• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) X16
管理番号 1248128 
異議申立番号 異議2010-900278 
総通号数 145 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2012-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2010-09-06 
確定日 2011-11-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5330450号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5330450号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第5330450号商標(以下「本件商標」という。)は、「小津産業」の文字を標準文字により表してなり、平成19年3月18日に登録出願され、第16類「紙類,紙製包装用容器,家庭用食品包装フィルム,紙製ごみ収集用袋,プラスチック製ごみ収集用袋,衛生手ふき,型紙,紙製タオル,紙製テーブルクロス,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,荷札,印刷物,書画,絵画,軸,書,版画,写真,写真立て,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤,アラビヤのり,海草のり,かすがいのり,カゼインのり,ゴムのり,コンニャクのり,ゼラチン,でん粉のり,にかわ,盤石のり,ふのり,プラスチック接着剤,ラテックスのり,あて名印刷機,印刷機用インテル,印刷機用インクリボン,事務用封かん機,消印機,製図用具,タイプライター,チェックライター,謄写版,凸版複写機,文書細断機,封ろう,マーキング用孔開型板,郵便料金計器,輪転謄写機」を指定商品として、同21年9月25日に登録査定、同22年6月18日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第213号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第第1項第8号について
本件商標は、「小津産業」の漢字を普通に用いられる方法で横書きしてなり、申立人の名称の著名な略称である「小津産業」を含むことが明らかである。そして、本件商標は、申立人の承諾を得たものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第第1項第8号に該当する。
(2)商標法第4条第第1項第15号について
申立人は、設立後、昭和19年に名称を小津産業株式会社に変更して以来現在に至るまで、「紙の小津産業」としてその名を広めており、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係る商品等の表示として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものであり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたものである。
本件商標がその指定商品に使用された場合、申立人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の需要者が商品の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第第1項第19号について
本件商標は、本来の権利者がその商標を出願・登録していないことを奇貨として出願・登録し、登録後に本来の権利者に対する妨害行為を行うという不正目的の意図を有するものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第第1項第19号に該当する。

3 本件商標に対する取消理由
当審において、平成23年5月10日付けで商標権者に対し通知した取消理由は、次のとおりである。
(1)申立人の提出に係る証拠によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人は、承応2年(1653年)の創業に係り、昭和14年12月6日に設立された株式会社であって、製紙原料、紙、板紙、不織布、布帛類、化成品及びその加工品の製造、販売、仲介並びに輸出入業及び各種印刷製本をはじめ、衣料品、食料品、日用雑貨品等の販売・輸出入業、一般貨物自動車運送事業等多岐にわたる事業を行うことを目的とする(甲2,甲3,甲154,甲156の1?57,甲176)。
(イ)申立人に関しては、昭和46年9月18日付け「紙之新聞」に「惜しまれつつ身を退いた小津産業の奥山賢蔵翁」との見出しで報道されたのをはじめ、申立人の事業やそれに関連する種々の出来事が、昭和57年6月頃から現在に至るまで、「日経産業新聞」、「日経流通新聞」、「株式市場新聞」、「証券日刊新聞」、「日本証券新聞」、「日刊投資新聞」、「紙之新聞」、「紙業日日新聞」、「日本経済新聞」、「日刊工業新聞」、「日刊紙業通信」、「紙業新聞」、「朝日新聞」、「読売新聞」、「FUTURE」、「エコノミスト」、「週刊ダイヤモンド」等の各種新聞、雑誌に記事として度々掲載されており、これらの掲載においては、申立人を単に「小津産業」として紹介しているものが多い(甲4,甲6?甲14,甲17?甲37,甲39?甲89,甲91?甲95,甲136?甲150)。また、申立人は、平成8年の株式店頭公開以来現在に至るまで継続して、東洋経済新報社発行「会社四季報」に、「株式会社」又は「(株)」を付さず、単に「小津産業」として掲載されている(甲17?甲24,甲96?甲110)。
(ウ)申立人は、紙、不織布関連分野に限らず、医薬品、農産物等の異業種にも参入しており(甲136?甲150,甲176)、医薬品、化粧品、洗剤等の研究開発・製造技術国際展「インターフェックスジャパン」をはじめ、太陽光発電に関する国際専門展「国際太陽電池展PV EXPO」、フラットパネル・ディスプレイ研究開発・製造技術展「ファインテック・ジャパン」、「国際カーエレクトロニクス技術展」の各種展示会に出展している(甲160?甲169)。申立人による植物工場とその野菜については、テレビ番組でも紹介され、番組内で「小津産業」のナレーションとテロップが放送された(甲151,甲152)。
(エ)申立人は、昭和57年6月に全国の手抄き和紙を集めた「小津和紙博物館」を東京日本橋に開設したほか、平成10年1月には自社所有の古文書・資料を展示するための「小津史料館」をオープン、平成17年1月には「小津和紙」を新装オープンし、「小津史料館」、「小津文化教室」、「小津ギャラリー」、「小津和紙博物舗」を備え、文化施設に加えて申立人の業務に係る商品の販売も行うことが新聞報道され、これら報道記事においては申立人を単に「小津産業」として紹介しているものが多い(甲6,甲25?甲27,甲80?甲90)。
(オ)申立人は、平成11年11月に自社ホームページを開設し、申立人の小売部門である「小津和紙博物舗」においてインターネットを利用した和紙及び和紙加工品の販売を開始した(甲153?甲155)。2009年4月から2010年8月までの上記ホームページのページビュー数は延べ53万余に達し、オンラインショッピングサイト「小津和紙」のページビュー数は延べ87万余となっている(甲158,甲159)。
(カ)申立人が不織布、家庭紙・日用雑貨、紙製品、和紙等の販売・加工及び輸出入を行うに当たり「小津産業」の表示を古くから継続的に使用している旨、「小津産業」は他社と区別できる識別標識として広く知られている旨等を同業者及びその他の関係機関が証明している(甲170の1?298)。
(キ)他方、本件商標権者は、個人であるところ、本件商標の登録出願前後に、別異の構成からなる複数の商標につき、第3類、第5類、第10類、第14類、第16類、第35類、第36類、第42類及び第44類に属する商品又は役務を指定して21件もの登録出願を行っており、その多くの出願は拒絶査定がされているものの、登録を受けたものについては、当該商標と同一の文字を商号の一部とする第三者に対し、商標権侵害である旨の警告を発している(甲205の1?21,甲206?甲209,甲210の1・2,甲211の1・2)。
(2)以上によれば、本件商標を構成する「小津産業」の文字は、本件商標の登録出願時には既に、申立人の業務に係る商品を表示する商標(以下「引用商標」という。)として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものであり、また、申立人の名称である「小津産業株式会社」の略称として、それが同人を指し示すものとしても、本件商標の指定商品に係る取引者、需要者のみならず、一般に知られていたとみるのが相当であり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたというべきである。そして、本件商標は、申立人の承諾を得たものとは認められない。
そうすると、本件商標は、他人である申立人の名称の著名な略称を含む商標であって、申立人の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する。
仮に、本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当しないものであるとしても、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていること、本件商標と引用商標とは、いずれも「小津産業」の文字からなるものであって同一といえるものであること、本件商標権者は、本件商標を含む一連の商標を申立人の業務に係る商品を含む多岐にわたる商品及び役務を指定して同時期に登録出願していること、当該商標が登録を受けるや否や当該商標と同一又は類似の商標等を使用する他人に対し商標権侵害の警告をしていること、かかる行為に照らし商標権者は商標に関する相当な知識及び関心を有していることが窺われ、引用商標及び申立人の存在を知らなかったとはいい難いこと、などを総合すると、本件商標権者は、引用商標及び申立人の存在を知りながら、引用商標が登録されていないことを奇貨として、剽窃的に先取り出願をし、不正の利益を得る目的、他人たる申立人に損害を加える等の不正の目的をもって登録を受けたものといわざるを得ない。
そうすると、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(3)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号又は同第19号に違反してされたものである。

4 商標権者の意見
前記3の取消理由に対して、商標権者は、次のように意見を述べている。
(1)本件商標権に関する事実関係
(ア)平成19年当時、本件商標権者の周囲に10名程度の出資予定者と目される者がいた。
(イ)出資予定者が商標登録をする商標の提案を行った。この中にT氏の提案した「小津産業」があった。
(ウ)何業を始めるのか、業態(株式会社、合同会社等)も決定していなかったため、出資予定者(発起人)の代表として、複数商標について、本件商標権者の名義で商標登録出願をした。
(エ)トランスジェニック社事件(商標登録第5020931号に係る登録異議申立事件)の際に出資予定者の大半が去った(T氏も真っ先に去った)。
(オ)桃源郷社事件(商標登録第5089505号に係る商標登録無効審判事件)の際にすべての出資予定者が去った。
(カ)その後も別の出資予定者を集めて、「起業・法人化のために」複数商標について、本件商標権者の名義で商標登録出願している。
(キ)「不当な利益を得ようとしていない」ため、桃源郷社事件以降、同名の会社に連絡したことはない。
(ク)「小津産業」を商標登録出願するように提案した者(T氏)ではなく、平成19年当時の出資予定者の代表者(本件商標権者)を捕まえて「『小津産業株式会社』の存在を知っていて、同名の会社から不当な利益を得ようとしている。」とするのは言い掛かりで名誉毀損にあたる。商標「小津産業」の提案者(T氏)を捕まえて「不当な利益を得ようとしている」というべきである。「小津産業株式会社」にT氏からも何も連絡がないのならば、「そもそも、商標登録により、不当な利益を得ようとしている」ということ自体が被害妄想である。
(2)大都会東京に「小津産業株式会社」が存在し、山形県の零細業者が本件商標「小津産業」という商号を名乗ったとしても何か不都合があるか。
(3)取消理由通知に記載の申立人の提出に係る証拠(甲4?甲110,甲136?甲150,甲153?甲155,甲158,甲159,甲170の1?298,甲176等)は、関東地方に居住するであろう審査官には容易に接する機会があるものと考えられるが、商標登録第5330450号を審査した審査官、商願2007-34468号を審査した審査官、及び商願2007-42555号を審査した審査官は、いずれも「小津産業を著名、あるいは周知商標としては扱わなかった」ことから、当該証拠は、「小津産業株式会社」の名称が「著名商標あるいは周知商標であること」を証明する証拠としてはふさわしくないものと考える。
そして、「小津産業株式会社」は、「関東・東京ローカル」で多少知られている程度のことと考える。「関東・東京ローカル」のことを全日本に拡大するのはおかしい。
(4)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号又は同第19号に違反してされたものではない。

5 当審の判断
(1)前記3において認定、判断した本件商標に対する取消理由のとおり、本件商標を構成する「小津産業」の文字は、本件商標の登録出願時には既に、申立人の名称である「小津産業株式会社」の略称として、それが同人を指し示すものとしても、本件商標の指定商品に係る取引者、需要者のみならず、一般に知られていたとみるのが相当であり、その状態は本件商標の登録査定時においても継続していたというべきであって、また、本件商標は、申立人の承諾を得たものとは認められない。
そうすると、本件商標は、他人である申立人の名称の著名な略称を含む商標であって、申立人の承諾を得ていないものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
(2)これに対して、商標権者は意見を述べているが、以下の理由により採用することができない。
(ア)商標権者は、「大都会東京に『小津産業株式会社』が存在し、山形県の零細業者が本件商標『小津産業』という商号を名乗ったとしても何か不都合があるか。」と述べ、本件商標の登録を取り消すとの理由が理解できない旨主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第8号は「その括弧書以外の部分に列挙された他人の肖像又は他人の氏名,名称,その著名な略称等を含む商標は,括弧書にいう当該他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないとする規定である。その趣旨は,肖像,氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解される。」(最高裁平成15年(行ヒ)第265号平成16年6月8日第三小法廷判決参照)上,また「法4条1項は,商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが,需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号,15号等の規定とは別に,8号の規定が定められていることからみると,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人の氏名,名称と同様に保護に値すると考えられる。」(最高裁平成16年(行ヒ)第343号平成17年7月22日第二小法廷判決参照)のであり、本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当するものであること、前記(1)のとおりであるから、本件商標の登録を取り消すべきものであるとの理由は妥当なものである。
(イ)商標権者は、取消理由通知に記載の申立人の提出に係る証拠は、関東地方に居住するであろう審査官には容易に接する機会があるものと考えられるところ、過去の「小津産業」に係る審査等において審査官等が、「小津産業を著名、あるいは周知商標としては扱わなかった」ことから、当該証拠は、「小津産業株式会社」の名称が「著名商標あるいは周知商標であること」を証明する証拠としてはふさわしくないものと考える旨主張している。
しかしながら、商標登録の異議申立制度は、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図るというものであることから、本件における証拠の採用及びその判断についても、過去の関連事案の審査の判断に何ら拘束されることなくなされるものである。
(3)以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2011-09-20 
出願番号 商願2007-28946(T2007-28946) 
審決分類 T 1 651・ 23- Z (X16)
最終処分 取消  
前審関与審査官 山田 正樹石井 千里小川 きみえ 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 酒井 福造
田中 敬規
登録日 2010-06-18 
登録番号 商標登録第5330450号(T5330450) 
権利者 世古 政弘
商標の称呼 オズサンギョウ、オズサンギョー、オズ 
代理人 守谷 一雄 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ