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審決分類 審判 全部無効 商標の周知 無効としない X1235
審判 全部無効 商品(役務)の類否 無効としない X1235
管理番号 1243321 
審判番号 無効2010-890110 
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-12-27 
確定日 2011-09-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第5344266号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5344266号商標(以下「本件商標」という。)は、「自転車DEPO」の文字を標準文字で表してなり、平成22年1月12日に登録出願、第12類「自転車並びにその部品及び付属品」及び第35類「自転車の小売又は卸売の業務において行なわれる顧客に対する便益の提供,インターネットを利用した自転車の小売又は卸売の業務において行なわれる顧客に対する便益の提供,自転車を快適に乗るための商品の販売に関する情報の提供」を指定商品及び指定役務として、同年7月13日に登録査定、同年8月6日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第25号証(枝番を含む。)を提出した。
1 使用商標
(1)請求人が本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するとして引用する使用商標は、以下のアないしウのとおりである。
ア 「ジテンシャデポ」(以下「使用商標1」という。)
イ 「ZitensyaDepo」(以下「使用商標2」という。)
ウ 「zitensyadepo」(以下「使用商標3」という。)
(2)請求人の使用商標1及び2については、ジテンシャデポ公式ホームページ(甲2)などにおいて広く使用し、また、請求人の使用商標3については、インターネット公式ホームページのURL(甲2)に使用している。このジテンシャデポ公式ホームページの使用商標1ないし3は、ジテンシャデポ本店の開設前である2003年7月にジテンシャデポ楽天店を開設した当時から現在に至るまで継続して使用している。
2 本件商標と使用商標1ないし3との類否について
(1)請求人の使用商標1は、本件商標と称呼が全く同一であり類似することは明らかである。
また、請求人の使用商標2及び3についても、本件商標と称呼が全く同一であるために類似することは明らかである。
(2)請求人の業務等について
ア 請求人は、ジテンシャデポ公式ホームページの「店舗案内」及び「会社概要」の項目をクリックすると明らかなように、愛知県名古屋市においてジテンシャデポ名東店及びジテンシャデポ高針店において自転車並びにその部品及び付属品を店舗販売している(甲3、甲4)とともに、インターネットのジテンシャデポホームページおける「ジテンシャデポ 本店」、インターネットのウエブサイト楽天における「ジテンシャデポ 楽天店」、インターネットのウエブサイトYahooにおける「ジテンシャデポ Yahoo店」及びインターネットのウエブサイトamazonにおける「ジテンシャデポ amazon店」において、自転車並びにその部品及び付属品をインターネット販売している(甲4)。
イ 請求人が行っているこれらの役務は、本件商標の指定役務「第35類 自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、インターネットを利用した自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益、自転車を快適に乗るための商品の販売に関する情報の提供」と同一であるとともに、本件商標の指定商品「第12類 自転車並びにその部品及び付属品」と類似するものであり、したがって、請求人が行っている役務と本件商標の指定商品及び指定役務とは、抵触関係にあることが明らかである。
(3)類否のまとめ
使用商標1ないし3と本件商標とは、上述したように、商標の類似判断基準の一つである称呼が全く同一であるとともに、請求人の役務と本件商標の指定商品及び指定役務とは同一又は類似である。
3 使用商標1ないし3の周知性
使用商標1ないし3は、請求人の役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されており、以下、説明する。
(1)インターネットを通しての情報の提供
請求人は、2003年7月に「ジテンシャデポ 楽天店」を開設し、2004年2月に「ジテンシャデポ Yahoo店」を開設し、2006年5月に「ジテンシャデポ 本店」を開設し、2007年1月に「MBXデポ 本店」を開設し、2007年7月に「ジテンシャデポ amazon店」を開設し(甲4)、これらを開設当初から現在に至るまで継続して運営しており、上記インターネットの各店のトップページ(甲5?甲9)において、自転車並びにその部品及び付属品の販売情報の提供に使用商標1などを継続的に使用し、その使用は現在まで至っている。
自転車並びにその部品及び付属品の販売情報の提供に関し、例えば、2010年7月29日に検索サイトのグーグル(Google)及びヤフー(Yahoo!)を用い、キーワードとして「ジテンシャデポ」を入力して検索すると、それぞれの検索結果において第1位?第20位のすべてが請求人に関する内容であり(甲10、甲11)、これらの結果からも、使用商標1は、インターネットを通して全国的に請求人の役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることがわかる。
(2)インターネットを通してのアクセス数
「ジテンシャデポ 楽天店」へのアクセス人数及びアクセス数(甲12)は、開設当初の2003年7月頃にはアクセス人数が1,200?2,000人/月(アクセス数:3,000?5,000回/月)であった(甲12の1)のが、2005年3月頃にはアクセス人数が10,000人/月(アクセス数:45,000回/月)を超え(甲12の5)、また2006年3月頃にはアクセス人数が30,000人(アクセス数:100,000回/月)を超えるようになり(甲12の4)、2007年3月以降はアクセス人数がコンスタントに30,000?50,000人/月(アクセス数:150,000?220,000回/月)となり(甲12の1?8)、これから明らかなように、「ジテンシャデポ 楽天店」は、需要者の間で広く認識された店舗であることがわかる。
請求人は、「ジテンシャデポ 楽天店」に加えて、「ジテンシャデポ Yahoo店」、「ジテンシャデポ 本店」、「MBXデポ 本店」及び「ジテンシャデポ amazon店」を開設して自転車並びにその部品及び付属品の情報をインターネットを介して提供しており、請求人が運営する「ジテンシャデポ」全体のアクセス人数及びアクセス数は、上述した「ジテンシャデポ 楽天店」単独の数字よりも多くなることは明らかであり、このような事実からすると、請求人が使用する使用商標1などは、請求人が自己の役務に使用するものとして需要者の間に広く認識されていると判断することができる。
(3)インターネットを通しての売上げ
上述した「ジテンシャデポ楽天店」、「ジテンシャデポ Yahoo店」、「ジテンシャデポ 本店」及び「ジテンシャデポ amazon店」における売上額は、次のとおりである。
「ジテンシャデポ 楽天店」における売上額(甲12、設立当初から本件商標の登録出願時までの期間)は、2003年7月の開設当初は10万円/月程度であった(甲12の1)のが、2003年11月頃には100万円/月を超えるようになり(甲12の2)、また2004年3月頃にはコンスタントに400?600万円/月となり(甲12の2)、更に2006年9月以降にはコンスタントに800?1000万円に達し(甲12の4)、2009年12月頃には月平均1700万円を超える程になっている(甲12の8)。特に、本件商標の登録出願の頃、すなわち2009年11月及び12月において、サブジャンルTOP10平均売上(P)(自転車関係の販売会社の上位10社の平均売上額)が、11月:約1920万円、12月:約1724万円であるのに対し、請求人の2009年11月の売上額が約1744万円、2009年12月の売上額が1672万円であり、サブジャンルTOP10の平均売上額に近い数字となっている(甲12の8)。このことは、「ジテンシャデポ 楽天店」の売上額がウエブサイト楽天における自転車関係の販売分野において上位から第5番目ぐらいであることを意味しており、このことは、「ジテンシャデポ 楽天店」が需要者の間に広く知られ、使用商標1などが、請求人が自己の役務(自転車並びにその部品及び付属品の販売情報の提供)を表示するものとして需要者に広く認識されていることを示すものである。
また、「ジテンシャデポ Yahoo店」における売上額(甲13、設立当初から本件商標の登録出願時までの期間)は、2004年4月の開設当初頃は約200万円/月程度であった(甲13の3?5)のが、2006年4月頃には約400?700万円となり(甲13の27)、また2008年4月以降においては約500万円?1000万円/月となり(甲13の39?71)、本件商標の登録出願の頃(2009年12月頃)には月平均700万円を超える程になっている(甲13の69?71)。
「ジテンシャデポ 本店」における売上額(甲14、設立当初から本件商標の登録出願時までの期間)は、2006年6月の設立当初は約30万円/月程であった(甲14の1及び2)のが、2009年度の月平均が約200万円となっている(甲14の4)。
更に、「ジテンシャデポ amazon店」における売上額(甲15、2009年の年初から本件商標の登録出願時までの間の期間)は、2009年の初め頃は約20万円/月であった(甲15の1?4)のが、その年の年末頃(本件商標の登録出願頃)には約600万円/月となっている(甲15の23?26)。
ここで、請求人の使用商標1を使用するインターネット店舗の売上額を総計すると、本件商標の登録出願頃の売上額(2009年11月及び12月の平均売上額)は、「ジテンシャデポ 楽天店」が約2122万円/月で、「ジテンシャデポ Yahoo店」が約787万円/月で、「ジテンシャデポ 本店」が約160万円/月で、また「ジテンシャデポ amazon店」が約655万円であることから、それらの総計は約3724万円/月となり、年間売上げに換算すると約45,000万円となる。
このように自転車並びにその部品及び付属品の販売において、年間約4億5000万円の売上げがあるということは、使用商標1は、需要者の間に広く知られているということができる。
(4)ジテンシャデポの店舗
請求人は、自転車並びにその部品及び付属品の販売をインターネット店舗に加えて、小売店舗においても行っており、2001年8月にジテンシャデポ名東店(愛知県名古屋市名東区猪子石)を出店し、2009年3月にジテンシャデポ高針店(同区高針)を出店し、これら店舗においては、店舗の入口上側に使用商標1を表示して周知を図っている(甲3、甲4)。
ジテンシャデポ名東店及びジテンシャデポ高針店は、名古屋地域で最大級の自転車専門店であり、ジテンシャデポ名東店においては自転車を600?700台展示する大型店であり、名古屋地域では需要者に知られた小売店舗である。
(5)店舗を通しての情報の提供
ジテンシャデポ名東店及びジテンシャデポ高針店においては、年間を通して定期的にチラシを配布して名古屋地域の需要者に周知を図っている。請求人は、ジテンシャデポ名東店及び高針店についてのチラシ印刷を印刷会社に依頼しており、その内訳は、平成14年(2002年)3月5日に11万枚を始めとして平成21年10月3日に5万枚(甲16の1?21)である。
これらの印刷したジテンシャデポ名東店及び高針店のチラシを新聞への折込みをメインに、ポスティング、店舗などでも配布している。
新聞への折込みは、店舗が存在する名古屋地区を中心に行っており、平成14年(2002年)3月7日に5万枚を始めとして成20年10月10日に2.4万枚(甲17の48)配布しており、近年においては、春のシーズンに4回(内訳:3月に2回、4月に2回)、秋のシーズンに4回(内訳:9月2回、10月に2回)の割合で定期的に配布している(甲17の1?48)。
また、ポスティングによる配布は、2005年頃に3回行っている。この印刷チラシのポスティングは、平成17年(2005年)3月31日に約6.1万枚、平成9年9月3日に4.8万枚及び平成17年9月18日に5万枚行っている(甲18の1?3)。
店舗で配布するチラシは、平成21年(2009年)以降に印刷したものについては印刷時期が管理されており、チラシの右下のチラシNo.の数字がこの印刷時期を示し、逆から見た数字が印刷時期となっており、例えば、「チラシNo.309002」は、2009年3月に印刷したことを示している。
2009年3月に配布したチラシは、チラシNo.309002(甲19の1)及びチラシNo.309002(甲19の2)であり、また2009年9月に配布したチラシは、チラシNo.909002(甲19の3)である。
ジテンシャデポ名東店を出店した当初の頃においては、甲第19号証の4ないし9のチラシを配布し、その後、甲第19号証の10ないし30のチラシを配布している。
(6)その他のメディアを通しての情報の提供
ジテンシャデポについては、業界雑誌「サイクルプレスジャパン(Cycye Press Japan)」に広告が掲載されおり、2007年4月号No.799(甲20の1)の第80頁、2008年4月号No.813(甲20の2)の第64頁及び2009年4月号No.825(甲20の3)の第5頁に掲載されている。「サイクルプレスジャパン」は、全国の自転車メーカ及び自転車店に配布され、その配布部数は約8000部である。
また、ジテンシャデポについては、平成21年月9日に発行された「週刊文春」(甲21)に掲載され、その第50頁ないし第52頁に電動自転車のみに限定しても年間2000台以上の販売を行っていることなどが記載されている。
さらに、ジテンシャデポ公式ホームページ(甲2)における「ニュースリリース」に記載(甲22)されているように、2008年4月読売新聞にジテンシャデポ名東店に関する記事が掲載され(甲23)、2008年5月DCカードCARD Pressにジテンシャデポ及びジテンシャデポの各店に関することが掲載され(甲24)、また2008年12月に滋賀銀行が開設するSTIO MALLホームページにジテンシャデポが掲載された(甲25)。
(7)周知性のまとめ
上述したとおりであるので、使用商標1などは、請求人の業務に係る役務、すなわち自転車などの販売を表示するものとして需要者の間に広く認識されている。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務について、商標法第4条第1項第10号に違背して登録されたものであるから、商標法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 理由
本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではなく、請求人が主張するような無効理由はない。
2 請求人の主張中、「1 使用商標」及び「2 本件商標と使用商標1ないし3との類否について」は認めるが、「3 使用商標1ないし3の周知性」及び「4 まとめ」についての主張は認めることができない。
3 使用商標1及び2の周知性ついて
(1)インターネットを通しての売上げ(甲12?甲15)について
請求人は、自転車並びにその付属品の販売において、年間約4億5,000万円の売上げがあるということは、その販売に寄与する商標、すなわち使用商標1は、需要者の間に広く知られているということができると主張しているが、以下のとおり認めることができない。
ア 本件商標の登録出願前の売上金額
請求人は、「ジテンシャデポ 楽天店」における売上額が2009年12月頃には月平均1,700万円を超える程になっている(甲12の8)と主張し、「Yahoo店」における売上額が2009年12月頃には月平均700万円を超える程になっている(甲13の69?71)と主張し、「本店」における2009年度の月平均が約200万円となっている(甲第14号証の4)と主張し、「amazon店」における売上額が本件商標の登録出願の頃には約600万円/月となっている(甲15の23?26)と主張しておきながら、年間売上換算をするときには、2009年11月及び12月の平均売上額(「楽天店」約2,122万円/月、「Yahoo店」約787万円/月、「本店」約160万円/月、「amazon店」約655万円/月)で計算し総計3,724万円/月とし年間売上換算で約4億5,000万円となるとしている。
本件商標の登録出願時である平成22年1月12日時点の売上金額は計算が困難であるため、平成21年12月の実際の売上額を確認すると、「楽天店」が約2,226万円(甲12の8)、「Yahoo店」が約611万(甲13の71)、「本店」が約153万円(甲14の4)、「amazon店」が約621万円(甲15の25及び26)であるので、4店舗の合計売上金額は約3,661万円となり、単純に12倍すると約4億3,332万円となる。約2,000万円の開きが生じている。
イ 自転車小売事業の市場規模について
平成19年商業統計表第4巻品目編(乙1)の658頁によれば、自転車小売年間商品販売額の全国合計は、2,023億8,100万円である。
ウ 請求人の売上金額における市場シェアについて
請求人の換算による年間売上金額は、約4億3,332万円である。仮に請求人が主張する約4億5,000万円とした場合であっても、自転車小売年間商品販売額の全国合計である2,023億8,100万円に比べればそのシェアは、0.2%程度である。
したがって、1%にも満たない売上額により、「自転車並びにその付属品の販売において、年間約4億5,000万円の売上があるということは、その販売に寄与する使用商標1は、需要者の間に広く知られているということができる」との主張は、認めることができない。
エ 請求人の想定販売台数における市場シェアについて
請求人の売上金額の具体的な内訳(販売台数が何台か)が不明であるので、仮想的に財団法人自転車産業振興協会ウェブサイト統計(乙2)からダウンロードした自転車生産動態・輸出入統計(乙2の1)を用いて想定販売台数を算出した。
自転車生産動態・輸出入統計(乙2の1)によると、平成21年の国内向完成車数量は967万1,176台である。また、平成21年の国内向完成車の金額は、生産完成車金額344億3,500万円+輸入完成車金額704億3,400万円=1,048億6,900万円となる。平成21年の国内向完成車の金額/平成21年の国内向完成車数量という式で完成車1台あたりの金額を算出すると約10、800円(以下、算定単価という)となる。請求人が主張する売上額4億5,000万を算定単価10,800円で除算してみると約4万2,000台という想定販売台数が算出される。
算出された想定販売台数4万2,000台は、平成21年の国内向完成車数量967万1,176台の約0.4%である。
オ 2009年11月及び12月の楽天店での売上について
請求人は、特に、2009年11月:約1,744万円、12月:1,672万円であり、サブジャンルTOP10の平均売上額に近い数字となっていることは使用商標1などが、請求人が自己の役務を表示するものとして需要者に広く認識されていることを示すものであると主張しているが、認めることができない。なぜならば、第1に、楽天のサブジャンルの規模も様々なうえ、楽天サブジャンルTOP10の内訳(1位2位でシェアの90%を獲得しているジャンルもあれば、1位ないし10位まで僅差のジャンルもある)も様々であると推測するところ、楽天サブジャンルTOP10の平均売上額に近い数字となっていることのみによって、使用商標1又は2が需要者に広く認識されているとはいえないからである。
また、第2に、上記ウでも説明したように自転車小売事業の市場規模と比較してみると1%にも満たない非常に小さなシェアの中での数字であるからということも理由の一つである。
(2)店舗を通しての情報の提供(甲16?甲19)について
請求人は、ジテンシャデポ名東店及びジテンシャデポ高針店は、名古屋で最大級の自転車専門店であり、ジテンシャデポ名東店においては大型店であり、名古屋地域では需要者に知られた小売店舗であると主張をしている。
小売店舗が需要者に知られていることと、使用商標1又は2が需要者に知られていることとは必ずしも一致するとは限らないが、少なくとも名古屋地域で使用商標1又は2が需要者に知られているとは、以下のとおり認め難い。
ア ジテンシャデポ名東店及び高針店についてのチラシの印刷
平成14年3月5日から平成21年10月3日の期間で、複数回チラシを印刷していることは確認できる(甲16の1?21、甲19の1?30)。
イ 折込みチラシの配布期間、配布回数、配布枚数、配布地域
折込みチラシは、平成14年3月7日から平成20年10月10日までの約6年7ケ月の期間で48回、折込み枚数の合計が約244万枚であることは確認できる(甲17の1?48)。また、配布地域は請求人が主張するとおり名古屋地区中心である。
ウ 名古屋市の世帯数について
愛知県公式ウェブサイト愛知県の人口(平成23年1月1日現在)バックナンバー(乙3)からダウンロードした市区町村別推計人口と世帯数(乙3の1)によれば、本件商標の出願前である平成20年10月1日の名古屋市の世帯数は、99万9,717世帯である。
エ チラシによる宣伝広告の効果
折込みチラシは、平成14年3月7日から平成20年10月10日までの約6年7ケ月の期間で48回、合計約244万枚である(甲17の1?48)。また、平成20年10月1日の名古屋市の世帯数は99万9,717世帯である(乙3の1)。当該数字から推測できることは約6年7ケ月の期間をかけて、名古屋市内で1世帯あたり2枚又は3枚のチラシが配布されたのと同等の折込みチラシによる宣伝広告効果しか得られないということである。
したがって、当該折込みチラシのみによって、名古屋地域では需要者に知られているということは認め難い。
また、ポスティングによるチラシの配布は、折込みチラシよりも、頻度も枚数も少ないのは明らかであるので、当該ポスティングのみによって、名古屋地域では需要者に知られているということも認め難い。
オ 需要者の間に広く認識されている商標について
商標法第4条第1項第10号が規定する「需要者の間に広く認識されている商標」といえるためには、狭くともー県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたって認識されていることを要するものと解すべきところ、名古屋市内ですら需要者に知られているとは認め難い状況下では、愛知県及びその近県にわたって認識されているとは到底いえない。
カ 滋賀県及びその近県で使用商標が認識されている可能性について
本社、第一配送センター及び第二配送センターが滋賀県甲賀市に存在する(甲4)。しかし、甲第4号証を確認すると、本社には丸石サイクルの表示のみ、第一配送センター及び第二配送センターにはいずれの表示も確認できない。
したがって、本社、第一配送センター及び第二配送センターには、使用商標1又は2のいずれの表示も付されていないので、滋賀県及びその近県にわたって使用商標1又は2が需要者に認識されているということもいえない。
キ ジテンシャデポ高針店の出店時期
ジテンシャデポ高針店の出店時期は、請求人の主張により2009年3月であると確認できる。本件商標の登録出願が2010年1月12日であるので、1年にも満たない短期間で使用商標1又は2が需要者に知られているとは認め難い。
(3)ジテンシャデポ楽天店のアクセス人数(甲12)について
請求人は、2007年3月以降は、アクセス人数がコンスタントに3万?5万人/月となり、このアクセス人数から明らかなように、「ジテンシャデポ 楽天店」は、需要者の間で広く認識された店舗であることが判ると主張している。店舗が需要者に知られていることと、使用商標1又は2が需要者に知られていることとは必ずしも一致するとは限らないが、少なくとも使用商標1又は2が需要者に知られているとは、以下のとおり認めることができない。
ア アクセス人数のカウントの仕方
アクセス数のカウントの仕方については、ショッピングサイト運営会社やサーバ運用会社により異なる可能性は否定できず、当該アクセス人数のうち何人或いは何割程度がユニークな人数(現実の訪問人数)であるかについては不明である。
イ アクセス人数にカウントされている需要者層などについて
2007年3月以降のアクセス人数が3万から5万人/月で推移していることは確認ができる(甲12の5?8)が、そのアクセス人数の具体的な内訳情報が不明であるため、需要者層(地域、性別、年齢、請求人の関係者であるか否かなど)及びアクセス頻度(一見客であるかリピータ客であるか)などが分析できない。
ウ アクセス人数が増加する要因
アクセス人数が増加する要因は、様々であり、使用商標1又は2の顧客吸引力によらない要因も含まれ得る。
エ アクセス人数に関するまとめ
上述のアないしウで説明したように、ジテンシャデポ楽天店のアクセス人数のみによって、使用商標1又は2が需要者の間で広く認識されているとは認めることができない。
(4)インターネットを通しての情報の提供について
請求人は、自転車並びにその部品及び付属品の販売情報の提供に関し、使用商標1は、インターネットを通して全国的に周知となったと主張するが、以下のとおり認めることができない。
ア 請求人のホームページ、ウェブサイト、検索エンジンによる検索結果
甲第2号証ないし甲第4号証及び甲第22号証は、「ジテンシャデポ公式ホームページ」、甲第5号証は「ジテンシャデポ 楽天店」、甲第6号証は「Yahoo店」、甲第7号証は「本店」、甲第8号証は「BMX DEPO」、甲第9号証は「amazon店」の画面印刷であると推測するが、各印刷ページ右下部の日付が本件商標の登録出願後である2010年7月29日であるため、本件商標の登録出願時又はその前の状況を示す証拠だとはいい難い。ホームページ及びウェブサイトの更新がされていない場合も考えられるので、登録出願前も同様の表示であったと仮定して述べている。
イ 検索エンジンの上位表示結果
甲第10号証及び甲11号証は、本件商標の登録出願後である2010年7月29日の検索エンジンの検索結果であるため、本件商標の登録出願前の状況を示す証拠だとはいい難いが、仮に、登録出願前も同様の状況であったとしても、検索エンジンによる上位表示の仕組みは、非常に複雑高度であるうえ、不定期に変更もされている。つまり様々な要因によるものであり、グーグル上位表示結果及びヤフー上位表示結果のみをもって需要者の間に広く認識されているという主張は、認めることができない。
(5)その他のメディアを通しての情報の提供について
ア 週刊文春への掲載(甲21)について
請求人は、平成21年4月9日に発行された週刊文春に電動自転車のみに限定しても年間2,000台以上の販売を行っていることなどが記載されている旨を主張している。
確かに、甲第21号証の50頁上段13行目に当該記載はある。しかしながら、この電動自転車年間2,000台以上の販売台数というのは、平成21年機械統計年報(乙第4号証)の351頁上表によると、平成20年の電動アシスト車出荷販売数量である28万271台の約0.7%でしかない。
イ 読売新聞への掲載(甲23)について
掲載記事の下段20行目には「休日には10個以上売れます。売上は数年前の2倍以上」との記載があり、掲載記事の下段9行目には大手メーカー「OGKカブト」によると、「子ども用ヘルメットの全国販売量は、4年前まで各メーカー合わせて年間数千個だったが、今は年間40万?50万個が売れている。」との記載がある。請求人の平日のヘルメット販売個数は不明であるが、大手メーカー「OGKカブト」の「年間40万?50万個」という販売個数に比較すると、請求人の「休日10個以上」という販売個数はあまりにも少数である。
また、当該記事には、掲載日時、発行部数、配布地域などの具体的な事項が不明である。
ウ サイクルプレスジャパンヘの広告掲載(甲20の1?3)について
広告掲載頻度が1年に1回、掲載の場所及び大きさなどについても他の広告と比較しても同等程度であり、特別な広告掲載であるとは認められない。
また、当該雑誌は月間の自転車業界に向けた業界紙であり、自転車小売事業者にとっての需要者である最終消費者(一般消費者)が見る機会はゼロに近い。
したがって、当該広告掲載のみによって、使用商標1又は2が需要者の間に広く知られているということは認めることはできない。
エ DCカードCARD Pressへの掲載(甲24)について
掲載日時、発行部数、配布地域などの具体的な事項が不明であるので、当該掲載のみによって、使用商標1又は2が需要者の間に広く知られているということは認めることはできない。
オ 甲第25号証(STIO MALLホームページヘの掲載)について
使用商標1が使用されている状態(甲25)及び掲載時期が2008年12月であるということ(甲22)は確認及び推測できるが、当該掲載のみによって使用商標1が需要者の間に広く知られているということは認め難い。
4 使用商標3の周知性について
使用商標3は、インターネット公式ホームページのURLにしか使用しておらず、インターネット公式ホームページは上述のように、需要者の間に広く認識されているとは認めることができない。
5 結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しないので、本件審判の請求は成り立たない。

第4 当審の判断
1 本件商標と使用商標1の類否等について
本件商標は、「自転車デポ」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字に相応して「ジテンシャデポ」の称呼を生じるものである。
一方、使用商標1は、「ジテンシャデポ」の片仮名を書してなるものであるから、その構成文字に相応して「ジテンシャデポ」の称呼を生じるものである。
また、使用商標2は、「ZietnsyaDepo」の欧文字を書してなり、使用商標3は、「zitensyadepo」の欧文字を書してなるものであるから、いずれもこれらの構成文字に相応して、「ジテンシャデポ」の称呼を生ずるものである。
そうとすれば、本件商標と使用商標1ないし3とは、「ジテンシャデポ」の称呼を共通にする類似の商標といえる。
次に、本件商標の指定商品及び指定役務は、前記第1のとおり、第12類「自転車並びにその部品及び付属品」及び第35類「自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、インターネットを利用した自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、自転車を快適に乗るための商品の販売に関する情報の提供」であるのに対して、使用商標1ないし3は、後述のとおり、「インターネットの利用を含む自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「本件小売等役務」という。)に使用するものと認められ、「自転車を快適に乗るための商品の販売に関する情報の提供」については、いずれもが使用されているものとは認められない。
そうすると、本件小売等役務は、本件商標の指定商品と類似し、その指定役務中、「自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供、インターネットを利用した自転車の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と同一と認められる。
しかし、本件商標の指定商品及び指定役務中、「自転車を快適に乗るための商品の販売に関する情報の提供」は、情報提供事業者などが自己の取扱いに係る商品又は役務を除いた商品又は役務について他人のために提供するものであり、自己の商品又は役務に付随して提供されるものは、該当しないと解される。しかるに、たとえ、請求人の提出に係る証拠によって、使用商標1ないし3について「自転車を快適に乗るための商品の販売に関する情報の提供」がされているとしても、これは請求人が自己の取扱いに係る自転車についてするものとみられるものであるから、本件小売等役務に付随するものであり、独立して提供される役務とはいえない。また、「自転車を快適に乗るための商品の販売に関する情報の提供」と本件小売等役務とは、同一又は類似の商標が使用された場合に役務の出所の混同が生ずるおそれがあるとみるべき特段の事情も見いだし得ないから、両役務は、類似するともいえない。
2 使用商標1ないし3の周知性について
(1)使用商標1ないし3の周知性に関連する甲各号証及び請求人の主張によれば以下の事実が認められる。
ア 請求人は、丸石サイクル、ブリヂストンサイクル、パナソニックサイテック、ヤマハ発動機、宮田工業等約100社から仕入れた自転車の小売及び卸売を主な業務とする1958年に設立された会社であり、2001年8月にジテンシャデポ名東店(名古屋市名東区猪子石在)(以下「本件名東店」という。)を出店し、2009年3月にジテンシャデポ高針店(名古屋市名東区高針在)(以下「本件高針店」という。)を出店したほか、インターネットにおいても、2003年7月にジテンシャデポ楽天店(URL http://www.rakuten.ne.jp/gold/zitensyadepo/)(以下「本件楽天店」という。)、2004年2月にジテンシャデポYahoo店(URL http://store.shopping.yahoo.co.jp/zitensyadepo/index.html)(以下「本件Yahoo店」という。)、2006年5月にジテンシャデポ本店(URL http://zitensya.jp/)(以下「本件本店」)という。)、2007年1月にBMX本店(URL http://bmxdepo.com/)(以下「本件BMX本店」という。)、2007年7月ジテンシャデポamazon店(URL http://www.amazon.co.jp/gp/browse.html?ie=UTF8&marketplaceID=A1VC38T7YX... 審決注:左記URLの詳細は不明)(以下「本件Amazon店」という。)を順次開設した。また、請求人は、ジテンシャデポ公式ホームページ(URL http://www.zitensyadepo.com/)(以下「本件公式店」という。)を開設して、同人が取り扱う自転車製造メーカーの一覧や本件名東店、本件高針店等の紹介のほか、インターネットでの通信販売も行っている旨を表示している。そして、これらの店舗の看板及びウェブサイト等には、「ジテンシャデポ」の片仮名が表示されている(甲2?甲9)。また、本件公式店に係るウェブサイトには、かかる「ジテンシャデポ」の片仮名よりも小さく「ZitensyaDepo」の欧文字が表示され、本件公式店等のURL中には、「zitensyadepo」の欧文字が表示されている。
イ 甲第10号証及び甲第11号証は、2010年7月29日に、インターネットの検索サイト、グーグル及びヤフーにおいて、「ジテンシャデポ」の文字を検索した結果とするウェブサイトの写しであり、グーグルの検索結果(甲10)、ヤフーの検索結果(甲11)には、それぞれ20件の検索結果が表示されている。これらの検索結果には、上記アのURL、名東店、高針店、楽天、ジテンシャデポ本店、ジテンシャデポ@Amazon.co.jp等の記載からすれば、いずれも請求人に関連するものと推認できるものである。
ウ インターネットに係る売上げ等について
(ア)本件楽天店
本件楽天店における2009年の売上額及びアクセス人数は、以下のとおりである(甲12の1?8)。なお、アクセス人数は、売上額の右の括弧内に表す。
2009年1月 15,990,434円(37,517人)
2009年2月 13,341,174円(41,732人)
2009年3月 19,457,950円(49,384人)
2009年4月 21,663,157円(56,781人)
2009年5月 17,320,480円(51,744人)
2009年6月 17,074,143円(46,483人)
2009年7月 15,850,015円(39,413人)
2009年8月 18,038,608円(38,241人)
2009年9月 26,152,124円(47,118人)
2009年10月 22,989,589円(44,651人)
2009年11月 20,181,049円(37,620人)
2009年12月 22,259,702円(36,017人)
上記によれば、本件商標の登録出願日前1年間の1か月当たりの平均売上額は、約1919万円、同時期の平均アクセス人数は、43,892人となる。
(イ)本件Yahoo店
本件Yahoo店における2009年の売上額は、以下のとおりである(甲13の61?71)。
2009年1月 3,791,232円
2009年2月 5,906,381円
2009年3月 7,205,211円
2009年4月 10,738,688円
2009年5月 9,035,835円
2009年6月 6,945,757円
2009年7月 7,848,752円
2009年8月 5,050,539円
2009年9月 7,261,081円
2009年10月 9,626,862円
2009年11月 6,105,888円
上記によれば、本件商標の登録出願日前約1年間の1か月当たりの平均売上額は、約723万円となる。
(ウ)本件本店
本件本店における2009年の売上額は、以下のとおりである(甲14の4)。
2009年1月 1,770,058円
2009年2月 2,634,315円
2009年3月 2,482,809円
2009年4月 2,474,780円
2009年5月 2,502,255円
2009年6月 2,098,287円
2009年7月 2,404,469円
2009年8月 1,723,350円
2009年9月 1,510,508円
2009年10月 1,484,368円
2009年11月 1,666,632円
2009年12月 1,530,864円
上記によれば、本件商標の登録出願日前1年間の1か月当たりの平均売上額は、約202万円となる。
(エ)本件Amazon店
本件Amazon店における2009年の売上額は、以下のとおりである(甲15の1?26)。
2009年1月8日?1月22日 93,245円
2009年1月22日?2月5日 95,000円
2009年2月5日?2月19日 157,290円
2009年2月19日?3月5日 92,890円
2009年3月5日?3月19日 46,480円
2009年3月19日?4月2日 53,390円
2009年4月2日?4月16日 166,880円
2009年4月16日?4月30日 98,450円
2009年4月30日?5月14日 92,630円
2009年5月14日?5月28日 45,170円
2009年5月28日?6月11日 1,620円
2009年6月11日?6月25日 27,084円
2009年6月25日?7月9日 1,014,555円
2009年7月9日?7月23日 1,082,913円
2009年7月23日?8月6日 1,947,962円
2009年8月6日?8月20日 335,970円
2009年8月20日?9月3日 1,744,989円
2009年9月3日?9月17日 2,050,389円
2009年9月17日?10月1日 2,373,665円
2009年10月1日?10月15日 2,680,802円
2009年10月15日?10月29日 3,280,275円
2009年10月29日?11月12日 3,316,047円
2009年11月12日?11月26日 2,718,527円
2009年11月26日?12月10日 3,264,378円
2009年12月10日?12月24日 3,810,700円
2009年12月24日?2010年1月7日 2,396,394円
上記によれば、本件商標の登録出願日前約1年間の1か月当たりの平均売上額は、約275万円となる。
エ ジテンシャデポに関するチラシ
請求人は、2002年3月から2009年10月の間に、本件名東店及び本件高針店で取り扱う自転車についてのチラシ(甲19)を守山区、千種区、名東区、尾張旭市、愛知郡、日進市、天白区で販売された中日新聞、朝日新聞、読売新聞等によって約244万枚配布した(甲17)。
上記チラシ(甲19)には、各種メーカーの電動自転車(電動アシスト自転車)、子供乗せ専用自転車、折りたたみ自転車、マウンテンバイク(MTB)、子供用自転車等の写真が多数掲載されており、「ジテンシャデポ高針店」、「ジテンシャデポ」、「ジテンシャデポ名東店」と表示され、また、そのうち一部のチラシには、「http://www.zitensyadepo.com」の表示もされている。
また、ポスティングによるチラシ(甲18)は、2005年に、61,420枚、48,120枚、50,000枚の合計159,540枚配布された。
オ 雑誌における広告等
(ア)請求人は、雑誌「サイクルプレスジャパン」の2007年4月号、2008年4月号及び2009年4月号に、自転車の絵と共に「ジテンシャデポ」の片仮名等を表示した広告を掲載した(甲20)。
(イ)雑誌「週刊文春」(平成21年4月9日発行)の50頁には、「電動アシストの比率がこれまでの2倍に」の見出しの下に、「…(年間2000台以上の電動自転車を販売している『ジテンシャデポ』…」、「…最大走行記録は100キロ(メーカー公表値)にも達します』(ジテンシャデポ)」、「…電動自転車の違和感が少なく、お買い物やお子様の送迎にも手軽に使えます』(ジテンシャデポ)」、「調査方法 電動自転車に詳しい販売店に、はじめて買うのにふさわしい電動自転車を選んでもらい、編集部で集計した。選者は…ジテンシャデポ(滋賀県甲賀市)…の4社。」と記述されている(甲21)。
(ウ)請求人が開設する「ジテンシャデポ公式ホームページ」には、上部中央に大きく「ジテンシャデポ」と表記され、その下の「ニュースリリース」の見出しの下に、「2009.03 ジテンシャデポ名東店オープン記念協賛セール実施中です。」、「2009.03 ジテンシャデポ高針店オープン記念協賛セール実施中です。」、「2008.12 滋賀銀行STIO MALLホームページにジテンシャデポが掲載されました。」、「2008.05 DCカードCARD PRESSにジテンシャデポが掲載されました。」、「2008.04 読売新聞にジテンシャデポ名東店が掲載されました。」と表示されている(甲22)。
(エ)黒塗りの円内に「DC会員特典」等の文字が白抜きで表された書証(甲24)には、上部に「自転車買うなら インターネットサイクルショップ ジテンシャデポ」の表示、四角枠内に「ジテンシャデポ本店 ジテンシャデポ楽天店 ジテンシャデポYahoo店 ジテンシャデポBMX店 ジテンシャデポオークション店 ジテンシャデポ名東店(リアル店舗)」の表示、下部に「ジテンシャデポ」の片仮名及び「http://www.zitensyadepo.com/」が表示されている。
(オ) 上部に「エスティオモール STIO MALL」の表示のある滋賀銀行ホームページには、「ジテンシャデポ」の見出しの下、「自転車をインターネットでご注文。すぐにご自宅までお届けします。…」等と表示されている(甲25)。
(カ)「子供メット活況」の見出しが表示された書証(甲23)は、子供用の自転車ヘルメットについての新聞記事である。
なお、子供用の自転車ヘルメットは、本件商標の指定商品及び指定役務のいずれにも含まれるものではない。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、使用商標2及び3は、本件小売等役務に使用されていることが認められるとしても、使用商標2は、わずかに本件公式店において使用されているものであり、また、使用商標3は、本件公式店、本件楽天店、本件Yahoo店、チラシ等のURL(http://www.zitensyadepo.com)中に使用されていることが認められるが、これらの使用頻度は少なく、表記自体も小さいことから、看者の注意を強く引く程のものとは認められない。
そうすると、使用商標2及び3は、商標法第4条第1項第10号が規定する「需要者の間に広く認識されている商標」に該当するとはいえない。
次に、使用商標1の周知性については、以下のとおり判断することができる。
ア 請求人は、丸石サイクル、ブリヂストンサイクル、パナソニックサイテック、ヤマハ発動機、宮田工業等約100社から仕入れた自転車を2001年8月に出店した本件名東店及び2009年3月に出店した本件高針店において取り扱うほか、インターネットの本件公式店において、同人が取り扱う自転車製造メーカーの一覧や本件名東店、本件高針店等を紹介するほか通信販売も行っており、2003年7月から本件楽天店、2004年2月から本件Yahoo店、2006年5月から本件本店、2007年1月から本件BMX本店、2007年7月から本件Amazon店を通じても販売しており、これらの店舗の看板及びウェブサイト等において「ジテンシャデポ」(使用商標1)を表示したことが認められる。
上記によれば、請求人は、本件小売等役務について使用商標1の使用をしたということができる。
また、請求人は、使用商標1を表示した新聞折込チラシを2002年3月から2009年10月の間に名古屋市守山区、同千種区、同名東区、同天白区、尾張旭市、愛知郡、日進市において244万枚配布したほか、「サイクルプレスジャパン」の2007年4月号、2008年4月号及び2009年4月号に、自転車の絵と共に使用商標1を表示した広告を掲載したことが認められる。
イ 請求人の自転車に係る売上額は、本件名東店、本件高針店、本件BMX本店、本件公式店の売上額は不明であるが、前記(1)イ(ア)ないし(エ)によれば、本件楽天店、本件Yahoo店、本件本店、本件Amazon店における2009年の1か月当たりの平均売上額は、それぞれ1919万円、723万円、202万円、275万円であることが認められ、これらを合計すると3119万円、1年間に換算すると3億7428万円となる。
ウ 使用商標1は、インターネットの検索サイトであるグーグル及びヤフーの検索結果において、多数表示されていることが認められるほか、「週刊文春」(平成21年4月9日発行)において、「年間2000台以上の電動自転車を販売している『ジテンシャデポ』」、「調査方法 電動自転車に詳しい販売店に、はじめて買うのにふさわしい電動自転車を選んでもらい、編集部で集計した。選者は…ジテンシャデポ(滋賀県甲賀市)…の4社。」等と紹介され、DCカードCARD PRESSにおいて、使用商標1と共に「ジテンシャデポ本店 ジテンシャデポ楽天店 ジテンシャデポYahoo店 ジテンシャデポBMX店 ジテンシャデポオークション店 ジテンシャデポ名東店(リアル店舗)」と紹介され、滋賀銀行ホームページ「エスティオモール STIO MALL」において、使用商標1と共に「自転車をインターネットでご注文。すぐにご自宅までお届けします。」等と表示されたことが認められる。
上記アないしウを総合して考慮すれば、使用商標1は、愛知県名古屋市を中心とした愛知県内において配布されたチラシに表示されたほか、インターネットにおけるウェブサイトにおいても本件小売等役務について使用されたことが認められる。
ところで、本件小売等役務に係る自転車は、全国的に流通され日常一般に使用されるものといい得るところ、そのような全国的に流通する日常使用される一般的な商品等について使用する商標が商標法第4条第1項第10号が規定する「需要者の間に広く認識されている商標 」といえるためには、同号が未登録商標でありながら、その使用事実にかんがみ、後に出願される商標を排除し、また、需要者における誤認混同のおそれがないものとして、保護を受けるものであること及び今日における役務取引の実態若しくは広告、宣伝媒体の状況などを考慮して、全国にわたる同種商品等の取扱業者の間に相当程度認識されていないまでも、1県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたって、少なくてもその取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要するものと解される。
これを本件についてみるに、請求人の自転車に係る売上額は、上記のとおり、3億7428万円と推計されるところ、「平成19年商業統計表 第4巻 品目編」(社団法人経済産業統計協会発行)において、自転車小売の年間商品販売額は、請求人の本社等が所在する滋賀県の年間商品販売額(23億3900万円)と使用商標1を表示したチラシを配布した愛知県の年間商品販売額(132億200万円)との合計に限って比較しても、わずかに2.4%にすぎない。
また、今日の我が国において、インターネットは、極めて多数の者に広く普及し、多くの商品や役務の取引が行われている状況にあるといえるものであり、本件小売等役務に係る自転車が全国的に流通する日常使用される一般的なものといえることからすると、インターネットを利用する相当数の者が本件小売等役務の需要者とみられるところ、本件楽天店の月間平均アクセス人数は、上記のとおり、43,892人である。その他の本件Yahoo店等でのアクセス人数は不明であり、上記のとおり、我が国におけるインターネットの普及度、自転車が日常使用されることをも総合して考察すれば、かかる月間平均アクセス人数をもって、使用商標1がインターネットを利用する需要者の多数に認識されているとまではいえない。
さらに、「サイクルプレスジャパン」の広告掲載は、わずか3回にすぎず、加えて、DCカードCARD PRESS(甲24)、滋賀銀行ホームページ「エスティオモール STIO MALL」(甲25)において、使用商標1が表示されたとしても、前者は、2008年5月の1回にすぎず、その配布枚数、配布地域も不明であり、後者は、その閲覧者等が不明である。
以上によれば、使用商標1は、本件小売等役務について需要者の間に広く認識されているものとはいえない。
(3)請求人等の主張について
請求人は、グーグル及びヤフーの各検索サイトにおいて、「ジテンシャデポ」を入力して検索すると、それぞれの検索結果において第1位ないし第20位のすべてが請求人に関する内容であること、「週刊文春」の記事に年間2,00台以上の電動自転車を販売していることが記載されていることなどから、使用商標1は、インターネットを通して全国的に請求人の役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている旨主張する。
確かに、使用商標1は、インターネットの検索サイトであるグーグル及びヤフーの検索結果において、多数表示されていることが認められるとしても、「ジテンシャデポ」の片仮名を使用する者が請求人のほかにも多数存在するような実情が認められない以上、その検索結果に請求人に係るものがヒットすることは当然といえる。
また、本件小売等役務に係る自転車には、シティ車、スポーツ車、実用車などの一般用自転車、幼児用自転車、マウンテンバイク、BMX車などの特殊自転車のように多数の種類があり、請求人が電動自転車において年間2,000台販売していることなどが紹介されているとしても、自転車の販売台数との比較においては、これが多数ともいえず、さらに、「週刊文春」の記事も1回掲載されたのみである。
そうすると、「ジテンシャデポ」の片仮名の検索結果や「週刊文春」の記事などをもってしても、使用商標1が需要者の間に広く認識されている商標に該当するとはいえない。
したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。
なお、被請求人は、「サイクルプレスジャパン」に掲載した広告については、該雑誌が自転車業界に向けた業界紙であり、最終消費者が見る機会は少ないと主張する。
しかし、商標法第4条第1項第10号所定の「需要者」とは、最終消費者に限定されるものではなく、取引者も含まれるというべきである(平成20年(行ケ)第10041号同年5月29日判決言渡参照)から、被請求人の上記主張は、採用することができない。
(4)小括
以上を総合すると、本件商標は、その指定商品及び指定役務について、商標法第4条第1項第10号に規定する「他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって、その役務と同一又は類似の商品若しくは役務に使用をするもの」に該当するとはいえない。
3 むすび
以上によれば、本件商標は、その指定商品及び指定役務について、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2011-07-12 
結審通知日 2011-07-14 
審決日 2011-07-28 
出願番号 商願2010-1249(T2010-1249) 
審決分類 T 1 11・ 254- Y (X1235)
T 1 11・ 255- Y (X1235)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 幸志 
特許庁審判長 関根 文昭
特許庁審判官 末武 久佳
田中 亨子
登録日 2010-08-06 
登録番号 商標登録第5344266号(T5344266) 
商標の称呼 ジテンシャデポ、デポ 
代理人 森定 勇二 
代理人 岸本 忠昭 

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