単一物質の普通名称「リンゴの種」の意味を有する熟語であり、漫画「攻殻機動隊」(2001年)や「イノセンス」で知られる漫画家「士郎正宗」氏のデビュー作品(1985年)の漫画タイトルとして日本国内において著名となっているものである(乙第1号証)。
同作品は、ミコット・エンド・バサラ株式会社、株式会社東京放送、ジェネオン・エンタテイメント株式会社、株式会社やまと、株式会社ティー・ワイ・オー、株式会社デジタル・フロンティア、株式会社毎日放送、東宝株式会社の8社の共同製作により映画化が2002?3年企画され、2004年(平成16年)1月に完成しており、CGアニメーションとして現在でもヒットしている作品のタイトルとして周知・著名であって、「APPLESEED/アップルシード」の語は、作品の中でバイオロイドに生殖機能を与えるデータ名称として使用されている語を作品名称としたものである(乙第2号証)。
つまり、本作品は、「APPLESEED/アップルシード」のタイトルで、当時、日本では全く無名の請求人会社が米国で「マッキントッシュ」を発売したとされる1984年の1年後の1985年に発表されており、これに基づき連続して現在でもCD化・DVD化され、また、そのキャラクターを利用した各種ゲームの開発等が行われているところである。
したがって、請求人が主張する請求人のブランドや略称の周知・著名性が仮にその後に生じているとしても、これに依拠する意図や不正の目的は微塵もなく、単純に一連一体の「熟語」として採択し続けているにすぎない。
2 本件商標「APPLESEED」/「アップルシード」の一体不可分性
請求人は、「本件商標は、欧文字『APPLESEED』と片仮名『アップルシード』を2段に書した構成であるが、これは、英単語『APPLE/アップル』と『SEED/シード』とを組み合わせたものであり、十分にその各単語が認識できる態様であって、本件商標が『APPLE/アップル』と『SEED/シード』の2つの単語から構成されていることは、極めて容易に看取されるものである。」と述べ、間隔も空けずに不可分一体に構成した「リンゴの種」なる一義的な「熟語」を、この意味合いに触れることもなく、わざわざ2語であることを無理に強調し、分断すべき解説を行っている。
次いで、請求人は、「本件商標は、『APPLE』の文字部分に相応して『アップル』の称呼をも生じ、『リンゴ』の観念を生じさせ、」なる「APPLE」に関してのみ明確な意味を記載しているが、「SEED」については、「『SEED』(何らかの種)は、本来的意味から、著名商標『APPLE』への従属性を示唆するものであるから、」のごとく、「何らかの種」なる表現で、明確な熟語としての意味の解説は行わず、さらに、「本件商標中の英単語『SEED』は、上記商品との関係で特段の出所表示力を有するものではなく、本来的には、『種・種子』等を意味する言葉であって、他の極めて強い印象の与える語と結びつくことによって、何らかの『種』、すなわち、血縁関係・親子関係にあたるもの、派生して生じたもの、副次的・二次的に生じたもの等、結合した語に対する従属性・関連性を暗示させるものである。」と、本来の語義以上の、辞書にも見当たらない、極めて飛躍した解説に終始している。
米国籍の請求人であれば、当然に、「リンゴの種」なる一義的意味合いの熟語を認識し、しかる後、自己の都合による身勝手な解釈を付け足す程度の発想が自然と考えられるが、「リンゴの種」なる通常の意味合いには、請求書の最終ページに至るも、ただの一度も触れておらず、この異常な隠蔽状態に鑑みても、通常の議論と異なり、常軌を逸した自己中心的な、極めて妥当性を欠く、横暴な論を展開していることが理解できる。
特に、我が国の一般の英和辞典(乙第3号証)を見ても、「APPLE」は「※印(大学入試程度4600字)」とされ、「SEED」は「※※印(最重要語1800字)」と分類されているように、日本人には「SEED」の方が理解し易い語とされ、その第5義に「子孫」の説明は載っているものの、請求人の解釈のような飛躍した語意は全く記載されていない。
「トマトの種」や「キュウリの種」であれば、日ごろそのまま食べてしまうため、「種」の形状が瞬間に理解し難く、「トマト」、「キュウリ」の外観の思考でとどまることも考えられるが、「スイカの種」、「リンゴの種」にあっては、歯に当たった感触や、単一物質の「種」そのものの外形が脳裏に想起され、一体不可分の「熟語」としてのみ観念するのが一般の取引者・需要者の感覚と考えられる。
3 請求人及び「APPLE」等の著名性について
(1)「マッキントッシュ」、「iMac」、「iPod」、「iTunes」及び「APPLE」の名称が、それぞれ個別的にある程度周知となっていることは認めるが、それら名称の相関関係は、我が国の取引市場において相互間の緊密性は見られず、1名称の周知が他の名称の周知にそのまま寄与しているとは考え難い。
したがって、携帯型デジタルオーディオプレイヤー(「iPod」)の市場占有率(甲第8号証)や、同市場のランキング(甲第9号証)も成立根拠が不明であると共に、引用商標「APPLE」の著名性の立証根拠となるものではなく、まして、これらの証拠も日本国内と異なった事情・地域での集計結果であることも明らかで、我が国での請求人の「APPLE」の著名性の立証の根拠とはなり得ない証拠でしかない。
請求人は、「APPLE」、「アップル」を、請求人の出所を表示する基本商標と認識して、一般的に用いていると主張しているが、本件においては、本件商標の出願時や登録査定時において、請求人の商号がどのように略称され、どの程度周知・著名であったかが争点であって、請求人の主張は、本件とは何ら関連のないものにすぎない。
(2)請求人は、本件商標の登録出願日(2004年11月26日)の30年弱前(1976年)に起業し、20年前にコンピュータ「マッキントッシュ」を発売したものの、携帯型デジタルオーディオプレーヤー「iPod」の発売(2001年10月)は、本件商標の登録出願の3年前で、「iPod mini」の発売(2004年4月)により漸くヒットし始めた状況にあるが、その時期は本件商標の登録出願の半年前のことであり、これらの時間的経緯を考慮しても、請求人の略称「アップルコンピュータ」でさえ、国内で著名といい得る状況にあったか疑問視されるところである。まして、果物の普通名詞で独創的な商標ではなく、独自の出所表示力としての識別性が希薄な「APPLE/アップル」の単独標章は印象が薄く、また、「かじったリンゴ図」としか表現できない図形が付記されていても、単なる「アップル」の称呼が生ずるかについて、これまた疑問といわざるを得ない。
(3)請求人は、「新聞記事」(甲第12号証)を提出し、「請求人が、旧名称『Apple Computer, Inc.』の時代からでさえ、一貫して『APPLE』等の略称で親しまれ、新聞記事上ではこれを単に片仮名表記にした『アップル』と記述され、現に頻繁にそのように指称されてきたことをも示している」と主張している。
しかし、これは、後述する雑誌・書籍の「目次」における場合と同様、文章内でのみ通ずる「更なる略称形」としての使用であり、世間的に通用する略称とは異なるものである。
例えば、甲第12号証の4を見ても、その文章冒頭の書き出しに企業名称の略称「米アップルコンピュータ」で始まり、文章中の記載に「アップル製品」の更なる略称を使用しており、また、甲第12号証の20でも、文章の冒頭は略称「米アップルコンピュータは」で始まり、タイトル及びその後の文章において「アップル」の更なる略称を使用している。
これは、甲第12号証の237件のほとんどに通用する使用例であり、この5年間はもとより、共同通信社及び日本の大手新聞4社の全社に共通した、ほぼ例外のない記載例となっていることが他の証拠からも確認できる。
(4)甲第13号証ないし甲第16号証は、雑誌・書籍の「目次」を集めたものであるが、どのような文章であれ、文章内の冒頭で正式名称又は「略称」を明確にし、これに基づき文章を引き締める必要性から、文章中やタイトルで、文章内でのみ通ずる「更なる省略形」を用いるのが通常で、まして、ほとんど1行で表示するタイトルはこの使用例が多く、世間的に通用する略称とは異なるものでしかない。
しかも、甲第13号証は「1」のみが出願日前(2004年5月4日)の発行であって、「2ないし32」及び甲第14号証(2011年)はそれ以降の要証期間後のものであり、証拠価値は全く見当たらず、甲第16号証も大半同様か又は上記同様のタイトルにおける文章と関連した文章中のみの符号・記号の類にすぎない。
特に、甲第16号証の12及び13は、外国での出版は「1998/09/30」となっているも、アップデートされた日本語版であり、集英社創業85周年(2010年12月25日)企画として掲載されたもので、本件において何ら証拠価値はないものである。
(5)甲第17号証は、請求人によるニュースリリースであるところ、本人の意図が、他人の「APPLE/アップル」に関連する商標使用を全て排斥し、世界制覇を目指す野望にあるとしても、取引市場における取引者・需要者の認識とは全く異なるものでしかない。
(6)小売店の店頭における宣伝広告及び展示(甲第22号証ないし甲第27号証)、小売店のチラシによる宣伝広告(甲第29号証)及びインターネットショッピングサイトによる表示(甲第28号証)については、広告スペースという限定された狭い範囲の記載であり、また、枠ごとに同種商品が併載されていたり、分野が特定された競合商品の数が少ない場合などであって、記号的使用でも通用可能となっているものが多く、これによる記載が取引社会の一般認識に直結するものではない。
(7)請求人製品の宣伝広告及び「APPLE」等の表示例(甲第18号証ないし甲第21号証、甲第32号証ないし甲第40号証)については、上記(4)と同様で、請求人の意図がそのまま社会認識と一致するものではない。
特に、「APPLE」なる名詞を商号中に含む企業が世界中又は同分野に一社も存在しないと社会が確信するのであれば、請求人の意図はそのまま通用するのであろうが、これが認識できない社会は、その企業を特定し得る範囲での名称を使用するのが通常で、少なくとも当時の請求人の略称は「Apple Computer/アップルコンピュータ」が通常で、この域を出ないものであったと考えざるを得ない。
(8)宣伝広告費については、その金額を誇示するためのものと思われるが、全世界のものであり、日本国内での事情は何ら判断できない不要な資料で、売上高や市場占有率にしても、本件登録商標出願時と比べ、その後飛躍的に伸びていることは理解できるが、これとてパーソナルコンピュータ「マッキントッシュ」(マック)や携帯型デジタルオーディオプレーヤー「iPod」に関するものと考えられ、これら両商品商標の著名性に貢献したであろうことは理解できる。
しかし、企業名称の著名性にどのように貢献したのかは不明で、仮に貢献したとしても、名称の略称である「アップルコンピュータ」の著名性に対するもの程度であり、「アップル」単独の著名性にどのように関わり合いがあるのかについては全く不明な証拠といわざるを得ない。
(9)請求人は、過去の審決を引用し、その判断の内容につき同様の判断をすべき旨を主張している。
しかし、その時点の取引市場の社会的認識を問題とする識別力や、本件のごとき、その時点における「略称」の取引社会での認識の事実等は、時々刻々変化する事象であり、判断時期はもちろん、判断者の構成を異にする本件にそのまま該当するものではないこと当然のことであって、何ら拘束力のない事案と同一に判断しなければならない理由は存在しない。
4 両商標の類否について
「APPLE」(アップル)の語自体は、人類に熟知された果物の名称であり、世界の各地で産され、単なる「DICTIONARY WORD」の中でも万人に知られた極めてポピュラーな語であって、それ自体ストロングワードといわれる独創性ある「造語」に比べ識別性が強い語ではない。
この30年余りで「アップルコンピュータインコーポレーテッド」の名称を周知・著名としたとしても、略称は、会社組織を示す「インコーポレーテッド」部分を省略した「アップルコンピュータ」程度であり、前後の脈絡なく「アップル」の単独語に遭遇した場合、一般の取引者・需要者は、「果物のリンゴ」を想起するのが最も自然であると考えられる。
なお、「アップル」単独が「略称」となり得る構成の「アップルインコーポレーテッド」と改名したのは、本件登録査定がなされた2005年7月1日の1年半後の2007年1月9日のことである。
したがって、当時は、せめて「アップルコンピュータ」の略称程度であり、仮に「アップル」単独が略称として認識されつつあったとしても、これと比較する商標が熟語的に理解できない「APPLE(アップル)」と「機器関連商品の普通名称」との結合辞「AppleNavi/アップルナビ」(甲第7号証)のような場合にのみ、分断して解釈されることがあった程度と考えられる。
本件商標「APPLESEED」/「アップルシード」(リンゴの種)をわざわざ分断して考察することは、「APPLETREE(リンゴの木)」、「APPLEPIE(アップルパイ)」、「PINEAPPLE(パイナップル)」等の熟語についてまで、「APPLE」の文字が含まれているという理由のみで、「APPLE(アップル)」部分は請求人の略称・ブランドを想起させると主張するに等しく、これはあまりにも横暴な主張といわざるを得ない。
つまり、本件商標「APPLESEED」/「アップルシード」は、全体の称呼も短く、「リンゴの種」の単一物を表す観念も明確であるため、請求人略称「アップルコンピュータ」とではもちろんのこと、請求人の引用する「APPLE」(アップル)商標とであったとしても、もともと、その外観、観念及び称呼において著しく相違する非類似の商標であり、商標法第4条第1項第8号、同第4条第1項第11号はもちろん、同第4条第1項第15号及び同第4条第1項第19号にも何ら該当するものではない。
5 商標法第4条第1項第8号該当性について
請求人は、本件商標「APPLESEED」/「アップルシード」につき、2つの単語の組み合わせとのみ主張し、自らの商号については、本件商標登録当時「Apple Computer, Inc.」であったが、「Apple」単独で親しまれていたから「Apple Inc.」と改称した、なる本件商標登録後における関連ない事情を、根拠もなく自己都合に合わせ主観的に述べている。
また、日本国内の事情ではない根拠不明なブランドランキング(甲第9号証)を示して、これまた独善的な解釈で、「Apple」が請求人の略称として著名であると主張している。
上述のとおり、請求人の商号の変更は、本件商標登録1年半後の2007年1月9日のことであり、さらに、甲第9号証のそれ以降に発表されたランキング表「データ見出し欄」に簡略化された名称が掲載された事実があるとしても、そのような記載のあるデータが発見できたという程度のものでしかない。
まして、第1位を誇示しているデータのベスト10は乙第4号証のとおりではあったが、「Apple」は、その積算根拠となる各地域(「乙第5号証、アジア・パシフィック」、「乙第6号証、ラテンアメリカ」、「乙第7号証、ヨーロッパ・アフリカ」)のランキングには全く登場しておらず、「乙第8号証、アメリカ・カナダ」にのみ出現しているにすぎない。なぜ、このような一部地域の結果がそのまま世界の第1・2位に君臨できたのか、その統計処理の方法も疑問であるが、極めて不可思議なランキングであり、いずれにしても、これらは、本件無効審判が提起されている日本国内の事情とは全く関連ないデータでしかない。
結局、「Apple」単体はもちろん、「Apple Computer」の略称でさえ、周知著名であったかにつき、何ら証明されておらず、かつ、本件商標「APPLESEED」/「アップルシード」が「リンゴの種」なる一連?体の一義的語彙を有する「熟語」であることからも、この一部を抽出して商標法第4条第1項第8号の該当性を考慮することの方が不自然といわざるを得ない。
6 商標法第4条第1項第11号該当性について
本件商標「APPLESEED」/「アップルシード」は、2語の結合とはいえ、「APPLE/アップル」が「SEED/シード」と結合したことにより、一見して「リンゴの種」なる不可分一体の単一物質である熟語が構成され、これを分断して前後の意味を解釈することは、言語学の領域以外意味のないことと考えられる。
したがって、本件商標「APPLESEED」/「アップルシード」と引用商標の「APPLE」とでは、外観、観念、称呼のいずれにおいても類似するところはなく、印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察したとしても、何ら類似する点は見いだせず、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
7 商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人は、商標法第4条第1項第15号該当性につき、(a)「APPLE」は請求人のハウスマークとして長年使用し著名な商標、(b)請求人は「APPLE」商標を最も重要な知的財産の一つに位置付けている、(c)請求人は「APPLE」を一部に含む商標を多数採用している(22件掲示)、(d)上記商標中の3件は交渉の結果請求人に移転させたものである、(e)上記商標採択の傾向からも商品「電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・電子ディスクその他の記録媒体」に使用した場合請求人と誤認される、を主張している。
しかるに、(a)については、本件商標の出願時及び登録査定時に、日本国内で「APPLE」が周知、著名となっていた事実は、請求人提出の証拠からは認められない。
(b)のハウスマーク「APPLE」を「最も重要な知的財産の一つに位置付けている」なる表明は、どこの企業でも同様であり、何ら意味のない記載である。
(c)については、甲第10号証の22件の登録商標の保有も資金に任せ多数登録し、これを誇示するものの、逆に、多数の結合商標の存在により、「APPLE」単独の指標力を減殺する状況を醸成している結果を示しているにすぎない。
(d)についても、資金力の問題であり、登録第4549573号「applescan」に関しては、乙第9号証のごとく、本件同様分断する理由がないとして異議申立てで排斥され(商標法第4条第1項第10号及び第15号)、また、登録第4601774号「Green Apple」も乙第10号証のごとく、「青いリンゴ」の一体不可分の観念を有するため、「APPLE」の文字が「独立して看取されるものではない」として、請求人の異議申立てが同様に排斥された(同第8号、第11号、第15号)非類似の証明であり、このためやむを得ず購入に至ったものと考えられ、いずれにしても周知性の立証とは全く関連がない。
(e)についても、請求人の要望を述べていることは理解できるが、何ら証拠もなく、また、「マッキントッシュ」、「iMac」、「iPod」、「iTunes」、「iPhone」、さらには、最近の「iPad」に至るまで、テレビ等の一般取引者・需要者に対する露出は少なく、各名称が個別にある程度周知に至っていることは認められるが、相互の関連やメーカーとの関連は緊密ではなく、請求人が自負する程の著名性は獲得しているとは思われない。
いずれにしても、本件商標「APPLESEED」/「アップルシード」は、各文字同じ書体で、間隔もなく一連一体に表されており、全体をもって称呼しても各別冗長ではなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。しかも、一般に知られた平易な英単語であり、全体として「リンゴの種」の意味合いを看取でき、観念上もいずれか一方のみが印象に残る構成文字よりなるものでもなく、全くの単?物質を指称している明らかに不可分の「熟語」である。
したがって、「APPLE/アップル」の文字が独立して看取されるものではないから、請求人の名称の著名な略称を含むものと認識するとは考えられず、かつ、その商品が請求人又は請求人と関連を有する業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同するおそれがあるものと考慮することはあり得ないものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当するものではない。
8 商標法第4条第1項第19号該当性について
請求人は、「上記の事実及び請求人商標が著名であって、極めて大きな顧客吸引力を有する事実を考慮すれば、本件商標は、請求人商標のもつ強大な顧客吸引力・名声へのただ乗りによって不正の利益を得る目的を有するか、請求人商標の有する強い識別力・表示力・顧客吸引力を希釈化することによって請求人に損害を加える目的を有するかの不正の目的をもって使用するものと解さざるを得ない。」と主張している。
被請求人が、上記「1 本件商標『APPLESEED/アップルシード』の由来」で記載した事実を、外国籍であるが故、知らずに本審判請求書を記載したものと推定できるため、このような解釈を行ったものと考えられるが、本件商標の「APPLESEED/アップルシード」自体は、日本国内では全く無名であった請求人会社が、米国で「マッキントッシュ」を発売したとされる1984年の1年後の1985年に発表された漫画のタイトルとして使用を開始されたものである。
これに基づき連続して現在でも、CD化・DVD化され、また、そのキャラクターを利用した各種ゲームの開発等が行われているところで、請求人が主張する請求人のブランドや略称の周知・著名性が仮にその後に生じているとしても、それとの混同のおそれは全くなく、また、これに依拠する意図や不正の目的も微塵もなく、単純に一連一体の単一語である「リンゴの種」の意味合いをもつ「熟語」として採択し続けているにすぎない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号にも該当するものではない。
9 まとめ
本件商標「APPLESEED/アップルシード」は、「リンゴの種」を意味する一義的な一連一体の熟語であり、「PINEAPPLE」等と同様、「APPLE/アップル」部分が単独で分離して理解、認識されるような構成ではなく、引用商標の果物単体をイメージする単なる「APPLE/アップル」とは、外観、観念、称呼のいずれにおいても比較すべくもない非類似の商標であり、何ら出所の混同のおそれは考えられない。
また、本件商標の出願時(2004年11月26日)、登録査定時(2005年7月1日)において、請求人の商号「Apple Computer, Inc./アップルコンピュータインコーポレーテッド」、又は、ハウスマークとしての使用商標「Apple Computer/アップルコンピュータ」が、「APPLE/アップル」の略称により、日本国内で通用し、周知、著名となっていた事実は、請求人提出の証拠からは認められない。
したがって、本件商標は、請求人の指摘する商標法第4条第1項第8号、同第4条第1項第11号、同第4条第1項第15号及び同第4条第1項第19号の無効理由のいずれにも該当するものではない。

第4 当審の判断
1 「APPLE」若しくは「Apple」又は「アップル」の文字からなる標章の周知著名性について
(1)請求人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
ア 請求人は、1976年(昭和51年)に創設され、同年に「Apple I」(アップルI)、翌1977年(昭和52年)に「Apple II」(アップルII)と称するコンピュータを発表した(甲第43号証)。
イ 請求人は、1984年(昭和59年)に「Macintosh」(マッキントッシュ)と称するパーソナルコンピュータを発売した。同コンピュータは、その通称・略称を「Mac」(マック)とし、「個人ユーザーの使い勝手を重視した設計思想を持ち、デザイン(グラフィックデザイン・イラストレーション・Webデザインなど)・音楽(DTM・DAW)・映像(ノンリニア編集・VFX)など表現分野でよく使われる。OSがUNIXベースのMac OS Xに移行して以来、UNIX系ソフトウェアが容易に移植できるようになり、理学・工学研究の分野での採用例も増えた。DTPを一般化させたコンピュータでもあり、書籍・雑誌などの組版では主流のプラットフォームである。アメリカ合衆国では教育分野(初等教育から高等教育機関)でよく利用されている。」とされている。同コンピュータのシリーズ展開としては、「Power Macintosh」、「iMac」、「eMac」、「Mac mini」、「Power Mac」等がある(甲第12号証の27、29、40、42、55ないし57、59ないし61、139、141、158及び163、甲第17号証の3、5、6、15、25、26、29、30、33、43、44、47、56、77、83、90、95、96、98、105、111、115、124及び125、甲第30号証)。
また、ノートブック型コンピュータとして、「iBook」、「PowerBook」等がある(甲第12号証の16、17、48及び53、甲第17号証の3、4、17、23、36、49、50、59、60、62、69、74、85、86、99、103、110及び120)。
さらに、請求人は、ディスプレイ、サーバ、キーボード、マウスといった、いわゆるコンピュータ周辺機器も製造、販売している(甲17号証の39、66、73、76及び100)。
請求人の製造、販売に係るコンピュータは、2000年(平成12年)に、デスクトップ型で2位、ノート型を含めた総合でも3位のシェアを有していた(甲第12号証の8)。
ウ 請求人は、コンピュータ用の基本ソフトウェア(OS)及びアプリケーションソフトウェアの開発、販売を行っている。また、請求人の販売に係るソフトウェアは、継続的にバージョンアップ等が行われている(甲第12号証の4、13、21、41、45、46、58、64、65、101、102、181、182、184及び185、甲第17号証の7、8、10ないし14、19、20、24、27、28、31、34、35、41、45、46、48、52、53、55、57、58、68、71、78、79、81、82、84、87ないし89、91ないし93、101、102、109及び123、甲第30号証)。
エ 請求人は、2001年(平成13年)10月23日に「iPod」(アイポッド)と称する携帯型デジタル音楽プレーヤーを発表した。同音楽プレーヤーのシリーズ展開としては、「iPod mini」、「iPod Photo」、「iPod shuffle」等がある(甲第12号証の24、26、37、63、83、85、105ないし108、110、113ないし120、122、123、127、129、146ないし149、159ないし162、164、165及び173ないし176、甲第17号証の51、65、80、94、97、107、112、113、116、117、119、121及び122、甲第31号証)。
請求人の製造、販売に係る同音楽プレーヤーは、当初、マッキントッシュのみに対応するものであったが、2002年(平成14年)7月にはウィンドウズにも対応するものが発売され、2004年(平成16年)初頭には全世界で200万台を突破した。携帯型デジタル音楽プレーヤーの市場は、2004年(平成16年)7月に大きく拡大し、同年8月の販売実績は同年2月に比べて約1.8倍となり、同年6月から7月にかけては、請求人の「iPod mini」及び「第4世代iPod」のほか、他メーカーからも新製品の投入が相次ぎ、市場全体が活気づいたとされている。メーカー別販売シェアでは、請求人が同年2月から6月までの間、おおむね25%ないし30%弱で推移、その後、7月に約40%に上昇し、8月もほぼ同率を維持した(同時期における他社(「iRiver」、「松下」、「東芝」、「Rio Japan」、「ソニー」及び「クリエイティブメディア」)のシェアは、最も高率なもので15%強(単月)があるが、全体として、おおむね10%前後である。)。同月の売れ筋ランキング上位15位のうち、請求人の製品が1位ないし4位、9位及び11位を占めた。2004年(平成16年)末の「今年のヒット商品」のトップに「iPod」が選ばれ、また、翌2005年(平成17年)3月時点の人気ランキングでは、上位10位のうち、1位、2位、4位及び6位を占めた(甲第8号証、甲第12号証の43、44、47、84、145、155及び179、甲第17号証の108)。
オ 請求人は、2004年(平成16年)4月、松下電器産業と共同でハイビジョン放送向けの番組編集システムを開発し、また、同年7月、無線通信機器「AirPort Express(日本ではAirMac Express=エアマックエクスプレス)を発売した(甲第12号証の95及び99)。
カ 請求人は、2003年(平成15年)4月に音楽配信サービス「iTunes・ミュージックストア」を開始、開始後1週間で100万曲以上の売り上げを記録した。同年10月には、ウィンドウズ搭載のパーソナルコンピュータでの利用も可能とした。同サービスによる販売数は、同年9月に1000万曲、同年12月には1500万曲を超え、2004年(平成16年)1月に3000万曲、同年3月に5000万曲、同年4月に7000万曲、同年7月に1億曲、同年12月に2億曲、2005年(平成17年)1月に2億5000万曲、同年3月には3億曲を超えた(甲第12号証の49ないし51、62、67ないし69、82、88、91、92、96、109、154、170及び177)。なお、同サービスの日本語版は、2003年(平成15年)10月に開始した(甲第12号証の69及び71)。
キ 請求人は、2003年(平成15年)11月に、自己の製品を展示・販売する直営店「アップルストア」を、米国以外で初めて、東京の銀座に開店した(甲第12号証の74ないし79、甲第17号証の104及び106)。また、翌2004年(平成16年)8月には、「アップルストア心斎橋店」(大阪)、2005年(平成17年)1月には、「アップルストア名古屋栄」(名古屋)を開店した(甲第12号証の124ないし126、130ないし136、131、132、157及び168、甲第17号証の114及び118)。
ク 請求人の製品に関する記事は、コンピュータ関連雑誌のみならず、ビジネス雑誌や娯楽雑誌等においても掲載されている(甲第13号証の1ないし4、17、18、25及び26)。
また、請求人の製造、販売に係る「Macintosh」等の商品を取り扱う専門誌として、「Mac Fan」及び「MacPeople」が発行されている。前者は、1993年(平成5年)4月創刊の月刊誌(1994年(平成6年)4月ないし2003年(平成15年)11月の間は月2回刊。累計発行部数は3000万冊を超えたとされている。)であり、後者は、1995年(平成7年)10月創刊の月刊誌(1996年(平成8年)秋ないし2004年(平成16年)2月の間は月2回刊)である(甲第14号証及び甲第15号証)。
さらに、請求人を題材とする様々な書籍が、例えば「Apple2 1976-1986」(2004年(平成16年)11月25日出版)、「林檎の木の下で-アップル日本上陸の軌跡(復刻版)」(2003年(平成15年10月10日出版)、「松下で呆れアップルで仰天したこと-エンジニアが内側から見た企業風土の真実」(2003年(平成15年)3月1日出版)、「Macintosh的デザイン考現学-アップルプロダクトと世界的デザインの潮流を探る」(2002年(平成14年)3月21日出版)及び「アップルデザイン-アップルインダストリアルデザイングループの軌跡 日本語版」(1998年(平成10年)7月発行)といった題号で発行されている(甲第16号証の5、7、9、10及び14)。
ケ 甲第19号証は、請求人の製造、販売に係るコンピュータ「Power Macintosh G3」及び「Power Macintosh Series」のパンフレット(1997年(平成9年))とされる写真の写しであるところ、前者のパンフレットには、左上隅に小さく表された「Apple Computer」の文字と共に、中程上方に「Apple」及び「Power Macintosh G3」の各文字が2段で大書されており、また、後者のパンフレットには、左上隅に小さく表された「Apple Computer」の文字と共に、中程上方に「Apple」、「Power Macintosh」及び「Series」の各文字が3段で大書されている。
コ 甲第20号証は、請求人の製造、販売に係るコンピュータ「Apple II」のカタログ(1981年(昭和56年))とされる写真の写しであるところ、該カタログの表紙には、中程上方にリンゴを図案化したと思しき図形の右方にレタリングされた白色の「apple II」の文字及び赤色斜体の「j-plus」の文字(前者は後者の4倍程度の大きさで、かつ、両者の右端がおおむねそろうように表されている。)を2段に配してなるものと共に、中程下方に小さく表された「applecomputer」の文字(該文字は、上記白色の「apple」の文字と同じ書体からなる。)及び「東レ」の文字等が表されている(同号証の1及び2)。また、同カタログの内容には、「アップル。コンピュータパワーを個人で活用したいと考えてきた人たちに、この名は限りない憧れと、汲めども尽きぬポテンシャルアビリティを与え続けてきました。実際に、プログラム処理やグラフィック処理の精度や速度、周辺機器やソフトウェア、そしてプログラム言語の豊かさなど、アップルは、まさにパーソナルコンピュータの代名詞として揺るぎありません。カナ文字表示機能がついたApple II J-plus。いままた、新しい“アップル神話”が生まれようとしています。」の記載と共に、上記図形とレタリングされた「Apple II」及び「j-plus」の各文字との組合せからなる標章が付された本体の写真が掲載されている(同号証の3)。
サ 甲第21号証の4は、請求人の製造、販売に係るコンピュータ「Macintosh」のカタログ(1984年(昭和59年))とされる写真の写しであるところ、該カタログには、上方に小さく表された「アップルから、パソコンアレルギーの人々に捧げます。」の文字及び中程上方に大書された「Macintosh」の文字と共に、該コンピュータの写真が掲載されている。
また、甲第21号証の5は、請求人の製造、販売に係るコンピュータ「Apple IIc」のカタログ(1984年(昭和59年))とされる写真の写しであるところ、該カタログには、該コンピュータのキーボード部分の写真と共に、該写真の左方に縦書きで「これで原寸大。これがアップル。」及び「ソフトウェアが16,000種以上も!親切ガイドで、今日から使えるAppleIIc」の記載(前者は、後者の4倍程度の大きさで表されている。)があり、さらに、右下隅に「Apple Computer」、「アップルコンピュータジャパン株式会社」及び「キャノン株式会社」の文字等が表されている。
シ 甲第32号証の2は、請求人の販売に係るコンピュータ用ソフトウェア「AppleWorks 6(バージョン6.2)」(2001年(平成13年)7月19日発表:甲第17号証の1)のパンフレットの写しであるところ、「インターネット上のクリップアート集 アップル社のサーバで、25,000点以上の画像から最適な画像を随時検索できます。」の記載がある。
ス 甲第36号証の1及び2は、請求人の製造、販売に係るコンピュータ用液晶ディスプレイ「Apple Displays」(2000年(平成12年)7月20日発表:甲第17号証の1)のパンフレットの写しであるところ、「Apple Cinema Displayは未だかつてない広大なスクリーンサイズの液晶ディスプレイ」、「Apple Studio Displayは理想的な作業環境を作り出します。(中略)Apple Studio Displayはまた、映画館のような臨場感を実現する画期的な新機能、シアターモードを搭載。iMovie、DVD、QuickTimeムービーなどをApple Studio Displayで再生する際、シアターモードが自動的に画面の輝度を調整するので、いつも生き生きとした映像が蘇ります。」の記載がある。
セ 甲第36号証の3は、請求人の製造、販売に係るコンピュータ「PowerMacG4Cube」(2000年(平成12年)2月16日発表:甲第17号証の1)のパンフレットの写しであるところ、「PowerMacG4のパフォーマンスにiMacの使いやすさが加わったとびきり個性的なニューフェイス。またしても、アップルがデスクトップコンピュータの常識を打ち破ります。」の記載がある。
ソ 甲第36号証の12は、請求人の製造、販売に係るコンピュータ「PowerBook」(2000年(平成12年)7月20日発表:甲第17号証の1)のパンフレットの写しであるところ、「アップルのデジタルビデオソフトウェアiMovieがあらかじめインストールされているので、オリジナルの傑作ビデオの制作も簡単です。」の記載がある。
タ 甲第36号証の21及び22は、請求人の製造、販売に係るコンピュータ「iMac」(2002年(平成14年)1月8日発表:甲第17号証の1)のパンフレットの写しであるところ、「アップルの新しくて使いやすいデジタルフォト管理ソフトウェアiPhotoで、あなたのデジタルフォトコレクションをお楽しみください。」及び「新しいiMacは、開発段階からアップルの画期的で新しいオペレーティングシステムMac OS Xに合わせてデザインされています。そしてデジタルフォト、音楽やムービーを楽しむアップルの人気あるソフトウェアを使うことや、ブロードバントですばやくインターネットにつながるための最高の環境であるということも考慮されています。」の記載がある。
チ 請求人は、2002年(平成14年)3月21日付け「日本経済新聞」に、自己の製造、販売に係る「iMac」、「Mac OS X」、「iMovie」、「iPhoto」、「iTunes」及び「iPod」に関する内容からなる「アップルコンピュータ広告特集」(全面広告4頁)を掲載した(甲第40号証の1ないし3)。
ツ 「三井住友銀行グループ SMBCコンサルティング」による「ヒット商品番付」において、請求人の製品は、1998年(平成10年)の「西の関脇」として「iMac」が、2004年(平成16年)の「西の関脇」として「iPod」が、2005年(平成17年)の「西の大関」として「『iPod』ファミリー」が、それぞれ選ばれている(甲第42号証の1ないし3)。
テ 甲第22号証の1及び2は、「マイコミジャーナル」のサイト中の「ビックカメラ有楽町店」の開店に関する記事(2001年(平成13年)6月12日付け)の写しであるところ、該記事中の店内における「Macintoshコーナー」の写真に、「Apple Computer」の看板と共に、請求人の販売に係るコンピュータが「Apple」と大書された台上に展示されている様子が写っている。
ト 甲第23号証の1ないし3は、「ascii.jp」のサイト中の請求人の販売に係るコンピュータ用ソフトウェア「Mac OS X 10.3“Panther”」の販売開始に関する記事(2003年(平成15年)10月25日付け)の写しであるところ、該記事中の「秋葉館Mac」における値札には、「Apple」、「MacOSXv10.3」及び「Panther」の各文字が3段に記載されており、同じく、「ヨドバシカメラ新宿西口マルチメディア館」における案内板には、「Apple」、「Mac OS X」及び「Version10.3」の各文字が3段に記載され、かつ、その右方に「Panther」の文字が記載されている。
(2)以上アないしトに認定した事実によれば、請求人による宣伝広告や小売店の店頭等における「APPLE」若しくは「Apple」又は「アップル」の文字からなる標章又は該文字を含んでなる標章の積極的な使用を通じて、本件商標の登録出願時(2004年(平成16年)11月26日)及び登録査定時(2005年(平成17年)7月1日)において、「APPLE」若しくは「Apple」又は「アップル」の各文字は、商品「コンピュータ及びその周辺機器」及び「コンピュータ用ソフトウェア」に関し、その取引者、需要者間で、該商品が請求人の製造、販売に係るものであることを表示するものとして、広く認識されるに至っていたと認めることができる。
また、遅くとも本件商標の登録査定時までには、該各文字は、商品「携帯型デジタル音楽プレーヤー」に関し、その取引者、需要者間において、同様に、広く認識されるに至っていたと認めることができる。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「APPLESEED」の欧文字と「アップルシード」の片仮名とを上下2段に横書きしてなるところ、該欧文字部分及び片仮名部分は、いずれも同書、同大、等間隔で表されているものの、その構成中の「APPLE」及び「アップル」の各文字は、「リンゴ」等の意味を有する英語及びその表音として、同じく、「SEED」及び「シード」の各文字は、「種子」等の意味を有する英語及びその表音として、それぞれ一般に広く知られていることに照らせば、本件商標は、英語の「APPLE」及び「SEED」の2語を結合してなるもの、及び、その下段に該英語の読みを表した片仮名を配してなるものとして認識され得るというのが相当である。
また、本件商標の指定商品中に含まれる商品「コンピュータ及びその周辺機器」及び「コンピュータ用ソフトウェア」並びに「携帯型デジタル音楽プレーヤー」を取り扱う業界においては、上記1(2)のとおり、「APPLE」若しくは「Apple」又は「アップル」の各文字は、遅くとも本件商標の登録査定時までには、その取引者、需要者間で、該商品が請求人の製造、販売に係るものであることを表示するものとして、広く認識されるに至っていたものである(以上で認定した「APPLE」若しくは「Apple」又は「アップル」の文字からなる商標を以下「APPLE商標」という。)。
そうとすると、本件商標をその指定商品中、上記商品及び上記商品と密接な関連を有する「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「APPLE」及び「アップル」の文字部分に注目し、その商品の出所につき、「APPLE商標」を連想、想起して取引に資する場合も決して少なくないというのが相当である。
してみれば、本件商標は、その指定商品中、「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」との関係においては、その構成文字全体に相応する「アップルシード」の称呼を生ずるほか、その構成中の「APPLE」及び「アップル」の文字部分に相応する「アップル」の称呼を生じ、かつ、「リンゴ」及び「APPLE商標」の観念をも生ずるものである。
なお、被請求人は、証拠の提出と共に、本件商標は1985年(昭和60年)に発表された漫画のタイトルとして日本国内において著名となっており、2004年(平成16年)1月には映画が完成、現在でもCD化、DVD化され、そのキャラクターを利用した各種ゲームの開発などが行われていること、本件商標がその構成全体をもって一体不可分の「リンゴの種」なる一義的な熟語として観念されるものであること、並びに、「マッキントッシュ」、「iMac」、「iPod」、「iTunes」及び「APPLE」の名称が、それぞれ個別的にある程度周知となっていることは認めるが、それら名称の相関関係は、我が国の取引市場において相互間の緊密性は見られず、1名称の周知が他の名称の周知にそのまま寄与しているとは考え難い旨主張しているが、被請求人の提出に係る証拠をもってしては、直ちに本件商標が漫画のタイトルとして日本国内において著名となっているとは認められず、また、本件商標が「APPLE」及び「SEED」の2つの英語を結合してなるものと認識され、商品「コンピュータ及びその周辺機器」及び「コンピュータ用ソフトウェア」並びに「携帯型デジタル音楽プレーヤー」との関係においては、その取引者、需要者をして、その構成中の「APPLE」及び「アップル」の文字部分から、商品の出所について、請求人の「APPLE商標」を連想、想起し得ること上記のとおりであるから、この点についての請求人の主張を採用することはできない。
(2)引用商標
請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当すると主張する引用商標は、いずれも「APPLE」の欧文字を横書きにしてなるものであるから、引用商標からは、「アップル」の称呼及び「リンゴ」の観念を生じ、また、少なくとも引用商標1の全指定商品及び引用商標2の指定商品中の「電子計算機用プログラム,その他の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」との関係においては、「APPLE商標」の観念をも生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否
本件商標と引用商標とは、商品「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」との関係においては、その構成全体の外観において相違するものの、「APPLE」の文字綴りにおいて共通する点を有し、かつ、「アップル」の称呼並びに「リンゴ」及び「APPLE商標」の観念を同じくするものであるから、これらを総合勘案すれば、互いに紛れるおそれのある類似の商標とみるのが相当である。
そして、本件商標の指定商品中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」は、引用商標の指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」と同一又は包含されるものと認められる。
(4)小括
上記(1)ないし(3)によれば、本件商標は、その指定商品中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」について、引用商標と類似する商標であって、かつ、その指定商品も抵触関係にあるものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第8号について
本号については、「商標法4条1項は、商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが、需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号、15号等の規定とは別に、8号の規定が定められていることからみると、8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても、一般に氏名、名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には、本人の氏名、名称と同様に保護に値すると考えられる。そうすると、人の名称等の略称が8号にいう『著名な略称』に該当するか否かを判断するについても、常に、問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく、その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべきものということができる。」(最高裁平成16年(行ヒ)第343号)と判示されているところ、「APPLE」及び「アップル」の文字は、本来、「リンゴ」等の意味を有する英語及びその表音として、一般に広く知られている語であることに加え、請求人が自己の名称を「Apple Computer, Inc.」から「Apple Inc.」へ変更したのが本件商標の登録査定後である2007年(平成19年)である(請求人及び被請求人間において争いがない。)ことをも合わせ考慮すれば、本件商標の構成中の「APPLE」及び「アップル」の文字が商標法第4条第1項第8号にいう「他人」に該当するとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、その指定商品中の第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」との関係についてみた場合、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当することは、上記1(4)のとおりである。
しかしながら、本件商標は、本件審判の請求に係る指定商品中に上記以外の指定商品をも含むものであるところ、これらに係る取引者又は需要者、流通経路及び販売場所等は、上記指定商品に係るそれと少なからず差異があるものであって、両者間における関連性が高いとまではいい難いこと、また、本件商標に含まれる「APPLE」及び「アップル」の文字は、本来、「リンゴ」等の意味を有する英語及びその表音として知られる成語であること、さらに、請求人は、創設以来35年余を経過しているところ、その間に商品「コンピュータ及びその周辺機器」、「コンピュータ用ソフトウェア」及び「携帯型デジタル音楽プレーヤー」並びにこれらと密接な関連を有するインターネットを通じて行う音楽配信といった事業展開は行ってきたものの、それ以外の事業分野への展開が図られた事実は見いだし難く、その事業の多角化の可能性の範囲はさほど広いものとはいい難いことを総合勘案すれば、本件商標をその指定商品中、上記以外の指定商品について使用したとしても、他人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれはないというのが相当である。
したがって、本件商標は、その指定商品中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」以外の指定商品について、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれはないから、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、その指定商品中、第9類「電気通信機械器具,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームプログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスクその他の記録媒体」との関係においては、「APPLE商標」と類似の商標と認められるものの、請求人提出の証拠のいずれによっても、本件商標が「不正の目的をもって使用をするもの」に該当すると認めるに足る事実は見いだし得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
6 結び
以上1ないし5によれば、本件商標は、その指定商品中、「結論掲記の商品」について、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、その余の商品については、同法第4条第1項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではないから、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (別掲)
請求人の所有する「APPLE」をその一部に含む商標登録
(1)THE APPLE COLLECTION
登録第2254293号、同第2277617号
(2)APPLECENTER
登録第2429464号、同第2468073号、
同第2494473号、同第2496890号、
同第2542712号、同第2560169号
(3)APPLETALK
登録第2481876号
(4)APPLE CHANCE
登録第3267016号
(5)APPLE PRESS
登録第4015591号
(6)THE APPLE CAFE
登録第4120165号
(7)APPLE CINEMA DISPLAY
登録第4386767号
(8)MYAPPLE
登録第4398363号
(9)APPLE STUDIO DISPLAY
登録第4500453号
(10)applescan
登録第4549573号
(11)Green Apple
登録第4601774号
(12)AppleScript
登録第4635261号
(13)APPLE STORE
登録第5134205号、国際登録第883222号、
同第973841号
(14)APPLE TV
国際登録第928475号

審理終結日 2011-06-29 
結審通知日 2011-07-01 
審決日 2011-08-01 
出願番号 商願2004-108368(T2004-108368) 
審決分類 T 1 11・ 23- ZC (Y09)
T 1 11・ 271- ZC (Y09)
T 1 11・ 26- ZC (Y09)
T 1 11・ 222- ZC (Y09)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 木住野 勝也 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 田中 敬規
酒井 福造
登録日 2005-07-22 
登録番号 商標登録第4882411号(T4882411) 
商標の称呼 アップルシード 
代理人 特許業務法人松田特許事務所 
代理人 柴田 泰子 
代理人 大島 厚 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ