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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Y03
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Y03
管理番号 1239978 
審判番号 不服2008-650045 
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-21 
確定日 2011-06-06 
事件の表示 2006年4月28日に事後指定が記録された国際登録第626145号に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、第3類に属する日本国を指定する国際登録において指定された商品を指定商品として、2006年(平成18年)4月28日に国際商標登録出願(事後指定)されたものである。その後、指定商品については、原審における平成19年10月9日付けの手続補正書により、第3類「Bleaching preparations and other substances for laundry use;cleaning,polishing,scouring and abrasive preparations;beauty products (cosmetics),soaps,perfumery,essential oils,cosmetics,hair lotions;dentifrices.」と補正されたものである。
2 原査定の理由
原査定は、「本願商標は、自他商品識別機能を果たし得るに足る特別顕著性を有するものとも俄に認めることができるものではなく、全体としてその商品の形状(収納容器)の一形態を表したものと認識させる立体的形状のみよりなるものであり、単に商品の包装(収納容器)の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
(ア)立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させる、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは上記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(イ)これを本願についてみれば、本願商標は、別掲のとおり、上部に球体を乗せた円錐台様の立体であって、円錐台部分の上方4分の1付近及び底部に近い下方付近に、数本の曲線が横方向に配されたものであり、球体又は円錐台上部の横曲線で分断される部分が蓋部分、円錐台全体又は円錐台下部を容器部分と容易に認識させるものである。
そして、この立体的形状は、液体等の収納に適した縦に長いものであり、また、外側の形状は、機能面とともに、シンプルな美しい印象を与えるための美感を追求して採用された形状と理解できるものであるから、全体として、本願指定商品との関係においては、液体等を収納する容器そのものを表したと理解できる形状からなるものとみるのが自然である。
ところで、本願指定商品のうち、特に「せっけん類、化粧品、香水」の需要者は、商品の購入に際して、商品自体の品質ばかりでなく、その容器の形状にも注目して購入する傾向がある。そのため、これらの商品を取り扱う業界においては、商品の収納容器についても機能性・ファッション性を重要視して、様々な特徴をもたせた形状の容器(包装)を多種類採用し、その容器(包装)に商品を収納して販売することは一般に行われているところであって、その商品の形状(包装の形状を含む。)が商品の機能又は美感をより発揮させるといえるものである。
してみると、本願商標を構成する収納容器の特徴は、商品等の機能や美感を効果的に際立たせるための範囲内のものというべきであり、指定商品との関係において、本願商標は、例えば「香水、化粧水」等の液体状の物質を収納する容器の形状としての一形態を表したものとみるべきであるから、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、単に商品の収納容器を表示するにすぎないものとして理解するに止まり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。
(ウ)請求人は、「本願商標は充分デザイン化が施され、特異性を有し、『通常』採用され得る形状の範囲を超えており、識別力・顕著性を有する。」旨主張する。
しかしながら、本願商標は、上記認定のとおり、ややその形状が特徴的なものであっても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品等の形状を普通に用いられる方法の範囲で表示する標章のみからなる商標というべきであるから、自他商品の識別力を有するものとは認められない。
なお、甲第2号証ないし甲第22号証は、過去の立体商標の登録例であるが、これらは立体的形状のみを構成要素とするものでなく、立体的形状と文字、図形等の標章の結合により構成されているものであること、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状であること、又は、本願の指定商品とはその商品を異にするものであること等、本件と事案を異にするものである。
(2)商標法第3条2項について
請求人は、甲第23号証ないし甲第99号証を示し、「仮に本願商標に自他商品識別力がないとしても、本願商標は本願出願人の製造販売する化粧品に永年(日本においては1993年から今日まで)使用した結果、当該化粧品の容器の形状からなる立体商標として我国において周知であるから、本願商標は法3条2項に該当する。」と主張するとともに、本願商標が外国で登録されていることを挙げて、本願商標は自他商品識別力を有するものであると述べている。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られるものである。
そうすると、使用に係る商品が出願に係る指定商品の一部である場合は、使用に係る商品に指定商品が限定されない限り、出願に係る商標については、使用により識別力を有するに至った商標と認めることはできないものである。
そこで検討するに、本願商標が使用により周知な立体商標となっていることを証明するものとして、請求人が提出した甲第29号証ないし甲第98号証によって、本願商標の使用に係る商品と認められるのは、「パルファム(香水)」又は「オードトワレ」についてのみであって、本願指定商品中のその他の商品については、本願商標が使用されて、取引者、需要者に広く知られるに至ったと認めるに足りる証拠はない。
また、甲第29号証ないし甲第98号証によれば、使用商標は その使用に係る商品の紹介文やそのタイトル等に記載された「L’EAU D’ISSEY」、「ISSEY MIYAKE」、「ロードゥ イッセイ」又は「イッセイ ミヤケ」の文字とともに、容器の写真が掲載されているものがほとんどであり、また、容器中に「L’EAU D’ISSEY」又は「ISSEY MIYAKE」の文字が表示されているものも含まれている。
さらに、使用商標は、本願商標と同一のものでなければならないところ、上記証拠には、形状が異なるものが含まれている。
例えば、甲第49号証、甲第76号証及び甲第89号証に記載された立体的形状においては、本願商標上部にある球体が確認できず、また、甲第43号証、甲第47号証、甲第48号証、甲第51号証、甲第53号証ないし甲第60号証、甲第62号証ないし甲第64号証、甲第66号証ないし甲第70号証、甲第72号証ないし甲第75号証、甲第78号証ないし甲第85号証、甲第88号証、甲第92号証ないし甲第96号証及び甲第98号証に記載の立体的形状は、円錐台の横曲線で分断される位置が、本願商標とは異なっている。
以上のとおり、本願商標が、その指定商品について使用された結果、識別力を有するに至っているものと認定することはできない。
してみれば、本願商標は、商標法第3条第2項に規程する要件を具備しているものということはできない。
なお、甲第100号証は、本願商標と同一と認められる収納容器の外国における登録例であるが、諸外国における立体商標の登録制度と我が国のそれが同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認められないから、これに基づく主張は採用の限りでない。
(3)したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取消すことはできず、また、本願商標は同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、登録できない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】

審理終結日 2010-07-16 
結審通知日 2010-07-22 
審決日 2010-08-05 
国際登録番号 0626145 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (Y03)
T 1 8・ 13- Z (Y03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 石田 清
特許庁審判官 大塚 順子
岩崎 良子
代理人 古木 睦美 
代理人 佐藤 雅巳 

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