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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 009
管理番号 1246311 
審判番号 取消2010-301243 
総通号数 144 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-12-22 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2010-11-19 
確定日 2011-10-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4039352号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4039352号商標(以下「本件商標」という。)は,「スキャンメール」の片仮名を横書きしてなり,平成7年11月20日に登録出願,第9類「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品,測定機械器具,電気磁気測定器,郵便切手のはり付けチェック装置,電気通信機械器具,盗難警報器,火災報知機」を指定商品として,同9年8月8日に設定登録,その後,同19年2月20日に商標権の存続期間の更新登録がなされたものである。
そして,本件審判の請求登録日は,平成22年12月8日である。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の指定商品中,第9類「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」についての登録を取り消す,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標の商標権者は,日本国内において,本件商標を継続して3年以上「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」について使用していない。また,その商標登録原簿に徴する限り,本件商標に専用使用権あるいは通常使用権が設定・許諾されている事実も見当たらない(甲第1号証)。
よって,本件商標の前記指定商品についての登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
2 答弁に対する弁駁(第1回)
(1)被請求人は,「通常使用権者であるとするスキャナ・ジャパン株式会社(以下「スキャナ・ジャパン」という。)によって本件商標が使用されている」としてスキャナ・ジャパンによる使用に依拠した主張を行っているが,乙第6号証の「確認書」において使用許諾を得た日とされている平成18年7月26日は,スキャナ・ジャパンが設立された平成19年2月5日より前であり事実関係が不明確である点,東証一部上場企業である被請求人が商標の使用許諾に関して何の契約書も残さないのは不自然である点など,乙第6号証により被請求人が主張する通常使用権の存在には,大きな疑念があるため,当該確認書の真否については,証拠調を申立てる。
なお,被請求人は,平成21年(行ケ)第10118号判決書の写しを乙第8号証として提出し,「スキャナ・ジャパンが被請求人から本件商標の使用許諾を得たことは,確定判決で認定された事項である」と述べているが,当該判決は,「商標権者である被告(被請求人)による使用の事実が認められるから,その余について判断するまでもない」と結論づけているから,使用許諾の事実が認定されているとは言えない。
(2)乙第1号証だけでは,何の商品であるか不明であり,同号証及び同第2号証については,写真の撮影日及びカタログの発行日が示されていないことから,乙第1号証及び同第2号証が本件商標を本件審判の請求の登緑前3年以内のものであることは,何ら証明されていない。また,乙第2号証は,スキャナ・ジャパンが発行しているカタログと主張しているが,当該カタログの下段にある「ホームページ」及び「Eメール」の欄が消されている。
また,当該カタログは,乙第3号証として提出されたスキャナ・ジャパンのホームページからカタログを欲する者がダウンロードして印刷するものであって頒布される性格のものとはいえないことに加え,いつ,どこで,誰に対してこのカタログが何部配付されたかを証する書面が提出されていないため,乙第3号証のカタログによっては,商標法第2条第3項第8号に規定する「商品に関する取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布する行為」という標章の使用行為を証明することには該当しない。
(3)乙第3号証は,平成23年1月6日現在のスキャナ・ジャパンのホームページであることはうかがえるものの,当該ホームページは,請求人が平成20年3月12日付で請求した商標法第50条第1項の規定による取消2008-300305事件(以下「別件取消事件」という。)において被請求人が提出した乙第2号証と実質上同じものである。ホームページは,その性格上,閉鎖しない限り外形上は,あたかも商品の広告を継続して行っているがごとく態様で存続してしまうものであるが,逆に実際に商標を付した商品の販売等を行っている場合は,逐次ホームページの内容が変わっていくのが通常である。
しかして,乙第3号証のホームページが別件取消事件において示されて以来,数年にわたってその内容が変わっていないことは,そのこと自体が,スキャナ・ジャパンが本件商標を付した商品を実際に販売していないことを示唆するものであって,法が商標に化体した業務上の信用を保護することを目的としている以上,このホームページによっては,「本件商標を使用している事実」を証明しているとはいえないものである。
(4)乙第4号証及び同第5号証は,新聞及び月刊誌であってその発行日は,本件審判の請求の登録日である平成22年12月6日前3年以内のものであることはうかがえる。
しかしながら,乙第4号証の「日刊航空貿易新聞」は,単なる企業紹介の記事であるところ,「スキャナ・ジャパンが第三者である英国スキャナ社により2007年2月に設立された日本法人」で,同英国スキャナ社の「自慢の検知機器」に「卓上型レターボム検知器スキャンメール」という製品があることは分かるものの,商標権者らが,日本国内において要証期間内に,本件商標の使用をしていることは,何ら証明されていない。
同様に,乙第5号証の「月刊CARGO」も,「英国スキャナ社が2007年2月にスキャナ・ジャパンという日本法人を設立」したこと及び英国スキャナ社の「卓上型レターボム検知器スキャンメール」という製品を紹介しているが,スキャナ・ジャパンが本件商標の付された「卓上型レターボム検知機」を取引していることは,何ら証明されていない。
(5)以上述べたとおり,乙第1号証ないし同第5号証によっては,スキャナ・ジャパンが本件商標を付した商品を取引していることは,何ら証明されていないものである。
また,「スキャナ・ジャパンが本件商標の通常使用権者である」との主張に対しては,証拠調及び証人尋問により真否を明らかにする所存である。
3 弁駁(第2回)
請求人は,別件取消事件を請求したが,当該審判の請求不成立確定後の平成22年11月17日,被請求人から『登録商標「スキャンメール」について』と称する書信を受領した(甲第3号証)。
被請求人は,この書信において,別件取消事件についての経緯を述べた上で,『この審判に対応しつつも本件商標を請求人に譲渡することについて「並行して」検討していた』と述べ,請求人が依然として本件商標を譲り受ける意思があるか否かの回答を求めている。
これは,被請求人にとって,本件商標の登録を維持する価値を有しないことを意味するものであり,この点は,被請求人が答弁書において自ら本件商標を使用しているとは述べていないこととも符合する。
一方,このことは,被請求人が答弁書において「本件商標の通常使用権者が存在し,通常使用権者によって本件商標が使用されている」と主張していることとは,相反するものである。
すなわち,本件商標の登録原簿(甲第1号証)に照らせば通常使用権は設定登録されておらず,仮に本件商標に係る商標権を請求人が取得した場合,当該通常使用権者は,譲受人である請求人に対抗することができないので(法第31条第4項で準用する特許法第99条第1項),被請求人が通常使用権者と主張するスキャナ・ジャパンが本件商標を使用することは,商標権侵害を構成することになる。
したがって,通常使用権者が当該商標を使用しているにもかかわらず,2年以上にわたって当該商標に係る商標権の他人への譲渡を検討し,現にその他人に商標権を譲り受ける意思があるか否かの確認を求めることは常識では考えられない行為であり,このことは,被請求人が通常使用権者と主張するスキャナ・ジャパンが,要証期間内に本件商標を付した商品を取引していないことを示唆するものである。
4 証人尋問申立
請求人は,平成23年5月11日付けの証人尋問申立書において,スキャナ・ジャパンの代表取締役川口氏の証人尋問を申立て,同日付けで尋問事項を記載した尋問事項書を提出した。

第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標は,「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」の範囲内にある商品の一つである「郵便不審物選別装置」について,商標権者である被請求人が使用を許諾したスキャナ・ジャパンにより使用されている。
ア 乙第1号証には,スキャナ・ジャパンが販売する郵便不審物選別装置(以下「本製品」という。)の写真を示す。これに示されているように,本製品の正面には,「SCANMAIL」の文字が付されている。「SCANMAIL」は,片仮名により表記された本件商標「スキャンメール」をアルファべット表記したものであるから,本件商標と社会通念上同一の商標である。
イ 乙第2号証は,スキャナ・ジャパンが発行しているカタログである。
これに示されるように,本製品は,レターボム(手紙爆弾)等に使用される小型電子回路や刃物等の不審物を発見するための卓上型検知装置であり,「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」の範囲内にあることは明らかである。本製品の製品名として「スキャンメール」及び「SCANMAIL」が使用されている。なお,これらには,型番として「10K」が付されているが,これは自他商品識別機能を有しないから,「スキャンメール10K」及び「SCANMAIL10K」は,いずれも本件商標と社会通念上同一である。
ウ 乙第3号証は,スキャナ・ジャパンのホームページ(平成23年1月6日現在)の写しである。ここにも,卓上型レターボム検知器として「スキャン・メール」の表記が見られる。
エ 乙第4号証は,2008年1月8日付「日刊航空貿易」の写しであり,乙第5号証は,「月刊CARGO」2008年2月号の写しである。そのいずれにも,スキャナ・ジャパンが「スキャンメール」を販売していることが記載されている。
オ 以上のように,現在,スキャナ・ジャパンにより郵便不審物選別装置について本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていることは明らかである。
(2)被請求人がスキャナ・ジャパンに対して使用許諾した経緯について
被請求人は,従前,本製品の製造元である英国スキャナMSC社(Scanna MSC Ltd.)と代理店契約を締結し,その商品を輸入・販売してきたが,英国スキャナMSC社は,日本法人スキャナ・ジャパンを介した輸入・販売も行うこととなった。この日本法人による輸入・販売を開始するにあたって,被請求人とスキャナ・ジャパンとの間で話し合いがなされ,平成18年7月26日に,スキャナ・ジャパンが郵便不審物選別装置に商標「スキャンメール」並びに「SCANMAIL」を使用することを,被請求人が許諾するに至った(なお,当時,スキャナ・ジャパンは,設立準備中。)。当該使用許諾を行った事実は,乙第6号証でスキャナ・ジャパンの社長が認めるとおりである。なお,乙第7号証にて乙第6号証の川口がスキャナ・ジャパンの代表者であることが確認できる。
以上のとおり,被請求人がスキャナ・ジャパンに本件商標の通常使用権を許諾していたことは明らかである。
(3)本件商標については,平成20年3月12日に請求人により商標法第50条に基づく取消審判が請求(別件取消事件)がなされ,請求不成立の審決がなされた後,審決取消訴訟が提起され(平成21年(行ケ)第10118号,以下「別件審決取消訴訟事件」という。),請求棄却の判決が上告受理申立却下となり,結果的に審決が確定している。
そこで,別件審決取消訴訟事件の判決書の写しを乙第8号証として提出する。ここでは以下の事項が認定されている。
・スキャナ・ジャパン株式会社のホームページに「スキャンメール10K」や「SCANMAIL10K」などの記載があること
・スキャナ・ジャパン株式会社が被告(被請求人)から本件商標の使用許諾を得たこと
・「スキャンメール10K」は本件商標と社会通念上同一であること
このように,前記(1)及び(2)で述べた事項は,既に確定判決において認定された事項であり,請求人の主張が認容される余地はない。
(4)以上の証拠から,本件商標と社会通念上同一の商標が「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」の範囲内にある商品の一つである「郵便不審物選別装置」について,商標権者である被請求人が使用を許諾したスキャナ・ジャパンにより,過去3年以内に使用されたことは明白である。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出した乙各号証及び当事者の主張によれば,以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は,被請求人が「郵便不審物選別装置」の写真と主張するものであるが,その装置の正面には,「SCANMAIL」と「10K」の文字が段を違えて表示されている。
(2)乙第2号証は,被請求人がスキャナ・ジャパンが発行しているカタログと主張するものであるが,これには,以下の記載のほか,乙第1号証の写真に写された装置を女性が操作する画像が表示されている。
・「スキャンメール 10K-卓上型レターボム検知器
郵便物内の不審物を確実に発見します。…」
・「スキャンメール(SCANMAIL10K)の特徴
軽量・小型で移動が簡単です。…」
・「スキャンメールで発見できる対象物…」
・「スキャンメール10Kの仕様:
電源…
総輸入元 スキャナ・ジャパン株式会社…」
これらの記載は,別件審決取消訴訟事件の判決文(後記(7)ア)において,「スキャナ・ジャパン株式会社のホームページからの打出し」と認定された記載内容と一致する。また,請求人もこれを「スキャナ・ジャパンのホームページからカタログを欲する者がダウンロードして印刷するもの・・」と主張するところである。
これらの状況からすると,乙第2号証は,カタログとはいえず,乙第3号証のスキャナ・ジャパンのホームページの「スキャン・メール→」の矢印から遷移することのできるスキャナ・ジャパンのホームページの一部,すなわち,ウェブページとみるのが相当である。
(3)乙第3号証(スキャナ・ジャパンのホームページ)には,以下の記載及び画像の表示がある。
・「最先端の不審物スクリーニング技術」
・「卓上型レターボム検知器/スキャン・メール→」の文字と共に,乙第2号証に表示されたものと同じ「乙第1号証の写真に写された装置を女性が操作する画像」が表示されている。
そして,当該ホームページは,「2011/01/06」と表示されていることから平成23年1月6日に打ち出されたものと推認されるが,請求人の主張によれば,これは別件取消事件において被請求人が提出した乙第2号証と実質的に同じものであるとのことからすると,当該ホームページは,少なくとも別件取消事件における乙第2号証の提出時から平成23年1月6日までの間は,継続して閲覧可能な状態であったことが容易に推認できる。
(4)乙第4号証(「日刊航空貿易」2008年〔平成20年〕1月8日,15頁)には,以下の記載がある。
・「スキャナ・ジャパン/爆発物検地装置などを販売/東京・新宿にショールーム」
・「スキャナ・ジャパンは,不審物や爆発物の検知装置などを販売する英国スキャナ社が昨年2月に設立した日本法人。…」
・「同社は,…卓上型レターボム検知器『スキャンメール』…などを販売している。…」
(5)乙第5号証(「CARGO」2008年〔平成20年〕2月号,48頁)には,以下の記載がある。
・「スキャナ・ジャパン/不審物・爆発物検知装置などを販売/政府機関や民間企業対象に需要開拓/不審物や爆発物の検知装置などを販売する英国スキャナ社は昨年2月,日本法人『スキャナ・ジャパン』を設立した。…」
・「英スキャナ社は,欧米各国を中心に,…卓上型レターボム検知器『スキャンメール』…など,用途に合わせてバリエーションに富んだ商品を販売している。」
・「…『スキャンメール』は厚さ6cmまでの不審物を投入口に差し込むだけで自動的に検査できる。…」
そして,乙第4号証及び乙第5号証の雑誌の発行日は,いずれも,本件審判の請求の登録前3年以内である。
(6)乙第6号証(スキャナ・ジャパンの代表取締役の記名・押印のある確認書)には,「4.当社(スキャナ・ジャパン)は,上記商品を販売開始するにあたって,ホーチキ株式会社から上記商品(SCANMAIL 10K)に商標『スキャンメール』並びに『SCANMAIL』を使用する許諾を平成18年7月26日に得た。」との記載がある。
(7)乙第8号証は,別件審決取消訴訟事件の判決文であるが,当該事件は,本件商標について,本件と同一当事者により,本件と同一の商品についての不使用取消審判請求(別件取消事件)の結果が争われた事件であるところ,その判決文には,以下の記載がある。
ア 「エ 甲5(スキャナ・ジャパン株式会社のホームページからの打出 し〔作成日・打出し日不明〕,審判乙3)には,以下の記載がある。
・「スキャンメール 10K -卓上型レターボム検知器
郵便物内の不審物を確実に発見します。…」
・「スキャンメール(SCANMAIL10K)の特徴
軽量・小型で移動が簡単です。…」
・「スキャンメールで発見できる対象物…」
・「スキャンメール10Kの仕様:
電源…
総輸入元 スキャナ・ジャパン株式会社…」
イ 「キ スキャナ・ジャパン株式会社は,英国法人のSCANNA M SC Ltdの日本法人であり,セキュリティー機器の仕入,販売,輸入 等を目的として平成19年2月5日に設立され,その代表取締役は川口博 久である。スキャナ・ジャパン株式会社は,平成19年4月3日から日本 国内において「スキャンメール10K」を販売しているところ,設立準備 段階の平成18年7月26日に被告から本件商標の使用許諾を得た(以上 甲16,乙5)。」
2 以上において認定した事実によれば,以下の事実が認められる。
(1)スキャナ・ジャパンは,乙第1号証に示された「SCANMAIL」の標章が表示された「郵便不審物選別装置」を「卓上レターボム検知器」,「スキャン・メール」の説明書きと共に,本件取消審判請求の登録前3年以内に自社のホームページに掲載していたことが認められる。
また,スキャナ・ジャパンは,乙第1号証に示された「SCANMAIL」の標章が表示された「郵便不審物選別装置」を,少なくとも乙第4号証及び乙第5号証の雑誌の発行時(平成20年1月又は2月)及びその前後の期間,すなわち,本件取消審判請求の登録前3年以内に販売したであろうことが容易に推認できる。このことは,前記1(7)イの判決文中の「・・スキャナ・ジャパン株式会社は,平成19年4月3日から日本国内において「スキャンメール10K」を販売しているところ・・」の記載からも裏付けられるところである。
そして,これらの使用は,商標法第2条第3項第1号所定の「商品又は商品の包装に標章を付する行為」又は同第8号所定の「商品若しくは役務に関する広告,価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し,若しくは頒布し,又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当する。
(2)「郵便不審物選別装置」は,レターボム(手紙爆弾)などに使用される小型電子回路や刃物等の不審物を発見するための卓上型検知装置であり,本件審判の取消に係る商品中の「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」の範疇に含まれる商品と認められる。
そして,「郵便不審物選別装置」に表示された「SCANMAIL」の文字は,「10K」と段を違えて表示されていること,「10K」が商品の品番,商品番号を認識させるものであることから,独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものと認められる。
また,「SCANMAIL」の文字は,本件商標と片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標と認められ,本件商標と社会通念上同一と認められる商標である。
さらに,乙第2号証及び乙第3号証のスキャナ・ジャパンのホームページに,「卓上レターボム探知器」の文字と共に表示された「スキャンメール」及び「スキャン・メール」も本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえる。
(3)乙第6号証の確認書によれば,スキャナ・ジャパンが,被請求人(商標権者)から「郵便不審物選別装置」に商標「スキャンメール及びSCANMAIL」を使用することの許諾を得たこと,すなわち,スキャナ・ジャパンが本件商標の通常使用権者であることが認められる。
そして,このことは,前記1(7)イの判決文の記載(・・設立準備 段階の平成18年7月26日に被告から本件商標の使用許諾を得た・・)によっても裏付けられるところである。
(4)小括
以上によれば,本件商標の登録取消しの審判の請求の登録がされた平成22年12月8日より前3年以内に,日本国内において通常使用権者であるスキャナ・ジャパンが,取消請求に係る指定商品の一部である「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」に含まれる商品の一つである「郵便不審物選別装置」に本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことが認められる。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,「乙第6号証の『確認書』において使用許諾を得た日とされている平成18年7月26日はスキャナ・ジャパンが設立された平成19年4月3日より前であるから事実関係が不明確であり,被請求人が商標の使用許諾に関して契約書を残さないのは不自然であるなどとして,通常使用権の存在には疑念があるから,当該確認書の真否について証拠調を申立てる。また,別件審決取消訴訟事件の判決では,『商標権者による使用の事実が認められるから,その余について判断するまでもない』と結論づけているから,使用許諾の事実が認定されているとは言えない。」旨主張する。
しかしながら,請求人の主張のとおり,本件商標の使用許諾がなされた平成18年7月26日がスキャナ・ジャパンの設立前であるとしても,被請求人の主張及び別件審決取消訴訟事件の判決の認定によれば,その時期はスキャナ・ジャパンの設立準備中であったことが認められるから,その日付をもって疑念があるとはいえない。また,契約書の提出がないことも,本件商標の使用許諾がなされたことの事実を否定することにはならない。
さらに,別件審決取消訴訟事件の判決が,商標権者による使用を認めたものであるとしても,そのことをもって被請求人とスキャナ・ジャパンとの間で本件商標に使用許諾がなされていなかったことの根拠にはならない。
したがって,乙第6号証の確認書及び使用許諾に疑念があるとする請求人の主張は,採用することはできない。
(2)請求人は,弁駁書(第2回)において,「本件商標がその指定商品について使用されている事実の立証が尽くされているとはいい難く,また,被請求人が述べている『スキャナ・ジャパンが本件商標の通常使用権者である』との主張に対しては証人尋問によりその真否を明らかにする」と主張し,
同日付けで,スキャナ・ジャパンの代表取締役川口博久を証人とする証人尋問申立書及び尋問事項書を提出した。
しかしながら,その尋問事項をみると,尋問事項は,いずれも乙第6号証の確認書に関するものであるところ,前記認定のとおり,その確認書の記載内容に疑念があるとはいえないから,本件の審理おいて,請求人の主張する証人尋問の必要性は認められない。
(3)請求人は,「被請求人が本件商標を請求人へ譲渡することを検討していた。このような事実はスキャナ・ジャパンが本件商標を付した商品を取引していないこと示唆するものである」旨主張するが,そのような事情は,請求人の憶測にとどまるものであって,前記において認定した通常使用権者による本件商標の使用の事実を覆すものではない。
以上のとおり,請求人の主張は,いずれも採用することができない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録取消しの審判の請求の登録がされた平成22年12月8日より前3年以内に,日本国内において通常使用権者であるスキャナ・ジャパンが,取消請求に係る指定商品の一部である「磁気探知機・超音波応用探知機等の電子応用機械器具及びその部品」に含まれる「郵便不審物選別装置」に本件商標と社会通念上同一の商標を使用していたことが認められる。
したがって,本件商標は,商標法第50条第1項の規定により,請求に係る指定商品についての登録を取り消すべきでない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-07-14 
結審通知日 2011-07-19 
審決日 2011-08-31 
出願番号 商願平7-120456 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (009)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 和雄 
特許庁審判長 小林 由美子
特許庁審判官 小川 きみえ
鈴木 修
登録日 1997-08-08 
登録番号 商標登録第4039352号(T4039352) 
商標の称呼 スキャンメール 
代理人 香原 修也 
代理人 広川 浩司 
代理人 藤田 雅彦 

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