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審決分類 |
審判 全部無効 外観類似 無効としない X25 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X25 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない X25 |
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管理番号 | 1246488 |
審判番号 | 無効2011-890006 |
総通号数 | 144 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2011-12-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-01-14 |
確定日 | 2011-11-04 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5309253号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5309253号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、平成21年10月2日に登録出願、第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同22年2月16日に登録査定、同年3月12日に設定登録されたものである。 なお、本件商標に係る商標権は、同23年3月24日受付の商標権の一部抹消登録申請書により、指定商品中「被服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」について、商標権の一部放棄による商標権の登録の一部抹消の登録がなされている。 第2 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第135号証(枝番を含む。)を提出した。 1 引用商標等 請求人は、本件商標の登録の無効の理由に次の登録商標及び使用に係る商標を引用している。 ア 登録第4375607号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、平成8年2月21日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同12年4月14日に設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。 イ 登録第4344340号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、平成8年1月26日に登録出願、第25類「被服(「和服」を除く),履物,バンド,ベルト,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く)」を指定商品として、同11年12月17日に設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。 ウ 請求人が「被服,靴,バッグ,財布,ベルト,レザーグッズ,ブレスレット,その他の身飾り品,眼鏡」等の商品に使用している「DG」の欧文字をデザイン化してなる商標(甲第54号証、甲第65号証ほか、以下「引用商標3」という。)。 エ 国際登録第845608号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲(5)のとおりの構成からなり、2004年10月19日にイタリア国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、2005年(平成17年)2月10日に国際商標登録出願、第25類「Clothing, footwear, headgear.(仮訳:被服,履物及び運動用特殊靴,帽子)」のほか、第3類、第9類、第14類及び第18類に属する国際登録に基づく商標権に係る商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成18年1月13日に設定登録されたものである。 オ そのほかにも、請求人は、使用に係る商標として、別掲(6)のとおりの構成からなる甲第113号証に表示されている商標等を挙げている。 2 請求の理由 本件商標がその指定商品について使用された場合、当該商品は、引用商標1ないし引用商標4に係る商品と誤認混同され、その出所が請求人と誤認混同されるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号及び同第15号に該当するので、その登録は無効にされるべきである。 (1)前提事実 ア 請求人は、1982年に、ファッションデザイナーのドメニコ・ドルチェ(Domenico Dolce)とステファノ・ガッバーナ(Stefano Gabbana)の二名が創設したことを起源とするものであり、商標「DOLCE & GABBANA」もそれぞれの頭文字を採って並べたものである。また、その商標に係る商品の普及版の商標として、「D&G」が発表された。 請求人は、上記1の引用商標をはじめ、「DOLCE & GABBANA」や「DG」をデザイン化した数多くの商標(甲第5号証ないし甲第25号証、甲第54号証、甲第65号証、甲第69号証、甲第71号証、甲第74号証等)を「被服、ハンドバッグ、財布、靴類、その他のファッション関連商品」について、日本及び他の国において登録あるいは使用・管理している。 イ 商標「DOLCE&GABBANA」及び「D&G」は、前者が1982年以降に世界各国で使用され(甲第31号証等)、後者が1994年から使用された(甲第28号証、甲第29号証等)。請求人の日本での売上高は、2005年度が約59億円、2006年度が約65億円、2007年度が約64億円、2008年度が約44億円、2009年度が約35億万円となっている(甲第45号証)。その結果、「DOLCE&GABBANA」及び「D&G」の商標は、本件商標の出願前に、請求人及びデザイナー「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」に係るものとして、日本ばかりでなく世界的に著名な商標となっていたものである(甲第32号証ないし甲第45号証)。 ウ 商標「D&G」は、「DOLCE&GABBANA」が「ドルガバ」と略称されているように(甲第30号証、甲第31号証)、「ディージー」と略称されている事実が多数ある(甲第46号証ないし甲第51号証)。 エ 商標「DG」は、被服、靴、その他のファッション関連商品において、請求人及びデザイナー「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」のデザインに係るものとして、商標「DOLCE&GABBANA」等と共に、あるいは(種々にデザイン化されて)単独で、長年に亘り使用されており(甲第52号証ないし甲第129号証)、それら商標「DG」を使用した請求人の商品は、膨大な数の需要者の目に触れているものと推測できる(甲第130号証、甲第131号証)。 そして、商標「DG」は、被服、靴、その他のファッション関連商品においては、商標「DOLCE&GABBANA」あるいは「D&G」の略称として認識されている事実が多数ある(甲第61号証、甲第66号証、甲第80号証、甲第88号証、甲第95号証、甲第132号証ないし甲第134号証)。 オ 以上の事実及び取引の実情の下において、殊に被服、履物、その他のファッション関連商品においては、一般需要者は、「ディージー」と称呼される欧文字「DG」は、単なる任意の欧文字2文字の「DG」と理解するものではなく、デザイナー「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」の両名のデザインに係る商品を指し示すものであると理解する可能性が非常に高い。すなわち、前記の商品群においては、欧文字「DG」が付された商品は、「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」のデザインに係る商品であると認識される可能性が非常に高いといえる。そして、このことは、請求人が、京阪神及び東京の計6都市で行った一般人に対するアンケート調査の結果からも裏付けることができる(甲第135号証)。 (2)本件商標と引用商標について ア 本件商標について 本件商標は、ありふれた二重に表示された長方形の中に、デザイン化されてはいるが一見してそれと認識し得る欧文字「DG」が表示されたものであり、該欧文字部分から「ディージー」の称呼が生じるものである。 イ 引用商標について 引用商標1及び引用商標2は、「ディーアンドジー」と称呼されるほか、「ディージー」とも略称される。そして、それらは、デザイナー「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」及びその両名のデザインに係る商品の商標を意味するものと理解される。 また、引用商標3及び引用商標4は、「ディージー」と称呼され、デザイナー「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」の両名のデザインに係る商品を意味するものと理解される。 (3)商標法第4条第1項第11号について 本件商標と引用商標1、引用商標2、引用商標4とについてみると、本件商標は、その欧文字部分から「ディージー」の称呼が生じ、引用商標1及び引用商標2は、実際の取引において「ディージー」と略称されている事実があることから、「ディージー」の称呼も生じ、引用商標4は、「ディージー」の称呼が生じる。 したがって、本件商標と引用商標1、引用商標2、引用商標4とは、「ディージー」の称呼を共通にする。 また、前記した取引の実情に照らしてみれば、本件商標がその指定商品について使用された場合、その需要者は、当該商品を「Domenico Dolce」及び「Stefano Gabbana」のデザインに係る商品の内の一つではないかと誤認するおそれがある。すなわち、本件商標と引用商標1、引用商標2、引用商標4とは、それらの構成要素である「D」と「G」の組み合わせが指し示すものにおいて共通する。 したがって、本件商標と引用商標1、引用商標2、引用商標4とは、外観においては異なるものであるが、称呼及び観念が同一又は類似するものであり、請求人商品と商品の出所について誤認混同されるおそれがある類似の商標である。そして、本件商標と引用商標1ないし引用商標4は、指定商品においても同一又は類似する。 よって、本件商標は、引用商標1、引用商標2、引用商標4との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当する。 (4)商標法第4条第1項第15号について 上述のとおり、本件商標と引用商標1ないし引用商標4とは、類似の商標といえるものである。そして、前記したとおり、引用商標1及び引用商標2の「D&G」は、著名な商標となっており、「ディージー」と略称されている事実があること、「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」の両名のデザインに係る商品には「DG」が使用されているものが多数あり、かつ、その使用されている「DG」には種々にデザイン化されたものがあること、被服、靴等のファッション関連商品の分野においては、欧文字「DG」は、デザイナー「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」の両名のデザインに係る商品を指し示すものと理解されているという取引の実情が存在している。 このような状況下において、ありふれた二重の四角形の図形に中に、若干のデザイン化をしているが「D」及び「G」の欧文字二文字と直ちに認識され、「ディージー」と称呼される表示をなした本件商標がファッション関連商品を含むその指定商品に使用された場合、当該商品の出所が「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」(ひいては、請求人)あるいは同人らと何らかの関係のある者であると誤認混同されるおそれがあることは明らかである。 加えて、請求人は、本件商標の出願日の3年以上前より現在に至るまで、別掲(6)のとおりの構成からなる商標等を使用した商品を日本において販売している(甲第63号証、甲第113号証、甲第114号証等)。これらの商標との関係では、請求人の商品を購入した者あるいは請求人の商品の「DG」を記憶している者は、その「DG」に酷似する欧文字からなる本件商標が付された商品の出所を「Domenico Dolee」と「Stefano Gabbana」(ひいては、請求人)あるいは同人らと何らかの関係のある者であると誤認混同するおそれがあることは一層明らかである。 したがって、本件商標は、引用商標1ないし引用商標4との関係で、商標法第4条第1項第10号又は同第15号に該当するものである。 また、商標法第4条第1項第15号は、周知表示又は著名表示へのただ乗り及び当該表示の希釈化を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号判決 参照)。 してみれば、被服、靴等において、請求人と無関係の者によって、「DG」と容易に読み取れる態様の本件商標が使用されると、欧文字「DG」は、デザイナー「Domenico Dolce」と「Stefano Gabbana」の両名のデザインに係る商品を指し示すものとの需要者の認識を弱めることになる。すなわち、この場合、少なくとも引用商標3及び引用商標4が持つ自他識別機能を弱めるおそれが十分にある。 したがって、本件商標は、この点においても、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。 (5)結論 以上のとおり、本件商標は、引用商標1、引用商標2、引用商標4との関係では、商標法第4条第1項第11号に該当し、引用商標1ないし引用商標4との関係では、同第10号又は同第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきものである。 第3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べた。 1 指定商品の一部放棄 被請求人は、平成23年3月22日付けで、本商標権について、その指定商品の一部である「被服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を放棄し、指定商品を「履物」のみに限定した。 2 無効理由の消滅 以上のとおり、本件商標の指定商品を限定した結果、本件無効審判の無効理由は、ほぼ無くなった。 請求人の主張では、「前提事実」として、「被服、靴、その他のファッション関連商品」では、「D&G」は著名であり、「DG」と略称されている事実があると述べている。 しかしながら、「DOLCE&GABBANA」が著名商標であることは認めるが、その略称の「D&G」や愛称の「ドルガバ」が一部で使用されていることは認められるとしても、著名にまでなっているとは認められない。ましてや「ディージー」の略称が特に履物において著名であるとは全く認められない。請求人提出の証拠中にも、この事実を証する証拠は存在しない。 他方、商標の登録性についてみれば、単なる「DG」は、ローマ字の2文字であるから、自他商品識別力が無いとして、商標登録を受けることはできない。登録を受けるためには、デザイン化しなければならず、そのデザインの形態によって登録を受けることができるのである。そして、その場合の登録商標の権利範囲は、その形態のみに限られ、決して、「ディージー」の称呼にまでは及ばない。 また、請求人は、DとGのモノグラムの登録商標を甲第18号証ないし甲第25号証として提出しているが、いずれも履物は、その指定商品中に含まれていない。 更に、請求人は、本件商標のDGの形態と酷似したものが使用されている(審判請求書53頁ないし54頁)旨主張しているが、甲第63号証、甲第113号証、甲第114号証は、いずれの商品もベルトのバックルであって、履物ではない。 3 むすび 以上のように、本件商標の指定商品の一部が放棄された結果、請求人の主張する無効理由は解消されたものである。 無効理由として残っているとすれば、「D&G」の登録商標(甲第2号証等)を取上げて、商標法第4条第1項第11号を適用する点だけであるが、本件商標のDとGとのモノグラム図形と「D&G」との単純な対比では、両者が非類似の商標であるのは明白である。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第10号、同第15号に該当するものではなく、登録を無効にされるようなものではない。 第4 当審の判断 請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に違反して登録されたものであることを理由に、同法第46条第1項の規定に基づく商標登録の無効の審判を請求している。 この点について、被請求人は、本商標権の指定商品の一部である「被服、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を放棄したので、無効理由はほぼ無くなった旨述べているが、商標権の一部抹消登録の効力は、将来に向けて生ずるものであって遡及することはないものと解されるから、商標権の一部抹消登録が行われたことにより、本件商標の登録査定時における無効理由の有無の判断が影響を受けることにはならない。そこで、以下のとおり、無効理由の有無について判断する。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標の構成 本件商標は、別掲(1)のとおり、長方形の輪郭線の内側に、太い線で長方形の黒枠を表し、その黒枠の中に、該黒枠と同じ程度の太さからなるアルファベットの「D」と「G」と思しき文字を変形させ、それぞれの文字の一部を交差させるように組み合わせて図案化したモノグラム図形を配した構成からなるものである。 (2)引用商標1、引用商標2及び引用商標4の構成 引用商標1は、別掲(2)のとおり、太字で表した「D&G」の文字からなるものであり、引用商標2は、別掲(3)のとおり、細線部分と太線部分を有する文字で表した「D & G」の文字からなるものであり、引用商標4は、別掲(5)のとおり、籠文字で表した「D」と「G」の文字を「D」の右側部分と「G」の左側部分で結合させたモノグラム図形からなるものである。 (3)そこで、本件商標と上記(2)の引用商標とを比較すると、これらは、いずれもアルファベット文字の「D」と「G」を基調としているものであることは否定できない。 しかしながら、上記したとおり、本件商標は、外側の長方形の輪郭線とその内側に表されている太線で描かれている長方形の黒枠の中に、太い線で描かれた「D」と「G」と思しき文字を変形させ、それぞれの文字の一部を交差させるように組み合わせたモノグラム図形が配されているものであり、該二重の黒枠とモノグラム図形とは、全体としてバランスよく構成されているものであって、その構成全体をもって不可分一体に表された図形商標とみるのが自然である。 これに対して、引用商標1及び引用商標2は「D&G」の文字のみからなるものであり、引用商標4は「D」と「G」の文字の一部を結合させたモノグラム図形からなるものである。 そうとすれば、本件商標と上記引用商標とは、その構成要素において差異があるばかりでなく、全体の構成態様においても判然とした差異を有しており、この差異から受ける視覚的印象も明らかに異なるものであるから、これらを時と所を異にして離隔的に観察しても、外観において相紛れるおそれはないものといわなければならない。 次に、本件商標と上記引用商標との称呼及び観念についてみると、本件商標は、上記したとおり、その構成全体をもって不可分一体に表された図形商標とみるべきものであって、これより直ちに特定の称呼及び観念は生じないものというべきである。 一方、引用商標は、上記したとおりの構成からなるものであるから、引用商標1及び引用商標2は、その構成文字に相応して「ディーアンドジー」の称呼を生ずるものであり、該文字自体から特定の観念を生ずるものとは認められないが、請求人が主張しているように、「Domenico Dolce」及び「Stefano Gabbana」のデザインに係る商品を指し示すものと理解される場合もあり得るものということができる。また、引用商標4からは、特定の称呼を生じないか、生じるとしても「ディージー」の称呼であり、これより特定の観念を生ずることはないものというべきである そうとすれば、本件商標は、特定の称呼及び観念は生じないものであるから、上記引用商標とは、称呼及び観念については比較すべくもないものである。 (4)してみれば、本件商標と引用商標1、引用商標2及び引用商標4とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではない。 2 商標法第4条第1項第10号及び同第15号の該当性について (1)本件商標と引用商標及び請求人の主張するその他の商標との類否について 上記したとおり、本件商標と引用商標1、引用商標2及び引用商標4とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものであって、別異の商標というべきものである。 次に、上記引用商標以外に、請求人が本件商標の無効の理由に引用している商標と本件商標との類否について検討する。 まず、本件商標と引用商標3との類否についてみるに、引用商標3は、「DG」の欧文字からなるものであるから、本件商標と引用商標3とは、外観において明らかな差異を有するものである。そして、前記したとおり、本件商標は特定の称呼及び観念は生じないものであるから、本件商標と引用商標3とは、称呼及び観念においては比較することができないものである。 してみれば、本件商標と引用商標3とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標である。 また、請求人は、別掲(6)のとおりの構成からなる使用に係る商標(甲第113号証)との関係についても主張しているが、本件商標と該使用に係る商標とは、その描出方法において差異があるばかりでなく、前記したとおり、本件商標は、モノグラム図形と二重の黒枠とが全体としてバランスよく構成された不可分一体の図形商標であるのに対して、該使用に係る商標は、モノグラム図形のみからなるものであるから、構成要素において差異があるばかりでなく、その構成態様においても明らかな差異があるものといわなければならない。 そして、本件商標は特定の称呼及び観念は生じないものであるから、本件商標と該使用に係る商標とは、称呼及び観念においては比較することができないものである。 してみれば、本件商標と該使用に係る商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。 (2)引用商標及びその他の請求人の使用に係る商標の周知著名性について 請求人の提出に係る甲第31号証(boutique-roza.comの「ドルガバ全商品一覧」のホームページ)によれば、「DOLCE&GABBANA」は、「ドルチェ&ガッバーナのファースト・ライン。1958年イタリアのシチリア島生まれのドメニコ・ドルチェと1962年イタリアのヴェネツィア生まれのステファノ・ガッバーナの2人のデザイナーによるブランド。1982年に共同でミラノ中心部にオフィスを構え、1985年にレディース、1990年にメンズコレクションを発表。ともに大成功を収め、現在イタリアを代表するファッションブランドとなっている。なお、D&Gは、ドルチェ&ガッバーナのセカンド・ライン(価格を抑えた普及版)である。」と記載されている。 そのほかにも、例えば、甲第33号証(1997年2月の「Channeller」2月号)によれば、「好きな洋服のブランドの96年の順位として16位に『D&G』」が挙げられており、甲第34号証(2000年2月17日付けの日経流通新聞)によれば、「デイリーヤマザキは・・・三月一日から、全約二千七百店で『グッチ』『ニナリッチ』『ドルチェ&ガッバーナ(D&G)』など若者に人気の高級ブランド香水の販売を始める」と記載されており、甲第37号証(2003年10月3日付けの産経新聞)によれば、「来年春夏の流行を予測するミラノコレクションが、約十日間の日程で開催されている。日本でも若者に人気のブランド、D&Gは・・・」と記載されており、甲第39号証(2005年5月12日付けの中日新聞)によれば、「偽ブランド販売で、東区の業者ら逮捕」の見出しのもと「若者に人気のイタリアの衣料品ブランド『ドルチェ&ガッバーナ』(D&G)の偽物を販売したとして、・・・三人を逮捕」等と記載されており、甲第42号証(2008年11月26日付けの日本繊維新聞)によれば、「この2つのブームを発信したのが、ミラノのトップブランド『ドルチェ&ガッバーナ』と『D&G』である。・・・『ドルチェ&ガッバーナ』はトレンドを生み出すクリエーターブランドとして注目されている。」と記載されており、甲第45号証(売上高一覧表)によれば、請求人の「DOLCE&GABBANA」に係る各種商品の日本での売上高は、2005年度が約59億円、2006年度が約65億円、2007年度が約64億円、2008年度が約44億円、2009年度が約35億万円となっていたことが認められる。 上記した甲各号証等によれば、「DOLCE&GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ)」の商標及び引用商標1及び引用商標2に相応する「D&G」の商標は、「被服、履物、ベルト、サングラス、アクセサリー、ハンドバッグ、財布、その他のファッション関連商品」について使用される商標として、本件商標の登録出願時には既に、我が国におけるこの種商品の取引者・需要者の間においても広く知られていたものと認められる。 そしてまた、甲各号証によれば、「D&G」の商標が「ディージー」と表記されている例があり、商品についての説明文等に「DG」の文字が使用されており、「D」と「G」の文字をデザイン化した各種の商標が使用されていることを認めることができる。 しかしながら、「D」と「G」の文字をモノグラム化した引用商標4や引用商標3に相応する「DG」の文字をデザイン化した使用に係る商標(甲第54号証、甲第65号証、甲第108号証ないし甲第129号証等 以下、これらの商標をまとめて「DG商標」という。)については、請求人の提出に係る甲各号証に照らしてみても、「DOLCE&GABBANA」、「ドルチェ&ガッバーナ」あるいは「D&G」の商標のもとに使用されているものであって、DG商標が単独で請求人の業務に係る商品を表示する商標として使用されている例はほとんど見当たらない。そして、請求人が我が国における請求人の各種商品についての売上高として提出している甲第45号証にしても、「DOLCE&GABBANA」ブランド(あるいは、「D&G」の商標を含む全体のブランド)についての売上高であって、DG商標のみに係る売上高を示しているものでないことは明らかである。 また、請求人は、「DG」ブランド浸透度調査報告書(甲第135号証の1及び2)を提出しているが、該浸透度調査は、京阪神地区(大阪心斎橋、京都4条河原、神戸三宮)及び東京地区(渋谷、新宿、吉祥寺)において、「DG」のロゴを呈示して、何を思い浮かべるか5つまで問うものであるところ、調査対象の人数が全体で318人と少ないばかりでなく、調査地域も関西と関東の著名なファッション街に限定されているものであるから、その調査結果から、直ちに、「被服、履物」等の商品の取引者・需要者全体における認識の程度までを推し測ることはできない。 してみれば、「DOLCE&GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ)」の商標及び「D&G」の文字からなる商標(引用商標1及び引用商標2)については、「被服、履物、ベルト、サングラス、アクセサリー、ハンドバッグ、財布、その他のファッション関連商品」について使用されている商標として、本件商標の登録出願時において、我が国におけるこの種商品の取引者・需要者の間において広く知られていたものとは認められるが、引用商標4をはじめとするDG商標については、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国における取引者・需要者の間において広く知られていたものとは認められない。 (3)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について 上記したとおり、「DOLCE&GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ)」の商標及び「D&G」の文字からなる商標(引用商標1及び引用商標2)の周知著名性は認められるとしても、請求人が主張している「DG」の文字をモノグラム化した商標(DG商標)については、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の取引者・需要者の間において広く認識されていたものとは認められないものである。 そして、本件商標と「DOLCE&GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ)」の商標とは、その構成文字、態様から非類似の商標であって、別異の商標であること明らかである。また、本件商標と「D&G」の文字からなる商標(引用商標1及び引用商標2)及び引用商標4をはじめとするDG商標とは、上記1(3)と同様に外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 そうとすれば、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に規定されている要件を欠くものであるから、本件商標の登録は、同号に違反してされたものとはいえない。 また、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者・需要者をして引用商標をはじめとする請求人の使用に係る商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものというべきであり、また、引用商標にただ乗りをするものでもなく、引用商標の出所表示機能を希釈化させたりすることにもならないものといわなければならない。したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものとはいえない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 (1)本件商標 (2)引用商標1 (3)引用商標2 (4)引用商標3の例 (色彩については甲第69号証の原本参照) (5)引用商標4 (6)使用に係る商標 (色彩については甲第113号証の原本参照) |
審理終結日 | 2011-06-13 |
結審通知日 | 2011-06-15 |
審決日 | 2011-06-28 |
出願番号 | 商願2009-74866(T2009-74866) |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Y
(X25)
T 1 11・ 261- Y (X25) T 1 11・ 25- Y (X25) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 竹内 耕平、手塚 義明 |
特許庁審判長 |
森吉 正美 |
特許庁審判官 |
瀧本 佐代子 小畑 恵一 |
登録日 | 2010-03-12 |
登録番号 | 商標登録第5309253号(T5309253) |
商標の称呼 | デイジイ |
代理人 | 竹田 明弘 |
代理人 | 村井 康司 |
代理人 | 太田 誠治 |
代理人 | 北村 修一郎 |