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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Z17
管理番号 1246487 
審判番号 取消2009-301231 
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2009-11-09 
確定日 2011-11-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4236858号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4236858号商標(以下「本件商標」という。)は、「スーパーアクロン」の片仮名文字を横書きしてなり、平成9年6月12日に登録出願、第17類「プラスチック基礎製品」を指定商品として、平成11年2月5日に設定登録、その後、平成20年9月9日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の第17類の指定商品「プラスチック基礎製品」について取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証(審決注:審判請求書及び第1弁駁書のいずれにも、甲第1号証が添付されているため、職権により、審判請求書に添付した証拠を「甲第1号証」とし、第1弁駁書に添付した証拠を「甲第2号証」とする。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、請求人の調査したところによれば、商標権者である被請求人が本件商標を「プラスチック基礎製品」について使用している事実は発見できなかった。また、本件商標に係る登録原簿上、専用使用権及び通常使用権の登録もない(甲第1号証)。
したがって、継続して3年以上、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが「プラスチック基礎製品」について本件商標の使用をしていないと推認されるものであるから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきものである。
2 第1弁駁
(1)乙第1号証ないし乙第3号証について
被請求人は、自身が作成したカタログを、本件商標の使用証拠(乙第1号証ないし乙第3号証)として提示している。このうち、乙第1号証及び乙第2号証のカタログにおいては、表面上段に「スーパーアクロンシート」と仮名書きされ、その下には、被請求人による製品と思われる樹脂シートの写真が掲載されている。
乙第1号証及び乙第2号証のカタログにおいて、被請求人が表示しているのは、そもそも「スーパーアクロンシート」であり、本件商標である「スーパーアクロン」ではない。上記カタログにおける表示を見れば明らかなように、被請求人は、「スーパーアクロンシート」の片仮名を同書・同大・同間隔かつ同一色により、左横書きで一連一体に表示しているのであり、これは、本件商標「スーパーアクロン」とは異なる別異の商標である。
(2)乙第5号証について
(ア)被請求人が提出した納品書(乙第5号証の1ないし11)を見てみると、いずれも「品名」の項目に、「スーパーアクロンシートカット板」の表示が見受けられる。
(イ)そもそも本件商標は、「スーパーアクロン」であり、「スーパーアクロンシートカット板」ではない。この「スーパーアクロンシートカット板」が、本件商標の文字数の約2倍もの文字から構成され、これが一連一体に表記されていることを考慮すれば、本件商標「スーパーアクロン」と社会通念上同一とはいえない。
(ウ)また、本審判において被請求人が本件商標の取消を免れるための要件として、「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれか」が、本件商標を現実に使用していることが必要であるところ、被請求人が提出した納品書(乙第5号証の1ないし11)は、被請求人によるものではなく、いずれも切断業者である有限会社サワダ商会(以下、「サワダ商会」という。)によって作成されたものである。
ここで、被請求人による答弁及び提出証拠において、上記のサワダ商会が、本件商標の「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれか」であることについて全く述べられていないことをかんがみれば、百歩譲って仮に「スーパーアクロンシートカット板」が本件商標と社会通念上同一であるとしても、上記納品書への使用は、被請求人ではなく、あくまで「第三者による使用」にすぎない。
(エ)さらに、そもそも被請求人が提出した納品書(乙第5号証の1ないし11)への「スーパーアクロンシートカット板」の表示は、「商標としての使用」ではない。たしかに、商標法第2条第3項第8号における「使用」の定義には、「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し・・・」と規定されており、納品書は、ここでいう「取引書類」に含まれ得る。しかしながら、商標法の趣旨にかんがみれば、これらの取引書類への使用が、あくまで商品や役務について出所表示機能等を発揮している態様でなされていなければ「商標としての使用」とは認められない。
ここで、被請求人が提出した納品書(乙第5号証の1ないし11)を見てみると、いずれも単に「品名」として「スーパーアクロンシートカット板」と記載されているだけであり、指定商品である「プラスチック基礎製品」との関連性が不明であることについてはもちろん、商品の出所表示機能等を発揮している態様で表示されているとはいえない。そもそも、本納品書だけでは、何の指定商品に関する取引書類であるか全く不明であり、本表示は「商標としての使用」とは認められない。
(3)乙第8号証について
(ア)乙第8号証を見てみると、被請求人が上記会社概要に表示しているのは、そもそも「スーパーアクロンシート」であり、本件商標である「スーパーアクロン」ではない。上記会社概要における表示を見れば明らかなように、被請求人は、「スーパーアクロンシート」の片仮名を同書・同大・同間隔で一連一体に表示しているのであり、これは本件商標「スーパーアクロン」とは、社会通念上同一とはいえない。
(イ)また、そもそも被請求人が提出した上記会社概要への「スーパーアクロンシート」の表示は、明らかに「商標としての使用」ではない。商標法の趣旨にかんがみれば、これらの会社概要への使用が、あくまで商品や役務について出所表示機能等を発揮している態様でなされていなければ、「商標としての使用」とは認められないというべきであるところ、上記会社概要には、被請求人が取り扱っている「主要製品」の紹介として「スーパーアクロンシート」と表示されているだけである。すなわち、この表示は、指定商品である「プラスチック基礎製品」との関連性が全く明らかではないことはもちろん、商品の出所表示機能等を発揮している態様で表示されているとはいえない。
(4)まとめ
以上のとおり、被請求人答弁の理由は、成り立たない。したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により、第17類の指定商品「プラスチック基礎製品」について、取り消されるべきものである。
3 第2弁駁
(1)第2答弁書に対する弁駁
(ア)請求人は、被請求人の有する登録第2697286号「アクロン」に対して本件と同様に不使用取消審判を請求した経緯がある。当該審判において、被請求人は乙第1号証及び乙第2号証と同じカタログを使用証拠として提出したものの、これらのカタログによっては上記登録商標が使用されていたことは認められないとして、平成21年10月9日付で取消審決がなされたという事実がある。
上記審決にも既判力が認められると考えるのが自然であり、また、上記審判において被請求人により提出された使用証拠が、本審判で提出された乙第1号証ないし乙第3号証と同一のものであるのだから、少なくともこれらの証拠に関する判断において、その事情は同一である。
(イ)被請求人は、請求人の「乙第5号証の1ないし11における『スーパーアクロンシートカット板』の表示は、そもそも商標としての使用ではない」とする主張に対して、「乙第5号証が記載している『スーパーアクロンシートカット板』というのは、『スーパーアクロンと呼ばれる樹脂シートを切断した板』を意味している。したがって、乙第5号証は、サワダ商会がスーパーアクロンと呼ばれる樹脂シートの切断物を被請求人あてに納入したことを示している。すなわち、スーパーアクロンと呼ばれるシートが取引されたことを示している。」と反論している。
しかしながら、被請求人が述べるように、「乙第5号証が記載している『スーパーアクロンシートカット板』というのは、『スーパーアクロンと呼ばれる樹脂シートを切断した板』を意味している」のであれば、それは商標的機能を発揮していないのであって、まさしく「商標としての使用ではない」ことを、被請求人自身が認めているといえる。
(ウ)被請求人が答弁書で述べている主張は、すべて失当であり、いずれも理由として成り立たない。
(2)審尋答弁書に対する弁駁
(ア)被請求人は、乙第8号証として提出した会社概要が、広告物として頒布されたことを主張している。
しかしながら、たとえ会社概要が被請求人自身の「広告物」であったとしても、これが登録商標を使用する指定商品についての「広告物」でなければ、本審判においては何ら主張・立証の意味がないものである。
ここで、「スーパーアクロンシート」の表示は、本件商標「スーパーアクロン」とは社会通念上同一とはいえない、また、乙第8号証の会社概要における「スーパーアクロンシート」の表示が「商標としての使用」に該当しないことも明白である。
したがって、乙第8号証における被請求人の表示は本件商標を広告するものではなく、被請求人の主張は失当である。
(イ)被請求人が審尋答弁書で述べている主張についてもすべて失当であり、いずれも理由として成り立たない。

第3 被請求人に対する審尋
1 商標権者が、ホームページにおいて、平成18年11月24日から平成21年11月23日までの間、商品「プラスチック基礎製品」について、本件商標を広告していたことを証する書面を提出されたい。
2 被請求人の会社概要(乙第8号証)が、上記の期間内に広告物として頒布されたことを証明する書面を提出されたい。
3 乙第5号証によって、切断業者の「サワダ商会」が切断した樹脂シートを商標権者に納品していることは窺えるとしても、その後、商標権者は、切断された樹脂シートを誰(発注者)に納品してしているのか不明である。
したがって、本件商標を付した商品「プラスチック基礎製品」について、上記の期間内の発注者から商標権者への発注書及び商標権者から発注者への納品書を提出されたい。
4 その他、本件審判の請求の登録(平成21年11月24日)前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者による使用の事実を立証する証拠(例えば、広告等が掲載された新聞、雑誌等の印刷物、カタログやパンフレット、取引の際使用される販売伝票、発注伝票、輸入伝票、請求書等の取引書類等であって、いずれも、使用された年日付、本件商標、使用商品及び発行者等が明確に把握できる資料)を提出されたい。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由及び審尋に対する答弁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求に対する答弁
(1)被請求人は、平成9年以来「スーパーアクロン」を表示した合成樹脂シートを製造し、現在も販売している。その合成樹脂シートは、乙第1ないし3号証として提出するカタログに掲載されている写真どおりのシートである。このシートが、本件商標が指定する商品「プラスチック基礎製品」に該当する。
(2)被請求人が「スーパーアクロン」という名称で販売する合成樹脂シート(以下、「樹脂シート」という。)の商標については、まず樹脂シートの流通上の特殊事情を説明する。
樹脂シートは、透明性にすぐれ、表面が傷付きにくいというすぐれた特性を持っている。ところがこのシートは、硬質のシートであるため、そのままの形で包装材料として使用することができない。そのため、樹脂シートは、プラスチックの加工業者によって、例えば容器の形に加工されなければならない。したがって、樹脂シートは、現在のところ専らプラスチック加工業者に販売される。
樹脂シートを容器の形に加工するには、まず樹脂シートを切断し、切断品を組み合わせて接着する必要がある。ところが、樹脂シートを切断するには、格別の技術が必要とされる。それは、樹脂シートが硬質のものであるため、これを無闇に切断すると切断面の両側に小さな亀裂が多数入り、このために切断面が汚いものとなるからである。そのため樹脂シートは、まず、特定の切断業者によって切断され、そのあとで加工業者に渡されて容器とされる。こうして容器とされたあとは、加工業者によって別の商標が付されて販売される。したがって、「スーパーアクロン」という名称が使用されるのは、被請求人と切断業者と加工業者の間だけということになる。
(3)樹脂シートは、本来プラスチックの加工業者を需要者とする。
しかし、被請求人は古くカタログを作成して、これを食品、日用品、化粧品、文具などのメーカーに配布して、製品の容器に採用されることを奨めてきた。
被請求人が作成したカタログを乙第1ないし3号証として提出する。そのうち、乙第1号証と乙第2号証に示したカタログは、上段に「スーパーアクロンシート」と仮名書きし、その下に樹脂シートの写真を掲載している。
乙第1号証に示したカタログは、裏面の右下に「97.07.2000」と記載されているから、平成9年7月に2000部印刷されたものである。
乙第2号証に示したカタログは、裏面の右下に「98.8.2000」と記載されているから、平成10年8月に2000部印刷されたものである。何れも日本写真印刷株式会社に依頼して作成された。
(4)樹脂シートは、まず切断業者によって切断され、次いで加工業者によって硬質の「カードケース」とされるのが大きな用途となっている。
切断業者は、例えば、サワダ商会であり、加工業者は、例えば、株式会社ティ・シー・シーである。
(5)切断業者のサワダ商会は、古くから樹脂シートを切断して被請求人に納入してきた。そのうち、平成19年1月から平成19年9月までの間に被請求人あてに納入された切断品の詳細を示す伝票があるので、この伝票の写しを乙第5号証の1ないし11として提出する。
乙第5号証は、サワダ商会が作成した「納品書」であって、そこには、いずれも「スーパーアクロンシート」を材料とし、これを種々の寸法に切断し、切断品の大きさごとに数量が記載されている。また、納品書には、作成年月日も記載されている。これにより「スーパーアクロン」というシートが、その当時取引されていたことが明らかである。
これらの乙第5号証によれば、平成19年1月から平成19年9月までの間に「スーパーアクロン」の商標を付したシートが取引されていたことは明らかである。これは、被請求人が「スーパーアクロン」の商標を付した樹脂シートを上記の切断業者に提供していたことに由来している。よって、被請求人が本件商標を使用していたことは、明らかである。
(6)「スーパーアクロン」と呼ばれている樹脂シートは、平成13年までは、被請求人の関東工場(栃木県佐野市栄町5番4)で作られていたが、その後は、被請求人が出資しているタイ国の現地法人、ヤマトエスロンタイランド株式会社(以下、「タイランド社」という。)で作られることになった。上記の現地法人は、これを「スーパーアクロンシート」(現地では、SUPER ACRON SHEETと記載)と表示して日本へ輸出している。被請求人は、このシートを「スーパーアクロンシート」として販売している。
(7)被請求人は、少なくとも平成19年1月から平成19年9月までの間に「スーパーアクロン」の名称で樹脂シートを販売していた。したがって、被請求人は、本件商標をプラスチック基礎製品について使用していたことになる。
(8)被請求人が現在も「スーパーアクロン」という名称を付したシートを販売していることは、平成20年8月に作成し配布した被請求人の会社概要(乙第8号証)によって明らかである。すなわち、会社概要は、第4頁の中程に「主要製品」の見出しの下に製品名を記載しているが、その4行目に「スーパーアクロン」が記載されていることから明らかである。
2 弁駁に対する答弁
(1)乙第1号証及び乙第2号証について
請求人は、乙第1号証及び乙第2号証のカタログは「スーパーアクロンシート」と表示されているから、「スーパーアクロン」の商標が示されていることにはならない、と主張している。
被請求人はこの主張を認めることができない。なぜならば、「スーパーアクロンシート」の表示の中で、「シート」の部分は商品の普通名称だからである。「シート」が普通名称であることは、その語自体から明らかであるが、このカタログでは請求人も認めるように、「樹脂シート」の写真が掲載されているから、「シート」が商品を示す普通名称であることは一層明らかである。したがって、「スーパーアクロンシート」の表示は「シート」の部分に甄別力がなくて、「スーパーアクロン」の部分だけに甄別力があることになる。それゆえ「スーパーアクロンシート」の表示は、商標としては「スーパーアクロン」と同一だというに帰着する。
(2)請求人は、別の登録第2697286号商標「アクロン」の不使用取消審判事件においては、請求人の主張が認められて取消の審決がなされたことを述べているが、本件はそれとは事情が異なっているから、さきの事件は本件に関係がない。
(3)乙第5号証の「スーパーアクロンシートカット板」のうち、「シート」と「カット板」とは普通名称であるから、何人も「スーパーアクロン」の部分に識別力の存在を認めるものである。したがって、「スーパーアクロンシートカット板」の表示は、一見して「スーパーアクロン」と呼ばれるシートを切断した板だと理解して、「スーパーアクロン」の商標を使用していることになる。
(4)請求人は、乙第5号証の1ないし11は商標としての使用を示すものではないと主張している。その理由として、請求人は乙第5号証が「スーパーアクロンシートカット板」と記載するだけであるから、「プラスチック基礎製品」との関連性が不明であることなどを挙げている。
しかし、乙第5号証が記載している「スーパーアクロンシートカット板」というのは、「スーパーアクロンと呼ばれる樹脂シートを切断した板」を意味している。したがって、乙第5号証は、サワダ商会がスーパーアクロンと呼ばれる樹脂シートの切断物を被請求人あてに納入したことを示している。すなわち、スーパーアクロンと呼ばれるシートが取引されたことを示している。
樹脂シートが、「プラスチック基礎製品」にあたることは明らかであるから、請求人の主張は失当である。
(5)乙第8号証の「スーパーアクロンシート」という表示のうち、末尾の「シート」は普通名称であって、その表示はスーパーアクロンというシートを意味しているから、スーパーアクロンの商標を使用していることになる。
(6)したがって、請求人の請求は成り立たない。
3 審尋に対する答弁
(1)乙第8号証として提出した会社概要が、平成18年11月24日から平成21年11月23日までの間に、広告物として頒布されたことを証明する書面として乙第10号証を提出する。
乙第10号証は、乙第8号証の会社概要が平成20年2月以降に1000部作成されて、平成20年8月から平成21年11月24日までの間に取引先に配布されたことを証明している。そこには平成9年にスーパーアクロンシートを開発したとの記載がある。この記載は、スーパーアクロンという名称の商品を広告していたことになる。
(2)商標権者は、乙第5号証によって切断業者のサワダ商会が切断した樹脂シートをタイ国の現地法人のタイランド社へ送ってクリアケースなどに加工させて、加工品を輸入して販売している。この事実を立証するために、乙第11号証を提出する。
平成18年11月24日から平成21年11月23日の期限に限ると、「スーパーアクロンシート」という商品は、商標権者がそのシートをタイランド社に製造させ、これを輸入してシートの形で販売したこともあるが、それは僅かで、それよりもタイ国で製造したシートを輸入して日本の会社に切断させ、切断したシートを再びタイランド社へ送って加工させ、クリアケースなどの容器として輸入し販売した方が多い。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第1号証及び乙第2号証の商品カタログには、「ヤマトエスロン製」「スーパーアクロンシート」「塩ビ、透明PP、A-PETよりも優れた透明シートです。」「ヤマトエスロンのスーパーアクロンシートは・・・高透明、高光沢で表面に傷の付きにくいシートです。・・・クリアケースなどの硬質塩ビ、透明PP、A-PETの代替として、幅広い利用が可能です。」「ヤマトエスロン株式会社」の記載があり、中央には、当該「透明シート」の写真が掲載されている。
また、乙第1号証の商品カタログの裏表紙右下には、「(97.07.2000)」の記載があり、乙第2号証の商品カタログの裏表紙右下には、「(98.08.2000)」の記載がある。
(2)乙第5号証の1は、平成19年1月17日付けサワダ商会から商標権者宛の納品書であり、「品名」の欄の一段目に「スーパーアクロンシートカット板」の記載があり、四段目には、「品名」の欄に「319×7」、「数量」の欄に「12500」、五段目には、「品名」の欄に「217×7」、「数量」の欄に「25000」の記載がある。
(3)乙第8号証は、商標権者の会社概要であり、その4頁には、「〈会社概要〉(平成20年7月末日現在)」「会社名 ヤマトエスロン株式会社」「主要製品・・・多層押出成形シート・フィルム及びカット板[A-PET・C-PET・CAPシート(軟質PVC代替シート)・パピロンシート(合成紙)・スーパーアクロンシート(高透明硬化シート)・・・」の記載がある。
そして、29頁の「沿革」には、「平成9年・・・硬質塩ビ代替のスーパーアクロンシートを開発する。」の記載がある。
(4)乙第10号証は、証明書であり、その5枚目ないし7枚目には、それぞれ「私、三菱化学(株)の飯島は、取引先のヤマトエスロン株式会社より、創業80年を記念して作成された会社概要を平成20年10月に受け取った事を証明します。」「私、(株)プライムポリマーの松岡は、取引先のヤマトエスロン株式会社より、創業80年を記念して作成された会社概要を平成20年10月に受け取った事を証明します。」「私、サワダ商会の澤田文雄は、取引先のヤマトエスロン株式会社より、創業80年を記念して作成された会社概要を平成20年10月に受け取り、その中にスーパーアクロンの表記が有った事を証明します。」の記載があり、証明者の住所、会社名、氏名、押印がある。
(5)乙第11号証は、商標権者の常務取締役による証明書であり、その1枚目及び2枚目には、「・・・ヤマトエスロンは、平成9年3月に硬質塩化ビニルシートに代わる樹脂シートとしてスーパーアクロンシートを開発しました。開発直後から平成12年11月までは、スーパーアクロンシートをヤマトエスロンの関東工場で製造していましたが、そこで製造していたのではコスト高になり、採算上有利になりません。そこで、平成13年7月からタイ国の現地法人のタイランド社に製造することにしました。・・・スーパーアクロンシートは無色透明な硬質の大きなプラスチック板ですので、色々なものに加工できます。加工品の代表的なものは、書類などを入れるクリアファイル、化粧品などを入れるクリアケースです。このようなものに加工するためには、スーパーアクロンシートをまず切断しなければなりません。ところが、その切断は、容易ではありません。・・・タイランド社は、スーパーアクロンシートをうまく切断する技術を持っておりません。そこで、タイランド社が製造したスーパーアクロンシートはこれを日本へ輸入して、日本で切断することにしました。その切断は、サワダ商会にして貰うことにしました。サワダ商会が切断したスーパーアクロンシートのカット板は、これに接着などの加工を施してクリアケースなどに仕上げます。ところがその加工は、日本国でするよりタイ国でする方が採算上有利です。そのため、スーパーアクロンシートのカット板は、これを輸出してタイランド社で加工することにしております。・・・」の記載がある。
そして、その5枚目(資料2の1枚目)の「INVOICE」には、「Invoice Date: Jan.23.2007」の記載がある。
また、6枚目(資料2の2枚目)の「INVOICE」には、「Description of Goods」の欄に「7 SUPER-AKULON SHEET/MAKER:YAMATO-ESULON CO.,LTD./SIZE:/1)A4 1MM×7MM×319MM」の記載があり、「Quantity」の欄に「12,500PCS」の記載がある。そして、その下には、同様に「Description of Goods」の欄に「1MM×7MM×217MM×2」の記載があり、「Quantity」の欄に「25,000PCS」の記載がある。
さらに、11枚目(資料3の3枚目)の「DISCRIPTION OF GOODS」の欄には、「SUPER-AKULON SHEET」の下に「Styrene Metyl Methacrylate Copolymer」の記載がある。
2 以上の事実を総合すれば、以下のとおりである。
(1)商品カタログについて
商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以前の平成9年に硬質塩ビ代替のスーパーアクロンシートを開発し、同年及び翌年に商品カタログを作成している(乙1、乙2及び乙8)。
これらの商品カタログには、商標権者の名称とともに、商標を表示したものということができる「スーパーアクロンシート」の文字、本件審判請求に係る商品「プラスチック基礎製品」に属するものと認められる「透明シート」の写真及び当該「透明シート」の説明が掲載されている(乙1及び乙2)。
そして、これらの商品カタログに記載されている「スーパーアクロンシート」の文字中、「シート」の文字部分は、商標権者の取扱いに係る商品の形状を表示する部分であるから、「スーパーアクロンシート」の文字中、自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は、「スーパーアクロン」の文字部分にある。
してみれば、本件商標と「スーパーアクロンシート」の文字中の「スーパーアクロン」の文字とは、社会通念上同一と認められる商標である。
なお、当該商品カタログは、本件審判の請求の登録前3年以前に作成されたものである。
(2)会社概要について
商標権者は、「会社概要」のパンフレットを平成20年7月末日現在で作成し、その主要製品の欄に「スーパーアクロンシート(高透明硬化シート)」の商品名などを記載している(乙8)。
この会社概要の主要製品の欄に記載されている「スーパーアクロンシート(高透明硬化シート)」中、「(高透明硬化シート)」は、例えば、クリアファイル、クリアケースなどの材料となるものと認められるものであるから、本件取消請求に係る指定商品「プラスチック基礎製品」に属する商品ということができる。
そして、当該商品は、上記2の商品カタログに記載された商品と同一の商品と認められる。
そうとすれば、主要製品の欄に記載されている「スーパーアクロンシート」は、商標を表したものとみるのが相当である。そして、会社概要の主要製品の欄に記載されている「スーパーアクロンシート」の文字中、「シート」の文字部分は、商標権者の取扱いに係る商品の形状を表示する部分であるから、使用商標中、自他商品の識別標識としての機能を果たす部分は、「スーパーアクロン」の文字部分にある。
してみれば、本件商標と使用商標中の「スーパーアクロン」の文字とは、文字構成を同一にするものであるから、社会通念上同一と認められる商標である。
(3)本件商標の使用について
商標権者は、上記3のパンフレット(会社概要)を、平成20年7月末日現在で作成し(乙8)、同年10月頃、取引先に頒布している(乙10)。
したがって、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において、指定商品「プラスチック基礎製品」に属する商品「(高透明硬化シート)」に、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したパンフレット(会社概要)を作成し、これを頒布した(商標法第2条第3項第8号)ものということができる。
(4)商品の取引について
商標権者は、同人が出資しているタイ国の現地法人と認められるタイランド社から、樹脂シートを輸入している(乙11の1枚目)。
また、硬質の樹脂シートの切断は、容易ではなく、タイランド社は、硬質の樹脂シートをうまく切断する技術を持っていない(乙11の1枚目)。
そこで、商標権者は、輸入した樹脂シートをサワダ商会において切断し、サワダ商会は、切断した樹脂シートを平成19年1月17日付けで商標権者に納品している(乙5の1)。
商標権者は、切断した樹脂シートの取引書類に「SUPER-AKULON SHEET」の標章を付して、2007年(平成19年)1月23日に、タイランド社へ輸出している(乙11の5枚目及び6枚目(資料2の1枚目及び2枚目))。
納品書(乙5の1)及びINVOICE(乙11の5枚目及び6枚目(資料2の1枚目及び2枚目))によれば、平成19年1月17日にサワダ商会から商標権者に納品された樹脂シートと、商標権者が2007年(平成19年)1月23日にタイランド社へ輸出している樹脂シートのサイズ及び数量が一致している。
以上によれば、商標権者は、平成13年7月からスーパーアクロンシートをタイ国の現地法人のタイランド社で製造し、そのシートを輸入することとした(乙11)。そして、書類などを入れるクリアファイル、化粧品などを入れるクリアケースにスーパーアクロンシートを加工するためには、切断しなければならないが、その切断は、容易ではない(乙11)ことから、商標権者は、タイランド社が製造したスーパーアクロンシートを日本へ輸入し、サワダ商会にて切断を行っている(乙11)。商標権者は、サワダ商会から切断されたスーパーアクロンシートの納品を受け(乙5)、タイ国へ輸出し、タイランド社でクリアケースなどに加工している(乙11)。
そうとすれば、納品書が、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者ではないサワダ商会によって作成されたものであるとしても、商標権者は、本件審判の請求の登録前3年以内に、サワダ商会から納品された「シート」を、タイランド社へ輸出していることから、実際に商品の取引があったことが伺われる。
3 請求人の主張について
請求人は、「同人が、被請求人の所有する登録第2697286号『アクロン』に対して本件と同様に不使用取消審判を請求した経緯がある。当該審判において、被請求人は乙第1号証及び乙第2号証と同じカタログを使用証拠として提出したものの、これらのカタログによっては上記登録商標が使用されていたことは認められないとして、平成21年10月9日付で取消審決がなされたという事実がある。上記審決にも既判力が認められると考えるのが自然であり、また、上記審判において被請求人により提出された使用証拠が、本審判で提出された乙第1号証ないし乙第3号証と同一のものであるのだから、少なくともこれらの証拠に関する判断において、その事情は同一である。」旨主張する。
しかしながら、被請求人の所有する「アクロン」に対する商標法第50条不使用取消審判(取消2009-300263)は、本件商標とは異なる商標権(登録第2697286号)について請求されたものである。
してみれば、該審判における登録商標、審判の請求の登録日及び提出された証拠は、本件取消審判とは異なるため、該審決の既判力が、本件取消審判に及ぶものではないことは明らかである。
4 まとめ
以上のとおりであるから、被請求人は、商標権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を請求に係る指定商品「プラスチック基礎製品」について登録商標の使用をしていたことを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の指定商品である請求に係る「プラスチック基礎製品」についての登録は、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
審理終結日 2011-06-15 
結審通知日 2011-06-17 
審決日 2011-06-29 
出願番号 商願平9-127376 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Z17)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 熊谷 道夫 
特許庁審判長 芦葉 松美
特許庁審判官 井出 英一郎
渡邉 健司
登録日 1999-02-05 
登録番号 商標登録第4236858号(T4236858) 
商標の称呼 スーパーアクロン、アクロン 
代理人 工藤 莞司 
代理人 上原 空也 
代理人 齋藤 宗也 
代理人 酒井 正美 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 黒川 朋也 

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