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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Z03
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z03
管理番号 1239977 
審判番号 不服2008-650020 
総通号数 140 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2011-08-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-19 
確定日 2011-06-06 
事件の表示 2006年4月28日に事後指定が記録された国際登録第652943号商標に係る国際商標登録出願の拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲のとおりの構成よりなり、日本国を指定する国際登録において指定された第3類「Bleaching preparations and other substances for laundry use;cleaning,polishing,scouring and abrasive preparations;soaps;perfumery goods,essential oils,cosmetics,hair lotions;dentifrices.」を指定商品として、2006年(平成18年)4月28日に国際商標登録出願(事後指定)されたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、デザインが施された各種容器に詰められて販売されていることが一般に厳存するので、全体としてその商品の形状(収納容器)の一形態を表したものと認識させる立体的形状のみよりなるものと認められ、これをその指定商品について使用しても、単に商品の包装(収納容器)の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。なお、収納容器の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいは、その美感を追求する等の目的で選択されるものであって、本来的(第一義的)には、商品の出所を表示し自他商品を識別する標識として採択されるとはいえないものであり、その識別機能を果たすものとしては文字、図形又は記号等が適しているため、専らこれらが自他商品の識別標識として採択、使用されていることは顕著な事実であり、本願商標に係る形状が収納容器の一形態を表示するにすぎないものと認める。以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号について
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるところ、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されたりするものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務(以下「自他商品等」という。)を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品等を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
イ 商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
(2)本願商標について
本願商標は、別掲のとおり、人間の上半身を思わせるような立体的形状よりなるところ、その上部の金属部分は蓋兼噴霧器であり、その下部の白の縞模様が施された磨りガラス風の半透明になったやや青色の部分は、液体等の内容物を収納する容器であると容易に理解させるものであって、本願の指定商品との関係においては、例えば「香水、化粧水」等の液体状のものを収納する容器の一形態を表したと認められるものであるから、これをその指定商品(例えば「香水、化粧水」)に使用しても、取引者、需要者は、単に液体状の商品を収納する容器の形状と認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(3)請求人の主張について
請求人は、「本願商標の形状、模様及び色彩は、十分デザイン化され、特異性があり、通常採用し得る形状の範囲を超えており、顕著性を有するものであるから、『収納容器の一形態を表示するにすぎないもの』では『ない』。」旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品(例えば「香水、化粧水」)においては、商品や商品の包装の形状等の外観上の特徴が、需要者の購買心理、選択意欲、消費行動等に重要な訴求力を有するものであるといえることから、商品や商品の包装の形状において、特に美感が強く追求されるのに対し、商品の機能、効果等のために特定の形状にしなければならない必要性は比較的薄いといえる。
そうすると、上記の香水及び化粧水等の商品や商品の包装の形状は、市場の流行や需要者の用途、嗜好等に合わせ、美感を強く意識した各種の特徴的な変更、装飾等が施される実情にあるものと認められ、その場合、立体的形状に施されたその種の変更、装飾等は、外観上、同種の商品や商品の包装の形状と比較して特徴的なものと認められる場合があるとしても、それらは専ら需要者が商品を選択するに際して、外観上の美感、若しくは魅力的な形状という嗜好上の意味合いを付与するにすぎず、それは未だその商品や商品の包装の形状の域を出ないものと認識するに止まるものである。
したがって、上記の商品や商品の包装の形状における変更、装飾等は、自他商品の出所を表示する識別標識として機能しているものではなく、その立体商標の形状等全体を観察しても識別力を有するものとは認められない。
そして、本願商標は、前記認定のとおりの形状からなる、その指定商品(例えば「香水、化粧水」)の容器であることを容易に認識し得るものであるから、その形状にデザインが施されているものであっても、それは商品の収納容器の、主として美感をより発揮させるために施されたものというのが相当であり、商品の収納容器の形状を普通に用いられる方法の範ちゅうで表示する標章のみからなる商標というべきであるから、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品等の識別力を有するものとは認められないことは、前記(2)のとおりであるから、請求人の主張は、採用することができない。
(4)商標法第3条第2項について
ア 請求人は、当審において甲第1号ないし同35号証(枝番を含む。)を提出して、「仮に本願商標に自他商品識別力がないとしても、本願商標は本願出願人の製造販売する化粧品に永年使用した結果、当該化粧品の容器の形状、模様及び色彩として我が国において周知であるから、本願商標は商標法第3条第2項に該当する。」と主張するとともに、過去の立体商標の登録例及び本願商標が外国で登録されていることを挙げて、本願商標は自他商品識別力を有するものであると述べている。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られると解される。
そこで、請求人提出の各証拠について検討する。
イ 使用に係る商標と本願商標の同一について
請求人が本願商標の使用に係る実績として提出した証拠をみると、噴霧器の形状が異なっているもの(甲第14号証,同17号証)、蓋部分にリング状のものが付いているもの(甲第18号証ないし同20号証,同22号証,同25号証の2,同25号証の5ないし同25号証の7,同25号証の10,同25号証の16)及び立体的形状と文字を併記してなるもの(甲第25号証の8ないし同25号証の9,同25号証の12ないし同25号証の15,同25号証の17ないし同25号証の19)を確認することができる。
そうすると、本願商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標は、立体的形状の一部が異なる形状になっているものや立体的形状と文字を併記してなるものを含むものであって、商標の全体的構成が同一とはいえないものである。
したがって、前記各証拠をもって、本願商標と同一の商標が使用されていると認めることはできない。
ウ 使用に係る商品と本願指定商品の同一について
使用に係る商品が「香水」であると認められるのに対し、本願指定商品は、「香水」以外の商品を包含しているものである。したがって、本願商標は、使用に係る商品に指定商品が限定されていないものである。
エ 本願商標の使用による識別力について
(ア)請求人は、本願商標に係る香水の世界及び日本での売上高、販売開始年、日本における販売拠点数について電子メール(甲第24号証)において、「フランスにおいて1995年に発売開始、日本において1996年4月に発売開始し、それ以来12年間、男性用香水としては異例の高い売り上げを続けているから、本願商標は、本願出願人の製造販売に係る『JEAN PAUL GAULTIER』の化粧品の中の『LE MALE』という香水の立体的商標(容器)として、その独特の形状、模様、色彩をもって我国において周知である。」と主張しているが、当該証拠は、「TMARK CONSEILS」から「佐藤国際法律特許事務所」に宛てた2008年4月12日付け電子メールであって、その記載されたデータに関して客観的な裏付けが認められないものであり、また、本願商標の使用形態や、当該商品の市場規模、市場占有率、広告宣伝の方法等の事実について明確ではないことからすれば、その記載された売上高及び販売拠点数のみをもって本願商標が我が国において周知であることを立証するものということはできない。
(イ)さらに、請求人は、我が国において周知であることの証左として、甲第17号証ないし同23号証及び同25号証(枝番を含む。)を提出しているが、同17号証ないし同23号証においては、請求人に係る商品(香水)である「JEAN PAUL GAULTIER(ジャンポールゴルチェ)」の「LE MALE(ル・マル)」について紹介する雑誌等と認められるものであり、また、同25号証(枝番を含む。)は、請求人に係る商品の販売や商品情報の提供を行うインターネット情報であるところ、その販売にあたって、同25号証の2は、「ル マル ジャンポール・ゴルチエ」「Jean Paul GAULTIER」の文字と共に、同25号証の3は「ジャン・ポール・ゴルチエ」「ル・マル」の文字と共に、同25号証の4は「ジャンポール・ゴルチェ」「ル・マル」の文字と共に、同25号証の5は「ジャンポールゴルチエ」「ル・マル」の文字と共に、同25号証の6は「ジャンポール ゴルチエ」「ジャンポール ゴルチエ ル マル」「Jean Paul GAULTIER LE MAL」の文字と共に、同25号証の7は「ジャンポール・ゴルチエ」「ル・マル」の文字と共に、同25号証の8は「ジャンポール・ゴルチエ “ル・マル”」の文字と共に、同25号証の9は「ジャンポールゴルチエ」「ル・マル」の文字と共に、同25号証の10は「ジャン・ポール・ゴルチェ」「JEAN PAUL GAULTIER」「ル・マル」の文字と共に、同25号証の12は「ジャン ポール ゴルチェ」「ル・マル」の文字と共に、同25号証の13は「ル マル」「ジャンポール・ゴルチェ」の文字と共にそれぞれ組み合わされて使用されているものであり、また、同25号証の11は「ジャンポールゴルチエ」「ル マル」の文字のみで使用されていることからすれば、その使用形態は、本願商標と同一の構成、態様とは認められず、これらをもって本願商標が我が国において周知であることを立証するものということはできない。
オ まとめ
以上、請求人の提出に係る各証拠を総合してみても、本願商標が、その指定商品に使用された結果、取引者、需要者に広く知られるに至ったと認めるに足りる客観的な証拠はない。
そうとすれば、本願商標がその指定商品「Bleaching preparations and other substances for laundry use;cleaning,polishing,scouring and abrasive preparations;soaps;perfumery goods,essential oils,cosmetics,hair lotions;dentifrices.」について永年使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるようになったものと認めることはできないものであるから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとはいえない。
(5)請求人のその他の主張について
請求人は、立体商標の登録例(甲第2号ないし同13号証)を挙げて本願商標も登録されるべきであると述べているが、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かは、当該商標の構成態様と指定商品の取引の実情等に基づいて、個別具体的に判断されるものであるから、請求人の上記主張は採用することができない。
さらに、請求人は、本願商標と類似と認められる立体商標の外国における登録例(甲第26号ないし同35号証)を提出しているが、諸外国における立体商標の登録制度と我が国のそれが同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認められないから、これに基づく主張も採用の限りでない。
(6)むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものとは認められないから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】

審理終結日 2010-08-05 
結審通知日 2010-08-09 
審決日 2010-08-20 
国際登録番号 0652943 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (Z03)
T 1 8・ 17- Z (Z03)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 佐藤 達夫
特許庁審判官 田中 亨子
高橋 謙司
代理人 佐藤 雅巳 
代理人 古木 睦美 

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