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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y31
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y31
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Y31
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y31
管理番号 1243261 
審判番号 無効2007-890130 
総通号数 142 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-10-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-08-09 
確定日 2008-10-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第4856454号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4856454号商標(以下、「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成16年9月17日に登録出願され、第31類「生花」を指定商品として、同17年3月4日に登録査定、同年4月15日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第689号証を提出している。
1 請求の理由
(1)利害関係について
被請求人は、請求人に対して平成17年6月22日付けの書留内容証明付き郵便で通知書(甲第18号証)を送付し、当該通知書にて『貴殿は、通知人が登録している商標を使用しているが、上記商標の使用権限を有していないため、直ちにその使用を中止して頂きたく通知する。』旨主張している。
よって、請求人は、本件商標を無効にすることについて、法的利害関係を有する。
(2)商標法第4条第1項第10号について
(ア)本件商標は、登録出願日前において、後掲(イ)(b)の南船場店、南堀江店、京都店の各店舗において商品「生花」等について請求人が使用する商標(甲第9ないし第17号証にあらわれた標章。以下、「引用商標」という。別掲(2))と同一であり、指定商品もまた互いに同一である。
(イ)引用商標は、本件商標の登録出願日前に需要者や取引者間において、以下に示すとおり既に広く知られていた。
(a)請求人は、大阪市中央区南船場4-4-17を本店として平成12年10月20日に設立され、現在の本店所在地は、大阪市西区南堀江1-27-9である(甲第20号証)。
請求人の事業内容は、「生花小売業、会場装飾、植栽プロデュース、生花アレンジメント教室の開催、ブライダルブーケ、ブライダル装飾」(以下、「請求人商品等」という。)である。
(b)請求人の店舗について
南船場店(当初の住所:大阪市中央区南船場4-1-10、移転後の現住所:大阪市中央区南船場4-6-2)は、平成13年1月19日に出店して、現在に至るまで営業を継続している。
南堀江店(大阪市西区南堀江1-27-9 甲第21号証)は、平成12年12月5日に出店して、現在に至るまで営業を継続している。
神戸店(神戸市中央区東川崎町1-8-1神戸ガスビル・オーガスタプラザ1F 甲第22号証)は、平成13年3月4日に出店して、同15年3月12日に閉店している。
代官山店(東京都渋谷区恵比寿南3-7-1 甲第24及び第25号証)(以下、同店を「代官山店(請求人店舗)」という。)は、平成13年4月14日に出店して、同17年5月13日に閉店している。
京都店(京都市中京区河原町通3条下ル2丁目山崎町251番地BALビル1F2号 甲第23号証)は、平成14年9月6日に出店して、現在に至るまで営業を継続している。
(c)請求人の主たる取引先は、「株式会社キハチアンドエス」、「株式会社電通西日本」、「株式会社ウールン商会」、「株式会社乃村工藝社」、「株式会社丹青社」、「参天製薬株式会社」、「株式会社大京」、「ヤマギワ株式会社」、「三崎商事株式会社」、「三共生興株式会社」、「株式会社京阪神エルマガジン社」、「株式会社ビキジャパン」、「株式会社FM802」、「株式会社アクタス」、「鳴海製陶株式会社」、「株式会社野村不動産」、「伊藤忠商事株式会社」、「三共生興ファッションサービス株式会社」、「プルデンシャル生命保険株式会社」及び「株式会社フジテレビジョン」等である。
(d)請求人は、会社設立から今日に至るまでの売り上げ概算の立証のために顧問税理士が証明した第1期から第7期までの決算書の売上高表を提出する(甲第26号証)。
南船場店、南堀江店、京都店、神戸店、代官山店(請求人店舗)及びマチルダブライダルの売上高の合計は、第1期で、22,136千円、第2期で、151,135千円、第3期で、251,123千円(但し、当期は会計処理上の関係から売上高より4200万円程度、他店舗の売上が入っている。)、第4期で、253,589千円、第5期で、161,163千円、第6期で、160,341千円、第7期で、199,301千円である。
(e)請求人は、昨年の「帝国データバンク」の「生花業」(大阪府)の年商上位20位を示したデータ(甲第27号証)において、上位10位にランキングされている。また、「戦略経営者」(株式会社TKC)の平成19年1月から同年3月決算の最新業績速報の「花・植木小売業」の業種において年商の全国平均が、154,987千円(甲第28号証)であり、前記南船場店、南堀江店、京都店、神戸店、代官山店(請求人店舗)及びマチルダブライダルの合計売上高は、全国平均以上であることは明らかであり、「生花業」において全国平均を上回り、請求人は中堅企業の地位を保っていることを窺い知ることができる。
(f)「生花の販売」もしくは「ブライダル会場の生花による装飾」は、注文主ごとの希望に応じた花束や装飾に仕立ててから販売及び提供することがほとんどであることから、画一化された商品や役務を大量に又は大規模に提供するということは当該商品及び役務の性質上ありえず、素材である生花そのものをどのように美しく注文主のイメージに近い形にアレンジしうるか、という技量とデザイン的なセンスの質的水準について、注文主の信用の力点が置かれる。よって、請求人がどのような取引先と取引しているかを勘案することは、引用商標の周知著名性の重要な観点になるものと思料する。
しかるに、前記に述べた主な取引先は、主だった企業であることから請求人の技量やデザイン的なセンスについて高く評価されている何よりの証左であり、加えて、請求人は当業界において中堅以上の地位を築いていることから推して考えるならば、引用商標は、請求人商品等を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと思料する。
(ウ)引用商標が周知性を獲得したことを証するものとして雑誌、フリーペーパー及び請求人が配布するカード、チラシ及び年賀状等(甲第29ないし第82号証)を提出する。
加えて、請求人の主だった顧客先が署名、捺印をした証明書を、甲第83ないし第204号証として提出する。なお、この証明書は、審判請求時においては約122件を提出したが、集まり次第逐次補充する。
(エ)以上のとおり、本件商標は、登録出願の日前から請求人商品等を表示するものとして需要者に広く認識されている引用商標と同一であって、互いに同一である商品「生花」について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号について
被請求人が、周知もしくは著名となった引用商標と同一の本件商標を「生花」に深く関連する「生花による会場装飾、植栽プロデュース、生花のアレンジメント教室の開催、ブライダルブーケ及びブライダル装飾の提供」等の役務に使用したならば、この役務に接する需要者及び取引者は、この役務が請求人の商品「生花」であると誤認し、商品及び役務間の出所について混同を生ずるおそれがあることから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にも該当する。
(4)商標法第4条第1項第19号について
(ア)請求人と被請求人の出退店の経緯について
請求人と被請求人との生花店の出退店の経緯を、出退店経緯表(甲第205号証)に表す。
請求人及び被請求人が当初使用していた商標態様は、甲第206号証のとおりである。
次いで、大阪NEEVEにおける被請求人が使用していた商標態様は、甲第207号証に示すものである。
請求人は、平成12年10月に被請求人から南船場店の営業譲渡を受け、同13年1月と同14年11月の2回のリニューアルを経て、現在に至るまで営業を継続している。請求人が譲り受けた当初に使用の商標は、旧商標ロゴであったが、同13年1月からは、引用商標の使用に変わっている。
南堀江店、神戸店、代官山店(請求人店舗)及び京都店については、前掲のとおりである。
次に、被請求人の出退店の経緯は、以下のとおりである。
(a)平成10年9月に代官山店(東京都渋谷区猿楽町24-4)を出店し、同12年9月に閉店している。被請求人が使用していた商標は、旧商標ロゴである。
(b)平成11年9月に南船場店(大阪市中央区南船場4-4-17)を出店したが、同12年10月に請求人に営業譲渡されている。当初、被請求人が使用した商標は、旧商標ロゴであったが、請求人が譲り受けてリニューアルオープンした平成13年1月19日からは、引用商標を使用している。
(c)平成12年7月に原宿店(東京都渋谷区神宮前6-8-4)を出店したが、業績不振のため同13年5月1日から当該店舗の閉店に向けて請求人に社員の移籍及び経営上の運営管理が委ねられ、当該店舗は同年11月30日に閉店した。
請求人は、前記南船場店に始まり南堀江店、京都店において、引用商標を、請求人商品等に継続して使用しながら今日に至っており、その結果、引用商標は、周知もしくは著名な商標として世に広く認識されるようになった。
一方、被請求人は、確かに平成13年4月頃までは、原宿店において生花等の商品に本件商標を使用していたが、被請求人が本件商標を使用した店舗は、前記原宿店のみで、本件商標の使用期間は僅か1年ほどにすぎず、前述のとおり、代官山店や南船場店の商標は、旧商標ロゴであった。
また、被請求人は、平成13年5月から同17年5月の約4年間は、本件商標を掲げて生花等の販売等を行なう店舗を有していなかった。
(イ)被請求人の店舗と請求人との関係
(a)被請求人の代官山店の出店と閉店の経緯
代官山店の出店は、請求人の代表取締役 人物Aが「三共生興ファッションサービス株式会社」の営業企画部の課長職であったときに、代官山の商業複合施設「NEEVE」(以下、「東京NEEVE」という。)(東京都渋谷区猿楽町24-4)をプロデュースした際、被請求人をこの商業複合施設の花屋の一つとして誘致した。その当時の被請求人は、通常ならば東京NEEVE(代官山店)への出店はできない状況であったところ、人物Aの尽力によって破格の好条件で東京NEEVEへの出店に至った。この事実は、後述(オ)の異議申立事件の意見書に添付の乙第2号証に掲載のとおりである。
しかし、東京NEEVEの施設物件が、前記「三共生興株式会社」の所有になり、「クリスチャンラクロア 東京店」を当該東京NEEVEの住所地に新設することとなったために、代官山店は平成12年9月に閉店することとなった。
(b)南船場店の出店と営業譲渡の経緯
被請求人は、東京NEEVEが好調であったため、平成11年9月に東京NEEVEと同様の商業施設(以下、「大阪NEEVE」という。)(大阪市中央区南船場4-4-17)内に南船場店を出店した。この店舗の商標も旧商標ロゴである。
この南船場店は、平成12年9月に東京NEEVE(代官山店)を閉店したことと、業績不振も相俟って、被請求人のみで営業を継続することが困難であるとの判断から、同12年12月に閉店した。
被請求人は、後述(c)の原宿店の業績不振と相俟って、この南船場店の存続すらできない状況に至り、請求人が、大阪NEEVE(南船場店)の営業権と残在庫を譲り受け、加えて被請求人の社員4名も請求人が引き受けた。
(c)原宿店の出店と閉店の経緯
被請求人は、東京NEEVEの代官山店を閉店した後、平成12年7月に原宿店を出店した。被請求人がこの出店の際に必要となる資金のうち金900万円について国民金融公庫からの借り入れの際に、人物Aが保証人に立っている。
しかし、この店舗でも業績が振るわず、平成12年9月頃から赤字経営に陥り、前記南船場店の存続すらできない状況と相俟って、同13年5月1日から当該原宿店の閉店に向けて請求人に社員の移籍及び経営上の運営管理を委ね、当該店舗は同年11月30日に閉店した。
上記(a)から(c)に述べたとおり、いずれの店舗も閉店もしくは請求人に営業譲渡され、平成13年5月1日に原宿店を請求人に運営移管されたことを最後に、本件商標を生花等に使用するための被請求人が営む店舗は存在せず、被請求人による本件商標の使用は、同日に完全に途絶えた。
(ウ)平成13年4月から同16年3月までの請求人と被請求人との関係
平成13年4月14日に開店した代官山店(請求人店舗)において、請求人は、被請求人との間で同年4月1日に業務委託契約(甲第208号証)を締結し、この契約に基づき「生花」等の販売を開始したが、開店当初から、被請求人の経営管理執行の状態が安定しなかったため、請求人は、被請求人の代表取締役 角浩之を除く従業員を請求人側に移籍させ、角浩之に対しては、「フラワーアドバイザー」という名目で金銭的援助を行ない(甲第209ないし第223号証)、営業を継続したが、結局、前記業務委託契約の信任関係を維持されることはなく契約を履行される状況にはならなかった。
(エ)平成16年1月から同17年4月までの請求人との関係
平成16年1月頃から、被請求人は、代官山店(請求人店舗)を自ら経営したいとの協議の申し出が請求人に対してあり、これに対して、請求人は、以下に示す経理的な点を明確にするという下記(a)から(c)の条件付きで、同16年4月1日より前記業務委託契約の内容の変更をした(以下、当該契約を「変更された業務委託契約」という。)。
(a)請求人が広沢土地倉庫株式会社から賃貸中の事務所(東京都渋谷区猿楽町30-8第1育良ビル301号)を事務所として被請求人に使用させる。
(b)業務委託料は、月額64万8077円、とする。
(c)この業務委託料の支払いについては、被請求人が、毎日の営業を終了した後、代官山店における売上金を確定し、翌日に請求人の指定口座に一旦金額を振り込み送金したうえで、請求人がこの売上金から業務委託料を差し引いた残額を相手方に送金する方法により行なう。
上記変更された業務委託契約に基づき、被請求人は、平成16年4月から毎月上記(c)の売り上げ報告をしていた。被請求人からの売り上げ入金及び請求人からの業務委託料の入金の事実を証するものとして、甲第224ないし第272号証を提出する。
ところが、その後、平成16年10月から請求人に対する上記(c)の売り上げの入金がストップし、請求人による売り上げ管理を拒絶するようになった。
被請求人は、本件商標の設定登録の時期(平成17年4月15日)と呼応するかのようにして、請求人との約定を無視して、事前の協議も行わないまま同17年5月13日に代官山店(請求人店舗)を退店し、その後、同月21日より東京都目黒区青葉台(現在の被請求人の住所地)に新たに別の生花店を開業するに至った。しかも、被請求人は、請求人が作成したホームページ(甲第10ないし第13号証)の画像を請求人に断りも無く、自らのホームページに利用した。
(オ)本件商標に対する異議申立事件(異議2005-90359)
(a)事件の概要
請求人は、平成17年7月22日に異議申し立てを行い、審理の結果、同18年5月16日(発送日)で取消理由通知書(甲第273号証)が本件商標の権利者に送付され、同年6月26日に意見書及び証拠方法(甲第274号証)が提出されて、本件商標の登録を維持する決定がされている。
(b)異議申立事件の意見書に添付の証拠方法の矛盾点
前記意見書において提出された生花の販売を証する取引書類(乙第3ないし第50号証)は、平成13年11月30日に閉店した原宿店時代までのものであるから、被請求人による本件商標の使用が、同年4月の原宿店の使用で完全に途絶えていることを証明するだけであって、被請求人が本件商標を継続して使用した証拠ではない。
また、証明書(乙第51ないし第73号証)は、「平成12年から現在に至るまで永続して使用した」との内容で、署名年月日の各証明者の記入日は、平成18年6月になっているが、被請求人の原宿店は、同13年11月30日に閉店しており、被請求人は、同年5月から同17年5月20日までは、本件商標を附して生花等の販売する店舗を有していないから、真実を証明するものではない。
これらの証明書に署名、捺印をされた証明者のうち たとえば、「有限会社ボウインマンミュージック」(乙第52号証)、「株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ」(乙第60号証)、「株式会社クドウ」(乙第65号証)及び「有限会社ガルニ」(乙第73号証)は、請求人との間で取引を行なっていたことは明らかである(甲第276ないし第325号証)。
乙第2号証は、平成12年9月に閉店した東京NEEVEの代官山店のことを示すにすぎないものであって、これらの証明書によって、特許庁審判官に全く誤った心証を形成せしめ、結果、異議申立事件について誤った判断をさせている。
(カ)業務委託契約及び変更された業務委託契約に取り決めの契約違反に基づく請求人と被請求人との間の調停事件についての概要
請求人は、被請求人との間で締結した代官山店(請求人店舗)における業務委託契約及び変更された業務委託契約の契約違反に基づく民事調停を平成19年2月8日に東京簡易裁判所へ申し立てた(平成19年(メ)107:甲第326号証)。この民事調停申立に対して、同年3月5日に、被請求人から意見書(甲第327号証)が反論として送付され、結局、この調停(甲第328号証)は不調に終わり、通常訴訟に移行している(甲第331号証)。
(キ)本件商標は不正の目的で登録されたことについて
以上申し述べた(ア)ないし(カ)の事実関係に照らし合わせたならば、本件商標は、本来ならば継続的に使用し、代官山店(請求人店舗)においては委託者である請求人が商標登録すべきところを、請求人が商標登録していないことを奇貨として出願がなされたものあろうことは容易に推察でき、本件商標の出願の時期は、前記変更された業務委託料に基づく売り上げ報告が滞り始めた時期と一致しており、被請求人は、請求人との間の交渉を優位に進めんがための布石として、本件商標を位置づけていたことは明らかであり、請求人がこれまで営々として積み上げてきた信用を毀損することは甚だしく、本件商標は正に不正の目的及び営業妨害の目的をもった商標登録出願である。
本件商標は、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内における需要者に広く認識されている引用商標と同一であって、上述のとおり不正の目的をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号について
前記(4)で述べたとおり、本件商標は、請求人との間で業務委託契約を締結していた受託者である被請求人が、当該業務委託契約を遵守することなく、加えて、委託者との関係を反古にして自らが本件商標の出願人であるとして引用商標と同一の商標について商標登録を受けることは、請求人の業務を妨害し不正の利益を得んとする蓋然性は極めて高いと考えられる。
本来、商標権は、特許権や意匠権と異なり、永年使用することによって需要者や取引者の信用が積み重なり財産的価値も高まるものであって、この財産的価値は権利者のみに拠るものではなく需要者や取引者の信用を礎にしているから、公的な性格を有する権利といえる。しかるに、被請求人は、自らの目的を遂げんがため、第三者である需要者や取引者を利用して虚偽の証明書に署名、捺印をさせ、この証明書等によって登録を維持された商標権を本審判事件と関係のない「民事調停事件」に利用している。このように、商標権の財産的価値の礎となる需要者及び取引者の信用をあたかも踏み台にするかのような行為は、当該業務に係る需要者及び取引者を侮辱するものであり、一般の信義側に違反するものであるから公の秩序または善良の風俗を害することは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(6)むすび
したがって、本件商標は、全指定商品について商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)引用商標を請求人店舗において継続的に使用したことを証する証拠の提出
(ア)新たな証拠方法の提出
甲第329ないし第632号証は、請求人の各店舗において、客からの注文を受けた際に発生する注文承り票(控え)もしくは請求書の写しであって、引用商標と、取扱商品である花束等及び請求人名と請求人の各店舗の住所及び電話番号、更に請求日もしくは注文日と料金が明記されており、請求人が引用商標を請求人商品等に使用し、各店舗において途切れなく営業を継続していたことは明らかである。
(a)甲第329ないし第427号証は、南堀江店の店舗における平成13年9月から同19年3月までのものである。
(b)甲第428ないし第522号証は、南船場店の店舗における平成14年1月から同19年3月までのものである(旧住所、大阪市中央区南船場4-1-10のものも含む)。
(c)甲第523ないし第546号証は、神戸店の店舗における平成13年9月から同15年2月までのものである。
(d)甲第547ないし第587号証は、京都店の店舗における平成16年4月から同年2月までのものである。
(e)甲第588ないし第632号証は、代官山店の店舗における平成14年4月から同16年3月までのものである。
請求人は、上記注文承り票(控え)もしくは請求書の写しについて、ここに提出する以外に膨大に保管していることから、不十分であれば全ての注文承り票(控え)もしくは請求書写しは、いつでも提出できることを付言する。
(イ)引用商標を継続的に使用していたことを証する証明書の提出
請求人は、平成12年から今日に至るまでの約7年間には、引用商標が請求人商品等に使用された結果、周知性を獲得していることを証するものとして、請求人の主だった顧客先が署名、捺印をした証明書(甲第83ないし第204号証)を提出したが、加えて、同趣旨の証明書(甲第633ないし第681号証)を提出する。
(2)答弁書に対する反論
(ア)乙各号証について
被請求人は、答弁書で甲各号証について瑣末な不備点を逐一指摘する一方で、乙各号証によって本件商標が善意に継続して使用されたと主張するが、これらの証拠は被請求人の主張を裏付けるというよりも、被請求人は平成13年5月から同17年5月20日までは、本件商標を附して生花等を販売する店舗を有していなかったことを証明するにすぎない。
乙第2ないし第50号証については、原宿店の証拠方法にすぎず、被請求人の本件商標の使用が途絶えたことを証明するにすぎない。
乙第51ないし第73号証の証明書については、いずれにも、商品を販売する店舗の住所が明記されていないが、証明者は、当該証明書に記された被請求人の現住所(東京都目黒区青葉台1-15-1)が被請求人商標を使用した住所であるとして署名捺印したものと考えらるが、被請求人は、乙第1号証のとおり平成17年8月29日に当該住所に移転していたため、当該証明書の証明されるべき内容は、住所移転された同年8月29日から証明された同18年6月頃までの間のものとなる。
また、当該証明書には、「被請求人商標が平成12年頃より現在に至るまで永続して使用してきたものであって」と表示されているが、被請求人は、平成12年から同17年8月28日までは、証明書に記載の住所に存在していないため、何人も証明することができないものであるから、虚偽であることは明白である。
(イ)代官山店における被請求人の立場
被請求人は、代官山店について、出店当時から店舗運営の実体の全てを把握し、あたかも自らが経営者であるかのような主張をしているが、この代官山店は、請求人が開店し、経営を掌握していたことは、前記1請求の理由で述べたとおりであり、請求人が同店舗の事業税を東京都渋谷区税事務所長に申告したことを証する事業税納税申告書(甲第682ないし第687号証)を提出する。
そして、被請求人は、代官山店における業務委託契約はそもそも当事者間に存在しなかったと主張し、被請求人が代官山店にて営業したとして提出した乙第74ないし第95及び第98号証について検討する。
(a)乙第74及び第75号証に掲載の内容は、既に閉店した原宿店の紹介であることから、代官山店に関する主張とは関係ない。
(b)乙第76ないし第82号証は、当該請求書に商標が確認できず、また、いずれの商品であるかも明確ではないから、本件事件との関係が不明である。
(c)乙第83号証の上段及び乙第84号証は、既に閉店した原宿店のものであり代官山店に関する主張とは関係がない。
(d)乙第85ないし第94及び第98号証について
これらの乙各号証は、平成16年4月以降の証拠であるが、変更された業務委託契約の当該業務委託契約を履行するという契約の後に発生したものであって、上記契約内容を履行するという条件のもとで業務委託者としてこれらの書類を発生させることを許容したにすぎないにもかかわらず、被請求人は、本件商標が継続的に使用され、需要者もそのように認識していると結論付けている。
しかしながら、僅かな上記証拠しか提出できないことで、被請求人は、平成13年5月から、同17年5月までは本件商標を附した商品を販売する店舗を有していないことが明らかになったといえる。
被請求人は、代官山店を開店してからの話と、同店における変更された業務委託契約の時期を混同している。平成13年4月から同16年3月までは、被請求人の代表取締役 角浩之は、請求人のフラワーアドバイザーとして同店舗にて他の従業員とともに業務に従事していたことは前記1の請求の理由で述べたとおりであり、この期間における引用商標の使用は、弁駁で提出の取引書類(甲第588ないし第632号証)からも明らかである。
確かに、これらの乙各号証は、被請求人による営業の事実を証するものであるが、これとて、業務委託契約をしたからといっても、当該店舗の経営者は、請求人であることに間違いなく、業務委託の経営的信用は、経営者である委託者に帰属することは当然であるから、引用商標の信用の蓄積に益々寄与するものであって、本件商標が使用され、この信用が被請求人に蓄積されたことにはならない。
以上のとおり、代官山店における被請求人の主張と乙第85ないし第94及び第98号証は、本件商標を継続的に使用したことの根拠にはならない。
(ウ)被請求人の答弁書主張に対する反論
被請求人は、甲第12ないし第17、第29ないし第58、第59ないし第82及び第83ないし第204号証について、引用商標を使用したことを証するに不十分であると主張するため、逐一に反論する。
(a)甲第12号証は、請求人の社員である宮川大作が平成13年頃に作成した。
(b)甲第13号証は、株式会社ライフスタイルリテイリング(本店 大阪市西区新町1-24-8マッセノース四ツ橋ビル801)が平成16年頃に作成し、同19年3月まで使用していた。
(c)甲第16及び第17号証は、上記株式会社ライフスタイルリテイリングがそれぞれ平成16年3月、同18年3月頃に作成した。
(d)甲第26号証については、被請求人が商標と商品との関係が不明であると主張するため、これを作成した税理士 中原雄一が作成した上申書を甲第689号証として提出する。請求人は、請求人の各店舗における決算報告書も全て完備しているが、本事件に関係のない第三者等のプライベートな問題が多分にあることから今回は提出しないが、いつでも提示できることを付言しておく。
(e)甲第42ないし第58号証には、確かに商品の掲載はないが、「花屋」、「Flower shop」の記載があるから、当然「生花」を販売することは明らかである。また、当該証拠の製作者も限られたスペースの中で必要不可欠な情報を需要者に提供すべく作成し、需要者もこれによって識別しているので、被請求人の主張は当を得ていない。
(f)甲第59ないし第82号証には、請求人や商品が記載されていないと主張するが、ここに挙がったハガキの住所先は、既に請求人が管理する顧客であって継続的に取り引きをしていることから、改めて「花屋」等の取り扱い商品を明示するものではない。請求人は、継続して引用商標を使用していることを証する趣旨で提出したものであり、商品が記載されていなくても何ら不自然ではない。
(g)甲第83ないし第204号証の各証明書について、大部分が定型的に作成されたもので、信頼性に乏しいと主張するが、その内容を精査すれば、1枚1枚が微妙に違っており、これこそが証明者の引用商標の認識もしくは記憶の実態に近いものである。また、個人が証明したとしても、これによって証明書の信憑性に影響することはなく、甲第83ないし第204号証には、法人が証明するものもかなり含まれている。
(エ)被請求人の甲各号証に対する主張は、甲第329ないし第689号証をあわせた全体を俯瞰した状況をあわせ鑑みれば、瑣末な主張に過ぎず、請求人が平成12年から今日に至るまで、引用商標を請求人商品等について使用し、業務を継続していることがより明確になったものと思料する。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第101号証を提出している。
1 事実関係
被請求人は、平成6年12月26日に設立され(乙第1号証)、同10年9月に代官山に1号店を立ち上げ、同11年8月には大阪南船場に2号店を、同12年7月には東京都渋谷区神宮前に原宿店を出店し(乙第2号証)、商品「生花」について本件商標を使用してきた(乙第3ないし第50及び第74ないし第95号証)。
特殊な態様からなる本件商標は、被請求人の代表者である角浩之が平成10年頃に名刺に使用する店舗ロゴとしてデザインし、請求人が設立される以前から店頭表示、納品書等にこれを付して使用してきたのであって(乙第2及び第3ないし第29号証)、請求人が設立された後も、本件商標を善意に継続して使用してきた(乙第30ないし第50及び第74ないし第95号証)。
これに対し、請求人は平成12年10月20日に設立され、設立直後、旧南船場店の営業権を被請求人より譲り受け(ただし、商標その他の商品等表示に関する権利を譲渡した事実はない。)、関西圏を中心に店舗を展開し現在に至っている。
被請求人と請求人は、請求人設立直後からビジネスパートナーとして協力関係にあり、当時フラワーデザイナーとして確固たる地位を獲得していた被請求人代表者である角浩之は、異なる業種から転出した請求人代表者に対し、フラワーアレンジメントのノウハウを提供し、フラワーショップの店舗運営に深く関わってきたが、平成13年4月に出店した代官山店の店舗運営を巡り、両者間の関係が悪化し現在に至っている。
関係悪化の原因は、被請求人と請求人との間で締結された業務委託契約の解釈の相違によるものであり、これまでも両者間で話し合いが持たれたが、和解に至らず、民事事件に係属している。
2 商標法第4条第1項第10号について
(1)引用商標の周知・著名性について
請求人は、引用商標は、本件商標の登録出願の日前から請求人商品等を表示するものとして需要者に広く認識されていると主張し、その証拠として、甲第1ないし第17及び第20ないし第204号証を提出している。
しかしながら、甲第3ないし第9号証として提出された南船場店・南堀江店・京都店の店舗写真等の撮影日は2007年7月以降にかかるものであり、現在使用されていることは推認できるものの、請求人店舗は数次の移転、改装を経て現在に至っており(甲第205号証)、前記証拠に表された商標が本件商標の登録出願日前から使用されていたのか定かでない。
甲第12ないし第17号証は、請求人作成の会社案内、パンフレット写しであると推認されるが、例えば、甲第12号証として提出された会社案内の写しは本件商標の登録出願日以後に作成されたものであり、これには2001年11月に閉店したとされる原宿店(甲第205号証)が掲載されているように、掲載内容が矛盾しており、いずれもその作成者(印刷会社、発行者)及び印刷日が特定されておらず、これらが本件商標の登録出願日前に作成され、取引において、実際に配布されたかも定かではない。
また、甲第29ないし第58号証として広告物を提出しているが、これらは店舗の紹介記事にすぎず、例えば、甲第30号証の記事には被請求人代表者である角浩之の店舗として紹介され、甲第32号証は本件商標の指定商品「生花」とは非類似の役務(フラワーアレンジメントの教授)にかかる広告にすぎないのである。さらに、甲第42ないし第58号証に至っては、いかなる商品についての使用であるか明らかでなく、これらの広告物が商品「生花」にかかる引用商標の使用とは認められない。
また、甲第59ないし第82号証の各種ハガキについても、引用商標が示されていないものがあり、引用商標が何れの商品について使用されているのか定かでない。
また、請求人の顧客先が署名、捺印した証明書(甲第83ないし第204号証)は、その大部分が定型的に作成された文書に個人が署名捺印したものであり、証明書としての信頼性に乏しいといわざるを得ない。
そして、請求人の売上高に関する証拠(甲第26及び第27号証)は、引用商標がどのような態様で使用されており、商品との関係において販売規模がどの程度であったのか明らかでない以上、これら証拠に記載された全体の売上高が具体的商品との関係で計上されたものとはいえないし、甲第27号証は本件商標の登録後の2007年度のものである。
したがって、請求人提出の証拠により、具体的商品との関係で引用商標の使用状況が明らかでない以上、上記の証拠をもって、引用商標が「生花」と同一又は類似する商品について、需要者の間に広く知られているとはいえない。
(2)本件商標に対する需要者の認識
被請求人は、生花及び生花のアレンジ商品に本件商標を付して、平成12年頃より現在に至るまで永続的に使用し、需要者間に知られていたことは、本件乙号証と同一証拠(乙第51ないし第73号証)により、異議2005-90359の異議決定(乙第96号証)において認定されているところである。
また、同異議決定において、請求人が本件商標の登録出願時に主たる取引先として挙げた「カルテイエ(リシュモンジャパン株式会社)」「株式会社ソニー・ミュージック・コミュニケーションズ」等(異議事件において申立人が甲第2号証として提出したホームページの写し:本件において乙第97号証)は、本件商標を付した商品が、請求人ではなく被請求人の商品であることを認めている。
(3)むすび
したがって、本件商標の登録出願日前に引用商標が請求人の業務に係る「生花及びこれに類似する商品」を表示するものとして需要者、取引者の間に広く知られているということはできない。
3 商標法第4条第1項第15号について
引用商標が請求人の業務に係る「生花及びこれに類似する商品」を表示するものとして、需要者、取引者の間に広く知られていないことは上述したとおりである。
また、引用商標が本件商標の登録出願時に請求人の店舗表示として使用されていたとしても、上述の需要者、取引者による本件商標に関する出所の認識(乙第51ないし第73及び第101号証、甲第30号証)から、需要者、取引者の間に広く知られているとはいえない。
よって、本件商標をその指定商品に使用しても、取引者、需要者が商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
4 商標法第4条第1項第19号について
上記のとおり、引用商標は、需要者間に広く認識されている商標とはいえず、被請求人が本件商標を最先に採択し、善意に継続して使用してきた事実からも、本件商標の登録が不正の目的や引用商標をフリーライドしたものではない。被請求人が本件商標を請求人よりも早く使用していたことは請求人も認めているところである。
次に、請求人は、請求人と被請求人との出退店の経緯、被請求人の店舗と請求人との関係等について種々述べているが、被請求人とは事実の認識に大きな隔たりがあるので以下に詳述する。
(1)代官山店の業務委託契約について
請求人は、本件商標は、本来ならば継続的に使用し、代官山店(請求人店舗)においては委託者である請求人が商標登録すべきところを、請求人が商標登録していないことを奇貨として出願されたものであろうことは容易に推察できると主張する。
しかしながら、請求人が代官山店の業務を委託した根拠として提出する業務委託契約書(甲第208号証)はあくまでも形式を整えただけであって、実際上の業務委託契約を締結する意思は、請求人被請求人間には存在しなかったのである。
そもそも、業務委託契約を締結したのは、大阪に本拠を置く請求人が代官山のテナントを借りるに際し、当該物件の仲介業者であるムロプランニング株式会社より、「オーナーにヘブンデュオさんが信頼できるテナントだと説明するのに角さんの名前がないのはマイナスである」との回答があったため、被請求人と請求人との間に形式的な業務委託契約を締結し、被請求人が請求人の責任をとることにしたのであり(乙第101号証)、業務委託契約に記載された業務委託料も家賃相当額にすぎず、実質上は当該店舗の家賃(34万2950円)を業務委託契約料として被請求人が請求人に支払い、請求人が家賃を支払うという複雑な形式をとったのであり、店舗の運営・仕入・販売・売上管理は被請求人により行われていたのである(乙第74ないし第95及び第98号証)。
(2)本件商標出願の経緯について
本件商標を出願するに至った経緯は、被請求人がナビ渋谷のアールアーカイブにフラワーショップ「jaMmu」を出店するため(乙第99号証)、2004年5月に株式会社レナウンと業務委託契約を交わした際、その担当者より、商標管理の重要性を指摘され、本件商標を出願していなかったことに気付いて、商標「jaMmu」の出願(商願2004-90450、乙第100号証)と同時に出願したのであり、請求人に対し不正の利益を得る目的等をもって出願したものではない。
(3)本件商標の継続使用について
請求人は、本件商標の最先使用者が被請求人であり、原宿店運営移管までの使用の事実は認めている。
そして、平成13年4月に出店した代官山店における店舗運営の実体は上記(1)のとおりであり、被請求人が本件商標を継続的に使用していたことは明らかであり、需要者もそのように認識している。
(4)被請求人・請求人間の民事紛争について
請求人が指摘する両者間の民事紛争は、本件とは直接関係のないことであり、また民事上の事実の認定は、裁判所において判断されるべきことである(東京地裁平成19年(ワ)第18119号損害賠償等請求事件)。
よって、被請求人を誹議中傷する請求人の一方的な主張は、当を得ない。
5 商標法第4条第1項第7号について
上述のとおり、本件商標の採択から出願に至るまでの経緯において社会的妥当性を欠くものではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
なお、証明書(乙第51ないし第73号証)は、証明者がその資格又は職責において知り得た情報を基に、証明内容を確認の上、記載されている内容について責任をもって証明しているのであるから、証明書に関する請求人の主張は当を得ない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号及び同第7号のいずれにも違反して登録されたものではなく、同法第46条第1項第1号に該当しない。

第4 当審の判断
1 請求の利益について
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、当審も、請求人は本件審判の請求人適格を有するものと判断するので、以下、本案に入って審理する。
2 本件商標と引用商標について
本件商標は、前記第1のとおり、欧米人の女性名を表す「Matilda」の欧文字を横書きし、この冒頭「M」の上に2文字目「a」に架かるように横長矩形を配し、かつ、該「M」の左縦線直下及び該「M」と該「a」の間隙部直下にそれぞれ方形状の図形を配した構成よりなるものである。
一方、引用商標は、別掲(2)のとおり、本件商標と同様に「Matilda」の欧文字と横長矩形及び方形状の図形を配した構成よりなるものであるから、両商標は、実質的に同一の構成よりなるものとみて差し支えない。
なお、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものとして、その登録の無効を主張しているところ、同第7号を除く他の法条については、同条第3項の規定により商標登録出願の時に該当しないものには適用しないとされているものである。
3 請求人及び被請求人の出店状況等について
当事者が提出した証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人は、生花の販売、婚礼会場等における花の飾り付け、生花のアレンジメントに関する知識の教授を主な業務として、大阪市中央区南船場4-4-17(平成13年2月に同市西区南堀江1-27-9に移転)を本店として同12年10月20日に設立されている(甲第10ないし第17及び第20号証)。
そして、請求人は上記業務を「マチルダ」、「シトロン」、「テイシー」、「ルコラ」及び「オデット」と称する店舗において行っており、現在も営業を継続している該「マチルダ」店は、南船場店(大阪市中央区南船場4-6-2)、南堀江店(大阪市西区南堀江1-27-9)及び京都店(京都府京都市中京区河原町通3条下ル二丁目山崎町251番地)の3店である(甲第3ないし第11及び第13号証)。
(2)被請求人は、生花の販売、生花のアレンジメントに関する知識の教授を主な業務として、平成6年12月26日に設立され(乙第1号証)、同10年9月に代官山店(東京都渋谷区猿楽町24-4)、同11年8月に南船場店(大阪市中央区南船場4-4-17)、同12年7月に原宿店(東京都渋谷区神宮前6-8-4)を出店し、該南船場店において、本件商標と態様を異にする図案化した「Matilda」の欧文字からなる商標及び本件商標を使用し(甲第207号証及び乙第2号証)たほか、原宿店においても本件商標を使用していた(乙第2ないし第50、第75、第83及び第84号証)。
代官山店及び神戸店は、平成12年9月、同13年11月に閉店し、南船場店は、その後、請求人に営業譲渡され、当初、大阪市中央区南船場4-1-10に出店後、同年1月19日に同市南船場4-6-2に移転した(甲第205号証)。
被請求人は、その後、平成17年5月21日に青葉台店を東京都目黒区青葉台1-15-1に出店し、本件商標を使用している(乙第95号証)。
(3)代官山店について
(ア)上記東京都渋谷区猿楽町24-4在の代官山店が平成12年9月に閉店した後に、請求人は、東京都渋谷区恵比寿南3-7-1在の代官山店(以下、「代官山店」というときは、本所在地のものをいう。)について、請求外ムロプランニング株式会社を立会人として、請求外株式会社アイル代官山との間で店舗賃借契約を行い(甲第24号証)、その後、請求人及び被請求人双方の契約に基づき同13年4月に生花店を開店した(甲第208号証)。
甲第208号証は、平成13年4月1日付けの業務委託契約書であるところ、該契約書中、第1ないし4条において、次の記載が認められるものである。
第1条 甲(請求人)は、甲が賃借する店舗において、生花及び関連する商品の販売業務を乙(被請求人)に委託する。
第2条 店舗とは、東京都渋谷区恵比寿南3-7-1代官山島田ビル1階の甲が借り受けた店舗である。
第3条 店舗の内外装又は設備等に係る費用に関してはすべて乙の負担とする。
第4条 仕入、販売、売上管理などの業務は全て乙の責任において行う。
なお、この業務委託契約書には、本件商標、「Matilda」又は「マチルダ」の商標、あるいは店舗の名称に関する記載は認められず、ほかにこれらの事項に関する当事者の契約を証明する証左はない。
(イ)代官山店の運営・販売・売上管理等は被請求人により行われていたとして被請求人が提出した取引書類(乙第85ないし第94号証)は、(i)上部に「ご注文承り票(控)」の表題が記載され、受付日、ご注文主、お届け先、金額等の欄とともに、下部には、被請求人の商号を英語表記したと認められる「Flower Heaven inc.」の文字及び本件商標とともに、被請求人の本店及び代官山店の住所が英語表記された書類、(ii)左上に「納品書控(店)」の表題、右上には被請求人の名称、住所及び電話番号が記載され、下部には、本件商標と代官山店の住所等が記載された書類の2種類が認められる。
(ウ)請求人は、平成16年4月1日より上記業務委託契約を変更したと主張しているが、その事実を証する書面の提出はない。なお、訴状(甲第328号証)には、「覚書」の表題が記載された甲第2号証の添付が認められるものであるが、そこには当事者の記名押印が無いものであり、ほかに、当事者の契約があったと認めるに足りる証拠もなく、これをもってしては請求人主張の業務委託契約の変更があったものということはできない。
(エ)請求人は、インターネットのホームページ等において、代官山店は自らの直営店として紹介していた(甲第10号証等)ことが認められ、さらに、請求人は代官山店を経営し、取引を行っていたと主張し、証拠として取引書類(甲第588ないし第632号証)及び事業税納税申告書(甲第682ないし第687号証)、事業税納付書(甲第688号証)及び上申書(甲第689号証)を提出している。
この取引書類は、左側に「ご注文承り票(控)」と表示され、上部に引用商標と横長矩形輪郭線を記載し、該矩形輪郭線の右横に「No」欄、「担当」欄が設けられ、その他に、受付日、お届け先、ご注文主、商品欄、用途欄、メッセージ欄、料金等の欄ほか、下段に請求人の商号を英語表記したと認められる「Heaven Duo Co.,Ltd.」の文字、住所及び電話番号等の記載がされ、そして、該横長矩形輪郭線内には、「引用商標、日本語又は英語で表された代官山店の住所及び電話番号等」の印影が認められる。
しかして、上記取引書類は、販売店が顧客の注文内容等を保管するものと認められ、顧客に渡す書類にも請求人商号の英語表記等が記載されていたかは不明である。
事業税納税申告書は、平成13年4月1日から同19年3月31日までの、事業税納付書は、同16年4月1日から同19年3月31日までのものであり、それぞれには所在地の欄に「渋谷区恵比寿南3-7-1」、法人名の欄に「株式会社ヘブン・デュオ」の各文字の記載が認められる。
上申書は、甲第26号証の証明書について税理士中原雄一が上申したものであり、そこには代官山店(住所:東京都渋谷区恵比寿南3-7-1)のほか、南船場店、南堀江店、京都店及び神戸店における平成14年3月期から同19年3月期の売上金は、各期に対応する期間において、請求人が引用商標を商品「生花」に使用した結果として販売計上されたものである旨が記載されている。
しかして、該代官山店は平成17年5月13日に閉店し、請求人は、同所において同年7月29日から「Odette」(オデット)名の生花店を開店した(甲第326及び第328号証)のであり、このことは、甲第26号証の証明書において、代官山店の第6期(同18年3月期)以降が空欄となっていることからも是認できるものであるから、上記事業税納税申告書をもって、請求人が代官山店の経営を行っていたとする主張は、少なくても第6期及び第7期(同19年3月期)については採用することができない。
(オ)上記(ア)ないし(エ)の事実を総合すると、請求人は、被請求人に店舗を賃借したことが明らかであり、代官山店の経営に何らかの関与があったことを窺い知れるとしても、一方で、「店舗の内外装又は設備等に係る費用に関してはすべて乙(被請求人)の負担」とし、「仕入、販売、売上管理などの業務は全て乙の責任において行う」とする当事者の契約があることからすれば、被請求人が店舗の運営等に何ら関与することなく請求人が代官山店において、生花の販売を行っていたとは俄に認め難く、代官山店は、実質的に被請求人の店舗として運営され、本件商標が被請求人によって使用されていたといわざるを得ない。
(4)その他
甲第209ないし第223号証は、平成14年4月30日から同15年3月10日までの被請求人から請求人宛の請求書と認められるところ、備考欄に「梅田イーマビル館内装飾プロデュース一式」、「神戸植栽プロデュース料」、「京都BALプロデュース料として」、「南船場新店プロデュース」、「ホームページ監修・デザイン料」等の記載が認められる。
甲第224ないし第272号証は、通帳の写し、請求人から被請求人宛の支払通知書及び請求人から被請求人に振り込んだ利用明細の写し(平成16年5月10日から同年11月1日まで)と認められるものである。
(5)上記(3)及び(4)の事実から、平成13年4月頃から請求人と被請求人は、「Matilda」又は「マチルダ」を店名とする生花店について互いに協力関係にあったと認められるが、同16年11月頃から両者の関係は悪化し、現在に至っているということができる。
4 商標法第4条第1項第10号について
引用商標が本件商標の登録出願時前から需要者の間に広く認識されたとして、請求人が提出した証拠によれば以下の事実が認められる。
(1)引用商標の使用状況等について
(ア)甲第3ないし第9号証は、南船場店、南堀江店及び京都店の各店舗の外観及び花束、アレンジメント等の写真と認められる。しかし、これらは、本件商標の登録出願後の平成19年(2007年)7月中に撮影されたものである。
(イ)甲第10及び第11号証は、アドレスを「http://www.matilda-style.com/」とするホームページ内の写しであり、平成14年12月12日(02/12/12)、同15年1月24日(03/01/24)及び同16年1月25日(04/01/25)の各日付が右下に記載され、展開店舗、事業内容、取引先(エルメス銀座店、株式会社ボウィンマンミュージック、株式会社ソニーミュージックコミュニケーションズ等)の紹介、フラワーアレンジメントの写真、代官山店、南船場店、南堀江店、京都店及び神戸店の各店舗の紹介、フラワーアレンジメント教室等が掲載されている。
甲第12及び第13号証は、「Information」、「HEAVEN DUO Co.,Ltd.」と題した請求人作成の会社案内であって、甲第12号証には、「Matilda」の文字の下に「HARAJYUKU」、「DAIKANYAMA」、「MINAMISENBA」、「MINAMIHORIE」及び「HARBOURLAND」の各文字と共に住所と電話番号等の記載及び花束、アレンジメントなどの写真が掲載されている。また、甲第13号証には、会社概要、事業概要、取引先、店舗内の写真等が掲載されている。
甲第14及び第15号証は、請求人が作成したとするパンフレットであり、引用商標の下に、甲第12号証と同様に5店舗の住所等及び花束の写真等が掲載されている。
甲第16及び第17号証は、請求人が作成したとする平成16年(2004年)及び同18年(2006年)の母の日用のパンフレットであって、引用商標の下に、「HEAVEN DUO Co.,Ltd.」又は「株式会社ヘブン・デュオ」の文字と「MINAMISENBA」、「MINAMIHORIE」及び「KYOTO」の3店舗及び花束の写真等が掲載されている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)の証拠について検討するに、甲第10及び第11号証は、右下に記載された日付に出力したものと推認することができるものであるが、近時のインターネットの普及状況からしてこの種のホームページは普通にみられるものであり、該ホームページが、どの程度注目を集めていたか不明である。
また、甲第13ないし第16号証は、その頒布部数、頒布地域及び頒布期間等が不明である。
(2)請求人の売上高について
甲第26号証は、決算書に基づく売上高及び各店舗の内訳である。
甲第27号証は、大阪府の年商上位20位を示したランキング表であり、請求人が年商363百万円、10位として紹介されている。
甲第28号証は、「花・植木小売業」の年商の全国平均であり、花・植木小売業の平均売上高として、154,987千円と記載されている。
請求人の売上高合計は、上記全国平均を上回るものであるが、これらは請求人が展開する「テイシー」、「シトロン」、「ルコラ」及び「オデット」店等の売上も含むと解され、しかも各店は生花の販売のみならず、会場装飾、アレンジメント教室等をも行っている(甲第13号証)のであり、引用商標を使用する生花店における生花の販売額の合計ではない。また、第6期の南船場店及び南堀江店の売上合計は、91,414千円であり、大阪府の年商ランキングでは20位以下と認められ、これら2店と京都店の売上合計も全国平均を超えるものではない。
これらの証拠からは、請求人の連結的な売上高が認められても引用商標の使用状況やその実績は明らかではない。
なお、甲第26号証が真実であることを証明するものとする上申書(甲第689号証)が提出されているが、これによって、上記認定が左右されるものではない。
(3)雑誌、情報誌等について(甲第29ないし第58号証)
(ア)平成14年(2002年)7月リチャードルーク発行のフリーペーパー「zabeat」に掲載された「SHINSAIBASHI/AMERICAMURA/HORIE/Za beat STREET MAP★」を見出しとする各店舗を種別分けした地図に「matilda」の欧文字が記載されている(甲第29号証)。
(イ)平成15年(2003年)3月20日発行の「FIGARO」55頁に「Matilda/マチルダ モダンな感性の花アレンジが魅力」の見出しの下、「・・・花のアレンジメントを手がける角浩之さんのお店はディスプレイも素適だ。・・・」、「代官山、槍ヶ先交差点のすぐ側。」等と記載されている(甲第30号証)。
(ウ)平成15年(2003年)4月1日発行の「STORY」158頁に「暮らしに生かすお稽古事」との見出しの下、生花を織り交ぜたドライアレンジメントに関する紹介が掲載されているが、一部不鮮明のためその記載を確認することができない(甲第31号証)。
(エ)平成15年(2003年)11・12月版「堀江・南船場・アメリカ村・新町・湊町周辺エリア情報誌」に「フラワーアレンジメント 南堀江 マチルダ Matilda」の見出しの下、「花屋の3階でに設けられたこちらの教室では、季節の花を使い、毎月テーマに基づいたフラワーアレンジメントを楽しめる。」等と記載されている(甲第32号証)。
(オ)平成15年(2003年)6月1日発行の「I’m home」の「TOKYO」と表示の頁に「http://www.matilda-style.com」及び「東京都渋谷区恵比寿南3-7-1」等と、「OSAKA」と表示の頁に「Matilda MINAMIHORIE」、「大阪府大阪市西区南堀江1-27-9」及び「http://www.matilda-style.com」等とそれぞれ記載されている(甲第33号証)。
(カ)平成15年(2003年)2月13日発行の「saita」に「お友達への手土産にセンスある花束を」の見出しの下、「マチルダ Matilda」、「東京都渋谷区恵比寿南3-7-1」等と記載されている(甲第34号証)。
(キ)平成15年(2003年)12月2日号の「GooWORLD」の32頁に「花のチカラを引き出す、川沿いのフラワーショップ。」の見出しの下、「マチルダ南堀江店」、「『地域密着型なので、周りの人に愛されるように、・・・』とは、ゼネラルマネージャーの中井まりさん。」、「大阪市西区南堀江1-27-9」等と記載されている(甲第35号証)。
(ク)右下の「2005/07/01」の記載から平成17年(2005年)7月1日打出しと認められる「CyberCREA」を表題とするインターネットのホームページ上で「宇田陽子」、「Matilda MinamiHorie 大阪市西区南堀江1-27-9」、「Shop List フラワーショップ マチルダ」の見出しの下、「Matilda Daikanyama 東京都渋谷区恵比寿南3-7-1」、「Matilda Harajuku 東京都渋谷区神宮前6-8-4」、「Matilda MinamiSenba 大阪市中央区南船場4-1-10」及び「Matilda Kobe Harborland 神戸市中央区東川崎町1-8-1」等と記載されている(甲第36号証)。
(ケ)平成14年(2002年)8月8日に月刊誌「SAVVY」の編集室員と「マチルダ京都店」の開店についてのアンケート取材に関するファックスで遣り取りした書簡に「代官山、南船場、等におなじみのマチルダがこのたび、京都に初登場!」等と、及びこれに関する「月刊SAVVY10月号 原稿の校正のお願い」を表題とする書簡に「マチルダ京都店(1F)」の見出しの下、「南船場でも人気のグリーン系が充実したフラワーアレンジメントショップが京都初登場。」等と記載されている(甲第37及び第38号証)。
(コ)平成15年(2003年)4月1日発行の「BRIO」140頁に「マチルダ」、「大阪市西区南堀江1-27-9」等と記載されている(甲第39号証)。
(サ)平成14年(2002年)11月1日発行の「MORE」に「主張のある花や葉を盛り込んだ個性派 Matilda」、「Matilda」、「代官山にあるおしゃれなショップ。」及び「東京都渋谷区恵比寿南3の7の1」等と記載されている(甲第40号証)。
(シ)「媒体名称:Navigator (ナビゲーター)KYOTO」、「発行日:2007年4月28日」、「発行部数:40,000部」等と記載がされた書簡(甲第41号証)。
(ス)平成13年(2001年)9月1日、同14年(2002年)10月16日、同15年(2003年)10月16日、同16年(2004年)10月8日、同17年(2005年)10月16日発行のフリーペーパーに南船場店の紹介及び引用商標を表した広告が掲載されている(甲第42、第44、第48、第51及び第53号証)。
同様に平成13年(2001年)11月1日、同15年(2003年)9月16日、同16年(2004年)10月8日、同17年(2005年)9月16日、同18年(2006年)9月1日発行のものに「Matilda南堀江店」と地図上に記載され、または同店の紹介及び引用商標を表した広告(甲第49号証を除く)が掲載されている(甲第43、第45、第49、第52及び第57号証)。
また、平成15年(2003年)11月1日、同16年(2004年)4月28日、同年11月1日、同17年(2005年)4月28日、同年11月1日、同18年(2006年)4月16日、同年11月1日発行のフリーペーパーに京都店の紹介及び引用商標を表した広告が掲載されている(甲第46、第47、第50、第54ないし第56及び第58号証)。
(セ)上記(ア)ないし(ス)において、甲第36、第41、第46、第49、第51ないし第58号証は、本件商標の登録出願後のものであり、また、甲第31号証は、俄に如何なる店舗の紹介であるかは不明であって、さらに、月刊誌「SAVVY」の編集室員との書簡(甲第37及び第38号証)は、該雑誌への掲載事実を見出すことができない。
そして、本件商標の登録出願時前のその余の上記事実からは、「Matilda/マチルダ」を店名とする生花店が紹介されていることを認めることができるものであるが、本件商標と引用商標とは略同一の構成からなるものであるから、かかる商標のほかに「Matilda」又は「マチルダ」の文字の表示のみでは、その運営にかかる事業者としての請求人あるいは被請求人の存在を確認することが俄には困難であり、フリーペーパー(甲第42ないし第45、第47、第48及び第50号証)に掲載された広告も取り扱う商品が不明であるばかりか、請求人が自らの名称のもとでその取り扱いにかかる商品について直接的に掲載したものとなっていない。
また、代官山店の雑誌等における掲載は、平成14年11月1日ないし同15年6月1日の間に僅か4回(甲第30、第33、第34及び第40号証)にすぎず、これらの掲載よりは事業主体が請求人と認識させるような記述はなく、まして雑誌「FIGARO」(甲第30号証)には「・・・花のアレンジメントを手がける角浩之さんのお店は・・・」と、代官山店が被請求人代表者 角浩之の店舗と認識、理解させるような記述が認められる。しかして、前記3(3)で認定したように代官山店は、被請求人がその運営にかかわっていたというのが相当であり、かかる掲載を勘案すると需要者、取引者においても、被請求人又は角浩之の運営する店舗のように認識されていたということができる。
さらに、南堀江店、南船場店及び京都店に関する本件商標の登録出願時前の雑誌等における掲載は、それぞれ、7回(甲第29、第32、第33、第35,第39,第43及び第45号証)、3回(甲第42、第44及び第48号証)、2回(甲第47及び第50号証)と僅かであるばかりでなく、情報誌(甲第32号証)は、主にフラワーアレンジメント教室に関する紹介であって、本件商標の指定商品「生花」の販売に関するものではなく、加えて、フリーペーパー(甲第29、第42ないし第45、第47、第48及び第50号証)は、無料のいわゆるタウン情報誌の一種であって、その頒布も特定の地域に限られるものといわなければならないものである。しかも、甲第29及び第45号証においては、地図上に単に「matilda」、「Matilda南堀江店」と記載されているにすぎないものである(広告の掲載を除く。)。
そうすると、これらの証拠によっては、特定地域の範囲内における需要者に「Matilda」、「マチルダ」を店名とする生花店の存在が知られていることを認め得るとしても、その掲載回数、頒布地域等が少なく、これらにより引用商標が喧伝されたものとはいい難いものものである。
(4)ハガキ、案内、カード等(甲第59ないし第82号証)
(ア)請求人の年賀状
平成13年、同16年の年賀状(甲第59、第61、第75及び第76号証)には、「南堀江店」、「南船場店」、「京都店」及び請求人商号の英語表記と認められる「HEAVEN Duo Co.,Ltd.」の各文字と引用商標の記載が認められる。これら年賀状の配布枚数及び配布先は不明である。
(イ)案内書
平成12年ないし同15年の案内書(甲第60、第62、第63及び第65号証)には、「Matilda Kyoto」、「南船場店」、「南堀江店」及び「MINAMISENBA」の各文字と引用商標の記載が認められる。
案内書(甲第74及び第77号証)は、それぞれ平成13年(2001年)に大阪市西区北堀江1-12-16在の「ART HOUSE」、大阪市西区新町1-2-6ニュー新町ビル3F在の「&’S Gallery」が作成したものと認められるところ、裏面下方に他店の標章と思しき表示とともに引用商標が記載されている。これら案内書の配布枚数及び配布先は不明である。
(ウ)取引先からの年賀状
平成14年の年賀状(甲第66ないし第73、第78ないし第81号証)は、宛先の住所を「大阪市西区南堀江1-27-9」又は「大阪市中央区南船場4-4-17」とするものであり、その宛先中には、「Matilda」、「マチルダ」、「株式会社ヘブン デュオ Matilda」及び「株式会社ヘブン・デュオ マチルダ」の記載が認められる。
また、これらの差出人の住所は、ほとんどが大阪府大阪市内のものであり、その他は兵庫県神戸市が2件(甲第69及び第73号証)、東京都練馬区が1件(甲第66号証)、東京都中央区及び大阪府大阪市並びに愛知県名古屋市の3か所の住所を併記したものが1件(甲第71号証)である。
なお、年賀状(甲第82号証)の差出日は、不明である。
(エ)その他
甲第64号証には、引用商標の記載が認められるものの、その使用時期、使用者、使用数量等は不明である。
(オ)上記(ア)ないし(エ)の事実からは、請求人が平成12年から同16年の間に主に南船場店、南堀江店を中心として顧客と取引をしていたということができるとしても、その需要者の多くは大阪市在のものといい得るものであり、また、請求人作成の年賀状、案内書等は、配布地域及び配布数量等が不明であり、引用商標の需要者における認識の程度の判断に参酌し得ないものである。
(5)顧客等による証明書
請求人は、その主だった顧客先等が署名、捺印をしたとする「証明書」(甲第83ないし第204及び第633ないし第681号証)を提出している。
これらの証明書のうち、甲第136号証は、平成12年10月20日から同14年3月31日までの間に、請求人の税務顧問契約を締結していた公認会計士・税理士によるものであり、南堀江店、南船場店、神戸店及び代官山店において生花の販売などに引用商標が使用されていたこと及び請求人と角浩之との間で引用商標を使用することについて相互の了解があったものと解釈していた旨が記載されたものであり、その余の証明書は、日付の欄を空白にして他の文言及び引用商標が記載されたものに証明者が証明の日付、住所、氏名を記載及び捺印したものであり、各証明は、「平成19年」のみで月日の記載がない甲第670号証を除き、同年7月1日(甲第192号証)ないし同年8月26日(甲第634号証)の間に証明されたものである。
しかして、その証明内容をみると、南堀江店、南船場店、京都店、神戸店及び代官山店のいずれか又は全てについて、請求人が各店舗を運営する事業主体であること及び各店が今日に至るまで継続的に途切れることなく使用(または継続的に運営)し、広く認識されていること等を旨とするものであるところ、平成15年3月に閉店した神戸店、同17年5月に閉店した代官山店についても、今日まで使用するというもの(甲第83、第86、第110号証等)があり、また、同12年12月に開店した南堀江店(甲第21及び第205号証)のみについて証明するものに限ってみても、請求人が設立される前の同年5月(甲第169号証)又は同店が開店する前の10月(甲第141ないし第145、第157ないし第160及び第174号証)から継続的に使用する旨を記載したものがあるから、これらの証明内容は極めて不自然なものが多く、証明者が請求人の依頼を受けて何らの根拠無く証明したといわざるを得ないものである。
また、これら以外の証明書については、各店舗の売上状況、広告・宣伝実績等を具体的に明記したものはなく、各証明者が如何なる理由をもって引用商標が「広く認識されている」とするのか不明である。
したがって、顧客等による証明書は、引用商標の周知・著名性を裏付けるものとして、採用することのできない証拠であるというほかはない。
(6)取引書類
請求人は、引用商標が生花の販売等について継続して取引に使用されていることを証明するための取引書類(甲第329ないし第632号証)を提出している。
この取引書類は、左側に「ご注文承り票(控)」(例えば、甲第329号証)、「請求書」(例えば、甲第369号証)、「受領書」(例えば、甲第390号証)、の各記載があるもの及び上部に「請求書」(例えば、甲第571号証)と記載された書類からなるものであり、受付日等の記載によれば、平成13年9月から同19年3月までのものと認められる。
そして、ご注文承り票(控)には、左上に引用商標(甲第388号証等のように、この記載のないものもある。)、横長矩形輪郭線(その内部には、「引用商標、店名の英語表記、住所及び電話番号等」の印影のあるもの(甲第337号証等)と空欄のもの(甲第329号証等)がある。)を記載し、該矩形輪郭線の右横に「No」欄、「担当」欄が設けられ、その他に、受付日、お届け先、ご注文主、商品、用途、メッセージ、料金等の各欄ほか、下段に請求人の商号の英語表記名、住所及び電話番号等が記載されている。
一方、請求書も上記と同一の様式といえるものである。また、受領書は、上記の様式から、用途欄、金額欄等を省略したものであり、甲第571号証等の請求書は、日付欄、「No」欄、相手方の名称欄、「引用商標、店名の英語表記、住所及び電話番号等」の印影、金額等が記載されている。
これらの書類の「ご注文主」の欄には、南堀江店、南船場店、京都店、神戸店が所在する大阪府、兵庫県、京都府がほとんどであり、その他に本件商標の登録出願時前のものでは東京都、滋賀県、愛知県、香川県、福岡県及び奈良県(甲第337、第344、第365、第367、第372及び第439号証等)の記載が認められる。また、「お届け先」の欄にも、大阪府、兵庫県、京都府がほとんどであり、その他に本件商標の登録出願時前のものでは、静岡県、奈良県、東京都、滋賀県、山口県、富山県、愛知県、宮城県、鹿児島県、福岡県、神奈川県、千葉県、香川県、北海道、広島県、岡山県及び徳島県(甲第333、第337、第340、第344、第345、第350、第357、第364、第367、第372、第378、第443、第460、第477、第483、第523及び第535号証等)の記載が認められる。
なお、顧客からの受注内容を記載するご注文承り票(控)と、顧客に商品の購入代金等の支払いを求める請求書は、上記のように同じ様式のものが用いられることは一般的ではなく、たとえば、甲第571号証のような様式を用いるのが通常であり、また、甲第341号証のご注文承り票(控)の「No」及び「受付日」の各欄には、上段が「No 001558」、「14年5月29日」と、下段が「No 001488」、「14年5月30日」とそれぞれ記載され、「No」欄の番号が受付日と逆転していることが認められ(甲第416、第436及び第493号証等も同様)、上記取引書類の一部には通常の取引書類としては不自然な記載があるものである。
さらに、甲第588ないし第632号証のご注文承り票(控)は、上部の横長矩形輪郭線内に代官山店の住所が日本語又は英語表記されているものであるが、前記3(3)で認定したように代官山店は当事者の業務委託契約書により、請求人が被請求人に生花等の販売業務を委託し、被請求人(乙)が販売、売上管理を乙の責任において行うとされているのであるから、請求人が代官山店において、顧客からの注文を受け付けることは俄に認め難いものである。
しかしながら、仮に、甲第588ないし第632号証等によって、請求人が代官山店において生花等の販売業務を行っていたとしても、一方で、被請求人も代官山店において、本件商標を使用して生花の販売を行っていたということもできるのであるから、本件商標又は引用商標に蓄積された信用が専ら請求人の営業活動によるものということはできない。
また、甲第329ないし第587号の取引書類のうち、本件商標の登録出願時前のものでは、上記したように大阪府、兵庫県、京都府以外の都県に所在の者と取引したことが認められるとしても、その取引量は全体の取引からすると僅かといわざるを得ないものであるから、これらによって、引用商標が需要者の間に広く認識されたとすることはできない。
次に、請求人は、有限会社ボウインマンミュージック、株式会社ソニー・ミュージック・コミュニケーションズ、株式会社クドウ及び有限会社ガルニと取引を行っていたとして甲第276ないし第325号証を提出しているところ、これらは、ご注文承り票(控)、請求書(控)、納品書(控)、請求人名義の普通預金通帳の各写しからなるものである。
この請求書(控)(甲第277、第279、第287及び第294号証)中の「伝票No」の欄に記載された番号は、代官山店の住所等の印影のあるご注文承り票(控)の「No」の欄に記載されたものと一致しており(例えば、甲第276号証のご注文承り票(控)と甲第277号証の請求書(控)において、15323及び15460が一致している。)、これよりすれば、該請求書(控)は、代官山店から顧客に対して購入代金の請求をするものと解されるものであるが、そこには請求者として「株式会社ヘブン・デュオ」と共に「Matilda代官山店」の記載が併記されているにもかかわらず、連絡先の電話番号が代官山店のものの記載が無く本店(又は南堀江店)のもののみとなっている。
しかし、請求書の内容について顧客からの問い合わを受けるためには、取引を実際に行った店舗の電話番号を記載するのが一般的といい得るものであり、このことは、たとえば、甲第583号証の請求書において、本店の電話番号ではなく京都店の電話番号が記載されていることからも是認することができるから、該取引書類は、不自然なものといわざるを得ない。
加えて、たとえば、甲第285、第286及び第293号証の納品書(控)は、ソニー・ミュージック・コミュニケーションズ宛の平成14年5月20日から同年6月24日までのものであるところ、その「No.」の欄には、「1008」から「1013」までの連番が記載されているのに対して、クドウ青山宛の納品書(控)(甲第298ないし第300号証)は、同年5月1日から同月29日までのものであり、その「No.」欄には、「1704」から「1708」までの連番が記載されているものである。
両者宛の各納品書(控)を比較してみると、各納品書の日付の時期が一部重複しているにもかかわらず、顧客毎に納品書の番号が連番となっているものであるが、この種の納品書は顧客毎ではなく納品日順に管理するのが一般的といい得るものであるから、これらも取引書類として不自然なものといわざるを得ない。
そうすると、甲第276ないし第325号証は、引用商標の周知・著名性を裏付ける証拠としては採用し難いものである。
(7)小括
以上の事実を総合すれば、引用商標が請求人の運営する各店舗において使用されていた事実を認め得るとしても、本件商標の登録出願時までの使用期間は僅かに4年程と長いものとはいい難く、加えて、各店舗の広告・宣伝の実績(広告の方法・期間・地域等)も明らかではなく、ほかに各店舗または当該商標の周知・著名性を具体的かつ客観的に示す証拠は見出せないから、甲各号証をもってしては、本件商標の登録出願時において、引用商標が請求人等の業務にかかる商品又は役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものということはできない。
ところで、請求人は、請求人がどのような取引先と取引しているかを勘案することは、使用する商標の周知・著名性の重要な観点になるとし、その提供する「花束」のデザイン的なセンスの良さや技量の高さは、上記の主だった企業に知れわたっており、この状況はあたかも行列が出来る名店のようなものであり、加えて、請求人は当業界において中堅以上の地位を築いていることから推して考えるならば、引用商標は、請求人にかかる生花店業務等を表示するものとして需要者の間に広く認識されている旨主張している。
しかしながら、たとえ請求人が生花小売店業界において、中堅以上の地位を築いているとしても、請求人の挙げた主だった企業が当該店舗と生花の取引をする場合に、その企業が一顧客としての立場以上にその取引により生花店及びその使用する商標について喧伝し、それが不特定多数の需要者間に広く認識されるとする点については、この主張を裏付ける証拠の提出もなく甚だ疑問であるから、請求人の主張を採用することはできない。
なお、請求人と被請求人の金銭的な遣り取りを示す請求書等(甲第209ないし第272号証)は、両当事者間相互における内部事情というべきものであって、直接的に引用商標の周知・著名性を推し量る証拠としては斟酌し難いところである。
その他、請求人提出の証拠及び職権による調査によっても引用商標の周知・著名性を裏付けるものは見出せない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当するものではない。
5 商標法第4条第1項第15号について
前記4のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時において、請求人の業務に係る商品「生花」又は役務「生花による会場装飾、植栽プロデュース、生花のアレンジメント教室の開催、ブライダルブーケ及びブライダル装飾の提供」を表示するものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたということができないものであるから、商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者が引用商標を想起するものとはいえないものであり、その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
6 商標法第4条第1項第19号について
引用商標が需要者の間に広く認識されていたということができないことは、前記4のとおりであるばかりでなく、前記3(3)及び(4)のとおり、請求人と被請求人は、平成13年4月頃から協力関係にあって、当事者が使用する商標も略同一のものであったところ、同16年11月頃から両者の関係は悪化したものと認められる。
しかしながら、前記3(3)のとおり、被請求人は、代官山店において本件商標を使用していたといわざるを得ないものであり、その後も東京都目黒区青葉台1-15-1(乙第95号証)において開店した店舗において本件商標を使用しているのであるから、本件商標は、引用商標の信用を毀損させるなどの不正の目的をもって使用するものということができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
7 商標法第4条第1項第7号について
商標の登録出願が適正な商道徳に反して社会的妥当性を欠き、その商標の登録を認めることが商標法の目的に反することになる場合には、その商標は商標法4条1項7号にいう商標に該当することもあり得ると解される。しかし、同号が「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」として、商標自体の性質に着目した規定となっていること、商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については同法4条1項各号に個別に不登録事由が定められていること、及び、商標法においては、商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば、商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法4条1項7号に該当するのは、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである(平成14年(行ケ)第616号 平成15年5月8日判決言渡)。
これを本件についてみると、本件商標は、欧米人の女性名を表す「Matilda」の欧文字と図形を組み合わせた構成よりなるものであるから、その構成自体は、何ら公の秩序又は善良の風俗に反するものではない。
また、被請求人は、本件商標を請求人が設立される前から使用していた(乙第2ないし第29号証)ばかりでなく、代官山店においても被請求人が本件商標を使用していた(乙第85ないし第94号証)といわざるを得ず、さらに、青葉台店においても本件商標を使用している(乙第95号証)のであるから、かかる本件商標の経緯のもとで、被請求人が本件商標の登録出願をしたのは、安定して本件商標を使用し得る地位を確保するためとみるのが相当であり、本件商標の取得に至る行為を不正の目的でなされたということはできない。
そして、たとえ、代官山店における商標の使用が請求人によるものであったとしても、被請求人は、青葉台店において本件商標を使用している以上、上記判断が否定されるものではない。
ほかに、当該商標を使用することが社会公共の利益、一般道徳観念に反するものともいい難く、また、他の法律によってその使用が禁止されているものということもできない。
請求人は、被請求人が需要者、取引者に虚偽の証明書に署名、捺印させて、需要者等を侮辱している旨主張しているが、これを裏付ける証拠が何ら提出されていないものであり、むしろ、証明者が被請求人の依頼により自発的に署名、捺印したとみるのが自然であるから、この点に関する請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
8 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標


(2)引用商標



審理終結日 2008-07-31 
結審通知日 2008-08-06 
審決日 2008-08-22 
出願番号 商願2004-90451(T2004-90451) 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (Y31)
T 1 11・ 222- Y (Y31)
T 1 11・ 22- Y (Y31)
T 1 11・ 271- Y (Y31)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 護 
特許庁審判長 中村 謙三
特許庁審判官 末武 久佳
前山 るり子
登録日 2005-04-15 
登録番号 商標登録第4856454号(T4856454) 
商標の称呼 マチルダ、マティルダ 
代理人 芳田 新一 
代理人 岡田 稔 
代理人 曾我 道治 
代理人 岡田 全啓 
代理人 安東 宏三 

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